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2008/10/14 [Tue] 05:01:12 » E d i t
81年の米ロサンゼルス銃撃事件に関与した疑いで米自治領サイパンで2月に逮捕された元会社社長、三浦和義容疑者(61)=日本では無罪確定=がロサンゼルス市内で自殺を図り、死亡しました。ロサンゼルス市警から10日午後10時(日本時間11日午後2時)ごろ、現地の日本総領事館に連絡が入ったとの情報によるものです(朝日新聞平成20年10月12日付朝刊)。

三浦元社長は、10月10日未明に、7ヶ月間勾留されたサイパンからロサンゼルスに移送され、10月14日には、妻が殺害された事件をめぐって裁判所に出頭することになっていました。しかし、三浦元社長が自殺したことによって、三浦元社長の妻が殺害された事件をめぐる司法手続はすべて打ち切られることになりました。



1.報道記事を幾つか。

(1) 中日新聞2008年10月12日 朝刊

三浦和義元社長、ロス留置場で自殺
2008年10月12日 朝刊

 【ニューヨーク=阿部伸哉】1981年の米ロサンゼルス銃撃事件に絡み、殺人の共謀容疑で拘置先の米自治領サイパンからロスに移送された三浦和義・元会社社長(61)=日本では無罪確定=が10日午後10時(日本時間11日午後2時)ごろ、ロス市警本部の留置場で自殺を図り、搬送先の病院で死亡が確認された。在ロサンゼルス日本総領事館に市警から連絡が入った。

 元社長の死亡で、うわさされた「新証拠」も含め、今回の逮捕に至った根拠などは示されないことになった。元社長は10日朝、サイパンから訴追手続き開始のため移送され到着したばかり。ロス移送後、最初の夜だった。14日に罪状認否の出廷を控えていた。

 元社長は今年2月、サイパンの空港で、妻一美さん=当時(28)=の殺人と共謀容疑でロス市警の逮捕状により身柄を拘束された。その後、現地で人身保護請求やロスで逮捕状取り消し請求を起こしたが、サイパンの裁判所が移送を命令。

 さらに9月26日、ロス郡地裁が殺人容疑は無効としたものの、日本にはない共謀容疑での訴追は可能と判断し、司法手続き開始の道を開いた。

 元社長はロスへの移送前、弁護士らに「カリフォルニアに行く時が来た」と決意を述べ、10日にもロスの領事と面会、「元気だ」と答えていたという。

 カリフォルニア州の刑事手続きでは、罪状認否後、公判開始が妥当かどうかを決める予備審理がある。元社長をめぐっては、日本と米国で同じ事件で再び訴追するのを禁じた「一事不再理」原則に反するとの議論があり、弁護側は予備審理でも訴追の合法性を争うと述べ、長期戦が予想されていた。

 【ロサンゼルス=共同】米ロサンゼルスの関係者は11日、ロス市警関係者の話として、三浦和義元社長は収容先の警備担当者による20-30分ごとの見回りの間に、Tシャツで首つり自殺を図ったと語った。

 【ロス銃撃事件】 1981年8月、米ロサンゼルス市のホテルで三浦和義元社長の妻一美さん=当時(28)=がホテルの自室で頭を殴られ負傷、同年11月に市内で頭を銃撃され、約1年後に死亡した。元社長も左足を撃たれ、事件後に一美さんの保険金約1億6000万円を受け取った。警視庁は85年9月、殴打事件の殺人未遂容疑で、88年10月には銃撃事件の殺人容疑で元社長らを逮捕。元社長は殴打事件で98年、実刑が確定し服役。銃撃事件では1審は無期懲役だったが、逆転無罪とした2審判決が2003年、最高裁で確定した。元社長は08年2月、殺人と共謀の容疑で米自治領サイパンで逮捕され、10月にロスに移送された。」




