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2006/10/01 [Sun] 01:32:25 » E d i t
タレントの向井亜紀さん(41)と夫で元プロレスラーの高田延彦さん(44)が、米国の女性に代理出産を依頼して生まれた双子(2)について、東京高裁(南敏文裁判長)は9月29日、「夫妻の子であると確認される」として、東京都品川区長に出生届を受理するよう命じる決定をしました。
この東京高裁決定についてコメントしたいと思います。なお、東京高裁決定要旨は追記で掲載しておきます。(追記:民訴118条の説明やあてはめにつき、判り易く書き換えました)


1.まずは記事から。

(1) 東京新聞のHP(平成18年9月30日付朝刊)

代理出産でも親子認定  向井さん夫妻 出生届受理命じる

 タレント向井亜紀さん(41)と元プロレスラー高田延彦さん(44)夫妻が二人の人工受精卵を使い、米ネバダ州で代理出産によって生まれた双子の出生届を受理しなかった東京都品川区長の処分取り消しを求めた家事審判の即時抗告審で、東京高裁は二十九日、申し立てを却下した東京家裁決定を取り消し、出生届受理を命じる決定をした。

 南敏文裁判長は「夫妻と双子には血縁関係があり、親子と認めるネバダ州の裁判所の命令が確定している。日本で夫妻の子と認められないと、双子は法律的に受け入れる国がない状態が続く。子の福祉を優先し、ネバダ州の確定裁判を承認しても公序良俗に反しない」と判断した。

 決定によると、向井さんは子宮がんで子宮を摘出後、代理出産を目指し、受精卵を米国人女性の子宮に移植。二〇〇三年に双子の男児が生まれた。その後、出生地のネバダ州は代理母の女性らも加わった裁判の命令を経て、双子を夫妻の子とする出生証明書を発行。夫妻は帰国して出生届を提出した。

 しかし届け出先の品川区から相談を受けた法務省が「向井さんを母とは認められない」と回答し、不受理となった。

 東京家裁は昨年十一月に申し立てを却下。向井さん側が東京高裁に即時抗告した。

 決定理由で南裁判長は、(1)夫妻が子を持つ方法がほかにない(2)人工授精による出産が当事者の意思を十分尊重する条件下で容認されている(3)代理母の女性はボランティアで協力した-などから「このケースでは、代理母を認めることが子の福祉を害さず、ネバダ州の裁判結果は承認できる」と結論付けた。

 品川区は「決定文を入手しておらず、事実確認できないのでコメントできない」としている。

■ブログで喜び「涙とまらない」

 「今日、本当に本当にうれしいことが起こりました。涙がとまりません」

 米国女性が代理出産した双子の出生届を東京都品川区は受理すべきだとの司法判断が出たことについて、タレントの向井亜紀さん(41)は二十九日、自身のブログに喜びをつづった。

 「裁判官さんから『子供を守り、しっかりと生きていくように』と諭されたような気持ち」と決定をかみしめる。

<メモ>代理出産 妻が病気で子宮を摘出するなどして子どもを持てない夫婦が第三者の女性に子どもを産んでもらうこと。タレントの向井亜紀さんのように、妻の卵子と夫の精子を使う場合と、夫の精子を第三者の女性の卵子と体外受精する場合などがある。日本産科婦人科学会は代理出産を禁じ、厚生労働省の専門部会も禁止する最終報告をまとめた。しかし法制化はされていない。これまでに50代の夫婦が代理出産による双子の出生届を不受理とされたケースがあるが、大半は海外で得た出生証明書を基に日本で実子として届け、受理されている。」



(2) asahi.com(朝日新聞9月30日付夕刊)

向井さん代理出産、高裁が出生届受理命じる
2006年09月30日11時28分

 タレントの向井亜紀さん(41)と元プロレスラーの高田延彦さん(44)夫妻が米国の女性に代理出産を依頼して生まれた双子の男児(2)の出生届を、東京都品川区が不受理としたことを巡る家事審判の即時抗告審で、東京高裁は不受理処分の取り消しを命じる決定をした。決定は29日付。南敏文裁判長は決定理由で、「(向井さん夫妻が)法律的な親として養育することが、子供の福祉に最もかなっている」と述べた。

