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2009/03/01 [Sun] 18:21:26 » E d i t
政府が提示した8機関16人の人事案が平成21年2月23日、参院本会議で採決され、人事院の人事官1人▽再就職等監視委員会の委員長と委員4人▽中央社会保険医療協議会委員1人--の3機関7人が民主党など野党の反対多数で不同意になりました(毎日新聞 2009年2月24日東京朝刊)。国会同意人事には衆院の優越規定がないため、7人の人事案は白紙に戻ることになります。

ここで問題にしたいのは、中央社会保険医療協議会(中医協)委員1人であり、中医協の薬価専門部会の部会長を務めている、前田雅英・首都大学東京教授の再任案が、野党の反対多数で不同意となったことです。野党は、いったい、いかなる合理的な根拠に基づいて、前田雅英・首都大学東京教授の再任案を不同意としたのでしょうか?



1.報道記事を幾つか。

(1) YOMIURI ONLINE(2009年2月19日23時23分)

人事官ら7人の人事案、民主が不同意の方針

 民主党は19日の役員会で、政府が提示した8機関16人の国会同意人事案のうち、人事院人事官1人、中央社会保険医療協議会委員1人、再就職等監視委員会の委員長と委員4人の計3機関7人を不同意とすることを決めた。

 他の野党も同調しており、23日の参院本会議で7人の人事案が否決される見通しだ。

 人事官として提示された千野境子・産経新聞特別記者については「人事官3人のうち1人がマスコミ(出身者)の指定ポストになっており、ふさわしくない」(安住淳国会対策委員長代理)として不同意とした。中医協委員に前田雅英・首都大学東京教授を再任する人事案も「刑法の専門家だが、医療事故対応は刑法的アプローチでは合わない面もある」(同)とした。

(2009年2月19日23時23分 読売新聞)」



(2) 2009/02/19 20:27 【共同通信】

人事官など7人は不同意 民主などが反対方針

 民主党は19日の役員会で、政府が提示した8機関16人の国会同意人事案のうち、人事院人事官1人、再就職等監視委員会委員長・委員の5人、中央社会保険医療協議会(中医協)委員1人の計7人について同意しない方針を決めた。社民、国民新両党も同調する。

 人事の発令には衆参両院の同意が必要で、民主、社民、国民新3党が反対すれば参院で不同意となるため、7人は任命できない見通しだ。昨年12月に設置された再就職等監視委は委員長・委員全員の空席が続くことになる。

 再就職等監視委の人事案に反対するのは、制度自体を認めていないのが理由。人事官に産経新聞社東京本社編集局特別記者の千野境子氏を新任する案に関しては、人事官3人のうち1人を報道機関出身者が占める慣行が続いていることから「人事院の在り方の根本的な見直しの中で、報道機関との関係も再検討するべきだ」と判断した。

 中医協委員への前田雅英・首都大学東京都市教養学部長の再任案には「刑法の専門家として医療関係者を萎縮させる発言が目立つ」として反対する。

 共産党も再就職等監視委の人事案には同意しない方針で、ほかの人事案に関しては20日に対応を決める。衆院は20日、参院は23日の本会議で採決する予定。

2009/02/19 20:27 【共同通信】」



(3) 毎日新聞 2009年2月20日 東京朝刊

民主党:3機関7人の人事不同意を決定

 民主党は19日の役員会で、政府が提示した8機関16人の国会同意人事案件のうち、人事官1人▽中央社会保険医療協議会委員1人▽再就職等監視委員会の委員長と委員4人--の3機関7人について同意しないと決めた。野党多数の参院では23日の本会議で不同意となる見通し。

 人事官として提示された産経新聞特別記者の千野境子氏(64)を不同意とした理由について、民主党は「人事官のうち1人は1953年から報道機関OBが就任し続けており、マスコミの事実上の天下り先と断定せざるを得ない」と説明した。

 中央社会保険医療協議会委員として提示された首都大学東京の前田雅英・都市教養学部長(59)=刑法=については「バランス感覚の点で適格性を欠く」との理由。省庁による天下りあっせんを監視する再就職等監視委員会の委員長と委員計5人は「委員会の制度そのものに反対」としている。【白戸圭一】

毎日新聞 2009年2月20日 東京朝刊」



(4) YOMIURI ONLINE(2009年2月20日22時59分)

