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2009/01/28 [Wed] 19:17:43 » E d i t
生活保護受給者ら向けの「無料低額宿泊所」を運営する埼玉県内の民間事業者が、<1>生活保護費は本来、受給者自身が受け取るのが原則であるのに、生活保護を受けている入所者に保護費を直接渡さず、<2>入居者の同意を得ることなく、預金通帳やキャッシュカードを預かって施設利用料を天引きしていたことが、埼玉県の調査で分かりました。

「無料低額宿泊所」とは、自分で住宅を借り就職活動することが困難な生活困窮者に無料または低額で個室を提供し、自立を支援する施設のことです。

さらに、<3>生活保護費の振り込み依頼手続きは本人が行うのが原則であるのに、埼玉県川口市が入所者本人の意向を確認せず、宿泊所の事業者から出された生活保護費の口座振込依頼書を受理し、振り込みの手続きを取っていたことが、東京新聞の取材で分かったとのことです(後掲、東京新聞平成21年1月27日付夕刊、asahi.com参照)。

 

1.報道記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成21年1月27日付朝刊25面

生活保護費から天引き 自立支援宿泊所 通帳預かる 『知らぬ間に口座』
2009年1月27日 朝刊

 ホームレスの自立支援を目的に「無料低額宿泊所」を運営する民間事業者が、生活保護を受けている入所者に保護費を直接渡さず、預金通帳やキャッシュカードを預かって施設利用料を天引きしていたことが、埼玉県の調査で分かった。生活保護費は本来、受給者自身が受け取るのが原則で、県は事業者に対し、金銭管理をやめるとともに、二月末までに改善報告書を提出するように指導した。

 この事業者は、埼玉、東京、神奈川、千葉各都県で計十七施設を運営している。東京新聞の取材に「応じられない」としている。

 県によると、事業者の金銭管理は、埼玉県内の三施設で、入所者計約三百人のほとんどに対して行われていた。毎月の保護費約十二万円のうち残金が三万円程度になってから本人にカードを渡していたという。事業者側は金銭管理を認め、「保護費をすぐに使い切ってしまう人もいるので、通帳やカードを預かっていた」などと説明したという。

 県の調査に、事業者側は「(金銭管理は)入所者の同意を得ていた」としているが、一部の入所者は同意を否定。「口座を自分で開設した覚えがない」と話す人もおり、県は本人の同意について「言い分が食い違い、同意があったかは判然としないが手続きに問題があった」としている。

 元入所者で同県川口市の六十代男性が昨年十月、「身に覚えがないのに銀行口座を勝手に開設され、利用料を徴収された」として、県に告発。県がこの事業者を含む十事業者が運営する県内二十施設を調査していた。

 また、この事業者ら三事業者の四施設で入所者を車で役所に連れて行き、窓口で生活保護費を受け取った直後に利用料を徴収するなどしていたという。

 県はこの徴収方法についても三事業者に改善指導した。」


◆告発男性『行き場ない人 文句言えない』

 「勝手に自動送金をするなんて、泥棒と同じ。弱者を食い物にする貧困ビジネスだ」。「無料低額宿泊所」に昨夏まで入所し、実態を埼玉県に告発した六十代の男性は、憤りをあらわにした。

 男性は二年前の春、事業に失敗してマンションを退去し公園で寝泊まりするように。数カ月で貯金も尽き川口市福祉課を訪ねると、複数の無料低額宿泊所を紹介された。今回指導を受けた事業者の施設に入所、職探しを始めた。

 男性によると、この施設では三度の食事は出るが、部屋は六畳程度の個室をベニヤ板で半分に区切ったスペースしかなく、トイレ、風呂は共同だ。

 当初は市役所で保護費を受け取った後、九万数千円の施設利用料を支払っていた。数カ月すると施設職員から「キャッシュカードの使い方は分かるか?」と聞かれ、その後に保護費は口座振替になった。振替前日の毎月四日になると、作った覚えのない自分名義のキャッシュカードを渡された。五日に現金を引き出そうとすると、残金は約三万円しかなかった。カードは残金を引き出すたびに返すよう求められた。