向井さん自身も29日、自らのブログで明らかにした。法務省は代理出産で生まれた子を実子とは認めない方針で、高裁の判断は生殖医療を巡る論議に影響を与えそうだ。

 南裁判長はまず、「民法は自然懐胎のみの時代に制定された。現在は人為的な操作による懐胎や出産が実現されるようになった」と述べ、「法制定時に想定されていなかったことで秩序の中に受け入れられない理由にはならない」とした。

 その上で、向井さん夫妻が双子を実子として養育することを望み、代理母側はそれを望んでいないと指摘。「子らは法律的に受け入れるところがない状態が続く。(向井さん夫妻を)法律的な親と認めることを優先すべきで、子の福祉にもかなう」と出生届の受理が妥当との考えを示した。

 代理母契約の是非についても言及。「明らかに禁止する規定は存在しないし、代理妊娠を否定する社会通念が確立されていると言えない」と述べた。契約の根拠となった米ネバダ州法が代理母の尊厳を傷つけるような過剰な対価を禁じ、精子と卵子が向井さん夫妻のものである点や子宮摘出というやむをえない事情があることも考慮した。

 向井さんは00年に子宮がんで子宮摘出手術を受けた。高田さんとの受精卵を米国人女性に移植して出産してもらう代理出産で、03年11月に双子の男児が誕生。品川区は法務省の意向も踏まえ双子の出生届を受理しなかった。夫妻は処分取り消しを東京家裁に申し立てたが昨年11月に却下され、即時抗告していた。

 代理出産の出生届をめぐっては、関西地方に住む50代の夫妻が不受理処分の取り消しを求めた審判で、最高裁が05年、夫妻の抗告を棄却した。夫妻は米国人女性から卵子の提供を受けて夫の精子と体外受精させ、別の米国人女性の体内に着床させて子をもうけた。

 最高裁は出生届を認めなかった高裁の判断を「是認できる」とした。ただ、「正当」という評価は避け、向井さんのように卵子は自分のものだった場合などで代理出産を認める余地を残したとされる。

 〈品川区の話〉 決定文を入手していない。内容を確認できず、コメントは控えたい。」



(3) 毎日新聞(9月30日付夕刊:2006年9月30日 10時40分 (最終更新時間 9月30日 12時54分))から一部

◇法務省は困惑

 法務省のある幹部は「決定の全文をきちんと読んでみないと何とも言えない」と話し、予想していなかった事態に困惑気味。最高裁の判例に従って、同省はこれまで「子供を生んだ女性が法律上の母親になる」との法解釈をとってきた。一時は民法にこうした規定を明記する法改正を検討したこともある。それだけに「高裁の段階で決定があったからといって、ただちにこれまでの対応を変えることはない」という見方が省内では有力だ。

 ◇区だけで判断不能…品川区

 中川原史恵・品川区広報課長は30日、「決定文を見ていないのでコメントできない。不受理は法務省の指示に基づき対応した結果であり、今後の対応を聞かれても、区だけで判断できる問題ではないので答えようがない」と話した。

 ◇国は時代に応えず

 生命倫理問題に詳しい米本昌平・科学技術文明研究所長 日本人が海外で、国内では認められていない代理出産や卵子提供を受けるという現実がある。科学技術の進歩に伴い新しいルールを決めるのは当然で、生殖補助医療技術全般の法整備が必要なのに、国は時代や社会の要請に応えていない。向井さんのケースはこうした日本社会の問題を浮き彫りにしている。

 ◇ルール確立が必要

 棚村政行・早稲田大法科大学院教授(家族法)の話 法のすき間に落とされていた子供の福祉を守るという観点から高裁が出生届の受理を命じたことは評価できる。ただ、法整備がされていない中で、今回のように裁判所が個別に判断していくと、代理母が出産した子との親子関係を望んだ場合などに混乱が起きる可能性がある。厳格な医療の基準を定めたうえで、母子関係についての法的なルールを確立することが必要だ。

 ◇国レベルで議論を

 生命科学に詳しいノンフィクション作家の最相(さいしょう)葉月さんの話 今回の判決は、生まれた子の福祉を優先するものだが、この言葉は諸刃の剣で何でも認める結果になりかねない。今回は本人の卵子だが、別の女性から卵子を提供される場合や、高齢の女性が、本人の凍結卵子を使って子どもを持つことも考えられる。こうしたケースについて、国レベルの議論が明日からでも必要だ。」