(2) 東京新聞平成20年10月12日付朝刊27面

三浦元社長自殺 「なぜ」新たな謎生み幕 

◆有罪悟る? 抗議? 関係者衝撃 ロス市警批判も

 「有罪の可能性を悟ったのか」「抗議の自殺だ」―。ロサンゼルス銃撃事件で米当局に逮捕された三浦和義元社長(61)の自殺が報じられた11日夜、当時の捜査関係者や知人、支援者らは一様に「なぜだ」と驚きの声を上げた。日本での無罪確定を覆すロス市警の「新証拠」とは何だったのか。元社長の死で解き明かされる機会は永久になくなった。昭和の事件史を彩った渦中の人物は、新たな疑惑に自ら終止符を打った。

 三浦元社長自殺の一報に、ロス疑惑当時、警視庁捜査1課長として捜査を指揮した坂口勉さん(73)は「ただただ、びっくりした。まさか自殺するなんて予想していなかった。これで事件の真相解明ができないのは非常に残念だけど、もうどうしようもないこと」と衝撃を隠せない様子で語った。

 当時を知る捜査関係者は、驚きながらも「日本にはない『共謀罪』があるなど、司法制度が違う米国では厳しいと悟ったのでは」と分析する。

 一方、三浦元社長と交流のあった人たちは、自殺を許した米当局やロサンゼルスへの移送そのものに怒りの声を上げる。

 11日夕、三浦元社長の妻から電話で知らせを受けた「人権と報道・連絡会」の山際永三事務局長は「ロスに移送されてからよほどひどい仕打ちを受けたのではないか。もし本当ならば、三浦さんは日本国家に見捨てられたということ。日本政府は『一事不再理』の原則から身柄返還の要求をすべきだった。日米の2つの大国の谷間に落とされて殺されたも同然だ」と憤った。

 「有罪だからではなく、疲れていたから自殺を図ったのではないか」とみるのは、三浦元社長を支援していた広島修道大教授のウィリアム・クリアリー弁護士。「私が証人として出廷し、共謀罪についての意見書も出す予定にしていた。どうして簡単に自殺できるような状況が生まれたのか。日本政府は十分な調査を要求すべきだ」と語気を強めた。

 月刊誌「創」編集長の篠田博之さんも「移送直後に容疑者を死なせてしまうとはロス市警は相当ひどい」と声を荒らげた。さらに「20年も前に発付された逮捕状で2月にサイパンで逮捕して以来、ロス市警は新証拠の存在をちらつかせてきた。しかし8ヶ月近くたった今でも、新証拠が何か分からない。『新証拠はなかった』と考えるのが普通だろう。このような逮捕が許されていいのか」とロス市警の捜査手法についても批判した。

 三浦元社長が所属している横浜市中区の芸能プロダクションの荒井秀夫社長(49)も「(ロスへ)移送の際、護衛もつくほど厳重な態勢だったのに。今回の事態は日本政府の責任でもある」と憤った。荒井さんはこの日、三浦元社長の妻と話したといい、「詳しくは言えないが落胆していた」とだけ語った。

 三浦元社長の告白本「ネヴァ」を出版した「モッツ出版」の高須基仁社長(59)は先月末ごろ、三浦元社長から関係者を通じて「ロスで始まり、ロスで終わるのかな」という伝言をもらった。「彼の性格からすると主戦場はロスで、これから米国の当局と闘う意味だと思ったが、今、考えてみると、死に場所ということだったのだろう」と高須さん。その意味は「死をもっての強烈な抗議だと思う。日本の司法に対してもだ。日本で無罪判決が出ていたのに国は何をやってくれたのか。米国による拉致だと思っていた」と、悔しさをにじませた。」 


◆まさに驚天動地

 日本での弁護人だった喜田村洋一弁護士の話 驚いている。日本で10数年間闘ってきて、とても予想できないことだ。サイパンからロサンゼルスへの移送についても、本人は弁護人のマーク・ゲラゴス弁護士と打ち合わせた上で自ら行くと決め、がんばって闘いを始めようとしていたところだった。全く驚天動地と言うほかない。