 保護費を受給した途端に酒やギャンブルなどに使い切ってしまう人も中にはいるが、ある自治体職員は「金銭管理するにしても、本人の同意は最低限必要」と指摘する。

 男性が後に、ほかの入所者に聞くと「キャッシュカードの暗証番号が自分と同じだった」という。

 疑問を感じた男性はさいたま市のホームレス支援団体に相談し、アパートに転居した。「施設に残っている人は、ほかに行き場がないから声を上げることができないのだろう」と話した。 (さいたま支局・鷲野史彦)」


【無料低額宿泊所】 自分で住宅を借り就職活動することが困難な生活困窮者に無料または低額で個室を提供し、自立を支援する施設。社会福祉法の第二種事業に位置付けられ、都道府県などへの届け出だけで、個人でも開設できる。施設運営の法的基準はなく都道府県などのガイドラインで、居室の広さなどが定められている。厚生労働省などによると、昨年6月時点で全国で415施設あり入所者は12940人。」




(2) 東京新聞平成21年1月27日付夕刊9面

川口市、本人に確認せず 生活保護費天引き 振り込み依頼 事業者の書類うのみ
2009年1月27日 夕刊

 民間事業者が運営する埼玉県の「無料低額宿泊所」が生活保護費を直接入所者に渡さず、利用料を天引きしていた問題で、同県川口市が入所者本人の意向を確認せず、宿泊所の事業者から出された生活保護費の口座振込依頼書を受理し、振り込みの手続きを取っていたことが東京新聞の取材で分かった。

 生活保護費の振り込み依頼手続きは本人が行うのが原則。県は原則として入所者の金銭管理をしないよう事業者に指導している。しかし、川口市は事業者からの提出書類をうのみにして生活保護費を振り込んでおり、自治体側の手続きが結果的に事業者側に金銭管理をさせる形となった。

 毎月の生活保護費の支給は、受給者本人が福祉事務所の窓口で現金で受け取るか、銀行口座や受給者の氏名、住所などを記載した振込依頼書を出して銀行振り込みにすることができる。

 川口市の場合、保護費を渡しても「もらっていない」などと訴えるトラブルを避けるため、約四千二百人の受給者のうち、三千四百人が振り込み手続きを取っている。

 この事業者の職員が窓口で「本人が所用で来ることができない」などと説明すると、市側は委任状を提出させるなど、本人の意思を確認する作業をまったくしないまま、依頼を受理して口座振替に切り替えていた。

 この事業者以外の事業者からの振り込み依頼も同様に受理したこともあったという。

 川口市は、県と昨年十二月にこの事業者の施設の調査に訪れ、利用料天引きなどの金銭管理の実態を確認した。市は「本人の意思確認をしておらず問題があった。今後は本人の申請しか振り込み手続きを行わないように改める」としている。

 この事業者が運営する施設の入所者には、川口市以外の福祉事務所からの生活保護受給者もおり、他市も同様に事業者の申請を受け付けていた可能性があるが、県の調査ではいずれも「本人からの申請しか受け付けていない」と説明があった。県は今回の問題を受け、福祉事務所に入所者本人の意思確認をするなど、金銭管理への聞き取りの強化を通知した。」



(3) 毎日新聞平成21年1月27日付夕刊8面

無料低額宿泊所:無断で宿泊料天引き 通帳、カード預かり--埼玉

 ◇生活保護受給者ら向け施設

 生活保護受給者ら向けの「無料低額宿泊所」を運営する埼玉県内の民間事業者が、入居者の同意なしに預金通帳やキャッシュカードを預かり利用料を天引きしていたことが27日、分かった。県は「同意なく預かるべきではない」として、2月末までに改善報告書を提出するよう指導した。

