FC2ブログ
Because It's There
主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
09« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 31.»10
スポンサーサイト 
--/--/-- [--] --:--:-- » E d i t
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 *  TB: --  *  CM: --  * top △ 
2008/10/30 [Thu] 01:41:11 » E d i t
森英介法相は10月28日午前、久間三千年さん(70)、高塩正裕さん(55)の刑を執行したと発表しました。死刑執行は9月11日以来で、麻生内閣では初めてあり、先月24日に着任してからわずか1ヶ月での執行です。今年5回目の死刑執行であり、今年の執行は計5回15人となり、執行者数が公表されるようになった1999年以降、年間執行回数も執行者数も最多を更新しました。

クローズアップ2008:死刑執行、ハイペース 強まる「自動化」 背景に確定者増加

 森英介法相は執行後の会見で「法の求めるところに従って粛々と職責を果たした。時期や間隔は一切意識にない」と述べた。先月24日に着任してから1カ月。保岡興治前法相下での前回の執行(9月11日)から1カ月半という間隔は、93年の死刑再開以降で最も短い。「法相は通常、着任後3カ月は、勉強期間でもあり執行はしない」(法曹関係者)との慣例からも外れる異例の執行と言える。

 昨年8月に就任した鳩山邦夫元法相は「自動執行」の方向性を打ち出した。保岡前法相、森法相の執行で、その傾向がはっきりしたと保坂議員はみる。」(毎日新聞2008年10月29日東京朝刊3面



1.報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年10月28日付夕刊15面(4版)

2人の死刑執行 森法相就任1ヶ月で初
2008年10月28日11時13分

 法務省は28日、死刑囚2人に死刑を執行したと発表した。森英介法相が9月24日に就任してからほぼ1カ月で初めての執行となった。福田前首相が退陣を表明した直後の9月11日に保岡前法相が3人に執行して以来。これで確定死刑囚は101人となった。

 死刑は、約1年の在任期間中に13人に執行した鳩山元法相の当時から、約2カ月に一度の割合で執行されていた。今回は、それを上回るペースで行われたことになる。

 森法相は、執行を発表する会見で「法の求めに従って粛々と自らの職責を果たした。慎重かつ適正な検討を加えた。時期や間隔は一切、意識にない」と語った。就任時の記者会見では、死刑について、「粛々と実施することが妥当。鳩山元大臣の考えに共感する」と話していた。

 法務省によると、執行されたのは久間三千年(くま・みちとし)(70)、高塩正裕(55)の2死刑囚。久間死刑囚は福岡拘置所、高塩死刑囚は仙台拘置支所で執行された。

 久間死刑囚は、92年2月に福岡県飯塚市で登校中の小学1年の女児2人を車に誘い込み、首を絞めて殺害。遺体を同県甘木市(現・朝倉市)の山中に捨てた。殺人と死体遺棄などの罪に問われ、06年9月に最高裁が上告を棄却し、死刑が確定した。同死刑囚は、逮捕以来、一貫して無罪を主張していた。

 高塩死刑囚は04年3月、福島県いわき市で、女性(当時83)と、その娘(同55)の2人をナイフで刺して殺害し、現金約5万円を奪った。強盗殺人罪に問われ、06年12月に高塩死刑囚側が上告を取り下げて、死刑が確定していた。

 07年までの10年間で執行された死刑囚は刑が確定してから平均して8年間、拘置所に収容されてきたが、久間死刑囚は約2年、高塩死刑囚が約1年10カ月だった。

   ◇

 久間死刑囚の死刑が執行されたことについて、福岡県飯塚市の被害者の遺族の1人(50)は朝日新聞の取材に対し「死刑執行は1つの区切りであって、今でも事件と犯人は許し難い」と語った。また「同じような事件が二度と起こらないようにしてほしい」と語った。
 
 高塩死刑囚に、母と姉を殺害された遺族の女性は「こんなに早く執行されるとは思わなかった。改めて亡くなった2人の冥福を祈りたい。死刑執行がひと区切りとも言えない。事件から年月がたっても、気持ちが癒やされることはない」と話した。」



