FC2ブログ
Because It's There
主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
07« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 31.»09
スポンサーサイト 
--/--/-- [--] --:--:-- » E d i t
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 *  TB: --  *  CM: --  * top △ 
2008/06/24 [Tue] 22:21:07 » E d i t
先日、「東京・秋葉原殺傷事件」の現場となった秋葉原に行ってきました。


二十代・アキバ献花台発:/上 孤独、焦り…思い重ね

 ◇事件起こすかどうか、一線どこに?
 ◇クビになるかも。怖い


 東京・アキバ(秋葉原)--。大通りの交差点に献花台はある。

 花束、スナック菓子、アニメキャラクター……。下段にはペットボトルの白キャップが、ハチの巣のように並ぶ。

 今月8日、7人の命をトラックとナイフで不条理に奪い、加藤智大容疑者が逮捕された。25歳の男は、ネアカ、ネクラ、ロリコンなどの言葉が流行した1982(昭和57)年に生まれている。惨劇の犠牲者を悼む献花台には若者がひっきりなしに訪れ、その大半が男と同じ20代だ。(以下、省略)」(毎日新聞平成20年6月24日付東京朝刊13面


今でも献花台には、花束やペットボトルが数多く並んでいますし、献花台以外にも歩道の何ヶ所かに花束やペットボトルが供えられています。献花台の写真を撮る人もいますが、多くは手をあわせ拝んでおり、誰かがそこで拝んでいるという様子でした。

献花台は、シンプルなものであって追悼する旨の簡単な紙が貼っているくらいで、何か仏像が置かれているわけでありません。献花台に神様が宿っているとも思えません。では、献花台へ向けて手を合わせて拝んでいる人達は、何を想って拝んでいるでしょうか。拝む際にこの事件が起きた背景についても思い巡らしているのでしょうか……。



1.秋葉原殺傷事件については、何度もエントリーにしています(その中で「晴天とら日和」さんと言った秀逸なエントリーも紹介しています)が、再び触れてみたいと想います。

<1>「秋葉原通り魔事件:秋葉原で無差別に7人殺害、10人重軽傷~犯罪が発生した背景をよく考える必要があるのではないか?」(2008/06/09 [Mon] 23:11:16)

<2>「派遣労働の世界とは? 35年目の「自動車絶望工場」~秋葉原無差別殺傷事件・容疑者の勤務先ルポ “派遣契約をすべて解除!?”(東京新聞平成20年6月12日付「こちら特報部」より)」(2008/06/12 [Thu] 17:00:36)

<3>「絶望生む「使い捨て」やめて~秋葉原事件契機に派遣法抜本改正を!(東京新聞6月19日付「こちら特報部」より)」(2008/06/20 [Fri] 00:43:38)




この秋葉原無差別殺傷事件については、容疑者である加藤智大氏が派遣社員であったことから、非正規雇用の実情に詳しい作家の雨宮処凛さんの発言は、注目しておく必要があります。

「秋葉原」と若者の暴発

 発生後2週間がたつ秋葉原17人殺傷事件。背景を若年貧困層の実情に詳しい作家、雨宮処凛さんが論じる。」(毎日新聞平成20年6月23日付朝刊1面)


雨宮処凛さんは、この事件につき、すでにいくつかコメントを残されていますが、毎日新聞6月23日付にかなり長文の論説を寄せていたので、紹介したいと思います。



2.毎日新聞平成20年6月23日付朝刊16面「文化面」

秋葉原17人殺傷事件に思う  暴力の連鎖はたくさん 人間らしく働けるだけでいい

雨宮処凛

 「みんな死んでしまえばいいのに」「戦争でも起きてほしい」「通り魔になりたい」。私のところに来たフリーターや派遣の若者たちからのメールだ。

 しかし、実際に行動に移す者はいなかった。秋葉原で事件が起きるまでは。

 事件を受けて、多くの若者からメールが届いた。20代の女性は、「彼の気持ちが怖いくらいわかる」と書いてきた。工場で派遣で働いた経験のある彼女は、「それまでの人生を全否定される」ような扱いを受けたという。また、ある40代の男性は、派遣の契約を突然打ち切られたばかりで、「自分に人権はあるのか」とメールしてきた。

