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2008/10/17 [Fri] 17:34:29 » E d i t
ロス疑惑銃撃事件で、三浦和義元社長(61)の自殺を受けて訴追を取り下げたロサンゼルス郡検察のサンディ・ギボンズ広報官は10月15日、事件をめぐる新証拠の存在を否定しました。「新証拠」の存在が取りざたされていたのですが、「憶測にすぎない」と述べたのです。

朝日新聞は、平成20年10月13日付「社説」において、「米国側は、関係者の人権に配慮しつつ可能な範囲で、手持ちの情報を明らかにしてほしい」と述べ、このブログでも、「日本政府は、『新証拠を日本政府及び日本国民に示せ』と米国政府に要求するべき」(「三浦和義元社長が自殺~「ロス疑惑の真相解明ができなくなった」(捜査関係者)という意見があるが、それは日本の司法制度(最高裁で無罪判決)の軽視では?」(2008/10/14 [Tue] 05:01:12))と述べていましたが、米国捜査機関は自ら、「新証拠がなかった」ことを明確にしました。

日本では、「ロス市警は新証拠を入手している」との見方が盛んに出てましたが、日本での「新証拠騒動」は、憶測に基づいたものであって、単なる馬鹿騒ぎだったわけです。米国側にとっては、「日本の市民やマスコミは、新証拠がないのに揃って大騒動になっていて実に滑稽だ」と内心笑っていたに違いありません。米国側は、「新証拠がない」と説明して誤解を解消することはできたのにしなかったのですから、わざと誤解を解消することをしなかったと思えるからです。



1.報道記事を幾つか。

(1) 毎日新聞平成20年10月16日付東京朝刊26面

三浦元社長自殺:訴追時「新証拠なかった」 ロス郡地検の広報官証言

 【ロサンゼルス吉富裕倫】米ロサンゼルス郡地検のサンディ・ギボンス広報官は14日、輸入雑貨販売会社の三浦和義元社長(61)が自殺し終結したロス銃撃事件(81年)の訴追について「DNA鑑定や、新証言などの新しい証拠はなかった」と述べた。三浦元社長が米自治領サイパンで逮捕された2月末以降、地検が新証拠の有無について言及したのは初めて。

 三浦元社長は、ロス市内で妻一美さん(当時28歳)の頭部を銃撃させて殺し、保険金をだまし取ったとして94年、東京地裁で無期懲役の有罪判決を受けた。しかし、銃撃実行者との共謀に関する証拠が足りないとして、98年東京高裁で逆転無罪となり、03年に最高裁で無罪が確定した。

 このため日本では、三浦元社長の2月の逮捕をめぐり「米捜査当局に新しい証拠があるのでは」という憶測を呼んだ。「FBI(米連邦捜査局)が2月末、日本の警察庁に『新証拠を発見した』と連絡した」とも報道された。

 しかし、ギボンス広報官は「(各州にまたがる捜査が専門の)FBI捜査員は、絶対にこの事件のことを何も知らなかった」と報道を否定。「(日本側との捜査協力に基づき、三浦元社長の殺人と共謀容疑で逮捕状を請求した)88年当時と同じ証拠だ」と述べた。

 三浦元社長と共謀した銃撃実行者を特定しないまま訴追していることについて、ロス地検の関係者は「状況証拠が豊富で、米国では陪審員を十分説得できると判断した。そうした判例もある」と米国では特殊なケースでないことを強調した。

毎日新聞 2008年10月16日 東京朝刊」



(2) 東京新聞平成20年10月16日付夕刊10面

三浦元社長 「新証拠なかった」  ロス郡検察 訴追、可能と判断

【ロサンゼルス=時事】 ロス疑惑銃撃事件で、三浦和義元社長(61)の自殺を受けて訴追を取り下げたロサンゼルス郡検察のサンディ・ギボンズ広報官は15日、事件をめぐる新たな証拠について「憶測にすぎない」と述べ、存在を否定した。

 同広報官は「(米国での)訴追がこれまでの証拠で可能だったことは、逮捕から一貫している」とコメントした。

 日本の裁判で無罪が確定した三浦元社長は2月、米自治領サイパンに渡航中、ロス市警が1988年に取得した殺人と共謀容疑の令状に基づき逮捕された。

 その際、捜査の進展と「新証拠」の存在が取りざたされていた。

 郡検察は14日、三浦元社長の自殺で訴追を取り下げ、米司法での刑事手続きは終了した。」




(3) 「三浦元社長を拘束する際、米側は『新証拠が見つかった』と答えた」(神戸新聞平成20年10月15日付「社説」)という話もあったのですが、実はロス銃撃事件についての「新証拠がなかった」点は、幾つかのことを示唆しています。