(2) 時事通信(2008/10/28-12:23)

2人の死刑執行=森法相就任後初-女児誘拐殺人の久間死刑囚ら・法務省

 法務省は28日、福岡県で女児2人を殺害した久間三千年死刑囚(70)=福岡拘置所=と、福島県2女性殺害の高塩正裕死刑囚(55)=仙台拘置支所=の刑を執行したと発表した。9月に就任した森英介法相の下では初。執行は同月11日以来で、47日の間隔は、執行を法務省が公表するようになった1998年以降で最短。
 鳩山邦夫元法相、保岡興治前法相に続き、死刑囚の氏名と犯罪事実、執行場所を公表した。執行は今年になって計15人で、未執行の死刑確定囚は101人となった。
 執行後に記者会見した森法相は「慎重な検討を加えた上で、法の求めに従って粛々と執行した。間隔や人数は意識していない」と述べた。(2008/10/28-12:23)」


その鳩山元法相は「友人の友人はアルカイダ」など多くの妄言を繰り返し、日本文化への理解も間違っており、刑事訴訟法への理解は実に乏しいものでした。森法相は、そういう「鳩山元大臣の考えに共感する」と話しているのですから、森法相も同類といえそうです。「同類」だからこそ、「法相は通常、着任後3カ月は、勉強期間でもあり執行はしない」(法曹関係者)との慣例からも外れる異例の執行でさえも、森法相にとっては抵抗がなかったのでしょう。

久間三千年さんの事件は、犯行場所も殺害状況も動機も、正確には何も真相が分かっておらず(西日本新聞)、「逮捕以来、一貫して無罪を主張していた」(朝日新聞)のですし、他方で、高塩正裕さんは、自暴自棄になったかのように上告を取り下げた結果、死刑が確定したという事情があったのです。このような今回の裁判の事情をも考慮すれば、1ヶ月というわずかな時間では、十分な判断をすることは困難です。

森法相は、ほとんど勉強することもなく死刑執行命令書に署名してしまうのですから、職責の重さを理解できないままで処刑を行ったといえ、救いがたいほど法相としての資質を欠いています。こうした資質が劣化している国会議員を法相に就任させるしかなかった自民党、そして、こうした人物を法相とした麻生首相にも問題があり、また、こうした著しく劣化した法務大臣(自民党議員)を焚き付けて、死刑執行に署名をさせてしまう法務省もまた、問題があるように思います。


10月28日、被害者のコメントを掲載したのは、朝日新聞だけでした(後日、毎日新聞や読売新聞は地方版でのみ掲載)。以前から、全国版において被害者のコメントを掲載しているのは朝日新聞だけのように思えます(その意味で、「全国犯罪被害者の会(あすの会)」が朝日新聞に対して、コラム「素粒子」の「死に神騒動」に関して謝罪要求をしたのは実に奇妙な感じがしました。)。

世論の一部は、盛んに被害者感情に配慮せよと唱えるのですが、朝日新聞に目を通して、被害者の発言に真剣に耳を傾けているのでしょうか。世論の一部は、本当に被害者のためになる行動をしているのでしょうか。

世論の一部は、加害者を恨み続け、死刑存置に積極的な「良い遺族」を持ち上げ、憐憫の情を抱き、加害者の更生を願い、死刑廃止を容認する「悪い遺族」に対しては非難しているのです。「悪い遺族」は、一般の人から「被害者の気持ちを考えろ」となじられ、記者から「残虐な殺され方をしても許せるか」と問われたりするのです(「「死刑――存廃を問う前に」(第1回):死刑制度に疑問投げかける被害者遺族(東京新聞3月23日付「こちら特報部」より)」(2008/04/15 [Tue] 19:05:48)参照)。

結局は、世論の一部にとっては、被害者はどうでもいい存在であって、ただ自らの復讐感情を満たすだけのために、「良い被害者・遺族」の「被害者感情」を引き合いに出しているだけのように思えます。



