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2008/12/11 [Thu] 23:59:39 » E d i t
重い腎臓病に苦しむ透析患者たち7人が平成20年12月10日、修復腎(病気腎)移植の扉を開くため、国が「原則禁止」を決める根拠を示した日本移植学会幹部ら5人に対し、総額6050万円の損害賠償を求める訴えを松山地裁に起こしました。

訴えによると、5人は「腫瘍(しゅよう)を取り除き移植しても高い確率で再発する」という意見をマスコミなどに発表し、その結果、厚生労働省は昨年7月、「医学的妥当性がない」とする同学会などの共同声明を受け、病気腎移植を原則禁止しました。原告側は、同学会側の見解について「全くの的外れか、事実と異なる虚偽の内容だ」として、病気腎移植を受ける権利が侵害されたと主張しています(時事通信:2008/12/10-22:11)。

被告となったのは、日本移植学会幹部であり、大島伸一氏(国立長寿医療センター総長・日本移植学会評議員)、高原史郎氏(大阪大学大学院医学研究科教授・日本移植学会副理事長)、田中紘一氏((財)先端医療振興財団先端医療センター長)、寺岡慧氏(東京女子医科大学腎臓外科教授・日本移植学会理事長)、相川厚氏(東邦大学医学部腎臓学教室教授)の5人です。

【用語解説】病腎移植(修復腎移植)

 腎がんなどの患者から治療のために摘出した腎臓を、修復(レストア)したうえで腎不全患者に移植する生体移植。国内では宇和島徳洲会病院の万波誠医師らを中心とするグループが手がけた。移植関連学会などは、医学的な妥当性や患者選択の公平性などの問題を指摘しているが、海外では豪州で広く普及しているほか米国でも多数の手術例が報告されている。今年1月、全米移植外科学会に招かれた万波医師が日本での病腎移植の実績を報告し、高い評価を受けた。」(msn産経ニュース(2008.12.10 13:53)




1.報道記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成20年12月11日付朝刊27面

「病気腎移植 「学会が否定、治療侵害」  松山地裁に患者7人 幹部らを損賠提訴
2008年12月11日 朝刊

 病気腎移植の医学的妥当性を否定する発言によって治療を受ける権利が侵害されたとして、岐阜、広島、香川愛媛4県の透析患者と移植患者計7人が10日、日本移植学会幹部ら5人に計6050万円の損害賠償を求め、松山地裁に提訴した。

 原告によると、学会は昨年3月、関連学会と「現時点で医学的妥当性がない」という共同声明を発表。この声明を受けて厚生労働省は同年7月、臓器移植法の運用指針を改め、病気腎移植を原則禁止とした。原告は、学会幹部らが事実と異なる発言をして病気腎移植の道を閉ざし、治療を受ける権利を侵害したとしている。国に対しても提訴する予定だったが、移植禁止を見直す立場の超党派議連会合が11日にあり、ここでの厚労省の対応を見極めることにした。

 被告の1人、学会の相川厚理事は「5学会で共同声明を出した時と(意見は)変わらない。移植を受ける側の問題だけではない。提供する人に不利益があり、やるべきではない」と話した。」



(2) asahi.com:関西(2008年12月10日)

「病気腎移植認めて」 患者7人が学会幹部を提訴へ
2008年12月10日

 がんや尿道狭窄(きょうさく)などのため摘出された腎臓に治療を施したうえで別の患者に移植する「病気腎移植」をめぐり、慢性腎不全患者7人が10日、日本移植学会の幹部5人を相手に、病気腎移植を否定した見解の撤回と総額6050万円の慰謝料などを求める訴えを松山地裁に起こした。与野党の国会議員でつくる「修復腎移植(病気腎移植の別称)を考える超党派の会」が11日に東京で開く会合で厚生労働省に病気腎移植の容認を求め、その回答次第で国に対しても同様の訴訟を起こすという。