2.東京新聞の記事中にあるように、代理出産(広義の「代理母」)とは、妻が病気で子宮を摘出するなどして子どもを持てない夫婦が第三者の女性に子どもを産んでもらうことです。

この代理出産(代理母)の方法には、2つの方法があり、タレントの向井亜紀さんのように、妻の卵子と夫の精子を使う場合と、夫の精子を第三者の女性の卵子と体外受精する場合などがあります。前者をいわゆるホストマザー(借り腹)と呼び、後者をいわゆるサロゲートマザー(代理母)と呼ばれています。



(1) この裁判では、向井夫妻が二人の人工受精卵を使い、米ネバダ州で代理出産によって生まれた双子について(ホストマザーによる方法)、向井夫妻の子供として出された出生届が受理されるのかどうかが問題となりました。いわゆる代理出産でも(卵子精子提供者と子との間で)親子と認められるのかどうかという問題です。

もっとも、正確に言えば「代理出産による親子関係が認められるのかどうか」が直接問題となったわけではありません。日本において代理出産が実施されたのではなく、夫妻と双子との間を親子と認めるネバダ州の裁判所の命令があるからです。

ですから正確には、

夫妻と双子との間を親子と認めるネバダ州の裁判所の命令を承認できるか?(外国判決の承認)
特に、日本で代理出産による親子関係を認めることが、外国判決を承認する要件である「判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと」(民訴法118条3号)を満たすのかどうか?

が問題となりました。このように、向井夫妻と双子との間を親子と認めるネバダ州の裁判所の命令があることによって、直接的にはいわゆる外国判決の承認(民訴法118条)が問題となったわけです。

(外国裁判所の確定判決の効力)
民事訴訟法第118条  外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
1  法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
2  敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
3  判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
4  相互の保証があること。


民訴法118条について、少し説明しておきます。

裁判は国家の司法権の行使ですから、本来は裁判を行った国でのみその判決の効力が生じるはずです。しかし、外国判決の効力はすべて日本では効力がないとすると、外国の判決で確定した事件すべて日本でもう一度やり直すことになります。それでは、訴訟の当事者はもう一度裁判を行うことになり裁判費用がかさみますし、外国で起きた事件につき日本で証拠を集めるのは困難ですから、外国の判決と裁判結果が異なるおそれがあり、日本での判決と外国での判決のどっちを優先するのかといった問題も生じてしまいます。このように、外国判決をすべて日本での効力を否定すると、同一訴訟の回避という訴訟経済的利益・当事者利益を害する結果となって不都合です(木棚=松岡=渡辺「国際私法概論」(第4版)(2005年、有斐閣)293頁参照)。

このような不都合を回避するため、民訴法118条は、外国裁判所が当事者間の法律関係につき下した判決(決定など名称は問わない)は、118条の要件さえ満たせば、当然に内国(日本)でもその判決の効力を認めることとしたのです。


この事案では民訴法118条3号が問題になっているので、3号について特に説明しておきます。

各国の司法制度や法律内容に違いがある現状では、外国判決の内容や成立手続が日本と大きく異なることは当然予測されます。そうなると、外国判決の承認を許す以上、日本法の適用と違う結果を認めることは織り込み済みなのです。
しかし、あまりに我が国の考え方と隔たりが著しい場合には、内国法秩序の安定を図る必要があります。そのため、民訴法118条は、公序要件を設けて(民訴法118条3号)、調整を図っているのです。あまりに我が国の考え方と隔たりが著しい場合だけを調整するものですから、基本的には抑制的に解釈することになります。



(2) 判決内容の公序違反性を判断する場合には、<1>外国判決を承認・執行した場合に内国でもたらされる結果の異常性・重大性、<2>事案と内国の牽連性の強さ、の両者を衡量して行うとされています(本間=中野=酒井「国際民事手続法」(2005年、有斐閣)191頁)。


<1>外国判決を承認・執行した場合に内国でもたらされる結果の異常性・重大性については、2点挙げられます。

すなわち、「(1)夫妻が子を持つ方法がほかにない(2)人工授精による出産が当事者の意思を十分尊重する条件下で容認されている(3)代理母の女性はボランティアで協力した-など」から、日本において親子関係を認めても良いだけの要素を備えている代理出産であるとしています。
そして、「『民法は自然懐胎のみの時代に制定された。現在は人為的な操作による懐胎や出産が実現されるようになった』と述べ、『法制定時に想定されていなかったことで秩序の中に受け入れられない理由にはならない』とした」としています。
要するに、事実上、日本の医学界では代理出産を禁じていますが、実質的には保護に値する親子関係が存在していること、日本法では代理出産による親子関係について規定がないというだけで、公序良俗違反という扱いではないので、内国法秩序に違反するというは無理であるということです。