同意人事、人事官など7人白紙に…野党が参院否決へ

 民主、共産、社民、国民新の野党4党は20日の衆院本会議で、政府が提示した8機関16人の国会同意人事案のうち、人事院人事官など3機関7人について反対した。

 7人の人事案は衆院で与党の多数で可決されたが、23日の参院本会議で否決され、両院の同意が得られず白紙になる。

 野党は官僚OBの起用には批判的だが、今回反対した7人は民間人。千野境子・産経新聞特別記者を人事官に起用する案について、民主、社民両党は「人事官3人のうち1人がマスコミ出身者の指定席になっている」と指摘。共産党は、千野氏の公務員の労働基本権に関する見解に不十分な点があるとした。

 中央社会保険医療協議会委員の前田雅英・首都大学東京教授の再任案は、「前田氏には患者・家族側に立った発言が少ない」(社民党)などと批判している。再就職等監視委員会の委員長・委員4人の人事案は、同委員会の設置に反対する立場から、一切の人事を認めない態度を取った。

(2009年2月20日22時59分 読売新聞)」



(5) MSN産経ニュース(2009.2.24 11:32)

「民主党に説明責任」 中医協の国会同意人事で厚労相
2009.2.24 11:32

 舛添要一厚生労働相は24日午前の記者会見で、国会同意人事の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関、中医協)委員1人が民主党など野党の反対で同意されず、再任できなかったことについて「民主党はどういう党内プロセスで決めているのか。国民に対する説明責任がある」と述べ、民主党に同意人事の検討過程を明らかにするよう求めた。そのうえで「国会同意人事を政争の具にすべきではない」と強調した。

 不同意となったのは前田雅英・首都大学東京都市教養学部長で、中医協では薬価専門部会の部会長を務めている。民主党は「前田氏が座長の医療事故調査機関の検討会で、医療関係者を萎縮(いしゆく)させる発言をした」などとして中医協委員の再任に反対したが、医療過誤の患者団体からは批判の声が上がっている。」




2.これらの記事をみると、前田雅英・首都大学東京教授の再任案を否決した根拠は、次のようなことになっています。まず、その根拠を挙げて、一つ一つ検討していきます。

 「「中医協委員に前田雅英・首都大学東京教授を再任する人事案も「刑法の専門家だが、医療事故対応は刑法的アプローチでは合わない面もある」(安住淳国会対策委員長代理)とした。」(読売新聞)

 「中医協委員への前田雅英・首都大学東京都市教養学部長の再任案には「刑法の専門家として医療関係者を萎縮させる発言が目立つ」として反対する。」(共同通信)

 「中央社会保険医療協議会委員として提示された首都大学東京の前田雅英・都市教養学部長(59)=刑法=については「バランス感覚の点で適格性を欠く」との理由。」(毎日新聞)

 「中央社会保険医療協議会委員の前田雅英・首都大学東京教授の再任案は、「前田氏には患者・家族側に立った発言が少ない」(社民党)などと批判している。」(読売新聞)」

「不同意となったのは前田雅英・首都大学東京都市教養学部長で、中医協では薬価専門部会の部会長を務めている。民主党は「前田氏が座長の医療事故調査機関の検討会で、医療関係者を萎縮(いしゆく)させる発言をした」などとして中医協委員の再任に反対したが、医療過誤の患者団体からは批判の声が上がっている。」(産経新聞)




(1) 

「刑法の専門家だが、医療事故対応は刑法的アプローチでは合わない面もある」



前田雅英・首都大学東京教授は、中医協においては薬価専門部会の部会長を務めているのであって、「医療事故対応」の問題とは無関係です。確かに、「前田氏が座長の医療事故調査機関の検討会で、医療関係者を萎縮(いしゆく)させる発言をした」のかもしれませんが、それは、医療事故調査機関の検討会での話しであって、薬価専門部会とは何の関係もありません。

ですから、中医協の薬価専門部会とは関係のない「医療事故対応」問題で、不同意とするのは、合理的な根拠を欠いているというべきです。民主党の安住淳国会対策委員長代理は、「どうかしている」としか思えません。

なお、医療事故については、現在、行政処分、損賠賠償責任(民事)、刑事罰という3つの法対応がなされています。現在医療事故について、刑事罰が行われているにもかかわらず、なぜ、医療事故対応は刑法的アプローチでは合わないと言い捨てるのか、不思議でなりません。

仮に、「医療事故対応は刑法的アプローチでは合わない面もある」としても、現在の法運用を否定する以上、否定する課程において刑法的アプローチを熟知している人物が必要となります。刑法的アプローチを知らない人物同士で決めたことにどうして合理性を見いだすことができるのか、訳が分かりません。およそ法律というものが分かっていないのではないか、と思いたくなります。

