FC2ブログ
Because It's There
主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
08« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30.»10
スポンサーサイト 
--/--/-- [--] --:--:-- » E d i t
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 *  TB: --  *  CM: --  * top △ 
2008/11/18 [Tue] 18:41:31 » E d i t
最近、大阪では、たて続けに凄惨なひき逃げ事件が起きています。(11月22日追記:ひき逃げ事件について、毎日新聞平成20年11月22日東京朝刊の記事を引用しました。)


「▽先月21日に大阪市北区で飲酒し、無免許だったホスト(22)が会社員(30)をはね、約3キロ引きずって走行。会社員は死亡し、ホストには殺人容疑が適用された。

 ▽16日には同府富田林市で、飲酒した大工(41)が新聞配達中の少年(16)をはね、約7キロ引きずり、少年は死亡した。

 ▽17日未明にも大阪市天王寺区と東住吉区でひき逃げ事件が発生。男性1人が死亡、1人が重傷、両事件とも車両は逃走した。」(東京新聞平成20年11月18日付朝刊24面)



10月21日に大阪駅前で会社員(30)が車に約3キロも引きずられて死亡した事件、11月16日に新聞配達中の少年(16)が車に約7キロも引きずられて死亡した事件は、いずれも飲酒運転であったことが明らかになっています。

前者の10月21日の事件は、「衝突時の速度は30キロ程度で、すぐに手当てをしていれば、命に別条はなかったとみられている」(読売新聞平成20年11月18日付「社説」)のに引きずってしまったのですから、警察は、22歳の男性を自動車運転過失致傷罪の適用だけでなく、殺人罪の容疑で逮捕しています(「質問なるほドリ:「ひき逃げ」が「殺人」になるの?」(毎日新聞 2008年11月15日 東京朝刊)参照)。このケースは、自動車事故ではなく殺人に該当すると判断できるほど悪質なケースでした。

こうした凄惨・悪質なひき逃げ事件が相次いでいる原因としては、近時、酒酔い運転による死傷事故について厳罰化されたことが影響しているのでしょうか? また、大阪でこうしたひき逃げ事件が多いのは偶然なのでしょうか? 

この点について、東京新聞「こちら特報部」が記事にしていましたので、紹介したいと思います。



2.東京新聞平成20年11月18日付朝刊24面「こちら特報部」

「厳罰いやや」人心も荒廃 目立つ飲酒ひき逃げ

 先月来、凄惨(せいさん)なひき逃げ事件が相次いでいる。ひき逃げには飲酒が絡みがちだが、昨年の道路交通法改正では、飲酒運転への厳罰化が盛り込まれた。影響はあるのか。さらに発生場所では大阪府内が目立つ。なぜ、大阪でひき逃げが多いのか。


 ざっと、目立った事件を振り返るとこうなる。

 ▽先月21日に大阪市北区で飲酒し、無免許だったホスト(22)が会社員(30)をはね、約3キロ引きずって走行。会社員は死亡し、ホストには殺人容疑が適用された。

 ▽16日には同府富田林市で、飲酒した大工(41)が新聞配達中の少年(16)をはね、約7キロ引きずり、少年は死亡した。

 ▽17日未明にも大阪市天王寺区と東住吉区でひき逃げ事件が発生。男性1人が死亡、1人が重傷、両事件とも車両は逃走した。

■事故は2割減

 昨年9月施行の改正道交法では、酒酔い運転の罰則が「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」から「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」に、酒気帯び運転も同様に厳罰化。さらに運転する予定の人に酒を勧めたり、飲酒者への車の提供や同乗の依頼などにも罰則が新設された。

 その結果、施行後1年間の摘発件数は前年比で酒酔い運転が23%、酒気帯び運転が39%減少し、ひき逃げを含む飲酒運転が絡む事件、事故も2割以上減っている。

 だが交通ジャーナリストの今井亮一さんは「逃げる動機の強化にもつながっている」とひき逃げ事件の悪質化と厳罰化の因果関係を指摘する。

 「厳罰化は飲酒運転を慎ませるが、根絶はできない。捕まらないと信じて酒で気が大きくなった人が事件を起こすと、逃げる動機を厳罰化が強化してしまう。不景気などによる人心の荒廃も背景としては見逃せない」