 提訴したのは愛媛、広島、香川、岐阜の4県の男女。

 病気腎移植については、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(68)らのグループが91~06年に42件を実施したことが判明。これを受けて厚労省は昨年7月、臨床研究以外の病気腎移植を禁止した。原告らはこの措置によって希望する医療を受ける権利を奪われ、憲法が保障する生存権を侵害されたと主張。日本移植学会は昨年3月、病気腎移植を全面否定する見解を出し、「国の誤った判断を導いた」としている。

 日本移植学会事務局は「訴状の内容を見ないと、コメントできない」としている。」



原告側は、日本移植学会幹部と厚生労働省を対象に損害賠償請求(民事訴訟)、国家賠償請求訴訟(行政訴訟)を予定していたのですが(<1>「「病腎移植禁止」で、愛媛など4県の腎不全患者らが国家賠償求め提訴へ」(2008/09/18 [Thu] 22:32:33)、<2>「「病気(修復)腎移植」実施求め、10月下旬ごろ提訴へ~国の無策打開を狙って」(2008/10/04 [Sat] 20:12:18)、<3>「「病気腎移植、早く認めて」国を提訴へ~時間と闘う患者の叫び(東京新聞平成20年10月5日付「こちら特報部」より)」(2008/10/05 [Sun] 23:59:30)も参照)、日本移植学会幹部を対象にした損害賠償請求(民事訴訟)を先行させたようです。

損害賠償訴訟を先行させた理由は、次の通りです。

 「国に対しても提訴する予定だったが、移植禁止を見直す立場の超党派議連会合が11日にあり、ここでの厚労省の対応を見極めることにした。」(東京新聞)

「与野党の国会議員でつくる「修復腎移植(病気腎移植の別称)を考える超党派の会」が11日に東京で開く会合で厚生労働省に病気腎移植の容認を求め、その回答次第で国に対しても同様の訴訟を起こすという。」(朝日新聞)


「修復腎移植を考える超党派の会」が要件を満たせば修復腎移植を容認する見解をまとめていますし、今年の9月頃から訴訟を起こすとの報道がありながら、厚生労働省は何も反応せず、日本移植学会は(簡単な記者会見を開いたが)正式な声明を出すと言いながら未だに無反応でした。

修復腎移植に無反応であっても、臓器移植拡大のための具体的な方策を提言・実行したのであれば、構わないのです。しかし、もちろん誰もが知っているように、厚生労働省及び日本移植学会は、「臓器移植拡大のための具体的な方策を提言・実行」をしていません。要するに、患者が次々と死亡しているにも関わらず、何もしていないのです。

このように、厚生労働省及び日本移植学会は、何万もの患者(人工透析患者は約27万人、腎移植待機患者は約1万1600人程)を見殺しにしており、今後も見殺しをし続けるのです。「提訴を目前に、原告入りするはずだった2人の患者が相次いで死去」(東京新聞)しているほど「ぎりぎり」の状態なのです。患者側は、「まだ生きていたい」との想いを抱き、修復腎移植禁止を見直してもらうため、提訴するしかなかったのです。



2.患者側が訴訟を提起せざるを得なくなったのは、「提訴を目前に、原告入りするはずだった2人の患者が相次いで死去」(東京新聞)するほど、ぎりぎりの状況にあるからです。そうした原告側の事情について詳しく言及しているのが、東京新聞「こちら特報部」です。紹介しておきます。 

(1) 東京新聞平成20年12月11日付朝刊24・25面【こちら特報部】

病腎移植禁止 患者ら移植学会幹部を提訴 
2008年12月11日

 重い腎臓病に苦しむ透析患者たちが10日、病気腎移植の扉を開くため、国が「原則禁止」を決める根拠を示した日本移植学会幹部らを提訴した。提訴を目前に、原告入りするはずだった2人の患者が相次いで死去。移植を求める患者たちは「ぎりぎりの命」にあることを示した。自分が望む治療を受ける権利はどこまで認められるべきなのだろうか。 (片山夏子)