それなのに、「医療事故対応は刑法的アプローチでは合わない面もある」という根拠によって、刑法を熟知した学者を排除するのですから、民主党の対応は、あまりも愚かしいといわざるを得ません。



(2) 

「民主党は『前田氏が座長の医療事故調査機関の検討会で、医療関係者を萎縮(いしゆく)させる発言をした』などとして中医協委員の再任に反対した」(産経新聞、共同通信)



 イ:この根拠も、結局は、前田氏が、中医協とは関係のない、座長の医療事故調査機関の検討会で、医療関係者を萎縮させる発言をしたということで、不同意としたわけです。それは、医療事故調査機関の検討会での話しであって、中医協の薬価専門部会とは何の関係もありません。

ですから、中医協の薬価専門部会とは関係のない、医療事故調査機関の検討会での発言でもって、中医協の人事を不同意とするのは、合理的な根拠を欠いているというべきです。


 ロ:前田教授が、どこで、どういう内容を医療関係者を萎縮させる発言をしたのか、明示していないため、はっきりしたことは分かりませんが、おそらくは次のニュースのことと思われます。

「大野事件判決は、判例とは言わない」―前田座長

 「大野病院事件の判決は、法律家の間では重視されない。一審判決でしかない。地裁の判断でしかない。法律の世界はそこが非常に厳しくて、原則として最高裁(の判決)でなければ判例とは言わない」―。医療事故の調査機関の創設に向けて7か月ぶりに再開された厚生労働省の検討会で、前田雅英座長(首都大学東京法科大学院教授)は、最高裁の判断を重視することを強調した。「反発する医療界をいかに説得するか」という問題に多くの委員が腐心する中、「言葉だけで、だましてはいけない」との厳しい指摘もあった。(新井裕充)

 医療事故の原因究明や再発防止に当たる第三者機関「医療安全調査委員会」(仮称)の創設をめぐっては、11の病院団体で構成する「日本病院団体協議会」も意見を集約するには至っていない。

 「医療界の反発をいかに抑えるか」という課題を抱えたまま、政局の行方が不透明な中で、法案化が暗礁(あんしょう)に乗り上げた格好になっている。

 このため厚労省としては、次の衆院解散・総選挙までに医療界を説得するための材料を用意し、法案化に向けて一気にアクセルを踏みたいところ。反対する学会などのヒアリングを実施して、病院団体の合意を取り付ける「準備」を入念に進めておく必要がある。

 そのような中、厚労省は10月9日、「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」の第14回会合を開催し、732件のパブリックコメント(国民からの意見)をまとめた23項目の「Q&A」を示した。意見交換では、厚労省案と福島県立大野病院事件判決との関連や、刑事責任を問われる「重大な過失」の意味が議論の中心になった。

 樋口範雄委員(東大大学院教授)は、大野病院事件の判決が一定の基準を示したことを評価し、「福島地裁判決で、こんなことを言っているということを『注』などで出していただくと、標準的な医療行為から著しくかけ離れた場合はこういう場合で、こんなに厳しい要件だから、刑事裁判ではない別の仕組みで医療者が頑張るという本筋が伝わる」と述べた。

 これに対し、前田座長が次のように述べて反対した。
 「大野病院事件の判決は、法律家の間では重視されない。それはやはり、一審判決でしかない。地裁の判断でしかない。法律の世界は、そこが非常に厳しくて、原則として最高裁でなければ判例とは言わない。(大野病院事件は)最高裁まで争って決まったものではなく、一地方裁判所の判断。同じ医療過誤の問題に関しては、最高裁の判断もある。それとの整合性を持たせつつ整理して、医療界の心配を解くことが必要だ」(以下、省略)

更新:2008/10/09 22:40   キャリアブレイン」(キャリアブレイン(CBニュース)


「大野病院事件の判決は、法律家の間では重視されない」という発言は、法律を一定以上学んだ者であれば誰もが一般的に導き出す結論であって、ごくごく当然の発言です。社会的にいくら注目を集めた裁判であったとしても、数多くある「一地方裁判所の判断」であって(それも主要都市圏でない、福島地裁の判断)、判例の基準としての普遍性をもっていないからです。

医療関係者は、大野病院事件について一審で無罪となり、控訴を断念することを願い、そのとおりとなりました。しかし、今後、大野病院事件を教訓にして、刑事罰を抑制する方向で判例の基準を構築して欲しかったのであれば、せめて高裁まで争うべきでした。

