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「「公」の支え 作り直す時
日本がかつてない少子高齢化社会に向かう中で、「公」のほころびが広がっています。医療や年金制度は揺らぎ、都市と地方、正社員と非正社員など様々な格差は深刻になるばかり。その一方で、税金のむだ遣いは後を絶ちません。
困った時の支えとなるのが「公」の役割だったはずです。そんな機能が失われた今の日本を、私たちは「公貧社会」と名付けました。
新たな成長の道を探りつつ、財政や社会保険の「負担と受益」を大胆に見直し、NPOや企業も参加した新たな支え合いの仕組みを作り直す時です。長期連載の第1部「千葉・東京ベイエリア」は、戦後日本の発展を象徴する東京湾岸地帯が舞台です。急速な高齢化が見込まれるこの一帯で「公」のほころびの現場を歩き、再生の道を探る作業を始めます。(経済政策エディター・高橋純一)」(1面)
この朝日新聞の記事を、一部紹介しておくことにします。
(1) 朝日新聞平成20年7月12日付朝刊1面「公貧社会 支え合いを求めて」
「通勤バス 派遣村行き 34歳、倉庫転々10年
2008年7月12日3時1分
東京駅から湾岸沿いを走るJR京葉線で十数分。東京ディズニーランドをすぎ、ほどなくホテルや高層住宅に囲まれた新浦安駅に着く。
朝、バスロータリーから改札へと向かう出勤の人波に逆らうように、ジーンズをはき、昼食を入れたコンビニ袋をもつ一群が降り立つ。向かうのは、ロータリーから道路一本隔てた小公園の前の、もう一つの「バス停」だ。次々とやって来る送迎バスに乗り込んでいく。
バスの行き先が、さながら「派遣の村」だと聞いて、記者も乗った。
50人近くいるだろうか。黙って外を見たり、携帯電話のゲームに没頭したり。前方を見ると、「飲食は禁止。破ったら即解雇」の注意書きが目に飛び込んできた。
全国の市町村の中で屈指の財政力を誇る千葉県浦安市の中でも、街路樹にヤシの木が並ぶ高級感あふれる住宅街を、バスは走っていく。10分もたたないうちに風景が一変した。着いたのは、工場や倉庫が立ち並ぶ、通称「鉄鋼団地」の一角だった。
バス乗り場で知り合った市川市の男性(34)は10年近くこの一帯で働く。いまは、中古パソコンを集めて再び商品にする大手ショップの倉庫が職場だ。月に何千台と運び込まれる中古品を初期化し、清掃して出荷する。100人近い従業員の半数が派遣で、20〜30歳代が多い。男性はネットで販売する商品を写真に撮り、機種や機能の説明文を打ち込む。
ナットやボルト、薬、お菓子、缶詰……。様々な商品の倉庫を転々としてきた。仕事はいつも、必要な量を集めて運ぶだけの単純作業。「誰でもできる。なんの技術も身につかない」。時給は今、1千円。3年かけて150円上がった。残業していると、ディズニーランド閉園前の恒例の花火の音が聞こえてくる。「もう何年も行っていない。別世界ですね」
毎月の手取りは十数万円。「年金暮らしの両親と実家で同居しているから何とかやっているけど……」と不安を漏らす。
6月下旬、中学、高校の同級生十数人が集まった。正社員は1人だけ。「何かいい仕事ない?」「そろそろ年齢的にやばいよね」。こんな会話をかわしていると、正社員のはずの友人がおもむろに口を開いた。「会社が倒産してね……。夜、コンビニで働きながらハローワークに通っているんだ」
新浦安駅からJRで東へ二つ、西船橋駅の駅前では、別の男性(43)がぼんやりと地べたに座り込んでいた。派遣会社の送迎バスが出る集合場所。この日は仕事にありつけなかった。
「ネットカフェ難民」生活が2年になる。黒のリュックには着替えのシャツとサングラス、文庫本。これが全財産で、所持金は2円。
丸2日間、水分しかとっていないという。「今日は金曜。土日は仕事が少ないから、死んでしまうかもね」
千葉・東京湾岸沿いの浦安、市川、船橋などで「派遣の村」が目立ち始めたのは、世界規模の競争が本格化した90年代後半。ここの働き手たちの「悲惨な未来」のシナリオが4月末、派遣仲間やインターネットで波紋を呼んだ。
