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2008/08/13 [Wed] 06:07:22 » E d i t
日本人夫婦がインド人女性に代理出産を依頼して誕生した赤ちゃんが、誕生を前に夫婦が離婚したことが原因でパスポートがなく、インドを出国できないでいる事件(「代理出産児、インドから出国できず~日本人夫婦が誕生前に離婚したことが影響」(2008/08/09 [Sat] 23:39:06)参照)については、多少進展があったようです。
8月15日付追記:日本への出国に向けた手続きは遅れそうだという記事を追記しました。)


1.報道記事を幾つか。

(1) 時事通信(2008/08/10-22:01)

代理出産の女児、旅券取得に道=出生証明を発行-インド

 【ニューデリー10日時事】インド人女性に代理出産を依頼した日本人夫婦が子供の誕生前に離婚し、生まれた女児の国籍や親子関係が不明なため出国できずにいる問題で、インド当局は10日までに、出生証明書を発行した。これにより女児がインドの旅券を取得し、日本のビザを得て出国できる可能性が出てきた。
 女児が入院中の病院の医師によれば、証明書を発行したのはグジャラート州アナンドの地方自治体。女児の代理人が同自治体に提出していた出生届が受理され、9日に証明書が発行された。
 ただ、証明書の母親欄が空白のため、インドの市民権を得て旅券を取得するのは通常では困難。女児の代理人は、旅券の特例的発行を求め、裁判所に訴えを起こすとみられている。(2008/08/10-22:01)」



(2) 東京新聞平成20年8月11日付朝刊22面

赤ちゃん出国、多難な道のり インド代理出産
2008年8月10日 16時54分

 【ニューデリー10日共同】インド人女性に代理出産を依頼した日本人夫婦が離婚したため、その後誕生した赤ちゃんがインドを出国できないでいる問題で、インド西部グジャラート州の地元自治体は9日、赤ちゃんの出生証明書を発行した。だが日本とインド両国の法律が障壁となり、赤ちゃんの出国実現には多くの困難が予想されている。

 PTI通信によると、出生証明書の父親欄には赤ちゃんの父親である日本人の医師名が記されているが、母親欄は空白になっている。

 現地日本大使館関係者によると、母親名がなければインド国籍は取得できない。また日本では、赤ちゃんは出産したインド人女性と母子関係があると見なされ、日本国籍を持つことはできない。

 そのため出国を可能にするには、特例的にインド国籍を取得した上で、日本への査証(ビザ)を入手するのが最も現実的という。当事者が人道的配慮によるインド国籍の取得をインドの裁判所に要請し、日本大使館に日本査証の発行を求める可能性がある。」



次のような方法で、インドを出国し、日本に入国することになりそうです。

 「インド当局は10日までに、出生証明書を発行した。これにより女児がインドの旅券を取得し、日本のビザを得て出国できる可能性が出てきた。
 女児が入院中の病院の医師によれば、証明書を発行したのはグジャラート州アナンドの地方自治体。女児の代理人が同自治体に提出していた出生届が受理され、9日に証明書が発行された。
 ただ、証明書の母親欄が空白のため、インドの市民権を得て旅券を取得するのは通常では困難。女児の代理人は、旅券の特例的発行を求め、裁判所に訴えを起こすとみられている。」(時事通信)

 「現地日本大使館関係者によると、母親名がなければインド国籍は取得できない。また日本では、赤ちゃんは出産したインド人女性と母子関係があると見なされ、日本国籍を持つことはできない。
 そのため出国を可能にするには、特例的にインド国籍を取得した上で、日本への査証(ビザ)を入手するのが最も現実的という。当事者が人道的配慮によるインド国籍の取得をインドの裁判所に要請し、日本大使館に日本査証の発行を求める可能性がある。」


外国人が日本に入国するためには、一般的には、「日本国査証(ビザ)」を入手する必要があります。もっとも、日本は米国など62ヶ国に関しては査証(ビザ)を免除していますが、インドについて査証を免除していないので、インド国籍者は査証(ビザ)が必要となるのです。