  イ:日本と異なり、米国では殺人事件の公訴時効がないことから、「未解決事件捜査班」による捜査が続いていたのですが、いくら永久に捜査できるとしても、いくら注目された事件であっても、「新証拠」が出てくるわけではないことが明白になったわけです。

殺人罪の公訴時効がないということは、今回のケースのように、「新証拠」がなくても不確かな状況証拠が集まったとして、数十年経過後に逮捕・起訴がなされる可能性があることを示しました。

しかし、本当に有罪立証は可能だったのでしょうか? 今回のケースは状況証拠ばかりであって、しかも銃撃実行犯は誰か、本当にその銃撃実行犯との共謀があったのかさえ、全く分かっていないのですから、いくら米国の共謀罪は合議と顕示行為(犯行の意思をうかがわせる目に見える行為)だけでいいのだとしても、有罪立証は困難だったように思えるのです。

そうなると、ロス市警は、「未解決事件捜査班」が無駄に存在しているのではなく、捜査活動の効果があると、米国民にアピールするためだけに逮捕・起訴したのではないか、仮に無罪になっても属国である日本の場合には文句も出ないだろうと甘く見ていたのではないか、との疑問がぬぐえません。仮に、日本において殺人罪の公訴時効を廃止した場合、日本でも「未解決事件捜査班」を創設して対処することになるでしょうが、その場合、米国と同様に、日本の「未解決事件捜査班」も同じように、アピールするためだけに逮捕・起訴するおそれがあるのです。

数十年後に逮捕・起訴された場合、いくら被告人が自分が犯人ではないと主張しても、時間の経過によりアリバイ証人の確保が難しい上、証人がいたとしても記憶が薄れていることが多く、公判での防御活動は困難です(「世論(毎日新聞調査)にしたがって殺人罪の時効を廃止すべきなのか?~殺人罪の公訴時効廃止の是非」(2008/07/17 [Thu] 22:17:59)「殺人罪の時効制度の是非~毎日新聞平成20年8月8日付「論点」の論説を紹介」(2008/08/30 [Sat] 16:53:48)参照)。特に、今回のケースのように状況証拠だけしかない場合には、一層、防御活動が困難になります。(さらには、一度何年もかけて無罪判決を得たのにもかかわらず、ほとんど同一の事実について再び防御活動をしなければならなくなったのです。憲法39条の一事不再理の原則はなきに等しいことになります。)

このように、殺人罪の公訴時効を廃止した場合の問題性が露呈したように思えます。


  ロ:日本では、新証拠があるかのような憶測がまかり通ってきました。例えば、藤本哲也中央大教授(犯罪学)は「(三浦元社長が自殺したのは)ロス市警の尋問で知らない事実を突きつけられ、有罪になる可能性があることを悟ったのかもしれない」と述べていました(東京新聞平成20年10月12日付朝刊27面)。

しかし、新証拠であるかの憶測があっただけで、どういった新証拠かは全く明らかでないのですから、有罪になるような決定的な証拠とは限らなかったのです。それなのに、藤本教授は、あたかも「有罪になる可能性がある」ような新証拠であるとの推測まで行うほど、想像逞しくしていたのです。

これは、日本の最高裁判所は、三浦元社長に対して無罪判決を下しているのに、いつまでも犯人視しているものであり、これでは日本の最高裁判所の無罪判決を全否定しているのと同然です。いくら刑事政策が専門であるとはいえ、藤本教授のような法律関係者までもが、平気で司法制度を軽視する言動をしているのです。

翻ってみれば、冤罪事件の典型例では、自白の強要とともに捜査機関による証拠の捏造があるのが通常です。市民の間においても司法制度軽視の意識があるからこそ、捜査機関は、時として証拠を捏造することで裁判所の有罪認定を得ようとまですることに繋がっているといえるのです。

このように、無罪判決が出ようともそれさえも無視して、全くの憶測でいつまでも犯人視する風潮がまかり通っていることを示しているのです。


  ハ:ロス地検の関係者は、三浦元社長と共謀した銃撃実行者を特定しないまま訴追していることについて、「状況証拠が豊富で、米国では陪審員を十分説得できると判断した。そうした判例もある」と米国では特殊なケースでないことを強調しています。要するに、ロス地検の関係者の認識としては、「新証拠」がなく、共謀の事実の立証がほとんどできないような事件であっても有罪にできると判断していたわけです。