◆大阪突出なんでや 「お上もルールも軽んじる」

 一方、大阪で凄惨な事件が相次いでいるのは偶然なのか。警察庁がまとめた昨年のひき逃げ事件の逮捕件数は、全国で5100余件。このうち、大阪府は830件とたしかに突出している(ちなみにワースト2は埼玉県の463件)。

 『大阪学』の著書がある元帝塚山学院大学学長の大谷晃一さんは「大阪人にはお上の言うことを素直に聞かない、ルールや法律を軽んじる気質がある。加えて、人情が薄い人間だっている。その重なった部分がこの結果になっている」とみる。

 社団法人・上方落語協会会員の落語家、桂坊枝さんは「事件はまったく情けない。ただ、大阪には生き馬の目を抜く商売人気質があり、それが強引な割り込みといった交通マナーの悪さにもつながっている。落語家でも格より話の中身が重んじられる。人目をはばからない積極性という意味では評価できるが、裏返ると逃げた者勝ちになりかねない」と分析する。

■検挙率97%超

 「だから、大阪人にひき逃げをヤメさせるには『逃げ損』ということを分からせるしかない」

 ちなみにひき逃げは間違いなく“逃げ損”だ。逃げた動機に酔い覚ましがよく挙げられるが、改正道交法では被害者を放置する救護義務違反への罰則も厳罰化された。

 さらに一昨年中のひき逃げ事件の検挙率は97.6%に達している。」



(1) まず、こうした凄惨・悪質なひき逃げ事件が相次いでいる原因としては、近時、酒酔い運転による死傷事故について厳罰化されたことが影響しているのでしょうか?

「昨年9月施行の改正道交法では、酒酔い運転の罰則が「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」から「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」に、酒気帯び運転も同様に厳罰化。さらに運転する予定の人に酒を勧めたり、飲酒者への車の提供や同乗の依頼などにも罰則が新設された。

 その結果、施行後1年間の摘発件数は前年比で酒酔い運転が23%、酒気帯び運転が39%減少し、ひき逃げを含む飲酒運転が絡む事件、事故も2割以上減っている。

 だが交通ジャーナリストの今井亮一さんは「逃げる動機の強化にもつながっている」とひき逃げ事件の悪質化と厳罰化の因果関係を指摘する。

 「厳罰化は飲酒運転を慎ませるが、根絶はできない。捕まらないと信じて酒で気が大きくなった人が事件を起こすと、逃げる動機を厳罰化が強化してしまう。不景気などによる人心の荒廃も背景としては見逃せない」」


 イ:このように、「施行後1年間の摘発件数は前年比で酒酔い運転が23%、酒気帯び運転が39%減少し、ひき逃げを含む飲酒運転が絡む事件、事故も2割以上減っている」ことは確かです。

厳罰化は、ひき逃げを含む飲酒運転事故を減少させる要因となっているのですが、反面、「逃げる動機の強化にもつながっている」(今井亮一さん)わけで、それが悪質なひき逃げ事件をも生んでしまっているともいえるのです。

ベッカリーアは「刑罰が残虐であればあるだけ、犯人は刑罰を逃れようとする。多くの犯罪は、まさにはじめの刑を逃れようとして重ねられたものなのだ。」と述べているように(ベッカリーア(風早八十二・五十嵐二葉訳)『犯罪と刑罰』87頁)、交通事故を犯せば、人間の心理として逃げたくなるのはやむを得ないものなのです。「飲酒運転事故を起こしたとき、逮捕されて刑事責任を追及されれば仕事も家庭も財産も何もかも失い、人生が終わってしまう――といった恐怖心に駆られる」((2008/11/18付 西日本新聞朝刊)ことも考慮すれば、交通事故事犯の厳罰化は、余計に逃げる動機にもつながり、悪質なひき逃げ事件をもたらすという皮肉な結果になっているわけです。

だからこそ、「大方の法律専門家は、ほかの犯罪に対する刑罰とのバランスの問題を考慮すれば、飲酒運転やひき逃げに対する一層の厳罰化は難しい段階にきている」(2008/11/18付 西日本新聞朝刊)と指摘しています。

