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2008/08/28 [Thu] 06:00:10 » E d i t
福田康夫首相は8月26日午前、自民党本部での役員会で、9月12日に召集する臨時国会の会期を11月20日までの70日間とする方針を表明しました。70日間は、インド洋での給油活動を延長する新テロ対策特別措置法改正案の衆院再可決には不十分で、今月末にまとめる総合経済対策の裏付けとなる08年度補正予算案の審議を最優先した会期となったとのことです(毎日新聞2008年8月26日東京夕刊)。

共謀罪

 実行行為や準備をしなくても、相談しただけで犯罪とみなされる。組織犯罪処罰法改正案に含まれ、対象犯罪は600以上。政府は国連総会で採択された国際組織犯罪防止条約(2000年)の批准には共謀罪新設が必要と主張しているが、労働組合や市民運動から「権利や自由が侵害される」との懸念が相次ぎ、野党や日弁連も強く反対している。」(東京新聞平成20年8月17日付朝刊26面)





1.臨時国会では、政府与党は、共謀罪法案成立へ向けての動きをするのではないかとの疑念をもたれています。それは、鳩山元法相が、G8司法・内務大臣会議において、勝手に「『早期に批准できるように全力で頑張ります。』という努力の誓いをした」からです(法務大臣閣議後記者会見の概要・平成20年6月17日(火)参照)。

鳩山元法相の発言

 「世界的な犯罪防止ネットワークに穴をあけている状態で申し訳ない。早く責任を果たしたい」(6月13日 マイケル・ムケージー米司法長官に)

 「このままでは肩身が狭いですね。はやりG8の一国ですから(中略)国際組織犯罪という絶対に撲滅しなければならない、その条約に入れないというのは、こんな情けないことはないので、党にもお願いして次期臨時国会で国内法が成立するよう努力します」(同17日 記者会見で)」(東京新聞平成20年8月17日付朝刊27面)



(1) もっとも、政府側は、「今月末にまとめる総合経済対策の裏付けとなる08年度補正予算案の審議を最優先した会期」にしたのです。要するに、総選挙における国民の目を意識して、共謀罪法案よりもずっと重要な「インド洋での給油活動を延長する新テロ対策特別措置法改正案」さえも、成立への努力はするが「衆院での再可決」といった無理をするつもりはない「会期日程」となったのです。

そうすると、総選挙を意識するならば、自民党側、特に、会期を70日間とする方針を表明した福田首相としては、未だに国民の間に批判が強い「共謀罪法案」成立に向けての積極的な動きは控えるだろう、とは思います。



(2) しかし、共謀罪法案は、現在も衆院で継続審議扱いであり、また、「保岡新法務大臣初登庁後記者会見の概要」(平成20年8月2日(土))を読むと、「共謀罪法案」成立への意欲を語っていますので、注意が必要です。

「【いわゆる条約刑法に関する質疑】
Q:条約刑法に関してですけれども,これまでも国会成立ができないでいて,一方で自民党,与党の方では,修正というか対象犯罪を小さくするような案が与党の方でも進んでいるというような状況の中で,このねじれ国会が続く中で,どういうふうにこの条約刑法を成立させていこうと思われるのか,お考えをお聞かせください。

A:ねじれ国会ですから,基本的に与野党で相談をして与野党の知恵を集めて,国民にとって,国益を果たす意味において,この法律が最もいい形で働くように内容を詰めていくべきだと思います。与党からは修正案が数回出まして,修正案,最終修正案みたいな,何回か出たと思います。これは,共謀罪の成立要件を具体的な事実に結びつけるなどして厳格化するということで提案したと思うのです。野党の方から一定の犯罪に限定する国際的な犯罪とか懲役5年以上の犯罪にしたらどうかという御提言もあります。そういう中で自民党の小委員会の中で検討を進めていますから,そこでの与野党の知恵を生かした案というのが出てきて,また,それについて一定の状況が整えば,それはまた国会に出して民主党や他の野党ともよく相談をして成立を図りたいと思っています。これは,もう国際的にテロ対策とか国際犯罪,組織犯罪とか,それからコンピュータ犯罪とかいろいろなものについて世界的にしっかりしたルールを作って早くまとめないと,世の中はどんどんすごい勢いで進んでいきますから,急を要すると思います。できるだけ早く実現するということが大事だと思います。144カ国の政府は批准している。我が国は,条約の締結について国会で承認していますけれども,そのときは,ほとんどの政党が賛成したと思うのです。そういう経緯もありますし,G8のイタリアやアメリカからは,司法大臣内務大臣会議で「早く頼むよ。」というような期待感が表明されていますし,そういった状況を踏まえてできるだけ早期に法案化して出すということが大事だと思っています。」