2.久間三千年さん(70)、高塩正裕さん(55)、いずれの執行も問題のあるものでした。

(1) まず、久間三千年さんの事件について。

 イ:東京新聞平成20年10月29日付朝刊24面

久間死刑囚「私は『否』を貫く」 市民団体実施のアンケートに回答 再審請求への思い伝える

 女児2人誘拐殺人事件で28日に死刑執行された久間三千年死刑囚(70)は、捜査段階から一貫して無罪を主張し、市民団体が実施したアンケートにも再審請求の思いを回答していた。

 市民団体「死刑廃止国際条約の批准を求める市民フォーラム90」(東京)は今年7―9月、全国の死刑囚105人にアンケートを送り、約8割から回答を得た。11日に開いた世界死刑廃止デー(10日)のイベントで、久間死刑囚の回答も紹介され、「有罪の直接証拠がないまま、一人の人間に『死』を宣告してはばからないこの国の司法に対して、私は『否』を貫き通します」と一部が読み上げられた。

 久間死刑囚は回答の中で「事件発生時の綿密な検証で見つからなかった血痕が1年7ヵ月後になって発見された。(捜査を担当した)巡査長が自殺した報復から警察が捏造(ねつぞう)した」と主張、再審請求で訴えるとしていた。

 同フォーラムの深田卓さんは28日、会見で「法相は事実を精査したというが冤罪(えんざい)の可能性もあり、危ういと思う」と述べた。

 国連人権規約委員会の今月の審査で、日本の死刑制度に批判が集中、近く日本に対し厳しい意見を盛り込んだ最終勧告が出る予定だった。同席した超党派の「死刑廃止を推進する議員連盟」の福島瑞穂社民党党首は、「国際世論の批判を無視した日本政府の強固な意志の表れだ」と批判した。」



 ロ:西日本新聞朝刊2008/10/29付

「再審請求の機会奪った」 主任弁護人
2008年10月29日 00:10

 久間三千年死刑囚の主任弁護人を務めた岩田務弁護士=福岡県弁護士会=は28日、再審請求の準備中だったことを明らかにした上で「死刑執行は突然の話でショック」と言葉を失った。

 久間死刑囚とは9月下旬に福岡拘置所で面会。「元気で『再審で真相を明らかにしてほしい』と話していた」という。

 一連の裁判ではDNA鑑定の信用性が争点となり、岩田弁護士は「久間さんは一貫して否認だった。証拠採用されたDNA鑑定の精度にも問題があり、今でも無実と信じていた」と話す。

 約2カ月に1回のペースで続く死刑執行にも「再審請求の機会が奪われたとの思いがある。本当に残念」と語った。

=2008/10/29付 西日本新聞朝刊=」



 ハ:西日本新聞朝刊2008/10/29付

動機や状況「真相」封印
2008年10月29日 00:10

 これですべてが終わった。久間三千年死刑囚(70)の刑が執行された。最高裁が上告を棄却した2006年9月、私は「久間被告が口をつぐんだまま死刑となれば、明らかにされるべきいくつもの真相が、永遠に封印されてしまう」と書いた。その真相が、ついに封印されてしまった。

 この事件は犯行場所も殺害状況も動機も、正確には何も真相が分かっていない。久間死刑囚は逮捕された1994年9月から最後の日まで、一貫して無実を主張した。

 「冤罪(えんざい)」の訴えを無視するつもりはない。だが、司法が下した判断に従い久間死刑囚が真犯人という前提に立てば、死に際し、自らの胸に閉じ込めた真相とともにこの世を去る、その胸中はいかなるものだったのか。

 事件にかかわった複数の捜査関係者は「彼は家族を守るために否認を貫いた」と言う。犯行を認めれば自分の家族が崩壊する、冤罪のまま死ねば救われる‐と。

 もしそれが真実なら、久間死刑囚の心境をどう理解すればいいのか。久間死刑囚が奪った女児2人の命と家族の苦しみの重さと、必死で守り通した自らの家族への思いを。

 久間死刑囚には、語らなければならないことがたくさんあった。語らずに、この世を去った。もう少し時がたてば、あるいはその日が来たかもしれないという思いもぬぐえない。判決確定からわずか2年での執行には疑問が残る。