 県社会福祉課が昨年11月以降、管轄する県内20施設を調査。この事業者が運営する3施設で預金通帳を預かるなどしていたことが分かった。宿泊所は都道府県や政令市などへの届け出施設で、民間事業者や個人も設置できるが、設備や運営に基準がなく、行政指導も拘束力が弱い。

 県は、この事業者が運営する宿泊所に入所する60代の男性から相談を受けて実態を知り、厚生労働省と相談して独自の指導方針を作成。事業者が入居者の金銭を管理する場合、(1)入居者からの依頼書が必要(2)福祉事務所に報告する--などを定め、各施設に通知したうえで調査した。

 これとは別に、入居者が受け取った生活保護費全額を、いったん事業者に手渡しさせた上で、事業者が利用料を抜いて残額を返していたケースが3事業者4施設であり、県は改善を求めている。【稲田佳代】

毎日新聞 2009年1月27日 東京夕刊」



(4) 毎日新聞 2009年1月28日 地方版〔埼玉〕

無料低額宿泊所:生活保護費天引き、利用者の相談相次ぐ 県、法的整備が必要 /埼玉

 県内で「無料低額宿泊所」を運営する民間事業者が、生活保護を受給する入居者の同意無しに預金通帳などを預かり利用料を天引きしていた問題で、NPO法人や市役所には利用者からの相談が相次いでいた。

 さいたま市内のNPO法人によると、昨年5月ごろ、この事業者が運営する県南部の宿泊所に入所していた60代の男性が「業者に生活保護費のほとんどを取られる」と相談に来た。入所後、男性が承諾していないにもかかわらず業者の意向で生活保護費の受け取りが口座振り込みになり、保護費を管理されるようになったという。

 別の60代の男性も「振り込まれた生活保護費から利用料を勝手に自動振替されている」と川口市役所に訴えていた。同市福祉課によると、事業者が天引きを認めたため、県とともに昨年12月中旬に改善指導した。同課によると同様の相談が複数あり、中には毎月の保護費全額を事業者に自動送金されていたケースもあった。

 県社会福祉課は「望ましくないことだが、運営基準などがなく指導が難しい。法的整備が必要だ」と話している。【山崎征克、和田憲二】

毎日新聞 2009年1月28日 地方版」



(5) YOMIURI ONLINE:埼玉(2009年1月28日)

生活保護から無断天引き  宿泊所業者、県が改善指導

 生活保護者ら向けの「無料低額宿泊所」を運営する県内の事業者が、入所者の同意を得ずに預金通帳やキャッシュカードを預かり、施設利用料を天引きしていたとして、県が事業者に改善指導していたことがわかった。

 県は、この事業者の施設に入所していた男性からの情報をもとに、昨年末から県内20施設の調査を実施。この事業者が運営する3施設で、入所者の口座を管理し、利用料を天引きしていたことが判明した。

 県の聞き取り調査では、天引きを同意していた入所者がいる一方、「口座を作った記憶がない」と話している人もいた。事業者側は通帳などを預かっていたことを認めた上で、「生活保護費を1日2日で使い切ってしまう人もいるので預かっていた」などと説明しているという。

 調査では、入所者が受け取った生活保護費全額を事業者がいったん預かり、利用料を差し引いていたケースも3事業者4施設であった。県は今月19日付で、これらの事業者に対し、2月末までに改善報告書を提出するよう通知した。

 宿泊所に関しては、運営に関する明確な基準がなく、県が年1回実施している立ち入り調査でも検査項目は設備や衛生管理だけで、金の管理は含まれていない。県は調査に先立って昨年11月、各事業者に「本人の承諾なく通帳を預かるのは財産権の侵害にあたる」との通知を初めて出した。

(2009年1月28日 読売新聞)」



(6) asahi.com:マイタウン・埼玉(2009年01月28日)

