1.TBSにも、「TBSレビュー」(毎月最終日曜日 あさ5時30分〜6時00分放送)という、TBSのみならず、放送全般が抱える問題について、幅広く取上げ、検証していく番組があります。この「TBSレビュー」において、5月25日、「裁判員制度導入と事件報道」というテーマについて、報道していました。そのテーマを論じる際に参考になる事案として、光市事件の裁判報道と、光市事件テレビ報道に関する放送倫理・番組向上機構(BPO)の意見書を取り上げていました。
(5月28日追記:BPOの意見書について、BPOに寄せられた視聴者の意見を引用しました。)
「検証番組 TBSレビュー
「TBSレビュー 5月号 #137 のお知らせ」
テーマ
裁判員制度導入と事件報道
出席者
■田中早苗
弁護士(TBS放送と人権特別委員会委員)
■岩城浩幸
TBSテレビ 報道局 専門・解説室室長
■長岡杏子
TBSアナウンサー
・放送:5月25日 日曜日 朝5:30 〜 5:59」
特に、「番組スタッフに刑事裁判の仕組みに対する前提的知識に欠けていた」部分などに注目したVTRを作成し、検証委員会の作家の吉岡さんへのインタビューを行っていました。
岩城浩幸・報道局 専門・解説室室長は、「(BPOの意見書に指摘していた)『集団的過剰同調』という言葉は非常に重い意味が含んでおり、うちに抱えている問題点を適切に捉えている。事実に忠実でなければならないという原点に改めて立ち変えなければならない。」と述べ、BPOの意見書を真摯に受け止めなければならないとしていました。そして、長岡杏子・アナウンサーは、「この教訓を生かしていかなければなりません」とまとめていました。
2.このように、TBSは「BPOの意見書を真摯に受け止めなければならない」として、BPOの意見書を妥当なものとしているわけですが、民放連会長も妥当な意見書であったと評価しています。報道記事を幾つか引用しておきます。
(1) 時事通信(2008/05/22-18:00)
「BPO検証委は「見識高い意見」=光市母子殺人報道で民放連会長
民放連の広瀬道貞会長(テレビ朝日会長)は22日の記者会見で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が出した山口県光市母子殺害事件での各局の裁判報道をめぐる意見書について「時宜を得た、極めて見識の高い、しっかりした意見」と高く評価した。
広瀬会長は「最も感銘を受けたのは、いつの間にか被害者家族と加害者側弁護士との善と悪の戦いのような様相になってしまい、裁判報道として妥当であったかとした点だ」と述べた。また「裁判の在り方について理解していない記者もいたのではないかとの指摘もあったが、新聞を含めて今のジャーナリズムへの批判だと思う」と付け加えた。 」
(2) 東京新聞平成20年5月23日付朝刊14面「放送芸能面」
「BPO「光市事件裁判」意見 「見識高い」と評価 民放連会長
民放連の広瀬道貞会長(テレビ朝日会長)は、22日の定例会見で、山口県光市の母子殺害事件裁判の放送に対し、「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会が公表した意見について、「委員会の効用があらためて示されたケースではないか」と評価した。
同会長は「時宜を得た極めて見識の高い意見。新聞を含めて今の裁判ジャーナリズムに対する批判で、BPOがなければ、ああいう意見は出なかっただろう」と述べた。
委員会が個別の番組ではなく、一連の放送に対して意見を公表したことについては、「一緒にしたことで、委員は相当、自由に意見が言えたのではないか」と述べた。」
このように、民放連の広瀬道貞会長は、「時宜を得た、極めて見識の高い、しっかりした意見」「最も感銘を受けたのは、いつの間にか被害者家族と加害者側弁護士との善と悪の戦いのような様相になってしまい、裁判報道として妥当であったかとした点だ」として、と高く評価しています。光市事件報道を見聞きし、BPOの意見書を読めば、こうした評価になるのは当然でしょう。