保岡法務大臣は、「一定の状況が整えば,それはまた国会に出して民主党や他の野党ともよく相談をして成立を図りたい」「できるだけ早く実現するということが大事」「まえてできるだけ早期に法案化して出すということが大事」と繰り返して述べていますので、要注意であるといえます。

そこで、政府与党による共謀罪法案成立への動きに注意するため、東京新聞平成20年8月17日付26・27面【こちら特報部】の記事を紹介したいと思います。



2.東京新聞平成20年8月17日付26・27面【こちら特報部】

帰ってくる?『共謀罪』 前法相がG8で公約  秋の臨時国会狙う?
2008年8月17日

 「共謀罪」をご記憶だろうか。一昨年、世論を巻き込んだ国会での攻防で成立を阻まれた法案だ。「終わった騒動」とみられがちだが、衆院では継続審議扱いになっている。それが秋の臨時国会で再浮上しそうな状況だ。というのも、先月のG8(北海道洞爺湖サミット)で政府は対外的に共謀罪新設を公約。「衆院での再可決」という機会も総選挙後には可能性が薄いためだ。 (田原牧)

◆継続審議扱い 衆院で続く

 共謀罪法案は政府が「国際組織犯罪防止条約の批准のため」として2004年2月の通常国会に提出後、2回の廃案を経て現在、衆院で継続審議扱いとなる。

 自民党は昨年2月、世論の反発から「テロ等謀議罪」へと衣替えを図ろうとした。しかし、その中身は日本弁護士連合会(日弁連)などの「条約の批准には共謀共同正犯など現行法で十分対応できる」といった指摘には触れず、連立相手の公明党も同意しなかった。

 その後、音無しになっていたが最近、再び新設への動きが見え始めた。昨年9月「G8までには共謀罪の成立を」と表明した鳩山邦夫前法相は望みを果たせないまま、6月のG8司法相・内相会合にホスト役で出席。

 この条約の批准を求める米司法長官に頭を下げ(別項参照)、会合後の記者会見で「早期に批准できるように全力で頑張ります、という努力の誓いをした」と話した。

 実際、この会合の統括宣言、さらに7月のG8首脳声明にも「テロリズムに対する国際的な条約及び議定書の締結及び実施の重要性について強調する」という文言が入った。国際組織犯罪防止条約は元来、テロ対策目的ではないが政府は国際公約を盾に共謀罪新設をあらためて宣言した形だ。

 ちなみにG8に先立つ今年4月、自民党は「世界一安全な国をつくる8つの宣言」を公表。その中でも同条約の「締結に向けた法整備の促進」をうたっている。

 一方、最大野党の民主党は「(共謀罪は)わが国の刑法体系を根底から覆しかねない」「現行法は予備罪、準備罪、幇助(ほうじょ)犯、共謀共同正犯などの形で共謀を犯罪とする措置がとられ、何ら新規立法をすることなく条約を批准できる」(07年のマニフェスト)とし、あくまで新設には反対の立場だ。

 こうした中、事態は今後、どう動くのか。現状はねじれ国会ですべての野党が共謀罪に反対。加えて、総選挙の足音が近づいており、総選挙後に自民党が衆院で3分の2という現有勢力を維持できる可能性は薄い。そうなれば、衆院再可決という荒業も封印される。

