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2008/06/25 [Wed] 22:50:16 » E d i t
イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、第3管区海上保安本部(横浜)は6月24日、あたご側が動静監視を怠り、回避動作が遅れたのが原因で事故を招いたとして、業務上過失致死と業務上過失往来危険の容疑で、衝突時と衝突前の当直責任者だった3等海佐2人を書類送検しました。衝突時が前水雷長の長岩友久3佐(34)で、衝突前が前航海長の後潟桂太郎3佐(36)です。

海上保安大学校(広島県呉市)の鑑定で、あたごは、衝突直前に右転した清徳丸の左舷後方から40-50度の角度で、減速が間に合わずに衝突したことが判明し、そこで、3管本部は、回避が大幅に遅れたあたご側の過失が裏付けられたと認定しました(共同通信)。
6月27日追記:「あたご側、十数秒前に気づく」との毎日新聞の記事を引用しました。)



1.報道記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成20年6月24日付夕刊1面【社会】

あたご2士官書類送検 イージス艦事故 『監視不徹底主因』
2008年6月24日 夕刊

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、第三管区海上保安本部(横浜)は二十四日、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで、衝突直前に当直士官を交代した前航海長の後潟(うしろがた)桂太郎三佐(36)と、衝突時の当直士官だった前水雷長の長岩友久三佐(34)を書類送検した。三管本部は、両者が見張りやレーダーの監視を徹底せず、回避が大幅に遅れたことが事故の主因として過失を認定。後潟三佐は引き継ぎも不適切だったとした。 

 調べでは、あたごは事故当日の二月十九日未明、千葉県・房総半島沖を約十ノット(時速約十八キロ)で北上。後潟三佐は同日午前三時四十分ごろ、右前方に清徳丸を含む漁船団を視認し、衝突の危険を予測できたにもかかわらず、継続的な監視を怠って航行を続け、長岩三佐に「衝突の危険はない」と不適切な引き継ぎを行った疑い。

 長岩三佐も、漫然と直進を続け、回避行動を取らずに、同四時六分に清徳丸と衝突し、船長の吉清(きちせい)治夫さん=当時(58)=と長男哲大(てつひろ)さん=同(23)=を死亡させた疑い。長岩三佐は衝突直前に後進命令を出したが、ほとんど減速しないまま衝突。清徳丸は衝突直前に右にかじを切っていたが、よけきれなかった。

 三管本部は、二士官の認否について「供述内容にかかわるので差し控える」として発表しなかった。

 船渡健前艦長(53)については、事故当時は仮眠中で直接操艦に携わっていなかったとして、送検を見送った。清徳丸側も業務上過失往来危険容疑での書類送検を検討したが、操船者が特定できず見送った。」



(2) 朝日新聞平成20年6月24日付夕刊15面(13版)

当直士官2人を書類送検 イージス艦衝突事故 判断ミス原因
2008年6月24日11時21分

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸が2月19日未明、千葉・房総半島沖で衝突した事故で、第3管区海上保安本部(横浜市)は24日、交代前後の当直士官の判断ミスが衝突の主因だったとして、衝突時に操艦責任を担う当直士官だった長岩友久・元水雷長(34)と、前の当直士官だった後瀉(うしろがた)桂太郎・元航海長(36)を、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで横浜地検に書類送検した。

 海自の最新鋭艦が漁船を巻き込んだ事故は当直仕官2人の刑事責任追及に発展した。

 3管の調べでは、あたごでは、事故当日の午前3時50分ごろから午前3時55分ごろまでの間に、前の当直と衝突時の当直が引継ぎをした。

 当直交代前、艦橋で見張りをしていた当直員は、清徳丸を含むと見られる漁船群の灯火を複数回、右前方に確認。情報を元航海長に報告した。元航海長も午前3時40分ごろ、灯火を確認していた。