「就職氷河期世代は65歳になると、10年前の世代より生活保護を受ける人が77万人増える。亡くなるまでに受ける保護費は計17.7兆〜19.3兆円増」。財団法人、総合研究開発機構(NIRA)の試算だった。1年あたりの増加額はざっと8千億円。
大競争時代を迎え、欧州などは次世代を担う層の技術習得支援などに力を入れた。一方で日本は、安い労働力を求める企業に歩調を合わせて規制緩和を加速し、正社員から非正規社員への置き換えが進んだ。
政府・与党はようやく「日雇い派遣禁止」などに動き始めた。が、足元では、NIRAの試算を先取りするかのように、「生活保護の村」が次々と現れている。」
(2) 朝日新聞平成20年7月12日付朝刊3面
「千葉・東京ベイエリア(1) 「生活保護村」NPO頼み
正社員、派遣、そして「ここまで落ちるとは」
夜、静まり返った駐車場。車の席に横になると、情けなくて涙が出てきた。見上げると、11階建ての公団住宅の、昨日まで住んでいたその部屋だけ明かりがなかった。
千葉県船橋市生まれの女性(41)が日雇い派遣から車上生活に転落したのは06年6月末だった。
あれから約2年。今、仮の住居は房総半島のコンビナート地帯、市原市内の元ビジネスホテルを改造した「SSS市原荘」だ。湾岸地帯に急増する「生活保護の村」の1つだ。
「Social Security Service」(社会保障サービス)と名乗る、ホームレスの自立・就労支援のNPOによる「一次宿泊施設」。女性は、夫婦2組を含む25歳から87歳までの約70人と住む。すえ付けのベッドや小型テレビのほか、カーテンで間仕切りし、本立てを兼ねた収納ボックスを置いて、それぞれの「小さな生活」があった。SSS市原荘を紹介された。
もともとは、パチンコチェーン店で正社員の主任だった。「組織改革」を理由に退職かアルバイトになるかを迫られ、人生が一変した。「ちょっとしたきっかけで、ここまで転げ落ちるとは……」
SSS市原荘での生活もはや1年。市の職員が毎月1回、住民全員の生活保護費を届けに来る。女性は、生活保護給付から家賃や食費など計8.8万円を払い、手元に残るのは数万円。「体さえよくなったら、働き口を探して早くここを出たい」。毎月500円、1千円と貯金しながら病院に通う。
■ ■
1月に野宿生活から移ってきた夫婦も、湾岸の「派遣の村」からの転落組だ。
居酒屋チェーンの調理センターで、夫(48)は材料や製品の運搬作業、妻(53)は調理補助の仕事をしていたが、公団の家賃や携帯料金が払えなくなり、船橋市内の公園で生活し始めた。ちょうど1年前だった。
公団時代と野宿生活の時に計3度、窮状を訴えに区役所などに出かけた。「働いて家賃滞納分を分割で返すから、といっても信用されなかった。生活保護はと尋ねても、嫌な顔をされるだけだった」。ハローワークも訪れたが「年齢でいつもひっかかる。たまに面接まで進んでもダメ。ここに入れなかったら、今ごろどうなっていたか」。
SSSは、路上生活者らに雨露をしのぐ場所と生活保護を受けるための「住所」を確保しようと、企業が手放した社宅や寮を安値で購入したり賃借したりしている。「住民」の約6割が、入所直前には派遣や日雇いなど「不安定な雇用」の状態だという。最近は20〜40歳代が急増。施設の数は千葉県内だけでも20に増え、計860人が住む。首都圏では131施設。4350人に膨れ上がった。
「専門家は、今のスタッフ数や体制で受け入れるのは限界だと言う。だが、目の前に困窮者がいるのに、手をさしのべないわけにはいかない」。SSSの臼井大悟理事長はいう。
サラ金などの処理や就労支援、家庭内暴力に傷ついた母子の引き取り、退院しても行き場所がない老人の「社会的入院」の代替場所……。支えのない人たちの「駆け込み寺」は、他のNPO運営分を含めて千葉で46施設。「派遣の村」に寄り添うように湾岸地域に集中する。
