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2009/01/26 [Mon] 00:04:04 » E d i t
海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、横浜地方海難審判所(織戸孝治審判長)は平成21年1月22日の裁決で、事故原因についてあたごの監視不十分が主因と認定、刑事裁判の被告に当たる「指定海難関係人」5者のうち、所属部隊の第3護衛隊(旧第63護衛隊、京都府舞鶴市)に対し、安全運航の指導徹底を求める勧告を言い渡しました(共同通信)。



1.報道記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成21年1月23日付朝刊1面(12版)

イージス艦衝突 『あたご主因』認定
『監視不十分』海難審裁決 海自に勧告
2009年1月23日 朝刊

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、前艦長の船渡健一等海佐(53)ら四人と、所属部隊の第三護衛隊(京都府舞鶴市)を指定海難関係人とした海難審判の裁決が二十二日、横浜地方海難審判所であり、織戸孝治審判長は、あたごの動静監視不十分が事故の主因と認定、第三護衛隊に安全航行の徹底を求める勧告を言い渡した。

 海自組織への勧告は、一九八八年に死者三十人を出した潜水艦「なだしお」の衝突事故をめぐる海難審判の一審以来、二例目。裁決は「艦橋とCIC(戦闘指揮所)の連絡・報告態勢や、見張り態勢を十分に構築していなかったことが主因」と指摘し、海自の組織としての責任を厳しく批判した。

 船渡一佐のほか、衝突時の当直士官だった前水雷長長岩友久三佐(35)と、衝突前の当直士官だった前航海長後潟桂太郎三佐(36)、前船務長安宅辰人三佐(44)については事故への関与は認めたが、勧告は見送った。

 織戸審判長は、あたごと清徳丸は衝突七分前に、衝突の危険性が具体的に生じたと指摘。清徳丸を右に見るあたご側に回避義務があったとした。衝突時の当直士官だった長岩三佐の見張り不十分が事故の一因と認めたが、後潟三佐の引き継ぎミスについては原因としなかった。

 第三護衛隊に対しては「複合的な背景要因で事故が発生した。総合的に施策を整備し、実効ある取り組みをしなければ再発防止は図れない」と求めた。

 審判では、理事官側が「あたご側の監視不十分が事故の主因」として海自側の五者すべてへの勧告を請求していた。海自側は「清徳丸の衝突直前の右転が主因」と主張していたが、織戸審判長は「合理性に欠ける」と一蹴(いっしゅう)。また、清徳丸が衝突回避の協力動作を取らなかったことも事故の一因とした。

 【イージス艦衝突事故】 昨年2月19日未明、千葉県・野島崎沖で、海上自衛隊のイージス艦「あたご」と、マグロはえ縄漁船「清徳丸」が衝突。行方不明になった船長吉清治夫(きちせい・はるお)さん=当時(58)=と、長男哲大(てつひろ)さん=同(23)=の死亡が5月に認定された。第3管区海上保安本部(横浜市)は、業務上過失致死容疑などで、衝突前後の当直士官2人を書類送検した。横浜地検は今回の裁決を踏まえ、刑事処分を決定するとみられる。」




(2) 朝日新聞平成21年1月23日付朝刊(14版)

衝突、あたごの不注意 海難審判裁決 海自へ教育勧告

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸が昨年2月、千葉県房総半島沖で衝突し、漁船の吉清治夫さん(当時58)と長男哲大さん(同23)が死亡した事故の海難審判の裁決が22日、横浜地方海難審判所であった。織戸孝治審判長は事故の主因を「あたご側の監視不十分」と認定、あたごが所属する海上自衛隊第3護衛隊(旧第63護衛隊、京都府舞鶴市)に安全教育を徹底するよう勧告した。

 あたご側は二審請求ができない。刑事裁判の検察官にあたる理事官側が7日以内に二審請求せず裁決が確定すれば、自衛隊組織への初の勧告発令となる。

 被告にあたる指定海難関係人は、第3護衛隊のほか、衝突前の当直士官後瀉(うしろがた)桂太郎3佐(36)▽衝突時の当直士官長岩友久3佐(35)▽艦長だった舩渡(ふなと)健1佐(53)▽当直士官を補佐する戦闘指揮所(CIC)の責任者だった安宅(あたか)辰人3佐(44)の5者。

