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2008/11/29 [Sat] 23:47:35 » E d i t
国籍法改正案は、平成20年11月18日午後の衆院本会議で、全会一致で可決、参院に送付されました後、反対にあって迷走を続けていましたが、早ければ来月2日の委員会で付帯決議とともに採決され、3日にも参院本会議で可決・成立する見通しとなりました。

日本人の父と外国人の母をもつ子の日本国籍取得について最高裁は今年6月4日、両親の結婚を国籍取得の要件とした現行国籍法の規定を違憲とする判決を下しました。これを受けて、政府提出の改正案は、同規定の部分を削除した規定になっています。最高裁判決自体の検討については、「婚外子国籍確認訴訟(1):最高裁平成20年6月4日大法廷判決は、両親の結婚を国籍取得の要件とした国籍法3条1項を違憲と初判断」(2008/06/07 [Sat] 05:36:09)をご覧下さい。


1.国籍法改正案の閣議決定、衆議院での採決、12月3日に成立という報道を合わせて引用しておきます。

(1) asahi.com(2008年11月4日12時2分)

国籍法改正案を閣議決定
2008年11月4日12時2分

 母親が外国人で、結婚していない日本人の父親から出生後に認知された「婚外子」が日本国籍を取得できるようにする国籍法改正案が4日、政府で閣議決定された。今年6月にあった最高裁の違憲判決を受けた改正で与野党ともに異論はなく、臨時国会での成立を目指す。

 最高裁は6月4日、結婚していないフィリピン人の母と日本人の父の間に生まれ、出生後に父親から認知された10人の子が日本国籍を求めた訴訟の判決で、両親の結婚を国籍取得の要件とした国籍法の規定を違憲と判断。法務省が改正に向けて動いてきた。

 改正により、両親が結婚しているかどうかに関係なく、出生後に認知された子供も出生前に認知された子供と同様、日本国籍の取得が認められる。最高裁判決を踏まえ、03年1月以降に届け出をしていた人はさかのぼって取得を認める。

 「偽装認知」による不正な国籍取得を防ぐため、うその届け出には罰則(1年以下の懲役か20万円以下の罰金)を新設する。(延与光貞)」



(2) NHKニュース(11月18日 15時14分)

国籍法改正案 衆議院を通過

 結婚していない日本人の男性と外国人の女性の間に生まれた子どもに、父親が認知すれば日本国籍を認めるなどとした国籍法の改正案は、18日の衆議院本会議で採決が行われ、全会一致で可決され、参議院に送られました。

 国籍法の改正案は、日本人の男性と外国人の女性の間に生まれた子どもの国籍について、両親が結婚していなくても、父親が認知すれば日本国籍を認めるとしています。その一方で、父親の認知だけで日本国籍を認めれば、外国人の女性と子どもが日本で暮らすために、別の男性から虚偽の認知をしてもらうおそれがあるとして、虚偽の認知をもとにした届け出を行えば、1年以下の懲役か、20万円以下の罰則を科すことを盛り込んでいます。

 国籍法の改正案は、18日の衆議院本会議で採決が行われ、全会一致で可決され、参議院に送られました。ただ、採決の前に、自民党の一部の議員は「虚偽の認知による国籍が売買されるおそれがあり、改正案には賛成できない」として、採決に加わらず退席しました。」



(3) 朝日新聞平成20年11月28日付朝刊4面

国籍法改正案、3日にも成立 付帯決議案固まる
2008年11月28日6時18分

 参院での採決が先送りされている国籍法改正案について、与野党の参院法務委員会理事は27日、「半年ごとの国会への報告」などを盛り込んだ付帯決議案に合意した。懸念されている偽装認知を防ぐために、同委に半年ごとに施行状況を報告することを求めるほか、DNA鑑定導入の「要否及び当否を検討する」としている。

 決議案が固まったことで、改正案は早ければ来月2日の委員会で付帯決議とともに採決され、3日にも参院本会議で可決・成立する見通しとなった。ただ、自民、民主両党内には慎重論がくすぶっており、民主党は週明けに党内向けの説明会を開いて改正に理解を求める方針。