「迷惑施設」と言われたり、安定して入る生活保護費を当て込んだ「ビジネス」だと見られたりすることもある。しかし、財政難の自治体はNPO頼み。「法外な費用をとるなどの事例も一部にあったことは確か。でも、自治体も予算がない。SSSなどに頑張ってもらい、連携していくしかない」。千葉県の担当者はこう言う。
国や自治体といった「官」と、NPOなどの「民」がどう役割分担し、「公」を支えていくのか。理念を欠いたまま、なし崩し的に現実だけが進む。(以下、省略)」
(3) 朝日新聞平成20年7月12日付朝刊13面
「本社・千葉大共同アンケ よき生活へ負担覚悟も
千葉・東京湾岸に住む人たちは、社会の「支え合い」をどう考えているのか。朝日新聞社は千葉大・広井良典教授の研究室と共同で、世代や地域が異なる3つのグループにアンケートした。おおむねどのグループも支え合いを求めており、それには負担増をもいとわない傾向が見て取れる。支え合いの主体として期待するのは国や自治体で、それだけに不満や注文は多い。(以下、省略)」
2.「丸2日間、水分しかとっていない」者、パチンコチェーン店で正社員の主任だったのに「日雇い派遣から車上生活に転落」、「居酒屋チェーンの調理センターで、夫(48)は材料や製品の運搬作業、妻(53)は調理補助の仕事をしていたが、公団の家賃や携帯料金が払えなくなり、船橋市内の公園で生活」……。こうした人達は、ごくごく少数というのではなく、こうした人たちが住んでいる「施設の数は千葉県内だけでも20に増え、計860人が住む。首都圏では131施設。4350人に膨れ上がった」状態です。
こうした人達への救済を手をさしのべるのは、国や自治体ではなくNPOだけであり、「限界」の状態ですから、今後救済の手からこぼれた人達はどうなるのかと想像するのも恐ろしい思いがします。このように、正社員という「身分」を失い、又は得ていない者が、転がるようにどんどん生活が困窮していく様子を読んでどのように思ったでしょうか。
(1) 思わず涙した方かもいるかもしれません。
反対に、「転落するのは自己責任である」、「格差は自己責任である」のであって、少しもおかしいとは思わない方もいるでしょう。その考えは、高い収入が得られるのはその人の能力が高いからで、逆に、低収入なのはその人の能力が低いからだ、納涼の高い低いは自己責任だから、収入の高い低いは自己責任だ、というものです。今の日本社会ではよくある考えの1つではあります。
しかし、「能力の自己責任」は妥当とはいえません。なぜなら、その人の能力は、もともと自分一人で獲得したものではなく、人類の知識の蓄積を学び、社会に助けられて獲得したものなのに、「自己責任」の思想は、自分の能力は自分だけのもので、それを使って得た収入は、全部自分のものと、頭から決めてかかるものだからです。
また、「自己責任の思想」は、もって生まれた素質や生育環境が悪く、能力が低くても、それは本人の自己責任だと主張するものです。しかし、素質も環境も本人の責任ではないことは明らかですから、これは、「運が悪い」ことにも責任を取れ、というに等しい主張です。
「自分の功績でなくても自分のものだと主張し、他方では、責任をとれないことにも責任をとらせる」、これは実に理不尽な思想というべきです(後藤道夫・木下武男『なぜ富と貧困は広がるのか―格差社会を変えるチカラをつけよう」(旬報社、2008年)74頁)。
(2) 朝日新聞平成20年7月12日付朝刊13面掲載のアンケートには、次のようなコメントがありました。
「船橋・習志野台団地に住むお年寄り。完成直後に入居し、約40年住み続ける○○さん(73)は若者たちの格差を気遣う。「派遣社員の若者が、私の年になったら……。今よりもっと大きな格差が現れると思うと、絶望さえ感じる」
「団地自治会の事務局長を務める△△さん(70)は、格差を放置することは、企業や国が自らの首を絞めることだと感じる。「貧しさから購買力が衰えれば、結局モノが売れなくなる。日本の経済そのものがおかしくなるんじゃないか」」(氏名は○○△△に置き換えた。)