◆市警の監視ずさん

 ジャーナリストの大谷昭宏さんの話 日本で無罪判決を受けた人を米ロス市警は容疑者として拘束したのだから、監視をきちんとするのは当然のことだ。ロス市警がずさんだったとしかいいようがない。国際法上で今回の逮捕は問題とはいえ、日本政府は日本の一国民が米国の捜査当局に逮捕され、留置場で死亡したいきさつについて真相解明の努力をすべきだ。ロス市警は共謀罪の立件について自信があったと思う。逮捕した根拠が公判などで明らかになるはずだったのが、これで閉ざされた。「ロス疑惑」は疑惑のままエンディングを迎えることになり、残念で不満だ。

◆吹っ切れない思い

 藤本哲也中央大教授(犯罪学)の話 あれだけ「ロサンゼルスで闘う」と言っていたので自殺とは驚きだ。マスコミ相手の訴訟を繰り返し日本の法律には詳しかったが、日本にはない共謀罪という概念は理解していなかったのではないか。共謀罪は比較的、簡単に立証できる。ロス市警の尋問で知らない事実を突きつけられ、有罪になる可能性があることを悟ったのかもしれない。サイパンと比べて、ロスでの待遇にショックを受けたのだろう。吹っ切れない思いが残る。」



(3) 日経新聞平成20年10月12日付朝刊34面

異例の逮捕劇 突然の幕 「共謀罪」結論出ず 一事不再理、判断割れたまま

 「ロス疑惑」の発端となった銃撃事件から四半世紀以上にわたり、法廷内外で注目を集め続けた三浦和義元社長。日本の裁判では無罪が確定したが、今年2月に米自治領サイパンで銃撃事件に関与した容疑で突然逮捕された。7ヶ月間の拘置を経て、ロス郡地裁で「共謀罪」成立の可否について審理が始まる予定だったが、元社長の自殺により銃撃事件の解明の道は閉ざされた。

【ニューヨーク=中前博之】 逮捕状の有効性を巡る審理が約7ヶ月間に及ぶなど異例づくしの展開となった三浦元社長の裁判は、本人の罪状認否を待たずして、突然の終幕を迎えた。今週ロス地裁で予定されていた公判では、裁判側が同じ罪で二度裁かれない一事不再理原則を再び主張する可能性もあった。

 元社長が逮捕状無効を訴えていた裁判で先月下旬、「殺人罪で無効、共謀罪では有効」という判断を下したロス地裁支部のバン・シックレン裁判長は「現時点では」という文言を強調した。「日本には共謀罪が存在しない」という検察側の主張を覆すほどの証拠を弁護側がまだ提示できておらず、結論は今後別の裁判長による審理に委ねるという趣旨だった。

 この判断は元社長が起訴される以前に下されたもので、裁判は「入り口」に入ったばかり。共謀罪の一事不再理をめぐり日米両国にまたがる事件の判断は過去に例がないため、14日に予定されていた審理でも、弁護側が再び主張を補強して争う構えを見せていた。

 刑事法専門家によると、カリフォルニア州では殺人罪で判決が確定後に共謀罪で再び起訴できるかについて「なお判断が分かれている」という。

 ただ、米連邦レベルでは、「同じ行為が立証対象となる場合は起訴できない」とする立場から、最近は「立証すべき要素に違いがあれば訴追可能」という解釈に変化してきており、バン・シックレン裁判長もこの流れに沿った判断を下していた。

 藤本哲也・中央大教授(犯罪学)は「殺人容疑は無効とされたにもかかわらず、その共謀容疑が米国でどう立証され、裁かれるのか。日本に共謀罪がないだけに大変興味深かった。刑事裁判が二国間にまたがる前例のないケースでもあったが、入り口で終わってしまった」と話している。」