 付帯決議案はこのほか、父親への聞き取り調査の「可能な限りの実施」、出入国記録の調査なども求める。聞き取り調査では、父親の出生から現在までの戸(除)籍謄本、子の出生証明書、分娩(ぶんべん)の事実の記載がある母子手帳、母子の外国人登録原票の写しなど11点の資料提出などが想定されている。詳細は法務省が省令改正や通達で対応する。

 一方、新党日本の田中康夫代表は27日の質疑で、「『人身売買促進法』と呼びうる危険性をはらむ」としてDNA鑑定を法案修正で義務づけるよう求めた。付帯決議で言及する案については「官僚の裁量行政に陥る」と批判した。田中氏は民主党系会派に所属している。」



国籍法改正案では、父親の認知だけで国籍が取得できるようになるため、日本人男性に金銭を払うなどして虚偽の認知で国籍を取得する「偽装認知」には、新たに罰則を設けています(時事通信:2008/11/18-07:56)。すなわち、「うその届け出には罰則(1年以下の懲役か20万円以下の罰金)を新設」(朝日新聞)しています。

ところが、この罰則規定では不十分であるとして、「改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づける規定を設けるべきである」との主張があります。なぜだかインターネット上では、この主張が有力であるようです。では、この主張は妥当なのでしょうか。以下、検討してみたいと思います。
<11月30日追記>:まとめサイトについて紹介しました。)



2.最高裁平成20年6月4日大法廷判決は、「国籍法3条1項が,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子につき,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り日本国籍の取得を認めていることにより国籍の取得に関する区別を生じさせていることは,遅くとも平成17年当時において,憲法14条1項に違反する」と判断し、 国籍法3条1項の準正要件(=両親の結婚を国籍取得の要件)は、憲法14条1項(法の下の平等)に違反するとしました。

(1) 最高裁平成20年6月4日大法廷判決は、憲法14条1項(法の下の平等)違反の有無を検討する際に、その多数意見において「仮装認知・偽装認知」について触れつつ、憲法14条1項違反であると明示しています。その箇所を引用しておきます。

 「なお,日本国民である父の認知によって準正を待たずに日本国籍の取得を認めた場合に,国籍取得のための仮装認知がされるおそれがあるから,このような仮装行為による国籍取得を防止する必要があるということも,本件区別が設けられた理由の一つであると解される。しかし,そのようなおそれがあるとしても,父母の婚姻により子が嫡出子たる身分を取得することを日本国籍取得の要件とすることが,仮装行為による国籍取得の防止の要請との間において必ずしも合理的関連性を有するものとはいい難く,上記オの結論を覆す理由とすることは困難である。

 ( 3) 以上によれば,本件区別については,これを生じさせた立法目的自体に合理的な根拠は認められるものの,立法目的との間における合理的関連性は,我が国の内外における社会的環境の変化等によって失われており,今日において,国籍法3条1項の規定は,日本国籍の取得につき合理性を欠いた過剰な要件を課するものとなっているというべきである。しかも,本件区別については,前記(2)エで説示した他の区別も存在しており,日本国民である父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子に対して,日本国籍の取得において著しく不利益な差別的取扱いを生じさせているといわざるを得ず,国籍取得の要件を定めるに当たって立法府に与えられた裁量権を考慮しても,この結果について,上記の立法目的との間において合理的関連性があるものということはもはやできない。

 そうすると,本件区別は,遅くとも上告人らが法務大臣あてに国籍取得届を提出した当時には,立法府に与えられた裁量権を考慮してもなおその立法目的との間において合理的関連性を欠くものとなっていたと解される。したがって,上記時点において,本件区別は合理的な理由のない差別となっていたといわざるを得ず,国籍法3条1項の規定が本件区別を生じさせていることは,憲法14条1項に違反するものであったというべきである。」