また、<2>事案と内国の牽連性の強さについても、2点挙げられています。

1つは 「夫妻と双子には血縁関係があり」ということで、米ネバダ州における代理母よりも、日本に住む日本人である向井夫婦との牽連性が強いこと、もう1つは「日本で夫妻の子と認められないと、双子は法律的に受け入れる国がない状態が続く。子の福祉を優先」する必要があり、「このケースでは、代理母を認めることが子の福祉を害さず」ということから、米ネバダ州との結びつきが非常に弱く、むしろ日本との結びつきの方が強いのです。


以上のことから、<1>外国判決を承認・執行した場合に内国でもたらされる結果には異常性・重大性がなく、<2>事案と内国の牽連性が強いので、両者を衡量すれば、民訴法118条3号の「判決の内容……が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しない」といえるので、米ネバダ州の裁判は承認できることになります。
上に挙げた記事によると、「南敏文裁判長は『子の福祉を優先し、ネバダ州の確定裁判を承認しても公序良俗に反しない』と判断した」としています。この判示部分は、民訴法118条3号を満たすことを述べたわけです。

このような東京高裁決定による判断はごく自然であり、妥当であると考えます。



(3) 毎日新聞の記事について少しコメントしてみます。

「法務省のある幹部は『決定の全文をきちんと読んでみないと何とも言えない』と話し、予想していなかった事態に困惑気味」としています。

しかし、外国判決の承認においてはこのようなことがあり得るはずです。国際私法や国際民事訴訟法の知識が十分にあれば、このような結果は予想できたはずです。


棚村政行教授は、「法のすき間に落とされていた子供の福祉を守るという観点から高裁が出生届の受理を命じたことは評価できる。ただ、法整備がされていない中で、今回のように裁判所が個別に判断していくと、代理母が出産した子との親子関係を望んだ場合などに混乱が起きる可能性がある」としています。

棚村教授は、家族法の観点から高裁を評価したようです。そういった評価も十分に可能です。
ですが、「法整備がされていない中で、今回のように裁判所が個別に判断していくと、代理母が出産した子との親子関係を望んだ場合などに混乱が起きる」というのは少し筋違いのように思えます。この問題は、外国判決の承認の問題であって、本来的に事案毎の判断にならざるを得ないからです。


最相葉月さんは、「今回の判決は、生まれた子の福祉を優先するものだが、この言葉は諸刃の剣で何でも認める結果になりかねない」としています。

しかし、外国判決の承認における公序要件の中で、子の福祉に言及したものであって、子の福祉だけで親子関係を認めたわけではありません。子の福祉という「言葉は諸刃の剣で何でも認める結果になりかねない」というわけではありません




3.今回の東京高裁決定は、ごく自然な認定ですから、品川区が最高裁に特別抗告しても、この決定を覆すことは困難でしょう。

この事案は、家族法の問題というよりも、国際私法、国際民事訴訟法の問題です。南敏文裁判長は、平成元年の法例改正に携わり、裁判官のうち、国際私法、国際民事訴訟法の知識が最も豊富と想像できるので、南裁判長の判断を否定できるだけの知識は最高裁判事にはないかもしれないと思えます。

代理出産については、最高裁平成17年11月24日決定は、外国で代理出産した日本人夫婦の出生届を受理しないとした処分を肯定していました。この決定は、「『正当』という評価は避け、向井さんのように卵子は自分のものだった場合などで代理出産を認める余地を残したとされる」のですから、平成17年決定とも、この高裁決定は矛盾しないといえます。


日本において、代理出産によって産まれた子と、卵子と精子提供者との間の親子関係を認めるべきかどうかについては議論があり、「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」(平成15年4月28日:厚生科学審議会生殖補助医療部会)は、いくつかの理由を挙げて、代理母を禁止する指針を示しています。

