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2008/09/18 [Thu] 22:32:33 » E d i t
厚生労働省が運用指針で「原則禁止」としている「病気腎移植」について、愛媛県などの腎不全患者ら約10人が、国家賠償を求める訴訟の準備を進めているとのことです。厚生労働省は昨年7月、臓器移植法の運用指針で「病気腎移植」を「原則禁止」としたため、「治療を受ける権利」を侵害されたとの理由です。

また、「患者らは、病腎移植が医学的な妥当性を欠くとの見解を示した日本移植学会の幹部らに対しても、『事実と異なる発言をした』として損害賠償を求め提訴することを検討している」(産経新聞)、とのことです。

「病気腎移植訴訟」は、「臓器移植への妨害を排除する」という前例のない訴訟ですから、もっと報道されてよいはずです。しかし、関東で発行している新聞社では産経新聞のみでの報道でして(朝日新聞、読売新聞、日経新聞では報道なし)、東京新聞でさえも報道していない状況ですので、かなり戸惑いました。(その当たりの事情は色々とあるようです。)

9月20日追記:「専門家の責任」、特に学会の説明責任について、裁判例を1つ紹介しました。)
9月21日追記:厚生労働省の「閣議後記者会見概要」(H20.05.16(金)09:15~09:26 ぶら下がり)から、病気腎移植についての発言を引用しました。)


1.報道記事を幾つか

(1) 産経新聞平成20年9月13日付朝刊

病腎移植求め国賠提訴へ 10月にも松山地裁に 患者ら「権利侵害」
2008.9.13 01:30

 治療のために摘出した腎臓を別の患者への移植に用いる「病腎移植」を、厚生労働省が原則として禁止したため適正な治療を受ける権利を侵害されたとして、腎不全患者らが10月初めにも国を相手取り、病腎移植を受ける権利の確認と国家賠償を求める訴訟を松山地裁に起こすことが12日、分かった。患者側は受ける治療を選択する自己決定権があることを主な論拠として争う方針。論議が続く病腎移植の是非をめぐる判断は、新たに法廷へと舞台を移すことになる。

 また患者らは、病腎移植が医学的な妥当性を欠くとの見解を示した日本移植学会の幹部らに対しても、「事実と異なる発言をした」として損害賠償を求め提訴することを検討している。

 訴えるのは、人工透析を受けている愛媛や香川、広島、岡山などの慢性腎不全患者ら約10人。賠償請求額は1人当たり最高で約1000万円となる見通し。

 厚労省は日本移植学会などの見解を踏まえ、平成19年7月に臨床研究以外の病腎移植の禁止を全国に通知。さらに16年9月からの約2年間に宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(67)らが行った病腎移植は保険診療とは認められないとの見解を示した。

 しかし患者側は、手術後の経過などをもとに病腎移植の妥当性や有効性を認める専門家が国内外にいることから、「必要かつ有効な医療」と強調。患者が自ら望む治療を受ける権利は、憲法が保障する自由権や生存権に基づいており、「公共の福祉に反しない限り、国が禁止することは許されない」としている。

 また、厚労省が病腎移植を保険診療として認めないことについても、「法的な根拠が存在しない」と指摘。こうした厚労省の方針により、治療を受ける権利が侵害されたと訴える。

 患者が受ける治療を選択する権利をめぐっては、信仰上の理由で拒否したのに行われた輸血の是非が争われた「エホバの証人輸血拒否訴訟」で、最高裁が12年2月、患者の自己決定権を認める判断を示している。」



(2) 四国新聞(2008/09/14 09:29)

香川など中四国の患者らが国提訴へ/病気腎移植
2008/09/14 09:29

 病気の腎臓を摘出し別の患者への移植に使う病気腎移植を厚生労働省が禁止したため、治療を受ける権利を侵害されたとして、重度の腎臓病で人工透析を受けている香川県内など中四国の患者ら約10人が、国家賠償を求める訴訟の準備を進めていることが13日、分かった。

 関係者によると、提訴を予定しているのは香川県内の40代の男性患者と岡山、広島、愛媛4県の患者ら。さらに賛同する人の参加を呼び掛けている。賠償請求額や提訴先の裁判所は未定で、今後弁護士らと協議して決める。

 病気腎移植の医学的妥当性を否定した日本移植学会の幹部に対する訴訟も検討しているという。

 病気腎移植は、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(67)が中心となって実施し、医学的妥当性などの観点から問題となった。厚労省は昨年7月、病気腎移植の原則禁止を盛り込んで改正した臓器移植法の運用指針を都道府県などに通知した。

 しかし、病気腎移植をめぐっては5月中旬、国会議員グループの「修復腎移植問題を考える超党派の会」が条件付きで容認する見解をまとめているほか、オーストラリアなど国外の一部では同様の移植が行われているという。」



(3) 産経新聞平成20年9月14日付朝刊

病腎移植訴訟 「第3の道」へ活路、早期の司法判断を
2008.9.14 02:47

 生体腎と死体腎の移植に次ぐ「第3の道」として、病腎移植の一般医療化を厚生労働省に要望してきた腎不全患者たち。裁判所の判断が患者の望み通りになれば、臓器提供者(ドナー)不足に悩まされてきた腎移植医療は大きく前進することになる。

 日本では現在、透析患者が27万人を超えるといわれ、約1万1600人が腎移植の機会を待ち望む。しかし、年間に実施される死体腎移植は150件前後。平均16年は待たねばならず、その間に亡くなる患者も多い。

 本来、患者の福利を最優先にすべき国が病腎移植を原則禁止としたことで、結果的には患者が「治療を受ける権利」を十分に行使できない状況が生じている。

 そもそも、移植関係学会の意向を受けるかたちでガイドラインを出した国が、国内で実施された病腎移植を綿密に調査したかには疑問が残る。宇和島徳洲会病院の万波誠医師らが実施した42件について、「生存率や安全性は死体腎移植と遜色(そんしょく)ない」と報告する専門家も複数いる。