◆「生きたい」願い届かず

 「(禁止を)見直してもらうためには、提訴しかなかった」。この日、原告の患者たちは松山市内で会見した。

 原告団長の野村正良さん(59)は「(宇和島徳洲会病院の)万波誠医師らに問題があったとしても、修復(病気)腎移植は別問題。正当な評価をして、移植を望む患者に少しでも可能性を広げる体制をつくってほしい。このままでは患者は見殺し」と訴えた。

 席上には2人の遺影があった。1人は透析患者の広島県呉市の会社員、下西由美さん(48)、もう1人は兵庫県加古川市のジャズピアニスト有末佳弘さん(50)。8年前に病気腎移植をした女性も3日前に倒れ、透析を再開しており、この場には来られなかった。

 業界紙で働いていた下西さんは先月16日、腎不全からくる不整脈で亡くなった。34歳のときに腎炎を発症。透析を始めたが、父親の淳也さん(80)から腎臓をもらい移植手術を受けた。しかし、3年前に腎臓の機能が低下し、再び透析生活が始まった。「仕事ができなくなる」と腹膜透析に切り替え仕事を続けてきたが、昨年ごろから症状が悪化。仕事も休みがちだった。

 下西さんは、長年の透析患者にみられる骨以外の場所にカルシウムが沈着する石灰沈着に悩まされていた。「体中のあちこちが痛いと言って…。足が痛いと階段の手すりをすがって、すがって下りていた」と伯母の多田みどりさん(85)は話す。寝ているだけで、ひどい床擦れのようになって苦しんだ。

 下西さんの母親も重い腎臓病で亡くなった。淳也さんは「もう1つの腎臓も娘にあげたかった。どんどん症状が進んでいくのを見ているのはつらかった」と目をうるませた。多田さんは、「病気の腎臓をもらっても生きたいか」と聞かれた下西さんが「生きたい」と話していたことを忘れられない。「修復腎移植の再開をずっと期待していた。もうちょっと生きていたら…」

◆「一日も早く認めて」

 訴訟のことを聞き、下西さんは自分から原告になることを決めた。8月に入院しながら書いた文面には「一日も早く病気腎移植を願っています。一筋の光がさすように、切にお願いするものであります」とある。

 闘病を支え続けた元看護師の女性(62)は「最後まで生きようと一生懸命だった。(病気腎移植について)いろいろな考え方があるが、献腎移植が進まない状況の中で、一日でも早く認められ、待っている患者さんが救われたらと思う」と話す。下西さんからは、ドナーカードに記された生前の意思に基づいて角膜が提供された。

◆ジャズピアニスト有末佳弘さん 命削り現状伝える

 ジャズピアニストの有末さんは、43歳で透析を始めた。43キロしかない体重を毎回3、4キロ落とす。全身がつり、苦しんだ。だが、演奏活動をしながら移植や透析の現状を伝え続けた。

 合併症にも次々と襲われた。右手小指が曲がった後は、緑内障が進みほとんど目が見えなくなった。心臓が肥大して何度も生死をさまよった。今年5月のインタビューでは、「毎日死が頭をよぎる。いつまで演奏できるか」と繰り返した。「演奏できるうちに」と、夏にはCDを出した。「心臓肥大で自分は移植は難しいが、一人でも救われたら」と、4日に亡くなる直前まで、インターネット上で「命を削るピアニスト!」として透析生活や移植について伝え続けた。

◆社会でもっと議論を

 長崎医療センター泌尿器科の松屋福藏医長は昨年春、同県の献腎移植待機登録を更新した人と、県内の民間透析施設の患者に病気腎移植についてアンケート。更新者74人と透析患者87人から回答を得た。

 「家族が反対してもしたい」は更新者10人、透析患者4人。「あまりしたくないが透析から抜けられるなら」「家族が賛成してくれるなら」など条件つきを含めると、移植希望者は更新者39人(53%)、透析患者39人(45%)だった。「絶対に受けない」は、更新者の43%、透析患者の47%だった。