そこで、インドで生まれた子供が日本に入国する方法としては、<1>日本国籍者として、日本政府発行の旅券を取得する方法、<2>インド国籍者としてインド政府発行の旅券を取得し、「日本国査証(ビザ)」を入手する方法があることになるわけです。これらの報道からすると、どうやら<2>の方法をとって、日本に入国することを計画しているようです。




2.この事件は、「日本とインド両国の法律が障壁となり、赤ちゃんの出国実現には多くの困難」(共同通信)となっているのであって、すなわち、国籍(市民権)取得を巡るインド法と日本法の不備から生じた弊害に過ぎず、代理出産固有の問題ではありません。ところが、国籍法の専門家に尋ねたりしないせいか、間違った報道がなされ、間違った見解を吐露する専門家がいるのですから、実に困ったものだと思います。向井・高田夫婦の代理出産を巡る訴訟に関しても、国際民事訴訟法の問題であることが理解されず、間違った報道が続きました。


次に紹介する朝日新聞平成20年8月11日付朝刊1・2面は、全体とすれば良い内容ではありますが、専門家が間違った意見をコメントしているため、その間違いを指摘しておきたいと思います。

代理出産、子の帰国どうなる

 赤ちゃんが日本に帰国できなくなっているインドでの代理出産。日本は国外での実施も禁じているが、法制化進んでいない。インドの制度も未整備で、帰国の見通しは不透明だ。2面」(朝日新聞平成20年8月11日付朝刊1面「目次」欄)




 
2.朝日新聞平成20年8月11日付朝刊2面「時時刻刻」

(1) 現在の女児の状況について。

男性の母が世話、体調は回復

 インド西部のラジャスタン州ジャイプール。女児は今、空港から車で20分の住宅街にある小児科・産婦人科病院に入院している。個室で、日本人男性の母親が女児に付き添う。「一日も早くこの子を連れて日本に帰りたい。自分が元気なうちはしっかり育てていきたい」と訴える。

 7月25日に隣のグジャラート州の小都市アナンドの病院で生まれ、その後、今月3日にこの病院に移ってきた。担当医によると、当初は敗血症などで体調が悪化していたが、今は回復したという。」


女児は、「当初は敗血症などで体調が悪化していたが、今は回復した」ようです。インド出国の時期が不明確であるというよくない事態が続く中、体調の回復は何よりの良い知らせだといえます。インドと日本の法律に不備があろうと、女児には何の罪もないのですから、何よりも女児の養育監護を最優先してほしいと思うばかりです。 



(2) この事件の経緯とインドの代理出産事情について

帰れぬ赤ちゃん 波紋 インド代理出産

 日本人男性の依頼で、インド人女性が代理出産した赤ちゃんの将来はどうなるのか。米国だけでなく、最近はアジアにも広がっていると指摘されていた代理出産。日本で原則禁止される中、今回のケースは、専門家の間でも「想定外」の出来事だった。男性は早期帰国を望むものの、赤ちゃんは「無国籍状態」になっており、見通しは立っていない。
(大岩ゆり、竹石涼子、ニューデリー=小暮哲夫、ジャイプール=高野弦)

◆「独身男性でも、と依頼」

 代理出産を依頼したのは西日本の40代の独身男性だ。「自分の年齢や将来を考え、どうしても子どもがほしいと思うようになった」という。

 最初考えたのは米国での代理出産だった。しかし、2、3ヶ所のクリニックに問い合わせると、「独身者の依頼は受けない」と断られた。ネットで調べ、インドでも代理出産ができるとわかり、インド人の知人に、現地の医師を紹介してもらった。

 男性は昨年6月、代理出産のクリニックを探すためにインドを訪れた。卵子は現地で第三者から提供してもらうつもりだった。秋には不妊治療クリニックが見つかった。紹介されたインド人女性に代理母を依頼。10月に日本で結婚したが、代理出産の計画は進め、卵子提供を受けて、今年7月25日に女の赤ちゃんが産まれた。だが、女性とは誕生前に別れた。男性は「今回のことは私が一人でやったことで前妻は無関係」と言う。