「「裁判の在り方について理解していない記者もいたのではないかとの指摘もあったが、新聞を含めて今のジャーナリズムへの批判だと思う」と付け加えた。」
この点も重要です。差し戻し控訴審では、多くの新聞報道は抑制的でしたが、それ以前は多くの新聞報道でも、実に扇情的であり、刑事裁判の基本的な理解に欠けた報道でした。光市事件報道以外でも、問題のある報道も多々見られます。ですから、民放連の広瀬道貞会長が述べるように、「新聞を含めて今のジャーナリズムへの批判」と受け止めるべきであり、新聞社側も、BPOの意見書を他人事のように捉えるべきではないというべきです。
(1) 毎日新聞平成20年4月28日付朝刊24面
「山口・光の母子殺害:弁護団バッシング、報道規制の懸念生む−−テレビ番組の功罪
山口県光市の母子殺害事件差し戻し控訴審で、広島高裁は22日、事件当時18歳30日だった元少年(27)に死刑判決を言い渡した。この裁判では弁護団が激しいバッシングにさらされ、放送倫理・番組向上機構(BPO)が判決前、テレビ報道を批判する意見書を出した。一連の経緯を検証した。【上村里花、安部拓輝、矢追健介】
◇新供述に世論反発
「ドラえもんが何とかしてくれると思った」「精子を入れるのは生き返りの儀式」
差し戻し控訴審で元少年は、起訴事実をほぼ認めた1、2審では語らなかった供述を始めた。新供述は即座には信じ難い内容だとして、センセーショナルに報道され世論の激しい反発を招いた。
特に昨年5月、橋下徹弁護士(現大阪府知事)がバラエティー番組で「弁護団を許せないと思うんだったら、弁護士会に懲戒請求をかけてもらいたいんですよ」と発言したことで、弁護団に「怒りをぶつける道筋」がついた。全国で懲戒請求が相次ぎ、07年末までの請求件数は8095件に上った。昨年10月まで弁護団の一人だった今枝仁弁護士(広島弁護士会)は「夜道を一人で歩くのが怖かった」と打ち明ける。
日本弁護士連合会によると、弁護士への懲戒請求は06年の1367件が最多。8000件超の請求は極めて異例だ。
こうした事態を受け、大学教授らでつくる「『光市事件』報道を検証する会」は昨年11月、「一方的な弁護士批判や事実誤認、歪曲(わいきょく)などで視聴者に誤解を与えた」として、BPOに審理を申し立てた。
懲戒請求は今年3月までに各弁護士会が「適正な刑事弁護」と結論付け、懲戒しないことを議決した。判決後の記者会見で岩井信弁護士(第二東京弁護士会)は「なぜ(被告が)供述を一変させたのかについての客観的報道がなかった」と報道に疑問を投げかけた。
◇積極的な遺族発言
事件がここまで注目されたのは、赤ちゃんの命も奪われた残虐性に加え、遺族の本村洋さん(32)が積極的にメディアで発言したことが大きい。特に06年3月、交代した弁護人が最高裁の弁論を欠席し、「これほどの屈辱は初めてだ」と憤る本村さんの姿が放送されたことは、「弁護団VS遺族」の構図を生む契機の一つにもなった。
しかし、弁護団や裁判所に脅迫状や銃弾が送りつけられたことなどに本村さん自身は戸惑い、個別取材を控えるようになった。差し戻し審判決直前の19日の記者会見では「弁護団と私(遺族)という対立軸は裁判の構図ではない。報道が(脅迫状などを)誘発したのであれば痛恨の極み」と述べた。現在は言葉を慎重に選び、意図が誤って伝わらないよう考えながら発言しているという。
一方、従来の加害者中心の報道がこの10年で変わったとも話し、「犯罪報道が被害者の現状を照らし、被害者支援の法整備の後押しをしてくれた」と評価した。その上で「被害者と加害者・弁護側の意見を平等に伝え、社会に訴えるのは必要なこと。メディアの方も日々迷いながら報道してほしい」と求めた。
◇「報道、無罪の力に」
事件報道の在り方を巡っては、09年から始まる裁判員制度への影響を懸念する声も出ている。
昨年9月に、最高裁参事官が「事件報道が裁判員に予断を与える」と発言、報道規制の必要性を示唆した。光母子事件報道について、意見書を出した「放送倫理検証委員会」メンバーの服部孝章・立教大教授は「特にテレビは取材しやすいところだけ取材し、分かりやすい本村さんの発言は報道するが、弁護団の言い分はあまりやらない。メディア規制される余地を残した」と指摘する。