 そのうえで、藤田保健衛生大の堤寛教授は広島県の腎臓疾患の手術数などをもとに「全国では推計で毎年約2200個の腎臓が全摘出される」と指摘。「その半数でも移植に回すことができれば、多くの患者が助かる」と訴える。

 また、豪州・クイーンズランド大のデビッド・ニコル教授はこれまでに55件の病腎移植を実施。米移植外科学会のリチャード・ハワード元会長も「多くの透析患者を解放することになる」と賛意を示し、海外でも病腎移植を支持する輪は広がっている。

 深刻なドナー不足の日本で、新しい医療に背を向けてはならないだろう。早期の裁判所の判断が望まれる。(力武崇樹)」



この「病気(修復)腎移植訴訟」(国家賠償訴訟)の「提訴を予定しているのは、万波医師を支援する「移植への理解を求める会」の向田陽二代表と愛媛、香川、広島、岡山4県の患者らで、向田代表は『賛同する人がいれば原告になってほしい』と話している」とのことです(毎日新聞2008年9月13日 大阪夕刊)。

産経新聞によると、「賠償請求額は1人当たり最高で約1000万円となる見通し」としていますが、毎日新聞や共同通信(四国新聞)によると、「賠償請求額や提訴する裁判所は今後確定する」(毎日新聞2008年9月13日 大阪夕刊)としており、はっきりしていません。



2.提訴予定の原告患者さんの声を幾つか。

(1) 産経新聞平成20年9月13日付朝刊

「一刻も早く認めて」 透析患者ら悲痛な思い
2008.9.13 01:30

 医学的な妥当性をめぐりいまなお論議が続く中、慢性腎不全患者らが病腎移植を受ける権利を求め、国を相手取った訴訟に踏み切ることが12日、明らかになった。その背景には、人工透析で命をつなぐ待ったなしの現状がある。国内では慢性腎不全の患者数が臓器提供者(ドナー)の数を大きく上回り、移植を待ち望む患者は1万人を超える。訴訟に加わる香川県丸亀市の男性(48)は「一刻も早く、病腎移植を普通の治療として認めてほしい」と訴えた。

 男性が糖尿病から腎不全になったのは、高知県で塾の講師をしていた36歳のころ。人工透析を始めたが、翌年に母から提供された腎臓の移植を受け、不自由なく日常生活を送れるようになった。

 しかし、わずか3年で拒絶反応のため腎臓を摘出。再び透析生活を余儀なくされ、今から4年前には脳梗塞(こうそく)のため右半身まひ、翌年には右足を切断した。

 2年前には中国に渡って腎移植を受けたが、拒絶反応ですぐに摘出。現在は車いすで生活しながら、週3日は透析を受け、残りの日はリハビリに通う。透析生活は通算で8年になった。

 専門家によると、慢性透析患者の5年生存率は60%。10年生存率になると、40%にまで落ち込む。腎移植を受けた患者の10年生存率が80%であるのと比べると、生命予後は格段に劣る。

 一方で国内の腎移植待機患者約1万1600人に対し、年間の死体腎移植は150件前後にとどまっている。移植待機の年数は平均16年といわれ、その間に亡くなる患者も多い。

 「透析でいつまで生きられるだろうか」。そんな不安を抱える患者らが希望を託していた病腎移植は平成19年7月、厚生労働省により原則として禁止された。男性は「法律に基づいた議論がないまま、結論が出された」と憤りを隠さない。「法廷での判断が出るまでに、亡くなる患者もいる」。そうつぶやき、早急な判決に期待を寄せた。」



(2) 四国新聞(2008/09/14 09:29)

「選択肢奪わないで」 香川県内から提訴の男性

 生きるための選択肢を一方的に奪わないで―。病気腎移植をめぐり、県内から国家賠償訴訟に参加予定の40代男性は13日、四国新聞社の取材に、「私たち患者はわらにもすがる思いで生きている。希望を託せる治療法があるのに、それが(患者に)納得できる説明のないまま禁止されるのはおかしい」と動機を打ち明けた。

 男性は12年前に糖尿病から腎不全になり、人工透析が必要に。その間、2度の腎臓移植を試みたがいずれも拒絶反応のため摘出。合併症で脳梗塞[こうそく]になり、右足を切断しながら、現在も週3日の透析を行っている。

 日本移植学会や厚生労働省のこれまでの論議に対して、当初からダメだという雰囲気の中でルールが決められた過程に不信感が募ると男性患者。「万が1、5年後、10年後に病気腎移植が認められても、いま、病気と闘っている私たち患者にとっては遅い。一刻も早く病気腎移植を認めてほしいし、いまこそ、公平な論議が必要」と訴えた。」



修復(病気)腎移植を肯定する理由としては、(1)オーストラリアのクイーンズランド大学のデビッド・ニコル教授が50例を超える腎細胞がんのあった腎臓を修復し移植しており(がんの再発・転移はなし)、世界の学会では多くの実施例の発表がなされるなど(オーストラリアで55例の実証例、アメリカシンシナティ大学14例の実証報告やイタリアでの取組)、修復腎移植は世界的の潮流になっていること、(2)病気腎移植は病巣を持っているドナーを治療しつつ、捨ててしまう臓器を使うのだから、健康体であるドナーを100%傷付ける生体腎移植よりもずっと有意義な療法であること、(3)万波医師らが病気腎移植を手がける前から、全国で親族間での生体腎移植の場合は、病気腎移植を実施してきたこと、などがあります(白石拓『医師の正義』(宝島社、2008年)8頁以下参照)。

こうした色々な理由はあるとしても、この原告患者の声こそ、病気腎移植を認めて欲しいという理由が端的に現れています。

 「「透析でいつまで生きられるだろうか」。そんな不安を抱える患者らが希望を託していた病腎移植は平成19年7月、厚生労働省により原則として禁止された。男性は「法律に基づいた議論がないまま、結論が出された」と憤りを隠さない。「法廷での判断が出るまでに、亡くなる患者もいる」。そうつぶやき、早急な判決に期待を寄せた。」(産経新聞)

