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2008/09/05 [Fri] 06:17:16 » E d i t
福田首相は、9月1日夜(9時半)、首相官邸で緊急に記者会見して「辞任することを決意した」と表明しました。辞任自体も無責任ですが、気になったのは、記者会見として次のような内容を述べていたことです。



1.福田首相会見要旨

(1) 毎日新聞平成20年9月2日付朝刊5面「首相退陣表明:会見要旨(1)「駆け引きで政治空白つくってはならない」」

 「ねじれ国会の運営について「今年に入ってから景気問題が大きな課題として浮上した。国民や農林漁業、零細企業などの強力な対策を作るため、改造を断行した。強力な布陣の下、先週総合的な対策をとりまとめられた。臨時国会では、補正予算や消費者庁設置法など一刻の猶予もない重要な案件を審議する。先の国会では民主党が国会の駆け引きで審議引き延ばしや審議拒否を行った。その結果、何を決めるにも時間がかかった」と民主党を批判した。

 そのうえで、「いま日本経済、国民生活を考えた場合、体制を整えた上で国会に臨むべきであると考えた。ここで政治空白を作ってはならない。この際、新しい布陣で政策の実現を図って参らなければならない、と判断し、本日辞任することを決意した」と辞意を表明した。」



(2) 毎日新聞平成20年9月2日付朝刊5面「首相退陣表明:会見要旨(2)記者団との一問一答」

「Q 総理が冒頭で挙げられた消費者庁、道路等々の成果はいずれも道半ば。ご自身の手で仕上げるのが責任というのが普通ではないか。新体制でやるのはどうしてか。もう一つ、総理大臣が辞めるのが政治的空白を生むのではないか。国民が景気等々悪いときに、辞めること自体が空白を生むのではないか。

A 消費者庁はだいたい法案がまとまった。この趣旨は国会にこれから説明していく。私に続く人がこのことを重要に考えやってくれる、それを期待しているが、ここまでまとまれば、あと国会でどういう審議をされるか、その点について野党とどういう話をするかそれはお任せするしかない。無責任といえば全部終わるまでやっていないといけない。本当にやってられるかという問題がある。第二の問題ですが。私が続けていって国会が順調にいけばいいが、そういうことはさせじという野党がいるかぎり、新しい政権になってもそうかもしれないが、私の場合内閣支持率の問題もあるかもしれないし、そのへんは困難を伴う。政治空白というが、いまが政治空白を作らないには一番いい時期だという判断をした。国会の途中で何かあったなら、そのほうがより大きな影響を国民生活に与える。これから大事な法案、政策を打ち出すわけだが、法案だけ考えても経済対策あり、給油法の問題あり、消費者庁もある。前国会の積み残しもたくさん大事なものがございますから、そういうものを順調に仕上げなければならない。そのためには、私が、いろいろ考え判断した結果、いま辞任をして新しい人に託した方がよりよい、という判断をした。

Q 決断に至る過程で総理ご自身が解散総選挙をご自身の手でやると考えたことあるのか。民主党との間でねじれ国会のもとで、政策遂行が難航したが、民主党の小沢代表に対しておっしゃりたいことがあれば。

A ねじれ国会で大変苦労させられた。話し合いをしたいと思ってもそれを受け付けてもらえないことが何回もあった。与党の出す法案に真っ向反対、それも重要法案に限って真っ向反対と、聞く耳持たずと言うことが何回もあった。私が小沢代表に申し上げたいのは国のためにどうしたら良いのか虚心坦懐、胸襟を開いて、話し合う機会がもっとあったら、話し合いたかったということを言いたい。」



要するに、福田首相にとっては、野党が、内閣提出法案の成立に反対、それも重要法案ほど真っ向から反対するために、与党の思い通りに国会審議が進まなかったという不満が辞任の理由の1つなのです。このように、野党が与党に対して非協力的だったことを辞任理由の1つとしているのです。では、野党が与党に対して非協力的だったことは、辞任理由として適切なのでしょうか?  朝日新聞での解説を紹介しておきます。