「交通事故裁判に詳しい高山俊吉弁護士の話 『危険運転致死傷罪では、立証上必要となる『正常な運転が困難な状態』という要件を、厳しくとらえるかどうかで司法の判断が分かれている。ただ、これ以上、悪質な事故を厳罰化するのには限界がある。酒気を検知すればエンジンがかからない車の普及など、国は総合的な対策を進めるべきだ』」(読売新聞平成20年1月15日付朝刊31面)



 ロ:ビールや日本酒などのアルコール飲料は、麻酔作用があるために規範意識が低下し、交通法規を遵守する意識が低下しがちになります。要するに、飲酒又はアルコール飲料が残った状態では、自分だけは「捕まらないと信じて」しまい、「酒で気が大きくなった人が事件を起こすと、逃げる動機を厳罰化が強化してしまう」わけです。心理的・肉体的な疲労をアルコール飲料で紛らわせる状態となれば、アルコール依存症にもなりかねず、そうしたアルコール依存の状態も飲酒運転をしがちになってしまいます。大阪で起きたひき逃げ事件の容疑者も、たびたび飲酒運転を行っていたようですから、アルコール依存の状態にあった可能性もあります。

今井亮一さんが「不景気などによる人心の荒廃も背景としては見逃せない」としているように、日本社会の状態も影響しているといえそうです。


 ハ:もはや「卑劣なひき逃げが、厳罰という犯罪抑止力だけでは根絶できない」((2008/11/18付 西日本新聞朝刊)として、酒気を検知すればエンジンがかからない車の普及、飲酒に寛容な意識の改革(本人のみならず、企業や家族を含めた飲酒教育)など、国は総合的な対策を進めるといったように、発想を変えるときにきています。



(2) 次に、大阪でこうしたひき逃げ事件が多いのは偶然なのでしょうか? 

「大阪で凄惨な事件が相次いでいるのは偶然なのか。警察庁がまとめた昨年のひき逃げ事件の逮捕件数は、全国で5100余件。このうち、大阪府は830件とたしかに突出している(ちなみにワースト2は埼玉県の463件)。

 『大阪学』の著書がある元帝塚山学院大学学長の大谷晃一さんは「大阪人にはお上の言うことを素直に聞かない、ルールや法律を軽んじる気質がある。加えて、人情が薄い人間だっている。その重なった部分がこの結果になっている」とみる。

 社団法人・上方落語協会会員の落語家、桂坊枝さんは「事件はまったく情けない。ただ、大阪には生き馬の目を抜く商売人気質があり、それが強引な割り込みといった交通マナーの悪さにもつながっている。落語家でも格より話の中身が重んじられる。人目をはばからない積極性という意味では評価できるが、裏返ると逃げた者勝ちになりかねない」と分析する。

■検挙率97%超

 「だから、大阪人にひき逃げをヤメさせるには『逃げ損』ということを分からせるしかない」

 ちなみにひき逃げは間違いなく“逃げ損”だ。逃げた動機に酔い覚ましがよく挙げられるが、改正道交法では被害者を放置する救護義務違反への罰則も厳罰化された。

 さらに一昨年中のひき逃げ事件の検挙率は97.6%に達している。」


 イ:「警察庁がまとめた昨年のひき逃げ事件の逮捕件数は、全国で5100余件。このうち、大阪府は830件とたしかに突出している(ちなみにワースト2は埼玉県の463件)」という客観的事実からすれば、こうしたひき逃げ事故の発生率からいって、大阪では悲惨・悪質なひき逃げが生じても、そしてひき逃げ事件が頻発しても、少しもおかしくないことは確かであるといえます。

ただ、大阪ではひき逃げ事件が突出して多すぎるのですから、その理由は何なのかが気になります。この点、大谷晃一さんは「大阪人にはお上の言うことを素直に聞かない、ルールや法律を軽んじる気質がある」と述べており、また、桂坊枝さんは「大阪には生き馬の目を抜く商売人気質があり、それが強引な割り込みといった交通マナーの悪さにもつながっている」と述べています。この部分を見ると、どうやら自己の利益を優先することを喝采し、ルールやマナーを無視する意識に対して寛容であるといえそうです。