 「生きるための選択肢を一方的に奪わないで―。病気腎移植をめぐり、県内から国家賠償訴訟に参加予定の40代男性は13日、四国新聞社の取材に、「私たち患者はわらにもすがる思いで生きている。希望を託せる治療法があるのに、それが(患者に)納得できる説明のないまま禁止されるのはおかしい」と動機を打ち明けた。(中略)
 「万が1、5年後、10年後に病気腎移植が認められても、いま、病気と闘っている私たち患者にとっては遅い。……」」(四国新聞)


死体腎移植の平均待機年数は、米国では4.8年、カナダでは2.7年、フランスでは1.4年、英国では2.5年、オーストラリアでは4年であるのに対して、日本では、16年という気の遠くなる期間を待たなければなりませんから(待機年数を考えると、日本臓器移植ネットワークへの新規登録料3万円、毎年の更新料5千円は「ぼったくり」に近い)、日本では、(特に腎不全になった高齢者は)、まず死体腎移植は困難です。

こうした状況ですから、日本では生体腎移植に頼るしかないのですが、生体腎移植は(原則)親族間に限られています。そうなると、生体腎移植ができない方は、腎移植をするために海外へいかざるを得ないのですが、今は海外での腎移植も難しいため、(年齢を問わず)事実上、腎移植は不可能です。(仮に、一度腎移植が出来たとしても、生着し機能するとは限らないのですが、2度目の腎移植はそれこそ死体腎移植は不可能ですし、2度目の生体腎移植は手術が難しくなるため、拒絶する医師が少なくない。例外は高い技量を有する万波医師など。)

腎不全の治療としては、腎移植のほかに透析療法もありますが、長期に透析を行うと、様々な合併症が出現するために身体的な苦痛が増すだけでなく、1月にすると50時間以上を透析センターで過ごさなければならず、一般的には、学業や仕事に大きな障害となり、こうした意味でも「生きていくこと」自体が追い込まれてしまいます(「修復腎移植の是非を問う前提として~腎移植と透析療法ではどちらが良いのか?」(2008/06/01 [Sun] 18:41:49)参照)。

こうした絶望的なほど腎移植ができず、生きる選択肢が狭い日本の事情を背景として、「生きるための選択肢を一方的に奪わないで」という切実な願いから、病気腎移植を認めて欲しいという裁判を提訴するのです。

これに対して、こうした絶望的なほど腎移植ができない日本の事情を知りつつ、日本移植学会の幹部は、臓器移植法の改正が先決であると言います。確かに、そうした法改正は必要なことです。

しかし、現実はどうでしょうか。

ある大学病院の近くの薬局には、日本臓器移植ネットワークのパンフレットと「臓器提供意思表示カード」がおいてありました。しかし、いずれも厚くほこりが被ったままでした。誰も手をつける人もなく、薬局もほこりを掃うこともないのです。誰も見向きもしない――。これが現実なのです。いくら臓器移植法を改正したとしても、今のままでは、臓器提供者が増える見込みはほとんどないのです(「臓器移植法施行から10年~法改正の審議も必要だが、提供意思を生かせる態勢は?」(2007/10/20 [Sat] 16:54:52)も参照)。もちろん、福田首相が突然に政権を投げ出してしまったのに、自民党が「総裁選ごっこ」に興じており、しかも、米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻し、「アメリカ発金融不安」が広がっているのに、臨時国会で冒頭解散する予定という無責任が蔓延している今の政治状況では、臓器移植法の改正自体がずっと先のことです。

こうした現実があるにも関わらず、臓器移植法の運用指針では臨床研究の道を認めているにもかかわらず、認めていくべきではないかとの学者の声も無視して、日本移植学会の幹部は、臨床研究を進める気さえもないのです(愛媛新聞2008年05月19日(月)付、丸山英二「ワークショップ (4)生体移植」年報医事法学23号74頁以下での発言参照)。

日本移植学会の幹部が、「生きるための選択肢を一方的に奪わないで」という声を無視し、いわば「腎不全の患者を見殺し」にしている以上、訴訟を提訴せざるを得ないとさえ、いえるのです。




3.とうとう、「病気腎移植訴訟」を提訴することになりました。

(1) 今は超党派議連「修復腎移植を考える超党派の会」も、特に動きがないようですし、日本移植学会や厚労省が、超党派議連の「病気腎移植容認」の提言に対して正式な反論を行ったとの話も聞きません(日本移植学会は、「病気腎移植に対する詳細な検証や、反対する理由などを盛り込んだ見解を近く公表する予定」(2008年05月20日(火)付 愛媛新聞)とのことでしたが、何も出ていません。)。

このように完全に動きが止まっている状態ですので、何か積極的な行動をとることは適切であると思います。裁判を行うのも「積極的な行動」の1つですから、裁判につきマスコミ報道などがあれば、市民へ向けての意識喚起を促すことにはなると思います。

  イ:ただ、裁判を行うことのメリットとデメリットは、よく考える必要があります。以下、メリットとデメリットを箇条書きにしてみます。

<メリット>
・世論に人工透析の改善や修復腎移植を意識させ、肯定する意識が広がる可能性がある。
・日本移植学会に遠慮して、修復腎移植を肯定する報道をしづらかった報道機関は、裁判報道と言う形で肯定的な報道が可能になる。
・勝訴すれば、臓器移植法運用指針に関わらず、病気腎移植が実施可能となる
・勝敗にかかわらず、裁判所が「日本移植学会が虚偽の発表を行った」との認定を行えば、「臓器移植法運用指針」を改定せざるを得なくなる。
・日本移植学会の幹部を相手に裁判を行えば、加害者が誰か特定でき、世論に対して分かりやすい図式(移植希望を妨害するのが日本移植学会)を提示できる。
・訴訟の場において、日本移植学会の幹部から「修復腎移植の臨床研究を直ちに行うのか否か」を質すことで、その言動を公判記録として残しておくことが可能である。
・日本移植学会の幹部は、病気腎移植を認める医師のことを「万波病」と揶揄しているため、これを法廷とう場で公けにし、こうした揶揄を独立の損害賠償責任と認めることも可能である(医療訴訟における医師側の準備書面における「悪質なクレーマーの典型」等の侮辱的言辞につき、東京地判平成15・6・27)。