 海上衝突予防法は、船が互いに針路を横切る関係にある場合、相手を右に見る側に回避義務があるとしている。しかし、後瀉元航海長はレーダーなどで漁船群の動きを継続的に確認せず、漁船群は停船した状態であり、あたごの針路を横切るなどの危険性はないと判断したとされる。

 引継ぎ時には、後瀉元航海長と長岩元水雷長はともに灯火を確認していたという。

 当直交代後も、あたごは自動操舵(そいだ)のまま航行を続けた。長岩元水雷長は、漁船群の動きを十分に確認せず、衝突直前になってから、全速で後進する回避動作をとったが、間に合わなかったとされる。

 清徳丸側については、乗っていた吉清治夫(きちせい・はるお)さん(当時58)と長男哲大(てつひろ)さん(同23)が死亡しているため、どちらが操船していたか特定できなかった。海保は、清徳丸側にも一定の過失があったとみているが、あたご側に一義的な回避義務があったとして父子の立件は見送った。

 事故後に解任された舩渡(ふなと)健前艦長(53)は、操艦の全責任を負う立場だったものの、事故当時は、仮眠中で艦橋におらず、直接の過失はなかったと判断した。

 海保とは別に、事後原因を調べている横浜地方海難審判理事所は、舩渡前艦長や、あたごの所属部隊だった旧第63護衛隊など海自関係者4人と1部隊を対象に、週内にも横浜地方海難審判庁に審判の開始を申し立てる。」




(3) 幾つかの点に触れていきます。

  イ:第3管区海上保安本部が書類送検したのは、交代前後の当直仕官2人だけになりました。

 「海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸が2月19日未明、千葉・房総半島沖で衝突した事故で、第3管区海上保安本部(横浜市)は24日、交代前後の当直士官の判断ミスが衝突の主因だったとして、衝突時に操艦責任を担う当直士官だった長岩友久・元水雷長(34)と、前の当直士官だった後瀉(うしろがた)桂太郎・元航海長(36)を、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで横浜地検に書類送検した。(中略)
 事故後に解任された舩渡(ふなと)健前艦長(53)は、操艦の全責任を負う立場だったものの、事故当時は、仮眠中で艦橋におらず、直接の過失はなかったと判断した。」(朝日新聞)



交代前後の当直仕官2人だけを立件した理由については、読売新聞平成20年6月24日付夕刊14面「解説」で詳しく出ていますので、その記事を引用しておきます。

イージス送検 当直仕官の操艦権限 重視

 3管が、立件対象を当直仕官だった2人に絞ったのは、艦長に代わって乗組員を指揮し、操艦の権限を握る当直士官の職責を重視したためだ。

 当直仕官について海自の服務規則は、「常に艦の内外諸般の状況を把握して緊急事態に即応できるよう備える」と定めている。ところが、2人は、見張員を艦橋の外に立たせず、ジャイロレピータ(方位盤)で漁船群との位置を測らせるなど衝突回避の当然の措置を怠り、ヒューマンエラーの“連鎖”を生んだ。

 捜査の焦点の1つが、事故当時に艦橋にいなかった前航海長の立件だった。3管は、あたごの操縦性能を熟知し、艦の安全航行を図るエキスパートである前航海長が、魚雷発射が専門の前水雷長に「衝突の危険性はない」と誤った引継ぎをした過失は重大と判断した。海難審判では、前艦長やあたごの直属部隊も指定化海難関係人に指定される見通しで、事故を招いた組織の問題や海自の体質も問われることになる。 (横浜支局 金子靖志)」(読売新聞平成20年6月24日付夕刊14面「解説」)


「3管が、立件対象を当直仕官だった2人に絞ったのは、艦長に代わって乗組員を指揮し、操艦の権限を握る当直士官の職責を重視したため」とのことです。ただ、交代前後の当直仕官2人だけを立件した理由は、衝突事故(業務上過失致死と業務上過失往来危険)の主因が具体的に定まり、その主因に直接関わった者が交代前後の当直仕官であった、ということなのだと思います。


