「チベット暴動の追悼法要=リレーと同時刻、善光寺で
聖火リレーの出発地点となることを辞退した長野市の善光寺本堂で26日午前8時15分から、チベット暴動の犠牲者の追悼法要が開かれた。
追悼法要は約20分間。善光寺の約10人を含む住職ら計約20人と多数のチベット人が参加し、チベット族か漢族かを問わず暴動で犠牲となった数十人の名前を読み上げた。
法要は当初、同日午前の別の時間に行う予定だったが、「世界平和の実現を目指す聖火リレーの出発と同時刻にすることで、より強く弔いの思いをはせたい」(善光寺の若麻績敬史住職)として変更した。」(時事通信(2008/04/26-11:51))
このように善光寺は、聖火リレーの出発式会場の辞退、聖火リレーの出発と同時刻での法要という形で、「チベットの宗教者に対する弾圧」への抗議の意思を示したものといえます。
「式典の間、会場を囲むように、そろいの白いTシャツ姿の留学生100人以上が両腕でスクラムを組み、「リレーを守ろう」と何度も叫んだ。チベット問題を訴える人も、見に来た日本人も中に入れない。」(朝日新聞平成20年4月27日付朝刊1面)
他国においても中国人で埋め尽くす異様さ。沿道でも大きな中国国旗を振りかざして、沿道に日本人さえ寄せ付けない排他性。中国政府だけでなく中国国民までも大挙して理不尽な行動をするのだと、日本の市民に大きく印象付けたのです。
これでは「市民不在」で、約100人の警察官にガードされるという単なる「聖火護送」であった聖火リレーだったのです。これでは、日本人の間において、ますますチベットへの弾圧に抗議する意識が強くなり、北京五輪への興味が失ったことでしょう。
1.同じく僧侶で、作家の玄侑宗久さんが、「お坊さんだって怒ってる」という表題で、東京新聞4月25日付でエッセイを載せていましたので、それを紹介したいと思います。「お坊さんだって怒ってる」という表題は、東京詩文側が依頼した表題ですが、玄侑宗久さんの著書である『お坊さんだって悩んでる』(文春新書)をもじったものと思われます。
ところで、自民、民主両党の一騎打ちとなった衆院山口2区補欠選挙は、本日(4月27日)投票、即日開票されます。揮発油税の暫定税率復活や、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)などが争点です。この投票結果は、今後の国会においてこれらの争点の行方が左右される可能性が高いため、大変重要度の高い選挙といえます。
衆院山口2区の住民が投票する前に、また、投票する地区でない市民の方にも、そして衆院山口2区の投票結果の如何を問わず、ぜひ読んで頂きたいエッセイだと思います。では、紹介します。
「お坊さんだって怒ってる あの国の真似 やめてほしい
玄侑宗久
標記のタイトルで原稿を受けてしまったものの、その後海の向こうでは多くのお坊さんたちが本当に怒りだした。ビルマでも、チベットでも、またそれを受けて世界中のお坊さんたちも怒っている。彼らの深く潜行した怒りに比べれば、私の怒りなどどうということもない気がするが、約束だから怒ることにする。
まず最近どうしても腹立たしいのは、昨年施行された学校教育法における言葉遣いである。「助教授」が「准教授」になり、「聾(ろう)学校」「盲学校」などが「特別支援学校」という枠組みになった。いったい助教授では何がいけなかったのだろう。「教授の職務を助ける」というこれまでの麗しい規定を排除したのは、助けるヒマがあったら蹴落(けお)とせということだろうか。新しい規定を読むと、教授と競い合う人にしか思えないのだが、どうもこれは英語のassociate professorからの翻訳であるようだ。むろん「支援学校」だって同じくsupport schoolだろう。
英訳したときに都合がいいからと、昔からの日本的感性を写し取った言葉を簡単に棄(す)ててもいいものだろうか。
言葉くらいのことで、とお思いかもしれないが、この言葉遣いの改変が示すのは、じつは日本が長年に培った大切な社会の仕組みまで彼の国を真似(まね)てばかりいるという情けない状況なのだ。
郵便局が民営化したのだってそうだ。隅々まで行き渡った世界一の郵便サービスを棄て、田舎に住む人々が不便になることを承知で民営化したのは何故なのか。考えれば考えるほど、巨大な郵便貯金を市場に導くことをあちらさんがお望みだったこと以外の理由は思いつかない。なるほどその後の郵便局を見ていると、投機など経験のないお年寄りたちに、いろいろとリスクの高い投資をせっせと勧めている。
あちらのお望みどおり小学校から英語を教え、嫌煙権を広げ、そしてメタボリック・シンドロームなどという病気の捏造(ねつぞう)まで手を貸しつつ、郵便貯金まで上納している。しかも規制緩和というなんだか格好いい呼び方であちらの企業が参入しやすいように手揉(ても)みして招く。安全保障のためだとしても、これでは文化まで身売りするようなものだ。