要するに、この判決文の意味は、森英明・前最高裁判所調査官によれば、

「多数意見は、同じく日本国民を血統上の親として出生し、法律上の親子関係を有するにもかかわらず、日本国民である父から生後認知されたにとどまる非嫡出子のみが同項により国籍を取得することもできないことによって被る不利益は看過し難く、このような非嫡出子についてのみ、父母の婚姻が行われない限り届出によっても国籍取得を認めないとしていることは、立法目的との合理的関連性の認められる範囲を著しく超える手段を採用し、不合理な差別を生じさせており、簡易帰化や仮装認知のおそれについても、上記結論を覆す理由とすることは困難であるとしている。」(森英明「国籍法意見訴訟最高裁大法廷判決の解説と全文」ジュリスト1366号(2008年11月1日号)95頁以下)

のです。このように、「仮装認知・偽装認知」のおそれがあったとしても、国籍取得に関して「仮装認知・偽装認知」を理由として、準正子と非準正子を区別することは、不合理な差別であるとして憲法14条1項に違反するとしたわけです。



(2) この最高裁判決を前提として、立法論として「改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づける規定」は創設可能なのでしょうか?

 イ:この点、近藤崇晴裁判官の補足意見が次のように述べているため、最高裁も、DNA鑑定を義務づける規定は創設可能としているのではないかと、受け取る向きもあるようです。例えば、早川眞一郎・東京大学教授(国際取引法)は、「認知届にプラスして血縁関係の医学的証明を提出させるとすれば、虚偽認知の可能性を未然に防ぐことができます。ちなみに、近藤補足意見も、このような立法の選択肢があり得ることを示唆しています」と述べています(「鼎談 国籍法違憲判決をめぐって」ジュリスト1366号(2008年11月1日号)72頁)。では、近藤崇晴裁判官の補足意見を一部引用しておきます。

 「また,認知と届出のみを要件とすると,生物学上の父ではない日本国民によって日本国籍の取得を目的とする仮装認知(偽装認知)がされるおそれがあるとして,これが準正要件を設ける理由の一つとされることがあるが,そのようなおそれがあるとしても,これを防止する要請と準正要件を設けることとの間に合理的関連性があるといい難いことは,多数意見の説示するとおりである。しかし,例えば,仮装認知を防止するために,父として子を認知しようとする者とその子との間に生物学上の父子関係が存することが科学的に証明されることを国籍取得の要件として付加することは,これも政策上の当否の点は別として,将来に向けての選択肢になり得ないものではないであろう。

 このように,本判決の後に,立法府が立法政策上の裁量権を行使して,憲法に適合する範囲内で国籍法を改正し,準正要件に代わる新たな要件を設けることはあり得るところである。このような法改正が行われた場合には,その新たな要件を充足するかどうかにかかわらず非準正子である上告人らが日本国籍を取得しているものとされた本件と,その新たな要件の充足を要求される法改正後の非準正子との間に差異を生ずることになる。しかし,準正要件を除外した国籍法3条1項のその余の要件のみによっても,同項及び同法の合憲的で合理的な解釈が可能であることは多数意見の説示するとおりであるから,準正要件に代わる新たな要件を設けるという立法裁量権が行使されたかどうかによってそのような差異を生ずることは,異とするに足りないというべきである。」



 ロ:しかし、どちらかというと、一般的には、最高裁の多数意見の論理からすれば、こうした近藤崇晴裁判官の補足意見が示唆するような立法論、すなわち、「改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づける規定」は困難であると判断しているようです。

例えば、森英明・前最高裁判所調査官は、近藤裁判官の補足意見に触れ、その後、

 「そもそも、多数意見のように、準正子に現行法の要件で届出による国籍の取得を認めること自体を維持すべきものとした上で、準正子と非準正子とを我が国との結び付きという点で区別することに合理性がないとするのであれば、立法上の合理的な選択の余地は相当限定されているのではないかとも考えられる。」(森英明「国籍法意見訴訟最高裁大法廷判決の解説と全文」ジュリスト1366号(2008年11月1日号)99頁以下)

としています。

また、佐野寛・岡山大学教授(国際私法)も次のように述べています。

 「偽装認知の防止

 国籍法3条1項が認知に加えて両親の婚姻を要件とした実質的な理由の1つとして、偽装認知による国籍取得の防止が挙げられている。もっとも、この問題について、最高裁は、前述したように、国籍法3条の立法目的とは合理的関連性を有さないと的確に判断したため、今回の法改正では、虚偽の届出に対して罰則を新設することで対応するとのことである。」(佐野寛「国籍法違憲判決と国籍法の課題」ジュリスト1366号(2008年11月1日号)91頁以下)