  ロ:では、3管本部は、その衝突事故(業務上過失致死と業務上過失往来危険)の主因(主たる過失・具体的注意義務違反)は何であるとしたのでしょうか。

 「海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、第三管区海上保安本部(横浜)は二十四日、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで、衝突直前に当直士官を交代した前航海長の後潟(うしろがた)桂太郎三佐(36)と、衝突時の当直士官だった前水雷長の長岩友久三佐(34)を書類送検した。三管本部は、両者が見張りやレーダーの監視を徹底せず、回避が大幅に遅れたことが事故の主因として過失を認定。後潟三佐は引き継ぎも不適切だったとした。 

 調べでは、あたごは事故当日の二月十九日未明、千葉県・房総半島沖を約十ノット(時速約十八キロ)で北上。後潟三佐は同日午前三時四十分ごろ、右前方に清徳丸を含む漁船団を視認し、衝突の危険を予測できたにもかかわらず、継続的な監視を怠って航行を続け、長岩三佐に「衝突の危険はない」と不適切な引き継ぎを行った疑い。

 長岩三佐も、漫然と直進を続け、回避行動を取らずに、同四時六分に清徳丸と衝突し、船長の吉清(きちせい)治夫さん=当時(58)=と長男哲大(てつひろ)さん=同(23)=を死亡させた疑い。長岩三佐は衝突直前に後進命令を出したが、ほとんど減速しないまま衝突。清徳丸は衝突直前に右にかじを切っていたが、よけきれなかった。」(東京新聞)


このように、「衝突直前に当直士官を交代した前航海長の後潟桂太郎三佐と、衝突時の当直士官だった前水雷長の長岩友久三佐」が、「見張りやレーダーの監視を徹底せず、回避が大幅に遅れたことが事故の主因」として過失を認定したわけです。


  ハ:なお、清徳丸側についてはどう評価されたのでしょうか。

 「清徳丸側も業務上過失往来危険容疑での書類送検を検討したが、操船者が特定できず見送った。」(東京新聞)

 「清徳丸側については、乗っていた吉清治夫(きちせい・はるお)さん(当時58)と長男哲大(てつひろ)さん(同23)が死亡しているため、どちらが操船していたか特定できなかった。海保は、清徳丸側にも一定の過失があったとみているが、あたご側に一義的な回避義務があったとして父子の立件は見送った。」(朝日新聞)


<1>操船者が特定できないこと、<2>あたご側に一義的な回避義務があったために、清徳丸側の過失は問うまでもないという2点が報道されているようです。個人の過失を問題にしようとしても、「操船者が特定できない」のであれば、個人責任の原則により、過失を問うことが不可能ですから、この点が大きいように思います。

朝日新聞によると、「海保は、清徳丸側にも一定の過失があったとみている」としています。しかし、読売新聞平成20年6月24日付夕刊1面によると、「3管は、行方不明のまま5月に死亡認定された吉清さん父子について、船体の鑑定から、衝突を避けるために『協力動作』をとっていたとした。」とあるので、読売新聞の記事からすると、3管は、清徳丸側に過失はないとの判断をしているように思えます。海保と3管の判断が違うのか、それとも、どちらかの記事が間違っているのかは判断がつきません。
(6月27追記:「3管」とは、第3管区海上保安本部のことなので、「3管」とは別の「海保」があるとは思えませんが。)




2.衝突事故の主因は、3管によれば「漁船団の基本的な動静監視を怠っていた」点にあるようです。では、そうした基本的な動静監視を怠ってしまった背景は何でしょうか。東京新聞の記事を引用しておきます。