 松屋氏は万波誠医師らのやり方には問題があったとしながらも、「献腎移植が伸びない現状で、今後、ドナー不足を補う可能性を秘めている。ドナー適応拡大には、医学的妥当性の検討や社会の理解が必要だが、まずは患者がどう考えているのかが知りたかった。患者の声を真剣に受け止め、病腎移植の是非について、少なくとも議論をしなくてはならないのではないか」とする。

◆リスクと便益 自己決定権にも限度

 虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長は「宇和島の移植は、実験的医療として正当化する手続きができていなかった。インフォームドコンセントの常識に欠け、通常医療としての手続きも不十分だった」と批判する。学会側についても「どこでも行われているような腎の摘除を、正当な理由なしにやってはいけないと断罪した」と指摘した。

 病気腎移植については「医学的には大きな実験部分はない。これまでの結果を検討すれば、がんは大きな問題にならないことが分かるのではないか」とした上で、「家族間の生体腎移植にも倫理的問題がある。病気腎移植についても社会で議論すべきだ」と話す。

 国の対応については、「手続きやルールの障壁が大きすぎて新しい医療の阻害要因になっている可能性がある。新たな試みをする医師がいて、リスク(危険性)を納得して受ける患者がいたら、国なりに支援し、陰でやらないようにすべきだ。国が医療の善悪を判断して、可能性があることを阻止してはならない」と指摘した。ただし、患者の自己決定権にも限度はあるといい、「医学的に適切でないことはできない。リスクと便益を比べ、明らかにリスクが高いときもできない」。そして、病気腎移植についてもっと議論を深める必要性を強調する。

 「国は過去(に行われた移植)の手続き上の問題を言い募るより、今後これをどのようにして医療の中に組み込むか、または組み込まないかを考えるべきではないか」


<デスクメモ>

 高校三年の冬、自然気胸で入院した。受験が迫り、手術は避けたかったが、医師の「手術で確実に治る」の一言で決心。「退院が入試に間に合わなくても自分で選んだ道」。そう考えたら迷いは消えた。病気腎移植。切実さは患者しか分からないかも。でも、願いに迷いがないことは分かる気がする。 (剛)」

(*見出しの文章は紙面のままですが、見出しの位置は文中の適切な箇所においています。)


 
(2) 原告となる予定であった方がお二人亡くなられました。

 イ:原告予定だった「下西さんは先月16日、腎不全からくる不整脈で亡くなった」のですし、ピアニストの有末佳弘さんは12月4日朝、亡くなられました。こうして次々と命を失ってしまうほど、患者の側は切実であって「ぎりぎりの命」なのです。

もし、修復腎移植が認められていたらと思うと、お二人は無念だったはずです。

「下西さんの母親も重い腎臓病で亡くなった。淳也さんは「もう1つの腎臓も娘にあげたかった。どんどん症状が進んでいくのを見ているのはつらかった」と目をうるませた。多田さんは、「病気の腎臓をもらっても生きたいか」と聞かれた下西さんが「生きたい」と話していたことを忘れられない。「修復腎移植の再開をずっと期待していた。もうちょっと生きていたら…」


ご本人自身が辛い状態にあるのはもちろんなのですが、周りにいる家族もまた、辛い状態の家族に対して何もできないでいることが辛いのです。厚労省や日本移植学会は、なぜこうした多くの想いを見殺しにするのが、不可思議でなりません。


 ロ:深刻なドナー不足の現状からすれば、多数の腎臓移植を可能にするための実効的で現実的な方策を打ち出さなければなりません。過去のことではなく、今現在、何をすべきかが問題なのです。