 発生から事件を追い続けた。いくつもの「なぜ」を残し、16年8カ月後の3人目の死をもって幕を閉じた。心は、晴れない。 (宮崎昌治)

=2008/10/29付 西日本新聞朝刊=」



 ニ:この裁判では、遺体周辺などから発見された血痕のDNA鑑定が最大の争点でした。

「久間三千年さんは、2006年9月に死刑が確定しており、確定から2年あまりで執行された。現在70歳である。久間さんは一審より一貫して無罪を主張した。公判においては自白、物的証拠もなく、動機も明らかにされないまま死刑判決が下された。唯一の根拠となったDNA鑑定も、複数の鑑定結果がそれぞれ異なっていた中で、科学警察研究所のおこなった1つの鑑定結果のみが採用された。」社団法人アムネスティ・インターナショナル日本「日本支部声明 : 死刑執行に抗議する」(2008年10月28日)


このように、DNA鑑定で定評のあった帝京大学による鑑定は採用されず、「科学警察研究所のおこなった1つの鑑定結果のみが採用された」のです。当時は1991(平成3)年、まだまだDNA鑑定の精度は低かったのですが、最高裁は平成18年9月、「DNA鑑定結果などから被告の犯行だと認定できる」として有罪認定したのです。

栃木・足利の女児殺害:DNAを再鑑定へ 再審請求抗告審--東京高裁

 栃木県足利市で90年、保育園女児(当時4歳)が殺害された足利事件で殺人罪などで無期懲役が確定した元幼稚園バス運転手、菅家(すがや)利和受刑者(62)による再審請求の即時抗告審で、東京高裁(田中康郎裁判長)がDNAの再鑑定を実施する公算が大きくなった。弁護団が17日、明らかにした。

 最高裁がDNA鑑定の信用性を認めた初の事件。弁護団は「当時の鑑定は精度が低く、菅家受刑者の頭髪をDNA鑑定したところ警察の鑑定と異なる結果が出た」として再鑑定の実施を求めた。

 東京高検が15日付で「裁判所が実施するというなら反対しない」との意見書を提出したという。弁護団は02年に再審請求。今年2月、宇都宮地裁が請求を棄却したため即時抗告していた。【伊藤一郎】

毎日新聞 2008年10月18日 東京朝刊


久間三千年さんの事件でもDNA鑑定に疑問があるのですから、足利の女児殺害事件(いわゆる「足利事件」)と同じように再審請求を行い、再鑑定を行うべきでした。ところが、足利事件につき、「DNAの再鑑定を実施する公算が大きくなった」との報道があった直後の執行ですから、DNAの再鑑定により冤罪であることが発覚する前に処刑してしまったのではないか、との疑いを生じさせます。

もし冤罪ではないとしても、久間さんには「語らなければならないことがたくさんあった。語らずに、この世を去った。もう少し時がたてば、あるいはその日が来たかもしれないという思いもぬぐえない」(西日本新聞)のです。ですから、判決確定からわずか2年での執行では、久間さんを精神的に落ちつかせ、語らせる意識を持たせるにはその期間は短かったように思いますし、その結果、日本社会や被害者遺族が真相を知る機会を永遠に奪ってしまったのです。



(2) 次に、高塩正裕さんの事件について。

 イ:東京新聞平成20年10月29日付22面「こちら特報部」

死刑――存廃を問う前に:「死刑でいい」上訴取り下げ確定増加  揺れる心境 死の認識欠如

 約2ヶ月に一度のペースで「機械的」に進む死刑執行。28日、執行された2人のうち、強盗殺人罪に問われた高塩正裕死刑囚(55)は事件からほぼ4年半、確定から2年の“スピード執行”だった。同死刑囚は自らの上告取り下げで死刑が確定。同じように上訴せず、自ら死刑を確定させる死刑囚は増えており、「死刑判決はもっと丁寧に審理を」との指摘も出ている。 (岩岡千景)