 つまり、次期国会を逃せば、民主党が法案修正に応じない限り、共謀罪新設の展望は遠のく。

 今月の内閣改造で森政権時代に法相として裁判員法など司法改革を主導した保岡興治衆院議員が法相、自民党内で共謀罪導入の急先鋒(せんぽう)である早川忠孝衆院議員が法務政務官に就任した政府の“やる気満々”が垣間見える。

 共謀罪法案が帰ってきそうな兆候は、ほかにもある。警察庁の準機関誌ともいえる「警察学論集」6月号には、早稲田大学の古谷修一教授(国際法)が執筆した「国際組織犯罪防止条約と共謀罪の立法化」と題する論文が掲載された。

◆民主党などの主張に反論も

 内容は従来の民主党や日弁連などの主張への全面的な反論だ。「国内的な犯罪について、共謀罪を認めない立法は条約義務と抵触する」「(条約の)第34条2項(国際的な性質と関係なく共謀罪を定める)に対する留保も条約の趣旨及び目的と両立しない」とし、この条約の批准には共謀罪は不可欠と説いている。

 これに対し、関東学院大学の足立昌勝教授(刑法)は「論文では批准には共謀罪か、犯罪団体への参加罪のどちらか一方の新設が不可欠としているが、条約の第5条には『必要な立法その他の措置をとる』とあり、共謀罪や参加罪は措置の例にすぎない。必ずどちらかの新設が必要という意味ではない」と反論。

 龍谷大学矯正・保護研究センターの藤井剛氏は「(前出の)第34条2項は、事件の中身がよく分からない捜査の初期段階では、あえて国際性や越境性の要件を付けなくても構わないという配慮の意味。越境性を付けずに国内法を新設しなくてはならない、という解釈は条約の全体像を見失っている」と批判する。

 こうした論争とは別に共謀罪とともに組織犯罪処罰法改正案に含まれている「サイバー刑法」のみを取り出し、先に成立させる可能性もある。

 今年5月、京都地裁はコンピューターウイルスを作成した大学院生に、著作権法違反などで懲役2年(執行猶予3年)の有罪判決を下した。

 判決直後、国会で早川議員はサイバー刑法部分の切り離しと早期成立を提言した。この動きに日弁連・共謀罪等立法対策ワーキンググループの山下幸夫弁護士は次のように懸念する。

 「この法案では、ある一人のパソコンの差し押さえ令状があれば、同じサーバー(末端使用者の命令を受け、データを返すネットワーク上のコンピューター)に接続する他人の受信メールなどの押収も可能。捜査当局がプロバイダー業者に90日未満の通信履歴の保全を求めることもでき、盗聴社会に似た状況を生む」

 次期国会での共謀罪とそれを含む組織犯罪処罰法改正案の具体的な行方はいまだ流動的だ。

 たしかに国民に不評な共謀罪を焦点にすることには、総選挙を控えた与党内にも慎重論がある。特に公明党に慎重姿勢が強いとみられている。

 しかし、民主党筋によると、7月の衆院法務委員会の海外視察では、自民党委員から次期国会での審議を望む声が出たという。その民主党も来月の代表選後、国会の委員会メンバーが変わりそうだ。委員によっては共謀罪の法案修正に応じる可能性も捨てきれない。

 いずれにせよ、与野党とも総選挙をにらんでの国会運営を強いられる。世論の動向が結論を握っているといえそうだ。


<デスクメモ>

 米国は共謀罪に消極的な州への導入を留保したうえで、国際組織犯罪防止条約を批准した。日本も留保すればいいのだ。ところが、各州を尊重すべき「合衆国」の留保なら構わないが、日本は留保できないと唱える学者がいるから驚く。植民地なみの不公平ではないか。この学者、日本人である。」

 

(1) 幾つかの点について触れていきます。1点目。

「一方、最大野党の民主党は「(共謀罪は)わが国の刑法体系を根底から覆しかねない」「現行法は予備罪、準備罪、幇助(ほうじょ)犯、共謀共同正犯などの形で共謀を犯罪とする措置がとられ、何ら新規立法をすることなく条約を批准できる」(07年のマニフェスト)とし、あくまで新設には反対の立場だ。