問題なのは、大野病院事件の福島地裁判決自体に問題があることです。「福島県立大野病院事件(下):福島地裁平成20年8月20日判決への評価~医療過誤に対する刑事責任の追及はやめるべきか?」(2008/08/24(日) 19:23:40)で触れたように、非論理的な判決内容であり、最高裁判決と整合性が欠けていますので、控訴されれば、福島地裁が示した判断は変更される可能性が高いものでした。ですから、そんな非論理的な判決内容であって、しかも、最高裁と整合性に欠けた基準を、他の裁判所が受け入れるはずがないのです。

樋口範雄委員(東大大学院教授)は、「大野病院事件の判決が一定の基準を示したことを評価し、「福島地裁判決で、こんなことを言っているということを『注』などで出していただく」などと言っていますが、それでは、最高裁と整合性を欠いた基準を追認することになりかねません。権力分立制の下、最高裁が法解釈の最終決定権限を有し、行政は最高裁が示した法解釈に従う立場にあるのですから、行政の立場とすれば、「最高裁と整合性を欠いた基準を追認する」ことは、権力分立制に反してしまいます

前田雅英教授は、「同じ医療過誤の問題に関しては、最高裁の判断もある。それとの整合性を持たせつつ整理」すると発言したことは、権力分立制にかなった発言であって、ごく当然のことなのです。

このように、前田雅英教授は、権力分立制にかなった発言をしているのですから、それが例え「医療関係者を萎縮させる発言」であったとしても、義務教育で学ぶ権力分立制さえも理解していない医療関係者の方が悪いというべきです。

なお、キャリアブレイン(CBニュース)の見出しは、「大野事件判決は、判例とは言わない」となっていますが、なぜ、見出しにしたのか、皆目分かりません。「判例」とは、最高裁判例だけを言うのであって、下級審判例は「裁判例」と表記するというだけのことです。前田教授は、単なる表記の問題で発言しただけなのに、キャリアブレインはその発言を見出しにしたのですから、キャリアブレインの記者は、相当、法的知識に欠けていると、推測できそうです。



(3) 

「中央社会保険医療協議会委員の前田雅英・首都大学東京教授の再任案は、「前田氏には患者・家族側に立った発言が少ない」(社民党)」



 イ:この根拠も、中医協での発言なのか、医療事故調査機関の検討会での発言のことなのか、分かりません。しかし、もし、中医協の薬価専門部会とは関係のない、医療事故調査機関の検討会での発言でもって、中医協の人事を不同意とするのであれば、合理的な根拠を欠いているというべきです。


 ロ:また、どこでの発言であろうとも、医療被害者団体が、今回の不同意について抗議を行っているのですから、「前田氏には患者・家族側に立った発言が少ない」という根拠は、本当に正しいのか、疑問です。社民党は、「前田氏には患者・家族側に立った発言が少ない」を、必ず明らかにするべきです。

医療事故調:設置に反対した野党に抗議文--被害者団体

 厚生労働省の医療事故調査機関設置に関する検討会座長を務める前田雅英・首都大学東京都市教養学部長(刑法)の国会同意人事が、23日の参院本会議で野党の反対により不同意となったことに対し、医療事故被害者団体は野党各党に抗議文書を送った。医療被害者側は「実質的な医療事故調つぶしが目的なら、看過できない」と反発している。

毎日新聞 2009年2月24日 東京朝刊」(毎日新聞 2009年2月24日 東京朝刊




(4) 

「中央社会保険医療協議会委員として提示された首都大学東京の前田雅英・都市教養学部長(59)=刑法=については「バランス感覚の点で適格性を欠く」との理由。



この根拠が最もよく分かりません。前田教授の著書・論文は、問題点を明快に分析し分かりやすく提示しており、内容・結論もバランス感覚に優れているものばかりであり、中庸で現実的な結論ばかりです。前田教授が導き出す結論は、現実的であるがゆえに、現状肯定的であって、ある意味、体制寄りである面が否めませんが、現実に目をつぶることは愚か者のすることであって、切り捨てることはできないものです。

そうした前田教授であるのに、中央社会保険医療協議会委員の一員となると、なぜに「バランス感覚の点で適格性を欠く」ことになっているのか、皆目検討が付きません。おそらくは、「前田氏が座長の医療事故調査機関の検討会で、医療関係者を萎縮(いしゆく)させる発言をした」(産経新聞)点で、「バランス感覚の点で適格性を欠く」と言っているに過ぎないように思えます。