<デメリット>
・損害賠償請求を求めることは、世論の反発を受ける可能性もある。
・超党派議連「修復腎移植を考える超党派の会」の活動に影響を与える可能性がある。(もし、裁判を行うのであれば、超党派議連「修復腎移植を考える超党派の会」に対して、裁判の意図・内容を説明し、筋を通しておく方が賢明であるように思います。議員さんたちは、マスコミ対策も必要でしょうから。)
・裁判の決着が付くまで数年かかるため、裁判自体で負担(費用、時間)がかかる。



  ロ:病気腎移植を原則禁止した「臓器移植法の運用指針」は、法律ではないとはいえ、実質的には同様の機能を有し、これがある限り、病気腎移植の道はほぼ遮断されています(日本移植学会は、病気腎移植の臨床研究をする気がないのも一因。)。この運用指針を変更する手立てとして裁判は一方法といえます。

損害賠償を求めるのも大事なことではありますが、(原告側の真の意図は不明ですが)まず、「臓器移植法の運用指針」のうち、病気腎移植を原則禁止とした部分を無効化するための裁判であるのだと思います。病気腎移植の否定は患者の自己決定権(憲法13条)を制約し、また、「医療の不確実性」からすれば、一治療行為である「病気腎移植」を将来に渡って禁止してしまう方がおかしいのですから。



(2) 「病気腎移植訴訟」としては、<1>厚生労働省は昨年7月、臓器移植法の運用指針で「病気腎移植」を「原則禁止」としたため、「治療を受ける権利」を侵害されたとの理由で、「病腎移植を受ける権利の確認」訴訟と「国家賠償を求める訴訟」(国賠法1条)、<2>病腎移植が医学的な妥当性を欠くとの見解を示した日本移植学会の幹部らに対して、その幹部らが『事実と異なる発言をした』ために損害(=「病気腎移植ができなくなったという不利益」)を受けたとして、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を請求する、という2つの訴訟を予定しているようです。

いまだ裁判を提訴していない段階ですので不確定な要素が大きいのですが、幾らか検討してみたいと思います。

  イ:まず、<1>の点。

原則修復腎移植という「臓器移植法運用指針」に改定したのは国の責任ですから、国家賠償という国の責任を追及することは、妥当な方向性といえます。

国に対して憲法25条の生存権を侵害されたとして訴えるのかと思いましたが、「治療を受ける権利」は自己決定権の1つであり、この自己決定権を侵害されたとして、訴えることにしたようです。憲法25条の生存権侵害を認めるような裁判結果は殆どないので、憲法25条による請求よりは、憲法13条の自己決定権侵害で請求することは、勝訴の可能性は高くなります。

自己決定権は憲法13条で保障されることと、「治療を受ける権利」は自己決定権の1つであるということは自明のことといえるでしょう。そして、いままで病気腎移植は可能であり、治療効果も良好であり、海外でも第3の道として高く評価されている以上、自己決定権侵害であるとの評価をしやすいように思います。

問題は、「病気腎移植を受ける権利」が「治療を受ける権利」の1つとして、法的保護に値するといえるかどうかです。要するに、いままで事実上、「病気腎移植を受ける権利」を行使できただけであって、法的保護に値するものとはいえないとも評価できるからです。


  ロ:次に、<2>の点。

民法709条に基づく責任追及であるとしても、病腎移植が医学的な妥当性を欠くとの見解を示した日本移植学会の幹部らに対して、『事実と異なる発言をした』ために、損害、すなわち「病気腎移植ができなくなったという不利益」を受けたということのようです。

民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。今回の責任追及が民法709条の要件を満たしているといえるのかが問題となります。

問題となりそうな点として2点考えられます。

まず、修復腎移植を肯定からすれば、修復腎移植は「法律上保護される利益」と言いたいところですが、海外ではともかく、日本の学会の状況では、(臨床研究もしていないため)いまだ未確立の療法という扱いですから、「法律上保護される利益」といえるかどうかが、問題となります。

もう1点としては、仮に「日本移植学会の幹部が『事実と異なる発言をした』」は立証できるとしても、修復腎移植ができなくなったのは、あくまでも厚労省の「臓器移植法運用指針」が改定されたためです。「日本移植学会の幹部が『事実と異なる発言をした』」ことで、損害が生じたのではなく、「臓器移植法運用指針」によって損害が生じたという方が素直な説明ですから、因果関係の有無が問題となります。

もっとも、臓器移植法の運用指針改定の際、日本移植学会の幹部の影響が大きいため、その点からすれば因果関係の立証は可能でしょう。


  ハ:なお、<2>の点ですが、個人的には別の法律構成もあるように思います。

病気腎移植が医学的な妥当性を欠くとの見解を示した日本移植学会の幹部らが『事実と異なる発言をした』こと自体が、「専門家の責任」としての注意義務を尽くさなかったということであって、いわば「説明義務違反」自体が損害であるという法律構成も考えられると思います。

医師、それも日本移植学会の幹部は、臓器移植の専門家であり、臓器移植法の運用指針改定に大きく影響を与えた責任があります。これは、いわゆる「専門家の責任」の一種です。

「専門家の責任」とは、医師のように、一定の資格のもとに自由裁量による高度の判断を必要とする職業に従事する者には、その職業にふさわしい水準の注意義務が要求され、また、その者と契約する相手方に対して、必要とされる説明義務が要請されるというものです。弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、公証人なども同様の責任(債務不履行・不法行為責任)が認められています。

乳がんに関する最高裁平成13年11月27日判決民集55巻6号1154頁では、医師に未確立の療法まで説明義務を負わせていますが、「専門家責任」の考えがよく出ています(川井健『民法概論3(債権総論)』87頁、川井健=塩崎勤編者『専門家責任訴訟』、川井健『民法入門(第6版)』(有斐閣、2007年)202・384頁)。また、東京地裁平成16年1月30日判決(判時1861号3頁)は、説明義務違反を独立の損害賠償責任として認定しています。