としています。

要するに、森英明・前最高裁判所調査官や佐野寛・岡山大学教授(国際私法)は、多数意見は、偽装認知を防止する要請と準正要件を設けることとの間に合理的関連性がないとしただけでなく、「準正子と非準正子とを我が国との結び付きという点で区別することに合理性がないとする」もの、すなわち、国籍取得に関して「仮装認知・偽装認知」を理由として、準正子と非準正子を区別すること自体が不合理な差別であるとしたものだというわけです。

だからこそ、最高裁の多数意見の論理からすれば、「立法上の合理的な選択の余地は相当限定されている」のであって、偽装認知の防止は「罰則を新設することで対応する」程度でしか、できないというわけです。すなわち、この「立法上の合理的な選択の余地は相当限定されている」という意味は、多数意見の論理からすれば、暗に、「改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づける規定」の創設は困難であるとの判断を示しているように、思えます。




3.「改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づける規定を設けるべきである」という考えは、その論理を分析すると、父として子を認知しようとする者とその子との間に生物学上の父子関係が存することをDNA鑑定で証明し、父子関係があると立証された場合のみ国籍取得を認めようとするものです。

要するに、「改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づける規定を設けるべきである」という考えは、「父子関係の立証に関して、明文上、DNA鑑定で判断すべきである」という考えを、当然に含んでいるわけです。

(1) では、日本政府は「改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づける規定を設けるべきである」という考えにつき、どのように評価しているのでしょうか? 第170回国会・衆議院法務委員会(平成20年11月14日)での答弁を引用しておきます。

「 ○赤池委員 大臣から、みずからお言葉をいただきまして、本当にありがとうございます。
 そういう面では、万能の制度はないわけでありますので、運用の中でやっていきたいというお言葉をいただきました。私の危惧が危惧で終わればいいと思っておりますし、そういう面では見直し条項もございますので、的確な対応をお願いしたいと思います。
 次に、第二番目の私自身の共同体としての国家の危機の懸念は、この後審議をされる予定であります国籍法の改正についてであります。
 国籍というのは御承知のとおり、まさに国家共同体の構成員を決める大切なルールであります。それが、一般の国民の中に崩れつつあるのではないかという懸念であります。
 本年六月四日に最高裁判決が指摘した違憲状態を解消するために、今回法案を提出されるということであります。しかし、それに先立ってこの数日間、きょうの朝も物すごいファクスと電話、電子メールのすべてが批判であります。反対の意見であります。
 内容を見てみますと、組織的に、同じような内容もある反面、みずからの言葉で今回の国籍法改正に対して大変な心配、危惧を抱かれている国民の方が全国各地、老若男女、そんな反対の声を寄せていただいているということであります。そういう面では、その疑念にしっかり国会としてこたえていかなければいけないということも感じております。
 その中での代表的な疑念、質問を三つ、それぞれ法務当局からの見解をお伺いしたいと思います。
 一つは、国籍取得届の虚偽届けについての刑罰が、今回新設をしようとしているわけでありますが、余りにも軽過ぎるのではないかという懸念であります。二つ目が、偽装認知を防止するためにDNA鑑定の導入を、必ず入れるべきではないかという意見であります。三つ目は、偽装結婚も横行していると言われている中で、偽装認知を防止するためにどのような形で実効ある対策を打とうと考えているのか。
 この三点、法務当局の見解をお尋ねいたします。