もともとはこの「民営化」というやり方は、あの国の経済学者ミルトン・フリードマンの主張だった。国の仕事は軍と警察以外すべて市場に任すべきだ、という彼の考え方に従い、あの国は1990年代から国の付属機関をどんどん民営化していった。
その結果の惨憺(さんたん)たる現状については、堤未果さんの優れたレポート『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)を是非お読みになってみていただきたい。教育・医療など、国が責任をとるべき領域を民営化した結果がどうなるのか、進み読むほどに恐ろしくなるはずである。
問題なのは、この国の執行部たちはあの国のそうした現状を知りつつ真似ているのかどうか、ということだ。
思い切った言い方をするなら、ブッシュ大統領はわざわざ格差が広がるような政策を行ない続けた。1973年に徴兵制を廃止したアメリカとすれば、貧しさのあまり生活のために入隊する兵士を作りだしつづける必要があったのである。
イラク戦争は、兵士以外の運転手や電気技師、あるいはさまざまな作業員など、多くの部門が民営化されている。貧しい若者というだけの共通点をもつ多国籍の人々が、今や割りの良い就職の場としてのイラクに派遣社員として出かけ、「自己責任」で死んでいくのだ。
言葉や制度をあの国に似せれば、内実だって似てくるに決まっている。長年の努力の成果が稔(みの)り、今や病気も犯罪も格差もあの国に近づいてきた。為(な)せば成ると、きっと大統領もお喜びだろう。
しかしもういい。いいかげん、あの国をモデルにするのはやめていただけないだろうか。海の向こうのお坊さんたちはもう1つの巨大な金銭信仰の国に怒っているのだが、私は今日もその2つの国の製品なしには過ごせない暮らしが腹立たしく、やりきれないのである。
(げんゆう・そうきゅう=僧侶・作家)」
3.幾つかの点に触れていきます。
(1) このエッセイを読むと、僧侶である玄侑宗久さんは、中国当局がチベットの宗教者に対して行っている弾圧について、明白に怒っていることが分かります。「海の向こうのお坊さんたちはもう1つの巨大な金銭信仰の国に怒っている」と書いていますが、ここで出ている「国」は中国のことでしょうから、公然と非難していることが明白です。
これに対して、日本政府はどうなのでしょうか?
「聖火リレー:国境なき記者団事務局長が政府に要請
北京五輪の聖火リレーで中国政府によるチベット暴動弾圧などを批判する国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部パリ)のロベール・メナール事務局長(54)は25日、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で記者会見。福田康夫首相に対し、5月6日に来日する中国の胡錦濤国家主席に、人権状況への懸念を明確に伝えるよう呼びかけた。
メナール氏は26日に長野市で行われる聖火リレーにあわせて来日した。日本について「中国の重要な経済的パートナーであり隣人だけに、言うべきことははっきり言うべきだ」と発言。福田首相が影響力を行使するよう注文した。
長野では沿道で五輪を手錠で描いた旗を掲げ抗議する予定だが、「あくまで平和的に行う」と語った。
また、北京五輪開催については、決定前から反対してきたと強調。中国での人権状況の改善が一連の抗議行動の目的だと述べた。
メナール氏らは3月、ギリシャでの採火式で抗議活動を行い一時拘束された。同氏は25日に米国から成田空港に到着したが、入国手続きの際、日本の法律を順守することを求められ、書面に署名したという。【和田浩明】
毎日新聞 2008年4月25日 20時35分(最終更新 4月25日 20時54分)」
日本国に入った者が日本法を守ることは当然のことです。ですから、入国者に対して、日本法を遵守せよという誓約を求めることをしません。
「メナール氏らは3月、ギリシャでの採火式で抗議活動を行い一時拘束された。同氏は25日に米国から成田空港に到着したが、入国手続きの際、日本の法律を順守することを求められ、書面に署名したという。」
メナール氏らは3月、ギリシャでの採火式で抗議活動を行っているものの、「一時拘束」に止まったのですから、ギリシャでも違法行為ではないのですから、それを根拠に誓約をさせるのも不合理です。ましてや、メナール氏は日本において何も違法行為をしておらず、明白な犯罪行為実行の意図を表明しているわけでもないのです。
