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2006/10/14 [Sat] 02:33:29 » E d i t
日本人夫婦が外国へ行って代理出産を行った事例については、向井夫妻の代理出産事件の前に、最高裁平成17年11月24日決定がありました。この事案は、50代の夫婦は、国内で不妊治療を試みたが妊娠しなかったため、夫の精子を凍結保存し、平成14年4月、アジア系米国人女性Bから提供された卵子を使って体外受精し、受精卵は「代理母」となる別の米国人女性Aの子宮に移され、同年10月に双子が生まれたという事案です。

この平成17年決定は「是認できる」という判示以外は未公開なので、原審である大阪高裁平成17年5月20日決定の判示を全文引用して紹介します。最高裁判所のHPでは未掲載なので、判例時報1919号(平成18年4月11日号)107頁~から引用します(別紙を除く)。


1.大阪高裁平成17年5月20日決定(判例時報1919号(平成18年4月11日号)108頁~)

●夫の精子を用いてされた代理懐胎により分娩された子と妻との間には法律上の母子関係は認めることができないし、出生届を不受理とした市長の処分が相当とされた事例

事件番号:平成16(ラ)990
事件名: 市町村長の処分に対する不服申立却下審判に対する抗告
裁判年月日: 平成17年05月20日
裁判所名: 大阪高等裁判所

原審裁判所名: 神戸家庭裁判所明石支部
原審事件番号 :平成16(家)119
原審結果 :却下
裁判年月日:平成16年08月12日




平成16年(ラ)990号市町村長の処分に対する不服申立却下審判に対する抗告事件(原審・神戸家庭裁判所明石支部平成16年(家)第119号ほか)

      主文
1 本件抗告をいずれも棄却する。
2 抗告費用は、抗告人らの負担とする。

      理由

第1 事案の概要及び抗告の趣旨、理由

一 甲野一郎及び甲野二郎(双子、以下「本件子ら」という。)は、抗告人甲野花子(以下「抗告人花子」という。)の夫である抗告人甲野太郎(以下「抗告人太郎」という。)の精子とアメリカ合衆国在住の米国人女性から提供された卵子を用いて実施された体外受精・体内着床術により、米国カリフォルニア州在住の別の米国人女性によって、同州サクラメント市において分娩された、いわゆる代理懐胎児である。

 抗告人太郎は、明石市長に対し、本件子らにつき、抗告人らを父母とする出生届(嫡出子出生届、以下「本件出生届」という。)をしたところ、同市長は、これらに対する不受理処分をした。

 そこで、抗告人らは、本件出生届の受理を命じることを求める原申立てをしたが、原審は、本件子らと抗告人花子との間に母子関係が存在すると認めることができないとして、これらを却下した。

 本件は、この原審判に対する抗告事件である。

二 抗告人らは、「原審判を取り消す。明石市長は、抗告人太郎が平成16年1月15日付け(同年2月25日付け不受理通知)でした本件子らについての出生届を受理せよ。」との裁判を求める。

三 抗告理由は、別紙一ないし四のとおりであるが、その趣旨は、要するに、本件子らの母は、次の理由により、抗告人花子とされるべきであるあるから、明石市長は本件出生届を受理すべきである、というものである。

(1) 分娩者を母とする考え方は、昨今の生殖補助医療の進歩に対応できていない。生殖補助医療は、子をもうけ育てたいという人間として当然の願いを実現するものであって、現在においては、このような生殖補助医療の発展をも考慮に入れ、誰が母であるかを定めなければならない。

(2) 米国においては、カリフォルニア州ロサンゼルス郡高等裁判所の判決等により、本件子らの母は抗告人花子であり、分娩者でも卵子提供者でもないとされているのであるから、抗告人花子が本件子らの母でないとすると、本件子らには母が誰もいなくなってしまう。その結果、抗告人花子と本件子らの養子縁組をすることもできない。

(3) また、米国人の分娩者は、上記判決により、本件子らの母でないとされているのであるから、分娩者を母とする出生届をすることもできない。

(4) 本件子らの分娩者も卵子提供者も、自らが母であることを否認しているのであるから、本件子らの母となるのは、抗告人花子以外にいない。抗告人花子は、本件子らが未だ胚の状態にあるときから、たとえ先天的な障害をもって生まれてこようとも、本件子らを自らの子として養育する意思を有し、現に、その出生後は、本件子らの母としてその養育に当たっているものである。