戦後の代表的な冤罪(えんざい)事件「八海(やかい)事件」で3回の死刑判決を受け、最高裁による3度目の判決で無罪が確定した阿藤周平さん(81)=大阪市此花区=は「検察や判決の誤りを新聞が指摘してくれたことが、無罪確定の大きな力になった。報道は公正な裁判に必要だ」と事前規制に懸念を示す。それでも光母子殺害事件については「一連の報道は感情的すぎると思った。残念だ」と語る。
◇犯罪被害者報道に一石−−元共同通信編集主幹・原寿雄氏の話
光母子殺害事件では、被害者遺族の死刑を求める強い声にマスコミの大勢が同調し、判決も世論に逆らえなかったのでは、と感じた。この傾向が進めば裁判は、西部劇のような大衆的リンチに逆戻りしてしまいかねない。また、被害者側は被告が犯人との前提で発言するが、「判決確定まで無罪推定」という司法の原則に反することを報道陣は重く考えたい。
被告の人権ばかり重視されるという批判も、この際再考すべきだ。強大な権力を持つ検察と立ち向かう被告・弁護人側は、決して対等ではない。その検察に被害者の声が加わり、マスコミが心情的に同調して被告・弁護団を非難攻撃することが常態化したら、裁判の公正は脅かされてしまう。 放送倫理検証委がテレビ局に出した意見は、感情的、一方的な放送を戒めるとともに、犯罪被害者に寄り添う報道が抱える課題を突きつけたと思う。
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◇BPOの意見書、報道姿勢を批判
BPOはNHKと民放が共同で設置した放送界の第三者機関。放送倫理検証委員会は外部識者10人で構成し、放送倫理上の問題があると判断すれば勧告や見解を出す。
光市事件については今月15日、NHKや民放などの延べ33番組について「被告や弁護人を批判するニュアンスが濃く、公平性や正確性に欠けた」と結論づける意見書を発表。「被告の一見荒唐無稽(こうとうむけい)にしか思えない発言の真意が何であるかについての取材や解説がない。被害者遺族に同情・共感するだけではすまない番組制作者の役割がある」と報道姿勢を批判した。
◇検証しなおす 指摘あたらない−−分かれる放送局の反応
BPOの意見書に対してテレビ各局の反応は分かれる。情報番組を含めて問題視された局が真摯(しんし)に受け止めたのに対し、報道番組だけを指摘された局は「指摘は当たらない」と否定した。
日本テレビの久保伸太郎社長は「どうしたら社会に受け入れてもらえるか探っていく」とし、君和田正夫・テレビ朝日社長も「重い内容を含んでおり、報道局で研修会を開き、編成制作部門でも勉強会を開いた」と神妙に応じた。「これからの裁判報道のあり方の検討を進める」(井上弘・TBS社長)、「検証し直し、今後も心して裁判報道をする」(豊田皓・フジテレビ社長)と、裁判員制度開始を意識した発言をする社もあった。
一方、報道番組のみを指摘されたテレビ東京は、「報道局で検証し勉強会も行ったが、指摘のものはなかった」(島田昌幸社長)と主張。日向英実・NHK放送総局長も「指摘は当たらない。(情報番組を含めた)総体としての意見だった」と報道番組に問題はないとの見解で、ニュース担当部署での検証も行っていないという。【丸山進、岩崎信道】
◇制作現場「自分の首、絞めている」
番組制作現場にも意見書を肯定する声がある。光市事件を取材している民放番組のスタッフは「弁護団側を3カット放映しようと企画しても(上層部などの判断で)1カットに減らされることがあった。(一連の報道を)上層部は『ちゃんとやっている』と思っているから、BPOの指摘を何とも思わないでしょうけど」と現場の空気を語る。裁判員制度との関連でも「テレビ各社は自分の首を絞めているようなもの。報道規制がかかったら、困るのは自分たちなのに……」。