 こうした中、事態は今後、どう動くのか。現状はねじれ国会ですべての野党が共謀罪に反対。加えて、総選挙の足音が近づいており、総選挙後に自民党が衆院で3分の2という現有勢力を維持できる可能性は薄い。そうなれば、衆院再可決という荒業も封印される。

 つまり、次期国会を逃せば、民主党が法案修正に応じない限り、共謀罪新設の展望は遠のく。

 今月の内閣改造で森政権時代に法相として裁判員法など司法改革を主導した保岡興治衆院議員が法相、自民党内で共謀罪導入の急先鋒(せんぽう)である早川忠孝衆院議員が法務政務官に就任した政府の“やる気満々”が垣間見える。」


自民党が3分の2という現有勢力を維持できるのは、時期国会が最後です。ですから、その3分の2の勢力を使って「衆院再可決という荒業」を実施する可能性はあるのでしょう。

ですが、共謀罪法案が成立すると「対象犯罪は600以上」ですから、国民の権利自由への大きな制約である刑罰法規につき、しかも厖大な刑罰規定を創設なのです。こうした重い負担を受ける国民の側からすれば、与野党の合意、しかも国民に納得できるような法案であることを望むのが自然な意識のはずです。

それなのに、郵政民営化選挙当時の勢力である、今の衆議院の下で、安易に「荒業」を使って成立させることは、一層、国民の反発を受けてしまい、総選挙において自民党が壊滅の危機に陥る可能性が高いでしょう。自民党が壊滅してまでも、与党側は「荒業」を使うのかどうか、はなはだ疑問ではありますが、国民の側は注視しておく必要があります。



(2) 2点目。

「共謀罪法案が帰ってきそうな兆候は、ほかにもある。警察庁の準機関誌ともいえる「警察学論集」6月号には、早稲田大学の古谷修一教授(国際法)が執筆した「国際組織犯罪防止条約と共謀罪の立法化」と題する論文が掲載された。

◆民主党などの主張に反論も

 内容は従来の民主党や日弁連などの主張への全面的な反論だ。「国内的な犯罪について、共謀罪を認めない立法は条約義務と抵触する」「(条約の)第34条2項(国際的な性質と関係なく共謀罪を定める)に対する留保も条約の趣旨及び目的と両立しない」とし、この条約の批准には共謀罪は不可欠と説いている。

 これに対し、関東学院大学の足立昌勝教授(刑法)は「論文では批准には共謀罪か、犯罪団体への参加罪のどちらか一方の新設が不可欠としているが、条約の第5条には『必要な立法その他の措置をとる』とあり、共謀罪や参加罪は措置の例にすぎない。必ずどちらかの新設が必要という意味ではない」と反論。

 龍谷大学矯正・保護研究センターの藤井剛氏は「(前出の)第34条2項は、事件の中身がよく分からない捜査の初期段階では、あえて国際性や越境性の要件を付けなくても構わないという配慮の意味。越境性を付けずに国内法を新設しなくてはならない、という解釈は条約の全体像を見失っている」と批判する。(中略)

<デスクメモ>

 米国は共謀罪に消極的な州への導入を留保したうえで、国際組織犯罪防止条約を批准した。日本も留保すればいいのだ。ところが、各州を尊重すべき「合衆国」の留保なら構わないが、日本は留保できないと唱える学者がいるから驚く。植民地なみの不公平ではないか。この学者、日本人である。」


記事にでているように、警察学論集第61巻第6号には、古谷修一(早稲田大学大学院法務研究科教授)「国際組織犯罪防止条約と共謀罪の立法化――国際法の視点から――」(143頁以下)という論文が掲載されています。

  イ:その論文では、「国内的な犯罪について、共謀罪を認めない立法は条約義務と抵触する」という主張をしています。その論文では色々とその理由を述べてはいます。しかし、そうした主張は、その論文でも引用されているように、国連が作成した「国際組織犯罪防止条約を実施するための立法ガイド」の「パラグラフ51」に反するように思われます。「この論文が引用している『パラグラフ51』」をそのまま引用しておきます。(訳の仕方も分かれているようなので、論文の記載のものを引用します。)