もし、中医協の薬価専門部会とは関係のない、医療事故調査機関の検討会での発言でもって、中医協の人事を不同意とするのであれば、合理的な根拠を欠いているというべきです。また、中医協において、前田教授が具体的にどういった言動によって「バランス感覚の点で適格性を欠く」のか、野党は説明責任を果たすべきです。




3.厚生労働省の「中央社会保険医療協議会委員名簿」(平成20年10月22日現在)をよく見て下さい。

(1) 「中央社会保険医療協議会委員名簿」のうち、法律学者は、前田雅英・首都大学東京教授ただ一人です。

法律学者が一人しかいないということ自体問題がありますが、こうして前田教授が再任されなかった以上、このままでは、中央社会保険医療協議会の協議は、法律的な観点が欠落したまま、判断されかねないという結果に陥ることになります。いかなる問題であろうとも、法規制・法的な運用を伴うのですから、法律的な観点は不可欠であるのにもかかわらず、野党は不同意としたのです。

「舛添要一厚生労働相は24日午前の記者会見で、国会同意人事の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関、中医協)委員1人が民主党など野党の反対で同意されず、再任できなかったことについて「民主党はどういう党内プロセスで決めているのか。国民に対する説明責任がある」と述べ、民主党に同意人事の検討過程を明らかにするよう求めた。そのうえで「国会同意人事を政争の具にすべきではない」と強調した。」(産経新聞)


舛添要一厚生労働相が述べるとおり、民主党は、前田雅英・首都大学東京教授の再任案を否決した点につき、合理的な根拠を国民に示すべき「説明責任」があるというべきです。



(2) 医療問題については、薬事行政に関してはもちろん行政運営が問題となりますが、医事法・民事法・刑事法の分野についても無関係ではありません。どれを重視するか意見の違いはあったとしても、これらすべての法分野についての法的知識を必要とすることはいうまでもありません。

前田雅英・首都大学東京教授の場合は、これらすべての法分野についての法的知識を備えているのですから、前田雅英・首都大学東京教授の再任案を否決するのであれば、前田雅英教授と同程度に、行政・医事法・民事法・刑事法に詳しい法律学者を選任することが相応しいといえます。

現在、前田雅英・首都大学東京教授と同程度に詳しい学者は、町野朔教授と樋口範雄教授くらいです。ですが、町野教授は刑事法専門であって、前田教授を不同意にしておいて町野教授に同意する根拠は乏しいですし、他方で、樋口教授は英米法専門であって、刑事法の分野は疎いというのが現状です。

こうした状況において野党は、前田雅英・首都大学東京教授の再任案を不同意としたのですから、必ず前田教授に匹敵するような適任者を必ず推薦するべきです。とても適任者を推薦できるとは思えませんが、適任者の見通しもつかないままで、合理的な根拠に欠けた不同意をすることは止めるべきです。



(3) 野党の国会議員といえども、国会議員はすべて、「全国民の代表者」(憲法43条1項)です。

ですから、国会議員である以上、義務教育で学ぶ権力分立制さえも理解していない、一部の医療関係者の感情論に流されることなく、「全国民の代表者」の利益と憲法を遵守する態度を明確にして、毅然とした態度を示すべき
です。野党の国会議員は、合理的な根拠に欠けた、馬鹿げた「不同意」は二度とするべきではありません。



<3月2日追記>

Yahooニュース(2月23日18時16分配信 医療介護CBニュース)も引用しておきます。

前田雅英氏、中医協委員再任成らず
2月23日18時16分配信 医療介護CBニュース

 参院は2月23日の本会議で、政府が提示した8機関16人の国会同意人事案を採決したが、中央社会保険医療協議会(中医協)委員の前田雅英・首都大学東京教授の再任案など3機関7人について、民主、共産、社民、国民新の野党4党などの反対多数で否決、不同意とした。

 衆院は20日に、自民、公明両党などの賛成多数で16人全員について同意していたが、国会同意人事は衆院の優越が認められていないため、前田氏ら7人の人事が白紙に戻ったことになる。
 このほか、不同意となったのは、人事院人事官、再就職等監視委員会の委員長と委員4人の人事案。