 インドでの手続きは現地の知人にまかせ、男性と代理母を「父」「母」として出生届を出し、インドの市民権を得てパスポートを受け取ろうと考えていた。しかし、日本大使館に相談したところ、女児は代理母夫婦の子どもになるとして、「養子縁組するように」と言われたという。

 さらに今月7日、連絡が入り、「インドでは出生届に遺伝的な父母を記入することになっている。遺伝的な母は匿名の卵子提供者なので母の欄は空欄だ」と伝えられた。9日にインド政府から出生の証明書は出たものの、母の欄に名前がないままだ。

 インドでは、父母のどちらかがインド人でないと国籍が取れない。女児は市民権を得られず、パスポートも出ない可能性が高い。女児の担当医は「日本への入国が認められない場合、卵子を提供した女性に名乗り出てもらい、インド国籍を取得する方法を取ることになるだろう」と話した。

◆高技術・低価格で急増

 代理出産を手がけたナヤナ・パテル医師は、インド国内では知られた存在だ。初めて手がけた04年の代理出産が、実の祖母が代理母になったアジア初の事例で注目を集めた。

 これまで67件の代理出産を手がけ、現在、さらに30人の代理母が妊娠中。2割が海外の夫婦の依頼だという。今回は、日本人が依頼した初のケースだった。代理母は比較的貧しい家庭の主婦たち。夫婦から代理母に出産報酬に25万ルピー(約65万円)、出産までの健康管理費で毎月2千~3千ルピー渡すのが平均的だ。こうした家庭にとって、数年分の年収を受け取ることになる。あっせん業者や代理母に払う費用が5万ドル(約550万円)とも言われる米国での代理出産に比べれば、格段に安い。

 パテル医師は「私は代理出産を社会奉仕ととらえている。不妊に悩む夫婦にも、貧しい代理母の家庭にも幸せをもたらすから」と強調する。

 インドでは代理出産が、同じ技術を使う体外受精とともに盛んになりつつある。インド産婦人科医協会のパイ副会長は、体外受精は現在、年間約4万件実施され、この2年で倍増したと推計。代理出産は05年の約180件から年間約500件に増えたとみる。

 インドには欧米や日本で学んだ医師が多く、医療水準も高いとされる。代理出産に関する法律がないっまま進む現状に、政府機関が04年、代理出産の指針を策定。親権は遺伝上の親にあることを明記した合意書を代理母との間で作成するよう促す。政府は現在、法制化の準備を進めている。

 今回の日本人男性は「インドは独身男性でも代理出産を依頼できる」と聞き、インドを選んだとしている。ただ、パイ氏によると、インド人の独身男性が代理出産で子供をもうけた例が1件あるだけ。「指針は独身男性の依頼を禁じていないが、普通は断る。子供を育てるのが難しいからだ」と指摘する。」



  イ:幾つかの点に触れていきます。1点目。

「インドでは、父母のどちらかがインド人でないと国籍が取れない。女児は市民権を得られず、パスポートも出ない可能性が高い。女児の担当医は「日本への入国が認められない場合、卵子を提供した女性に名乗り出てもらい、インド国籍を取得する方法を取ることになるだろう」と話した。」


インドの国籍法は、原則として父母両系血統主義を採用し、米国のような原則として生地主義を採用していないので、「インドでは、父母のどちらかがインド人でないと国籍が取れない」わけです。

朝日新聞の報道では、特例ではなく、「卵子を提供した女性に名乗り出てもらい、インド国籍を取得する方法を取る」だろうと指摘しています。もちろん、朝日新聞のような方法もあるでしょうが、「女児の担当医」の意見にすぎません。代理出産を依頼した日本人男性の代理人は、時事通信や共同通信が触れたように、「人道的配慮により、特例としてインド国籍の取得をインドの裁判所に要請」する方法を行うことを予定しています。