(4) 日経新聞平成20年10月12日付朝刊35面「専門家の見方」

◆長期身柄拘束で先行きに不安か

 三浦元社長の手記を掲載していた月刊「創」編集長、篠田博之氏 国内の裁判でも常に気丈に振る舞い、精神的にタフな人という印象を持っていただけに、自殺の一報を聞き非常に驚いている。長期の身柄拘束で先行きへの不安が募り、周囲の予想以上に追い詰められていたのではないか。最悪の結果だ。日本の司法の信頼性にもかかわる「一事不再理」をめぐる議論が十分になされぬまま、終止符が打たれたことは残念でならない。

◆責任の所在を明らかにすべき

 新倉修・青山学院大法科大学院教授(国際刑事法) 三浦元社長はサイパンから長時間かけてロスに移送され、家族からも切り離され精神・肉体的に疲労困ぱいだったはず。こうした場合、管理する側が細心の注意を払って監視にあたるものだが、米当局は留置の「基本中の基本」を怠ったのではないか。米当局は事件の重要な手がかりを失った。自殺の経緯など事実関係を突き止め、責任の所在を明らかにすべきだ。」





2.三浦和義元会社社長の自殺をめぐり、ロス郡検視局は10月12日、死因を特定するために遺体の検視を行ったことを明らかにし、検視局の担当者は12日、報道各社の取材に対し、「検視の結果、首つりによる自殺であることには疑いの余地はないとしています。本当に自殺だったのか信じがたいことではありますが、死亡してしまった事実だけは変わりませんし、新倉教授が述べるように「自殺の経緯など事実関係を突き止め、責任の所在を明らかにすべき」です。

(1) ロス疑惑・ロス銃撃事件裁判は、「各方面に多大な影響を与えた、まさに画期的な事件」であり、裁判員制度を導入する切っ掛けの1つとなった裁判でありました。

  イ:「司法界に影響与えた「ロス疑惑の有罪判決」」(福岡県民新聞2008年04月21日)

「ロス疑惑は各方面に多大な影響を与えた、まさに画期的な事件だった。報道業界では容疑者呼称を初め、その後の犯罪報道のあり方が変わる契機に。また司法界では、「裁判員制度」を新たにスタートさせるきっかけの1つとなった。

三浦氏の無罪が確定した「一美さん銃撃事件」。だが1994年、一審の東京地裁では、三浦氏に無期懲役の有罪判決が下されている。「マジかよ…」。当時、多くの司法・マスコミ関係者がその判決内容に驚き、呆れ返った。

銃撃事件で検察側は、三浦氏が首謀者で、ともに起訴された駐車場経営者A氏が実行犯―と主張した。だが東京地裁判決は、A氏は証拠不十分で無罪とした上で、三浦氏については「氏名不詳者との共謀が成立する」と判断したのだ。

刑事裁判は検察に訴追された被告人が有罪か無罪かを審理するが、事実は検察・弁護側双方が提出した証拠に基いて認定される(刑事訴訟法317条)。これを「証拠裁判主義」という。

にもかかわらず判決は、検察側が言及も証拠提出もしていない「第三者」を持ち出してきて三浦氏を有罪とした。実行犯とされたA氏については有罪とする根拠が足りない。実行犯を特定できない以上、首謀者の三浦氏も無罪とすべきだが、彼はとにかく有罪である。だから提出された証拠を無視し、三浦氏を有罪にするため独自に「実行犯」を作り上げた―というわけだ。

「『氏名不詳者』って誰だよ?まったくデタラメな判決だ」。本来なら有罪判決が出て喜ぶはずの検察・警察側も、その内容に唖然としていた。多くの弁護士が「この手法が許されるなら何でもアリ、すべての被告を有罪に出来る。司法の否定以外の何物でもない」と吐き捨てた。

案の定、一審判決は控訴審で一蹴され最高裁で無罪が確定した。

「司法がおかしくなっている」。それまでも言われていたことだが、このような裁判官の出現で、さすがに関係者の危機感は頂点に達したようだ。その後、制度見直しの必要性が叫ばれ、「日本の司法始まって以来の大改革」とされる裁判員制度の導入へとつながった。 」