 厚生労働省によると、これまで中医協の公益委員が不同意となったことはない。前田氏の任期が切れる3月1日以降、このポストが1つ空白になる。

 前田氏再任案への反対について、民主党で不同意を提案した足立信也参院議員は、キャリアブレインの取材に対し、大きく2つの理由を挙げた。
 まず、前田氏が中医協公益委員就任後に開かれた会合について、43回中8回欠席しており、欠席回数が最も多かったとした。
 次に、前田氏は中医協公益委員就任後、厚労省が死因究明制度を創設するために設置した「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」座長にも就任したが、同検討会の進め方に問題があったと指摘。「原因究明と責任追及を連動させたこともあり、診療関連死に刑法の手法を持って来ようとしたことに問題がある。また、インターネット調査では、民主党案の方に多く支持を頂いており、厚労省案と評価が分かれているので、民主党案も同時に議論すべきという意見があるが、『地方説明会』と称して厚労省案に決まったかのように国内に周知したことも、座長の判断としてどうかと思う。議事録を見ると、座長として、決まった結論に導きたいという運営をしているように見えたことも問題」と話している。

 このほか、足立議員は前田氏に関する私見として、「中医協公益委員でありながら、多くの諮問機関に委員として名を連ね過ぎている。果たしてそれで公益性を保てるのだろうか。これが自分の中での最大の不同意の理由だと思う」と語った。


【関連記事】
・ 第四次試案か、廃案か―2008年重大ニュース(9)「医療安全調の創設」
・ 「大野事件判決は、判例とは言わない」―前田座長
・ 事故調検討会再開「信じられない」―小松秀樹氏
・ 医療安全調、捜査機関への通知めぐり両論

最終更新:2月23日18時16分」


この記事では、今までの新聞報道とは異なる根拠によって、不同意としたことになっています。

まず、「43回中8回欠席しており、欠席回数が最も多かった」ことが根拠の1つとなっています。しかし、誰もが他の業務を抱えながら出席するのですから、欠席回数の多少が根拠になるとは思えません。中医協の座長として支障をきたすほどの欠席数かどうかが、ポイントとなるはずですが、足立議員の発言からすると、そうしたニュアンスはうかがえません。

また、「前田氏は中医協公益委員就任後、厚労省が死因究明制度を創設するために設置した『診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会』座長にも就任したが、同検討会の進め方に問題があったことが、「不同意」の根拠の1つとなっています。しかし、中医協と「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」とは別個の組織なのですから、別の組織での発言でもって、中医協の委員の再任を否定するのは、合理性に欠けています

足立議員は、「中医協公益委員でありながら、多くの諮問機関に委員として名を連ね過ぎている。果たしてそれで公益性を保てるのだろうか。これが自分の中での最大の不同意の理由だと思う」と語っています。しかし、足立議員は、正気なのでしょうか? 前田教授のような医療問題に詳しい法律学者はもちろん、「多くの諮問機関に委員として名を連ね」ている人は数多くいます。多くの諮問機関に名を連ねているからといって、なぜ、公益性を欠くことになるのか、まったく意味不明です。こんなことで、「公益性を保てるのだろうか」と疑問を呈する足立議員は、あまりにも「どうかしている」とか思えません。


テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
もっと勉強してから書こうよ
もっと勉強してから書こうよ
2009/03/03 Tue 22:53:50
URL | あほか #NjvFAtTs[ 編集 ]
>あほかさん:2009/03/03 Tue 22:53:50
コメントありがとうございます。


>もっと勉強してから書こうよ
>もっと勉強してから書こうよ

名料理人の西音松さんは、「人間、死ぬまで勉強」と言っていたそうですね。人の生き方でもあるでしょうし、プロとしての気概を示したものであるのかもしれません。個人的には、非常に共感できる言葉です。

「第111回 西 健一郎 (2009年2月24日放送) | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/090224/index.html

団藤重光先生、平野龍一先生、佐伯千仭先生、江家義男先生、田宮裕先生、芦部信喜先生、水本浩先生、澤木敬郎先生――挙げればきりがないのですが――といった尊敬している諸先生方と比べれば、まだまだ勉強不足です。こうした諸先生方に少しでも追いつくべく、「人間、死ぬまで勉強」という意識で頑張っていきたいと思っています。

ですので、ぜひ、勉強不足の点をご指摘願いします。このエントリーは、法的な面から前田教授を不同意とした点を非難したものなのですから、もちろん、法律面のことでのご指摘であるはずです。

法的な面につき、「もっと勉強してから書こうよ」というのですから、あほかさんは、団藤重光先生、平野龍一先生、佐伯千仭先生、江家義男先生、田宮裕先生、芦部信喜先生、水本浩先生、澤木敬郎先生に匹敵するほどの深い学識をお持ちなのでしょう。ぜひ、その学識の一端をご披露願います。
2009/03/10 Tue 00:28:41
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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