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1.東京新聞平成21年1月29日付夕刊9面
「自治体 見て見ぬふり 宿泊所が生活保護費天引き
2009年1月29日 夕刊
民間事業者が運営する埼玉県の「無料低額宿泊所」が、入所者の生活保護費から利用料を天引きしていた問題で、同県川口市が昨年七月に元入所者から金銭管理の相談を受けながら、調査権限がある県に報告していなかったことが分かった。雇用情勢の悪化で生活困窮者を対象にした「貧困ビジネス」が広がる中、ホームレス支援団体からは行政の監督強化を求める声が上がっている。 (さいたま支局・鷲野史彦)
■甘い監督 法整備も遅れ
今回、県が指導に入った施設の元入所者は昨年七月、施設を出た後、金銭管理の問題を川口市に相談していた。だが、市は自ら調査したり、県へ報告するなどの対応をしていなかった。市担当者は「施設を出て自立しており、問題はないと思った」と話す。
このため同十月、特定非営利活動法人(NPO法人)「ほっとポット」(さいたま市)とともに元入所者が県に告発するまで、問題は表面化しなかった。同法人の藤田孝典代表理事(26)は「行政は金銭管理など宿泊所の問題点を知りながら、臭い物にふたをしてきた」と批判する。
同法人には過去一年間で、複数の宿泊所の入所者から生活保護費からの天引きや施設職員による暴力などの相談が約二十件あった。自治体に改善を申し入れても真剣に取り組んでくれなかったという。
藤田さんは「指導した結果、施設がつぶれてしまうような事態になると代わりに公的な施設が必要という議論になるからだろう」と指摘する。
宿泊所運営の透明性を保つため、都道府県などには立ち入り調査権がある。だが、全国最多の施設がある東京都の調査は三年に一回程度、神奈川県は所管の施設を過去に調査したことはなかった。埼玉県は毎年行ってきたが、施設職員からの聞き取り調査にすぎなかった。
千葉市では昨年、宿泊所を運営する建設会社の社長ら八人が社員を住まわせ、生活保護費を詐取したとして逮捕された。同市の担当者は「外部の情報提供で初めて不正が分かった」と事業者側への聞き取りだけでは不十分なことを認める。
宿泊所は本来、入所者が自立するまで数カ月程度の「通過施設」だが、実際はアルコール依存症などを抱え、入所が五年以上続く人もいる。昨年四月の埼玉県の調査では、入所者の平均年齢は六〇・一歳で、平均入所期間は二年六カ月。施設の位置付けもあいまいになっている。
藤田さんは「入所者が暴力などを訴えられる外部委員会をつくったり、病状に対処できる専門家の配置を義務付けるような法整備をすべきだ」と訴える。神奈川県、千葉市なども現行の施設基準に問題点があるとして、施設や運営基準の法整備などを国に要望している。」
「首都圏の無料低額宿泊所の施設数と入居者数
東京――施設数:169、入居者数4367
千葉――施設数:46、入居者数2110
埼玉――施設数:33、入居者数1821
神奈川――施設数:100、入居者数2997
*2008年6月厚生労働省調べ。」
(1) 埼玉県川口市が問題点を黙認していたのではないか、との指摘は、記事中では次の部分です。
「今回、県が指導に入った施設の元入所者は昨年七月、施設を出た後、金銭管理の問題を川口市に相談していた。だが、市は自ら調査したり、県へ報告するなどの対応をしていなかった。市担当者は「施設を出て自立しており、問題はないと思った」と話す。
このため同十月、特定非営利活動法人(NPO法人)「ほっとポット」(さいたま市)とともに元入所者が県に告発するまで、問題は表面化しなかった。同法人の藤田孝典代表理事(26)は「行政は金銭管理など宿泊所の問題点を知りながら、臭い物にふたをしてきた」と批判する。
同法人には過去一年間で、複数の宿泊所の入所者から生活保護費からの天引きや施設職員による暴力などの相談が約二十件あった。自治体に改善を申し入れても真剣に取り組んでくれなかったという。
藤田さんは「指導した結果、施設がつぶれてしまうような事態になると代わりに公的な施設が必要という議論になるからだろう」と指摘する。」(東京新聞)
元入所者は昨年七月、施設を出た後、「金銭管理の問題を川口市に相談」していたのですから、川口市の行政は知っていたいたにもかかわらず、「市は自ら調査したり、県へ報告するなどの対応をしていなかった」のです。そこで、「特定非営利活動法人(NPO法人)「ほっとポット」(さいたま市)とともに元入所者が県に告発」したため、埼玉県の行政は、業務怠慢であった川口市と異なり、きちんと調査して問題点があると判断して、今回の結果となったわけです。
なぜ、埼玉県川口市の行政が問題点を放置していたのかについては、藤田さんは「指導した結果、施設がつぶれてしまうような事態になると代わりに公的な施設が必要という議論になるからだろう」と指摘しています。要するに、「生活保護法の目的からして直接受給者に受けるべきなのに、川口市としては、そうした生活保護法の理念なんてどうでもよい」、また、「生活保護の費用は税金なのにその税金が違法な「貧困ビジネス」に食い物にされても、面倒なことには関わりたくないし、自分の金ではないからどうでもいい」という職務怠慢の現れだった、ということなのです。
