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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2008/11/01 [Sat] 23:54:16 » E d i t
戦時中の大規模な言論弾圧事件として知られる「横浜事件」で、治安維持法違反の罪で有罪判決を受けた元改造社編集部員、故小野康人さんの遺族が起こした第4次再審請求について、横浜地裁(大島隆明裁判長)は10月31日、再審開始を決定しました。決定は第3次請求より踏み込んで当時の捜査や裁判のずさんさを批判しており、「拷問を受け虚偽の自白をした」とする口述書は「無罪を言い渡すべき新たな証拠」と認定しました。

◇横浜事件再審決定の骨子◇

 ▼再審を開始する

 ▼大赦により赦免されたとしても再審を請求することが許され、名誉回復などの実益がある

 ▼事件の記録が廃棄されているからといって、再審請求を認めないのは裁判所のとるべき姿勢ではない

 ▼「共産党再建の準備会」とされた会合は慰労会の可能性が高く、当時の写真などは、無罪を言い渡すべき新証拠と言える

 ▼拷問による自白強制の可能性が高いが、第1次再審請求棄却では最終的、実質的判断を下していない」(読売新聞平成20年10月31日付夕刊1面より)



横浜事件の再審を巡っては、他の元被告人が起こした第3次請求で初めて再審開始が認められました。2005年3月の東京高裁決定は「拷問による自白」を認定し再審開始を支持しましたが、治安維持法の廃止などを理由に、有罪、無罪を判断せずに裁判を打ち切る「免訴」判決が今年3月、最高裁で確定しています(日経新聞平成20年10月31日付夕刊23面)。



1.報道記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成20年10月31日付夕刊1面

横浜事件『無罪とすべき』 再審開始を決定
2008年10月31日 夕刊

 戦時下最大の言論弾圧とされる横浜事件で、終戦直後に治安維持法違反の有罪判決を受けた元被告の遺族らが申し立てた第四次再審請求について、横浜地裁は三十一日、拷問を受けたなどとする元被告の口述書などについて「無罪を言い渡すべき明確な証拠である」として再審開始を決定した。 

 横浜事件の再審開始は、別の元被告の遺族らが行った第三次請求に次いで二回目。有罪確定から六十三年で、司法の責任が再び法廷で裁かれる。弁護団は「横浜事件が特高警察と司法によるねつ造であったことを認めており、決定に敬意を表したい」と高く評価した。

 大島隆明裁判長は決定理由で、元被告が共産主義を広めたとする有罪判決について「これを証明すべき証拠が存在せず、ただちに有罪の事実認定が揺らぐ」と指摘。「拙速といわれてもやむを得ないずさんな事件処理がされた」「不都合な事実を隠ぺいしようと記録を破棄した可能性がある」と当時の裁判所を強く批判した。

 再審を請求していたのは、雑誌「改造」の元編集部員、故小野康人さんの次男新一さん(62)と長女斎藤信子さん(59)。小野さんは「改造」に掲載された社会評論家細川嘉六氏の論文「世界史の動向と日本」の校正を行い、「共産主義を啓蒙(けいもう)した」として、一九四五年九月に有罪判決を受けた。

 遺族らは「論文は共産主義とは関係ない」とする鑑定書を新証拠として提出し、「共産党再建準備会議」とされた会合についても「単なる慰労会」と主張していた。決定は鑑定書の証拠採用はしなかったものの、「共産主義的啓蒙論文といえるか疑問を禁じ得ない」と指摘。会合は「慰労会そのもの」と断定した。

 横浜事件をめぐっては、第一、第二次再審請求がいずれも最高裁で棄却された。第四次とは別の元被告の遺族らが請求した第三次請求で初めて再審が開始されたが、有罪・無罪を判断せずに裁判を打ち切る「免訴」が最高裁で確定した。

 今回の決定でも第三次請求での免訴確定を踏まえ、「治安維持法が廃止されていることなどから、再審を開始しても免訴判決をするほかない」と述べた。

◆上級庁と対応協議

 中井国緒・横浜地検次席検事の話 当方の主張が認められず、残念。上級庁と協議して今後の対応を決めたい。」




(2) 読売新聞平成20年10月31日付夕刊1面

「横浜事件」第4次再審請求、横浜地裁が開始決定

 戦時中に共産主義を宣伝する論文の編集に関与したなどとして、編集者らが治安維持法違反で摘発された言論弾圧事件「横浜事件」の第4次再審請求で、横浜地裁は31日、再審開始を決定した。