 裁決は、第3護衛隊に対し「艦橋とCICの連携体制、見張り体制を十分に構築していなかったことが事故の発生原因」として勧告した。一方、事故時の当直士官だった長岩3佐は監視不十分が原因になったとの指摘にとどめ、舩渡1佐ら3者については事故の発生に至る過程で関与した事実はあるが、「事故との相当因果関係がない」とし、4者への勧告は見送った。

 裁決では、事故の7分近く前の昨年2月19日午前4時ごろ、あたごと清徳丸の距離が2.2カイリ(約4キロ)になった時点で、衝突の恐れがある「見合い関係」が生じたと認定し、海の交通ルールである海上衝突予防法の「横切り航法」が適用され、清徳丸を右前にみていたあたご側に衝突回避の義務があったと指摘。あたご側の監視不十分が事故の主因と結論づけた。清徳丸が警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因とした。

 あたご側は「清徳丸は理事官の主張よりも南東に位置し、そのまま直進すればあたごの艦尾を通過した」と、主因は清徳丸の右旋回にあると主張していたが、裁決は「合理性に欠ける」と退けた。

 当直士官2人は、業務上過失致死と業務上往来危険の疑いで横浜地検に書類送検されている。海難事故は原因究明が困難として、刑事処分は海難審判の結果を参考にするのが慣例。地検はこれまで2人の起訴を視野に捜査を進めてきた。裁決から、長岩3佐が刑事責任を問われる可能性が強まったが、後瀉3佐は事故原因との直接の因果関係がないとされたため、刑事責任をどう判断するかが焦点となる。(長野佑介、杉村健)

     ◇

 赤星慶治・海上幕僚長は、「裁決を重く受け止め、二度とこのような事故を発生させることのないよう、勧告の内容も踏まえ、これまで以上に再発防止に万全を期していきたい」とのコメントを出した。」



(3) 東京新聞平成21年1月23日付朝刊26面(12版)

「船乗りの基本」軽視 あたご側は対策徹底を

 イージス艦あたごの所属部隊に再発防止策の徹底を求める勧告を出した22日の裁決。海難審判の勧告は、改善が図られたと判断された場合、見送られるのが通例で、海自側はさらなる対策が必要となった。

 海自は事故後、艦内での情報共有やレーダーの使用基準の見直し、航行指針の徹底教育など、再発防止策を実施してきた。

 しかし、審判所はこれらの再発防止策を不十分と判断した。背景には、あたごの事故以降も、各地で自衛艦の事故が相次いでいる状況がある。今年に入っても、鹿児島湾内で海自潜水艦が漁船と接触する事故が起きており、組織全体で対策が効果を上げているとは言い難い。

 審判の事故原因や再発防止をめぐる質疑の中で、「衝突の危険は感じなかった」などと繰り返すあたご側に、審判官が「ばかなことを言っちゃいけない」「常識的な説明をしてほしい」と声を荒らげる場面もあった。

 また、指定海難関係人「第3護衛隊」の末次富美雄前司令は「航行指針通りでなくても、即命令違反とはならない」と答えるなど、「船乗りの基本」を軽んじるような姿勢が浮き彫りとなった。

 審判で、あたご側は「再発防止策を実施している」と繰り返したが、裁決は「総合的に実効ある取り組みを行わなければ、再発防止は図れない」と厳しく指摘した。

 裁決後、末次前司令は「これまでチェック態勢の強化を図ってきたが、組織として足りないところがあれば、防衛省として取り組みを進めたい」と答えた。」



海幕長が遺族に謝罪

 イージス艦衝突事故をめぐり、横浜海難審判所が22日、あたごの所属する第3護衛隊に指導の徹底を図るよう勧告したことを受けて、赤星慶治海上幕僚長は同日、遺族に陳謝するとともに「裁決を重く受けとめ、再発防止に万全を期す」とのコメントを出した。増田好平事務次官も会見で「あってはならない事故。遺族に心からおわびする。再発防止に適切な対応をする」と述べた。