もっとも、専門家責任の追及の場合も、問題なのは、修復腎移植は海外では高評価されているのに、日本の学会の主流は否定的であることです。ですから、「日本の学会は、海外での医療や学会と異なり、学識レベルが低すぎるために(オーストラリアのニコル教授の病気腎移植を誹謗中傷して否定するなど)海外の移植医療が理解できず、いくら判断を誤ってもこの程度では専門家責任を問われない」と認定する可能性があるでしょう。また、通常は契約関係を前提として「専門家の責任」を追及するため、今回の場合にまで責任追及可能なのかどうか、です。

9月20日付追記:医師及び日本造血細胞移植学会に対する説明義務違反を追及した事案について、医師の説明義務違反は肯定しつつも、学会の説明義務違反を否定したものとして大阪地裁平成19年9月19日判決があります。)



(3) 海外では医療側主導で臓器移植の拡大を推進していますし、また、米国では政府主導で推進するほど、ドナー不足解消のために積極的な行動をとっており、もちろん、移植学会が率先して病気腎移植の妨害をすることはありません。それなのに、日本では違うのです。

今回、「病気腎移植訴訟」という「臓器移植訴訟」が提訴されることになりましたが、「臓器移植訴訟」は他にも予定されているのです。

臓器移植患者団体連絡会は平成20年6月28日、東京都内で記者会見を開き、「国内で多くの移植待機患者が亡くなっていることは国会の不作為だ」として、国会で10月上旬までに臓器移植法改正のめどが立たなければ、移植前に死亡した患者の家族を原告に、国を相手取った裁判を起こすことを検討していることを明らかにしているからです。

こうした「臓器移植訴訟」を提訴するに至るというのは、それほど患者が追い込まれているということです。何よりも、そうした患者側の立場を十分に理解し、自分のこととしてドナー不足解消へ動くべきなのです。



<9月21日追記>

厚生労働省の「閣議後記者会見概要」(H20.05.16(金)09:15~09:26 ぶら下がり)から、抜粋。

「(記者)
病気腎移植について議員連盟が病気腎移植を認めても良いのではないかという内容と万波医師の処分について処分する理由が認められないというような報告書をまとめて厚生労働省に提出したと思うのですが。

(大臣)
これは私もお会いしてお話を聞いています。ただ、お医者さんの専門家は、例えば、病気の腎を移植することはけしからんという方々もおられます。ですから、何が本当に正しいのか、それはやはり政治的に動かせる問題と医学の専門領域の問題がありますから、これはもう少しよく議論をしてと思っておりますので、万波医師の件もこれまで取り扱われた症例がどうであるかということを検討し、医学界の専門家の方、こういう方とも議論しながら、そしてまた片一方で議員連盟の方々の意見もあるということで少し時間をかけてどういう形で結論が出せるか検討していきたいと思います。」



これ以降、厚生労働大臣による発言がないので、いまだ厚生労働省は、病気腎移植の是非について、検討中ということになります。


テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
春霞様

法的観点からの詳しい解説誠にありがとうございました。よく分かりました。
訴訟によるメリット、デメリットについては、私はメリットが優ることを信じたいと思います。

原告のお一人は
>「四国新聞社の取材に、「私たち患者はわらにもすがる思いで生きている。希望を託せる治療法があるのに、それが(患者に)納得できる説明のないまま禁止されるのはおかしい」と動機を打ち明けた。」
とのこと。

患者として納得のいかないまた非常に切実な思いだと思います。
記事によると「慢性透析患者の5年生存率は60%。10年生存率になると、40%にまで落ち込む。腎移植を受けた患者の10年生存率が80%であるのと比べると、生命予後は格段に劣る。」のであり、10年生存率が40%ということは、わらをもつかむ気持ちも当然であります。
修復腎移植という治療法があるのに、実質上国は禁止している訳ですから患者からみれば全く納得はできません。

最後に春霞様が示された
>病気腎移植が医学的な妥当性を欠くとの見解を示した日本移植学会の幹部らが『事実と異なる発言をした』こと自体が、「専門家の責任」としての注意義務を尽くさなかったということであって、いわば「説明義務違反」自体が損害であるという法律構成も考えられる
にはなるほどと思いました。

裁判を行う上では法的にいろんな論点があるようですが、そこは弁護士である専門家にお願いすることになりますが、とにかく訴訟を通して、今までの厚労省や学会の主張の不合理・矛盾点が明らかになることを心から期待します。
患者の切実な声がどうか裁判所に届くことを願ってやみません。

2008/09/19 Fri 01:29:33
URL | hiroyuki #GV3c5tEI[ 編集 ]
>hiroyukiさん:2008/09/19 Fri 01:29:33
コメントありがとうございます。


>法的観点からの詳しい解説誠にありがとうございました

やっと、この「修復(病気)腎移植訴訟」について、エントリーにすることができました。ただ、報道が少なく、原告側の主張内容がはっきりしませんので、訴訟の大よその概要を説明したものとして、読んで頂ければと思います。


>訴訟によるメリット、デメリットについては、私はメリットが優ることを信じたい

そうですね。メリットが勝るように裁判を進めてほしいと思います。


>とにかく訴訟を通して、今までの厚労省や学会の主張の不合理・矛盾点が明らかになることを心から期待します

同感です。あくまでも医学の発展のためにあらゆる可能性を探り、学問研究を行うべき学会の役割です。そうした役割からすれば、修復腎移植が医学的に新しい移植方法として成り立つかどうか、冷静で正確に調査・検証するべきだったのですが、学会は、そうした態度をとりませんでした(白石拓「医師の正義」30頁)。全く不可解なことです。もっとも、日本病理学会だけは、そうした不可解な行動に加わらずに気概を示していますが。
2008/09/20 Sat 00:39:29
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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2008/09/20 Sat 10:40:58
| #[ 編集 ]
原告の主張の一つに、「国民皆保険を守るため、30年遅れた医療でも勘弁してくれ。」「金かかるけど」との発言があるような気がします。