和歌山毒物カレー事件裁判は、状況証拠による有罪認定のモデルとも評価されています。しかし、情況証拠による事実認定には推認過程が不可欠であって、その推認を的確に行うには様々な困難があるなどといった危惧があるため、好意的地位を得ているとはいえず、冤罪の危険性が高くなるとして危惧感が強いというのが一般的な評価です(「和歌山毒物カレー事件10年~林真須美氏へインタビュー(東京新聞平成20年7月25日付「こちら特報部」より)」(2008/07/26 [Sat] 23:59:42)参照)。

状況証拠のみの認定では冤罪の危険性が高くなるにもかかわらず、「米国では陪審員を十分説得できる」場合には、有罪と判断されてしまうのです。さらには、米捜査当局は、第三者(氏名不詳の者)に三浦氏が銃撃を依頼した点を立証することなく、「十分に共謀罪が成立する」と見ていたようですから、あまりにも処罰範囲を拡大しているのです。このような米国の共謀罪認定の緩さをも加味すると、米国の刑事裁判は、伝えられている以上に厖大な冤罪事件が発生しているのではないか、と推測できるのです。

今後、状況証拠のみしかない事件では、日本で裁判員制度による裁判が開始された場合には、冤罪事件が増えてしまい、もし万が一、共謀罪が創設された場合には、冤罪事件は飛躍的に増大してしまうおそれがあるといえるのです。

決定的となるような「新証拠」がない場合、状況証拠のみでの有罪認定の危うさが現れたように思うのです。




2.東京新聞「こちら特報部」では、今回の事件では、捜査共助、邦人保護の両面で、日本政府の対応にも問題があったのではないか、と疑問を投げかけています。その記事も紹介しておきます。

(1) 東京新聞平成20年10月16日付朝刊22面「こちら特報部」

「三浦事件」日本の対応正しかった? 法解釈で米国並みに運用「共謀罪の逮捕状無効」

 米国自治領サイパンで2月、米捜査当局に逮捕され、10日、米・ロサンゼルスへの移送直後、留置場で死亡した故・三浦和義社長。米国の裁判所が日本に共謀罪がないことを念頭に、共謀容疑の逮捕状は有効と判断したことに、法学者からは疑問の声が上がっている。捜査共助、邦人保護の両面で、日本政府の対応にも問題があったとの指摘も出ている。

 「8月末に当人と電話で話したときは『ロスでも闘う』と意気軒昂だったが」。三浦氏の支援者だった映画監督の山際永三氏は“自殺”を「信じられない」と繰り返す。「遺族はロス市警や検視官と会おうとしているが、難しいようだ」

 「ロス疑惑」の日本での捜査経緯、司法判断を振り返ると、元妻への殴打事件(殺人未遂容疑)と銃撃事件(殺人容疑)で逮捕され、殴打事件は有罪が確定。銃撃事件は「氏名不詳の者」との共謀共同正犯で1審・有罪となったが2審は逆転無罪、2003年に最高裁で無罪が確定した。

 サイパン島での逮捕は銃撃事件に関する殺人容疑と共謀容疑。ロサンゼルス郡地裁は日本の無罪判決を念頭に一事不再理の原則を適用し、殺人容疑の逮捕状は無効とした。一方、共謀容疑の逮捕状については、日本に共謀罪がなく「日本で裁かれた立証がない」として有効と判断した。

 しかし、日本でも共謀共同正犯の拡大解釈が進み、実行犯との謀議内容も証明されていない被告が共謀共同正犯であるとして最高裁で有罪確定した例もある。実体は共謀罪があるのと同じとみる法学者もいるほどだ。

 青山学院大学の新倉修教授(国際刑法)は「たしか日本の共謀共同正犯には(共犯者の)実行行為が必要で、米国の共謀罪は合議と顕示行為(犯行の意思をうかがわせる目に見える行為)だけでいい。だが、日本でも実際の運用では拡大解釈されており、米国の共謀罪並みになっている」と話す。共謀容疑の逮捕状も、一事不再理の適用で無効とされるのが妥当だったとの見方だ。

 このため、新倉氏は今回の事件での捜査共助に批判的だ。「日本側には過去の捜査資料や公判記録を見せるくらいなら、捜査共助に当たらないという考えもある。しかし、本人の同意なく、本人に不利益な政府情報を第三者に提供することは明らかにプライバシーの侵害だ」

