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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2008/07/30 [Wed] 06:29:17 » E d i t
山口県下関市のJR下関駅で1999年9月、5人を殺害、10人に重軽傷を負わせたとして、殺人罪などに問われた元運送業上部康明被告(44)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(今井功裁判長)は7月11日、「対人恐怖症に悩んできたことを考慮しても、死刑を是認せざるを得ない」と結論付け、被告の上告を棄却しました。これにより、1、2審の死刑判決が確定することになります。

この裁判では、責任能力の有無が争点であり、弁護側は「社会から敵視されてきたとの妄想に支配され、心神喪失状態だった」と無罪を主張していたのですが、本判決は、完全責任能力を認定し、死刑を妥当としたのです。

平成20年7月31日追記:被害者遺族の主張する刑法39条廃止論についての分析について追記しました。)


1.報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年7月12日付朝刊1面

99年下関駅無差別殺傷、上部被告の死刑確定へ
2008年7月11日15時39分

 山口県のJR下関駅で99年に5人が死亡、10人が重軽傷を負った無差別殺傷事件で、最高裁第二小法廷(今井功裁判長)は11日、殺人などの罪に問われて一、二審とも死刑とされた元運送業・上部(うわべ)康明被告(44)の上告を棄却する判決を言い渡した。上部被告の死刑が確定する。

 公判では、犯行時の被告に刑事責任能力があったかが争点だったが、第二小法廷は「心神喪失または心神耗弱の状態にはなかった」とする二審・広島高裁の判断は相当だと述べた。

 判決によると、上部被告は99年9月29日夕、レンタカーで下関駅構内に突入。通行人らをはねたうえ、車から降りてホームに駆け上がり、包丁で乗降客らに切りつけた。

 動機について第二小法廷は「将来に失望して自暴自棄となり、自分をそのような状況に陥れたのは社会や両親だとして、衝撃を与えるために無差別大量殺人を企てた」と指摘。確定的な殺意をもって5人の生命を奪ったという結果の重大性や、「通り魔的な大量殺人」として社会に与えた衝撃、遺族の処罰感情の強さなどを考慮すると、死刑もやむを得ないと結論づけた。

 一審段階で2回実施された精神鑑定では、「妄想性障害の状態で心神耗弱にあたる」という意見と、「著しい障害があったとはいえない」という意見に分かれた。二審段階で改めてもう一度、精神鑑定がされ、「軽度の対人恐怖症で被害妄想もあったが、犯行に直接関係していない」と事実上、責任能力を認めた。

 上告審で弁護側は、東京・秋葉原で6月に起きた無差別殺傷事件との類似性に言及。「秋葉原では容疑者にためらいや良心のとがめがあったようだが、上部被告にはなかった」と弁論で述べ、上部被告に責任能力はなく、無罪だとする主張を繰り返した。(岩田清隆)」



(2) 東京新聞平成20年7月12日付朝刊27面

『命の重さと向き合って』

 下関通り魔事件の最高裁判決後、遺族や被害者は東京・霞が関で会見。「事件から九年。何度も精神鑑定が続き、長い裁判の日々だった」と振り返った。

 妻をひき殺された松尾明久さん(67)は遺影を持って法廷に入った。「裁判は終わった、思い通りの判決だったよ、と心の中で遺影に呼び掛けた」という。被告には「命の重さに向き合ってもらいたい」と話した。

 起訴前の簡易鑑定を含め精神鑑定は計四回実施された。鑑定のたびに裁判が延期された。

 松尾さんは「つらい時間が長かった。精神障害で心神喪失や心神耗弱と判断されると、刑が軽くなったり、起訴すらされないという法律はおかしいと思う」と訴えた。

 切りつけられて重傷を負った永藤登さん(77)は「退院してからも両手が使えず、だまってはいられないと被害者の会を結成した。会に報告できる判決で良かった」と話した。」