日本人男性の代理人のみが事案の解決に動く権限を有しているのですから、時事通信や共同通信が示した方法で、事案の解決を図っていると見たほうがよいと思われます。


  ロ:2点目。

「代理出産を手がけたナヤナ・パテル医師は、インド国内では知られた存在だ。初めて手がけた04年の代理出産が、実の祖母が代理母になったアジア初の事例で注目を集めた。

 これまで67件の代理出産を手がけ、現在、さらに30人の代理母が妊娠中。2割が海外の夫婦の依頼だという。今回は、日本人が依頼した初のケースだった。代理母は比較的貧しい家庭の主婦たち。夫婦から代理母に出産報酬に25万ルピー(約65万円)、出産までの健康管理費で毎月2千~3千ルピー渡すのが平均的だ。こうした家庭にとって、数年分の年収を受け取ることになる。あっせん業者や代理母に払う費用が5万ドル(約550万円)とも言われる米国での代理出産に比べれば、格段に安い。

 パテル医師は「私は代理出産を社会奉仕ととらえている。不妊に悩む夫婦にも、貧しい代理母の家庭にも幸せをもたらすから」と強調する。」


インドでの代理出産の是非、インドで代理出産を依頼することの是非について考える前に、インド人女性が置かれている状況について、知っておく必要があります。

記事では、「インドでは代理出産が、同じ技術を使う体外受精とともに盛んになりつつある」とありますが、生殖補助医療の活用自体が盛んです。例えば、インドでは、大々的に出生前診断が実施されているのです。その「出生前診断が大々的に実施されていること」自体が問題の1つともいえるのです。

自然のままでは、生まれてくる子供の男女比(性比)は、106対100なのですが、生まれてくる子供の性比が自然の性比とは異なることが多くの国で報告されています。中国では113対100、韓国では113対100、インドに至っては135対100です。インドでは、子供の性を選択するために、大々的に出生前診断が実施され、胎児が女子だと中絶によって誕生が回避されているのです。調査によると、ボンベイで行われた中絶8000件のうち、7997件が女子だったそうです。インドでは、中絶は女の子を産まないために行われているのです。インドのように、性による差別が厳しく、文化的、伝統的に男の子の出生が強く望まれる国では、生殖補助医療が進んで、胎児の性を知ることができるようになったために、女性は生まれることさえ許されないのです(金城清子『ジェンダーの法律学(第2版)』(有斐閣、2007年)148頁)。

「代理出産児、インドから出国できず~日本人夫婦が誕生前に離婚したことが影響」(2008/08/09 [Sat] 23:39:06)参照)でも触れたように、カースト制度がはびこり、「女性の権利」などはないに等しいインド社会において、貧しいという事は彼女達にとってはほとんど「宿命」です。そこから抜け出す能力(教育)も女だからという理由で充分に授けてもらえず、道も社会により遮断されているのが普通だからです。

こうした状況から、貧困に疲れた貧しい女性達が、手っ取り早く大金を手にする「またとない夢」がこの代理出産であるのです(MediaSabor(ディアサボール)「世界一の成功率─ 代理出産を手がけるインドの女医ナイナ・パテルのいう「子宮の寄与」」(2007/08/30))。

ですから、代理母となった女性は、次のように答えているのです。

「サーバントとして一日150から250円をなんとか稼ぐマンジューラ(30歳)は「私達は貧困に疲れたんです。これがよい人生への最良の道」と膨れたお腹に手を当てて笑う。オートリキシャドライバーの妻で29歳のジャグルティは「これで夫の借金30万円を返済し、彼の商売道具である新しいオートリキシャを買う予定です」と目を輝かす。」


ナヤナ・パテル医師が、「私は代理出産を社会奉仕ととらえている。不妊に悩む夫婦にも、貧しい代理母の家庭にも幸せをもたらすから」と強調するのも、十分に理由があるものと理解できるかと思います。

こうしたインドの社会事情からすれば、インドが代理出産を認めていることは、ベストな方法とはいえないまでも、否定しえないものであって、欧米人や今回は日本人男性が、インドで代理出産を依頼することもまた、否定できないものであることがよく分かるはずです。単に、女性を搾取するものだとして、日本人男性を批判することは、インド人女性の現実を無視したものであって、馬鹿げた批判なのです。