「51.本条約は、世界的対応の必要性を満たし、犯罪集団への参加行為の実効的な犯罪化を確保することを目的としている。条約第5条は、先に言及したような犯罪化に対する二つの主要なアプローチを同等なものと認めている。したがって、第5条1項(a)()と1項(a)()という二つの代替的オプションは、ある国は共謀に関する法律を持ち、別の国は犯罪の結社(association de malfaiteuts)に関する法律を持っている事実を反映して作成されたものである。これらのオプションは、関連する法概念を持たない国において、――共謀または犯罪の結社――のいずれかの概念〔either notion〕の導入を求めることなく、組織的な犯罪集団に対する実効的な行動を許容するものである。……」(警察学論集第61巻第6号148頁)


この「パラグラフ51」では、「――共謀または犯罪の結社――のいずれかの概念〔either notion〕の導入を求めることなく」としているのですから、文言を忠実に読めば、「共謀または犯罪の結社といった形式で犯罪化が行われなくてもよい」と理解することが素直な理解です。

関東学院大学の足立昌勝教授(刑法)が、「論文では批准には共謀罪か、犯罪団体への参加罪のどちらか一方の新設が不可欠としているが、条約の第5条には『必要な立法その他の措置をとる』とあり、共謀罪や参加罪は措置の例にすぎないとして、「必ずどちらかの新設が必要という意味ではない」と判断する方が無理のない理解のように思えます。


  ロ:また、古谷修一教授の「(条約の)第34条2項(国際的な性質と関係なく共謀罪を定める)に対する留保も条約の趣旨及び目的と両立しない」とする主張も疑問があります。第一、古谷修一教授自身の論文にも、無理がある点が現れています。引用しておきます。

「一般論として、第34条2項に留保を付することが、明らかに条約の趣旨および目的と両立しないと断言できない。(中略)

 ……特定の留保が条約の趣旨および目的と両立するかどうかを判断する権限は、少なくとも第一次的には当該留保を付する国に属する。ある国が許容されると考えて特定の留保を付した場合、次に他の締結国がこの留保が趣旨および目的と両立するかの判断を行うことになる。両立しないと考える国は、条約法条約に基づいて異議の申し立てを行うことになるだろう。したがって、仮に日本が第34条2項に対して留保を付したとしても、他の締結国が異議申立を行わなければ、実質的にはそれが容認されたことになる。その意味では、付された留保の許容性の判断は、事後的にどれほどの数の締結国が、これに対して異議申立を行うかにかかっていると言える。」(警察学論集第61巻第6号161頁)


 
「一般論として、第34条2項に留保を付することが、明らかに条約の趣旨および目的と両立しないと断言できない」ものなのですから、異論を入れる余地がないほど留保できないわけではない、と理解できるのです。古谷修一教授自身の論文によれば。

また、「特定の留保が条約の趣旨および目的と両立するかどうかを判断する権限は、少なくとも第一次的には当該留保を付する国に属する」のであって、「付された留保の許容性の判断は、事後的にどれほどの数の締結国が、これに対して異議申立を行うかにかかっている」のであれば、日本国としては、自国の判断にしたがって第34条2項を留保できると考えて、留保を行うことに何の問題もありません。

米国も、「共謀罪に消極的な州への導入を留保したうえで、国際組織犯罪防止条約を批准」しています。このように米国も、自国に判断にしたがって第34条2項を留保しているのですから、同じ行動を取ることに何も問題はないはずです。古谷修一教授自身の論文によれば、こうした判断が十分に可能なのです。




3.東京新聞の記事を見ると、「古谷修一『国際組織犯罪防止条約と共謀罪の立法化――国際法の視点から――』警察学論集第61巻第6号143頁以下」という論文が、政府案に賛成しているかのようにも思えます。

(1) しかし、東京新聞の記事をみて、もし自民党関係者が「賛同者がいた」と喜んで、古谷教授の論文を見るとしたら、酷く落胆するのではないでしょうか? その落胆する部分を引用しておきます。