一方、ある番組担当者は、コメンテーターの人選に「(弁護団サイドで語ってもらおうとしても)テレビでは勘弁してくれという感じで断られた。世論に配慮している人が多い」と回答。バランスの取り方に苦慮する様子をうかがわせた。
毎日新聞 2008年4月28日 東京朝刊」
(2) 幾つかの点に触れていきます。
イ:1点目。
「事件報道の在り方を巡っては、09年から始まる裁判員制度への影響を懸念する声も出ている。
昨年9月に、最高裁参事官が「事件報道が裁判員に予断を与える」と発言、報道規制の必要性を示唆した。光母子事件報道について、意見書を出した「放送倫理検証委員会」メンバーの服部孝章・立教大教授は「特にテレビは取材しやすいところだけ取材し、分かりやすい本村さんの発言は報道するが、弁護団の言い分はあまりやらない。メディア規制される余地を残した」と指摘する。」
4月22日の裁判報道はおおむね冷静に報道したようですが(「東京新聞平成20年4月23日付朝刊17面【放送芸能】欄「光市の母子殺害 死刑判決 各局、冷静に速報」参照)、「報道ステーション」は相変わらず感情的な報道を繰り広げ、古館氏は、放送倫理検証委員会による改善要求など、まるで無視した態度でした。
テレ朝の君和田正夫社長は4月22日の定例会見で「意見は重い内容を含んでいる」と述べ、16日に報道局ディレクターらを対象に研修会を行ったことを明らかにした」(「東京新聞平成20年4月23日付朝刊17面【放送芸能】欄「光市の母子殺害 死刑判決 各局、冷静に速報」)のです。しかし、研修会を行っていても「報道ステーション」はまるで無視ですから、無意味な研修会でした。これがテレビ朝日の姿勢ということなのだと思います。(「ニュース23」が最も冷静な報道であり、賞賛に値します)
「報道ステーション」のような感情的な裁判報道が今も続く以上、「メディア規制」がなされることは必至でしょう。
ロ:2点目。
「戦後の代表的な冤罪(えんざい)事件「八海(やかい)事件」で3回の死刑判決を受け、最高裁による3度目の判決で無罪が確定した阿藤周平さん(81)=大阪市此花区=は「検察や判決の誤りを新聞が指摘してくれたことが、無罪確定の大きな力になった。報道は公正な裁判に必要だ」と事前規制に懸念を示す。それでも光母子殺害事件については「一連の報道は感情的すぎると思った。残念だ」と語る。」
あの「八海事件」で無罪が確定した方でさえ、光市事件報道は「一連の報道は感情的すぎると思った」と述べるのですから、相当に深刻な裁判報道だったといえそうです。
ハ:3点目。
「BPOの意見書に対してテレビ各局の反応は分かれる。情報番組を含めて問題視された局が真摯(しんし)に受け止めたのに対し、報道番組だけを指摘された局は「指摘は当たらない」と否定した。
日本テレビの久保伸太郎社長は「どうしたら社会に受け入れてもらえるか探っていく」とし、君和田正夫・テレビ朝日社長も「重い内容を含んでおり、報道局で研修会を開き、編成制作部門でも勉強会を開いた」と神妙に応じた。「これからの裁判報道のあり方の検討を進める」(井上弘・TBS社長)、「検証し直し、今後も心して裁判報道をする」(豊田皓・フジテレビ社長)と、裁判員制度開始を意識した発言をする社もあった。
一方、報道番組のみを指摘されたテレビ東京は、「報道局で検証し勉強会も行ったが、指摘のものはなかった」(島田昌幸社長)と主張。日向英実・NHK放送総局長も「指摘は当たらない。(情報番組を含めた)総体としての意見だった」と報道番組に問題はないとの見解で、ニュース担当部署での検証も行っていないという。」
この記事からすると、BPOの意見書により厳しく問題視されたのに、真摯に受け止めていないテレビ局があるのです。これでは、メディア規制が行われることはほぼ確実でしょう。テレビ局は、自分で自分の首を絞めているのですが、それも仕方がないのでしょう。
(3) 最後に。
民放連の広瀬道貞会長が述べるように、本来、BPOの意見書は、「新聞を含めて今のジャーナリズムへの批判」と受け止めるべきであり、新聞社側も、BPOの意見書を他人事のように捉えるべきではありません。