 裁決では、あたごの船渡健前艦長による清徳丸の右転が事故原因との主張が退けられたが、海幕広報室は「船渡前艦長が個人的な意見を述べたもの。海上自衛隊は関知していない」とした。」



(4) 東京新聞平成21年1月23日付朝刊27面(12版)

イージス艦衝突 裁決、海自の盾 破る

 「基本が励行されていない」。海上自衛隊のイージス艦「あたご」の衝突事故で、横浜地方海難審判所の22日の裁決は、海自の教育訓練の不備を批判し、再発防止を強く求めた。2人が犠牲になった事故から11ヶ月。前艦長の船渡健一等海佐(53)らは裁決に不満をのぞかせたが、漁船「清徳丸」の船長父子の遺族らは「2人は悪くなかった」と安堵(あんど)の涙を流した。

◆「兄、悪くなかった」 遺族涙、区切りついた

 指定海難関係人の前艦長船渡健一佐ら5人は、報道陣のフラッシュを浴びながら硬い表情で審判廷に入った。裁決が読み上げられる間、背筋を伸ばしじっと審判長を見詰めた。

 「組織への勧告だが、結果的にわれわれに対するものと思っている。厳粛に受け止めたい」

 裁決後に会見した船渡一佐は死亡が認定された清徳丸の吉清治夫さん=当時(58)、哲大さん=同(23)=父子に弔意を表し、再び操船業務に就かない意向を明らかにした。一方で「清徳丸の右転が原因だと今でも確信している」と裁決への不満をあらわにした。

 傍聴席では、船長父子の遺族らが厳しい視線を向けた。初めて傍聴した治夫さんの弟、美津男さん(57)は「兄は間違っていなかった。墓前で報告したい。ひとまずは安心した」と話した。治夫さんの長女俣木まどかさん(21)はハンカチを握り締めて傍聴。閉廷後に「2人が悪くなかったことが証明された。命がなくなって悔しいが、艦長を責めても(2人が)帰ってくるわけではない」と複雑な表情を見せた。

 清徳丸が所属した千葉県の新勝浦市漁協の外記(げき)栄太郎組合長(80)は「私たちが考えていたことは間違っていなかった。あたごは艦橋とCIC(戦闘指揮所)を合わせて20人もいた。まともな見張りをしていたら、衝突するはずはない」とあらためて海自を批判。「事故がなければ2人はこの時期、毎日マグロを積んで港に帰ってきたはず」と悔やんだ。

 僚船の「金平丸」の市原義次船長(55)は「納得のいく裁決だった。自分なりに区切りがついた」と涙を見せた。

【海難審判】 刑事責任の追及とは別に行われ、海難事故の再発防止が目的。昨年10月に海難審判法が改正され、海難審判庁は、海技免許取り消しなど懲戒処分を下す海難審判所と、原因調査を行う運輸安全委員会に改編された。今回の事故は、旧海難審判法で審判が行われ、刑事裁判の検察官にあたる旧横浜地方海難審判理事所の理事官が、海上自衛隊側5者を「指定海難関係人」に指定。審判官は裁決で指定海難関係人に対し、再発防止などを求める勧告を出すことができる。」


イージス艦衝突事故問題については、何度か触れています。

<1>「イージス艦と漁船衝突、マグロ漁父子行方不明~父子が生還することを祈る」(2008/02/19 [Tue] 23:59:39)

<2>「イージス艦衝突問題:防衛省4首脳、航海長をひそかに事情聴取~石破防衛相の辞任要求高まる」(2008/02/27 [Wed] 23:56:41)

<3>「イージス艦衝突事故問題:当直士官2人を書類送検~当直責任者の判断ミスが衝突の主因」(2008/06/25 [Wed] 22:50:16)