産経、四国ともども取材をしていながら肝心なことを省いている印象です。

透析のことも、最高の水準の技術を持ちながら、最低の医療基準にあること。

訴訟のことが推定で書かれてますが、推定の範囲を出てないこと。

何が腹立つかということは、禁止という法律にもとずく決め事を会員の空気で決めたこと。このような決め方をすると、再生医療や遺伝子治療のようにこれから医科学は地方や個人病院でも、発想の転換をし、新しい医療を始める可能性があり、日本の医療を引っ張る可能性がある。それを全否定とする可能性があるのです。

学会でも一枚岩ではないらしく、報道のように一つの見方しかできないのは、国民にとって不幸なことだと気が付いてほしい。

ついでに糖尿病は自己責任とする新たな差別が怖いです。

2008/09/20 Sat 15:59:34
URL | 半魚人 #-[ 編集 ]
 病腎移植実施に向けて、一石を投じるのであれば、厚労省と学会を責任主体として、「検証を行っていない」という不作為について、訴訟を構成する事も可能ではないでしょうか。
 かかる趣旨から、学会を事業主体として法的責任を問うた平成19年の判例を紹介させて頂きました。

 不作為を理由とする場合は、「作為義務」の有無と、いつ頃まで放置すれば「不作為」として責任が発生するのかという問題があります。
 確かに、医療訴訟に限らず、不作為を理由として、過失責任を問うのは難しいと思います。

 しかし、社会的な問題にもなっていること、海外では、修復腎移植が流れとなっていること、腎移植と透析では生存率が大きく異なる他、患者の負担が大きく違うこと、学会自体が「検証する」と発表したことから、作為義務を認めてもらう余地は有ると思います(もちろん実際の訴訟では、もっと細かい議論が必要ですが)。
 むしろ、問題は、発表を受けて、いつまで待てば不作為と言えるかという点で、もし、今不作為を理由として訴訟を提起しても、認めてもらうのは難しいでしょう。しかし、提起する事により、「作為義務の有無」について議論することができ、次につなげることが出来るという意義が有ると思います。

 病腎移植については、安全性一つとっても、レシピエントだけではなく、ドナーの立場からの検証も必要です。
 そういう意味で、検証なくしては、移植認可は難しい訳で、検証が遅れたことにより、適切な治療を受ける機会を奪われたという構成の方が、「検証に着手すべきか」「着手したといえるか」という点で、立証しやすいように思いますし、訴訟の結果如何にかかわらず、「検証の実施に向けて」厚労省と学会を動かすことが出来るように思うのですが、いかがでしょうか。

 個々の理事者の発言について、訴訟という俎上に載せることにより、周辺事情が明らかになるというメリットが有ることは、可能性としては否定しませんが、学会という組織と個人の関係は、例えば株式会社における取締役と会社の関係とは、少々異なるのではないかと思いますので、厚労省や学会自体を動かそうというのであれば、直接、責任を問う形で法律構成を考える方が、良いように思います。

 もちろん、日々、透析で大変な負担を負い、生命の危険すらある患者の皆さんが、病腎移植を願って止まないお気持ちは、察して余りあります。
 訴訟提起に当たっては、多大の精神的・経済的な負担があり、訴訟そのものが移植事業に与える影響など考慮すべき点もあり、いろいろ悩まれたことと思います。
 そういう大変な問題をクリアしようとしておられる患者の皆さんにとって、検証を早く進めよという上記構成は、酷でしょう。が、そういう法律構成も有るかと思い、投稿しました。
2008/09/21 Sun 10:09:47
URL | マチ弁 #-[ 編集 ]
>非公開コメントの方へ:2008/09/20 Sat 10:40:58
コメントと情報、そしてその詳しい説明をありがとうございます。大変参考になります。


>コメント欄での対応

コメント欄には、色々なコメントが寄せられます。賛否とわず、真っ当なコメントもあれば、単に「荒らし」のような場合も。丁寧に答えようとすれば、時間もかかります。また、こちらが旅行中でコメントしないでいると、医療者と思われる方が「荒らし」を行ったこともありました。色々な経験から、現在コメント承認制にして、答えるようにしています。
2008/09/21 Sun 16:47:44
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
>半魚人さん:2008/09/20 Sat 15:59:34
コメントありがとうございます。


>産経、四国ともども取材をしていながら肝心なことを省いている印象です。

他の新聞も報道すれば、もう少し違った形になったのかもしれませんね。裁判をするのであれば、記者会見を行い、原告側患者の意見を表明したほうが良かったように思います。

半魚人さんご自身が、ご自身のブログにその「想い」を綴って見たら如何でしょうか。(東京新聞さんの取材との兼ね合いで、まだ言えないのかもしれませんが。)


>透析のことも、最高の水準の技術を持ちながら、最低の医療基準にあること

透析療法の改善も図って欲しいところですね。この訴訟を通じて、透析療法の改善にも目を向けた報道もして欲しいところです。以前、コメント欄において透析医の方が、臓器移植の推進が透析療法を阻害するのではないかと危惧して、病気腎移植への疑問を述べていましたが、そうした態度は不健全であり、不幸なことですから。


>再生医療や遺伝子治療のようにこれから医科学は地方や個人病院でも、発想の転換をし、新しい医療を始める可能性があり、日本の医療を引っ張る可能性がある

本来は、そうあるべきなんでしょう。だけれども……と言わざるを得ないのが悲しいところです。


>ついでに糖尿病は自己責任とする新たな差別が怖いです

やはり、すべての糖尿病について差別はあるのでしょう。元々、どんな病気であろうとも、病気ゆえに差別すること自体がおかしいのですが。

糖尿病に関しては、「1型糖尿病と2型糖尿病がある」との点も、市民に対して理解を広げていく必要があるように思います。

小児糖尿病に理解を 患者が実情報告
2008年7月8日

 中高年に多い糖尿病だが、食生活などとは関係なく発症する1型糖尿病に苦しむ子どもや若者がいる。数が少ないため社会の理解が十分でなく、差別を感じることもあるという。現状と課題を広く伝えようと日本糖尿病協会は製薬会社と共同で、1型糖尿病の実態調査を実施。五月の結果報告会には三人の患者も出席し、不安や要望を話した。 (栃尾敏)(以下、省略)」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2008070802000190.html
2008/09/22 Mon 02:00:22
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
>マチ弁さん:2008/09/21 Sun 10:09:47
コメントありがとうございます。