○倉吉政府参考人 赤池委員から大変重い御指摘をいただきました。
 今回の改正、最高裁の判決が出た、それに伴う違憲状態を解消するための改正ではございますが、ただいま御指摘のようなさまざまな御批判等々の文書が先生方のところにも来ているということも私ども承知しております。できるだけそのような御懸念、特に委員のおっしゃっていた国家のあり方にかかわるということを十分に踏まえつつ、そのような御懸念のないように私ども精いっぱい努めてまいりたいと思っております。
 簡単に、ただいま御指摘のありました三点について申し上げます。
 まず、罰則の点でございます。これは今度、虚偽の国籍取得届けがされたという前提でお話しだと思いますので、それでされたと。そうすると、害されるのは法務局等の事務の適正や信頼ということになります。しかし、何だ、役所の事務が害されるだけかということになろうかとは思いますけれども、そうは申しましても、国籍取得に関する事案というのは、日本国の構成員である日本国民の資格、これを適切に認定するための重要な責務であります。
 そこで、類似の規定を見てみました。例えば、戸籍の記載または記録を要しない事項について虚偽の届け出をするという戸籍法百三十二条という規定がございます。あるいは、外国人登録法の関係で、その申請の関係でさまざまな虚偽の申請をするということが起こり得る。これについて定めている外国人登録法十八条というのがございますが、これらの規定の法定刑がいずれも一年以下の懲役または二十万円以下の罰金でございます。そこで、これに合わせまして今回も一年以下の懲役または二十万円以下の罰金としたところでありまして、これ自体は適切であると考えております。
 一つつけ加えさせていただきますが、よく誤解されやすいのが、いわゆる偽装認知、虚偽の認知をして届け出をしたときはこの一年以下だけなのかというふうに誤解されている向きがあるということでございます。
 この一連の届け出をいたしますには、まず認知届けというのを市町村に父親がいたします。そうすると、それについて、父親の戸籍の身分事項欄に、子の○○、どれそれという子を認知したというのが載るわけでございます。それから、その戸籍の証明書を持って法務局に参ります。それで、今回新設するこの罰則に当たるところですが、国籍取得届けというのをいたします。法務局では、そこで国籍があるという証明書を出しますと、それを持って今度、三回目、また市町村に参ります。そこの市町村で新たに届け出をいたしますと、今度はその子が日本人になるということになりますので、その子供の戸籍を新たにつくる。つまり、三段階あるわけでございます。
 この第一の段階と第三の段階で、認知が実はうそなのに、親子関係がないのに虚偽の認知をしたということで届け出をしたということになりますと、これは公正証書原本不実記載等、戸籍に載りますので広く世の中をだますことになる、こういうことでございます。この罪名で、五年以下の懲役または五十万円以下の罰金となります。
 だから、それぞれ個々の事案で、恐らくこの三つまで行ってしまうというのが多いだろうとは思いますが、途中で発覚して途中にとどまったとしても、それぞれの罰が科されるということになるので、適正な科刑ができる、こう考えているわけでございます。
 それから、DNA鑑定の話がございました。偽装認知のためにDNA鑑定すべきじゃないかと。これもよくわかる議論なんですが、実は、委員の皆様方御承知と思いますが、日本の民法の親子関係を決める手続というのは認知で決まる、そのときにDNA鑑定を出せなんということは言わないわけでございます。ここに家族の情愛で自分の子供だと認知したというんだったら、それでとりあえずの手続を進めて、後でおかしなことがあったら、親子関係不存在とかそういうのでひっくり返していく、あるいは嫡出否認なんかでひっくり返していく、こういう法制度、これが日本の独特の制度でございます。
 それを踏まえますと、DNA鑑定を最初の認知の段階で持ち込むことになりますと、やはり親子関係法制全体に大きな影響を及ぼすな、これを私どもとしては考えざるを得ません。
 さらに幾つか問題がございまして、一つは、DNA鑑定で一番難しいのは、検体のすりかえがないかということであります。すりかえられた検体で来られるとみんなだまされてしまいますから。それから、現在の科学技術水準に合ったきちっとした鑑定ができているか、そこを判断しなければなりません。しかし、それの判断が迫られるのは、最初の認知届が出される市区町村の窓口あるいはこの国籍取得届が出される法務局であります。そういうところでそんな判断はできないという、ここに大きな問題が一つございます。
 それから、鑑定には相当の費用がかかります。そうすると、この費用の負担能力がない人にはどうしても手だてがない。それから、外国国籍の子を認知する機会にはDNA鑑定を義務づけるとすれば、それは外国人に対する不当な差別ではないか、こう言われる可能性もあるということで、DNA鑑定の採用については消極に考えております。
 それでは対策できるのかというのが先生の一番おっしゃりたいことだと思うんですが、申しわけありません、長くなって。
 法務局では、最初に国籍取得の届け出が参ります。これには届け出人が出頭することが必要でありまして、また必要な戸籍などの書類を出していただきます。そのときに、当然に必要なことを聞きます。お父さんとどこで知り合ったのかとか、どこでどういう過程で子供ができたのかというようなことは聞きますし、その関係で必要な書類も確認をいたします。場合によってはというか、これはほとんど必然的だと思うんですが、その父親についての協力も求めたい、こう思っております。その子供が懐胎した時期に同じ国に滞在していなかったんじゃないかとか、そういう疑義が生じたということになれば、偽装認知の疑いもあろうかということになりますので、関係機関とも連絡を密にして、さらなる確認を続けるということで、不正の除去に努めてまいりたい、こう思っております。」