なお、福田首相辞任表明を受けて、各紙は9月3日朝刊で特集記事を組んでいました。例えば、朝日新聞は、「視点」欄において、飯尾潤・政策研究大学院大教授が、「視点――ワイド――」欄において、松原隆一郎・東京大教授、浜矩子・同志社大教授、作家・佐野眞一氏が、「文化面」では、杉田敦・法政大教授が解説を行っていました。毎日新聞は、24面において司会として倉重篤郎・東京本社編集局次長で、中曽根元首相、御厨貴・東京大教授、飯尾潤・政策研究大学院大教授3人による「福田首相退陣緊急座談会」がありました。読売新聞は、「福田首相退陣談論」と題して(13面)、中曽根康弘元首相、丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長、田中明彦・東大教授へのインタビュー記事を掲載していました。

これらのうち、次の点が気になりました。すなわち、読売新聞平成20年9月3日付朝刊13面の「福田首相退陣談論」の記事において、丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長は、

「選挙態勢を構築するうえで、辞任表明は今のタイミングがベストであり、その意味では決して政権の投げ出しではない。ただ、これは「選挙のプロ」の話で、国民には非常にわかりにくかった。」

と述べています。これから引用する解説を見れば分かりますが、「政治学のプロ」である政治学者からみても、「政権の投げ出しではない」とはいえません。「『選挙のプロ』の話」との言い訳を付け、また、自民党に尻尾を振って恭順の意を示すのも経済界の一員としては妥当な行動なのでしょうが、経済界の見識の劣化を感じる発言でした。



2.朝日新聞での識者の解説を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年9月3日付朝刊15面「私の視点――ワイド――」

民主主義わかっていない  浜 矩子(はま・のりこ)・同志社大教授(国際経済)

 福田首相は就任の際、「背水の陣内閣」と自らの政権を名づけた。背水の陣とは、振り向けば水しかなくて、そこからは下がれない、どこにも行きようがない状態を指す。相当な決意でこのような言葉を使ったはずなのに、ここで政権を投げ出すのは、言葉の意味がわかっていなかったか、すごく誤解していたかのどちらかだろう。

 安倍前首相の辞任から今日に至る流れをみると、自民党は、政権担当能力がなくなったことを宣言したようなものである。与党である今の体制が変わってしまうことを何とか阻止するためにクビをすげ替えるという思考は、政党の論理の中でしか物事を考えられなくなっている証拠であり、そもそも民主主義というものがわかっていない。

 それがダメ押し的にわかったのが、福田首相の辞任会見である。ねじれ国会で野党が協力してくれなくて随分苦労した、というようなことを話したが、野党は反対するために存在する。野党が反対しないような国家体制は民主主義と言えないのに、福田さんは野党への不満を平気で口にしてしまう。さらに会見の最後に、「国民にはひとごとのように聞こえる」と記者に言われて、「あなたとは違う」と気色ばんだ。これも、権力者を「いじめる」ために存在するメディアの位置づけ、役割を理解していない発言である。

 安倍前首相も福田首相も、常に「周りが悪い」という反応をみせ、民主主義はどのように機能するものなのか、全くわかっていなかった。それは、自民党が、真剣な言語的勝負の世界に身を置いたことがない政党であるからだ。派閥均衡による「共栄」を重視し、相対するものが徹底した議論によって決定的にぶつかることがないように政党を作ってきた。便宜的な部族連合みたいなものである。そうした中から、本物の「背水の陣」は生まれてこない。

 私は、福田首相は「番頭外交」というもので世界に打って出ればいいと思っていた。番頭外交とは、大だんながむちゃなことを言ったら「まあまあ」となだめ、若だんなが遊びほうけていたらいさめる。しかるものはしかり、かばうものはかばう。グローバル化の時代は、賢い番頭さんが必要だと感じる。いろんなことをよく知っており、目立たないような名采配を発揮して、それによって丸く収まっていく。

 7月の主要国首脳会議(G8サミット)が、名番頭の采配をふるう絶好の場面だった。サブプライム問題、資源インフレ問題が吹き荒れる中、「私はこれをする」「あなたはこれをやってください」と、政策協調のシナリオ作りでリーダーシップを発揮すべきだった。議長にはそれだけの影響力と責任がある。しかし、福田首相はそうした認識が希薄で、チャンスをチャンスとして読めなかった。

