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2008/04/16 [Wed] 23:46:53 » E d i t
光市事件の裁判を扱ったテレビ各局の番組について、以前、放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、調査して意見をまとめることにしたとの記事を紹介しましたが(「「放送倫理・番組向上機構」(BPO)、光市事件裁判報道の調査を決定」(2008/01/13 [Sun] 23:49:29)参照)。

4月15日、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、「番組の多くが極めて感情的に制作され、偏った内容になっていた」などと指摘、各局に裁判報道の改善を求める意見を通知しました。

対象は民放キー局や中国放送(広島市)、NHKなどが、昨年5月から9月に放送した20番組計33本で、いずれも事件の差し戻し控訴審を取り上げたニュースや情報系番組です。当然ながら、橋下徹大阪府知事が就任前の昨年5月、被告弁護人への懲戒請求を呼び掛けたバラエティー番組「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ、大阪市)も含まれています(共同通信)。特に、「たかじんのそこまで言って委員会」は番組改善に努め、その番組で刑事裁判・刑事弁護に関する基本的な理解について全く欠如した煽り立てを行った橋下徹氏は、猛省すべきです。


1.「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、意見書のなかで次のように徹底して酷評しています。

<1>多くは極めて感情的に制作していた、
<2>その場の勢いで、感情的に反応するだけで、他局でやっているから自局でもやる、さらに輪をかけて大袈裟にやる、という『集団的過剰同調番組』であった
<3>番組制作者に刑事裁判の仕組みについての前提知識が欠けていた、
<4>独自の取材や考察をすることがなく、いわゆる「素材負け」していた、
<5>実感のおもむくまま放映しただけで、何も残らない「巨大なる凡庸」につきる



これらを端的にまとめているのが、次の記者会見での川端委員長の言葉です。

「 検証委の川端和治委員長は記者会見で「刑事裁判に関する基本的な理解が不足しており、裁判報道に求められる公平性、正確性、公正性が忘れられた一方的な番組が相当数見られた」と指摘した。(02:03) 」(日経新聞平成20年4月16日付朝刊「「光市母子殺害「TV放送は感情的」・BPO検証委が意見書」 )


要するに、憲法上、定められている刑事裁判のやり方について(憲法34条、36条、38条、37条)、理解不足なのですから、番組制作者に憲法の理解に欠けていたこと放送倫理要綱や放送基準などで定めている公正性・正確性・公平性の原則に違反していることの2点が最大の問題でした。


放送倫理検証委員会はその「報告書」において、公正性・正確性・公平性の原則違反について、次のように特に「付言」しています。

「ここで、こうした問題にもまして委員会が強調したいことは、番組制作者の主体的意欲の問題である。公正性・正確性・公平性の原則は、表面的に捉えれば、真実を明らかにするための手続きにすぎない。真正面から事象に向き合い、取り組もうとする放送人にとっては、足して2で割るような公平性ではなく、みずからが、みずからの力で切り開く真実性こそが唯一の原則であろう。もしかしたらそこで、被疑者・被告の有罪・無罪までが見通せることにもなるかもしれない、そのような深い調査と洞察に基づく原則である。
 番組制作者には、委員会がこの段落の「付言」に込めた期待を読み取っていただきたいと思う。」


検察と弁護側の主張を単に並べるだけで、とって付けたような「公平さ」は意味がない。当事者の主張は、ごく最初の取っ掛かりにすぎず、もっと踏み込んだ考察をし、「みずからが、みずからの力で切り開く真実性」を追及した番組を制作してほしい――。番組制作者が「主体的意欲」をもって臨んでほしいというのが、「公正性・正確性・公平性の原則」の真の意味である、ということなのだと思います。



2.最も詳しい報道記事を2つ紹介します。

(1) 東京新聞平成20年4月16日付朝刊15面「放送芸能」欄

『裁判員』控え重い課題 光市母子殺害報道でBPO意見  「民放連の基準 未達成」 制作サイドの知識不足も指摘
2008年4月16日 朝刊

 山口県光市の母子殺害事件裁判を扱った番組について、放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会が十五日、公表した意見は、現状の裁判報道が抱える問題点を提起した。裁判員制度のスタートを来年五月に控え、各局は重い課題を突きつけられた。 (近藤晶)

 「裁判員制度では、一般市民が量刑まで決める。テレビが不当な影響を与え、誤った裁判が行われることになれば、非常に重大な問題になる」。裁判員制度開始を見据え、同委員会の川端和治委員長は会見でこう危惧(きぐ)した。

 民放連は今年一月、裁判員制度下における事件報道についての基準=別表=をまとめているが、「基準は今回の放送の後に出されたものだが、この基準が実現されているとはいえない」(川端委員長)と厳しい見方を示した。