 「国際法の視点からの理解は、内閣が当初提出した法律案の問題点も浮き彫りにする。法律案は、実際には条約が要求している義務の範囲を超え、広範に共謀罪を認める形式となっていたことは否定できない。第一に、「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため」という、行為の目的による限定をまったく組み込んでいない。第二に、単に「団体の活動として」と規定するのみで、具体的に組織的な犯罪集団という、条約上も可能なオプショナルな限定をかけていない。第三に、これも同様にオプショナルな限定である顕示行為を要求していない。その後の修正案においては、第二と第三の点は挿入されるようになったが、相変わらず目的による限定は十分に行われているわけではない。もちろん、目的による限定が立法技術的にどこまで細密にできるかは議論の余地があろうが、少なくとも本来は、「国際的な性質」の観点から限定をかける議論をする前に、こうした条約上許容される限定を徹底的に追求すべきであった。

 そもそも、法律案に対する反対が大きく巻き起こった背景は、当初の案がきわめて広範な犯罪について共謀罪を認める構造を持っていたことにある。それは明らかに、国際組織防止条約の純粋な国内実施という目的を超える内容であった。」(警察学論集第61巻第6号162頁)



この論文は、「従来の民主党や日弁連などの主張への全面的な反論」を含んでいます。

しかし、それだけでなく、「国際法の視点からの理解は、内閣が当初提出した法律案の問題点も浮き彫りにする」と政府原案を批判し、与党修正案についても「相変わらず目的による限定は十分に行われているわけではない」と批判的なのです。

古谷修一教授自身は、「内閣提出の法律案には工夫の余地がある」(警察学論集第61巻第6号145頁)といった、政府へのリップサービスとも言える言い回しをしていますが、論文の内容的は「政府案・与党修正案批判でもある」ことは確かなのです。



(2) 「共謀罪法案」の妥当性については、「Because It's There 共謀罪問題」において、何度も問題点については触れてきています。

特に、「共謀罪が始まったら、きっと重大事件の捜査に支障が出てくるね」という現役の刑事さんの発言があるほど(「共謀罪創設の是非~「刑事が反対する理由」(東京新聞平成18年5月18日付)」(2006/05/18 [Thu] 23:32:51)参照)、「共謀罪法案」は、捜査にとっても有害であるのです。そうすると、一体何のために「共謀罪法案」を成立させる必要があるのでしょうか? 

共謀罪法案が成立すれば、犯罪の着手さえなく、予備行為さえもない、共謀段階という犯罪性の乏しい事実の捜査に人員が割かれてしまい、その結果、すでに被害が発生している重大事件の捜査に支障が出ることが予測されているのです。そうであれば、共謀罪法案の成立を目指す必要性はまったくないと、誰が考えても判断できるはずです。

こうした「害悪」を生じさせてまでも、政府が、先月のG8(北海道洞爺湖サミット)で対外的に公約した「共謀罪新設」を実現しようとするのかどうか――。総選挙での投票行動における「決定的な判断材料の1つ」として、臨時国会での政府・与党側の動きを十分に注意する必要があります。



テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
カテゴリー違いで、ごめんなさい。
 春霞さん。お久しぶりです。ジャンルが本エントリと違うのですけど、(最新のエントリということで)ここへTBさせて戴きました。「column11.アフガン復興泥沼」です。伊藤さんの笑顔が胸に痛く、悲しみでいっぱいです。
2008/08/28 Thu 12:02:43
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
>ゆうこさん:2008/08/28 Thu 12:02:43
ゆうこさん、お久しぶりです。TBありがとうございます。折角ですので、こちらも別のエントリーにTBさせて頂きました。


>「column11.アフガン復興泥沼」です。伊藤さんの笑顔が胸に痛く、悲しみでいっぱいです。

アフガンの復興に尽くしている人間を殺害するのですから、アフガンを一層の破滅に導いています。やり切れません。

2008/08/31 Sun 23:19:54
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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