(1) 東京新聞平成20年6月25日付朝刊3面【核心】

希薄な当事者意識 イージス艦事故書類送検
2008年6月25日

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」の衝突事故で、第三管区海上保安本部(横浜市)は「漁船団の基本的な動静監視を怠っていた」とした。艦橋には乗組員が10人もいながら、なぜ見張りが不十分だったのか。三管本部や横浜地方海難審判理事所の調べでは、背景に海自艦の乗組員に共通する希薄な安全意識や、非効率な組織の問題が浮かび上がる。 (横浜支局イージス艦事故取材班)

「船乗りとして稚拙」

■ロボット

 同理事所の調べによると、衝突より35分ほど前の午前3時半ごろ、あたごの見張り員は右側前方に漁船団を視認し、戦闘指揮所(CIC)のレーダー員に「漁船団の存在を伝えた」と証言。一方、レーダー員は「報告は聞いていない。聞いていれば、ちゃんと監視したはずだ」と抗弁し、両者の主張に食い違いをみせる。

 この時点の見張り員とレーダー員を含む当直員は、衝突直前の午前4時までに全員が交代した。

 この後、新に当直についたレーダー員が、見張り員に「何か視認できないか」と尋ねたが、見張り員は漁船団とは全く別の船の存在を確認して報告。結局、あたごは、漁船団の動向を同4時6分の衝突まで把握できなかった。

 「問題は報告を伝えたかどうかではなくて、その後に互いに確認したかどうかだ」。理事所関係者は驚きとともに厳しく批判する。

 「あたごの乗務員はまるでロボット。船乗りとして稚拙だ。言われたことだけをやっていて、誰も自分の頭で考えて危険を回避しようとしていない」

■多すぎる当直

 「とにかく当直員が多すぎる」。三管本部や理事所の関係者は異口同音に話す。

 事故当時のあたごの当直員は24人。艦橋には11人、事故直前の交代前にも10人がいた。海自艦では当直員の数は艦長が決め、当直員が8人程度の護衛艦もあるという。当直は2時間か2時間半で交代する。

 赤星慶治・海上幕僚長は、事故後に開かれた防衛省の抜本的対策検討会議で、「業務量増加が現場の人手不足をもたらしている」と海自艦の「激務」を主張した。

 しかし、民間の外航船では当直は通常2人。海上保安庁の巡視船などは3、4人が、4時間交代で当直する。

 三管関係者は「10人もいて見張りが足りないというのはあり得ない」と指摘。理事所の関係者も「安全航行への当事者意識がなければ、10人いても20人いても“見張り不十分”だ」と話す。

情報共有なく縦割りの弊害

■基本は声掛け

 日本海難防止協会の大貫伸・上席研究員は、当直仕官がすべての情報を集約して判断する海自艦のピラミッド型組織の問題を指摘する。「危険防止は『自分が気付いたことは何でも話す』のが基本だが、海自艦には声を掛け合って危険を避けるという習慣がないのではないか。縦割りの分業制の弊害だ」

 あたご艦内でも、今回書類送検された当直仕官に情報が吸い上げられ、当直員同士の横の意思疎通が極端に欠如していた。

 大貫研究員は「海自は『なぜ事故が起きたのか』を自分たちの組織の問題として考え直すべきだ」と話している。」


 
(2) この記事を見ると、深刻な問題を抱えていると理解できるかと思います。

  イ:「あたご」の乗組員は船乗りとして稚拙であるという点が、まず問題です。

 「「問題は報告を伝えたかどうかではなくて、その後に互いに確認したかどうかだ」。理事所関係者は驚きとともに厳しく批判する。
 「あたごの乗務員はまるでロボット。船乗りとして稚拙だ。言われたことだけをやっていて、誰も自分の頭で考えて危険を回避しようとしていない」」


「あたごの乗務員はまるでロボット」とか、「言われたことだけをやっていて、誰も自分の頭で考えて危険を回避しようとしていない」という状態では、いつ何時でも衝突事故がおきてもおかしくありません。もっとも、自分の頭で考えたりしない人は数多くいるのですから、「あたご」の乗組員にも多数存在しただけのこととも言えそうです。「あたご」の乗組員には、漁船と衝突すれば、漁船側に死者が出るという意識など少しも想像していなかったのでしょう。