よく考えてみれば、タレント弁護士だった橋下徹氏は、法令無視の言動を繰り返していてもいまだに知事の地位についており、大阪では支持を得ているのです(<1>「岩国市の住民投票問題~「岩国の主張は決して間違っていない」(大阪日日新聞「一刀両断」より)」(2008/02/06 [Wed] 06:22:20)、<2>「橋下大阪知事、廃止方針の府立文学館を「隠し撮り」~「図書館の自由」に違反する行為である!」(2008/09/08 [Mon] 19:32:08)、<3>「橋下弁護士による懲戒請求扇動訴訟:橋下徹氏の「懲戒」煽動発言につき、広島地裁平成20年10月2日判決は不法行為を認定し損害賠償を肯定」(2008/10/03 [Fri] 03:14:59)参照)。大阪では、ルールや法律を軽んじる気質があり、ルールやマナーを無視する意識に対して寛容であるという指摘は、説得力を持っているようにも思えます。


 ロ:桂坊枝さんは、「大阪人にひき逃げをヤメさせるには『逃げ損』ということを分からせるしかない」と指摘しています。

しかし、「一昨年中のひき逃げ事件の検挙率は97.6%に達している」のであり、逮捕後は厳罰が待っているのですから、日本の市民にとっては「ひき逃げは間違いなく“逃げ損”」であることは誰の目に明らかなのです。それなのに、大阪人は逃げ切れると思い、“逃げ損”だとは思っていないのです。だからこそ、大阪ではひき逃げ事件が突出して多すぎるのであり、そこが問題であるように思います。

大阪では、法令無視の言動を繰り返している人物が知事の地位に就いていても、リコール請求されることもなく、むしろ擁護する意識が蔓延している――。このようなルールや法律を軽んじる気質、ルールやマナーを無視する意識に対して寛容であるという意識が見直されない限り、今後も大阪では悲惨で悪質なひき逃げ事件はなくならないと思います。

残念ながら、今のままでは、大阪でひき逃げが多いのは偶然ではなく、必然である――と判断できるのです。



<11月22日追記>

毎日新聞 2008年11月22日 東京朝刊の記事を一部引用しておきます。

クローズアップ2008:大阪・ひき逃げ1カ月 悪質「引きずり」、厳罰化効果薄く

 大阪市北区のJR大阪駅前から車で3キロも引きずられ、堺市の会社員、鈴木源太郎さん(30)が死亡する事件が発生してから、21日で1カ月。今月16日には、大阪府富田林市で新聞配達の少年が8キロ引きずられる事件も起きるなど、道交法改正で厳罰化が進んでいるにもかかわらず、悪質ひき逃げ事件が後を絶たない。関係者からは、さらなる対策を求める声が上がっている。【久木田照子、鳴海崇、田中博子】(中略)

 実は、ひき逃げ事件の発生件数自体は減少している。警察庁によると、かつては増え続けていたが、昨年は1万5474件で、前年より2892件減少。昨年9月施行の改正道交法による厳罰化が広く知られたことが要因の一つとされる。

 改正は、福岡市で06年8月、飲酒運転の車に追突されたRV(レジャー用多目的車)の幼児3人が死亡した事故がきっかけ。ひき逃げに対しては罰則の上限が「懲役5年または罰金50万円」から「懲役10年または罰金100万円」に引き上げられた。酒酔い運転も「懲役3年または罰金50万円」が「懲役5年または罰金100万円」になった。

 しかし、処罰を避けようと逃走し、さらに重大な結果を引き起こすケースは後を絶たない。捜査当局は「数十メートルの引きずりを伴うひき逃げはよくある」と説明し、今回のようなキロ単位で引きずる事件も過去に発生していると指摘する。

 引きずり事件だけをまとめた統計はないが、90年から昨年までの18年間で、少なくとも7道府県で8件が発生している。最も長かったのは長野県(01年)と北海道(05年)の事件で、ともに距離は約6キロに達する。長野県塩尻市で発生したケースでは、会社員の男が雪の降る夜、市道でうずくまっていた女性(当時86歳)を車ではねて逃走。女性は服が車底に引っかかり、巻き込まれたまま引きずられ死亡した。厳罰化でも悪質なケースを抑制できないのが実情だ。