 新しい時代の宰相に必要な資質は2つある。1つは番頭であり、もう1つはドン・キホーテである。ドン・キホーテには<1>「自分さえよければいい」という考えから非常に遠い<2>他人依存が強い<3>腕力が弱い――という属性が備わり、それでいて理念は高い。グローバル化の時代は「自分だけ生き残ろう」「自分さえよければいい」とみんなが思えば思うほど、一緒に奈落の底に落ちてしまう。グローバルジャングルの砂漠化を防ぐのがドン・キホーテで、新しい時代に相性のいいヒーロー像だ。

 それに、気配り、粘り腰、まめまめしさといった番頭的要素を兼ね備えていれば鬼に金棒ではないか。このような資質を合体したような宰相が、早く日本から出てきてほしい。」



(2) 朝日新聞平成20年9月3日付朝刊22面「文化面」

福田首相辞任 交渉能力と誠意ある政治を 政党内のスキル継承なく

杉田敦・法政大教授(政治学)

 一国の首相が、2人連続して、十分な説明なしに中途で政権を投げ出すという事態をどう考えればよいのか。暴力的な政変なしに政治指導者を追い出せないような国に比べれば、自分から辞めてくれるだけマシと言うべきなのだろうか。そうとも言い切れない。辞める理由がはっきりしない限り、政治の将来にもつながらないからである。

 そもそも首相は最高権力者と位置づけられている。さらに、内閣機能の強化や選挙制度改革などによって、小泉時代までに首相の権力は制度的に確立したとも言われてきた。しかし、安倍・福田両氏の首相としての軌跡は、そのようには見受けられない。絶えず無力感に苛(さいな)まれたあげく、「自爆」的な行動に出たようにしか見えない。なぜ、このようなことになるのか。

 福田氏の辞任会見でも「決めるべきことがなかなか決まらない」国会状況が批判されていたが、衆参のいわゆる「ねじれ」状態が元凶であり、そのため首相が本来もつ権力が発揮できなくなっているという考え方もあろう。そこから、「大連立」論や政界再編論議も出てくる。

    □    □

 しかしながら、大統領と議会多数派が別の党派であることなどは、諸外国ではむしろ常態である。一筋縄ではいかない困難な状況の中で、さまざまな交渉によって、何とか物事を進めていくというのが、政治家の腕の見せどころではないのか。長期にわたって衆参で圧倒的な多数派を制した、かつての自民党政権のような状態を前提とすることの方がおかしい。

 90年代以来の政治改革論議では、制度的な条件整備だけが強調されてきた。しかし、政治が人間の営みである以上、政策を説明する能力や、人を説得する能力などの比重はきわめて大きい。なかなか制度論に還元できない、こうした政治的なスキルを磨き、継承することに、現在の政党は成功していないのではないか。

    □    □

 今回の福田氏辞任の背景に、総選挙が近づく中で、早めに「選挙の顔」を準備しようとする与党内の動きがあるともいわれている。そこで期待されているのは、2005年の郵政選挙の時の小泉氏のような政治家であろう。実際にそうした政治家が登場するかどうかはともかく、ショーアップされた形の、「わかりやすい」政治への需要が有権者の側にあるとすれば、それもまた大きな問題である。

 近年人気のある「わかりやすい」議論は、たとえば、赤字がふえたのは公務員が多すぎるからだ、というものである。しかし、実際には、公共事業等で赤字をつくったのは公務員だけではなく、政策を決めた政治家、さらには政治家を選んだ有権者全体の責任もあるはずである。一方、福祉や生活保障の面で政府に大きな役割を求めるが、税金を上げることは一切認めないといった議論も、耳には心地よくても実現は難しいだろう。

 政治的な交渉能力に加えて、複雑な問題を過度に単純化せずに、現実にある選択肢をきちんと説明するような、誠意と能力のある政治家が求められているのである。
-------------------------------------------------------------------
すぎた・あつし 59年生まれ。著書に『境界線の政治学』(岩波書店) 『デモクラシーの論じ方』(ちくま新書)など。
-------------------------------------------------------------------」