しかし、

「代理母による出産も、代理母になろうとする女性自らの身体を自らの意思によって使用する権利、生殖についての自己決定に基づくものであり、また依頼主にとっても、家族の形成・維持、生殖にかかわる自己決定だから、国家がこれを一律に禁止することは、こうした自己決定を否定すること」です(二宮「家族法」(第2版)(2005年、新世社)190頁参照)


ですから、日本においても一定限度で代理出産を認めるべきであると考えます。すなわち、原則として母子関係は分娩という事実によるとしても、代理出産の場合も、卵子提供者と子との間に母子関係を認めるべきです。また、妻が妊娠した子ではないから、原則としては父性推定が働かないとしても、代理出産の場合は、精子提供者と子との間で父子関係を認めてよいと考えます。


今回の東京高裁決定は、外国判決の承認の問題として代理出産による親子関係を認めたのですから、必ずしも日本において代理出産を認めることに繋がるわけではありません。しかし、自己決定権、子の福祉を考慮して、日本においても代理出産を認めていくべきではないでしょうか?

東京高裁決定が「法制定時に想定されていなかったことを理由に、人為的操作による妊娠、出生がすべて、わが国の法秩序の中に受け入れられないことにはならない」と判示しているように、代理出産も日本の法秩序において受け入れがたいものではないのですから。




<追記1>:読売新聞9月30日付(土曜日)夕刊22面

「東京高裁決定要旨は次の通り。

 わが国の民法などの法制度は、自然妊娠だけの時代に制定されているが、現在は生殖補助医療技術が発達したことにより、人為的な操作での妊娠や出生が実現している。法制定時に想定されていなかったことを理由に、人為的操作による妊娠、出生がすべて、わが国の法秩序の中に受け入れられないことにはならない。

 現に、人工授精による妊娠については、当事者の意思を十分に尊重して確認する条件の下で、現行法制度の中で容認されている。

 本件では、代理母とその夫は、代理出産した子との間での親子関係や養育を望んでいない。このままでは、子らは法律的に受け入れるところがない状態が続くことになる。抗告人ら(向井さん夫婦)は子らを出生直後から養育し、今後も実子として養育することを強く望んでいる。したがって、わが国において抗告人らを法律的な親と認めることを優先すべき状況となっており、抗告人らに養育されることが最も子らの福祉にかなうというべきである。

 厚生科学審議会生殖補助医療部会は、代理妊娠を一般的に禁止する結論を示している。理由として、『子らの福祉の優先』『人をもっぱら生殖の手段として扱うことの禁止』『安全性』『優生思想の排除』『商業主義の排除』『人間の尊厳』の6原則を挙げているが、今回はいずれも当てはまらない。

 現在、わが国では代理母契約について、明らかにこれを禁止する規定は存在しないし、代理妊娠を否定するだけの社会通念が確立されているとも言えない。」




<追記2>

代理出産については、「日本の代理母出産の今後」-[不妊治療]All About」を、外国判決の承認を含め、国際民事訴訟法については、「HP of Satoshi Iriinafuku-国際民事訴訟法講義ノート」をご覧下さい。



<10月24日追記>

「ブログ時評」さんの「代理出産と転送事故、産科医療はどこへ [ブログ時評67]」によると、

「高裁決定は一般論として代理出産を認めているのではない。」

そうです。
一般論ってどういう意味でしょう?(苦笑) 東京高裁決定は国際民事訴訟法の問題として処理しているのであって、一般論か否かとは次元が違います。だいたい、「Matimulog」さんを見なくても、それ以前の東京新聞の報道を読めば、どういう判例か分かります。「ブログ時評」さんは、やはり向井夫妻の代理出産事件を理解できていないようです。

問題なのは、マスコミがミスリードした「向井夫妻代理出産事件」を、どこのマスコミも訂正しようとせず、どこのマスコミも外国判決の承認制度についてきちんとした解説をしていないことです。いつ訂正やきちんとした解説をするのでしょうか?

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
「外国判決の承認問題」から一歩踏み出せないものでしょうか?
代理出産を禁止する産科婦人科学会の会告や厚生科学審議会の結論を考慮すれば、我が国では「代理出産」そのものは、公序良俗に反すると位置づけられていると考えられます(「判決の内容及び訴訟手続き」は公序良俗に反しないと考えられるとしても)
純粋な法律論議を超えて、現状下かかるケースは養子縁組により「子供の福祉」を守るという道はあり得ないでしょうか?
2006/10/02 Mon 22:54:06
URL | 篠田孝道 #tlFVsf/Y[ 編集 ]
> 篠田孝道さん
はじめまして、コメントありがとうございます。

>「外国判決の承認問題」から一歩踏み出せないものでしょうか?