 東京工業大の影山任佐教授(犯罪精神病理学)は「交通事故は運転者にとっては予想外の展開でパニックになる。飲酒運転だと判断も鈍り、とりあえず逃げるという短絡反応が強くなるのでは」とみる。影山教授は改正道交法の効果を認めながらも、「人命救助をすれば公判で情状酌量が考慮されるなどの仕掛けの方が大事だ」と話す。元大阪府警交通部幹部も「容疑者は飲酒や無免許のほか、薬物中毒や暴力団関係者の場合もある。厳罰化だけで効果があるかは疑問」と語る。

 ◇酒気検知装置、導入進まず

 ひき逃げを減らすにはどうしたらいいのか。

 飲酒運転根絶を訴えるNPO法人「MADD JAPAN」の飯田和代代表(65)は「飲酒運転をなくせばひき逃げもかなり減るはず」と指摘する。欧米では違反者に対し、酒気を検知すれば車のエンジンがかからない装置「アルコール・インターロック」の取り付けを義務付ける動きが広がっている。日本では導入が進んでおらず、飯田さんは「飲酒した状態で物理的に運転できないよう、環境を整えるべきだ」と訴える。

 さらなる厳罰化を求める声もある。「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」の佐藤悦子共同代表(57)は「07年の道交法改正後も危険運転致死傷罪の適用の有無で刑罰の重さに格差がある。飲酒運転で事故を起こしても、逃げて酒気を消して飲酒がばれなかった場合の方が罪が軽くなるという法の抜け道がある限り、ひき逃げはなくならない」と話す。

 新潟青陵大学の碓井真史教授(社会心理学)は「駐車違反や酒気帯びには厳罰化が有効だが、冷静さが失われるひき逃げには効果は薄いかもしれない」と説明する。「『ひき逃げはひどい』という意識を共有することが命を優先することにつながる」と話した。(以下、省略)

毎日新聞 2008年11月22日 東京朝刊」


ひき逃げを減らす方法としては、この記事では、厳罰化以外の道を探る見解(影山任佐教授、元大阪府警交通部幹部、NPO法人「MADD JAPAN」の飯田和代代表、碓井真史教授)と、更なる厳罰化を求める見解(「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」の佐藤悦子共同代表)を挙げています。

厳罰化以外の道としては、<1>「人命救助をすれば公判で情状酌量が考慮されるなどの仕掛け」を行う方法、<2>「酒気を検知すれば車のエンジンがかからない装置「アルコール・インターロック」の取り付けを義務付け」るといった物理的な環境整備を行う方法が挙がっています。こうした、具体的な方法以外にも、<3>「『ひき逃げはひどい』という意識を共有することが命を優先することにつながる」として、交通教育の大切さを訴えるものも挙げています。

「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」の佐藤悦子共同代表は、記事でのコメントからすると、「逃げ得になっているから、ひき逃げをする」という認識でいます。しかし、コメント欄で触れたように、警視庁の「平成19年の犯罪」での逃走動機を見てみると、府県別・ひき逃げ事件の全国総数表では5129件であり、上位順に挙げると「飲酒運転中」892件、「事故を起こしたことを恐れて」755件、「被害者の被害程度が大したことはないと思ったから」640件、「無免許運転中」612件、「逃走すればわからない」474件、「刑事・行政処分を恐れて」378件となっています。こうなると、「逃走すればわからない」は5位であり、1番多い動機と比較すると半分程度ですから、意外と多くない動機であることが分かります。

もっとも、大阪でのひき逃げ発生総数は830件であり、上位順に挙げると「飲酒運転中」114件、「無免許運転中」110件、「被害者の被害程度が大したことはないと思ったから」108件、「逃走すればわからない」101件、「刑事・行政処分を恐れて」87件、「事故を起こしたことを恐れて」65件となっています。このように、大阪では「逃走すればわからない」4位であり、しかも1・2番目の動機と同様に100件を超えており、1・2番目の動機とさほど差がない数です。

全国的には、「逃げ得」と思ってひき逃げした人はさほど多くなくても、大阪だけ「逃げ得」と思ってひき逃げした人は多い傾向にあるといえます。県別により対応を変える必要はあるとはいえ、「逃げ得になっているから、ひき逃げをする」という認識は、全国的には現実とは符合していません。もう、際限なく厳罰化を求める法改正は止めるべきでしょう。 脅しではなく、物理的な方法や交通教育が大事だという発想に変えるべきです。