(3) 議会制民主主義においては、政党が不可欠の存在です。

  イ:政党は、社会の様々な利益を集約化するだけでなく、国家権力を使って、自己の政策を実現していきます。いままで一政党の見解でしかなかったものが、国民の同意と支持があるという理由で、国家の政策にまで高まるのです。そして、その政策の当否を巡って、政党は、お互い激しく対立しながら、政治を動かしていくのです(政党政治。伊藤雅康ほか「現代憲法入門」114頁)。

このように、議会制民主主義下における政党政治では、野党が与党が提案する政策・法案に対して、反対の意見を述べるのは、通常の在り方といえるのです。

福田首相は、「ねじれ国会で野党が協力してくれなくて随分苦労した」と話していますが、「野党は反対するために存在する」のであって、「野党が反対しないような国家体制は民主主義と言えない」のです。福田首相は、議会制民主主義が分かっていないというべきです。


  ロ:自民党長期政権においては、国会で衆議院・参議院ともに長らく過半数を占めており、多数決によれば最終的には内閣提出法案(つまり自民党側の法案)を自由に可決できる状況でした。ですから、いくら与野党で揉めている様子があっても、国会審議は、「見世物」でしかなかったのです。

 「近年になって崩れたが、55年体制下では、国会審議に関しては主要政党の合意を尊重する慣例があり、国会審議日程について野党に実質的な拒否権が存在した。もちろん明確な拒否権であれば、野党が賛成しない法案は1つも採択することができない、あくまで非公式な慣行として存在した。

 実際には、野党は成立がやむを得ないと思えば、「出席して反対」し、あくまで反対なら、審議拒否を行って国会審議を止め、自分たちの立場を宣伝した。また、単独審議への抵抗感が強かったため、与党側では何らかの妥協を野党と行うこともしばしばあった。野党が審議拒否した場合、与党がどうしても成立を期するには、与党単独審議の場合、単独採決を行えばよいのであるが、「強行審議」「強行採決」という批判を浴びることを覚悟せねばならなかった。野党として、「強行採決」は「抵抗する野党」の人気を高め、メンツを立ててくれるありがたい事態でもあった。こういった状況では、与野党の利害は錯綜し、裏側で協力関係が生まれ、表面上の国会審議は、「見世物」としての色彩を強く帯びてくる。」(飯尾潤「日本の統治構造」(中公新書、2007年)129頁)


このように、従来の日本の国会は、短い審議日程もあって、法案内容の十分な審査、討議を通じての問題解明といった機能がおざなりであったのです。

これに対して、「大統領と議会多数派が別の党派であることなどは、諸外国ではむしろ常態」です。「一筋縄ではいかない困難な状況の中で、さまざまな交渉によって、何とか物事を進めていくというのが、政治家の腕の見せどころ」なのです。

福田首相は、「見世物」であった国会審議を望んでいたのでしょうが、それは実に不健全な国会審議であり、不健全な政党政治であって、「長期にわたって衆参で圧倒的な多数派を制した、かつての自民党政権のような状態を前提とすることの方がおかしい」のです。このように、野党が与党に対して非協力的だったことは、辞任理由として適切ではなかったのです。 




3.不適切な辞任理由以外にも、福田首相の辞任表明は「解せない」ものでした。

(1) 朝日新聞平成20年9月3日付朝刊14面「私の視点」

◆首相辞任 納得できる説明を聞きたい 飯尾 潤(いいお・じゅん)・政策研究大学院大教授(現代日本政治論)

 福田首相の辞任は、解せないの一言に尽きる。年齢を重ねてしっかりしている福田氏なら、突然辞任した安倍前首相のような無責任なことはしないということで首相になったが、出処進退としては安倍氏と似たようなものだ。首相の地位がものすごく軽くなっている。

 今年春の段階で、福田首相は展望のない状況になっていた。主要国首脳会議(G8サミット)や内閣改造で支持率を回復するという方策は、何の根拠もなかった。八方ふさがりの状況なので、選挙管理内閣に徹するべきだった。そういう客観情勢に気づかず、自覚がないまま来てしまった。

 このタイミングで辞めること自体、問題だ。ひと月前に内閣改造をしたばかりで、その時から政治状況は変わっていない。国民に説明がつかないような辞め方は問題で、納得できる説明を聞きたい。