 「虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長は……病気腎移植については「医学的には大きな実験部分はない。これまでの結果を検討すれば、がんは大きな問題にならないことが分かるのではないか」とした上で、「家族間の生体腎移植にも倫理的問題がある。病気腎移植についても社会で議論すべきだ」と話す。
 国の対応については、「手続きやルールの障壁が大きすぎて新しい医療の阻害要因になっている可能性がある。新たな試みをする医師がいて、リスク(危険性)を納得して受ける患者がいたら、国なりに支援し、陰でやらないようにすべきだ。国が医療の善悪を判断して、可能性があることを阻止してはならない」と指摘した。ただし、患者の自己決定権にも限度はあるといい、「医学的に適切でないことはできない。リスクと便益を比べ、明らかにリスクが高いときもできない」。そして、病気腎移植についてもっと議論を深める必要性を強調する。
 「国は過去(に行われた移植)の手続き上の問題を言い募るより、今後これをどのようにして医療の中に組み込むか、または組み込まないかを考えるべきではないか」」


虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長は、「病気腎移植については医学的には大きな実験部分はない。これまでの結果を検討すれば、がんは大きな問題にならないことが分かるのではないか」と述べています。修復腎移植肯定側が一貫して主張していることと同じ内容ですが、このように、真っ当な医師の間では、修復腎移植について正しい理解が進んでいるのです。

このように、修復腎移植という、多数の腎臓移植を可能にするための実効的で現実的な方策について、国側が「今後これをどのようにして医療の中に組み込むか、または組み込まないかを考えるべきではないか」ということなのです。



(3) こうした切実な患者側の事情に対して、被告側はどのようなコメントを残しているのでしょうか? 患者の「生きたい」という想いに答えた回答をしているのでしょうか。引用しておきたいと思います。 

「被告の1人、大島伸一元移植学会副理事長(現国立長寿医療センター総長)は「専門家として説明責任を果たしたが、患者に不利益を与えた覚えはまったくない」と話している。」(2008/12/10 13:27 【共同通信】)


「一方、被告の一人で、声明当時、同学会理事長だった田中紘一・先端医療振興財団先端医療センター長は「学会としてはデータなどあらゆる検証をして声明を出した」と話している。」(毎日新聞 2008年12月10日 19時53分(最終更新 12月10日 20時11分))


 「被告の1人、学会の相川厚理事は「5学会で共同声明を出した時と(意見は)変わらない。移植を受ける側の問題だけではない。提供する人に不利益があり、やるべきではない」と話した。」(東京新聞)


読んですぐに分かるように、切実な患者側の事情、患者の「生きたい」という想いに答えた回答ではありません。こういう見殺しの発言が、この医師たちの医療倫理だということです。


 イ:大島伸一氏は、「患者に不利益を与えた覚えはまったくない」と言い張ります。

しかし、原告予定だった2人が死亡しているという客観的現実自体が、「患者に不利益を与えた」という事実を示しています。大島伸一氏は、「患者に不利益を与えた覚えはまったくない」というのですが、いくら覚えないと言ったところで、2人死亡という客観的事実を否定することはできません。


 ロ:また、田中紘一氏は、「学会としてはデータなどあらゆる検証をして声明を出した」と述べていますが、呆れるほどの大嘘を述べています。

石井一議員による「病腎移植に関する質問主意書」でも触れているように、<1>五つの調査委員会のうち三つがそれぞれ異なる調査報告を行い、二つが最終報告をまとめていない状況で、厚生労働省が病腎移植原則禁止の通達を出したこと、<2>日本移植学会の幹部である高原史郎大阪大学教授は、市立宇和島病院の症例25のみを解析し、42症例すべての統計的なデータに基づいた判断をしなかった、<3>論拠に挙げた論文については、意図的に誤って引用したり、著しくデータの古い論文を使ったものであり、いわば、ねつ造データを故意に提出したのです。

「二 五つの調査委員会のうち三つがそれぞれ異なる調査報告を行い、二つが最終報告をまとめていない状況で、厚生労働省が病腎移植原則禁止の通達を出した理由を明らかにされたい。