なお、毎日新聞の記事では、「引きずり事件だけをまとめた統計はないが、90年から昨年までの18年間で、少なくとも7道府県で8件が発生している。最も長かったのは長野県(01年)と北海道(05年)の事件で、ともに距離は約6キロに達する。」という記述を挙げています。統計資料としては正しいのでしょうが、18年間という、ここ数年の厳罰化の前の事件を含めた統計は無意味です。「大阪・ひき逃げ1カ月 悪質『引きずり』、厳罰化効果薄」という見出しは、まさに最近の厳罰化に焦点を合わせた記事だからこそのはずですから、見出しともずれています。読者に対して、「決して大阪で悪質なひき逃げが多いというわけではない」という記事にしたいということなのでしょうか。

テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

事件 *  TB: 1  *  CM: 6  * top △ 
コメント
この記事へのコメント
ひき逃げは未だ逃げ得です
検挙率が高いのは死亡事例だけで、死亡しなかった場合(正確には24時間以内に死亡しなかった場合)の検挙率は30%未満です。理由はいろいろ想像できるのですが、技術的には見つけらられる犯人を、別の理由で検挙できていないと言うことでしょう。
2008/11/18 Tue 23:43:22
URL | お笑いみのもんた劇場 #Z4XagFYo[ 編集 ]
失礼。記憶が曖昧で、いい加減な数字を書いてしまいました。実際は、昨年の場合39パーセントですね。母数の「発生件数」というのもくせ者ですが。
出典:警察庁 「平成19年の犯罪」
http://www.npa.go.jp/toukei/#sousa
http://www.npa.go.jp/toukei/keiji36/h19hanzai.htm
2008/11/19 Wed 04:26:40
URL | お笑いみのもんた劇場 #Z4XagFYo[ 編集 ]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008/11/19 Wed 06:30:39
| #[ 編集 ]
>お笑いみのもんた劇場さん:2008/11/18 Tue 23:43:22・2008/11/19 Wed 04:26:40
確かはじめまして、ですよね。コメントと情報ありがとうございます。


>ひき逃げは未だ逃げ得です
>検挙率が高いのは死亡事例だけ
>実際は、昨年の場合39パーセントですね

確かに、死亡事例以外にも目を向ける必要がありますね。全体を考えれば、「逃げ得」の面がありますね。軽傷にとどまる場合、現場に残った証拠が乏しいなどで捜査も難しい面もあるのでしょうが、「逃げ得」にならないようにしてほしいですね。

ただ、実際上、「逃げ得」だと思って逃げているかどうかは検討する必要があります。すなわち、どれだけの人物が「逃走すればわからない」と思ってひき逃げしたかどうかです。

警視庁の「平成19年の犯罪」での逃走動機を見てみると、府県別・ひき逃げ事件の全国総数表では5129件であり、上位順に挙げると「飲酒運転中」892件、「事故を起こしたことを恐れて」755件、「被害者の被害程度が大したことはないと思ったから」640件、「無免許運転中」612件、「逃走すればわからない」474件、「刑事・行政処分を恐れて」378件となっています。こうなると、「逃走すればわからない」は5位であり、1番多い動機と比較すると半分程度ですから、意外と多くない動機であることが分かります。

ところが、大阪でのひき逃げ発生総数は830件であり、上位順に挙げると「飲酒運転中」114件、「無免許運転中」110件、「被害者の被害程度が大したことはないと思ったから」108件、「逃走すればわからない」101件、「刑事・行政処分を恐れて」87件、「事故を起こしたことを恐れて」65件となっています。このように、大阪では「逃走すればわからない」4位であり、しかも1・2番目の動機と同様に100件を超えており、1・2番目の動機とさほど差がない数です。

全国的には、「逃げ得」と思ってひき逃げした人はさほど多くなくても、大阪では「逃げ得」と思ってひき逃げした人は多い傾向にあるといえるわけですね。

<参考>
「98 府県別 ひき逃げ事件の逃走の動機(人身)(H19 098.xls) 」http://www.npa.go.jp/toukei/keiji36/Excel/H19_098.xls

こうすると、なぜ大阪では「逃げ得」だと思って逃げる人が多いのか、その理由を探らないといつまでもひき逃げが減らないといえそうです。

エントリーでは、大阪では、「ルールや法律を軽んじる気質、ルールやマナーを無視する意識に対して寛容であるという意識」があるとしましたが、他にも理由があるのか、検証する必要があるように思います。
2008/11/19 Wed 22:08:58
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
>非公開コメントの方へ:2008/11/19 Wed 06:30:39
コメントありがとうございます。非公開コメントですので、修正した形で引用します。