  ハ:3点目。

「インドには欧米や日本で学んだ医師が多く、医療水準も高いとされる。代理出産に関する法律がないっまま進む現状に、政府機関が04年、代理出産の指針を策定。親権は遺伝上の親にあることを明記した合意書を代理母との間で作成するよう促す。政府は現在、法制化の準備を進めている。」


インドでは、代理出産に関する法規制はないのですが、政府機関が04年に代「理出産の指針を策定」し、代理出産を認めました。その運用指針としては、「親権は遺伝上の親にあることを明記した合意書を代理母との間で作成するよう促す」ものになっているわけです。親権の合意をしておくことは、子供の取り合い又は押し付け合いを防止するためでしょう。

記事中でも出ているように、「インドでは出生届に遺伝的な父母を記入すること」になっています。通常は、出産した者が遺伝的にも「母」であるため、インドでも、「出生届に遺伝的な父母を記入する」=「出生届に出産した母とその夫を記入する」となるはずです。ただ、非配偶者間人工授精(AID)や代理出産のように出産による親子関係、遺伝的な親子関係、法律上の親子関係という3者は異なることがあるという事実を直視した、極めて現実的な運用を行っているのです。

なお、日本では、出生届に子供を出産した女性を「母」として記入することになっている(いわゆる「分娩者=母ルール」の採用)ため、出産による親子関係、遺伝的な親子関係、法律上の親子関係という3者は異なることがあるという事実に目を背けた運用を行っています。



(3) この事件に対する専門家のコメントについて。

◆日本 法規制論議の想定外 容認派専門家も批判

 「今回の代理出産は、あまりに安易に実施された」。今年4月に代理出産を原則禁止とする報告書をまとめ、国に提出した日本学術会議の検討委員会の委員長だった鴨下重彦・東大名誉教授は話す。

 報告書では、子どもの福祉や代理母への身体的負担から医学的、倫理的に認められないとし、あっせん業者、医師、依頼者を法的な処罰対象とした。国外への「代理母ツーリズム」にも言及し、海外での実施例も同様に罰するとの立場を示している。

 ただ、検討したのは依頼者夫婦の受精卵を使った場合のみで、今回のように第三者の卵子を使った代理出産は問題が多すぎるとして、そもそも議論の対象から外していた。

 さらに、子宮がないなど厳格なルールのもとに、将来、限定して代理出産を実施する可能性を残したが、この条件にもあてはまらない。鴨下氏は「今回は、第三者からの卵子提供といい、インドの貧しい女性を出産の道具として使った点からも問題だらけだ」とする。

 これまで代理出産を容認してきた専門家も批判する。

 早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は「夫婦ともに、親として適正かなどを確認したうえでなら、認めて良いと訴えてきた。生まれる子どもが幸せになることも条件だ。しかし、貧富の差を背景とした子宮レンタルのような今回の例は論外で、想定外だ」と話した。

 棚村氏が代理出産について調べたところ、世界で法的に禁じているのは27ヶ国。国か州レベルで容認しているのは19ヶ国だ。認めるにあたって、どの国も基本は「依頼者夫婦の同意」が前提になっている。

 また、最近は米国人がイスラエルに、英国人がインドに行くケースが増えているという。ただ、法整備は進まずパスポートの取得などの基準もあいまいだ。中国、韓国、台湾も表向きは禁止だが、実態が先行。韓国などでは日本人夫婦からの依頼があるという。

 生まれた女児の扱いについて、外務省外国人課は「まだ事実関係で不明な点が多い」とし、情報収集をしている段階だという。

 無国籍や、パスポートがなくても日本に入国できるのか。

 同課は「外国で災害などに遭い、パスポートを失った日本人に一時的に『渡航証明書』を出して帰国できるようにすることはあるが、今回がそのケースに当てはまるかどうかも不明だ。法務省とも協議しながら、事実関係が明らかになった後、検討したい」と話した。」