三 厚生労働省は、「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の一部改正に関する意見募集の結果について、「関係学会声明や病腎移植を実施した各病院の調査委員会報告等において指摘された問題点を基に、これらの問題に対応するための措置を検討し、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会の審議を経て、行政手続法の定める手続きに従い、運用指針の改正を行う」としている。しかし、病腎移植の妥当性の根拠となる関係学会声明では、例えば病腎移植の「生着率」と「生存率」が挙げられているが、日本移植学会の幹部である高原史郎大阪大学教授は、生着率と生存率の数値が低い市立宇和島病院の症例二十五のみを解析した。なぜ厚生労働省は、四十二症例すべての統計的なデータに基づいた判断をしなかったのか、明らかにされたい。

四 「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の一部改正に関する意見募集の結果については、がんに冒された臓器(以下「担がん臓器」という。)移植の転移率が高い論拠として、「Transplantation 2002;74:358」、「Ann Transplant 1997;2:7」、「Ann Transplant 2004;9:53」という海外の論文を挙げている。しかし、実は担がん臓器の移植におけるがんの転移は極めて少ないとの論旨を、反対の視点から部分的、意図的に誤って引用しているなどの問題がある。さらに、他の論文も著しくデータの古いもので、最新の医学的根拠としてはあまりにも不適切ということを厚生労働省は認識しているのか、明らかにされたい。
 また、以上のような論文のねつ造的解釈、誤った引用があまりにも目に余り、これでは全く誤った情報を流布することにより、国民をあらぬ方向に誘導しようとしているのではないかと考えるが、政府の認識を明らかにされたい。」(「病腎移植に関する質問主意書」)



 ハ:相川厚氏は、「移植を受ける側の問題だけではない。提供する人に不利益があり、やるべきではない」と述べています。

もちろん、修復腎移植肯定側も、腎臓を提供する側に不利益を与えてもいいなどとは一切考えていません。今現在、(腎がんを)治療した腎臓はその8割が全摘されて捨てられてしまっているので、その捨てている腎臓を移植用に使うことを提言しているのです。最初から。

径4 cm以下の小径腎癌は部分切除が標準治療であるという移植学会見解に対する反論

筆者は4つの大学病院を含む14病院の実態(2004~2006年)を、病理医の協力を得て、病理診断標本に基づく調査をした。すべての腎切除例が病理診断に提出されるため、データは非常に正確である。データが大きく分散していたために中央値で判断すると、径4 cm以下の小径腎癌(T1a期)症例の83%が腎全摘されていた。16) この数字は、筆者の経験的な印象にぴったりと一致した。一部の大学病院では小径腎癌手術の大部分が部分切除だったが、泌尿器科講座教授の治療方針に依存していた(その教授が赴任した途端に部分切除が増えるのが通例)。市中病院では、腎全摘例が圧倒的に多い傾向がみられた。米国やオーストラリアの臨床集計でも、小径腎癌の9割程度が腎全摘されており、現状では腎部分切除が標準治療ではない。28) 筆者がビギナー病理医のころ(30年ほど前)、1~2 cm程度の小さな腎腫瘍は、組織学的に腎細胞癌(明細胞癌)と全く区別できない場合でも、腎皮質腺腫(良性)と診断せよと教えられた(現在では当然、悪性=腎細胞癌と判断される)。小径腎細胞癌の転移・再発率はそれほど低いのである。29) 」(藤田保健衛生大学医学部第一病理学・堤寛教授「病腎移植(レストア腎移植):知られざる事実」(「現代医学」56(1)、2008.7(愛知県医師会雑誌:インフォメーション))


堤寛教授が指摘しているように、日本では「径4 cm以下の小径腎癌(T1a期)症例の83%が腎全摘されていた」のであり、「米国やオーストラリアの臨床集計でも、小径腎癌の9割程度が腎全摘されており、現状では腎部分切除が標準治療ではない」のです。