 秋葉原事件の容疑者のしたことは、決して許されることではない。しかし、なぜこんな事件が起きてしまったのか、背景に目を向けなければ悲劇は繰り返されてしまうだろう。

 私自身、不安定雇用の若者の取材を進める中で、彼らの間に言語化できない怒りや憎しみが広がっていることを感じていた。しかし、怒りの矛先がわからない。低賃金も、不安定な日々も「自己責任」と罵倒(ばとう)される。結果、多くの若者が自分を責め、その中で心を病み、或(ある)いは自ら命を絶ってきた。02年から20代、30代の死因の1位はずっと「自殺」だ。若者たちは、人を殺すことなく、ずっと自らを殺してきたとも言える。

 95年、日経連は「新時代の日本的経営」という報告書で、「雇用柔軟型」という「使い捨ての激安労働力」を作ることを提言した。更に96年、アメリカの年次改革要望書は日本に派遣労働の規制緩和を求めた。そうして労働者派遣法が改正された結果、明日さえ不透明なワーキングプアが大量に生み出された。その多くが若者だ。

 派遣会社は東北や北海道、沖縄など最低賃金が低い地域に多くの事業所を構え、求人広告をバラまく。仕事のない地域の若者たちは全国の工場に派遣され、自動車や携帯電話、プラズマテレビなどを作っている。住居は派遣会社の借り上げアパート。給料からは寮費や光熱費、時にはカーテンやテレビなどのレンタル料が引かれ、残るのは10万円台。契約はほぼ2、3ヶ月ごとで、仕事がなければ打ち切られ、寮も追い出される。住む所と仕事を同時に失った若者は、ネットカフェ生活や野宿生活を余儀なくされる。これが04年、規制緩和で製造業に派遣が解禁された結果だ。

 「あ、住所不定無職になったのか ますます絶望的だ」。容疑者は、掲示板にそう書き込んでいた。史上最高の利益を連発する大企業の末端で、多くの若者が喘(あえ)いでいる。市場原理主義のもとで広まった「使い捨て労働」という暴力が、1人の若者の「暴発」に加担したことは言うまでもないだろう。

 舛添要一厚労相は13日、日雇い派遣禁止の方針を示した。これまで、不安定な働き方に対して多くの労働組合が運動を繰り広げてきた。合法的な運動よりも、無差別殺人が力を持つのだとしたら、なんという皮肉だろう。

 同じ13日から、日雇い労働者の街である大阪の釜ヶ崎では暴動が5日間以上続いた。きっかけは、警察の暴行だという。襲撃や路上死の恐怖に晒(さら)され、社会の「無関心」という暴力に晒されてきた野宿者たちが、抗議の声を上げている。

 もう、暴力の連鎖はたくさんだ。そのためには、誰もが「人間らしい」働き方ができさえすればいいのに、どうしてこんな簡単なことが実現されないのだろう。人の命よりも、大企業の利益の方が優先される社会は、更なる暴発を生むに決まっているのに。

 (あまみや・かりん=作家)」



この論説には、派遣労働の問題、そして派遣労働者を安く使い捨てる企業がいるからこそ、問題が生じるという意識がはっきり示されています。

「「あ、住所不定無職になったのか ますます絶望的だ」。容疑者は、掲示板にそう書き込んでいた。史上最高の利益を連発する大企業の末端で、多くの若者が喘(あえ)いでいる。市場原理主義のもとで広まった「使い捨て労働」という暴力が、1人の若者の「暴発」に加担したことは言うまでもないだろう。

 舛添要一厚労相は13日、日雇い派遣禁止の方針を示した。これまで、不安定な働き方に対して多くの労働組合が運動を繰り広げてきた。合法的な運動よりも、無差別殺人が力を持つのだとしたら、なんという皮肉だろう。

 同じ13日から、日雇い労働者の街である大阪の釜ヶ崎では暴動が5日間以上続いた。きっかけは、警察の暴行だという。襲撃や路上死の恐怖に晒(さら)され、社会の「無関心」という暴力に晒されてきた野宿者たちが、抗議の声を上げている。

 もう、暴力の連鎖はたくさんだ。そのためには、誰もが「人間らしい」働き方ができさえすればいいのに、どうしてこんな簡単なことが実現されないのだろう。人の命よりも、大企業の利益の方が優先される社会は、更なる暴発を生むに決まっているのに。」