要するに、倉吉政府参考人は、「改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づける規定」の創設は、<1>親子関係法制全体に大きな影響を及ぼす、<2>最初の認知届が出される市区町村の窓口あるいはこの国籍取得届が出される法務局では鑑定書の真正を判断できない、<3>DNA鑑定には相当な費用がかかるため、費用がない者への不合理な差別(憲法14条違反)になるおそれ、<4>外国国籍の子を認知する機会にはDNA鑑定を義務づけるとすれば、それは外国人に対する不合理な差別(憲法14条違反)になるおそれなどの理由で、困難であるという認識を示しています。

この倉吉政府参考人の見解を読めば、「DNA鑑定を義務づける規定を創設すべき」とした早川眞一郎・東京大学教授の主張は、親子法制についての理解を全く欠如しており、広い視野に欠けた、実に浅はかなものであったと理解できるかと思います。



(2) このように、父子関係、広く言えば親子関係の立証につき、DNA鑑定で判断する考えは、「親子関係法制全体に大きな影響を及ぼす」とされていますが、具体的にはどのような影響があるでしょうか?

 イ:まず、筆頭に上げることができるのは、離婚後300日問題です。離婚後300日以内に生まれた子供の嫡出推定を否定する場合、最高裁(最判平10・8・31判時1655号128頁、最判平12・3・14家月52巻9号85頁)は、(子供と現在の夫の間で)DNA鑑定を重視して判断するのではなく、事実上の離婚状態であった場合や外国滞在中であったなど、外観上夫の子でないことが明らかな場合にかぎるという「外観説」を採用しています。ですから、「Because It's There 離婚後300日・無戸籍問題」でも、いまだに根本的な解決になっていません(「無戸籍問題:前夫が関わることなく「認知調停」が可能だったはずが~「前夫に連絡」へとのことで、戸惑う母たち」(2008/07/07 [Mon] 23:16:48)参照)。

ところが、明文上、DNA鑑定による親子関係の立証を認める法制ができれば、DNA鑑定を重視して父子関係の立証を認めるべきであるという法制が可能になってきます。立法によりDNA鑑定を重視する立場を採用すること、すなわち、立法により外観説を否定し、血液型の背馳(東京家審昭52・3・5家月29巻10号154頁)など、実質的にみて親子関係が否定されるときにも推定が及ばないとする説(血縁説)への転換を図れれば、民法の嫡出推定制度を完全に死文化させることができ(真実の父子関係の成立に努める)、根本的な解決になりうるのです。


 ロ:また、死後生殖問題にも影響します。すなわち、夫の死後、妻が冷凍保存されていた夫の精子を使って子を産み、その子が、亡き父に対する(死後)認知を請求した事件について、最高裁平成18年9月4日判決は「現在の民法は死後生殖を想定しておらず、親子関係を認めるか否か、認めるとした場合の要件や効果を定める立法がない以上、法律上の親子関係は認められない」と述べ、男児側の請求を棄却し、法的な父子関係を否定しました(「凍結精子による死後生殖を巡る認知訴訟~最高裁平成18年9月4日判決」(2006/09/06 [Wed] 01:27:47)。なお、「凍結精子による死後生殖を巡る認知訴訟~最高裁平成18年9月8日決定」(2006/09/10 [Sun] 11:55:52)も参照)。