「最高裁まで慎重審理を」

 高塩死刑囚は2004年3月、福島県いわき市で資産家の母娘2人を殺害し現金を奪ったとして強盗殺人罪に問われた。1審の福島地裁では06年3月に無期懲役が、2審の仙台高裁では同年12月に死刑が言い渡され、死刑囚は同月、弁護人がした上告を取り下げて自ら死刑を確定させた。当時、死刑囚は弁護人に「2人を殺害しており死ぬのが当然」と話していたという。1993年―2008年9月の確定から執行までの平均期間は7.7年だが、1年10ヶ月での執行だった。

 同様に、被告が上告や控訴を取り下げ、死刑が確定するケースが増えている。1990年代は10年間で3件だったが、2000年以降はこれまでに既に10件を超えた。03年は2件、04年に1件、05年に1件、07年は5件、08年もこれまでに2件に。

 この中には、01年の大阪児童連続殺傷事件で死刑判決を受け、確定した1年後の04年9月に執行された宅間守元死刑囚=執行時(40)=や、同年の奈良女児殺害事件の小林薫死刑囚=犯行時(36)=、05年の大阪姉妹強盗殺人事件の山地悠紀夫死刑囚=犯行時(22)=などもいる。

 背景には、どんな事情があるのか。龍谷大の石塚伸一教授(刑法)は「最近は山地死刑囚のように『死刑でいい』と言い張って弁護士が意思疎通するのも難しく、はなから自暴自棄な被告がいる一方で、公判の過程でそうなる被告もいる」と話し、こう説明する。「2000年の法改正以降、被告は法廷で被害者の意見陳述を聴くようになった。マスコミの追及の厳しさや死刑判決を受けた衝撃などもあって被告の心情は揺れ動き、『死刑でいい』という心境になるのだろう」

 また、精神科医の作田明氏は「殺人などをする人は、他人の命も自分の命も軽視する傾向がある。『死刑でいい』と言うのは反省というより、死への認識が欠けていることもあるのだろう。だが実際に死が目の前に迫る状況の中で想像力や恐怖心が生まれ、心境が変わる場合もある」と説明する。

 実際、上訴をやめ死刑を確定させた後、再審の道を探る死刑囚も。1993年11月に死刑が確定した北九州母娘殺傷事件の牧野正死刑囚=犯行90年、当時(40)=や、2006年10月に死刑が確定した小林薫死刑囚はその後、あらためて控訴審での審理を求めている。

 石塚教授は「支援者を得ると死刑囚の意思は変わるし、時間がたって明らかになる事実や証拠もある。刑事訴訟法で死刑執行が確定後6ヶ月以内と定められているのは、命を奪い、取り返しがつかない死刑の審理が慎重に行われることが前提」と言い、こう話す。「死刑判決が下る可能性がある裁判では、被告の一時的な意思に左右されず、最高裁まで弁護士が付いた上で審理を受けられる制度にすべきだ」」



 ロ:社団法人アムネスティ・インターナショナル日本「日本支部声明 : 死刑執行に抗議する」

 「今回執行された高塩正裕さんは、犯行後4年半あまり、死刑確定後1年10カ月強で死刑を執行された。一審は無期懲役判決が出ており、量刑不当を理由に検察が控訴し、高裁で逆転死刑判決となった。弁護士が上告したが、本人が取り下げたため死刑が確定した。検察官上訴の問題点と、必要的上訴制度がない日本の制度的欠陥が如実に表れた事例である。」



 ハ:死刑判決の言渡しを受けた被告人が、判決の衝撃及び公判審理の重圧に伴う精神的苦痛によって拘禁反応等の精神的障害を生じ、苦痛から逃れることを目的として上訴を取り下げた場合には(刑訴法359条)、自己の権利を守る能力を著しく制限されていたものであって、取り下げは無効であるというのが判例(最決平7・6・28刑集49・6・785)です。