  イ:全く酷いコメントばかりです。1点目。

「「今回の代理出産は、あまりに安易に実施された」。今年4月に代理出産を原則禁止とする報告書をまとめ、国に提出した日本学術会議の検討委員会の委員長だった鴨下重彦・東大名誉教授は話す。

 報告書では、子どもの福祉や代理母への身体的負担から医学的、倫理的に認められないとし、あっせん業者、医師、依頼者を法的な処罰対象とした。国外への「代理母ツーリズム」にも言及し、海外での実施例も同様に罰するとの立場を示している。

 ただ、検討したのは依頼者夫婦の受精卵を使った場合のみで、今回のように第三者の卵子を使った代理出産は問題が多すぎるとして、そもそも議論の対象から外していた。

 さらに、子宮がないなど厳格なルールのもとに、将来、限定して代理出産を実施する可能性を残したが、この条件にもあてはまらない。鴨下氏は「今回は、第三者からの卵子提供といい、インドの貧しい女性を出産の道具として使った点からも問題だらけだ」とする。」


日本学術会議の検討委員会の委員長だった鴨下重彦・東大名誉教授は、今回の事件が、「第三者の卵子提供」による代理出産であったことから、「問題」だと非難しているようです。検討委員会でも、「第三者の卵子を使った代理出産は問題が多すぎるとして、そもそも議論の対象から外していた」のですから、問題視することも、理解できなくはありません。

しかし、第三者の卵子提供による代理出産の事例は、すでに裁判所は、最高裁平成17年11月24日決定として判断を行っているのですから(「代理出産(代理母)による法律関係~大阪高裁平成17年5月20日決定全文(50代夫婦の双子代理出産事件)」(2006/10/14 [Sat] 02:33:29)参照)、問題だと非難するのもいまさらな感じですし、第三者の卵子提供による代理出産の事例で最高裁判例がでているのに、「そもそも議論の対象から外していた」こと自体、間が抜けていたといわざるを得ません。

元々、第三者による卵子提供の問題は、代理出産だけでなく、第三者からの提供卵子による体外受精(不妊治療)でも問題とされていたのです。全国21の不妊治療施設で作る「日本生殖補助医療標準化機関(JISART)」は、本産科婦人科学会や厚生労働省に対し、卵子提供による不妊治療の実施を承認するよう申し入れ、日本学術会議の検討委員会でも、委員の吉村泰典・日本産科婦人科学会理事長らが、卵子提供の是非を審議するよう再三の要望を行ったのに、結局ほとんど審議しませんでした。代理出産希望者数よりも、ずっと卵子提供の希望患者数が多い事実が分かっていたのに(「友人姉妹による提供卵子の体外受精、不妊治療の団体が実施へ」(2008/02/21 [Thu] 23:25:36))。

日本学術会議は、「代理懐胎が生殖補助医療として容認されるべきか否かなど、代理懐胎を中心に生殖補助医療をめぐる諸問題について、従来の議論を整理し、今後のあり方等について調査審議を行う。」はずでした。それなのに、審議要請に沿った審議は代理出産(ただし、第三者による卵子提供の場合は議論せず)の場合だけだったのですから、結局、日本学術会議は審議要請を果たさなかったのです。

日本学術会議は、第三者の卵子提供の問題すべて議論を怠り、結論を出さなかったのですから、今回の事件について問題視する資格がないというべきです。

鴨下氏は「インドの貧しい女性を出産の道具として使った点からも問題」としています。しかし、すでに「代理出産児、インドから出国できず~日本人夫婦が誕生前に離婚したことが影響」(2008/08/09 [Sat] 23:39:06)でも述べたように、インドの経済事情・宗教事情を無視した批判であって、妥当ではありません。


なお、鴨下氏の発言ではないですが、朝日新聞は「子宮がないなど厳格なルールのもとに、将来、限定して代理出産を実施する可能性を残したが、この条件にもあてはまらない」として、この点でも問題視しています。しかし、日本法上のルールの適用は、日本国の主権の及ぶ範囲に限られるのですから、日本国内に限定されるのです。ですから、いくら日本において「子宮がないなど厳格なルール」があるからといっても、日本国の主権が及ばないインド国内で実施された代理出産なのですから、日本のルールが適用されるはずがないのです。ですから、今回の事件について、日本での「条件にもあてはまらない」からといって問題視すること自体、馬鹿げているのです。