「トヨタ」という企業名を明示してはいませんが、暗に批判している内容であるといえそうです。

雨宮処凛さんの主張したいことは、シンプルです。「誰もが人間らしい働き方を!」ということですから。この主張は、多くの人が共感できることであるでしょうし、「暴力の連鎖」「更なる暴発」を生まないためにも必要なことであると思うのです。




2.派遣元・派遣先の問題を指摘する論説は、「秋葉原事件の背景には、残酷な派遣労働の仕組みがあったこと、トヨタ・関東自動車工業の責任が大きい」(ガテン系連帯さん)とする主張と一致するものです。こうした認識は、すでに共通認識といえるほど根付いているようです。別の論説も紹介しておきます。

(1) 東京新聞平成20年6月22日付朝刊5面「新聞を読んで」

閉塞感が生む社会の病理

 秋葉原の無差別殺傷事件は、われわれの社会が抱える危うさが最悪の形で爆発したという気がする。殺人は断じて許されるものではない。ただ一方で、犯行の背景を考えるとき、社会の在り方について皆が考え直してみる必要があろう。

 25歳である容疑者の世代は、先日も茨城県土浦で連続殺傷事件を起こし、10年前には神戸の連続児童殺傷事件など、少年事件の多発で「14歳の心の闇」と呼ばれた。

 これは心や身体の発達、自然体験や勤労体験などを無視した知育一辺倒で従来型教育の弊害とも考えられ、既に「ゆとり教育」導入によって対応が図られている。世代固有の傾向ではなく、それまでの弊害の蓄積なのである。その意味で、「酒鬼薔薇世代」などと安易なレッテル貼(は)りに走らなかった東京新聞の冷静な態度を支持したい。

 問題は、彼ら世代が現在直面している閉塞(へいそく)感である。派遣社員という働き方が挽回(ばんかい)不能の「負け組」と認識されてしまうことこそ、急ぎ正さなければならない。また、東京と愛知だけが栄え、他は財政難に汲々(きゅうきゅう)とする地域間格差も開くばかりだ。地方を転々と暮らしてきた容疑者が、東京を惨劇の舞台に選んだのは偶然ではないだろう。

 社会面の通年企画「結いの心」は、こうした問題に真っ向から切り込んでいる。トヨタの実態にメスを入れたシリーズ「市場原理と企業」は、本欄で元木昌彦氏が絶賛したように他に類を見ない記事だ。そして皮肉にも、犯人はトヨタ下請けの派遣社員だった。

 11日夕刊「大波小波」欄「プレカリアートの影」、12日朝刊特報面の容疑者の勤務先ルポと鎌田慧氏の特別寄稿「自殺か殺人か 派遣労働者の絶望」、13日夕刊文化面の森達也氏「『誰でもいいから殺したい』現実」は、それぞれ問題の本質に鋭く迫っている。それは、宮崎勤死刑囚らへの刑執行など厳罰の見せしめや、15日特報面「本音のコラム」で堤未果氏の指摘する通り、場当たりで唱える日雇い派遣原則禁止の検討で解決するものではない。

 地方の人々は真剣に世を憂えている。橋下徹知事の財政再建案に対する大阪府民への調査では、医療と福祉、教育だけは守ってほしいが、他を切るのは甘んじて受けるとの結果が出た。ところが、政府の経済財政諮問会議では、御手洗冨士夫キヤノン会長ら財界委員の強い主張で社会保障費の更なる抑制を行うという。東京を中心とした「勝ち組」側の認識は、社会の実態とどんどん遊離していく。

 14日朝刊では、トヨタ下請け派遣社員の実態を報じた「結いの心」欄の隣に、「キヤノン社員自殺『労災』」の見出しが並んだ。

 (寺脇 研・京都造形芸術大学教授、映画評論家)

 *この批評は最終版を基にしています。」



この論説のうち、1点指摘しておきます。

 「社会面の通年企画「結いの心」は、こうした問題に真っ向から切り込んでいる。トヨタの実態にメスを入れたシリーズ「市場原理と企業」は、本欄で元木昌彦氏が絶賛したように他に類を見ない記事だ。そして皮肉にも、犯人はトヨタ下請けの派遣社員だった。