>病腎移植実施に向けて、一石を投じるのであれば、厚労省と学会を責任主体として、「検証を行っていない」という不作為について、訴訟を構成する事も可能ではないでしょうか
>学会自体が「検証する」と発表したことから、作為義務を認めてもらう余地は有ると思います
>提起する事により、「作為義務の有無」について議論することができ、次につなげることが出来るという意義が有ると思います

なるほど。海外の移植事情や、危機的なドナー不足をも考えれば、病気腎移植の医学的妥当性について、十分に検証する必要がありますから、「検証する義務」の有無を法廷に持ち出すこと自体、意義があることだと思います。

十分な「検証」をするには、臨床研究も必要になりますから、実質的に病気腎移植を実施することへも繋がります。

もっとも、厚労省という国は移植医療につき責任を負う立場ですから「作為義務」の肯定はありえますが、学会は(責任のない!? 勝手なことがいえる!?)単なる民間団体ですから、「作為義務」の肯定は難しいかもしれません。

十分に主張可能な法律構成を教えて頂き、ありがとうございます。私が考えた構成よりも優れた構成だと思います。ぜひ参考にさせて頂きます。


>検証なくしては、移植認可は難しい訳で、検証が遅れたことにより、適切な治療を受ける機会を奪われたという構成の方が、「検証に着手すべきか」「着手したといえるか」という点で、立証しやすいように思いますし、訴訟の結果如何にかかわらず、「検証の実施に向けて」厚労省と学会を動かすことが出来るように思う

確かに、立証しやすい構成だと思います。「検証するのか否か」と問われて、臨床研究は認めている以上、「検証しない」とは言えないはずですから、厚労省と学会を動かざるを得ないです。


>個々の理事者の発言について、訴訟という俎上に載せることにより、周辺事情が明らかになるというメリットが有ることは、可能性としては否定しませんが、学会という組織と個人の関係は、例えば株式会社における取締役と会社の関係とは、少々異なるのではないか

本筋は、学会や厚労省なのだと思います。ただ、個々人の発言を問題にすることは、病気腎移植を肯定する方々を「万波病」などと揶揄することを阻止する意図もあるように思います。そのあたりは、原告団として、どういう意図として発表するのか、ちょっと分かりかねますが……。


>訴訟提起に当たっては、多大の精神的・経済的な負担があり、訴訟そのものが移植事業に与える影響など考慮すべき点もあり、いろいろ悩まれたことと思います

病気腎移植問題は、当事者の関係が複雑なこともあって妙なことになっています。

日本移植学会は、臓器移植自体の推進はしつつも、病気腎移植は全否定ですが、他方で、日本病理学会は、そうした対応に賛否の意思を示しておらず、理事など賛成する意見を持っており、積極的に肯定論文を発表する病理医もいます。

臓器移植に関する患者団体は、日本移植学会に遠慮して、幹部らは病気腎移植に反対ですが、その患者団体に属する患者の意見は分かれています。患者に意見を聞くことなく、団体として病気腎移植反対の決定をしているようです。本来なら、もし病気腎移植の医学的妥当性を肯定できれば、誰にとっても歓迎すべきことなのに。

結局、病気腎移植につき、日本移植学会が、十分な検証をしていないことが一因となって、「患者不在」の騒動を引き起こしているのだと思います。
2008/09/23 Tue 00:06:26
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
私には正直にどちらの主張も真っ当ではないように思えます。
一方は否定ありき、もう一方は賛成ありき。どちらも偏った意見のように思えて仕方ありません。
もちろん、私は健康ですから、移植を望む方の気持ちはわかりませんが、他に良いやり方はなかったのでしょうか。病気腎移植を認めろと言うよりも、もっと移植全体に話を広げて、国や学会を提訴した方が良かったように思いますし、禁止したこと自体はひとつの可能性を奪っているのかもしれませんが、禁止されるような方法を取ったことも事実ではないですか。これに関しては賛成する方はきちんと把握しなくてはいけないと思います。何が誤っていて、ではどうしたら良いのか、こういう議論を我々が何の眼鏡もなく、話し合えるようになるまでは、解決しない気もします。病気腎移植を認めると言うことは、移植されてその方に癌等が発症した場合、それに対して何も言えないということです。当然、治療費も移植者負担です。それに、摘出される方は見ず知らずの他人に病気が移るかもしれない、移植後すぐにだめになってしまうかもしれない臓器を差し上げるのでしょうか?それで、移植の数が増えるだろうと言うのは、今のタバコ税の増税の話と似た、甘い考えのように思えます。また、学会は十分な検証をしていないと皆さん仰いますが、何をもってなのでしょうか。
結局得られる情報から判断するしか、また自分で調べる以外に我々は出来ませんけれども、自分で賛否を決めてから物を言うのは正直感心できません(申し訳ありませんが、そのように思える方々がほとんどです)。
大切なのは、病気腎移植のみが出来るようになることではなく、移植医療がもっと多く日本で行われるようになることだと思います。
よくよく皆で検討して、ドナー、レシピエント双方にとって良い結果が得られると良いと心から思います。
2008/12/12 Fri 14:47:47
URL | noname #-[ 編集 ]
>nonameさん:2008/12/12 Fri 14:47:47
コメントありがとうございます。もっとも、すでに提訴していますから、なぜ、いまさら(提訴前の)エントリーへコメントするのか不可解な感じがしますが。


>私には正直にどちらの主張も真っ当ではないように思えます。
>一方は否定ありき、もう一方は賛成ありき。どちらも偏った意見のように思えて仕方ありません

修復腎移植を認めるか否かが争点なのですから、論理的に言えば、否定か肯定かのどちらかしかありません。論理的にいって、「どちらも偏った意見」という結論にはなりえません。


>病気腎移植を認めろと言うよりも、もっと移植全体に話を広げて、国や学会を提訴した方が良かったように思います

「移植全体に話を広げて」、国を提訴する予定の方はいます。nonameさんは、ご存じなかったのですか?