しかし、毎日新聞は、「テレビ番組の功罪」という表題からして分かるように、テレビメディアだけで問題があったととして、「他人事」として記事にしています。
「【意見1 本件放送は、裁判を主宰する裁判所の役割を忘れていなかったか】
【意見2 本件放送は、刑事裁判の「当事者主義」を理解していたか】
【意見3 本件放送は、弁護人の役割の認識に欠けるところがなかったか】」
毎日新聞は、裁判を主宰する裁判所の役割、刑事裁判の「当事者主義」、弁護人の役割(特に「誠実義務」の説明は必須)について、いつどれほど説明したのでしょうか(地方版で、一度くらいでしょうか)。今でも、記事にするのは被害者遺族である本村さんのことばかりです(例えば、毎日新聞 2008年5月25日 地方版「山口・光の母子殺害:犯罪被害の現状、遺族が講演で思い語る /埼玉」)。
毎日新聞は、朝日新聞や東京新聞のように、BPOの報告書が指摘しているような点を意識した記事を十分に掲載しておらず、差し戻し控訴審後も、そうした記事を掲載していたとは思えないのです。毎日新聞は、まず、「テレビ番組の功罪」などと他人事のような姿勢を猛省して、BPOの意見書を真摯に受け止めた記事を掲載すべきです。
<5月28日追記>
BPOに対して、2008年4月に視聴者から寄せられた意見(1,507件)の中として、「4月15日放送倫理検証委員会決定の『光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見』に関する批評・感想は、それぞれ36件と104件となっている。」とのことでした。そのBPOに掲載していた意見を引用しておきます。
「<BPOへの意見>
・光市母子殺害事件関連の放送への意見書を興味深く、また概ね強い共感を持って読ませていただいた。BPOの役割と使命を果たした力強い内容と考えている。一方で、BPOの手を離れた後、受け手である放送局やスポンサー(企業)および視聴者がどこまで真摯にこの提言を受け止めるかには暗澹たる感もある。新聞の記事では【「(意見書は)被告弁護団対被害者遺族という対立構図を描き、前者の異様さに反発し、後者に共感する内容だった」とし・・】と要約している。これは意見書の20ページの表現に沿った要約であるが、全体の文脈を離れ、この箇所だけを抜き出し「異様」という形容をあたかも既成事実のように用いることは意見書の批判する決め付けをそのまま無反省に繰り返す、意見書の意図を理解していない、むしろ敢て無視した報道ではないかと考える。つまり「意見書が『異様な弁護団』を前提にしているかのように要約されてしまう隙」を与えたという意味では、意見書のこの箇所の表現はやや配慮に欠けたかと思う。しかし、受け手の問題は全く別としてBPOが冷静・良心的な意見書を発表したことに敬意を表す。
・光市母子殺害事件で被告に死刑判決が出たが、事件後長期間にわたり、遺族の被害感情を異常なほど強調・演出し、国民の処罰感情を煽ってきたテレビ報道の影響がでた結果ではないかと思った。一見「正義の味方」とも取れる伝え方だが、このように感情に溺れ、論理的思考の欠落した報道は裁判員制度発足後の裁判に悪影響を及ぼすと思う。全ての事案について、報道する者は襟を正し、姿勢を改めるよう望む。
・光市母子殺害事件の裁判報道に関するBPOの発表を読んだ。各局の報道が感情的で、「弁護団対被害者遺族」の対比を狙ったものであったという。確かに報道番組を見る限り、弁護団のお粗末で荒唐無稽な話と、感情と理性のバランスも絶妙な、男性遺族の説得力のある話がくっきりと対照をなし、視聴者の殆どが同氏の姿勢に感情をゆり動かされたのではないかと思う。しかしこれは結果であり、報道側が狙って出来るものではなく、ひとえに同氏の類まれなる資質によるものと思う。これまでに、被害者側の立場にあってこれほど精力的で才気ある人物を見たことはない。今回のBPOの発表は理解は出来る。しかし、このような特別なケースは今後はまず起こることはないだろう。