それなのに、日本政府は、メナール氏はに対して、わざわざ「違法な行動はとらない」と書面に署名さえ求めたのですから、非常に疑問に感じます。これでは、日本政府は要望を受けたわけでもないのに、中国政府に対してわざわざ「きちんと対処しています」と卑屈なへつらいをしてみせたとしか思えません。この報道を聞いて、心底、今の自民党政権に対して嫌悪感を抱きました。
(2) このエッセイは、今やどこでも報道していない点、すなわち、郵政民営化について触れています。
「郵便局が民営化したのだってそうだ。隅々まで行き渡った世界一の郵便サービスを棄て、田舎に住む人々が不便になることを承知で民営化したのは何故なのか。考えれば考えるほど、巨大な郵便貯金を市場に導くことをあちらさんがお望みだったこと以外の理由は思いつかない。なるほどその後の郵便局を見ていると、投機など経験のないお年寄りたちに、いろいろとリスクの高い投資をせっせと勧めている。」
「隅々まで行き渡った世界一の郵便サービスを棄て、田舎に住む人々が不便になることを承知で民営化」することになったのは、小泉政権下における、2005年9月11日の郵政民営化選挙でした。
平成19年10月1日、日本郵政公社が民営化され、それによる数々の不利益については以前触れていますが(「10月1日、郵政民営化スタート〜しかし、現状は各地で相次ぐ簡易郵便局の閉鎖」(2007/10/04 [Thu] 07:54:22)参照)、今でもその不利益は続いたままです。
小泉政権の熱狂に惑わされてしまった一部国民のおかげで、国民全員、特に弱い立場にある国民が「自己責任」として不利益を被っているのです。「貧しい若者というだけの共通点をもつ多国籍の人々が、今や割りの良い就職の場としてのイラクに派遣社員として出かけ、『自己責任』で死んでいく」のと同様に。
(3) このエッセイの最後の方で、今の自民党政権に対して、強く抗議しています。
「問題なのは、この国の執行部たちはあの国のそうした現状を知りつつ真似ているのかどうか、ということだ。(中略)
イラク戦争は、兵士以外の運転手や電気技師、あるいはさまざまな作業員など、多くの部門が民営化されている。貧しい若者というだけの共通点をもつ多国籍の人々が、今や割りの良い就職の場としてのイラクに派遣社員として出かけ、「自己責任」で死んでいくのだ。
言葉や制度をあの国に似せれば、内実だって似てくるに決まっている。長年の努力の成果が稔(みの)り、今や病気も犯罪も格差もあの国に近づいてきた。為(な)せば成ると、きっと大統領もお喜びだろう。
しかしもういい。いいかげん、あの国をモデルにするのはやめていただけないだろうか。」
米国の要望を下僕のように忠実に守ることで、大統領を喜ばせることはもう止めようではないか、米国の真似をして日本を破壊することは止めてほしいと、日本政府に対して訴えているのです。玄侑宗久さんは、自民党政権に対して「怒っている」のです。
4.最初に書きましたが、衆院山口2区補欠選挙は、本日(4月27日)投票です。
(1)
「4月15日の記念日名、続々。「廃老記念日」と大阪の76歳男性。「9月の敬老の日に対する精いっぱいの反発」込めたと。
× ×
「天引き記念日」と東京の84歳女性。はがきに夫婦の年金天引き金額明細。あの日に突然、こんなに引かれてしまうとは。
× ×
「姥(うば)捨て記念日」と札幌の86歳男性。シベリア抑留後「一働き蜂として経済大国実現に努めた」と。人それぞれ歴史あり。」(朝日新聞平成20年4月26日付夕刊「素粒子」)
「廃老記念日」「天引き記念日」「姥捨て記念日」などと、高齢者が嘆くほど過度に負担を生じさせる「後期高齢者医療制度」は、とても維持していいものとは思えません。
この「後期高齢者医療制度」は、医療費抑制を狙った2006年医療制度改革の一環で導入が決まったもので、郵政民営化と同様、小泉政権下で導入されたものです。当時の小泉純一郎首相は国会で「高齢世代と現役世代の負担を明確化し、分かりやすい制度にする必要がある」と繰り返していたのです(東京新聞平成20年4月16日付)。いわば、高齢者や65〜74歳で一定の障害者といった、社会的に弱い立場にある者に対して、過大な不利益を課したのは、小泉政権なのです。
もはやこうした過大な不利益、小泉政権の負の遺産は、直ちに見直すべきではないでしょうか。
しかし、福田政権は「長期高齢者医療制度」を見直す意思は皆無です。
だとすれば、選挙により「長期高齢者医療制度」の廃止(見直し)に追い込み、自民党政権をできる限り早急に終わりにして、自民党政権下で延々と続いている「日本の破壊・社会的弱者いじめ」から、脱却するべきなのです。
(2) 今、東京の大手の書店では、小林多喜二著『蟹工船』が大きく扱われています。書店の中で目に付きやすい場所でポップ広告が付されていて、しかも平積みされたままです(特に、「新潮文庫」版)。それもすでに何ヶ月も同じ状態なのです。
「おい、地獄さ行ぐんだで!」
という衝撃的な書き出しで始まるこの小説は、よくご存知のことだと思います。