この事件では、確実に、父子の間には自然血縁的な親子関係があるのですが、最高裁は法的な父子関係を否定してしまったのです。ところが、明文上、DNA鑑定による親子関係の立証を認める法制ができれば、立法政策上、自然血縁的な親子関係を重視することに何ら違和感がなくなるのですから、死後生殖につき、法的な父子関係を認めるべきだという立法を肯定する立場にとっては、大きな根拠になってきます。

最高裁は、親子関係を認めるかどうかは、「死後生殖に関する生命倫理や生まれてくる子の福祉、親族など関係者の意識、社会一般の考え方など、多角的な観点から検討した上で、立法で解決すべきだ」と判示しています。そうすると、明文上、DNA鑑定による親子関係の立証を認める法制ができれば、自然血縁的な親子関係重視の姿勢が明確になるのですから、夫の死後、妻が冷凍保存されていた夫の精子を使って子を産み、その子が、亡き父に対する(死後)認知を請求した事件でも、法的な父子関係を肯定する立法も十分に可能です。自然血縁的な親子関係重視なのですから、むしろ、法的な父子関係を肯定すべきという立法こそ好ましいとさえ、いえるのです。


 ハ:さらに言えば、代理出産問題についても同様です。最高裁平成19年3月23日決定は、現行民法の解釈では、その子を懐胎、出産していない女性との間に母子関係を認めることはできないとしました。要するに、卵子を提供し代理出産を依頼した女性と子の間には自然血縁的な親子関係があるのですが、最高裁は法的な母子関係を否定してしまったのです(「向井・高田夫妻の代理出産、出生届不受理決定~最高裁平成19年3月23日決定」(2007/03/24 [Sat] 15:21:14)参照)。

しかし、明文上、DNA鑑定による親子関係の立証を認める法制ができれば、代理出産の問題においても自然血縁的な親子関係を重視することに何ら違和感がありません。DNA鑑定によれば母子関係があることを明確に肯定できるのですから、むしろ、代理出産においては、卵子を提供し代理出産を依頼した女性と代理出産により生まれた子の間には法的な母子関係を認めるべきだという論理の方が自然であると判断できるのです。(なお、早川眞一郎・東京大学教授は、代理出産を否定しているのですが、国籍取得に関しては「DNA鑑定を義務づける規定を創設すべき」とするのですから、どうも論理矛盾に気づいていないようです。)



(3) このように、父子関係、広く言えば親子関係の立証につき、DNA鑑定で判断する考えは、「親子関係法制全体に大きな影響を及ぼす」どころか、停滞していた現在の家族法法制を激変させるものであって、実に歓迎すべき考えです。

参院での採決が先送りされている国籍法改正案について、与野党の参院法務委員会理事は11月27日、懸念されている偽装認知を防ぐために、同委に半年ごとに施行状況を報告することを求めるほか、DNA鑑定導入の「要否及び当否を検討する」という付帯決議案に合意しました(朝日新聞)。これも、DNA鑑定による親子関係の立証を認める法制への足掛かりになることは確かです。

仮にDNA鑑定による親子関係の立証を認める法制ができたとしても、親子関係の判定につき、DNA鑑定を重視するというだけであって、DNA鑑定だけで親子関係を決する規定になるわけがありません。ですから、「改正国籍法3条1項による国籍取得にあたってDNA鑑定を義務づける規定」は、日本の親子法制としては突出し過ぎてあまりも困難ですが、今後とも、国籍法とは関係なく、ぜひDNA鑑定による親子関係の立証を認める法制を進めて欲しいものです。(もちろん、皮肉の意味も込められていますが。)



<11月30日追記>

国籍法改正問題については、「e-politics 国籍法改正」が、<1>議論のための前提知識、<2>陰謀論系の懸念への見解、<3>法律的な懸念(システム面)への回答、<4>その他の懸念や疑問への回答、<5>未解決の懸念の議論などに分類して、多くの疑問を解消できるような形で議論をまとめています。ぜひご覧下さい。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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2008/12/01 Mon 07:07:42
| #[ 編集 ]
こんにちは。