「裁決では、事故の7分近く前の昨年2月19日午前4時ごろ、あたごと清徳丸の距離が2.2カイリ(約4キロ)になった時点で、衝突の恐れがある「見合い関係」が生じたと認定し、海の交通ルールである海上衝突予防法の「横切り航法」が適用され、清徳丸を右前にみていたあたご側に衝突回避の義務があったと指摘。あたご側の監視不十分が事故の主因と結論づけた。」(朝日新聞)


事件当初からの報道記事のみならず、識者のコメントを読んでいるのであれば、横浜海難審判所が、海上衝突予防法により、事故原因についてあたごの監視不十分が主因と認定したことは、予想された結果だったといえます。



 
2.解説記事と識者のコメントを幾つか。

(1) 東京新聞平成21年1月23日付朝刊1面「解説」

安全教育軽視を指弾

 イージス艦あたごの衝突事故をめぐる海難審判の裁決は、1988年に30人が犠牲になった潜水艦なだしお事故の一審以来、2度目となる勧告を海上自衛隊の組織そのものに行った。

 前艦長ら個人への勧告を見送り、あたご所属部隊に絞ったのは、安全教育を軽んじた組織責任を明確にするためだ。なだしお事故で再発防止を誓ったはずの海自にとって、再び勧告された意味は重い。

 裁決は、衝突に至る過程で、見張りを徹底せず、レーダーの継続監視を怠るなど、あたご内部のずさんな航行実態を明らかにした。連鎖的なミスを防ぐ体制が築かれておらず、事故原因が、海自組織の「教育不足」にあると厳しく指弾した上で、「1人がミスしても相互にカバーし合う意識を持たなければならない」と指摘した。

 事故を反省し、自らの過失に向き合うことが再発防止への一歩となるはずだが、前艦長は裁決後も「大きな原因は漁船側にある」と発言するなど、その姿勢には疑問が残る。海自は、組織責任が問われた裁決の意味をいま一度考えるべきだろう。 (横浜支局・岸本拓也)」



(2) 朝日新聞平成21年1月23日付朝刊34面(14版)「解説」

人的ミス前提の防止体制を

 今回の事故発生について裁決は、あたごの各担当間の「緊密な連絡・報告態勢、見張り態勢に複合的な背景要因があった」と結論づけた。そのうえで「総合的に改善施策を整備し、実効ある取り組みをしなければ再発防止ははかれない」と述べた。

 実際に監視を怠った個人への勧告は見送り、教育・指導する立場の海上自衛隊第3護衛隊に勧告を出したのは、審判所が「人がミスやエラーに陥ることは避けられない」という前提に立ち、人的ミスが生じても危険な状況を回避できる体制作りをすることが、事故防止にとって重要だとの認識を示したものだ。

 88年の潜水艦「なだしお」と釣り船第1富士丸の衝突事故での横浜地方海難審判庁(当時)の裁決で海自側に勧告が出されたが、二審では改善措置が取られたとして勧告が見送られた。今回の勧告は「なだしお」事故後、 「対策済み」としていたにもかかわらず、今回の事故を招いたことへの海自に対する戒めとも読める。

 自衛隊の艦艇か一般の船かを問わず、安全は最も重視されるべきものだ。見張りや航法のルールは、どの船にも適用される海上衝突予防法に規定がある。

 海自には、謙虚に海の安全の基本に立ち返る姿勢が求められる。 (長野祐介、佐々木学)」



(3) 読売新聞平成21年1月23日付朝刊11面「解説」

◆イージス艦事故裁決 教育見直し急務 海自 内規違反が日常化

横浜支局・金子靖志

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故の海難審判で、横浜地方海難審判所は22日、海自に安全教育の徹底を求める勧告をした。海自は、実効ある取り組みを迫られた。