  ロ:1審・東京地裁は、「三浦元社長が氏名不詳の第三者と共謀して殺害した」という、神様以外反証不可能な認定をして無期懲役としましたが、2審・東京高裁は「共謀を証明するだけの確かな証拠はない」とし、事件の中核部分の共犯者の存在が解明されれていないとして無罪判決を言い渡しました。検察は上告したものの、最高裁は高裁判決を支持して上告を棄却し、2003年、無罪判決が確定しました。銃撃実行犯が誰か全く不明で、共謀の立証がまるでできていない以上、無罪判決は当然といえる結果だったのです。

今回、「20年も前に発付された逮捕状で(三浦元社長を)2月にサイパンで逮捕して以来、ロス市警は新証拠の存在をちらつかせてきた」のに、「8ヶ月近くたった今でも、新証拠が何か分からない」ままです。ですから、ロス市警には、銃撃実行犯を特定する証拠といった「新証拠はなかった」と考えるのが普通でしょう。

もし米国において、こうした乏しい証拠で罪責――米国では「(殺人の)共謀罪」で責任追及されるとしても、日本でも「殺人罪の共謀共同正犯」の成否が問題となったので犯罪事実がほとんど重なっています――を問われるとすれば、「まったくデタラメな判決だ」と唖然とさせられた、・ロス銃撃事件裁判の1審・東京地裁と同じ判断となってしまうところだったのです。

 

(2) 三浦元社長が逮捕状無効を訴えていた裁判で先月下旬、「殺人罪で無効、共謀罪では有効」という判断を下したロス地裁支部のバン・シックレン裁判長は「現時点では」という文言を強調していました。それは、「『日本には共謀罪が存在しない』という検察側の主張を覆すほどの証拠を弁護側がまだ提示できておらず、結論は今後別の裁判長による審理に委ねるという趣旨だった」のであって、まだ、議論を尽くした審理ではなかったのです。

  イ:東京新聞平成20年9月27日付夕刊11面

立証は非常に困難

 新倉修・青山学院大法科大学院教授(国際刑事法)の話 殺人の逮捕状が一事不再理の原則に反するので無効、というのは当然で、日本にない共謀罪の逮捕状が有効だ、という判断も、判例に照らせばあり得なくはない。だがこの逮捕状で挙げられた共謀の事実は、日本で無罪が確定した殺人と、ほとんど同一の中身であり、切り離して考えるのはかなり無理がある。米国の「共謀」と日本の「共謀共同正犯」との違いも厳密に検証しておらず、粗っぽい形式的な判断で検察に花を持たせたような印象だ。いずれにせよ今はまだ身柄の移送をめぐる裁判の段階で、有罪か無罪かを決める証明の水準が全く違う。日本の確定判決と弱い状況証拠で共謀を立証するのは非常に困難で、陪審員は最終的に有罪と判断しないだろう。」



  ロ:東京新聞平成20年9月27日付夕刊11面

「不合理な結論」「法的根拠疑問」 支援の2弁護士

 日本の裁判で三浦和義元社長の弁護人を務めた弘中惇一郎弁護士は二十七日、東京都内の弁護士事務所で記者会見し、殺人の共謀容疑を有効とするロサンゼルス郡地裁の決定について「常識としては受け入れがたい不合理な結論だ」と強く批判した。

 弘中弁護士は「共謀部分だけを取り上げて、もう一回裁判をすることに納得できる人は少ないと思う」と決定に疑問を呈し、手続きの長期化が見込まれる点について「いかに彼が強い人であるといっても、かなりダメージを受けているのではないかと気掛かりに思う」と懸念した。

 元社長の弁護団を支援している広島修道大教授のウィリアム・クリアリー弁護士(55)は、殺人容疑について無効と判断されたことについて「弁護側の主張が九割ぐらい認められており、大きな意味がある」と一定の評価をした。一方で殺人の共謀容疑が有効とされたことには「逮捕するのに十分な法律上の根拠があるかどうか疑問だ」と話した。」