  ロ:多すぎる当直員、“見張り不十分”という点も指摘されています。

 「赤星慶治・海上幕僚長は、事故後に開かれた防衛省の抜本的対策検討会議で、「業務量増加が現場の人手不足をもたらしている」と海自艦の「激務」を主張した。
 しかし、民間の外航船では当直は通常2人。海上保安庁の巡視船などは3、4人が、4時間交代で当直する。
 三管関係者は「10人もいて見張りが足りないというのはあり得ない」と指摘。理事所の関係者も「安全航行への当事者意識がなければ、10人いても20人いても“見張り不十分”だ」と話す。」


東京新聞の記事によると、衝突前後の当直乗員だけで45人もいたことになります(毎日新聞6月25日付朝刊3面では、「衝突前後の当直乗務員は約50人」)。当直員が多すぎて、かえって当直員の誰もが「誰かがきちんと見ているだろう」という意識に陥ってしまったようにも思えます。

赤星慶治・海上幕僚長が主張するような海自艦の「激務」があるために、監視を怠ってしまったのはやむを得なかったというよりも、誰もが「安全航行への当事者意識」がない点にこそ、問題があったようです。

毎日新聞6月25日付朝刊3面によると、「乗組員の供述が二転三転し」たそうです。それももまた、自己の行動を明確にできていない証拠といえますから、自らが「安全航行への当事者意識」をもっていないことをもあらわしているように思えるのです。


  ハ:非効率な組織の問題があることも指摘されています。

 「日本海難防止協会の大貫伸・上席研究員は、当直仕官がすべての情報を集約して判断する海自艦のピラミッド型組織の問題を指摘する。「危険防止は『自分が気付いたことは何でも話す』のが基本だが、海自艦には声を掛け合って危険を避けるという習慣がないのではないか。縦割りの分業制の弊害だ」

 あたご艦内でも、今回書類送検された当直仕官に情報が吸い上げられ、当直員同士の横の意思疎通が極端に欠如していた。

 大貫研究員は「海自は『なぜ事故が起きたのか』を自分たちの組織の問題として考え直すべきだ」と話している。」


この衝突事故の問題は、「当直仕官がすべての情報を集約して判断する海自艦のピラミッド型組織の問題」だとすると、「あたご」だけに限らず、海自艦すべてに当てはまることになります。誰もが「安全航行への当事者意識」がなかったという「あたご」の問題もまた、海自艦すべてに当てはまることになりそうです。

 「あたご」に限らず海自艦にとっては、漁船群がよけてくれるものだと意識があり、それが誰もが「安全航行への当事者意識」がないことにつながっているのだと思います。「海自艦の乗組員に共通する希薄な安全意識」、「安全航行への当事者意識」の欠如は、漁船群の軽視、漁船群に乗り込む国民の生命の軽視という意識があらわれています。今回のイージス艦衝突事故問題は、海自艦が本来的に国民の生命を軽視しているという点を、ずっと記憶しておく必要がありそうです。



<追記>


イージス艦衝突事故については、「イージス艦と漁船衝突、マグロ漁父子行方不明~父子が生還することを祈る」(2008/02/19 [Tue] 23:59:39)「イージス艦衝突問題:防衛省4首脳、航海長をひそかに事情聴取~石破防衛相の辞任要求高まる」(2008/02/27 [Wed] 23:56:41)でも触れています。過去の経緯については、これらをご覧ください。



<6月27日追記>

毎日新聞平成20年6月27日付夕刊14面(4版)を引用。第3管区海上保安本部が行っているのは、刑事処分のための捜査であり、横浜地裁で刑事裁判になり判決が下されます。これに対し、横浜地方海難審判理事所が行っているのは行政処分のための調査であり、横浜地方海難審判庁で海難審判になり裁決が下されます。一応、この違いを前提にして次の記事を読んでください。