この事案については、まずは「外国判決の承認問題」ですから、そこから離れるのは難しいと思います。


>代理出産を禁止する産科婦人科学会の会告や厚生科学審議会の結論を考慮
>すれば、我が国では「代理出産」そのものは、公序良俗に反すると位置
>づけられていると考えられます

確かに、仰るとおり、厚生科学審議会が挙げる理由自体だけからすると、代理出産は日本法では公序良俗(民法90条)に反するという判断もできそうです。

ただ、次の3つの理由から公序良俗に反するとの判断は難しいと考えています。

理由1は、<追記1>で引用したように、今回の東京高裁決定要旨によると、

「厚生科学審議会生殖補助医療部会は、代理妊娠を一般的に禁止する結論を示している。理由として、『子らの福祉の優先』『人をもっぱら生殖の手段として扱うことの禁止』『安全性』『優生思想の排除』『商業主義の排除』『人間の尊厳』の6原則を挙げているが、今回はいずれも当てはまらない。」

と判断しています。要するに東京高裁決定は、厚生科学審議会が挙げる理由を知った上で、この事案では公序良俗に違反しないとしたわけです。

理由2は、代理出産は、必ずしも公序良俗違反であるという理解で一致していないのです。
毎日新聞の記事によると、「代理出産の禁止を含む生殖補助医療の新法制定を目指したが、自民党から『子どもを産む権利を国が規制するのはおかしい』などの反発を受け、宙に浮いたままだ」そうです。このように自民党議員は代理出産が公序良俗違反だとは考えていないわけです。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/archive/news/2006/09/30/20060930dde041040046000c.html


理由3は、判例上、代理出産の是非は立法政策にすぎないと思われるからです。すなわち、夫死亡後の凍結精子による人工生殖訴訟において、最高裁は、人間の尊厳に反し公序良俗に違反するという理由でなく、立法がないという理由で、認知を否定しました。
問題状況は異なるとしても、同じ人工生殖の問題ですから、代理出産についても、最高裁は公序良俗違反でなく、単なる立法政策と判断するはずだと思われます。


>純粋な法律論議を超えて、現状下かかるケースは養子縁組により「子供の
>福祉」を守るという道はあり得ないでしょうか?

ネット上では養子縁組によるべきという意見が結構あります。ですが、なかなか時間がかかりそうです。

養子縁組をするには、夫妻の双方又は一方との間で実子でないことが前提です。この事案ではすでに米ネバダ州裁判所は向井夫妻の実子と判断しているので、裁判所で向井夫妻の実子でないことを確定する必要があります。
その後、その米国籍の子を向井夫妻が養子縁組することになりますが、これは国際的な養子縁組になるので、法例20条によって、米ネバダ州法の趣旨も考慮して養子縁組の手続を行うことになります。

なお、米ネバダ州裁判所において向井夫婦の実子でないと判断してもらえばよいとも考えられます。しかし、米ネバダ州では代理出産を認めている以上、米ネバダ州裁判所は向井夫妻の実子ではないという判断はしないはずです。

このように外国で代理出産する場合にも、養子縁組によるべきだとすると、国際的な養子縁組となるので、かなり手続が面倒です。
他方で、代理出産を行った夫婦の大半は、海外で得た出生証明書を基に日本で実子として届け、受理されていますから、手続は非常に簡単です。(もっとも、向井夫妻のように代理出産を公言したら、届出を拒否されるでしょうけど)

このように考えると、「養子縁組により『子供の福祉』を守るという道はあり得」るでしょうが、実子と扱って処理する方が簡易なのです。
なにより向井夫妻の実子なのですから、それをわざわざ国際的な養子縁組の処理をする必要があるのだろうか、と思うのですが……。


<追記1>
>純粋な法律論議を超えて

多くの夫婦が「血を分けた子が欲しい」と願う気持ちを持っていると思います。そのごく自然な感情に対して、「子供が欲しいのなら、養子をもらえばよい」と言っても、感情的に納得させられないと思います。