 また、母子健康手帳、予防接種手帳、公立学校共済組合員証等においては、本件子らは抗告人ら夫婦の子として扱われている。本件子らの母を決するに当たっては、このような社会的実態を尊重すべきである。

(5) 抗告人らは、一般に出生届に必要とされる資料(この中には、本件子らが抗告人ら夫婦から生まれたことを証明する、出生病院医師作成の出生証明書も含まれている。)をすべて添えて、本件出生届をしているのであるから、明石市長はこれを受理すべきである。

第二 当裁判所の判断

 当裁判所も、明石市長が本件出生届に対してした各不受理処分(以下「本件各処分」という。)は、いずれも適法であるから、抗告人らの本件原申立ては理由がないものと判断する。

 その理由は、以下のとおりである。

一 記録によると、次の事実が認められる。

(1) 抗告人太郎(昭和25年5月7日生)と抗告人花子(昭和23年2月18日)は、昭和61年6月25日に婚姻した夫婦で、いずれも日本人である。抗告人らは、平成元年頃、神戸市内の病院で、AIH(妊娠の目的で夫の精子を対外に取り出し、その精子を人工的に妻の体内に注入する方法)を三回ほど試みたが、妊娠するに至らなかった。

(2) 抗告人太郎は、平成8年3月27日頃、医学的方法により自己の精子を取り出し、これを凍結保存した。

(3) 抗告人らは、夫婦間の子を得るため、米国において、他の女性から卵子の提供を受け、これを上記保存精子と体外受精させ、その胚(受精卵)を別の女性の体内に着床させて妊娠・分娩してもらう方法をとることを決意した。

 そこで、抗告人らは、平成12年5月10日ころ、上記(2)の保存精子を、米国カリフォルニア州のローマ・リンダ大学に搬送した。

(4) 抗告人らは、平成13年8月、同州在住の米国人A(以下「A」という。)及びその夫との間で、抗告人らに帰属する予定の受精卵によって、Aが抗告人らの子を分娩する旨の代理懐胎の合意(Sur-rogacy Agreement)をした。

 更に、抗告人らは、平成14年2月、アジア系米国人女性のB(以下「B」という。)及びその夫との間で、Bは、自己の卵子を抗告人らに贈与する旨の契約(Egg Donor Contract)を締結し、同女からその卵子の提供を受けた。

(5) 抗告人らの依頼により、平成14年4月6日、ローマ・リンダ大学において、抗告人太郎の保存精子とBから提供を受けた卵子を使用して体外受精が行われ、その二日後に、この受精卵を用いて、Aに対する体内着床術が行われた。

(6) 抗告人らは、平成14年9月15日、A及びその夫を被告として、カリフォルニア州ロサンゼルス郡高等裁判所に、上記受精卵により生まれてくる子との父子関係と母子関係の確認を求める訴えを提起したところ、同裁判所は、同年10月7日、抗告人太郎は上記子らの法的なそして遺伝学的な父親であり、抗告人花子は上記子らの法的な母親であるとする旨の判決を言い渡し、同判決において、上記子らの出生に責任がある医師、病院、公的登録機関に対し、その作成する出生証明書に抗告人らが父母である旨の記載をするように命じた。

(7) Aは、平成14年10月17日、カリフォルニア州サクラメント市の病院において、本件子らを分娩し、それぞれ「甲野一郎」及び「甲野二郎」と命名され、抗告人らは、出生後直ちに本件子らの養育を開始し、平成15年2月9日、本件子らを連れて日本に帰国した。

(8) 抗告人太郎は、平成16年1月15日、明石市長に対し、本件子らは、抗告人ら夫婦から生まれたことを証明する旨の記載のある出生病院医師作成の出生証明書等を添付した上、父を抗告人太郎、母を抗告人花子とする本件出生届を提出した。

 しかし、明石市長は、平成16年2月25日、抗告人らに対し、抗告人花子は本件子らを分娩していないから母子関係が認められないとして、本件各出生届を受理しない旨の本件各処分をした旨を通知した。