・死刑へのハードルが低くなった。「今日の光市母子殺害事件の判決で心は癒されたか?亡くなった奥様と子供さんに何と声をかけたか?」等、耳を覆いたくなるような言葉の数々、報道各局のインタビュアーは自局名と自分の氏名を名乗り節操を持つべきだ。あたかも自分の言葉が編集でカットされないよう特異な言葉をなげかけている。9年間も地獄のような環境で裁判を続けてきた遺族に別の言葉はかけられないのか。視聴者として非常に情けなく思う。
・光市母子殺害事件の差し戻し控訴審で、広島高裁が被告の元少年に死刑判決を言い渡したが、この判決に対するリスナーからの便りを読んでいた。いくつか読み上げている便りの中で、「○○被告」と個人名を名指しで伝えていた。便りを読み上げる前には必ず目を通しているはずで、何故、被告の個人名を読み上げたのか理解出来ない。これは人権問題ではないか。今回の控訴審で被告の個人名を伝えたメディアはこの番組以外は皆無である。放送に関わる人間として、裁判制度に対する認識が欠如している。
・今回のBPOの発表をテレビや新聞で知った。BPOは相当多くの番組を丹念に調べたようだが、各放送局はその労力に報いるだけの努力を今後きちんと実行するのだろうか?今回のことに限らず、BPOの権限をもっと強めて、「見解」や「意見」を出す時は発表と同時に当該局の社長を呼び、その場で伝えた模様を自局のニュースで流すように指導するくらいの存在であって欲しい。」
すべての意見が出ているわけではないとはいえ、BPOの意見書が示した危機感について共感している意見が多いことが分かります。BPOの意見書が出ているのにも関わらず、「○○被告」と個人名を名指しで伝える番組もあったとは驚きです。BPOには少年法61条について触れてないからでしょうか。少年法はまるで無視とは、ろくでもない放送局はいまだに存在していることを露呈しています。
それはともかくとして、これらの意見のうち、「各放送局はその労力に報いるだけの努力を今後きちんと実行するのだろうか?」という点は気になります。各放送局は、BPOの意見書を聞き流すことなく、刑事裁判の基本的知識くらいは理解してほしいと思います。
関西ではBPOの勧告の後に、読売テレビのウェークアップで辛坊治朗(報道局局次長兼解説委員の肩書きを持つ重役)がBPO批判をしたり、
同じく読売テレビのたかじんのそこまで言って委員会で勝谷誠彦や宮崎哲弥がBPO批判をしたり、
朝日放送のムーブでもまた勝谷誠彦がBPO批判をしたり、救いようがありません。
関西は辛坊治朗、勝谷誠彦、宮崎哲弥がテレビから消えない限りよくならないでしょうし、
さらに言えば、BPOの勧告さえ批判した本村氏にも嫌悪感を持ちました。
(辛坊治朗は本村氏のBPO批判を取り上げて、自らの主張を正当化しようとしてましたし)
URL | こと #-[ 編集 ]
>関西ではBPOの勧告の後に、読売テレビのウェークアップで辛坊治朗(報道局局次長兼解説委員の肩書きを持つ重役)がBPO批判
辛坊氏がBPO批判をしていた番組は、↓ですね。
「■本村洋さんを利用してBPO批判をする辛坊治郎」
http://montagekijyo.blogspot.com/2008/04/bpo.html
辛坊氏は、BPOが光市事件報道が「放送倫理要綱や放送基準などで定めている公正性・正確性・公平性の原則に違反している」と批判したことを何だと思っているのでしょうね。報道局局次長という地位にある辛坊氏が、公然と、放送倫理要綱や放送基準を無視することを表明するのですから、BPOはもっと規制を強化する姿勢をとるしかないでしょう。
こんなことを言っているようだと、政府がもっと激烈なメディア規制を行うことは必至でしょう。行政や立法によるメディア規制を避けるためにBPOが積極的に活動しているのに台無しです。辛坊氏は、自分で自分の首を絞めるのですから、実に馬鹿げてます。
>関東のテレビ局はBPOの勧告でおとなしくなった分行儀のいい方です。
>関西ではBPOの勧告の後に
>同じく読売テレビのたかじんのそこまで言って委員会で勝谷誠彦や宮崎哲弥がBPO批判