<要約>
◇海自が事故を繰り返す背景に、日常的に内規を守らないなどの気の緩みがある。
◇民間に協力を求めるなど、海自の教育を抜本的に見直すことが必要。



 裁判で言えば判決にあたる裁決は、あたごが所属する第3護衛隊が「連絡・報告や見張りの体制を十分に構築していなかったことは、事故発生の原因となる」と断定した。事故原因を組織の問題ととらえ、再発防止を図るために改善を第3護衛隊に求めた。

 「見張りや、ほかの船舶の動向判断など安全航行の基本事項の順守について、乗務員に対する指導が不十分」――。

 1988年夏、30人が死亡した海自の潜水艦「なだしお」と遊漁船「第一富士丸」の衝突事故で、横浜地方海難審判庁が翌89年、なだしお所属の第2潜水隊群に出した裁決の内容だ。

 あれからちょうど20年。海自は再び、見張りという基本中の基本ができていなかった安全教育の不備を認定され、勧告を受けることになった。

 なだしお事故は2審での勧告は見送られたが、海自は、<1>衝突予防措置の研究など装備面の改善<2>安全管理施策の充実・強化<3>応急対応能力の充実・強化――を3本柱とする再発防止策をまとめ、訓練で徹底させるとした。隊員に対しては、なだしお事故の背景を教えたり、慰霊祭を開催したりしてきた。

 しかし、海自の艦船が絡む海難事故はほぼ毎年のように起きている。この20年間の海難審判件数は、なだしお事故以前の20年間が7件だったのに対し、2倍以上の17件に上っている。

 ある現役の海自幹部は、「内規の行動基準が細かく、『守らないで当然』という雰囲気があり、事故を招く要因になっている」と話した。別の幹部は「隊員より幹部は船の経験が少なく、部下に厳しくできない場面もある」と指導が徹底できない実情を打ち明けた。

 艦長や当直仕官はハワイでの訓練帰りで部下が疲れていたとして、内規に反し「(事故当日は)艦橋外に見張りを立たせなかった」と認めている。決められた人数より少ない当直体制で航行していることが日常化していた。乗組員の士気低下や気の緩みが漫然とした見張りとなり、清徳丸の父子2人の犠牲につながったと言っても過言ではない。

 船乗りの間で、海自の艦長より民間のベテラン船長の方が操船技術が優れているといわれている。なだしお事故で遊漁船側の補佐人を務めた田川俊一弁護士(73)は、「船舶が行き交う東京湾で、民間の船長による実習を開き、安全航行に対する民間の意識をたたき込むべきだ」と提案する。

 海自で教育が徹底できないのなら、民間の声に耳を傾ける必要もあるだろう。再発防止への取り組みは、待ったなしだ。」



(4) 毎日新聞平成21年1月23日付東京朝刊27面「解説」

◇組織の責任 厳しく問う

 「あたご」側に衝突事故の主因があると断じた横浜地方海難審判所の裁決は第3護衛隊という「組織」の有りように踏み込んだ点が最大の特徴だ。あたご側の過失を明確に認めたうえ「当直の基本が励行されておらず見張りの体制が十分構築されていなかった」と述べ、基本をおろそかにした海自を断罪。書類送検された2当直士官の刑事処分にも影響を与えるとみられ、海自に重い課題と厳しい結果を突き付けた。

 裁決は清徳丸の航跡などの主な争点で、理事官側の主張をほぼ全面的に採用。4個人への勧告は見送ったが、理事官側は2審請求しないとみられ、海自組織への勧告が初めて確定する見通しだ。ある理事官は「組織として、ちゃんと教育できていなかったのが事故の大本」と納得する。

 裁決は人的ミスの積み重ねが事故につながったと指摘した。レーダーなど最新鋭の機器を備え、多くの見張りを配置しながら、清徳丸を明確に認識したのは、衝突1分前。「人がミスやエラーに陥ることは避けられない事実。相互にチェック・カバーしあう意識を持って業務に当たらねばならない」。一般の組織論にも通じる裁決の指摘は、艦橋とCICの機器・人材が機能しなかった背景として、束ねる「組織」の責任を厳しく問うている。