  ロ:2点目。このコメントも酷いものです。

「早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は「夫婦ともに、親として適正かなどを確認したうえでなら、認めて良いと訴えてきた。生まれる子どもが幸せになることも条件だ。しかし、貧富の差を背景とした子宮レンタルのような今回の例は論外で、想定外だ」と話した。」



どうやら「夫婦ともに、親として適正かなどを確認したうえでなら、認めて良いと訴えてきた」のに、今貌の事件は、その条件に反していると主張しているようです。しかし、すでに述べたように、日本においての代理出産に関する条件を定めたとしても、日本国の主権が及ばないインド国内で実施された代理出産なのですから、日本での条件が適用されるはずがないのです。インドで実施された代理出産なのですから、これは、純粋にインドの国内問題なのです。ですから、今回の事件について、「日本での条件に反する」からといって問題視すること自体、馬鹿げています。

棚村政行教授は、代理出産を肯定するには、「生まれる子どもが幸せになることも条件」にしています。しかし、代理出産によって生まれた子供が不幸になる蓋然性が通常よりも高いとは言いにくいのですし、幸・不幸を問うのは、法規制の問題ではなく、倫理の領域ですから、妥当ではありません(辰井聡子「『生命倫理法』論議の争点と作法」ジュリスト1359号(2008年7月1日号)62頁)。

「貧富の差を背景とした子宮レンタルのような今回の例は論外で、想定外」とも述べています。しかし、インドの経済事情・宗教事情を無視した批判ですから、「今回の例は論外」と言い捨てることは妥当ではありません。また、(日本から米国へ行く場合に関して)米国では実施が事実上困難で、しかも日本での実施は事実上禁じているのですから、インドや韓国へ代理出産の依頼を行う日本人夫婦が出てくることは、十分に「想定内」のことでした。


  ハ:3点目。

「無国籍や、パスポートがなくても日本に入国できるのか。

 同課は「外国で災害などに遭い、パスポートを失った日本人に一時的に『渡航証明書』を出して帰国できるようにすることはあるが、今回がそのケースに当てはまるかどうかも不明だ。法務省とも協議しながら、事実関係が明らかになった後、検討したい」と話した。」


この問いと回答は、かなり省略されているようです。すなわち、インドから、(将来日本人となる可能性が高い者だからとして)無国籍のまま出国し、またはインドからインド政府発行のパスポートがなくて出国できたとしても、日本に入国できるのか(=「日本国査証(ビザ)」を発行するのか)との問いであったと思います。

これに対して、外務省外国人課は、パスポートを失った日本人に一時的に『渡航証明書』を出して帰国できるようにすることはあっても、将来日本人となる可能性が高い者だということであっても、いまだ日本国籍がないままなら、同様の扱いは「不明=困難」だといえる、だから、法務省と協議して他の方法を探るしかないと、と答えたのだと思います。




3.今回の事件において、最も重要なことは何でしょうか?

(1) 今回の事件は、インドで実施された代理出産ですから、インドの国内問題です。ですから、日本での代理出産の是非の議論は無関係なのです。しかも、肝心なことは、代理出産によって生まれた子供が存在しているということであって、インド法と日本法の不備から、インドを出国できず、養育監護が不十分な状況におかれているということなのです。

代理出産によって産まれた子供であろうと無かろうと、子供にとって最も必要なことは、子供当事者の利益を守ること、すなわち、適切な養育監護が行われることです。今回の事件においても、誰がどこで養育監護することが、子供にとって最も適切なのかが重要なのです。

今回の事件では、卵子提供者は匿名であり、代理母であるインド人女性も出産後、契約通り女児を病院に残し帰宅しています。そして、日本人夫婦のうち、元妻は離婚後、女児の引き取りを望んでいませんし、他方で、元夫の母親(70)が現在病院で女児に付き添っており、元夫は女児の引き取りを望んでいるのです。