 大島隆明裁判長は、事件の発端となった会合について「共産党を再建するための会合とは見られない」とし、「拷問による自白に信用性はなく、会合の集合写真などは、無罪を言い渡すべき明確な新証拠にあたる」と結論付けた。

 横浜事件の再審開始決定は、3次請求に続き2例目。今回は、当時の判決の事実認定を否定、事実上の無罪を言い渡す画期的な司法判断を示した。1次請求について「記録が残っていないことを理由に判断をあきらめた」とも指摘した。

 請求していたのは、1945年に有罪判決(懲役2年、執行猶予3年)が確定した「改造社」社員の小野康人さん(59年死去)の遺族。小野さんは、42年に雑誌「改造」に発表された評論家・細川嘉六氏(故人)の論文の校正作業を行ったほか、富山県の旅館で開かれた日本共産党の再建準備会合に出席したとして、翌年、神奈川県警の特別高等課に逮捕された。

 請求で遺族側は、〈1〉論文は共産主義を宣伝するものではない〈2〉会合は単なる慰労会だった〈3〉特高の拷問による自白があった――と主張。旅館で編集者らが浴衣姿で写る写真などを新証拠として提出した。

 大島裁判長は決定書で、会合について「酒を持って船で行楽に赴くなど派手な行動をしており、秘密会合とうかがわれる様子はなく、慰労会」とした。論文については「共産主義的啓蒙(けいもう)論文といえるものだったかどうか疑問が残る」と言及した。

 地裁決定に不服がある場合、検察側は11月4日までに東京高裁に即時抗告できる。地裁決定が確定すると、再審が開始される。3次請求の再審では、法の廃止と大赦を理由に、有罪か無罪かを判断せずに裁判を打ち切る「免訴」判決が、今年3月末に最高裁で確定しており、4次請求の再審公判でも、同様に「免訴」判決が出る可能性も高い。

(2008年10月31日14時18分 読売新聞)」



(3) 読売新聞平成20年10月31日付夕刊19面

横浜事件 「無罪決定と思う」 遺族2人 喜びの涙

 「犯罪事実自体が虚構で、それを認めた裁判所にも責任があるという我々の主張を認めた」。言論弾圧事件「横浜事件」で31日、横浜地裁が下した再審開始決定を、請求人側は画期的な判断と喜んだ。第1次再審請求の1986年から20年以上。元被告で出版社「改造社」社員だった小野康人さんの次男と長女は、再審請求に奔走した亡き母も思い、涙した。

 午前10時半から横浜弁護士会館で始まった記者会見で、大川隆司弁護団長は「(42年に富山県で開かれ、共産党を再建するためとされた)『泊会議』はただの宴会で、『細川論文』は共産主義啓蒙(けいもう)論文とするのは疑問、と具体的な内容に踏み込んだ。事件の構図を『特高のでっち上げ』と示唆した点で、3次請求に対する再審開始決定よりも一歩進んだ」と顔を紅潮させた。

 小野さんの長女、斉藤信子さん(59)(東京都渋谷区)は、「母を含め、86年に再審を申し立てた9人が求めてきた無罪を勝ち取ったと思っています。ずっと支援してきてくれた人たちになんとお礼を申し上げて良いか分かりません」と涙ぐんだ。(以下、省略)」



(4) 「横浜事件」については、何度か触れています。

<1>「横浜事件:最高裁は免訴判決で確定(上)~言論弾圧に加担した司法の戦争責任を何ら清算せず」(2008/03/16 [Sun] 06:18:35)
<2>「横浜事件:最高裁は免訴判決で確定(中)~免訴判決を妥当とした最高裁判決を妄信し礼賛するのは止めるべきでは?」(2008/03/25 [Tue] 05:07:13)
<3>「横浜事件第4次再審請求~再審開始の可否、10月31日に判断」(2008/10/31 [Fri] 04:59:30)



 イ:これらのエントリーで触れたように、第4次再審請求では、「再審開始決定の理由で実質的に無罪の判断が示されるかどうか」が注目されていました。

刑事補償法25条(免訴又は公訴棄却の場合における補償) は、免訴の裁判を受けた者は、もし免訴の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の判決を受けるべきものと認められる充分な事由がある場合に限り、無罪判決を受けた者と同様の刑事補償を請求することができる、と規定しています。すなわち、免訴判決があれば直ちに刑事補償ができるわけでなく、「免訴の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の判決を受けるべきものと認められる充分な事由があるとき」という条件が必要なのです。