 11日夕刊「大波小波」欄「プレカリアートの影」、12日朝刊特報面の容疑者の勤務先ルポと鎌田慧氏の特別寄稿「自殺か殺人か 派遣労働者の絶望」、13日夕刊文化面の森達也氏「『誰でもいいから殺したい』現実」は、それぞれ問題の本質に鋭く迫っている。それは、宮崎勤死刑囚らへの刑執行など厳罰の見せしめや、15日特報面「本音のコラム」で堤未果氏の指摘する通り、場当たりで唱える日雇い派遣原則禁止の検討で解決するものではない。」


通年企画「結いの心」は中日新聞の記事ですが、東京新聞独自の記事である「特報部」、そして社外執筆者の数々のコラム・論説は、「それぞれ問題の本質に鋭く迫っている」ものであって、派遣元・派遣先の問題点に触れたものとなっています。



(2) 朝日新聞平成20年6月24日付朝刊14面「経済気象台」

最優秀工場派遣労働の闇

 先般の秋葉原での事件には日本経済の基底に潜む危うさを強く感じる。容疑者のプロファイルを見ると日本経済社会が持っている問題点が出そろっている。北東北での生い立ち、高学歴社会での挫折、不安定な派遣労働者。個々には決して珍しくない、ありふれたものばかりであるが、これらがある人格とであったとき、大きな破壊力を持ったことに、恐ろしさを感じる。

 特に、世界のトップランナーを自負する日本自動車産業の現場派遣労働者としての過酷な経験がこの事件のきっかけとなっていたことに注目したい。彼が勤務していた会社は東北地方にも量産工場を持ち、そこにはアメリカの調査会社から「世界のベスト工場賞」を与えられたことがある。彼の勤務先も優秀な工場に違いない。そこでの厳しい勤務とリストラなどの不安が事件の引き金になった。

 世界自動車各社が注目し見習おうとする日本の「リーン・プロダクション・システム」はもろい基盤の上に立っているのではないか。私は日本の工場を見学して、その秩序と緊張感は素晴らしいと思っていた。欧米企業の工場では、作業者が見学者に対して視線を投げかけることもあり、コンベヤーも心持ちゆったりと動いて生産性では勝負がついたと思っていた。しかしその秩序と緊張感の裏にはもっと恐ろしいものがうごめいていた。

 派遣労働者に支えられ、働くことで一部とは言え精神的なダメージを与える工場が本当に世界に誇れるのか。政府はこの事件をきっかけに凶器の規制問題ばかり口にするが、経済成長を目指し、かつ生活者を大事にする政府であるならばなおのこと、製造現場の精神の荒廃をむしろきちんと調査すべきであろう。 (龍)」



「◆「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。」




こちらの論説は、かなり厳しい内容となっています。

 「特に、世界のトップランナーを自負する日本自動車産業の現場派遣労働者としての過酷な経験がこの事件のきっかけとなっていたことに注目したい。(中略)
 派遣労働者に支えられ、働くことで一部とは言え精神的なダメージを与える工場が本当に世界に誇れるのか。政府はこの事件をきっかけに凶器の規制問題ばかり口にするが、経済成長を目指し、かつ生活者を大事にする政府であるならばなおのこと、製造現場の精神の荒廃をむしろきちんと調査すべきであろう。」

 
「トヨタ」「関東自動車工業」という名前こそ出していませんが、ほとんど名指ししているに近い形で、トヨタ・関東自動車工業の工場での労働を問題視していることを明確に示しています。

世界自動車各社が注目し見習おうとする日本の「リーン・プロダクション・システム」(無駄を排除したぎりぎりの生産。生産・販売・流通の各プロセスを通じて、いかにして合理化を高めるかを問うシステム)について、「私は日本の工場を見学して、その秩序と緊張感は素晴らしいと思っていた」が、実は、「秩序と緊張感の裏にはもっと恐ろしいものがうごめいていた」としています。これは、高く評価していたシステムを見誤っていたことへの反省と、トヨタ・関東自動車工業の工場システムは「製造現場の精神の荒廃」をもたらすほどの危険性があるとの警戒心を発しているのです。

派遣労働者の精神の荒廃をもたらす原因である「リーン・プロダクション・システム」は、作業員にも及んでいることも配慮しておく必要があります。例えば、「派遣先は、人件費を抑えるため受注が増えると派遣を増やし、減ったら切る。派遣元はそれに合わせて、退職届を書かせて新しい契約を結ばせる。契約書があっても意味ない。」といったような違法と思えるような解雇があるのです。