  ハ:「米連邦レベルでは、『同じ行為が立証対象となる場合は起訴できない』とする立場から、最近は『立証すべき要素に違いがあれば訴追可能』という解釈に変化してきており、バン・シックレン裁判長もこの流れに沿った判断を下していた」(日経新聞)とも評価されているようです。

しかし、こうした米国の判例・解釈の変化があるため「(米国の)判例に照らせばあり得なくはない」とはいえ、新倉教授が述べるように「この逮捕状で挙げられた共謀の事実は、日本で無罪が確定した殺人と、ほとんど同一の中身であり、切り離して考えるのはかなり無理がある」という見解の方が素直な判断といえます。弘中弁護士が、「共謀部分だけを取り上げて、もう一回裁判をすることに納得できる人は少ないと思う」と述べるのも無理はないのです。


  ニ:特に、「有罪か無罪かを決める証明」を求める本格審理の段階では、「立証の水準が全く違う」ため、「日本の確定判決と弱い状況証拠で共謀を立証するのは非常に困難で、陪審員は最終的に有罪と判断しないだろう」という推測の方が合理性があったのです。

ですから、「ロス市警の尋問で知らない事実を突きつけられ、有罪になる可能性があることを悟ったのかもしれない」(藤本哲也中央大教授(犯罪学))という見解は、根拠に欠ける憶測で結論付けるという、研究者らしくない発言であるばかりか、有罪か無罪かについても誤った判断であるように思えます。

さらに藤本哲也中央大教授は、「マスコミ相手の訴訟を繰り返し日本の法律には詳しかったが、日本にはない共謀罪という概念は理解していなかったのではないか」(日経新聞)とも述べていますが、よく恥ずかしげもなくいえるものだと感心します。なぜなら、藤本教授は「刑事法の基本概念すら否定する俗論」を主張するほど日本の刑事法さえも理解していない人物なのですから(「5月9日の共謀罪創設に関する法務委員会参考人質疑~藤本哲也教授の発言への評価の追記」(2006/05/12 [Fri] 04:10:19)参照)。



3.最後に。

 「ロス疑惑―真相を闇に葬りたくない

 逮捕にあたり、「ロス市警は新証拠を入手している」との見方も出ていた。新証拠があったとすれば、何だったのか。もしないのなら、米国の捜査当局はどのような根拠で立件するつもりだったのか。もはや、元社長の死により、ロスで裁判が開かれることもなくなる。米国側は、関係者の人権に配慮しつつ可能な範囲で、手持ちの情報を明らかにしてほしい。(中略)

 一美さんを銃撃した実行犯はだれだったのか。真相はわからないままだ。今となっては、事実の究明は米国の捜査当局に期待するしかないが、真相をこのまま闇に葬りたくない。」(朝日新聞平成20年10月13日付「社説」



(1) 米国の捜査当局は、日本の最高裁判所が無罪と判断した事実を蒸し返して、三浦元社長の人権を軽視し、日本の司法制度を軽視するような行為を行い、散々、「新証拠」があるような素振りをしたのです。

その挙句、証拠隠滅不可能なほど過去の事件について、三浦元社長を長期間拘束し、三浦元社長が自殺することを阻止できなかったのですから、日本政府は、「新証拠を日本政府及び日本国民に示せ」と米国政府に要求するべきです。



(2) ロス疑惑当時、警視庁捜査一課長として捜査を指揮した坂口勉さんは、「これで事件の真相解明ができないのは非常に残念」と語り、また、ジャーナリストの大谷昭宏さんは、「逮捕した根拠が公判などで明らかになるはずだったのが、これで閉ざされた。『ロス疑惑』は疑惑のままエンディングを迎えることになり、残念で不満だ」と語っています(東京新聞)。