このように判例は、死刑相当事件では、できる限り上訴取り下げを無効にするようにして、刑訴法359条の修正を図っているのですが、それでもやはり上訴の取り下げ(刑訴法359条)が認められてしまう事件は生じています。例えば、2006年10月に死刑が確定した小林薫死刑囚は、上訴取り下げ後、あらためて控訴審での審理を求めている状態です(控訴取り下げの無効を主張した特別抗告審で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は平成20年7月7日、弁護側の抗告を棄却する決定をした。)。

 「被告が上告や控訴を取り下げ、死刑が確定するケースが増えている。1990年代は10年間で3件だったが、2000年以降はこれまでに既に10件を超えた。03年は2件、04年に1件、05年に1件、07年は5件、08年もこれまでに2件に。(中略)
 背景には、どんな事情があるのか。龍谷大の石塚伸一教授(刑法)は「最近は山地死刑囚のように『死刑でいい』と言い張って弁護士が意思疎通するのも難しく、はなから自暴自棄な被告がいる一方で、公判の過程でそうなる被告もいる」と話し、こう説明する。「2000年の法改正以降、被告は法廷で被害者の意見陳述を聴くようになった。マスコミの追及の厳しさや死刑判決を受けた衝撃などもあって被告の心情は揺れ動き、『死刑でいい』という心境になるのだろう」(中略)
 石塚教授は「支援者を得ると死刑囚の意思は変わるし、時間がたって明らかになる事実や証拠もある。刑事訴訟法で死刑執行が確定後6ヶ月以内と定められているのは、命を奪い、取り返しがつかない死刑の審理が慎重に行われることが前提」と言い、こう話す。「死刑判決が下る可能性がある裁判では、被告の一時的な意思に左右されず、最高裁まで弁護士が付いた上で審理を受けられる制度にすべきだ」」(東京新聞)


上告や控訴を取り下げ、死刑が確定するケースが、「2000年の法改正以降はこれまでに既に10件を超えた」というのですから、2000年の法改正以降、実施されるようになった「被害者の意見陳述制度」の影響があるといわざるを得ません(「光市事件差し戻し控訴審:本村洋さんら死刑求める意見陳述~被害者の意見陳述制度の意義とは?」(2007/09/22 [Sat] 16:54:37)参照)。

被告人が上訴するか否かは、本来、被告人側の自由といえます。しかし、「被害者の意見陳述制度」といった法制度の変化、厳罰化を求めるマスコミや世論による感情的な責任追及を考慮すれば、「死刑判決が下る可能性がある裁判では、被告の一時的な意思に左右されず、最高裁まで弁護士が付いた上で審理を受けられる制度」、すなわち、必要的上訴制度が必要であると考えます。




3.不思議に思うのは、なぜこの時期に死刑を執行したのか、ということです。国連規約人権委員会は、10月15、16日の対日審査において、日本の死刑や代用監獄制度などをめぐり、「10年前の前回審査時から問題提起に十分対応していない」などといった批判が相次いでおり、近く日本政府に対し、死刑制度などについて勧告を出す予定だからです(朝日新聞平成20年10月29日付朝刊38面)。

(1) 毎日新聞 2008年10月29日 東京朝刊

◇不信買う閉鎖性 国連「廃止はすう勢」

 国連は今年、「死刑廃止は世界のすう勢」「執行停止こそ廃止への一歩」と位置づけた。そのため、死刑を継続する日本に対する国連の不信感は強い。

 死刑を人権侵害とする流れは90年代から欧州連合(EU)が作ってきた。EU入りを求めるトルコに死刑廃止を加盟条件とし、最近でも欧州諸国の中には、死刑廃止を途上国支援の条件とするケースもある。EUは国連でもこの動きを加速させ昨年初めて、死刑執行の一時停止を求める総会決議を採択させた。