宿泊所利用料 生活保護費から天引き
2009年01月28日

◇ホームレスら支援宿泊所 明確な同意えずに

 県内などでホームレスなどの自立支援を図る無料低額宿泊所を運営している民間事業者が、入所者から文書による明確な同意を得ずに、預金口座に振り込まれた生活保護費の一部を施設の利用料として天引きしていたことが、県の調査で分かった。業者は預金通帳やキャッシュカードを管理しており、県は「本人の承諾なく通帳などを預かるのは財産権の侵害にあたる」などとして、事業者に改善指導を行ったという。

◇県、業者に改善指導

 県によると、08年10月に県内の無料低額宿泊所の元利用者から「同意していないのに通帳を預かられ、利用料が引かれている」と連絡があった。同宿泊所の運営については法的な基準がないため、県では連絡を受けて厚生労働省に相談。宿泊所が入所者の金銭管理をする場合は、文書による契約書や入所者からの依頼書を得る▽福祉事務所が管理を承知している――など独自に四つの条件を定めた。

 その後、県が所管する県内の同宿泊所20施設を調査したところ、同じ事業者が運営する3施設で、預金通帳とキャッシュカードを預かり、利用料を引き落としていたことがわかった。事業者は県に「入所者の同意は得た」と説明したが、地元の福祉事務所が一部の入所者に聞き取りをしたところ、「同意した記憶がない」と話す人もいたという。

 また、この事業者を含む3事業者が運営する4施設で、入所者が現金で受給した生活保護費全額を事業者が預かり、利用料を引いた残りを入所者に返していたことも判明。県は1月、各施設に改善指導を行ったという。

 無料低額宿泊所は社会福祉法に基づき、民間事業者が収入のないホームレスらに一時的に住居を与えて生活や就労を支援する。開設者に制限はなく、開設から1カ月以内に都道府県知事(政令指定市、中核市は市長)に届けを出すだけで運営できる。

 法的な運営基準はなく、国や県が設備や生活指導などのガイドラインを設けている。県は「施設整備や人的要件、運営の仕方について法的整備が必要だ」として、国に法整備を申し入れている。

 また、川口市が入所者本人の意向を直接確認せず、宿泊所の事業者から提出された生活保護費の口座振り込み依頼書で、振り込みの手続きをしていたこともわかった。事業所職員が「本人は所用で来られない」と依頼書を持参すると、そのまま手続きをしていた。同市福祉課は「本人確認をしなかったのはまれなケース。今後は本人からの申請で手続きをする」としている。

◇「自立の妨げにも」弁護士が指摘

 生活保護の問題に詳しい猪股正弁護士は、無料低額宿泊所の問題点として「事業者は利益を追求するし、行政もケースワーカーの負担が減って『必要悪』という声もある。入所者の生活保護費の多くを利用料として奪い、自立を妨げている面もある」と指摘する。「生活保護は、受給者がアパートなどで暮らす『居宅保護』が原則。住宅政策の確立や無料低額宿泊所の利用を限定的にする仕組みづくりが必要」と話している。」




2.今回の事件については、最初に指摘したように、3つの問題点があります。<1><2>は民間事業者について、<3>が埼玉県川口市についての問題です。いずれも生活保護受給者の同意なく、受給者の財産である生活保護費を、他者が勝手に処分(振り込み・管理・引き出し)を行っている点で共通しています。

<1>「無料低額宿泊所」を運営する埼玉県内の民間事業者が、生活保護費は本来、受給者自身が受け取るのが原則であるのに、生活保護を受けている入所者に保護費を直接渡さなかったこと
<2>「無料低額宿泊所」を運営する埼玉県内の民間事業者が、入居者の同意を得ることなく、預金通帳やキャッシュカードを預かって施設利用料を天引きしていたこと
<3>生活保護費の振り込み依頼手続きは本人が行うのが原則であるのに、埼玉県川口市が入所者本人の意向を確認せず、宿泊所の事業者から出された生活保護費の口座振込依頼書を受理し、振り込みの手続きを取っていたこと