 三浦氏は国を相手取り、一事不再理を理由に捜査共助を拒むよう求める裁判も起こしていた。国は捜査共助の有無を明らかにしなかったが、ロス検察局の捜査員は3月に法務省と協議。町村信孝官房長官(当時)も日米刑事共助条約に基づき、問題なしとした。

◆「釈放交渉あって当然」

 「邦人保護の原則」からの批判も出ている。故・三浦社長が無罪確定後に手にした旅券。当然ながら各国政府への保護要請が記されている。

 「サイパンでもロスでも領事条約に基づき、日本の領事館は連絡などの便宜を図った。でも、それだけでは不十分。釈放を求める交渉などはあってしかるべきだった」と新倉氏は指摘する。

 かつて、週刊誌記者として「ロス疑惑」報道に携わったジャーナリストの斉藤貴男氏は「彼をシロだと思わないということと、無罪確定判決を尊重することは別次元の問題だ。日本で無罪となった人間を同一の行為で他国が裁くことは主権侵害だが、この国の政府はそれを看過した」と話す。

 「自殺説も信じていない。今回の事件では『現行法で裁けない人物には共謀罪という強い武器がある』という印象だけが残った。その印象だけが日米両国の隠された意図ではなかったのか」」


 
(2) この記事では、まずは、捜査共助の点へ批判を行っています。

 「日本でも共謀共同正犯の拡大解釈が進み、実行犯との謀議内容も証明されていない被告が共謀共同正犯であるとして最高裁で有罪確定した例もある。実体は共謀罪があるのと同じとみる法学者もいるほどだ。

 青山学院大学の新倉修教授(国際刑法)は「たしか日本の共謀共同正犯には(共犯者の)実行行為が必要で、米国の共謀罪は合議と顕示行為(犯行の意思をうかがわせる目に見える行為)だけでいい。だが、日本でも実際の運用では拡大解釈されており、米国の共謀罪並みになっている」と話す。共謀容疑の逮捕状も、一事不再理の適用で無効とされるのが妥当だったとの見方だ。

 このため、新倉氏は今回の事件での捜査共助に批判的だ。「日本側には過去の捜査資料や公判記録を見せるくらいなら、捜査共助に当たらないという考えもある。しかし、本人の同意なく、本人に不利益な政府情報を第三者に提供することは明らかにプライバシーの侵害だ」

 三浦氏は国を相手取り、一事不再理を理由に捜査共助を拒むよう求める裁判も起こしていた。国は捜査共助の有無を明らかにしなかったが、ロス検察局の捜査員は3月に法務省と協議。町村信孝官房長官(当時)も日米刑事共助条約に基づき、問題なしとした。」



近時、黙示の意思連絡であっても「共謀を肯定できる」として共謀共同正犯を認めた最高裁平成15年5月1日決定(及び最高裁平成17年11月29日判決)が出ています。すなわち、最近の裁判実務では、共謀の認定に、厳格な証明の対象たるべき客観的行動を必要とせず、主観的認識内容だけで足りるとし、しかも状況証拠だけで認定しているのです(「共謀罪創設の是非~“共謀”権威の法学者も批判(東京新聞平成18年5月30日付)」(2006/05/31 [Wed] 00:55:15)参照)。

そうすると、「日本でも(共謀共同正犯の)実際の運用では拡大解釈されており、米国の共謀罪並みになっている」ともいえるのです。(ただし、米捜査当局は、第三者(氏名不詳の者)に三浦氏が銃撃を依頼した点を立証することなく、「十分に共謀罪が成立する」と見ていたようですから、米捜査当局の主観としては、あまりにも危ういと思えるほど処罰範囲を拡大しているように思えます。)

このように、「日本でも(共謀共同正犯の)実際の運用では拡大解釈されており、米国の共謀罪並みになっている」のですから、「共謀容疑の逮捕状も、一事不再理の適用で無効とされるのが妥当」という見解の方が妥当といえます。

有罪か無罪かを判断する裁判でなく、逮捕状でさえも一事不再理の適用で無効といえるのですし、日本側とすれば、銃撃事件については、日本の共謀共同正犯と米国の共謀罪とはいくら違いがあろうとも、問題とされている行為自体は全く同じなのですから、同じ行為、それもすでに無罪とされた行為について再び裁判の危険にさらされることには変わりないのです。