こうした条件があるのかどうかが重要であり、そのため、第4次請求では、再審開始の決定時に、裁判所が「無罪とするべき理由がある」と踏み込んだ理由を示すかが焦点となっていました。もし示していれば、「実質無罪」という評価ができるとともに、「実質無罪」の再審開始決定を刑事補償請求につなげることが可能になるわけですから。

今回、横浜地裁は、大島隆明裁判長は決定理由で、(42年に富山県で開かれ、共産党を再建するためとされた)「泊会議」はただの宴会で、「細川論文」は共産主義啓蒙(けいもう)論文とするのは疑問だとして、元被告人が共産主義を広めたとする有罪判決について「これを証明すべき証拠が存在せず、ただちに有罪の事実認定が揺らぐ」と指摘しました。このように、「当時の判決の事実認定を否定、事実上の無罪を言い渡す画期的な司法判断をした」(読売新聞)のです。いわば、「実質無罪」と評価できる内容になったのです(弁護団長の話)。

この、「3次請求に対する再審開始決定よりも一歩進んだ」(弁護団長の話)判断により、「免訴の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の判決を受けるべきものと認められる充分な事由があるとき」という条件を立証できる可能性が高くなったといえます。


 ロ:第3次再審請求での最高裁判決の問題点の1つは、「横浜事件は、4人が獄死するほど熾烈な拷問がなされ、治安維持法違反をでっち上げた事件であり、裁判関係者が訴訟記録を焼却したため、第1次再審請求から22年もの辛苦を経てきたことへの配慮に欠けていた点」でした。そして、第1次再審請求棄却の理由は「裁判記録が焼却され審理できない」というものでしたが、それは、裁判記録という書面がなければ、まるで裁判がなかったかのような言い訳であって、全く根拠のない裁判拒否だったのです。

今回、横浜地裁は、大島隆明裁判長は決定理由で、「拙速といわれてもやむを得ないずさんな事件処理がされた」「不都合な事実を隠ぺいしようと記録を破棄した可能性がある」と当時の裁判所を強く批判しています。そして、「事件の記録が廃棄されているからといって、再審請求を認めないのは裁判所のとるべき姿勢ではない」(判決骨子)としており、第1次再審請求での裁判所の対応も批判したのです。

当時の裁判所、再審請求時の裁判所の両方を批判した点で、正面から司法の戦争責任について認めたものと評価できる決定となったといえます。




2.解説記事と識者のコメントを幾つか。

(1) 東京新聞平成20年10月31日付夕刊1面「解説」

当時の司法の責任認定
2008年10月31日 夕刊

 「無罪とするべき理由がある」と明確に述べた横浜地裁の再審開始決定は、事件が特高のつくり上げた虚構であり、それを一日だけの審理で追認し、有罪判決を出した当時の司法の責任を認めたといえる。

 第四次再審請求では「冤罪(えんざい)」と「言論統制」に加担した司法の責任を正面から問いかけた。

 今回の決定は、当時の裁判所の怠慢や責任についての言及が目立ち、弁護団の主張をほぼ全面的に受け入れた。

 ただ、第三次再審請求に続いて再び開いた再審の扉だが、実際の「無罪」判決につながるとは考えにくい。第三次請求では、刑の廃止や恩赦などを理由に裁判を打ち切る「免訴」判決が最高裁で確定。第四次請求も同じ結果が予想される。

 しかし、弁護団は今後、小野康人さんへの「無罪」認定による刑事補償請求などで、司法の責任をさらに追及する構えだ。

 過去の言論弾圧を清算せずに、現在の言論の自由は守れない。最近の形式犯への厳罰化や人権擁護法案など言論統制が進む状況の中で、横浜事件が再び司法の場で裁かれる意義は大きい。 (横浜支局・中沢穣)」



(2) 読売新聞平成20年10月31日付夕刊19面「解説」(4版)

司法過ち認める

 横浜地裁の4次請求の再審開始決定は、1~3次請求で裁判所が触れることのなかった「事件」の発端について初めて言及。特高が「(当時、非合法だった)共産党の再建会議」と決めつけようとした会合を「慰労会とみられる」と判断した。

 3次請求については、治安維持法が廃止されていることなどを理由に、「免訴」判決が確定しており、今回も再審裁判で「免訴」となる可能性が高い。それでもなお、無罪を主張する遺族が求めたのは「事件そのものの評価」だった。その意味で、実質的に無罪を言い渡した今回の決定を、弁護団は「満点に近い」とする。