ですから、東京新聞の記事にもあるように、虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長は、日本移植学会側に対して、「どこでも行われているような腎の摘除を、正当な理由なしにやってはいけないと断罪した」と批判しているのです。

要するに、日本移植学会幹部は、十分な経験のある、真っ当な泌尿器科医や病理医であれば、誰でも、「どこの病院でも普通に腎臓の全摘除術を行っている」ことを知っているのに、「全摘除術をやってはいけない」などと全くの出鱈目な主張をしていたのです。

このように、ドナー側が捨てている多量の腎臓を、移植用に使うのですから、ドナー側には一切不利益はありません。もちろん、現状でも、無理やり全摘を推進しているような事実はなく(そういう現状でも8割全摘になっているのです)、修復腎でも構わないという患者に対してのみ、移植用に使用するのです。

それなのに、相川厚氏は、「提供する人に不利益があり」と述べているのですから、これもまた大嘘なのです。ただし、おそらくは、嘘を付くつもりはないのでしょう。しかし、なぜ、嘘を付いてしまうのかというと、腎臓移植専門と思われる相川厚氏は、おそらくは、泌尿器科の医療事情・実態をほとんど知らないのだと思うのです。だから、結果的に嘘になってしまうのです。

原告側は、同学会側の見解について「全くの的外れか、事実と異なる虚偽の内容だ」として、病気腎移植を受ける権利が侵害されたと主張しています。ここで簡単に指摘した事実から分かるように、原告側の主張が正しいことは、最初から明らかなのです。




3.患者側は、「まだ生きていたい」との想いを抱き、修復腎移植禁止を見直してもらうためには、提訴するしかなかったのです。 ぎりぎりの命の状況にある者が、自分が望む治療を受ける権利は認められないのか否か――。この裁判では、その点が問題とされているのです。




<追記>

「msn産経ニュース(2008.12.10 13:53)」も引用しておきます。産経新聞東京版での紙面では、わずかしか掲載していないこと(24面)、損害賠償額が産経新聞のみ異なっているので(他紙が6050万円、産経のみ5500万円)、追記扱いとしました。(関西版では1面での紹介でした。)

「病腎移植の原則禁止は生存権侵害」腎臓病患者が日本移植学会役員らを提訴
2008.12.10 13:53

 治療のために摘出、修復した腎臓を別の患者へ移植する「病腎(修復腎)移植」を厚生労働省と日本移植学会が原則禁止としている問題で、重度の腎臓病患者ら7人が10日、治療の選択権と生存権を侵害されたとして元日本移植学会理事長の田中紘一氏と同学会理事長の寺岡慧(さとし)氏ら学会関係者5人を相手取り、計5500万円の損害賠償を求める訴えを松山地裁に起こした。

 病腎移植の患者が同学会役員に賠償を求め提訴するのは全国で初めて。年明けには厚労省に対する国家賠償請求も予定している。

 原告団は愛媛、香川、広島、岐阜の4県の透析患者4人と移植患者3人。訴状などによると原告側は、病腎移植が問題として浮上した平成18年11月以降、学会役員らが厚労省や学会関係者、報道機関などに対し、病腎移植の医学的妥当性を否定する発言を続けたことにより、19年7月、臨床研究以外の病腎移植を原則禁止するとの厚労省の判断を導いたと主張している。

 さらに病腎移植の手術後の経過などをもとに、同移植の妥当性や有益性を認める専門家が国内外にいることを踏まえ、「病腎移植は腎臓移植を望む患者にとって非常に有効な治療法」であると強調。学会役員らの発言は真実と異なり、病腎移植が保険診療の適用外とされたことで手術を受ける機会が大幅に奪われ、患者の生存権と治療の選択権を妨害する結果を招いたとしている。

 被告の一人となった元学会副理事長の大島伸一氏(現・国立長寿医療センター総長)は「(私どもの発言が)患者さんらに損害を与えたつもりはないし、法廷で争う事態になることは非常に悲しく、遺憾に思う」と話している。