しかし、ロス疑惑は、殴打事件で98年、実刑が確定し、銃撃事件は、日本の最高裁判所は、高裁判決を支持して上告を棄却し、2003年、無罪判決が確定しているのです。ですから、すでに「事件の真相解明」は済んでおり、「ロス疑惑」の疑惑は2003年に「エンディング」を迎えており、「真相は闇」に葬られてはいないのです。三浦元社長に関する限りは。

日本の統治機構は司法制度を採用しており(憲法76条)、その司法制度を尊重する意識をもっているのであれば、裁判で確定した事実――特に無罪判決(不利益再審がないため)――を尊重するべきです。司法制度を尊重していないからこそ、ジャーナリストの大谷昭宏さんのように、「『ロス疑惑』は疑惑のままエンディングを迎えることになり、残念で不満だ」とか、「ロス疑惑の真相解明ができなくなった」(捜査関係者)などという妄言を吐くことになるのです。

大谷昭宏さんのような妄言がまかり通るからこそ、再審で無罪になった免田栄さんは、(一部の)市民の間からいまだに犯人視されてしまっており、そうした風潮がなくならないのです(「語る人:“死刑台から生還”した免田栄さん~たとえ我、死の影の谷を歩むとも、災いを恐れじ(朝日新聞平成20年7月4日付より)」(2008/07/05 [Sat] 12:20:40))。

日本国憲法を尊重する真っ当なジャーナリストであれば、「日本の司法制度を軽視する」発言ではなく、人権と報道・連絡会」の山際永三事務局長のように、「日本政府は『一事不再理』の原則から身柄返還の要求をすべきだった」というべきでした。

大谷昭宏さんは、最初から司法制度を尊重する意識がないのか、それとも、憲法上保護されているはずの「三浦元社長の人権」を尊重する意識がなく、日本が米国の属国であるという卑下した意識があるからこそ、日本の司法制度を尊重しないのか分かりません。ですが、「日本の司法制度を軽視する」発言がつい出てしまうような者がジャーナリストと名乗っていることだけは注意を払っておくべきです。



(3) 確かに、「一美さんを銃撃した実行犯はだれだったのか」についての「真相はわからないまま」ですから、その点での真相解明はできていません。その真相解明自体は日本の裁判でも確定していないのですから、日本の裁判結果は何ら障害にならず、銃撃事件発生地である米国の捜査機関こそがなすべきことです。

ですから、もし実行犯を特定するような決定的な「新証拠」がロス市警にあるのであれば、今すぐにでも実行犯の処罰へ向けた行動は可能なはずです。

米国の捜査機関は、一美さんを銃撃した実行犯を逮捕し処罰を求めることこそ行うべきあり、日本の市民・日本政府は、一美さんを銃撃した実行犯の逮捕及び処罰こそ求めるべきなのです。


テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

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コメント
この記事へのコメント
>日本の統治機構は司法制度を採用しており(憲法76条)、その司法制度を尊重する意識をもっているのであれば、裁判で確定した事実――特に無罪判決(不利益再審がないため)――を尊重するべきです。司法制度を尊重していないからこそ、ジャーナリストの大谷昭宏さんのように、「『ロス疑惑』は疑惑のままエンディングを迎えることになり、残念で不満だ」とか、「ロス疑惑の真相解明ができなくなった」(捜査関係者)などという妄言を吐くことになるのです。

まあ、法律ではそうなっていますが、最高裁判決を理解できない裁判官が跋扈する最近の実情では司法制度を尊重できないのは無理からぬことではないでしょうか。


>>「司法がおかしくなっている」。それまでも言われていたことだが、このような裁判官の出現で、さすがに関係者の危機感は頂点に達したようだ。その後、制度見直しの必要性が叫ばれ、「日本の司法始まって以来の大改革」とされる裁判員制度の導入へとつながった。 」