(1) 業者は入居者の預金通帳やキャッシュカードを管理していたのですが、朝日新聞によると、埼玉県は「本人の承諾なく通帳などを預かるのは財産権の侵害にあたる」などとして、事業者に改善指導を行いました。

「本人の承諾なく通帳などを預かるのは財産権の侵害にあたる」というのは、本人の承諾なし、すなわち、本人の意思に反して預金通帳と言う「財物」を預かったのですから、窃盗罪(刑法235条)に該当します。もし、この民間業者が入居者に対して「預金通帳を預かる権限がある」と述べていたとしたら、法律上、預かることを認める法的権限が付与されているわけではない以上、詐欺行為により預金通帳を預かったことになるので、詐欺罪(刑法246条)に該当します。

このように、「財産権の侵害にあたる」という意味は、犯罪行為となることを意味しているわけです。ですから、埼玉県が事業者に改善指導をするのは、当然のことといえます。



(2) 生活保護法によると、生活保護費は、「世帯主又はこれに準ずる者に対して交付する」ことになっています。

「生活保護法第12条(生活扶助) 生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
1.衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの
2.移送

生活保護法第14条(住宅扶助) 住宅扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
1.住居
2.補修その他住宅の維持のために必要なもの

生活保護法第31条 生活扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 生活扶助のための保護金品は、1月分以内を限度として前渡するものとする。但し、これによりがたいときは、1月分をこえて前渡することができる。3 居宅において生活扶助を行う場合の保護金品は、世帯単位に計算し、世帯主又はこれに準ずる者に対して交付するものとする。但し、これによりがたいときは、被保護者に対して個〃に交付することができる。
(以下、省略)

生活保護法第33条(住宅扶助の方法) 住宅扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 住宅扶助のうち、住居の現物給付は、宿所提供施設を利用させ、又は宿所提供施設にこれを委託して行うものとする。
3 第30条第2項の規定は、前項の場合に準用する。
4 住宅扶助のための保護金品は、世帯主又はこれに準ずる者に対して交付するものとする。」


生活保護法は、「日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的」(1条)としているので、確実にその目的を達成するため、(また、確実に支給金が入る以上、他者に食い物にされる危険が大きいため)、受給者に直接渡すことが原則となるわけです。

ですから、「無料低額宿泊所」を運営する埼玉県内の民間事業者が、<1>生活保護を受けている入所者に保護費を直接渡さなかったり、<2>入居者の同意を得ることなく、預金通帳やキャッシュカードを預かって施設利用料を天引きしていたことは、生活保護法上、問題があるのです。



(3) もう1つ問題は、施設利用料として適正な金額なのかどうかです。

「男性によると、この施設では三度の食事は出るが、部屋は六畳程度の個室をベニヤ板で半分に区切ったスペースしかなく、トイレ、風呂は共同だ。

 当初は市役所で保護費を受け取った後、九万数千円の施設利用料を支払っていた。数カ月すると施設職員から「キャッシュカードの使い方は分かるか?」と聞かれ、その後に保護費は口座振替になった。振替前日の毎月四日になると、作った覚えのない自分名義のキャッシュカードを渡された。五日に現金を引き出そうとすると、残金は約三万円しかなかった。カードは残金を引き出すたびに返すよう求められた。」(東京新聞)


失業者や貧困者が増加して低所得者が増えていることから、「貧困ビジネス」が生じることになりました。施設の設置場所の利便さにもよりますが、「9万数千円」の施設利用料で残金は3万円しかないのですから、入所者の生活保護費の多くを利用料として取っているのですから、「自立を妨げている面もある」(=生活保護法の目的に反する)と同時に、施設利用料としても適正ではないように思えます。もし、施設利用料として適正な金額でないとすれば、入居者は不適切な部分について返還請求が可能ですし、これも違法な「貧困ビジネス」の一例となります。