 30人の死者を出した海自潜水艦「なだしお」事故から20年。この間、海自艦船による衝突事故の裁決は10件あったが、うち4件が海自側に「主因」を認めた。今月10日にも鹿児島湾内で海自潜水艦「おやしお」が接触事故を起こしたばかりだ。「なだしお」事故で遊漁船側の補佐人を務めた田川俊一弁護士は「20年間ちゃんと安全教育をしていれば避けられた事故」という。一方、事故時と交代前の2士官のうち、裁決は事故時の士官だけに「過失」を認めた。捜査に携わった3管幹部は「海難審判は行政処分。真相究明は刑事裁判でないと分からない」と言い切る。書類送検を受けた横浜地検の捜査や判断が注目される。【池田知広、吉住遊】

毎日新聞 2009年1月23日 東京朝刊」



(5) 東京新聞平成21年1月23日付朝刊27面「識者コメント」

◆「なだしお」より厳しい

 東海大海洋学部の山田吉彦准教授の話 あたごは船乗りとして基本中の基本ができておらず、海自は組織全体として船を動かすことの意味を一から考え直せという極めて厳しい内容だ。当直仕官や艦長には操船の責任者という重い役割があり、勧告されなかったのは不満が残るが、個人の技能以前に組織としての管理体制があまりにずさんだったという判断なのだろう。海自組織への勧告が確定しなかった潜水艦「なだしお」の事故よりも厳しい裁決と考えられ、海自は重く受け止めるべきだ。

◆組織そのものに原因

 日本海難防止協会の大貫伸上席研究員の話 裁決は艦内での連絡・報告や見張り体制が原因と指摘しており、事故原因は海自の組織の在り方そのものと言っているのに等しい。通常なら、当直仕官にも勧告が出されて当然の事故だが、複合的な背後要因がある場合は、個人の取り組みだけでは事故の再発防止ができないため、当直仕官や艦長への勧告が見送られたといえる。裁決は、海自全体に対し、事故を防ぐためには実効的な取り組みが必要だというメッセージが込められている。」




3.人は誰でもミスをします。

(1) そうしたミスを補いあうために組織の連携やシステムの進化があるのです。ところが最新鋭の自衛艦の中でそれができていなかった(朝日新聞平成21年1月23日付「社説」)のです。「人がミスやエラーに陥ることは避けられない事実。相互にチェック・カバーしあう意識を持って業務に当たらねばならない」という海難審判所の指摘は、どこの組織であってもごくごく基本的な事項の実行を求めたにすぎないのですが、イージス艦「あたご」ではこの組織としてごく当たり前のことができていなかったのです。

「裁決は艦内での連絡・報告や見張り体制が原因と指摘しており、事故原因は海自の組織の在り方そのものと言っているのに等しい」(日本海難防止協会の大貫伸上席研究員の話)のです。海難審判所は、海上自衛隊の組織そのものに問題があることを指摘したのです。



(2) 深刻なのは、イージス艦「あたご」では、組織としての基本的な事項が不十分だっただけが問題だったのではないことです。

「見張りや、ほかの船舶の動向判断など安全航行の基本事項の順守について、乗務員に対する指導が不十分」――。


船乗りとしての基本中の基本、すなわち「見張りという基本中の基本ができていなかった安全教育の不備を認定され、勧告を受けることになった」(読売新聞)のです。これでは、イージス艦「あたご」の乗務員は、船舶を航行する能力を欠いていたといわざるを得ません。

「艦長や当直仕官はハワイでの訓練帰りで部下が疲れていたとして、内規に反し『(事故当日は)艦橋外に見張りを立たせなかった』と認めている」に至っては、見張りの重要性に対する意識に欠けており、海難事故を生じないようにする気がないとさえ、いえるでしょう。



(3) 組織としても、船乗りとしても基本中の基本を順守していなかったのにもかかわらず、船渡一佐は「清徳丸の右転が原因だと今でも確信している」と裁決への不満をあらわにしています。

「事故を反省し、自らの過失に向き合うことが再発防止への一歩となるはずだが、前艦長は裁決後も「大きな原因は漁船側にある」と発言するなど、その姿勢には疑問が残る。」(東京新聞「解説」)