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刑法 *  TB: 2  *  CM: 0  * top △ 
2008/07/27 [Sun] 23:59:48 » E d i t
最近、医師を含めた医療関係者による患者・家族への誹謗中傷が横行し、問題視されています。インターネット上での誹謗中傷問題の1つであり、当然ながら侮辱罪(刑法231条)、名誉毀損罪(刑法230条)、脅迫罪(刑法222条)という刑事処罰の対象となる表現行為といえます。

インターネット上での誹謗中傷問題の1つにすぎないと思えるのに、なぜ特に問題視されるのかというと、患者のカルテといった医療情報が流出していることから、守秘義務違反罪(医療法72条、刑法134条)や秘密漏示罪(刑法134条)に当たる行為まで及んでおり、医療特有の問題が含まれているからなのです。


刑法第134条(秘密漏示)
1 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2 宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。

刑法第222条(脅迫) 
1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法第230条(名誉毀損罪)
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

刑法第230条の2(公共の利害に関する場合の特例) 
1 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

刑法第231条(侮辱) 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。


医療法第72条 
1 第5条第2項若しくは第25条第2項若しくは第4項の規定による診療録若しくは助産録の提出又は同条第1項若しくは第3項の規定による診療録若しくは助産録の検査に関する事務に従事した公務員又は公務員であつた者が、その職務の執行に関して知り得た医師、歯科医師若しくは助産師の業務上の秘密又は個人の秘密を正当な理由がなく漏らしたときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 職務上前項の秘密を知り得た他の公務員又は公務員であつた者が、正当な理由がなくその秘密を漏らしたときも、同項と同様とする。
3 第6条の11第4項の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。




1.昨年末頃からの報道記事を幾つか引用しておきます。

(1) 共同通信(2007/10/01 11:34)

侮辱罪で医師に略式命令 ネット掲示板で夫を中傷

 奈良県の大淀町立大淀病院で出産中に意識不明になり、約20の病院に受け入れを断られた末に死亡した妊婦の夫を、インターネットの掲示板で中傷したとして、奈良区検は1日までに、侮辱罪で横浜市の医師を略式起訴。奈良簡裁は科料9000円の略式命令を出した。

 中傷とは別に、カルテの内容などがネット上に流出しており、奈良県警は慎重に捜査している。

 命令によると、医師は昨年10月18日、勤め先のクリニックのパソコンを使って、医師専用のインターネットの掲示板に夫を中傷する書き込みをした。

 妊婦は昨年8月に頭痛を訴え意識不明になったが、主治医はけいれんと判断、死因は脳内出血だった。関係者によると、昨年10月に死亡が報道された直後から、掲示板で議論が始まった。

 カルテなどの流出を知った遺族がことし4月、刑事告訴を検討していることを明らかにしていた。

2007/10/01 11:34 【共同通信】



(2) 共同通信(2008/05/18 17:37)

ネットで横行、患者中傷 医療事故被害者が標的に

 医療事故で亡くなった患者や家族らを中傷する内容の書き込みがインターネット上で横行しているとして、事故被害者の遺族らが18日までに、実態把握や防止策の検討に乗り出した。悪質な事例については、刑事告訴も辞さない方針だ。

 遺族らは「偏見に満ちた書き込みが、医師専用の掲示板や医師を名乗る人物によるブログに多い。悲しみの中で事故の再発防止を願う患者や遺族の思いを踏みにじる行為で、許し難い」と指摘。

 厚生労働省も情報を入手しており、悪質なケースで医師の関与が確認された場合は、医道審議会で行政処分を検討する。

 中傷を受けた遺族や支援する弁護士ら約20人は4月、大阪で対策協議会を開催。日弁連人権擁護委員の弁護士も出席した。会場では被害報告が続出し、今後も情報交換を続け、対応を検討することを確認した。

2008/05/18 17:37 【共同通信】」



(3) 産経新聞(2008.5.18 19:31)

ネットで横行、患者中傷
2008.5.18 19:31

 「不良患者」「医療テロリスト」-。医療事故の被害者を中傷する書き込みがインターネット上で横行しており、事故被害者の遺族らが実態把握や防止策の検討に乗り出した。悪質な事例には刑事告訴も辞さない方針だ。遺族らは「偏見に満ちた書き込みは、医師専用の掲示板などに多い。事故の再発防止を願う患者や遺族の思いを踏みにじる行為」と指摘している。