 同委員会は、関西テレビの捏造(ねつぞう)問題をきっかけに、昨年五月、BPO内に設立。評論家の立花隆氏ら識者十人で構成され、虚偽の内容によって視聴者に著しい誤解を与えた番組があった場合、放送局に勧告や見解を出し、再発防止策の実行などを求める。従来、個別の番組に関する放送倫理上の問題を検証するが、今回、放送全般に対して意見を述べることにしたのは、一連の裁判報道全体に共通した問題があるのではないかとの懸念があったためだ。

     ◇

 委員会が審議したのは、二十番組三十三本計七時間半に上る。小委員会を設け、各局へのアンケートと番組制作者への聞き取り調査も実施。(1)番組制作者は刑事裁判の仕組みをどの程度理解していたか(2)適切な取材・演出・表現をしたか-を念頭に検証を進めた。

 意見によると、一連の放送の基本的な構成はこうだ。被告の荒唐無稽(むけい)で奇異な供述の部分を、イラストやナレーションで断片的に再現。次に被害者遺族に会見やインタビューで、その供述や弁護団に対する怒りや無念の気持ちを語らせる。さらにスタジオの司会者やコメンテーターが、被告・弁護団を強く非難し、被害者遺族に同情や共感を示す。

 意見ではまず、裁判所や弁護人の役割、刑事裁判の「当事者主義」について、番組制作者の知識不足に言及。「初歩的な知識を欠いた放送は、感情的に行われるほど視聴者に裁判制度に関するゆがんだ認識を与えかねない」と危惧した。

 被告に関する報道では「一つとして、被告人の心理や内面の分析・解明を試みた番組はなく、このこと自体が異様」と問題視。演出や表現についても「安易な対比的手法は、事件の理解にも犯罪防止にも役立たないことはあきらかであり、深刻に再考されるべきである」と見直しを求めた。

 光市事件の差し戻し控訴審の判決は、今月二十二日に予定されている。同委員会は、意見について「どういう裁判報道や事件報道が望ましいのか真剣に検討してほしい。その材料を提供した」としている。意見で指摘された問題点を踏まえ、各局が、今後、裁判報道にどう生かしていくかが課題になる。

 NHKと、民放各局でつくる日本民間放送連盟は今回の意見について、いずれも十五日の時点では「コメントはない」としている。

 読売テレビ(大阪市)は、「放送倫理検証委員会の審議の結果として出された、一つのご意見として承ります」としている。


裁判員制度下における事件報道について 

  (関係項目)

・事件報道にあたっては、被疑者・被告人の主張に耳を傾ける。

・一方的に社会的制裁を加えるような報道は避ける。

・事件の本質や背景を理解するうえで欠かせないと判断される情報を報じる際は、当事者の名誉・プライバシーを尊重する。

・多様な意見を考慮し、多角的な報道を心掛ける。

・予断を排し、その時々の事実をありのままに伝え、情報源秘匿の原則に反しない範囲で、情報の発信元を明らかにする。また、未確認の情報はその旨を明示する。

・国民が刑事裁判への理解を深めるために、刑事手続きの原則について報道することに努める。

  (民放連 2008年1月17日)


 <山口県光市母子殺害事件> 1999年4月、山口県光市で会社員・本村洋さんの妻=当時(23)=と長女=同11カ月=が自宅で殺され、県警は近くに住む元少年=同(18)=を逮捕した。検察側の死刑求刑に対し、一審の山口地裁(2000年3月)、二審の広島高裁(02年3月)ともに無期懲役の判決。だが、最高裁は06年6月、二審判決を破棄、広島高裁に差し戻した。一、二審とも殺人、強姦致死などの事実認定では争いがなかったが、現弁護団は殺意や強姦の意思を否定している。」

*見出しは、紙面記載のものをすべて引用してみました。



(2) 朝日新聞平成20年4月15日付朝刊33面

光市事件報道 BPO「感情的に制作」
2008年04月16日01時07分

 NHKと民放でつくる第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会(委員長・川端和治弁護士)は15日、山口県光市で起きた母子殺害事件の差し戻し控訴審をめぐる一連のテレビ報道・番組について「感情的に制作され、公正性・正確性・公平性の原則を逸脱している」などとする意見を発表した。同日、NHKと在京民放5局に通知した。川端委員長は「各局で議論した上で、その結果が報告されることを期待する」と話した。

 同委員会は番組に放送倫理上の問題が疑われる場合、独自の判断で審議する組織。07年5~9月に差し戻し控訴審の内容を伝えたNHKと民放の8放送局、延べ33番組を調べた。今回は、個別番組ごとの問題ではなく、多くの番組に共通した傾向を全般的に取り上げた。