 さらに、決定では、当時、裁判所などが記録を破棄したことについて「不都合な事実を隠蔽(いんぺい)しようとする意図」があった可能性が高いとし、「でき得る限り、請求人らに不利益にならないように努めるのが裁判所の責務」と指摘。司法の過ちを率直に求めた画期的な判断といえる。 (横浜支局 松山翔平)」


「名誉回復が目的 画期的」 「政治的背景の検証必要」

 井戸田侃(あきら)・立命館大名誉教授(刑事法)の話 「元被告の名誉回復が再審の目的の1つと明言したことは画期的だ。当時の捜査の状況を推測して判断したことも評価できる。再審判決では免訴となる可能性があるが、理由の中に、はっきり無罪の事件であると記述すべきだろう」

 佐藤卓己・京大准教授(メディア史)の話 「妥当な決定で、横浜事件は戦時中のジャーナリズムを考察する素材として大きな意味がある。マスコミや研究者は裁判所とは別に、言論機関が共産主義のレッテルを張られた当時の政治的背景を検証することが必要になってくる」」



 イ:この2つの解説記事で注目する点は「司法の責任」の点です。

 「「無罪とするべき理由がある」と明確に述べた横浜地裁の再審開始決定は、事件が特高のつくり上げた虚構であり、それを一日だけの審理で追認し、有罪判決を出した当時の司法の責任を認めたといえる。
 第四次再審請求では「冤罪(えんざい)」と「言論統制」に加担した司法の責任を正面から問いかけた。
 今回の決定は、当時の裁判所の怠慢や責任についての言及が目立ち、弁護団の主張をほぼ全面的に受け入れた。」(東京新聞)

 「決定では、当時、裁判所などが記録を破棄したことについて「不都合な事実を隠蔽(いんぺい)しようとする意図」があった可能性が高いとし、「でき得る限り、請求人らに不利益にならないように努めるのが裁判所の責務」と指摘。司法の過ちを率直に求めた画期的な判断といえる。」(読売新聞)


「有罪判決を出した当時の司法の責任」と「第1次再審請求時の司法の責任」を認めた点に、この第4次再審開始決定の意義がある、という解説を行っています。いままでの裁判所は司法の責任について触れてこなかったのですから、この司法の責任を認めた点で画期的なものといえるわけです。


 ロ:井戸田侃・立命館大名誉教授は、 「元被告の名誉回復が再審の目的の1つと明言したことは画期的だ」と述べています。

一般的には、逮捕・起訴されただけでも社会的名誉が低下するのですから、通常の刑事事件での裁判でも、犯罪を犯したかどうかを争うだけでなく、名誉回復の面があることは確かです。

特に、「再審は、誤った確定有罪判決を受けた市民が尊厳を回復するため」(大コンメンタール刑事訴訟法第7巻〔高田昭正〕111頁)の制度であるとも言われるように、再審制度の意義として「不当な有罪判決を受けた者の社会的名誉・信用の回復をもねらい」(「三井誠・酒巻匡『入門 刑事手続法(第4版)』(有斐閣、2006年)297頁)としています。

こうした元から言われている「再審の目的・意義」には、「不当な有罪判決を受けた者の社会的名誉・信用の回復」にもあることを明示した点で意義がある決定といえるわけです。




3.最後に。

横浜事件 今度こそ真実に光を
2008年11月1日

 正義を実現する場なら自らの過ちもはっきり認めなければならない。時代の雰囲気に流されていた歴史的事実をあいまいにしたままでは、司法は国民の信頼を失い、権威も失墜するだろう。(中略)

 〇六年二月、最初の再審で横浜地裁は治安維持法の廃止を理由に元被告らを免訴(裁判打ち切り)にしたものの「無罪」を宣言しなかった。この判決は最高裁も支持、確定しており、司法の過ちを司法自身が公式に認める形になっていない。

 治安維持法は希代の悪法といわれた思想弾圧法である。戦時中の裁判官の多くは、唯々諾々とそれを適用して当時の国家体制や戦争に疑問を持つ人たちを処罰してきた。戦後、その責任を取った人はほとんどいない。

 元被告らの無念に報い名誉を回復するには、免訴という形式的な決着のつけ方では足りない。司法が犯した過ちの歴史を明確にし記録にとどめるためにも、今度こそ再審で詳しい事実審理をして無罪宣言をすべきだ。

