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1.今年の日本の経済状況の一端をよく示している記事を、1つ引用しておきます。
(1) 朝日新聞平成20年12月31日付朝刊27面(13版)「景気ショック ゆらぐ足元で」
「「夜逃げ屋」大忙し 順番待ち40人、貸し倒れたヤミ金も利用
2008年12月31日3時2分
夜逃げを手助けする「夜逃げ屋」。荷物をトラックに詰めて短時間で居所を移し、後の仕事まで面倒を見てくれる。最近、不況に苦しむ経営者らが、ヤミ金融業者からの高圧的な取り立てから逃れるために、利用する場合が増え、大忙しという。
大阪市内のある「夜逃げ屋」の事務所では最近、朝からひっきりなしに依頼の電話がかかっている。関東にも事務所を持ち、例年、年間約100件ほどの夜逃げを手がける。今年は秋口にその数を超えたという。
■決行は午前
社長(35)によると、秋の1件は、9月の「リーマン・ショック」の記憶が新しいある日の午前に決行された。男性スタッフ3人が2トントラックをマンションに横付けした。下見は終わっていて、持って行く荷物は決めてある。「夜逃げ」だが、音が響く夜には絶対にやらないという。
荷物を丁寧に段ボール箱に入れている時間はない。債権者が暴力団であることも多く、見つかったら危ない目に巻き込まれるかもしれない。服をごみ袋に入れて緩衝材代わりにしながら、家財道具を裸のままどんどん積み込んだ。所要時間は長くて2時間。普通の引っ越し業者の半分から3分の1の短時間で済ませる。
あらかじめ懇意の家主に手配しておいた部屋に荷物を運びこんだ。墓の横などの立地だったり、日当たりが良くなかったりするように条件が悪い物件を格安で貸してくれる。
社長によると、こうした「夜逃げ」に現在約40人が順番待ちをしているという。今秋、不況の根深さを実感した出来事があった。本来、高圧的な取り立てをする側のヤミ金業者が、さらに怖い取り立てを恐れて夜逃げしたのだ。
その業者には運送業の借り手が多かった。ガソリン高でコストが上がり、不況で受注件数が激減。業績悪化が急速に進んだ。そのため次々と貸し倒れが生まれてしまい、ヤミ金業者そのものの資金繰りが行き詰まった。残った債務は暴力団からの数億円。脅迫まがいの激しい取り立てを受け、相談してきた。
また数億円で建てたビルを所有していた40代前半の男性の夜逃げにも携わった。コンピューター関係の会社を経営していたが、今秋、銀行から突然融資の返済を迫られた。運転資金に行き詰まり、ヤミ金から1千万円を借りた。
■仕事も紹介
ところがビルのテナントも思ったように入らず、入った物販店も退去して、収入も激減。ビルは借金のカタに取られ、ふくらんだ利子の返済に行き詰まった。取り立てで3人の娘に危害を加えると脅かされ、夜逃げの道を選んだ。
夜逃げの費用は通常20万円前後。暴力団が絡むなど危険が伴うと手当がついて50万円ほどになる。行き先は、もちろん秘密。同じ県内は避けるが、債権者と接触する道を残せるよう、隣県の場合が少なくない。お金がない依頼者も多く、分割や出世払いも可能だ。かかった費用を払ってもらうために、旅館の住み込みといった仕事も紹介する。
「夜逃げはあくまで一時避難」と社長は言う。弁護士や認定司法書士を入れてもやまず、身に危険が及ぶような激しい取り立てを、いったん行方をくらますことでかわし、改めて法律の専門家を入れた法的整理を勧めるという。」
「■「借金が原因なら夜逃げの必要ない」 弁護士、相談呼びかけ
ヤミ金問題に取り組み、映画「夜逃げ屋本舗」の監修もした宇都宮健児弁護士は、「借金が原因の場合、ほぼ間違いなく夜逃げする必要はない」と断言する。
多重債務で厳しい取り立てに苦しんでいる場合、弁護士や認定司法書士に相談し、貸金業者に対し、受任通知を出してもらうことで取り立てを止められる。そのうえで任意整理や自己破産など法的整理に入ることを勧めている。
もし夜逃げした場合、その後の生活には困難がつきまとう。貸金業者は住民票の異動を絶えずチェックしていて、行き先が分かるとすぐ取り立てを再開する。異動先の住民票がなくて、パートやアルバイトなど不安定な職にしかつけず、さらに借金を重ねるケースも多い。さらに国民健康保険にも加入しづらいなど不利益も多い。宇都宮弁護士は「わざわざ夜逃げしなくていいのに、それを知らない人があまりに多い。無料の相談窓口もあるので利用してほしい」と呼びかけている。
東京の弁護士会の相談窓口「錦糸町法律相談センター」(03・5625・7336)は年末年始は休み。「全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会」に所属する東京都千代田区の「太陽の会」(03・5207・5520)は来年1月7日から受け付ける。相談はともに無料。(岡田健)」
(2) この記事にあるように、不況に苦しむ経営者らが「夜逃げ屋」に駆け込んでいます。ただ、逃亡生活には困難が付きまといます。ヤミ金問題に取り組み、映画「夜逃げ屋本舗」の監修もした宇都宮健児弁護士が述べているように、「借金が原因の場合、ほぼ間違いなく夜逃げする必要はない」のです(朝日新聞平成20年12月31日付朝刊1面)。