 意見書では、ある番組で被告側の主張を「命ごいのシナリオ」と呼ぶなど、被告弁護団や検察官、刑事裁判の仕組みや役割を十分認識していない▽被告人がどういう人間かが伝わらず、その発言を表面的に批判・反発している▽被害者家族の会見映像が多く流され、同情・共感を強く訴える内容になっている――ことなどを指摘。「一方的で感情的な放送は、広範な視聴者の知る権利にこたえられず、視聴者の不利益になる」とし、来年から実施される裁判員制度への影響にも触れている。

 意見書を受けたある民放局広報部は「今後の報道に生かしていきたい。現場でも読ませていただき、意見交換した上で、何らかの形でBPOに回答したい」としている。

 この問題では昨年11月、有志の「『光市事件』報道を検証する会」が委員会に調査と審理を要請していた。」




3.東京新聞は、同日朝刊26面でもこの問題について記事を掲載していますから、かなり熱心に記事にしています。テレビ報道に対して、揶揄することなく正面から批判でき、痛みを感じさせることができるのは新聞だけなのです。

ですから、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会の報告書について、できる限り内容を詳しく記事にしたことには敬意を表したいと思います。こうして新聞の役割を果たしたのですから。


(1) しかし、それでも報告書の内容の紹介は少ないように思います。

「意見によると、一連の放送の基本的な構成はこうだ。被告の荒唐無稽(むけい)で奇異な供述の部分を、イラストやナレーションで断片的に再現。次に被害者遺族に会見やインタビューで、その供述や弁護団に対する怒りや無念の気持ちを語らせる。さらにスタジオの司会者やコメンテーターが、被告・弁護団を強く非難し、被害者遺族に同情や共感を示す。
 意見ではまず、裁判所や弁護人の役割、刑事裁判の「当事者主義」について、番組制作者の知識不足に言及。「初歩的な知識を欠いた放送は、感情的に行われるほど視聴者に裁判制度に関するゆがんだ認識を与えかねない」と危惧した。
 被告に関する報道では「一つとして、被告人の心理や内面の分析・解明を試みた番組はなく、このこと自体が異様」と問題視。演出や表現についても「安易な対比的手法は、事件の理解にも犯罪防止にも役立たないことはあきらかであり、深刻に再考されるべきである」と見直しを求めた。」(東京新聞)

「意見書では、ある番組で被告側の主張を「命ごいのシナリオ」と呼ぶなど、被告弁護団や検察官、刑事裁判の仕組みや役割を十分認識していない▽被告人がどういう人間かが伝わらず、その発言を表面的に批判・反発している▽被害者家族の会見映像が多く流され、同情・共感を強く訴える内容になっている――ことなどを指摘。「一方的で感情的な放送は、広範な視聴者の知る権利にこたえられず、視聴者の不利益になる」とし、来年から実施される裁判員制度への影響にも触れている。」(朝日新聞)


報告書は40頁(表紙や目次を除く)にも及ぶのに、紙面で紹介した内容はたったこれだけなのです。

紙面では、「裁判所や弁護人の役割、刑事裁判の「当事者主義」について、番組制作者の知識不足」「ある番組で被告側の主張を「命ごいのシナリオ」と呼ぶなど、被告弁護団や検察官、刑事裁判の仕組みや役割を十分認識していない」と書いてはいます。

しかし、こう書いただけでは、刑事裁判の仕組みとは具体的にどういうもので、どう具体的に理解していない内容であったのか、さっぱり分からないのです。もっとしっかり批判すべきであったと思うのです。もっとも、後々、社説などで批判する可能性はあるかもしれませんが。



(2) 東京新聞の記事では、なぜ今、報告書を出したのかについて書いています。

「光市事件の差し戻し控訴審の判決は、今月二十二日に予定されている。同委員会は、意見について「どういう裁判報道や事件報道が望ましいのか真剣に検討してほしい。その材料を提供した」としている。意見で指摘された問題点を踏まえ、各局が、今後、裁判報道にどう生かしていくかが課題になる。」(東京新聞)


報告書を4月22日の差し戻し控訴審の前に出すことで、各テレビ局は、今回の報告書を真剣に受け止めて、真っ当な裁判報道をすることを要求するためだ、ということです。4月22日の裁判報道について、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は注視しているということです。

視聴者である側も、4月22日の裁判報道について、真っ当な裁判報道をしたかどうか、確認するべきだと思います。感情的で歪んだ裁判報道は、多様な意見を求めている国民の知る権利(憲法21条)を害してるからです。



「光市事件報道問題:BPOは各局に裁判報道の改善要求(下)」では、「光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見書」の内容を紹介して、論じてみたいと思います。


テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

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2008/04/17(木) 18:32:48 | 晴天とら日和
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