>危険運転致死傷罪は、現実的には、ひき逃げ奨励法になってしまっています

警視庁の「平成19年の犯罪」での逃走動機を見てみると、府県別・ひき逃げ事件の全国総数表では5129件であり、上位順に挙げると「飲酒運転中」892件、「事故を起こしたことを恐れて」755件となっています。「刑事・行政処分を恐れて」は378件であって少ない感じはしますが、「飲酒運転発覚→危険運転致死傷罪=厳罰・人生破綻」という意識なのでしょうから、仰るとおりでしょう。

結局は、危険運転致死傷罪といった厳罰化は、ひき逃げ防止ではなく、「被害者の復讐心を満たす」という意味が大きいのでしょうね。近時の被害者感情の重視の刑事政策、ポピュリズム刑事政策の1つといえそうです。


>事故後の救助活動を行えば、飲酒運転だろうと、実刑にはならない、といった運用を行えば、ひき逃げは減り、少なくとも生きている人を引きずってまでも逃げる行為も減るでしょう
>ある意味、事故後の救助活動ができないほど酩酊していたら、運転も危険運転だったと判断できますし、他方で、救助活動ができるなら、重く処罰するほどの酩酊状態でなかったといえるからです

まったく同感です。事故後の救護者には実刑を免れるような運用・法規定を設けて、救護を奨励する方法を考えることが効果的だと思います。人を引きずったまま逃げる事例において被害者の命を救うには、本人が車を止めるしかないのですから。


>酔っていなくても、気が動転して救助活動などできない人もいるでしょうが、そうした人は元々、運転に不向きであって、何らかの訓練が必要でしょう

確かにそうですね。
思い返してみれば、運転免許の更新講習では、道交法の改正内容は熱心に教えてくれますが、「救助活動に務めるべき」とは教えてくれた記憶がありません。運転をしていれば、何らかの事故を起こす可能性は常にあるのですから、免許更新者全員に救助活動の講習を広く行うべきですね。


>日本の交通刑務所は、安全運転や救助活動の訓練施設として有効利用すべき

そうした方法も一案です。交通刑務所は受刑者のみならず、市民一般に対する交通教育の場所とする方がいいですね。


>免許が取り消されても、生きてゆくために必要な人は、必ず無免許でも運転してしまいます

仰るとおりですね。

先に挙げた、警視庁の「平成19年の犯罪」での逃走動機を見てみると、上位順に挙げると「飲酒運転中」892件、「事故を起こしたことを恐れて」755件、「被害者の被害程度が大したことはないと思ったから」640件、「無免許運転中」612件です。無免許運転は3位の動機であり、かなり多いのですから、無免許はひき逃げを阻止することにならないことがわかります。

ところが、朝日新聞2008年11月19日(水)付「社説」では、「飲酒運転での免許停止期間を長期にしたり、悪質な場合は免許を永久に持たせないようにしたりするぐらいのことを検討してもいいのではないか。」と書いています。無免許者が増えれば、余計に轢いた後逃げる人が増える結果になるだけですから、朝日新聞の主張は的外れですね。


<参考>
「98 府県別 ひき逃げ事件の逃走の動機(人身)(H19 098.xls) 」http://www.npa.go.jp/toukei/keiji36/Excel/H19_098.xls
2008/11/19 Wed 23:23:16
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
ひき逃げを防ぐ方法は、

飲酒していないで、誤って人をはねて死傷させた場合、救護措置、警察への報告など道路交通法に
したがって対処した場合、
無罪にするのが一番です。
2010/02/05 Fri 23:34:53
URL | 茨城人 #-[ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/tb.php/1576-c5b9c3e4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
  当  ブ  ロ  グ  へ  の     皆様のご支援に感謝致します! ありがとう! 「勤労感謝の日」にこういう記事は相応しくないのではないかと、躊躇しましたが、やっぱり書くことにしました。結論から言えば、どう考えても小泉某は893の鉄砲玉=...
2008/11/23(日) 17:30:16 | 晴天とら日和
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。