非正規雇用者の賃金は、(派遣会社がピンハネするマージン率3、4割ではなく、5、6割さえもあるため)極めて低額のままであり、そうした非正規雇用者の割合が過去最高の35.5%に達しているのです(「就業構造、非正規就業者の割合が過去最高に〜非正規雇用の女性の実情に目を向けていますか?(東京新聞平成20年7月7日付より)」(2008/07/09 [Wed] 06:54:51)参照)。こうした低収入層の広がりは、消費者が消費を抑えることに繋がることは明らかです。すでに、コンビニでは、顧客が必要なものしか買わなくなっている(コンビニ側の報告)とか、自動車が売れなくなっているという結果として出ています。
もちろん、派遣社員の若者が老後を迎えると、生活保護受給者にならざるを得ないのですが、そうなると、シンクタンクの総合研究開発機構による試算では、「追加的な財政負担が累計で20兆円に上る」と報告されています(東京新聞平成20年6月25日付朝刊3面)。
こうした弊害はもっと広がっていくことは必至なのに、まるで理解することなく、非正規雇用者の拡大・低収入層の拡大に突き進んでいるのが日本企業や国です。日本企業や国は、「自らの首を絞めている」ことが分からないのです。
秋葉原殺傷事件を切っ掛けとして政府は、非正規雇用対策を含めた包括的な社会保障対策を打ち出す方針のようです。しかし、今の自民党政府では、本当に効果的な方策を打ち出すことができるのでしょうか。極めて疑問です。
他方で、日本企業の側(特に、秋葉原殺傷事件が生じる切っ掛けとなった、社内イジメを行った「関東自動車工業」)は、何も反省することなく非正規雇用者の改善策を打ち出していません。安い労働力を求めるばかりの日本企業は、いつ目覚めるのでしょうか。
★SSS・川越寮の、いかすホームレス
★ホームレスが投票 野宿者にも国政参加権を与えよ
●第二次SSS訴訟●控訴棄却判決
●第一次SSS訴訟 控訴棄却
>福祉ヤクザSSSを擁護する朝日新聞
情報ありがとうございます。
確かに、朝日新聞は記事中でも、「生活保護給付から家賃や食費など計8.8万円を払い、手元に残るのは数万円」と記載していますから、本来なら、SSSはかなり高めに請求しているのではないか、と疑念を抱き、注意する必要があったように思います。
>●第二次SSS訴訟●控訴棄却判決
>●第一次SSS訴訟 控訴棄却
流浪の民の乱さんのHPでしょうか、↓をざっとみて「第二次SSS訴訟」の訴状や判決書を拝見しました。
http://suihanmuzai.web.infoseek.co.jp/sss-soushuhen001.jpg.html
SSS訴訟についてですが、残念な結果に終わり、さぞがっかりされたことと思います。ただ、法律的な観点から、あくまで第三者の立場からみるとと、色々と主張したことから、主張が散漫な感じになって、うまく裁判所に伝わらなかったように思います。色々主張したいお気持ちはあるとしても、うまく伝える工夫が必要であったように思います。
流浪の民の乱さんのHPでしょうか、↓での「さくらハウス事件」の報道記事を読むと、寮に住む方からかなりの高額の寮費をとっているのではないか、と問題視しています。
http://suihanmuzai.web.infoseek.co.jp/sakurahouse.jpg.html
寮の運営にかかる収支(人件費、食費、税金などの経費、寮での待遇など)を知らないと正確なことはいえないのですが、生活保護を受けている者が「高い寮費ではないか」と非難するのも無理はない額だとは思います。その点では、誰に対しても正当な主張であると認められそうだったのです。もっと法的なアドバイスを受けてから、裁判を起こすべきだったように思います。
「NPO法人」という名称は、世間には受けがいいようです。ですが、今回のように、中身は、「生活保護を受けている者を食い物にしているのではないか」といったような、あくどいNPO法人がかなりあると聞いています。誰もがあくどいNPO法人に気をつける必要があるように思います。
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