他にも、「床をモップを使わず素手でふけと言う上司がいた」りするなど派遣社員ゆえに正社員が行ういじめが多数あり(秋葉原殺傷事件の容疑者の加藤氏も作業着がないことで怒ったわけですが、典型的ないじめ・解雇強要の一種と受け取れます)、正社員が派遣労働者に対して名前を無視して「おい、そこの派遣」と呼んでおり、こうして派遣労働者を一個の人間といて扱わない状況があります(朝日新聞平成20年6月20日付朝刊22面「いじめ使い捨てもうイヤ 派遣社員4人の本音座談会 秋葉原殺傷事件を機に」)。これは、ほんのごく一部の実例ですが、こうした扱いもまた、派遣労働者の精神の荒廃をもたらしています。

6月24日付朝刊14面「経済気象台」の筆者は、内容からすると海外の経済人のように思えます。そうなると、こうした評価が世界へ知れ渡ることが想定され、秋葉原殺傷事件は、日本経済及び日本企業への評価が大きく変化することにつながる事件になるのかもしれません。

テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

事件 *  TB: 10  *  CM: 1  * top △ 
コメント
この記事へのコメント
事実の一側面ではあるが不正確
端的に申しましょう。
現在、派遣社員として製造業・・・今回で言えば関自ですが・・・のライン労働に携わっている労働者が直面している問題は、かつて期間工やパート労働、工場採用の中・高卒正社員が嘗めて来た辛酸と基本的に同じです。
正社員であれば、配転に次ぐ配転で社会的生活基盤を破壊し「自己都合退職」に追い込む手間がかかるものを、派遣であれば派遣元企業との契約ひとつで簡単に「口減らし」出来る等の違いはありますけれども。

なぜそれが言えるか。製造業で工場勤務経験のある正規雇用従業員というのは、組織済労働者=労働組合員なんです。
組合員やってりゃ集会への動員だってかかる。集会に行けば別の単組・単産のキャンペーンやスローガン、事例紹介にも接するわけです。産別の垣根越えて共闘しようなんて執行部方針もあるわけです。
そういう中ではトヨタ系企業労組の組合員(=正社員ですよ)が力説していた「人間性を踏みにじる労働実態」など、一再ならず見聞するものです。

ところが、そういう話が世に出てくるのは鎌田慧の「自動車絶望工場」(トヨタの期間工)や、自動車雑誌NAVIに集中連載された河崎三行の「僕はホンダの工場労働者として働いた」など非正規雇用の立場からの見聞ばかり。(春霞さんはトヨタ系の問題に特化しがちに見受けられますが、河崎のルポを読めば、どこの会社も似たり寄ったりなのが分かると思います)
それで勘違いしてしまう人もいるか知れませんが、これは正社員が問題に直面してないからじゃないですよ。
正規雇用関係があるからこそ、公然「内部告発」はできないもんなんです。その分、組合があるといえばあるんですけどね。

なお、私が春霞さんの一連のコメントに強い懸念を抱くのは、以前に一度書きましたが、労働者を雇用形態に由来する階層ごとに分断し連帯に楔打つ、つまり形を変えた「財界支援」として機能する可能性が少なくないからです。

本文に引用された雨宮氏の記事の終盤に「これまで、不安定な働き方に対して多くの労働組合が運動を繰り広げてきた」の一節があることに気づいていますか。その「多くの労働組合」を構成するのは、正社員です。

組織運動の戦術として、同じ声を上げる分母を大きくしたいという打算が働いている可能性は無論ありますが、そうだとしても殊更に「正社員だから派遣のキモチが分かるはずなどない」的な姿勢で『分断工作』を行うことは、連帯しなければ雇用側に敵し得ない労働運動に、控えめにいっても水を差す行動です。
固有事情を殊更過大に取り上げて「切り崩し」を謀っているも同然です。

先に河崎三行の雑誌連載を例にしたのは、関自における「一特殊事例」を突破口に、関自と資本関係の上位にある「ひどい会社」であるトヨタ本丸に切り込める、それこそが問題の解決だと位置づけているように見えることについての懸念によります。
「どこもひどい」んです。トヨタだけが特にひどいわけじゃない。
一般論ですが、経営資源に余裕のある企業のほうが、そうでない同業下位企業に比べて「マシ」なことすらある。