この記事では触れていませんが、企業や個人の破産の場合、ヤミ金(国(財務局)や都道府県に貸金業としての登録を行っていない貸金業者)だけでなく、ほとんどの消費者金融業者が法で定められた金利を越えた利息を超えて利用者に請求していました。キャッシング会社(信販会社系)も、例外ではありません。こうした過払い金は返還請求できる(もちろん、必ず発生したり、取り戻せるとは限りません)のですから、元々、執拗な取立て自体が根拠がない可能性もあるのです。
多額の借金を背負ったとしても、債務整理(任意整理、民事再生、自己破産)をする道があるのですから、夜逃げをしたり、一家心中するまで思い詰める前に、まず、相談するべきです。何らかの救済手段はありえるのです。
(1) 東京新聞平成20年12月31日付【社説】
「大晦日に考える 危機を転機にしたい
2008年12月31日
大変な一年でした。無差別殺傷事件の多発、食品不安の連鎖に世界経済危機が続きました。でも危機の時こそ新たな社会づくりの好機ではありませんか。
高校や大学の奨学金を希望する生徒が増加する一方です。病気や災害、事故、自殺などで親を失った遺児を支援するあしなが育英会(東京)によると、十年前に千五百人足らずだった新規出願者は今年になって二倍に達しました。
これに伴って、奨学金の貸与額も増えるばかりです。この十年間の増加額は約十億円にもなっています。育英会の職員は言います。
「奨学金の原資となる皆さんからの寄付金は減っていないが、希望者の急増に追いつけません」
◆社会的弱者にしわ寄せ
背景には親の収入の減少があります。十年前の遺児の母親の年間勤労所得は約二百万円で、一般サラリーマン家庭のそれの43%だったのが、一昨年では百三十七万円(32%)にまで激減しています。
この結果、遺児母子家庭の四世帯に一世帯の遺児が進学をあきらめるなどの進路変更を余儀なくされています。
一方で、米国発の金融危機に始まる世界同時不況で派遣労働者や期間従業員の解雇が相次ぎ、社会問題化しています。「派遣切り」です。教育費に困窮する遺児に限らず、社会的弱者が経済危機の直撃を受けているのです。
そんな中で、啞然(あぜん)とした二つの新聞記事があります。
一つは、米国で公的資金による資本注入を受ける金融機関の経営陣が昨年、一人当たり平均して約二百六十万ドル(約二億三千万円)の報酬を受け取ったと報じられたものです。最高額は証券大手メリルリンチの最高経営責任者の七十四億円です。あしなが育英会なら彼一人の報酬で二万人近い生徒の一年間の奨学金がまかなえます。
◆「不義にして富まず」
もう一つは、トヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する大手製造業十六社が計四万人の人員削減を進める一方で、利益から税金や配当金などを引いた内部留保の合計額が三十三兆六千億円にも積み上がったとの記事です。
そんなに余裕があるなら、なぜ従業員の雇用確保に使えないのでしょうか。従業員の生活安定を図るのは企業市民の責務です。人間は機械でもなければコストでもありません。切れば赤い血が噴き出ます。企業も人間の集まりです。
人間を尊敬する経営、人間の集団としてのモラール(士気)を高め、経営の効率性を上昇させていくことこそが、企業人の使命ではありませんか。「不義にして富まず」。ある老舗の社訓です。
ところが、市場原理による新自由主義の舞台は不義と欲望が支配したようです。米国の低所得者向けのサブプライムローン問題は、証券化と格付けにより、あくなき利益追求の巨大マネーゲームと化し、金融と消費の世界的な大混乱を引き起こしてしまいました。
日本も例外ではありません。小泉政権時代に始まる市場競争原理が新貧困層を生み、勝ち組と負け組の格差をつくり出し、現代社会に大きな歪(ゆが)みをもたらしたのです。振り返れば、今年の大ニュースにも通底するものがあります。
大分県教委では教員採用や昇進を売買する汚職事件が起き、金もうけのための食品偽装事件も相変わらず多発しました。東京・秋葉原の無差別殺傷事件も、人間をコストとみる風潮が影を落としているとの指摘があります。妊婦死亡など医療崩壊も顕在化しました。これも医療費の削減や、産科、小児科医師の不足をもたらした規制緩和が背景にありそうです。
こうした危機の出現は、経済功利主義にもう終止符を打ち、人間中心主義にかじを切る転機だと教えているのではありませんか。
国の針路を考えるのは政治の役割です。でも、麻生太郎首相が支持率の低迷にあえいでいるのは、日本の将来像を明確に提示し得ないことへの批判の表れです。
一つ提案があります。評判の悪い総額二兆円の定額給付金について、個人が自由に使える仕組みの構築です。
自分のために使ってもよし、あしなが育英会など教育や医療、福祉の団体や施設に寄付してもよし。地域の清掃やイベントの費用にしてもかまいません。多様な使途メニューを示すのです。
◆命に付く名前を「心」