敷金や礼金、仲介手数料なしでマンションやアパートが借りられる「ゼロゼロ物件」(不動産会社「スマイルサービス」(東京都新宿区)が運営するもの)では、家賃の支払いが1日でも遅れると、家賃約6万円に「違約金」などの名目で約2万円が上積みされるなど居住者から違約金を徴収したり、荷物を撤去したりするといった事態が生じています(現在、裁判中)。こうした借地借家法などに反する違法行為は、低所得者を食い物にした、いわゆる「貧困ビジネス」の一例です。

こうした違法な「貧困ビジネス」に対しては、監視と規制が必要であり、「貧困ビジネス」を生じさせる下地をなくすように、国は実効的な景気経済対策をする必要があります。



(4) こうした違法な「貧困ビジネス」が跋扈するのは、今回の例で言えば、こうした業務に参入する民間業者に関して規制が緩すぎる点を挙げることができます。

 「宿泊所に関しては、運営に関する明確な基準がなく、県が年1回実施している立ち入り調査でも検査項目は設備や衛生管理だけで、金の管理は含まれていない。県は調査に先立って昨年11月、各事業者に「本人の承諾なく通帳を預かるのは財産権の侵害にあたる」との通知を初めて出した。」(読売新聞)

 「無料低額宿泊所は社会福祉法に基づき、民間事業者が収入のないホームレスらに一時的に住居を与えて生活や就労を支援する。開設者に制限はなく、開設から1カ月以内に都道府県知事(政令指定市、中核市は市長)に届けを出すだけで運営できる。
 法的な運営基準はなく、国や県が設備や生活指導などのガイドラインを設けている。県は「施設整備や人的要件、運営の仕方について法的整備が必要だ」として、国に法整備を申し入れている。(中略)

◇「自立の妨げにも」弁護士が指摘

 生活保護の問題に詳しい猪股正弁護士は、無料低額宿泊所の問題点として「事業者は利益を追求するし、行政もケースワーカーの負担が減って『必要悪』という声もある。入所者の生活保護費の多くを利用料として奪い、自立を妨げている面もある」と指摘する。「生活保護は、受給者がアパートなどで暮らす『居宅保護』が原則。住宅政策の確立や無料低額宿泊所の利用を限定的にする仕組みづくりが必要」と話している。」(asahi.com)


このように、規制が緩すぎるために、違法行為をも厭わない民間業者が入り込むのです。また、生活保護は、受給者がアパートなどで暮らす「居宅保護」が原則であるのに、住宅政策の確立(例えば、公営住宅の活用・入居制限の緩和など)や無料低額宿泊所の利用を限定的にする仕組みづくりが不十分である点でも、「無料低額宿泊所」業務に関して違法行為をも厭わない民間業者が入り込みやすいといえます。




3.今後、多数の低所得者が増加する以上、多数の「貧困ビジネス」が生じてくる可能性があります。生活保護法の目的からすれば、本来的には、公的機関の関与が強く及ぶべきことが適切といえます。そして、低所得者に向けた施設に民間業者が参入する場合には、低所得者が食い物にされないような法規制や政策が必要であるように思います。

今回、埼玉、東京、神奈川、千葉各都県で計十七施設を運営している民間業者の行動が問題視されたわけです。こうした低所得者相手に運営している民間業者・NPO法人は数多くありますが、すべてが善意に基づいて適法・適正に運営しているわけではなく、悪徳業者・悪徳NPO法人である可能性が十分にあるのです。暴力団関係者が運営していることさえもあります。

低所得者側は、低所得者相手に運営している民間業者・NPO法人から食い物にされないよう、気をつける必要があります。また、低所得者相手に運営している民間業者・NPO法人を他の人に紹介する側にとっても、むやみに紹介したりせずに、よく吟味する必要があるのです。


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コメント
この記事へのコメント
昨年11月4日放送のNHKクローズアップ現代
ご覧になったかもしれませんが、この件は昨年11月4日放送のNHKクローズアップ現代(ゲスト湯浅誠)で克明にレポートされていました(番組後半16分以降)。
クローズアップ現代2654-08年11月04日(火)援助か搾取か”貧困ビジネス”
http://montagekijyo.blogspot.com/2009/01/blog-post_3980.html

わたしには、行政の側も、あたかも「必要悪」のごとく、こうした業者の振る舞いに見て見ぬふりをしてきたように思えてなりません。行政担当者にとって、手っ取り早い「やっかい払い」となりますから。
報道ではあたかも「県が業者を指導する」という体裁をとっていますが、現実には、市と業者は長年に渡る共犯関係にあったのではないでしょうか?