 福田首相は辞任表明の記者会見で、道路特定財源の一般財源化や消費者庁の設置、社会保障制度の抜本見直しの方向性を打ち出したことなどを成果として挙げたが、それらはまだ実現していない。あくまで福田首相の約束であって、法律などになっていない以上、首相が交代すれば抜本的に見直すことができる。「ほかの方にやっていただいた方が、よりよくいく」というが、総裁選では政策が争点になるので、後任を縛ることはできない。福田首相は自分の発言の矛盾に気づいていない。

 法案が通らないので身を引くというのなら、1つの理由にはなるが、問題を提起しただけで、政治家として実現の努力をしていない。福田首相がしたことは、懇談会をつくって議論してもらい、提言を受け取っているだけ。実現するのが政治家の仕事だ。福田首相の姿勢には疑問を感じる。

 自民党は与党に長くいすぎて、リーダーを作り出す力が弱まってしまった。かつては有力政治家同士が争い、力で権力を奪い取った。しかし今は「何となく人気がありそう」という人が首相になっていく。安倍氏も福田首相もその点で同じ。評価がバーチャルなものになってしまった。

 「人気がある」「選挙に勝てそう」というイメージが先行し、自民党の議員たちはそこにぶらさがった。「人気の高い人がいい」というのは大きな勘違いだ。本来、首相は政治状況を自分でつくらないといけない。福田首相は総選挙に勝つ状況を、何が何でもつくらなければいけなかった。

 後継者がだれでも同じことが起きる可能性がある。自民党は野党になることを恐れすぎる。与党であることにしがみつこうとするので、停滞感が生まれ、弱体化が進んだ。なぜ勝負に出ないのか。自分たちの主張を掲げ、信を問うべきだ。今の状況は民主主義にとって、好ましくない。」



  イ:飯尾教授は、辞任表明において「成果」として述べた点について疑問視していますが、まさにその通りでしょう。

 「福田首相は辞任表明の記者会見で、道路特定財源の一般財源化や消費者庁の設置、社会保障制度の抜本見直しの方向性を打ち出したことなどを成果として挙げたが、それらはまだ実現していない。あくまで福田首相の約束であって、法律などになっていない以上、首相が交代すれば抜本的に見直すことができる。「ほかの方にやっていただいた方が、よりよくいく」というが、総裁選では政策が争点になるので、後任を縛ることはできない。福田首相は自分の発言の矛盾に気づいていない。

 法案が通らないので身を引くというのなら、1つの理由にはなるが、問題を提起しただけで、政治家として実現の努力をしていない。福田首相がしたことは、懇談会をつくって議論してもらい、提言を受け取っているだけ。実現するのが政治家の仕事だ。福田首相の姿勢には疑問を感じる。」


いくら「道路特定財源の一般財源化や消費者庁の設置、社会保障制度の抜本見直しの方向性を打ち出した」ところで、プランを提案しただけのことであって、法律が成立していない以上、「成果」になっていないのです。過去の自民党長期政権下においては、プランを提案すればそれは実現可能性が高かったのですが、現在の「ねじれ国会」下においては不透明なのです。福田首相の頭の中は、あくまでの過去の「自民党長期政権」下での国会審議のままであって、現実逃避しているようです。


  ロ:福田首相が辞任したために、福田康夫首相肝いりで設置された政府の有識者会議の先行きが、突然の政権投げだしで不透明になりました(「東京新聞平成20年9月4日付朝刊2面、読売新聞平成20年9月4日付朝刊4面)。

福田内閣で設置された主要な有識者会議は、<1>社会保障制度の中長期的な在り方を検討する「社会保障国民会議」、<2>厚労省の信頼回復に向けた改革を示す「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」、<3>行政の無駄な支出の削減を示す「行政支出総点検会議」、<4>「国家公務員制度改革推進本部顧問会議」、<5>「消費者行政推進会議」、<6>「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」です。

福田首相は新政権にそのまま引き継ぎたい意向のようですが、首相自身も安倍前政権時代の各種会議を大幅に見直しているのです。ですから、仮に存続したとしても、新政権下で影響力を発揮するのは難しく、これらすべてが棚上げで終わる可能性が生じてしまったのです。無駄だったとしか言いようがありません。