臓器移植法の改正、進展なければ提訴も…患者連絡会

 臓器移植患者団体連絡会は28日、東京都内で記者会見を開き、国内で多くの移植待機患者が亡くなっていることは国会の不作為だとして、国会で10月上旬までに臓器移植法改正のめどが立たなければ、移植前に死亡した患者の家族を原告に、国を相手取った裁判を起こすことを検討していることを明らかにした。
 連絡会の大久保通方代表幹事は会見で、移植前に亡くなった患者2人の遺族が原告となることを了承していることを明かしたうえ、「次の臨時国会で成立させるため、10月上旬を期限に衆院で法案の通過見通しが立たない時は提訴に踏み切る。成立するなら提訴はしない」と述べた。
 連絡会と日本移植学会は成人や小児の患者多数が臓器移植のため、やむなく海外に渡航している状況を打開するため、本人が生前に拒否していなければ、年齢に関係なく、家族の同意で臓器提供ができる法改正を要望している。

(2008年6月29日 読売新聞)」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080630-OYT8T00216.htm

もっとも、この記事内容からすれば、もう提訴していていいはずです。裁判の予定は立ち消えになってしまったのか、準備中なのか定かではありませんが。

なお、修復腎移植に関しては、「国」に対して提訴するかどうかは、厚労省の見解次第ということになっています。

また、学会幹部ではなく、「学会」へ提訴することは、なかなか難しいですね。元々、関係学会による「病気腎移植禁止」の意見表明は、会員全員の投票でなく、幹部のみで勝手に決定したのですから。また、「移植全体に話を広げ」た場合には、移植学会も移植を拡大する立場ですから、学会に対して提訴する根拠がないのですから。


>禁止したこと自体はひとつの可能性を奪っているのかもしれませんが、禁止されるような方法を取ったことも事実ではないですか。これに関しては賛成する方はきちんと把握しなくてはいけないと思います。

「禁止されるような方法を取ったことも事実」というのでしたら、その具体的な事実を提示してください。このブログでは、「修復(病気)腎移植問題」については、現在、87のエントリーで言及しており(http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-category-15.html)、そのなかで、問題とされた事例につき、できる限り分析を行い、法律的に問題となるような事実はなかったと判断しています。

「賛成する方はきちんと把握しなくてはいけない」と書いているところをみると、nonameさんは、万波先生たちが行った修復腎移植についての検証について、まるで知らないのですね。

まずは、「移植への理解を求める会」のHPのうち、
・「修復腎移植とは」
http://www.shufukujin.com/ishokutoha.html
・「修復腎移植Q&A」
http://www.shufukujin.com/ishokuqa.html
という2つのエントリーをご覧下さい。


>病気腎移植を認めると言うことは、移植されてその方に癌等が発症した場合、それに対して何も言えないということです。当然、治療費も移植者負担です。それに、摘出される方は見ず知らずの他人に病気が移るかもしれない、移植後すぐにだめになってしまうかもしれない臓器を差し上げるのでしょうか?
>それで、移植の数が増えるだろうと言うのは、今のタバコ税の増税の話と似た、甘い考えのように思えます
>また、学会は十分な検証をしていないと皆さん仰いますが、何をもってなのでしょうか。

平気でこうしたコメントができるのですから、nonameさんは、ご自分の疑問を解消するために、何も調べていないことが明白です。

このブログでは、修復腎移植につき、87のエントリーで触れていますが、全部読みましたか? 修復腎移植に関する書籍を購入して読んでみましたか? 腎臓移植についても何も知らないのではないですか? 腎臓移植について何も知らなくても、少なくとも、腎臓病に関する書籍を購入して読んだことはあるのですよね? 

何も調べることなく、ただ感情のまま、無邪気に自分の疑問を述べ、批判することは、あまりにもふざけ過ぎです。命がかかっている問題であることが分かっているのでしょうか? 


>結局得られる情報から判断するしか、また自分で調べる以外に我々は出来ませんけれども、自分で賛否を決めてから物を言うのは正直感心できません

は? nonameさんは、修復腎移植について少しも調べていませんよね? 少しも調べることなく、「自分で賛否を決めて」、ただ疑問を垂れ流すのは「正直感心できません」。

修復腎移植問題は、医学的・法律的な問題が生じていますので、法律問題の1つです。このブログは法律系ブログであり、法律的に根拠なく賛成したり否定したりしていません。法律的に根拠があるからこそ、修復腎移植を肯定しているのです。


>大切なのは、病気腎移植のみが出来るようになることではなく、移植医療がもっと多く日本で行われるようになることだと思います

もちろん、その通りです。ただ、臓器移植法制定から10年経過しても、一向にドナーが増加せず、改正もできないでいる現状を知ったうえで、書いているのですか?
 
腎臓移植は、心臓死の腎臓を使用できること、また、他の移植希望者と比較して、腎臓移植希望者が格段に多いこともご存知だと思います。ですから、移植医療全般を拡大することと、腎臓移植の拡大とは大きなズレがあることもわかっていて、「病気腎移植のみが出来るようになることではなく、移植医療がもっと多く日本で行われるようになることだ」と述べているのですよね?
2008/12/13 Sat 07:21:15
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産経新聞 平成20年9月14日(日)付22面 ニュースワイド愛媛 9月14日(日)付産経新聞に、修復腎移植・国賠訴訟に関する続報が掲載されましたので紹介します。 産経新聞松山支局様、力武記者の視点での「深刻なドナー不足の日本で、新しい医療に背を向けてはなら?...
2008/09/19(金) 00:46:08 | 修復腎移植推進・万波誠医師を支援します
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