海自イージス艦・漁船衝突:あたご側、十数秒前に気づく--海難審判、午後に申し立て

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、あたご側は十数秒前に初めて清徳丸に気付いたことが、横浜地方海難審判理事所の調査で分かった。あたごの見張り不十分が回避の遅れを招き事故につながったとして、理事所は27日午後、海難審判開始を申し立てる。

 理事所の事情聴取に対し、衝突時の当直士官だった長岩友久・前水雷長(34)=業務上過失致死容疑などで書類送検=が「十数秒前に初めて視認した」と認めた。実際に減速を図ったのは衝突数秒前とみられる。

 防衛省は事故直後、約1分前に回避を始めたと発表。ところが、あたごは減速後40~50秒で完全停船できることを理事所は突き止めた。第3管区海上保安本部も「あたごが減速せずに衝突した」との鑑定結果を得ており、回避措置は事故間際だったことが明らかになっている。

 一方、清徳丸は二十数秒前に舵(かじ)を右に切っており、あたごより早く衝突回避を図っていた。

 さらに、前艦長の舩渡(ふなと)健1等海佐が理事所の聴取に「日ごろの(安全航行に関する)訓練を怠っていた」と話していることも判明した。理事所はこれらを踏まえ▽長岩前水雷長ら2当直士官は見張りを徹底させなかった▽舩渡前艦長らは日常的な指導が不十分だった--と判断。4個人1組織を指定海難関係人に指定し、横浜地方海難審判庁に申し立てをする。【鈴木一生、池田知広、吉住遊】

毎日新聞 2008年6月27日 東京夕刊」


この記事のうち、次の点に注目します。

「防衛省は事故直後、約1分前に回避を始めたと発表。ところが、あたごは減速後40~50秒で完全停船できることを理事所は突き止めた。第3管区海上保安本部も「あたごが減速せずに衝突した」との鑑定結果を得ており、回避措置は事故間際だったことが明らかになっている。」


理事所の調べであるとはいえ、「あたごは減速後40~50秒で完全停船できる」のであれば、「あたご」には衝突回避のための決定的な性能を有していることになります。清徳丸側に過失があったとしても、「あたご」が直前まで見ていないという見張り不十分による回避義務違反は、この衝突事故の殆どすべてといっていいほどの主因といえます。衝突事故に関しては、清徳丸側の過失はまるで問題とならないといえそうです。

「防衛省は事故直後、約1分前に回避を始めたと発表」したわけですが、もしそうであれば、事故が起きなかったわけです。防衛省は、「あたご」の性能を知らなかったのか、虚偽と知りつつ発表したのか、どちらか分かりませんが、いずれにしても問題がある内容だといえます。こうしたちょっとした点にも、防衛省の問題点が潜んでいるようです。




<6月28日追記>

3管が、立件対象を当直仕官2人にした理由としては、次の東京新聞2008年6月25日【神奈川】「解説」が適切なように思います。

前直の過失 異例の立件

 イージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」と衝突した事故について、第三管区海上保安本部は、衝突時と衝突前の二人の当直士官にそれぞれ過失があると判断した。海難事故では、衝突時の操船責任者の過失が問われることが一般的で、交代前の責任者の刑事責任にまで踏み込んだことは異例といえる。

 三管によると、あたごの当直交代から衝突までは約十一分あった。当時、あたごは約十ノット(時速約十八キロ)で走行中で、「通常の見張りをしていれば衝突は避けられた」(三管幹部)はずだった。

 清徳丸を右前方に見ていたあたごには、海上衝突予防法に基づく回避義務があった。一義的な事故原因は、清徳丸の接近に気付かず、回避行動を取らなかった事故時の当直士官だった長岩友久・前水雷長(34)の判断ミスにあることは疑いようがなかった。