(9) そこで、抗告人らは、平成16年3月22日、戸籍法118条に基づき、原審に対し、本件各処分を取り消して本件各出生届を受理するよう求める本件原申立てをしたが、原審は、同年8月12日、抗告人らの申立てをいずれも却下する旨の原審判をしたので、抗告人らは、原審判を不服として本件抗告をした。

二 上記認定事実に基づき、抗告人らの原申立ての当否について判断する。

(1) 抗告人らの本件原申立ては、明石市長に対し本件出生届の受理を求めるものであるが、その内容としては、抗告人花子と本件子らとの間の母子関係(実親子関係)の有無を問題とするものであり、上記の事実関係からみて、この問題については、渉外私法的法律関係を含むことが明らかであるから、この点に関する準拠法に関連して検討を加える。

(2) 抗告人らは、婚姻した夫婦であるから、抗告人花子と本件子らとの親子関係の存否は、まず、法例17条1項で定まる準拠法により嫡出親子関係の成立の有無を検討すべきである。

 同項は、夫婦の一方の本国法で子の出生当時におけるものにより子が嫡出とされるときは、その子は嫡出子とする旨規定する。

 本件では、抗告人花子及びその夫の抗告人太郎の本国法は、いずれも日本法であり、日本においては、後述のとおり、本件子らを分娩していない抗告人花子をその母と認めることができないから、本件子らは、抗告人ら夫婦の嫡出子と認めることはできない。また、米国人の分娩者夫婦(A夫婦)や卵子提供者夫婦(B夫婦)と本件子らとの親子関係についても、これら分娩者夫婦や卵子提供者夫婦の居住する米国カリフォルニア州においては、同人らの本国法である同州法に基づく同州ロサンゼルス郡高等裁判所の判決により、本件子らの法的な母は、抗告人花子であるとされていることは前記のとおりであるから、同州法の下においては、本件子らは、上記分娩者夫婦や卵子提供者夫婦の嫡出子と認めることはできないものと解される。

(3) 上記のとおり、法例17条1項で定められる準拠法によっては、嫡出親子関係の成立を肯定することができないから、同法例18条1項で定まる準拠法により、更に、親子関係の成立の有無を判断すべきである。

 ア そして、同項前段によれば、嫡出に非ざる子の親子関係のうち母との親子関係については、出生当時の母の本国法によるとされている。

 そうすると、本件の抗告人花子と本件子らとの母子関係の有無は、抗告人花子の本国法である日本法によって定められることになる。

 わが国においては、母子関係の有無を決する基準について、これを明定する法律の規定はないが、従前から、母子関係の有無は分娩の事実により決するのが相当であると解されてきた(最高裁昭和37年4月27日第二小法廷判決・民集16巻7号1247頁参照)。

 もとより、従前においては、今日のような生殖補助医療の発展はなかったものであるが、母子関係の発生を分娩という外形的な事実にかからせることは、母子間の法律関係を客観的な基準により明確に決することができるという利点があり、また、経験上、女性は、子を懐胎し、胎内での子の成長を実感しつつ分娩に至る過程において、出生してくる子に対する母性を育むことが指摘されていることから、子の福祉の観点からみても、分娩した女性を母とすることには合理性があると考えられるばかりか、昨今の医療技術の発展に伴って採用が検討されている卵子提供型等の生殖補助医療により出生した子についても、自然懐胎による子と同様に取り扱うことが可能になることなどからみて、分娩の事実により母子関係の有無を決するという従前の基準は、生殖補助医療の発展を考慮に入れてもなお維持されるのが相当であって、少なくとも、生殖補助医療により出生した子の親子関係について特別の法制が整備されていない本件子らの出生時においては、その例外を認めるべきではないと解するのが相当というべきである(厚生科学審議会生殖補助医療部会「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療の整備に関する報告書」[平成15年4月28日]、法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する要綱中間試案」と法務省民事局参事官室による補足説明[平成15年7月15日]参照)。

 そうすると、上記の認定事実によれば、本件子らを分娩したのは、Aであって、抗告人花子でないことは明らかであるから、日本法に準拠する限り、抗告人花子と本件子らとの間に母子関係を認めることはできないものといわざるを得ない。