今や多くの夫婦が不妊治療を行っていますが、不妊治療はどの方法でも金銭的な負担が大きく、苦しい状況にあります。なのに、政府や自治体からの補助もないのです。前から要望があるのですが。
養子か代理出産かではなく、代理出産に至る前に、少子化対策の一環として、不妊治療に対する政府や自治体による援助が必要ではないかと思っています。


<追記2>
法務省は、代理出産は、すべて養子縁組の手続で処理することを望んでいるようです。……どうなんでしょうね。実子だけど養子……。
2006/10/03 Tue 07:13:03
URL | 春霞 #eJ42Lz8A[ 編集 ]
代理母に関して
InfoC管理者といいます。はじめまして。代理母に関する話題に関して書いていらっしゃるので、コメントを送りました。私、ナノピコ放送局(http://www.infococktail.co.jp/pickup/contents.cgi?topic_id=9)というサイトを運営してまして、代理母の問題を含め様々なテーマに関して、トラックバックを用いて皆様の意見を集めています。ブログ読者を増やすのにもお役に立てると思います。トラックバックしてみませんか?代理母以外でも興味があるテーマがありましたらブログ記事のトラックバックを送って下さるとありがたいです。解説はhttp://www.infococktail.co.jp/index7.htmlにあります。勝手なコメントを送り申し訳ありません。ただブロガーの皆様のお役に立てるサイトになるのではと考えています。よろしくお願いします。
2006/10/20 Fri 03:04:09
URL | InfoC管理者 #-[ 編集 ]
> InfoC管理者さん
はじめまして、コメントありがとうございます。

>私、ナノピコ放送局というサイトを運営してまして
>代理母の問題を含め様々なテーマに関して、トラックバックを用いて
>皆様の意見を集めています

なるほど。ブログ記事読み比べリンク集を運営なされているのですね。初めて知りました。こういうサイトは、「ブログ・ヘッドライン」がありますが、幾つもあった方がいいことは確かです。なので、TBさせて頂きました。

「日本で行う代理出産の是非」ではなく、外国判決の承認として認めた東京高裁決定は妥当であるという趣旨のエントリーですから、いささかテーマがずれている気がして迷ったのですが、東京高裁決定を正しく理解してもらうのも良いことだと思い、TBさせて頂きました。
2006/10/21 Sat 16:38:58
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
トラックバックありがとうございました
ブログ・ヘッドラインとの違いは将来的にはブロガーさんにテレビのコメンテータのようになってもらいたいという点です。あるテーマが出てきたら、それに関心のあるブロガーさんにコメントを求めるような感じです。もちろんブロガーさんからの投稿も自由です。テーマがあった方が書きやすい、他の人が何を言っているか見た方が書きやすい、更に読者も同じテーマでいろいろな意見が並んでいる方が理解が深まるのではと思っています。
今後ともよろしくお願いします。
2006/10/21 Sat 17:18:58
URL | InfoC管理者 #-[ 編集 ]
> InfoC管理者さん
再びのコメントありがとうございます。

>ブログ・ヘッドラインとの違いは将来的にはブロガーさんにテレビの
>コメンテータのようになってもらいたいという点です
なるほど、了解しました。目指していることがだいぶ異なるのですね。
ナノピコ放送局さんは、代理出産というテーマの場合、是非という形で整理なされているので見易いと思いました。

>今後ともよろしくお願いします。
こちらこそ、宜しくお願いします。
2006/10/22 Sun 17:46:07
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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前区長の逝去に伴う区長選挙が明日告示され、区長選まで残り1週間となったが、東京高裁は区長に対して、タレントの向井亜紀さんの出生届を受理するよう命じる判決を下した。先進都市の首長選挙ということと、安倍内閣発足後 はじめて行われる選挙とうこ...
2006/10/02(月) 23:13:44 | きむあつ情報発信ブログ
実際の手続きを調べてみた ・出生証明書(Birth Certificate)  アメリカで出産すると、出産に関わった医者が、出生証明書(Birth Cerfiticate)というものを発行し、その地区(郡)の役所に届けます。  この証明
2006/10/03(火) 04:37:04 | London bridge
女性は40代後半から50歳頃に、避けては通れない閉経を迎えますね。そして、閉経に伴い更年期障害の症状が出てくる人もいますね。そんな閉経を終えた、もう10数年経った後に...
2007/01/02(火) 07:32:59 | 救急最前線!!
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