  ハ:海外へ目を向ければ、他にも「無責任な辞任」の影響があるのです。そのうち1つ挙げておきます。ニューヨークでの国連総会演説は、2年前と昨年のいずれも首相交代のため日本は欠席しました。今回行かなければ、3年連続欠席になってしまいます(毎日新聞平成20年9月4日付朝刊5面)。

日本の首相の一般討論演説は現地の25日が有力であるため、自民党総裁選での選出が22日、24日召集の臨時国会冒頭で指名されるのですから、まず困難なのです(0泊3日というスケジュールなら可能ですが)。福田首相のみならず、自民党にとっては、国連はどうでもいいのでしょうか。対外的にはそのように受け取られても仕方がないのです。



(2) 福田首相は、辞任表明自体が「解せない」ものだっただけでなく、辞任後の行動もおかしいのです。

  イ:東京新聞平成20年9月5日付朝刊30面

たそがれ首相 取材拒否、自衛隊会議も欠席  専門家「職務をまっとうして」

 ぶら下がり取材拒否に続き、自衛隊の重要会議も欠席―。突然の政権投げ出しで、国民から強い批判を浴びた福田康夫首相。今月下旬まで任期が残っているが、既に退陣したかのような言動が目立つ。自衛隊OBや危機管理の専門家らは「国政には緊急の課題が山積している。最後まで職務をまっとうすべきだ」と批判する。

 福田首相は1日夜の辞任表明後、それまで原則毎日応じていた記者のぶら下がり質疑を拒否。3日には防衛省で行われた自衛隊高級幹部会同に、代理も立てずに欠席した。

 会同は年に一度、全国の幹部自衛官が集まり、首相の訓示を各部隊に持ち帰る行事。過去10年では、小泉純一郎首相が二度、外遊中のため欠席しただけで、この時は官房長官だった福田首相が代理出席していた。

 陸上自衛隊の元中部方面総監・松島悠佐さんは「自衛隊の最高指揮官という認識がないんだろう。官房長官時代に代理出席しており、思い付かないわけがない。職務をまっとうしなきゃ」と怒る。

 「幹部らは最高司令官の指示を待っていたはず。福田さんにはささいなことかもしれないが、無視された側の気持ちを感じ取れないことが寂しい」

 福田首相は4日の「公文書の在り方等に関する有識者会議」で、「急に首相が辞めちゃったとかいうことも、百年、千年たっても分かるようにしなければ」と笑いながら語った。4日に配信した「福田内閣メールマガジン」でも、突然の辞任に謝罪の言葉はなかった。

 危機管理コンサルタントの田中辰巳さんは「企業のトップは辞めるとき、急速に仕事への情熱を失うが、辞める際にどれだけ責任を果たせるかで人間の真価が現れる」と話す。

 「有事が今日起こる可能性だってある。事実上のトップ不在で危機管理に空白が生じるのは非常に怖い」と危機感を募らせる。

 東京都墨田区の金星ゴム工業の杉本浩志社長(47)は民間企業経営者の立場から「軽いっていうか、総理の立場が分かってないね。民間企業ではあり得ない」とあきれている。」



  ロ:福田首相は、辞任を表明したとはいえ、「今月下旬まで任期が残っている」のであって、憲法及び法律上は、依然として「内閣総理大臣」なのです(もし、内閣総理大臣が欠けたのであれば(又は辞表を提出した)、国会法64条によりその旨を両議院に通知し、憲法70条により総辞職する必要があり、内閣法9条により臨時代理が必要となる)。それなのに、職務放棄した言動を次々と行っているのです。

「ぶら下がり取材」の拒否が最初の「職務放棄」でした。確かに、「首相としては、取材に応じれば、退陣経緯のみならず、自民党の麻生幹事長への「政権禅譲密約説」の真相や、自民党総裁選に絡む人物評などを聞き出そうとするマスコミの好餌(こうじ)となり、発言が面白おかしく取り上げられ、関係者に迷惑をかける――との思いがある」のかもしれません(読売新聞平成20年9月4日付朝刊4面)。しかし、「『ぶら下がり取材』は、国の最高権力者である首相の考えを、報道各社が直接取材し、国民に伝えるための貴重な場」なのですから(読売新聞平成20年9月4日付朝刊4面)、福田氏は「ぶら下がり取材」に応じるべき責務があるはずです。こうして、取材を拒否しておいて、国民に対するメッセージを拒絶しておいて、これのどこが「国民目線の政治」だったのでしょうか。