東京新聞平成21年1月27日付夕刊の報道でも、「埼玉県川口市が入所者本人の意向を確認せず、宿泊所の事業者から出された生活保護費の口座振込依頼書を受理し、振り込みの手続きを取っていた」ことが判明していたのです。ですから、埼玉県川口市の行政は、生活保護費の受け渡しという生活保護者にとって最も大事な点においても、生活保護受給者が食い物にされるのを放置・黙認したことが判明していたのです。
今回、埼玉県川口市だけが注目を浴びることになりましたが、他にも多数の自治体で同じような職務怠慢がなされているのではないか、と推測できます。ですから、今回の件は、氷山の一角に過ぎないと思えるのです。
(2) この記事では、都道府県などには立ち入り調査権があっても、十分な実施もなく実効性がない現実を触れています。
「宿泊所運営の透明性を保つため、都道府県などには立ち入り調査権がある。だが、全国最多の施設がある東京都の調査は三年に一回程度、神奈川県は所管の施設を過去に調査したことはなかった。埼玉県は毎年行ってきたが、施設職員からの聞き取り調査にすぎなかった。
千葉市では昨年、宿泊所を運営する建設会社の社長ら八人が社員を住まわせ、生活保護費を詐取したとして逮捕された。同市の担当者は「外部の情報提供で初めて不正が分かった」と事業者側への聞き取りだけでは不十分なことを認める。」(東京新聞)
この記事では、「千葉市では昨年、宿泊所を運営する建設会社の社長ら八人が社員を住まわせ、生活保護費を詐取したとして逮捕された」と触れていますが、次のように報道されています。
イ:毎日新聞 2008年12月11日 地方版(千葉)
「生活保護費不正受給:千葉市、元理事長らに3億円請求 遅延損害金も /千葉
千葉市若葉区の低額宿泊所「みどりの会」を巡る生活保護費不正受給事件で、千葉市は10日、建設会社社長でNPO法人理事長だった黒川滋被告(56)=詐欺罪で公判中=ら6人と法人に対し、不正に受給した生活保護費3億7051万8404円と遅延損害金を支払うよう請求した。求めに応じない場合、損害賠償訴訟を起こす方針。
この事件では、黒川被告が社員を施設に入所させ、虚偽申請で市から生活保護費を詐取したとして、8人が詐欺容疑で逮捕され千葉地裁で公判中。市は9月、法人に事業停止命令を出し、県もNPO法人の認証を取り消した。
市は、04年6月〜08年8月に計128人が受給した生活保護費全額の返還と、年5%の遅延損害金を請求。遅延損害金は10日現在で約4300万円になるという。市地域保健福祉課は「組織的に不正な手続きで受給しており、申請自体が無効」と説明している。【中川聡子】
毎日新聞 2008年12月11日 地方版」
ロ:この「みどりの会」を巡る生活保護費不正受給事件は、「黒川被告が社員を施設に入所させ、虚偽申請で市から生活保護費を詐取したとして、8人が詐欺容疑で逮捕され千葉地裁で公判中」ですが、当然に詐欺罪(刑法246条)が成立します。調査が不十分であるために、こうした犯罪が生じてしまうのです。
(3) では、どうしたら「無料低額宿泊所」を運営する団体が、無断天引きするようなことを防止できるのでしょうか?
「藤田さんは「入所者が暴力などを訴えられる外部委員会をつくったり、病状に対処できる専門家の配置を義務付けるような法整備をすべきだ」と訴える。神奈川県、千葉市なども現行の施設基準に問題点があるとして、施設や運営基準の法整備などを国に要望している。」
まずは、生活保護は、受給者がアパートなどで暮らす「居宅保護」が原則なのですから、そうした原則を促進するような住宅政策と、無料低額宿泊所の利用を限定的にする仕組みづくりが必要です。例えば、家族をもたない単身者や、家族でない者と同居する者については公営住宅への入居資格が与えられないのですが、そうした公営住宅制度を改める必要があります。
そして、無断天引きといった無法や入居者への暴力が生じてもすぐに改善できるように「外部委員会」を行うのも一案であるように思います。(もっとも、外部委員会の場合は、その外部委員として妙な人物が入り込まないようにする人選も大事ですが。)
3.今回の民間業者の場合、2畳ほどの部屋であるのに、12万円の生活保護費のうち9万6千円を、施設運営者が巻き上げるのは、あまりにも高額であって、自分の住まいがない生活保護受給状態から抜け出すことは困難です。とても適正な施設利用料とは思えません。
住居があることは、人が人らしく生きていくための最低限の条件です。住居がないという人として最も弱い部分につけ込んで、食い物にするような「貧困ビジネス」が蔓延ること自体が、日本のセーフティーネットの貧弱さを物語っています。今後、今のままでは多数の正規・非正規雇用問わず失業者が増加することが予測されます。これ以上「貧困ビジネス」が蔓延らないよう、早急な対策が必要であるように思います。
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