 国連の今年の調査では死刑を廃止もしくは事実上廃止している国・地域は141で維持の56を大きく上回る。維持している場合でも、キューバが死刑囚のほとんどを減刑させるなど、執行件数を減らす傾向は顕著だ。

 特に国連事務局やEU外交官には、日本への不信感が強い。それは、先進主要国中、死刑維持国は米国と日本だけであることに加え、日本の死刑の閉鎖性のためだ。米国は年間約100件の死刑を執行する「死刑大国」だが、執行日や方法、死刑囚の最後の食事内容まで詳しく情報を公開し、家族や被害者遺族、ジャーナリストにまで執行立ち会いを許すケースが多い。全米50州で最近、死刑を執行しているのは約10州で、最も多い死刑囚を抱えるカリフォルニア州は死刑を停止している。

 一方、今年の国連報告は、日本の死刑が本人にさえ直前まで知らされず、家族や弁護士には執行後にしか連絡されないとして、その閉鎖性を指摘。国連の各国外交官からは「日本のような人権意識の高い国が、死刑を維持しているのはただただ不思議」という声も聞かれる。【ニューヨーク小倉孝保】

毎日新聞 2008年10月29日 東京朝刊」



(2) 社団法人アムネスティ・インターナショナル日本「日本支部声明 : 死刑執行に抗議する」

 「アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、仙台拘置所の高塩正裕(たかしお・まさひろ)さん、福岡拘置所の久間三千年(くま・みちとし)さんの2人の死刑確定者に対して死刑が執行されたことに、強い憤りを覚えるものである。

今回の執行は前回から約1カ月半しか間をおいていない。今月の15日と16日には、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の日本政府報告書審査が自由権規約委員会によって行われた。10年ぶりとなる今回の審査では、死刑制度が大きく取り上げられ、委員からの厳しい批判が集中した。特に世論を理由として死刑存置を主張した日本政府の態度に対しては、委員からは締約国の責任を果たさない、論外の主張だとの厳しい意見が相次いだ。10月28日(現地時間)にジュネーブで規約人権委員会が採択する最終見解でも厳しい勧告が出ることが予想される。今回の死刑執行は、こうした国際的な批判に対して敵対的な態度をあえてとったものである。人権諸条約の締約国としての日本政府の資格が問われる。

法律上、事実上の廃止を合わせると世界の70%以上の国が死刑を廃止している。存置国の中でも2007年に死刑執行を実際に行った国はわずか24カ国である。東アジアを見ても、韓国では10年間、台湾では2年半の間死刑執行は行われておらず、中国でも近年執行数は激減している。G8諸国で日本のほかに唯一死刑を執行している米国でも死刑執行は抑制傾向にある。アムネスティ・インターナショナルは極めて深い失望と重大な懸念を表明する。(中略)

従来と同様に今回の執行も、本人を含め誰にも事前の予告はなく、突然の執行であった。今回も、執行後に昨年12月の執行以来6回目となる死刑囚の氏名及び罪状の公開が行われた。しかしそれ以外の情報は一切公開されていない。死刑確定のプロセスや、確定後の再審請求、恩赦請求の棄却時期などの死刑囚の基本的人権の尊重において極めて重要な情報が開示されていない。

日本政府は、人権諸条約の締約国として、死刑に頼らない刑事司法制度を構築すべき国際的な義務を負っていることを再確認するべきである。日本政府が、一刻も早く人権保障の大原則に立ち戻り、死刑の執行を停止し、近い将来に全面的に廃止することを、アムネスティは心から期待する。

2008年10月28日
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本」



(3) 日本国は、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」を批准しているに、世論を理由として死刑存置を主張するなど、およそ理由にならない理屈で条約を遵守しないことを表明したばかりでなく、委員会から日本に対して勧告を出す直前に、厳しい勧告であろうとも全く無視するかのように2人を処刑したのです。これでは、「今回の死刑執行は、こうした国際的な批判に対して敵対的な態度をあえてとった」(アムネスティ・インターナショナル日本)と評価せざるを得ません。