2008/10/14 Tue 09:56:05
URL | YO!! #-[ 編集 ]
http://www.videonews.com/charged/on-demand/051060/001257.php
(有料で恐縮なのですが)これ是非観て頂きたいです。 この国の法環境、人々の法意識について常日頃憂いておられる方々にこそ。
法と情、法理と情理、guilityとnot guilityの概念、司法とメディア、メディアリテラシー.....、そして“三浦和義”とは何だったのか。 不謹慎極まりないが、“面白い!”。
死んで欲しくなかった...。
宮崎勤死刑囚の死と同じく、深く深く悔やまれてなりません。  本当に悔しいです。 
2008/10/14 Tue 10:30:51
URL | rice_shower #UXr/yv2Y[ 編集 ]
>YO!!さん:2008/10/14 Tue 09:56:05
コメントありがとうございます。お返事が遅くなってすみません。


>法律ではそうなっていますが、最高裁判決を理解できない裁判官が跋扈する最近の実情では司法制度を尊重できないのは無理からぬことではないでしょうか

「跋扈する」状態なのかは分かりません。ただ、銃撃事件につき無罪が当然と考える多数の研究者・法曹と、三浦氏に対して有罪の疑いをもったままの多数?の市民との意識のずれが残ったままで、現在まで来てしまったのが、問題の一因であるように思います。
2008/10/18 Sat 06:35:04
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
>rice_showerさん:2008/10/14 Tue 10:30:51
コメントありがとうございます。お返事遅くなってすみません。


>(有料で恐縮なのですが)これ是非観て頂きたいです。 この国の法環境、人々の法意識について常日頃憂いておられる方々にこそ

情報有難うございます。無料のときだけでなく、会員登録して視聴してみることします。

法意識を養うには、ただ法律を教えるのではなく、こうした日々発生する社会問題について、法律的な観点から考える意識をもつことが大事だと思うのです。法律的に考えること自体も大事なことではありますが、違う観点を知ることで、思い直したり、冷静になって考えることにも繋がるように思います。そんなことを考えつつ、「蟷螂の斧」みたいなマネをしているわけですが(苦笑)


>死んで欲しくなかった

人としての魅力もあるとは思いますが、法律関係において三浦和義氏がもたらした功績は大きいです。

ロス疑惑報道は、週刊誌やワイドショーを中心にした過剰取材、デタラメな報道が蔓延していたわけですが、三浦元社長自身がメディアを相手に名誉棄損の民事裁判を次々と起こし、その多くで勝訴したのです。それは「メディアに対して取材と報道のあり方を見直させる大きなきっかけともなった」(朝日新聞平成20年10月13日付「社説」)とともに、法律界の多数がメディア報道に対する規制強化を肯定する意識に変える切っ掛けでもありました。
2008/10/18 Sat 06:37:58
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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 最新記事の一覧 10月はコチラ、9月はコチラ     ロス疑惑の三浦和義氏(61)が、10日夜(日本時間11日午後) ロス市警本部の留置場で、首吊り自殺を図り、死亡が確認された。 <*1 exciteコチラ>  一部の報道では、自分のTシャツで首を吊ったと...
2008/10/14(火) 05:30:29 | 日本がアブナイ!
連休中はPCもなく、携帯も繋がらない所にいたので少し遅れました。 旅行先で飛び込んできた、いわゆるロス疑惑の三浦和義さんの自殺の一報...
2008/10/14(火) 21:44:24 | Afternoon Cafe
  当  ブ  ロ  グ  へ  の     皆様のご支援に感謝致します! ありがとう!  これが子供が笑う街・大阪だってよ!                 ▼ ● T B S 高速予定地、保育園の芋畑で代執行 大阪の高速道路の建設予定地に保...
2008/10/17(金) 00:05:47 | 晴天とら日和
三浦和義さんの獄死を、日米「国家」に殺されたと表現した人がいた。日米の捜査当局の違法な捜査(拘束)が原因かと。また、日米警察とマスメディアに殺されたという人も。わたしは第一報を聞いたとき、「マスコミに叩かれるたび闘いし 三浦和義自死は有り得ず」と詠んだ...
2008/11/17(月) 00:29:51 | 千恵子@行政書士
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