不思議に思うのは、なぜ関西のテレビでは、公然と、放送倫理要綱や放送基準を無視することを表明する輩を許してしまうのでしょうね。やっぱり地方の番組だからというお気楽感があるのか、大阪は治外法権だとでも思っているのか……。不思議の国…オオサカですね(苦笑)
>BPOの勧告さえ批判した本村氏にも嫌悪感を持ちました
本村さんは、「BPOは、記者たちの自由な心証形成を認めず、言論報道の自由に自ら規制した」などと、月刊誌に書いていたようですね。
相変わらず、本村さんは法律論が全く分かっていないですね。
「TBSレビュー 5月号」でも述べていたことですが、報道の基本は、事実を忠実に伝えることであって、「自由な心証形成」を垂れ流すことではありません。
本村さんは、「自由な心証形成」などと裁判官の法律用語のようなものを使っていますが(刑事訴訟法318条〔自由心証主義〕)、裁判官の立場だからこそ妥当するのであって、新聞記者の報道に関して、そもそも「自由な心証形成」などという用語は相応しくありません。
それに、BPOは、刑事裁判の基本的知識が欠けた報道は幾らなんでもマズイだろうという、ごくごく当然の指摘をしただけであって、「言動報道の自由に自ら規制した」などというほどのことではありません。嘘だと明示して報道するならともかく、デタラメな刑事裁判の理解を真実のように報道する自由なぞありません。虚偽報道は認めない、ということは極めて合理性のあることです。
このように、本村さんは、間違った理解で法律用語を織り交ぜながら、理路整然とデタラメを述べ、感情論を法律論のように述べてばかりです。法律論が関わるとすぐにデタラメになってしまうのですから、本村さんの発言は、一生懸命に虚勢を張っているとしか思えないのです。
差し戻し控訴審での記者会見では、本村さんは、元少年が本村さんをにらみつけたと中傷し、これも問題になりました。もう、ただただ元少年を死刑にしたいという感情論で述べているのでしょうね。BPO批判も、少しでも死刑に異議を挟むものは批判するという感情を露にしただけなのでしょう。
ですが、こういう言動に世論は納得してしまうのですから、困ったものだな〜と思うばかりです。
以前、本村さん流の刑罰論を批判した法律家もいましたが、もっと本村さんの言動に対して批判が集まってもいいように思うのです。被害者といえども間違った法律論を流布することは、世間に悪影響を及ぼすのですから、批判されるべきです。
>辛坊治朗は本村氏のBPO批判を取り上げて、自らの主張を正当化しようとしてました
嫌らしいですよね。これって。本村さんの記述を引用しただけであって、自分に責任はないって言い訳ができますから。辛坊氏は性根が卑しいのでしょう。
http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/nagasaki2.htm
よく読みました。光市事件裁判に勝るとも劣らない杜撰な判決だと思いました。故意に焦点をずらしているとしか思えません、無茶苦茶な「厳罰」のために・・・。光市のほうは、裁判長の悪意のようなものすら感じたものです。
いずれも、厳罰に向かってまっしぐら、という感じです。
>夕刊の記事を急いでエントリーし、TBさせて戴きました。良い記事ですぅ。
東海テレビが光市弁護団に取材した番組を放映したわけですね。こうした内容を放映してくれる、関東地方放映のテレビ局があれば良かったのですが……。
>光市事件裁判に勝るとも劣らない杜撰な判決だと思いました
作家の高村薫さんも、朝日新聞平成20年5月29日付朝刊15面「私の視点―ワイド―」で、次のように述べてますね。
「死刑判決の是非の前に、何よりも刑事裁判で、こうした恣意(しい)的な判断がまかり通ることに危機感を覚える。これが裁判員でなく、職業裁判官の判断だという点も深刻である。」
粗雑、杜撰、恣意的。こうした批判は、通常の判決ではめったにないことです。今後は、こうしためったにない批判が向けられるような判例が続出するとしたら、恐ろしいことです。
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