春霞さんの記事は、いつも本当にお勉強になるです。

ネットで感情的にああだこうだ言っている人たちも
そうですけど。
この改正案に反対している国会議員が、上述のような論点や
見解を知らない&もし読んでも理解できないかも知れないな~と。
そこに大きな問題を感じてしまったりもするmewでした。


2008/12/01 Mon 11:58:19
URL | mew #mQop/nM.[ 編集 ]
>mewさん:2008/12/01 Mon 11:58:19
お久しぶりです。コメントありがとうございます。


>春霞さんの記事は、いつも本当にお勉強になる

ありがとうございます。
かなり遅くなってからのエントリーになってしまい、出遅れた感じですが。

エントリーで書いたように、最高裁の論理からすれば、DNA鑑定を義務づけるのは相当に難しいはずなんですけどね。もし、国籍取得に関して義務付け規定を創設したら、また違憲判決が出てしまうおそれさえあります。倉吉政府参考人が創設した場合の問題点をかなり挙げているように、違憲判決間違いなしです(苦笑)。


>ネットで感情的にああだこうだ言っている人たちも
そうですけど。
>この改正案に反対している国会議員が、上述のような論点や
>見解を知らない&もし読んでも理解できないかも知れないな

国籍法改正案反対運動をしている方々の主張は、ついていけない感じですが、確かに「論点や見解を知らない&もし読んでも理解できないかも」……というのは当たっているのでしょうね。

しかし、「知らない&もし読んでも理解できない」状態で反対するとなると、説明しても無意味になりそうですが……。

ただ、結構、意外な人が反対・慎重すべきと述べていて、妙な気持ちになります。例えば、弁護士の杉浦ひとみさんは、ご自身のブログにおいて、「今回問題の認知による国籍取得は、国籍取得の脱法として使われる可能性は否定できない訳で、もう少し慎重に検討すべき問題のように感じます」と述べて、DNA鑑定を使うべし、という感じですし。「知らない&もし読んでも理解できない」状態なのかどうか……。
2008/12/02 Tue 22:11:23
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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2008/12/04 Thu 07:12:15
| #[ 編集 ]
>非公開コメントの方へ:2008/12/01 Mon 07:07:42・2008/12/04 Thu 07:12:15
コメントありがとうございます。非公開コメントですので、修正した形で引用します。


>新国籍法は、ただ父親の権利を拡大するだけで、子供の権利を認めるものといえません。
>性欲のはけ口の果てに生まれた子供ですから、多くの父親は逃げており、そうした逃げ回る父親を捕まえて無料でDNA鑑定をしてくれるわけでもないでしょうから、国籍法改正案では何の恩恵もありません。
>ですから、もともと、認知と国籍は別問題なのです。
>そうした状況では、DNA鑑定の規定抜きでは、「偽装認知奨励法案」と言われても仕方がありません。
http://www.love-nippon.com/4_kikai2008.htm#156

確かに、父による認知があって、法的な父子関係が発生したことを前提として、日本人父の子であるがゆえに日本国籍を取得できる、というのが国籍法改正案です。ですから、国籍法改正案自体は、認知を強制するものでもなく、認知を保障してくれるものではないのですから、そういう意味では「認知と国籍は別問題」ですね。


>この問題はあくまでも「子供の権利」を優先に考えるべきであり、父親の権利をさらに拡大するような法律では、何の解決にもなりません。
>田中康夫氏は、DNA鑑定を条件にすべきだと主張しています。
http://www.love-nippon.com/4_kikai2008.htm#157
>認知=扶養義務が当然であり、認知=国籍というのは馬鹿げているように思います。

田中康夫氏が危惧する状況は現実となるかは別としても(「いしけりあそび」さんのブログ参照)、認知を逃げている日本人父が多いことが一番の問題です。

「DNA鑑定を条件」にすることにより、DNA鑑定の強制執行ができるような規定を設けることで、逃げている日本人父を確実に捕捉できるのであれば、偽装認知もできなくなります。過激な感じではありますが、確実に子供の権利充実に繋がることは確かですから、有意義かもしれませんね。
2008/12/04 Thu 23:55:11
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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