ばらまきのお金を生かしたいのです。昔の「講」のような相互扶助組織や、ボランティア団体の創設に役立ててもいいでしょう。
中島みゆきさんに「命の別名」という曲があります。「命に付く名前を『心』と呼ぶ/名もなき君にも/名もなき僕にも」
人の命や「心」が随分と粗末にされた一年でした。来年こそ大切にされるよう変化を望みます。」
(2) 今年は、酷い1年でありました。
イ:社会的弱者に容赦なく不利益が及ぶような社会は、社会全体が一層、荒廃をもたらしていきます。
「◆社会的弱者にしわ寄せ
背景には親の収入の減少があります。十年前の遺児の母親の年間勤労所得は約二百万円で、一般サラリーマン家庭のそれの43%だったのが、一昨年では百三十七万円(32%)にまで激減しています。
この結果、遺児母子家庭の四世帯に一世帯の遺児が進学をあきらめるなどの進路変更を余儀なくされています。
一方で、米国発の金融危機に始まる世界同時不況で派遣労働者や期間従業員の解雇が相次ぎ、社会問題化しています。「派遣切り」です。教育費に困窮する遺児に限らず、社会的弱者が経済危機の直撃を受けているのです。」
「非正規就業者、過去最高の影響:ひとり親家庭の実情と課題(読売新聞7月8・9日付夕刊)」(2008/07/11 [Fri] 23:59:43)で触れたように、米国発の金融危機に始まる世界同時不況下でなくても、ひとり親家庭は社会的に不利益な状況にあるのです。今現在、「派遣切り」が横行しているのですから、非正規社員が多い「ひとり親家庭」は一体、どれほどの家庭が暮らしに困っているのだろうと、想像するだけでも憂鬱になります。
ロ:トヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する大手製造業16社は、「内部留保の合計額が三十三兆六千億円にも積み上がった」いるにもかかわらず、容赦なく解雇しています(「大手16社 内部留保最高 株主重視 減益の中増配も」(東京新聞2008年12月24日朝刊1面))。これもまた、社会全体が一層、荒廃をもたらしていくことになります。トヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する大手製造業16社の経営者は、企業としての社会的責任を果たしていないことを、どう言い訳するのでしょうか。(キヤノンは、平気で「偽装請負」といった違法行為が横行しており、それを適法化しろというほど無法を主張しており、もうやりたい放題でした。)
こうした非道がまかり通る中、職も住まいも失った人たちのために、次のような取り組みがなされることになりました。
「年越し派遣村、日比谷公園で開設 年末年始に失業者支援
派遣契約の打ち切りや解雇で企業から寮の退去を迫られ、年末年始に行き場がない人たちを支援しようと、生活相談に応じて食事を提供、宿泊場所を紹介する緊急避難所“年越し派遣村”が31日、東京・日比谷公園に開設された。
約20の労働組合や市民団体などが主催し、行政の窓口が再開する1月5日朝まで続ける。
実行委員会によると、午後6時現在、支援を求める人が約130人訪れ、ボランティアは350人を超えた。
群馬県の自動車部品工場に派遣され、10月末に解雇された男性(41)は「ネットカフェや公園の野宿で持ちこたえてきたが、もう疲れた。捨てる神あれば拾う神ありで、支援はありがたい」と語った。
生活相談には30人が訪れ「浜松市にある工場の期間従業員だったが解雇され、3カ月前から公園暮らし」(40代の男性)、「東京の知人を頼り、山口県から出てきた。いつまでも世話になれない」(50代の男性元派遣社員)など深刻な声が多かった。
実行委員会によると、所持金が数千円に満たない人が多く、年明けに集団で生活保護を申請する。相談は連日午後1時から同6時まで弁護士や労組関係者が対応。1月5日朝まで1日3食を提供し宿泊場所も紹介する。
開催期間中の問い合わせは、電話090(3499)5244まで。
2008/12/31 18:28 【共同通信】」
関東県内に住んでいる人であれば、多くの人たちが集まった「日比谷公園」の状態を、すぐに想像できると思います。こうした取り組み自体は高く評価すべきことなのですが、大企業が何兆円もの膨大な利益を受けておきながら、そのリスクだけを社会に押し付けることの不合理さは、よく覚えておくべきです。
ハ:来年は、どうなるのでしょうか。
「大変な一年でした。無差別殺傷事件の多発、食品不安の連鎖に世界経済危機が続きました。でも危機の時こそ新たな社会づくりの好機ではありませんか。(中略)
人の命や「心」が随分と粗末にされた一年でした。来年こそ大切にされるよう変化を望みます。」
まずは、「危機を転機にしたい」という気持ちが大事なのでしょう。何らかの救いの道があるはずだ、と相談し道を探すのも、その1つだと思います。東京新聞の社説にあるように、人の命や心が大切にされるような年になるよう望みます。
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