 だが、三管は捜査を進める中で、後潟桂太郎前航海長(36)が当直士官だった午前三時四十分すぎには、何もしなければ衝突する危険が生じる「見合関係」が成立していた点を重視。前航海長はこの時点で清徳丸を視認していたが、漫然と航行を続け、回避行動を取らなかったことが過失につながると判断した。

 ただ、三管幹部が「前例から一歩踏み込んだ」と言うように、過失範囲を広くとらえたことで、公判維持の観点から、横浜地検が前航海長を起訴するのかどうか、判断が注目される。 (岸本拓也)」




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清徳丸側への当局の評価(参考情報)
東京新聞のオンライン版に、三管の会見の一問一答が掲載されています(URL)。
それに拠ると、清徳丸の立件をしなかった理由は、操船者が特定できず過失認定が出来なかったためであり、衝突前に右転舵したこと(話を聞いた記者の解釈は別として、当局がこれを「協力動作」と認定しているか否かは不明)は立件を見送った理由ではないとしています。

なお、読売のオンライン版に拠ると、海難審判庁は『清徳丸は警笛を鳴らさず、かじを切るなどの協力動作も遅れた』と認定している由、関係者の話として(つまりは非公式情報)伝えています。
海難審判庁と海保とでは、その調査/捜査の目的も処分も別個ですから「参考」程度にしかなりませんけども。

ところで朝日の記事では「3管」と「海保」が同一記事中に並存していて、これを文字通りに読めば、捜査を行った現場と、その報告を受けていたはずの本庁とで異なる認識を持っているとも読解できるところです。相手が同一であるならば、通常は言葉の使い分けは忌避する筈ですので。

この表現について想像たくましくしてみると、朝日の記者(または取材チーム)が、3管が会見で明示的なコメントを出さなかったため、本庁の然るべき立場の人物に取材をした可能性と同時に、「所属の関係者」ではなく「組織の関係者」まで対象範囲を拡大する表現を採用してネタ元をぼかさないとマズい立場の3管の人から「非公式」に内々の考え方を聞いた可能性が考えられます。

立件見送りの理由が「嫌疑なし」だからではなく過失認定が不能だったことに拠るのも、海保(3管)内部の考え方を覗わせる材料になるのではないでしょうか。

ともあれ、こういった事態を招いた原因が「守る者が守られる者に対して抱く、誤った優越感」や「おごり」にあるのであれば、そうした思い違いは厳しく非難され改めさせるべきでありますが、実情はそれ以上に深刻なのではないかとの懸念が拭えません。

つまり形式が整っていることに神経が行くのみで、何を目的とした決まりごとなのか等の本当に肝心なことがまったく等閑で、ただ「そういう決まりなので決まりどおりにする」だけの、タガが緩んだどころか内実がグズグズに腐食した状態になっているのではないか、「国民の生命を軽視」していることを認識できる以前の状態なのではないか、と。

問題が「傲慢さ」にあるのであれば、まだ少なくとも脳を機能させているという点で救いがあります。極端な話、指揮命令権者をしっかり「再教育」すれば済みます。その教育効果が下位職制者に波及することも期待できなくはないでしょうから。
しかし、もし「ロボット」化しているのだとするならば、目的準拠で手段を講ずるための脳が機能してない思考停止と言うことですから、その組織は耐震偽装のあった高層ビル、四川大地震で露呈した「おから工法」の校舎のようなものです。役に立たないだけならまだしも、人命に被害をもたらす迷惑で危険な存在で、しかもその「建て直し」は殆んど絶望的です。

願わくは、同種組織としては世界第5位の予算を突っ込んで運用している組織が、どうか「そうではありませんように」。
2008/06/26 Thu 18:41:02
URL | 惰眠 #Oy5awZbQ[ 編集 ]
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2008/06/26(木) 01:39:14 | 晴天とら日和
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2008/06/26(木) 17:18:51 | ?κ?
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2008/06/26(木) 18:24:55 | ?Ω
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2008/06/26(木) 19:36:36 | Ťκ?
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