 イ なお、生殖補助医療の発展により、借り腹(不妊夫婦の精子と卵子を体外で受精させて、その胚を妻以外の女性に移植するもの)や代理母(妻以外の女性に夫の精子を人工授精して出産させるもの、本件のように、夫の精子と妻以外の女性から提供された卵子を用いて、受精卵を得、これを更に別の女性に移植して出産させるもの)による出産(これらを併せて「代理懐胎」という。)も可能となっているが、これらは、人を専ら生殖の手段として扱い、第三者に懐胎・分娩による多大な危険性を負わせるもので、人道上問題があるばかりか、代理懐胎を依頼した夫婦と代理懐胎を行った女性との間で生まれた子を巡る深刻な争いが生じる危険性を胚胎しているとして、否定的に評価する見解が有力である(上記報告書は、このような理由により代理懐胎を禁止するとの結論を示している。この立場によると、代理懐胎契約は、公序良俗に反するものとして、その効力は否定されるものと解され、当裁判所も見解を同じくする。)。

 そうすると、これら代理懐胎の方法により出生した子について、例外的に分娩者以外の者を母と認めることは、上記の医療を容認するに等しい結果を認めることになり、相当でないというべきである。したがって、このような場合であっても、分娩によって母子関係は形成されるという上記見解は、なお維持されるのが相当というべきである。

 ウ 次に、米国人の分娩者Aや卵子提供者Bと本件子らとの親子関係についても、同人らの本国法である同州法に基づく同州ロサンゼルス郡高等裁判所の判決により、本件子らの法的な母は、抗告人花子であるとされていることは前記のとおりであるから、同州法の下においては、本件子らと上記分娩者や卵子提供者との母子関係を認めることはできないものと解される。

 しかしながら、上記のとおり、代理懐胎契約は、公序良俗に反するものとして、その効力を否定すべきものであるから、わが国としては、その結果を受け入れることはできず、内国法を適用して、分娩者Aと本件子らとの母子関係を肯定するほかないのである。

(4) 以上のとおりであるから、抗告人花子と本件子らとの間に母子関係が認められないことを理由としてされた本件各処分は適法であり、したがって、本件出生届の受理を命ずることを求める抗告人らの本件原申立ては、いずれも理由がないというべきである。

三 抗告理由について

 抗告人の主張は、次のとおり、いずれも採用することができない。

(1) 抗告理由(1)について

 分娩の事実により母子関係の有無を決するという基準が、昨今の精力補助医療の発展を考慮に入れてもなお維持されるのが相当であることは、上記説示のとおりである。

(2) 抗告理由(2)について

 本件においては、Aと本件子らとの母子関係が肯定されるべきことは前記のとおりである。日本法と米国カリフォルニア州法との間には齟齬があるため、本件子らの母子関係を巡って事実上の不都合が生じることは否定できないけれど、法律的な齟齬ではないことも上記したとおりである。

 生殖補助医療によって出生した子の親子関係について各国間に取扱いの差異があり、この差異を調整するための法的整備がされていない現行の法体系における解釈としては、上記のように解するほかないのであって、事実上の不都合が生じることも、まことにやむを得ないものといわざるを得ない。

 抗告人らに対しては、上記のような法律関係にあることを素直に認識し、既に出生した本件子らの福祉を第一義として、本件子らと抗告人花子との養子縁組の道を探ることを期待したい。

(3) 抗告理由(3)について

 本件子らの出生届に関してAの協力を得ることができるか否かは、分娩者との間の契約の効力如何によって決せられるべきことであり、当裁判所としての見解は上記のとおりである。本件子らの母が誰かという問題についての結論は、抗告人らの主張の事情によって、左右されるものではない。

(4) 抗告理由(4)について

 抗告人らの主張するような関係者の意向や養育の実態によって、実親子関係としての母子関係を決すべきであると解せられない。

(5) 抗告理由(5)について

 本件子らが出生した病院の医師が作成発行した出生証明書には、本件子らは抗告人ら夫婦から生まれた旨の記載があることは前記のとおりであるが、上記認定のとおり、本件子らが抗告人花子から分娩されたのではないことは明らかで、上記出生証明書の記載が真実でないことが認められる以上、本件各出生届に上記出生証明書が添えられているからといって、明石市長は、これを受理すべきであるとはいえないことは当然である。

四 以上の次第で、抗告人らの原申立てを却下した原審判は相当であり、本件抗告は、いずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 田中壯太  裁判官 松本久 村田龍平)