「「蟹工船」重なる現代 小林多喜二、没後75年
2008年02月14日
今年は作家小林多喜二の没後75年にあたる。代表作『蟹工船』の地獄のような労働と、ワーキングプアと呼ばれるような現代の貧困労働者との類似性が、最近注目されている。
実際の事件をモデルにした小説『蟹工船』は、海上でのカニの缶詰め作業のため、安い金で集められた貧しい男たちがひどい扱いに怒り、暴力で支配する監督に力をあわせて立ち向かう様子を描いている。
若年の貧困労働者問題にとりくむ作家雨宮処凛さんと作家高橋源一郎さんは、先月、毎日新聞の対談で、『蟹工船』は現在のフリーターと状況が似ているし、学生たちも共感するという意見で一致していた。(以下、省略)」asahi.com(2008年02月14日)
「蟹工船」では、極貧の状況にある人たちが、過酷な残業を強いられ、すべての人間的権利を剥奪されて非人間的な搾取にあうのです。派遣労働者やパートの置かれている状況は、現代の「蟹工船」と同じ状況にあるとして、今、この小説がブームになっているのです。
日本社会の現実と共通するがゆえに、「蟹工船」が売れ続けていることは、あまりに異常すぎると思うのです。書店で何ヶ月も大きく取り上げられ、ずっと売れ続けているのを見る度に、痛感させられます。
このおかしな状況から脱却するべく、衆院山口2区の住民の皆さんには期待しています。
| #[ 編集 ]
アメリカの医療界においては“medicalization”(病気作り)がキーなのだそうですね。
私が子供の頃は、極端に落ち着きが無く、じっと黙って座っていることが出来ないガキは、最終的に先生が「ええかげんにせぇ!」とげんこつを食らわし、静かにさせたものですが、今はADHDという大層な名前の付いた、立派な“障害”。 障害ですから治療薬が投与される。
アメリカの小学校では、朝の始業前、保健室に子供の列が出来るのですと。 もちろん薬を貰うためです。
>堤未果
彼女の『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)は、私も周りの人達に勧めている良書です。
ネオリベの負け組を「軍に入るくらいしかない」という状況に追い込む、アメリカのリクルーティングシステムは、実に周到で、悪魔的によく出来ています。
前にも言った気がしますが、日本の司法制度改革(弁護士を増やす)は、経団連あたりを経由したアメリカの要望だと聞きます。
“日本の文化”が米企業の市場参入を妨げているので、全て表に出して法的に白黒付ける“アメリカの文化”を受容させようという魂胆だとか。
URL | rice_shower #UXr/yv2Y[ 編集 ]
非公開コメントですので、修正した形で引用することにします。
>善光寺……。
なるほど〜。東京にいると報道はされていても、色々分からないことがありますね。どんな落書きだったのかまるで分かりませんでしたが、情報ありがとうございます。
>「チベットに自由を」というなら……
チベットよりの報道、中国よりの報道、どうにもどの辺りが真実なのか、よく分からない感じです。やたらといわゆる「ネット右翼」さんたちがチベットの人権保障をせよと言わんばかりに騒いでいるのも、妙な感じですし。えーと、日本国内の人権問題はどうなっているのだろうと……。
>せめてガソリンくらい安くしてもらいたい
それは切に思います。
自民、公明の与党は4月30日の衆院本会議で、ガソリン税などの暫定税率を復活させる税制改正関連法案を、憲法の規定に基づき、衆院の「3分の2」以上の勢力で再議決するそうです。自民、公明にとっては、選挙での民意はまるで無視のようです。
>彼女の『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)
>ネオリベの負け組を「軍に入るくらいしかない」という状況に追い込む、アメリカのリクルーティングシステムは、実に周到で、悪魔的によく出来ています
ああ。確かに悪魔的です。
『ルポ 貧困大国アメリカ』によると、入隊しても貧困ラインギリギリの給料で、お金は手元に殆ど残らず、帰還してもホームレスの3人に1は帰還兵、イラクに駐留する兵士の6人に1人が深刻な精神障害を抱えているとか。どうあがいて見ても、どこまでも救われない……。ひどいものです。
>前にも言った気がしますが、日本の司法制度改革(弁護士を増やす)は、経団連あたりを経由したアメリカの要望だと聞きます
弁護士が増加して、今や赤字で親の年金で生活している弁護士(肩書きだけ?)もいるとか。今や、「蟹工船」の中にいる弁護士もいる日本になったようです。アメリカの要望とはスゴイもんですね。
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