 イ:衝突事故の原因について、合理的な根拠に欠け、非常識な主張を展開する関係者は、船渡一佐だけでなく、イージス艦「あたご」全体に蔓延していたようです。

◆海自側主張に「ほころび」

 昨年9月に始まった審判で、海自側は一貫して「清徳丸が事故の主因」と訴え続けたが、その主張には、早くから“ほころび”が見えていた。
 事故前の当直士官だった後瀉桂太郎・前航海長は第1回審判を控えた8月下旬、読売新聞の取材に「言いたいことはいくらでもある。根本的なところから争う」と話した。審判でも「衝突の危険性はなかった」と強い口調で主張したが、審判官から「合理的な説明を」とただされると、「(危険なしの)判断は、今となっては早計だったと思う」と消え入りそうな声で述べた。
 事故時の当直士官だった長岩友久・前水雷長も、清徳丸の僚船に対する回避行動を取らなかった点について、「(かえって)危険が生まれると思った」などと説明。審判官から「そんなばかなことを言っちゃいけませんよ。常識的に考え、納得できる説明をしてほしい」とたしなめられる一幕もあった。

(2009年1月23日 読売新聞)」

 「審判の事故原因や再発防止をめぐる質疑の中で、「衝突の危険は感じなかった」などと繰り返すあたご側に、審判官が「ばかなことを言っちゃいけない」「常識的な説明をしてほしい」と声を荒らげる場面もあった。
 また、指定海難関係人「第3護衛隊」の末次富美雄前司令は「航行指針通りでなくても、即命令違反とはならない」と答えるなど、「船乗りの基本」を軽んじるような姿勢が浮き彫りとなった。」(東京新聞)


裁決では、あたごの船渡健前艦長による清徳丸の右転が事故原因との主張が退けられたのですが、海幕広報室は「船渡前艦長が個人的な意見を述べたもの。海上自衛隊は関知していない」としています(東京新聞)。要するに、船渡健前艦長が「清徳丸の右転が事故の主因」と述べていようが、それは海上自衛隊としては、「船渡前艦長が個人的な意見を述べたもの。関知していない」ということで、妄言扱いで終わらせたいようです。

確かに、審判官に対して、「合理的な説明」ができず、「そんなばかなことを言っちゃいけませんよ。常識的に考え、納得できる説明をしてほしい」とたしなめられる一幕さえもあったのですから、海上自衛隊としては、妄言扱いするのも当然でしょう。合理的な根拠に欠けた主張、常識的でない主張なぞは、誰だって賛同するはずはないのですから。

 ロ:しかし、妄言扱いで済ますことは困難です。

 「あたごの関係者は審判で、事故後に安全対策の見直しを進めていると主張した。しかし組織への勧告が出された以上、それで十分かどうか考え直すべきではないか。海上自衛隊はあらためて事故の反省点を洗い直し、再発防止の手だてをとるべきだ。それが事故を起こした組織の責任である。」(朝日新聞平成21年1月23日付「社説」)


組織としても、船乗りとしても基本中の基本を順守していなかったのにもかかわらず、妄言を繰り返す自衛官が何人もいるようでは、今後も衝突事故が生じることは必至です。

海自幹部は、「内規の行動基準が細かく、『守らないで当然』という雰囲気があり、事故を招く要因になっている」とか、「隊員より幹部は船の経験が少なく、部下に厳しくできない場面もある」と指導が徹底できない実情を述べています(読売新聞)。事故を招く要因が最初から分かっているのに、まるで改善できないこと自体にも問題があります。

船乗りとしての基本中の基本が実行できず、実効性のある安全対策ができないのであれば、海上自衛隊を解体するしかありません。少なくとも、「ハワイでの訓練帰りで部下が疲れていた」から見張りを減らすなどのくだらない言い訳ができないよう、海外派遣を含めて、海上自衛隊の活動を大幅に縮小させるしかないように思います。


テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

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