山本譲司著『累犯障害』に出てくる暴力団組織や売春組織にリクルートされていく累犯知的障害の問題ととても似た構図を見ました。
「結局、それで世の中回ってるんだからいいじゃないか!」的な殺伐とした社会の風景です。

それにしても今回のケースは、さいたまのNPO 「ほっとポット」の告発とクローズアップ現代のスクープ報道(川口市役所に業者にぞろぞろと引率されて行く生活保護受給者とその後お金を引き出す映像は生々しい)で埼玉県が動いた可能性が高いと思うのですが、そのことを報じる新聞はないのですね。
2009/01/28 Wed 20:26:50
URL | fotosintesi #Z4XagFYo[ 編集 ]
>fotosintesiさん:2009/01/28 Wed 20:26:50
コメントありがとうございます。
今回、これを機会にリンクさせて頂きました。これからも宜しくお願いします。


>ご覧になったかもしれませんが、この件は昨年11月4日放送のNHKクローズアップ現代(ゲスト湯浅誠)で克明にレポートされていました(番組後半16分以降)。
クローズアップ現代2654-08年11月04日(火)援助か搾取か”貧困ビジネス”
http://montagekijyo.blogspot.com/2009/01/blog-post_3980.html

情報ありがとうございます。昨年11月の時点ですでに報道されていたわけですね。恥ずかしながら、見ていませんでしたので、早速拝見させていただきました。


>わたしには、行政の側も、あたかも「必要悪」のごとく、こうした業者の振る舞いに見て見ぬふりをしてきたように思えてなりません。行政担当者にとって、手っ取り早い「やっかい払い」となりますから。
>報道ではあたかも「県が業者を指導する」という体裁をとっていますが、現実には、市と業者は長年に渡る共犯関係にあったのではないでしょうか?

「共犯関係」とまで評価してよいかは分かりませんが、「業者の振る舞いに見て見ぬふりをしてきた」という理解は、まさに正しい理解であるように思います。同じような趣旨の内容で記事になっています。

「無料低額宿泊所問題:自治体(川口市)は問題点を「見て見ぬふり」のまま放置……。」(2009/01/29 [Thu] 23:25:39)
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-1696.html


>今回のケースは、さいたまのNPO 「ほっとポット」の告発とクローズアップ現代のスクープ報道(川口市役所に業者にぞろぞろと引率されて行く生活保護受給者とその後お金を引き出す映像は生々しい)で埼玉県が動いた可能性が高いと思うのですが、そのことを報じる新聞はないのですね。

「無料低額宿泊所問題:自治体(川口市)は問題点を「見て見ぬふり」のまま放置……。」(2009/01/29 [Thu] 23:25:39)のエントリーで引用した東京新聞平成21年1月29日付夕刊の記事では、さいたまのNPO 「ほっとポット」の告発によって、埼玉県が動いたと推測できる点だけは出ていました。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009012902000228.html

問題なのは、(NHKの「クローズアップ現代」と)東京新聞だけしか詳しく報道していないことです。他の報道機関が報じないことは、こうした住居に関する「貧困ビジネス」への危機感が乏しいように思えるからです。多数の報道機関が監視の目を向けないということは、今後も住居に関する「貧困ビジネス」が蔓延ることになってしまいます。
2009/01/30 Fri 00:38:33
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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2011/02/10 Thu 22:14:21
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?????Ĥ?ξ?
2009/02/05(木) 13:14:55 | ????
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