 露骨な弾圧はないように見えてもビラ配りによる逮捕、有罪判決など、民主主義の基盤である思想表現の自由にかかわる憂慮すべき事態が絶えない。横浜事件を風化させると現在の危機も見逃すことになりかねないだろう。」(東京新聞平成20年11月1日付【社説】



戦時中、治安維持法を拡大解釈、拷問による自白を黙認したままの有罪判決など、明治憲法下でも許されないことを相当数行ってきましたが、このような司法部特有の戦争犯罪について、戦後、実質的には全く責任が問われなかったのです。狂気じみていた特高警察に対する刑事責任の追及でさえ、ほとんどなされませんでした。

「横浜事件の再審には、(司法部の戦争犯罪)に対して司法部が自らの責任についてどういう決着をつけるのかという問題」である――。このように指摘されていたにも関わらず、最高裁は冤罪に苦しむ無辜を救済するという任務を放棄し、司法部が犯した戦争犯罪について、自ら匡すことなく沈黙してしまいました。戦時中の司法の誤りについては自ら反省することはしない――。これが最高裁が、日本国民に向けて発したメッセージというわけです(「横浜事件:最高裁は免訴判決で確定(中)~免訴判決を妥当とした最高裁判決を妄信し礼賛するのは止めるべきでは?」(2008/03/25 [Tue] 05:07:13)参照)。

今回、横浜地裁は、最高裁と異なり、実質無罪の認定を行い、司法の責任を認める決定を行いました。この趣旨を徹底して、「再審で詳しい事実審理をして無罪宣言」(東京新聞「社説」)ことは一番好ましいことであり、「免訴となる可能性があるが、理由の中に、はっきり無罪の事件であると記述」(井戸田名誉教授)することが妥当なように思えます。

そして、少なくとも、再審判決では司法の戦争責任を明確にするべきです。それが、恣意的な有罪判断がなされてきた戦前と決別し、人権保障を確保し、「法の支配」を実現するため、公正な裁判を受ける権利(憲法32条)を保障したという、現行憲法の意義を明確に示すことになるのですから。


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コメント
この記事へのコメント
横浜事件はまたも免訴に終わる
 初めて書き込みます。
 3月30日に下された判決は結局「免訴」となり、その理由も形式的なものにとどまりました。あまり期待はしていなかったのですが、やっぱり失望です。大昔の司法関係者の行いをどうしてそこまでしてかばわねばならないのか。

 正直「なぜ無罪ではいけないのか」という問いに対して裁判所も判例を支持する法学者も誠実に応えているとはいえません。一度有罪判決が確定してしまっている以上、理論上「有実」でも無実でも下すことができる免訴判決で真の名誉回復ができるとは思えません。確か今も昔も一般的な条文があるだけなのだから、元被告人の名誉回復という再審の主たる目的に配慮した解釈をすることは十分可能なはずです(最高裁だって常に刑事訴訟法をガチガチに文理解釈しているわけではない)。
 少なくとも再審事件においては、汚名を着せられた者を無罪にして名誉回復を図るという利益を押しのけてまで免訴にする理由はないと考えます。

 さて、私が気がかりなのは学会の状況です。私の見る限り最高裁判決がでた当時、名前を出していた法学者の数においては、再審では無罪は可能で無罪にすべきという説を採る人が多数を占めていたと思います(免訴説は渥美東洋教授くらい)。しかし、この国では判例が出たとたんなし崩し的に学説がそっちへなびく傾向がないとはいえず、心配です(実際ジュリストの平成20年度重要判例解説では判例支持の解説が載ってます)。判例や実務に従うだけでは学説の存在意義はないと思うのですが。

 3月30日判決は確定してしまったので、今後は刑事補償法による勝負になります。刑事補償が無罪判決の代わりになるとはいえないと思いますが、今度は過去から目を背けない判断が出ることを期待します。ただ、今度は一転して「刑事補償法は同法施行前には適用されない」という判断がでたり、国側が補償金の支払いを認諾することによって「理由を論ずる必要はない」ということになるおそれもあり、予断を許しません。
 
 最後にこの国では司法においても戦前との連続性が断ち切れずに残っているのではないかと感じました。これではまたいつか同じことをやるのではないかと思います。
2009/04/15 Wed 13:31:03
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麻生邸リアリティ・ツアー逮捕事件についてのヤメ蚊弁護士さんの提唱に微力ですが協力します。 麻生邸リアリティ・ツアー逮捕事件につい...
2008/11/02(日) 23:04:43 | 村野瀬玲奈の秘書課広報室
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2009/01/03(土) 19:26:20 | ?û
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