今回のケースでは、日本政府が捜査共助を行うことは、日本国民が無罪とされた行為について処罰の危険にさらすことを容認するのですから、憲法39条及び日本の司法制度(憲法76条)尊重の見地からして、そこまで日米刑事共助条約は協力を求めるものではないというべきです。

町村信孝官房長官(当時)は、「日米刑事共助条約に基づき、問題なし」と判断していましたが、日本政府が捜査共助することは問題があったように思うのです。



(3) 次に、この記事では、「邦人保護の原則」からも批判を行っています。

 「「邦人保護の原則」からの批判も出ている。故・三浦社長が無罪確定後に手にした旅券。当然ながら各国政府への保護要請が記されている。

 「サイパンでもロスでも領事条約に基づき、日本の領事館は連絡などの便宜を図った。でも、それだけでは不十分。釈放を求める交渉などはあってしかるべきだった」と新倉氏は指摘する。

 かつて、週刊誌記者として「ロス疑惑」報道に携わったジャーナリストの斉藤貴男氏は「彼をシロだと思わないということと、無罪確定判決を尊重することは別次元の問題だ。日本で無罪となった人間を同一の行為で他国が裁くことは主権侵害だが、この国の政府はそれを看過した」と話す。

 「自殺説も信じていない。今回の事件では『現行法で裁けない人物には共謀罪という強い武器がある』という印象だけが残った。その印象だけが日米両国の隠された意図ではなかったのか」」


今回のケースを見ると、「邦人保護の原則」とは何のためにあるのだろうと、思いたくなります。領事館は何もしていなかったとまでは言いませんが、「連絡などの便宜」やマスコミへコメントすることぐらいでは、保護したことになりません。

長期間の拘束は心理的・肉体的に苦痛を与えるものなのですから、自殺に追い込まれるような心情から開放するためにも、「釈放を求める交渉などはあってしかるべきだった」のです。特に、三浦元社長は米国で逮捕された事実と同じ行為について、日本で無罪判決が確定していたのですから。

今回、三浦元社長が自殺に至ったことは、日本政府が如何に自国民を保護する意識に欠けているかを物語っているように思うのです。




<10月19日追記>


NHKニュース(10月19日 6時18分)を引用しておきます。

三浦元社長の自殺状況で証言

 いわゆるロス疑惑の銃撃事件で、日本で無罪が確定した後、サイパンで逮捕された三浦和義元社長が、ロサンゼルスの警察の留置施設で自殺した状況について、すぐ近くの独房にいた男性がNHKの取材に答え、「自殺に気づき、すぐに係官を呼んだ」などと詳しい様子を証言しました。

 三浦元社長はサイパンで7か月余りのこう留されたあと、今月10日、ロサンゼルスに移送されましたが、その直後にロサンゼルス市警察の留置施設で首をつって自殺しました。この時の状況について、当時、すぐ近くの独房でこう留されていた男性がNHKのインタビューに応じました。

 この中で男性は「物音で気づくと彼が首をつっており、うめき声がした。壁をたたいて係官を呼んだら1分ほどして係官が来た」と当時の状況を証言しました。そして留置施設について、「2段ベッドや天井のスプリンクラー、ドアなど、首をつれるところがたくさんあった」と問題点を指摘したうえで、ロサンゼルス市警察が30分おきに行っていたとしている見回りについて、「基本的には1時間に1回ぐらいだった」と話しました。

 これについて、ロサンゼルス市警察は「捜査中であり、コメントできない」としていますが、自殺直後の記者会見では、「自殺の兆候は見られなかったため自殺を防止する施設ではこう留しなかった」として、落ち度はなかったと強調していました。

 これに対して、三浦元社長の弁護士は警察の説明に納得がいかないとして、独自に調査を進めており、今後、なぜ自殺を防げなかったのかをめぐりさらに議論が高まるものと見られます。」


留置施設について、「2段ベッドや天井のスプリンクラー、ドアなど、首をつれるところがたくさんあった」わけですから、自殺対策はまるでないこと分かります。ロス市警は、「自殺の兆候は見られなかったため自殺を防止する施設ではこう留しなかった」と述べていますが、兆候をすべて把握することができないのが自殺なのですから、説得力のある言い訳とは思えません。

ロス市警が、30分おきに行っていたとしている見回りについて、すぐ近くの独房にいた男性は、「基本的には1時間に1回ぐらいだった」と話しています。ロス市警は、責任回避のために虚偽を述べているおそれが生じてきました。米国の刑事手続については、日本では、理想的な手続であるかのように語られることが多いのですが、これが米国の「現実の刑事手続」なのでしょう。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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コメント
この記事へのコメント
「隠し玉」の存在を匂わせてたメディアは一体なんだったのか。
うわ・・・これはひどい。