 イ:米国・テキサス州では、少なくとも60日前には「死刑執行の日」が通知されるのです(布施勇如『アメリカで、死刑をみた』(現代人文社、2008年)86頁)。しかし、これに対して、日本では「従来と同様に今回の執行も、本人を含め誰にも事前の予告はなく、突然の執行」であって、死刑制度が過度の苦痛にならないような工夫はなされていないのです。

「特に国連事務局やEU外交官には、日本への不信感が強い。それは、先進主要国中、死刑維持国は米国と日本だけであることに加え、日本の死刑の閉鎖性のためだ。米国は年間約100件の死刑を執行する「死刑大国」だが、執行日や方法、死刑囚の最後の食事内容まで詳しく情報を公開し、家族や被害者遺族、ジャーナリストにまで執行立ち会いを許すケースが多い。全米50州で最近、死刑を執行しているのは約10州で、最も多い死刑囚を抱えるカリフォルニア州は死刑を停止している。」(毎日新聞)


このような米国と異なり、日本では密行主義が当然のこととされ、記者の立会いどころか、被害者・加害者の家族による執行の立会いもありません。何時、誰に対して執行されるのかの情報も事前には分からず、「死刑確定のプロセスや、確定後の再審請求、恩赦請求の棄却時期などの死刑囚の基本的人権の尊重において極めて重要な情報が開示されていない」のです。日本では、死刑囚の氏名及び罪状の公開だけであって、情報といえるような情報は何もないのです。


 ロ:死刑制度についてほとんど何も改善されることなく、体感治安が悪化しただけで、治安が極度に悪化しているとの誤った情報に基づき厳罰化が進んでしまい、死刑判決・死刑執行が増加しているのです。本来、日本政府は、人権諸条約の締約国として、死刑に頼らない刑事司法制度を構築すべきなのですが、およそ人権諸条約を遵守する意図さえもないようです。

 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」


日本国は、日本国憲法全文においてこのように誓っているのですが、およそ自由権規約を遵守する意図がなく、今回の死刑執行は、国際的な批判に対して敵対的な態度をあえてとったといえるのですから、とても「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という誓いは達成できません。「何時の日になれば、「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という誓いを達成できるのでしょうか。


テーマ:死刑 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
加速する死刑執行、その果てにあるもの
国際世論に背を向けて、死刑の自動執行化がモーレツにスピードをあげ加速しています。
再審請求を準備していた人、心身を病んでいた人など国際人権のルールでは処刑してはならない人が次々と処刑されています。
「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」
日本政府は、その名誉を壊すことを自らの手で積極的に行っております。
「愚か」 この一語とにつきます。
2008/10/30 Thu 22:16:12
URL | いい #-[ 編集 ]
>いいさん:2008/10/30 Thu 22:16:12
コメントありがとうございます。


>国際世論に背を向けて、死刑の自動執行化がモーレツにスピードをあげ加速しています。
>再審請求を準備していた人、心身を病んでいた人など国際人権のルールでは処刑してはならない人が次々と処刑されています。

今回、DNA鑑定という客観的証拠で冤罪の疑いがあり、「再審請求を準備していた人」まで処刑してしまいました。冤罪だろうと気にせずに処刑するのかと思うと、なりふり構わず処刑しているようです。あまりにも危うすぎます。


>「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」
>日本政府は、その名誉を壊すことを自らの手で積極的に行っております。
>「愚か」 この一語とにつきます。

戦前、日本は国際社会に背を向け、無謀な戦争に突き進み、多大な犠牲者を生じさせました。こうした反省の下に、「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」と誓ったのに、またしても背を向けています。憲法でいかに良いことを記していても、政府(自民党)が遵守しなければ、無意味だとつくづく感じます。
2008/11/01 Sat 00:05:06
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/tb.php/1529-e3357dd9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
今日、麻生政権下で二人の死刑執行がなされました。残念です。 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081028dde001010018000c.html 死刑執行:2死刑囚に刑執行...
2008/10/30(木) 12:28:13 | Afternoon Cafe
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。