 患者の治療の選択権をめぐっては、信仰上の理由で拒否したにもかかわらず輸血が行われた「エホバの証人輸血拒否訴訟」で最高裁が12年2月、患者の自己決定権を認める判断を下している。

 厚労省は11日にも、国会の超党派議員らで組織する「修復腎移植を考える超党派の会」の所属議員に対し、病腎移植についての見解を示すとみられる。7人の原告団は国の動向を見極めながら、治療選択権の侵害などを理由に、国家賠償を求める訴訟の準備を進めている。

    ◇

【用語解説】病腎移植(修復腎移植)

 腎がんなどの患者から治療のために摘出した腎臓を、修復(レストア)したうえで腎不全患者に移植する生体移植。国内では宇和島徳洲会病院の万波誠医師らを中心とするグループが手がけた。移植関連学会などは、医学的な妥当性や患者選択の公平性などの問題を指摘しているが、海外では豪州で広く普及しているほか米国でも多数の手術例が報告されている。今年1月、全米移植外科学会に招かれた万波医師が日本での病腎移植の実績を報告し、高い評価を受けた。」



テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
春霞様
東京新聞のご紹介ありがとうございました。こちらではすぐに読めないものでいつも助かります。

堤教授の「径4 cm以下の小径腎癌(T1a期)症例」は8割以上が全摘されているとの調査結果と同様、先般の松屋医師(長崎医療センター長)も同様の見解であり、その上に、4㎝以下ならば、修復して移植しても5%のリスクはあるものの、医学的に移植は可能であり、問題ないと思う。と講演されました。
東京新聞の虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長のコメントと同様です。
第3者の専門家の証言として非常に重いものがあると思います。
ただ現場の一般医師は、学会のタブー視する雰囲気からこの問題を口にはしにくいが、心の中では同じ様に賛同している医師が多い・・・。学会はタブー視することなくもっと議論すべきだとも述べられました。

学会幹部の言ってきたことは、どんどんと大嘘がばれてきていますね。

下西さん、有末さんともお二人は今年お会いしただけにまさか・・・と信じられない思いです。もう少しでも長生きしていただきたかったと残念無念です。

学会は、過去よりこれからのことを前向きに検討すべきだとつくづく思います。
2008/12/12 Fri 23:18:34
URL | hiroyuki #GV3c5tEI[ 編集 ]
>hiroyukiさん:2008/12/12 Fri 23:18:34
コメントありがとうございます。


>先般の松屋医師(長崎医療センター長)も同様の見解であり
>東京新聞の虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長のコメントと同様です。
>第3者の専門家の証言として非常に重いものがあると思います。

そうですね。さすがにあの移植学会の方々も、小松秀樹部長のことを「万波病」だと揶揄しないでしょうね、きっと。

病理医の方はもちろん、十分に実績のある泌尿器科医や腎臓移植医の方々にとっては、修復腎移植は認められるということなのでしょう。


>ただ現場の一般医師は、学会のタブー視する雰囲気からこの問題を口にはしにくいが、心の中では同じ様に賛同している医師が多い

学会から何かされるのかでしょうか、どうにもタブー視する意識が今一歩理解できません。多数の患者の命を大事にするのであれば、タブー視する意識にならないと思うのですが……。


>下西さん、有末さんともお二人は今年お会いしただけにまさか・・・と信じられない思いです。もう少しでも長生きしていただきたかったと残念無念です。

修復腎訴訟は、いよいよこれからという時でしたのに、大変残念です。ご冥福をお祈りしたいのですが、お二人の無念さを思うと……。


>学会は、過去よりこれからのことを前向きに検討すべきだとつくづく思います

同感です。今、ドナー不足の状況を具体的にどう対処したらいいのかを、学会も真剣に考えて欲しいです。
2008/12/15 Mon 23:59:35
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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