確か逮捕に際してのメディアの論調は「新たな証拠か隠し玉でもあるのではないか」ってものでしたが。

結局日本にはない共謀罪で押し切る強行策だけだったんですか。確か、日本国内の裁判でも殺人に関する共謀自体否定されたはずでしたが。
2008/10/18 Sat 22:59:00
URL | 黒的九月 #NBgqeq8U[ 編集 ]
三浦和義さんは無罪です
「検察寄り」「疑わしき場合は被告人を有罪に」で知られる日本の裁判所が無罪判決を下すのですから、三浦和義さんが無罪であることは、疑う余地がないと思います。
ロス疑惑は、マスメディア、検察等の司法権力による捏造が事件を騒々しくしてしまったように思います。
三浦和義さんは、ロス疑惑騒動の最大の被害者ではないでしょうか。
ともかくロス市警の不当逮捕を黙認してしまった日本の態度は、「邦人保護の原則」に違反していることは、疑う余地はありません。


2008/10/19 Sun 17:36:43
URL | いい #-[ 編集 ]
>黒的九月さん:2008/10/18 Sat 22:59:00
コメントありがとうございます。


>「隠し玉」の存在を匂わせてたメディアは一体なんだったのか。
>うわ・・・これはひどい。
>確か逮捕に際してのメディアの論調は「新たな証拠か隠し玉でもあるのではないか」ってものでしたが。

そうです。メディアのほとんどが新証拠があるかのようは報道でした。しかし、結局は新証拠はなし。「新証拠がなかった」という報道も、毎日新聞と東京新聞ぐらいで、ほかはだんまりですから、酷いものです。


>結局日本にはない共謀罪で押し切る強行策だけだったんですか。確か、日本国内の裁判でも殺人に関する共謀自体否定されたはずでしたが

そうです。「共謀自体」否定しています。東京高裁では、三浦氏自身が銃撃されている以上、共犯者抜きには考えられない犯罪であり、共謀の有無こそが中核的に立証すべきなのですが、<1>証拠上、共犯者が特定されていないだけでなく、全く解明されていない、<2>日本にいた三浦氏にとって、米国にいたと想定される氏名不詳の第三者を見つけて、殴打事件後、銃撃事件までの間に共謀する機会がほとんどない、<3>犯行加担に対する報酬支払の事実がないことなどから、「共謀」の立証がまるでなされていないとして、銃撃事件につき、無罪としました。

東京高裁は、ロス疑惑銃撃事件では、疑わしいというだけで報道していましたが、憶測でしかなかった事実と、証拠に基づいた事実を、きちんと精査するべきだとの注意を促すことさえしています。日本のマスコミは、あまり進歩がないようです。
2008/10/20 Mon 00:31:26
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
>いいさん:2008/10/19 Sun 17:36:43
コメントありがとうございます。


>「検察寄り」「疑わしき場合は被告人を有罪に」で知られる日本の裁判所が無罪判決を下すのですから、三浦和義さんが無罪であることは、疑う余地がないと思います
>ロス疑惑は、マスメディア、検察等の司法権力による捏造が事件を騒々しくしてしまったように思います。

ロス疑惑銃撃事件は、およそ有罪になりえない事件でした。銃撃実行犯がまるで分からず、「共謀」の事実の立証がまるでできていないのですから。

東京高裁は、ロス疑惑銃撃事件では、疑わしいというだけで報道していましたが、憶測でしかなかった事実と、証拠に基づいた事実を、きちんと精査するべきだとの注意を促すことさえしています。

憶測ばかりで共謀の立証がまるでできなかったのですから、「マスメディア、検察等の司法権力による捏造」があったという評価もできますね。


>ともかくロス市警の不当逮捕を黙認してしまった日本の態度は、「邦人保護の原則」に違反していることは、疑う余地はありません

日本政府は、なぜこう日本人を保護しないのだろうかと、唖然とします。他国からすれば、日本政府が邦人保護に不熱心であると分かるわけですから、やりたい放題できると、舐めた態度を取れることになります。今回、米国の捜査当局が三浦和義さんを逮捕したのは、そうした日本政府のだらしなさが原因だったと思えます。
2008/10/22 Wed 23:33:07
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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来栖のつぶやき
2008/10/17(金) 21:48:54 | 来栖宥子★午後のアダージォ
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