問題意識の持ち方として「トヨタ(正確にはトヨタそのものじゃないですが)はなんて酷いんだ!」と視野を固定してしまうのと「トヨタですらこの有様だとしたら、もっとビンボーな同業他社は一体どこまで酷いだろう」と視野・思考を広げるのとで、どちらがより広範な労働問題に対処していけるのか、考えるまでもないんじゃないでしょうか。

最近、トヨタが大株主になった富士重工業の企業城下町、群馬県太田市なんか「日本の若者から雇用を奪った」外国人労働者だらけですし、フォードの傘下になったマツダは「企業城下町の住民はマツダの車を忌避する」との噂が聞こえてきます。
「どこもひどい」んですよ。アイキャッチのある「トヨタ」に安易に飛びついて視野狭窄を起こすべきではないと、改めて申し上げておきます。
2008/07/02 Wed 16:31:16
URL | 惰眠 #hARePrLk[ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/tb.php/1228-6d4c48a7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
¿к?±?μŤ???礬?¿?θ???????????¡ĥ???Ū??ξ礬¿褦?ξ??Ť?ξ礬???ξ??Ĥ????¤????????褦????Ф?ζ?ĥ?????ä?????????礦ä??ŤŪ?Τ???????Ť??????ä?Ф??ĥ???Ф?Ф?褦?ΧФΥХ???褦??Ф???´?????????Τ????ľ??????ĥ¤餲????ĥ?...
2008/06/25(水) 11:19:09 | ??
???Ĥ????ä?????????Υ????礭?????????ξΤξ???Ģ?å???ä??????Ģ?å???ä??Υ????飳?餤ζ?Ģ?å?????Ū????ΤΤ????礦????????ФΤ??γ??????餤??????????????ä?????????????γ????ä???????Υ?????????????ä???????ä??γ??ä?????????ä??????...
2008/06/26(木) 02:44:50 | ?Ω
å?????å???и?å??ä???????????νŤ?????äνŤ????????礦ûå??ä??νŤ??Ū?餹????????????νŤ??餺ä???????????ä???Υå?ζ???ä????νŤå??????å???Ū???ä?????ξ?å?????????????ŪΤŤ???ΰ??ä??ä?????????????¤????????...
2008/06/26(木) 17:09:31 | å?κ?
??ε?????
2008/06/26(木) 17:28:38 | ??ε
??Ū????????ΰĤ?????????ä??ξ????Ĥ??????Ψ???Ψ??????????????ΨФθΨ????Σ??δ?Ū????Ψ??ä?????СİСξ????????¿ΤŪ???Ż??ŹŹŹ???????ФŹ?¤???????ο??¿ξ??????????ΨŪ????????º????Ź????夷??顢?Ū??????褦???????????Ľ...
2008/06/26(木) 18:26:22 | ?åκ?
кε??????βк?????åå?褦??ä??к??????к????к????????Τ??к??ä?кε???к??????ΤΤ??????褦??к????βкε???????к???ĤθΤ?Τ???????Τ?????????ñ??????к?Ÿ?ŸAC100VĤ?Ÿ?????????ä????????????礦θ????????????εΤΤ?Τ???????10?餤?Ĥ?...
2008/06/26(木) 19:43:34 | ??к
論より証拠である。6月23日付毎日新聞の朝刊に載った、2本の記事を紹介しよう。 つね日頃、反新自由主義・護憲を唱えながら、民主党を支持し共産党をスルー しつづける、左派・市民派ブロガーのみなさん、これが、事実です。 およそ政治言論メディアに在りなが...
2008/06/27(金) 13:59:07 | BLOG BLUES
TBS??????Сï??????TBS®???????塼?ν????ijΤ???????ΡijΤ??Ĥ??ijΤ?????????¤????ΤŻ?????????η???°?????ijΤ?ε??п?????С??????ë???Ω?Ω???к???????ijΤ??????????¤??¤?ι?¤ï??Τ??????????????????λŻ??????ä?????¤??ijΤ????...
2008/07/01(火) 15:25:22 | ?κ?
??ν?Ĥ?ξ?
2009/06/28(日) 18:00:22 | ??
管理人の承認後に表示されます
2012/06/12(火) 20:01:31 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。