2.この事案は、カリフォルニア州で代理出産契約を行った事案ですが、カリフォルニア州における代理出産における親子関係の成立については、州裁判所の命令があったのですから、この事案においても、外国判決の承認の問題、すなわち国際民事訴訟法(国際民事手続法)の問題として民訴法118条で処理すべき事案でした。

しかし、全文を見ると明らかなように、平成17年の大阪高裁決定は、国際私法の問題として法例17条を適用して、日本法だけで処理をしていまいました。民訴法118条について全く意識しておらず、民訴法118条を失念してしまっているのです。

カリフォルニア州裁判所の命令を意識した判示部分は、

「ウ 次に、米国人の分娩者Aや卵子提供者Bと本件子らとの親子関係についても、同人らの本国法である同州法に基づく同州ロサンゼルス郡高等裁判所の判決により、本件子らの法的な母は、抗告人花子であるとされていることは前記のとおりであるから、同州法の下においては、本件子らと上記分娩者や卵子提供者との母子関係を認めることはできないものと解される。

 しかしながら、上記のとおり、代理懐胎契約は、公序良俗に反するものとして、その効力を否定すべきものであるから、わが国としては、その結果を受け入れることはできず、内国法を適用して、分娩者Aと本件子らとの母子関係を肯定するほかないのである。」

です。
この判示は、全く民事訴訟法118条を失念しています。裁判の効力とは無関係な「代理懐胎契約が民法90条に違反する」ことを理由としていますが、なぜ、裁判の効力とは無関係な「代理懐胎契約」を持ち出して外国判決の効力を否定できるのか意味不明です。

外国裁判所の判決があれば、民訴法118条の適用・類推適用が問題となるとして検討することは、国際私法、国際民事訴訟法(国際民事手続法)の基本中の基本です。それなのに、民訴法118条を失念した大阪高裁決定は、国際私法、国際民事訴訟法(国際民事手続法)の基本についての理解に欠けていたといわざるを得ません。

これに対して、向井夫妻の代理出産事件(東京高裁平成18年9月29日決定)では、平成18年の東京高裁決定(「代理出産(代理母)による法律関係~東京高裁平成18年9月29日決定全文公開(向井夫妻の双子代理出産事件)」参照)は、最初から最後まで、民訴法118条の適用・類推適用の問題として処理しています。これは、国際私法、国際民事訴訟法(国際民事手続法)の基本に沿った論理です。


国際私法、国際民事訴訟法(国際民事手続法)の基本についての理解に欠けていたのは、大阪高裁決定だけではありません。この大阪高裁決定についての、最高裁判所調査官の解説(判例時報1919号107頁)によると、

 「民法772条によれば、妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定すると定められているところ、母子関係はどのようにして確定すべきかについて争いがあったが、最二判昭37・4・27(民集16・7・1247)は、母子関係は、母の認知をまたず、「分娩」の事実により当然発生するものと解すべきであるとしている。

 本件においては、X1は、A及びBを分娩したものではないから、X1とA及びBとの間に母子関係を認めることができず、したがって、X2とA及びBとの間に父子関係も認めることができないことは明らかであるから、本決定は現行民法上当然の判断であって、異論のないところであろう。」

としています。
「現行民法上当然の判断であって、異論のない」と断定していますが、外国判決がある以上、日本法の解釈だけで解決できないことを分かっていないのです。やはり民訴法118条を失念しているのです。この解説を書いた最高裁判所調査官は誰なのは不明ですが、少なくとも、国際私法、国際民事訴訟法(国際民事手続法)の基本についての理解に欠けていた最高裁判所調査官がいたことは確かなのです。


こういう国際私法、国際民事訴訟法(国際民事手続法)の基本についての理解に欠けている判例については、昔から、国際私法学者が教室内において学生に対して、「こんな間違いをしないように」と指摘することが多いです。昔から、国際私法の理解に欠けた判例が多かったのですが、それは国際私法の理解に欠けた裁判官が多かったからです。

本来、「恥」は大学の教室内だけに留めておくべきものだとは思いますが、この代理出産問題は、日本法上、今後の生殖補助医療の行方を左右する重大問題です。そうすると、国際私法、国際民事訴訟法(国際民事手続法)の基本についての理解に欠けた議論・判示は、議論が混乱し、有害無益です。ですので、こうして「恥」「間違い」であることを指摘することにしました。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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