こうした事実からすれば、養育監護する意思のある者、日本人の元夫が養育監護を行い、(元夫を親として権利義務を定めて)日本に女児を連れ帰ることが、女児にとって最も妥当であるといえるのです。



(2) 代理出産にいくら反対であるとしても、他国であるインド政府が公認している代理出産を妨害し、非難することは困難です。インド社会での女性を救済する手段を講じることなく、「女性の搾取に日本人が加担していることは悲しむべきこと」(水野紀子・東北大教授)と非難したところで、今、世の中に存在している女児の保護を図ることにはならないのです。

今回の事件を巡り日本での代理出産の是非を議論し、日本人男性医師への批判に血道をあげることなんて、女児の保護にとっては実に無意味なことです。市民は、無意味なことに精力を注がないで、「女児の保護(養育監護)のため、インドからの出国を認め、日本への入国を認めるべき」と両政府に要請することこそ重要である、と考えます。




<8月15日付追記>

日本への出国に向けた手続きは遅れることになりそうです。

(1) 朝日新聞平成20年8月14日付朝刊30面

代理出産の子、日本への出国禁止求め提訴 インドNGO
2008年8月13日20時8分

 【ニューデリー=小暮哲夫】日本人男性の依頼でインド人女性が代理出産した女児を日本へ連れて帰れない問題で、インド西部ラジャスタン州の非政府組織(NGO)が、インド政府や州政府を相手取り、日本への出国を禁じるよう求める訴訟をラジャスタン高裁に起こした。

 同州で孤児の福祉などに取り組むNGO「サトヤ」が11日に提訴した。女児の日本への出国を禁じ、保護のため同NGOに引き渡すよう求めている。高裁は12日、インド政府と州政府に4週間以内に女児を出廷させ、この問題への対応を説明するよう命じた。

 訴状などによると、NGOは、インドには代理出産と生まれた子供の親権に関する法律がないと指摘。その上で、男性が女児に付き添っておらず、卵子提供者も親権を放棄しており、「日本で子供が虐待される可能性が否定できない」と主張している。今回の代理出産自体も「商業目的の違法な取引」と批判した。」



(2) 東京新聞平成20年8月14日付朝刊28面

赤ちゃん出国禁止求め提訴 インド代理出産でNGO
2008年8月13日 17時35分

 【ジャイプール(インド西部)13日共同】日本人夫婦がインド人女性に代理出産を依頼して誕生した赤ちゃんが、夫婦の離婚が原因でインドを出国できないでいる問題で、同国西部ジャイプールの非政府組織(NGO)は13日までに、代理出産に関する法律がインドにないことを理由に、この赤ちゃんの国外連れ出しを禁じるよう求め地元裁判所に提訴した。

 裁判所は地元州行政当局などに対し、国外連れ出しの可否などについて説明するよう命令した。裁判が決着するまで赤ちゃんはインドに留め置かれる可能性が高まり、日本への出国に向けた手続きは遅れそうだ。

 13日付の地元紙などによると、NGOの申立書は、代理出産で誕生した子供の外国への引き渡しはインドに関連法律が存在しないため「人身売買」に当たると指摘。代理出産した女性や、依頼した日本人男性医師らの誰も親権を主張することはできないとしている。

 また、NGOは代理出産を数多く手掛けている西部グジャラート州の医師らが、法律がないことを悪用して子供を違法に国外に売り渡し、巨額の利益を得ていると非難している。」


欧米各国の夫婦がインドで代理出産を行っていて、インド政府が代理出産を公認しているのに、なぜ、この事件について、NGO「サトヤ」が裁判所に提訴したのでしょうか。

女児の保護は大事であることは確かですが、女児の保護につき、「サトヤ」はNGOという民間組織にすぎないので、女児の養育監護について何ら法的権限がないのです。ですから、「保護のため同NGOに引き渡すよう求めている」点は、日本人男性医師が日本に連れ帰る以上に根拠がないのです。NGO「サトヤ」の行動は、本音は女児の保護ではないのではないか、との怪しさを感じます。


テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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