自衛隊法7条は、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」と定めておいます。ですから、福田首相は、「自衛隊の最高指揮監督権を有する」者としての責任があるのです。ところが、「年に一度、全国の幹部自衛官が集まり、首相の訓示を各部隊に持ち帰る行事」である「自衛隊高級幹部会同」を、福田首相は欠席してしまうという異常な行動にでてしまったのです。

これでは、福田首相は、「自衛隊の最高指揮監督権を有する」者としての職務を放棄したといわざるを得ません。陸上自衛隊の元中部方面総監・松島悠佐さんは「自衛隊の最高指揮官という認識がない」と批判しているのも当然といえるのです。自衛隊幹部らは、福田首相から無視されてしまったのですが、その「無視された側の気持ち」に対して、何も詫びていないのです。

福田首相は4日の「公文書の在り方等に関する有識者会議」でも、「急に首相が辞めちゃったとかいうことも、百年、千年たっても分かるようにしなければ」と笑いながら語るなど、福田政権下で設置された有識者会議であるというのに、他人事のような発言なのです。4日に配信した「福田内閣メールマガジン」でも、突然の辞任に謝罪の言葉はなく、他人事です。


  ハ:福田首相は、首相就任時から辞任後でもすべて「他人事」であって、辞任後は「職務放棄」まで行う始末なのです。2世・3世議員はひ弱だとかとの意見もあるようですが、福田首相は、そうした意見を超えてあまりにも「無責任」です。福田康夫氏は、首相としての資質がないばかりか、国民の代表者たる国会議員としてもその資質がないというべきです。



(3) 首相退陣表明を受け自民党の後継総裁選びが活発化しています。最初に名乗りをあげたのは、「部落出身者を日本の総理にはできない」などと述べた差別主義者・麻生太郎氏です(「「ナチス発言」問題:ナチスに関する麻生氏の歴史認識は正しいのか?~研究者は“麻生氏の発言は歴史的にトンチンカン”と酷評(東京新聞平成20年8月6日付「こちら特報部」より)」(2008/08/06 [Wed] 22:03:21)参照)。他にも、与謝野馨経済財政相(70)が立候補に必要な党所属国会議員20人の推薦人を確保し、小池百合子元防衛相(56)、石原伸晃元政調会長(51)も候補者になるようです。

差別主義者・麻生太郎氏は論外であるとはいえ、前回の総裁選では、この麻生太郎氏ではなく、政策を吟味することなくポスト獲得を狙って、「無責任」な福田康夫氏をほとんどの派閥が雪崩を打って支援したのです。2代続けて「無責任な政権を投げ出し」総裁を選んだ責任はどうしたのしょうか。こんなことでは、自民党には、政権担当の資格はありません。自民党総裁選を経て選ばれる新首相は、できるだけ早く衆院を解散し、国民の審判を受けるべきです。

テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

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2008/09/06(土) 20:47:52 | 村野瀬玲奈の秘書課広報室
「多数の国民が反対する法案の通し方(政府与党・自公政権に捧ぐ)」に続いて、民主主義について自分の考えをはっきりさせ、日本の民主主義...
2008/09/06(土) 20:49:31 | 村野瀬玲奈の秘書課広報室
???????キタ(゚゚)!!????Ĺä2008?91μ??????β??Ĥ??Τ褦??ù???????Ū?????????????...
2008/09/08(月) 19:16:03 | ?????
民主党の現代表、小沢一郎氏が無投票で3選になりました。小沢氏は立候補の届け出と同時に次の新政権の基本政策案を発表しました。 ●民...
2008/09/08(月) 22:17:03 | 村野瀬玲奈の秘書課広報室
  当  ブ  ロ  グ  へ  の     皆様のご支援に感謝致します! ありがとう!   「あ・そ~」、曰く、・・・・・   『私と小沢さん、   どちらが首相にふさわしいか選択選挙でーーーーーーーっつ!』      キ   ャ   ハ  ?...
2008/09/08(月) 22:41:07 | 晴天とら日和
?ä????
2008/09/27(土) 21:23:05 | ??
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2013/08/08(木) 18:02:48 |
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