 厚生労働省も、悪質なケースで医師の関与が確認された場合、医道審議会で行政処分を検討する。

 中傷を受けた遺族や支援する弁護士らが4月、大阪で対策協議会を開催。協議会によると、中傷の多くは「医師に事故の責任はなく、悪いのは患者」との趣旨で、患者や支援団体を「医療カルト集団」とののしったり、事実と異なる内容を書き込むケースもあるという。」



このようにすでに侮辱罪で処罰された医師さえもいます。

「偏見に満ちた書き込みが、医師専用の掲示板や医師を名乗る人物によるブログに多い」(共同通信)のですが、その「医師専用の掲示板」とは、ソニーグループの「ソネット・エムスリー」(本社・東京都港区)が運営する医療専門サイト内に設置された「m3.com Community」のことです。今は、運営会社は「全投稿のチェックシステムなど改善策を整えた」として、「Doctors Community」に掲示板の名称を変えただけで、性懲りもなく再開しています(毎日新聞2007年10月1日15時00分参照)。

医師と思われる方が書いているブログ・HPも、患者に対して度を越えた誹謗中傷を行っているものも少なくありませんく(このブログにも、そうした医師からの誹謗中傷があった)。

「不良患者」「医療テロリスト」といった書き込みや、患者や支援団体を「医療カルト集団」と罵った書き込みさえあるようですが、これらも十分に侮辱罪に該当しうる表現です。医師専用の掲示板に集う医師たちは、侮辱や名誉毀損に当たる行為をしてはいけないという、法規範を遵守する意思に欠けている者が少なくないようです。


 「厚生労働省も情報を入手しており、悪質なケースで医師の関与が確認された場合は、医道審議会で行政処分を検討する。」(共同通信)


医療過誤が発生した場合の行政責任については、医師法が規定しています(医師法7条2項)。罰金以上の刑に処せられた者、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者、医師としての品位を損するような行為を行った者に対して、厚生労働大臣は、戒告、3年以内の医業の停止、免許の取消しから選択して処分できるのです。ただし、諮問機関である「医道審議会」の意見を聴いてから、行政処分をすることになります(7条4項)。そして、医療過誤の再発を防止するため、行政処分を受けた医師に対して、再教育を施す制度が用意されています。

医師による患者・家族への誹謗中傷については、今後はこうした行政処分を積極的に活用していこうということのようです。


こうした医療関係者による誹謗中傷の実態について、東京新聞平成20年7月27日付「こちら特報部」で記事にしていましたので紹介したいと思います。


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2008/07/26 [Sat] 23:59:42 » E d i t
和歌山毒物カレー事件が発生してから、今年の7月25日で丸10年になりました。


1.中国新聞平成20年7月25日付「社説」

毒物カレー事件10年 真相知りたい思い募る '08/7/25

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 地域の住民にとって楽しいはずの夏祭りの会場をパニックに陥れた和歌山市の毒物カレー事件が発生して、きょうで丸十年になった。カレーに猛毒のヒ素を混ぜ、子どもたちまで犠牲にした、犯罪史上まれに見る無差別殺人事件である。だが、多くの謎が残されたままだ。

 事件が起きたのは一九九八年七月二十五日夜。和歌山市園部の夏祭りで、カレー鍋にヒ素が混入された。食べた住民六十七人が急性ヒ素中毒を発症し、うち四人が亡くなった。

 この年の十二月、林真須美被告(47)が殺人罪などで起訴された。被告は全面否認したが、一、二審で死刑判決を受けた。最高裁に上告している。

 年月が経過したとはいえ、今なお後遺症やストレス障害に苦しんでいる被害者も少なくないという。身内を失った遺族や被害者にすれば、判決が確定しない限り、やりきれない思いが募るのも当然といえる。

 真相解明を困難にしている背景には、自白や犯行そのものの目撃証言といった容疑者に直接結びつく証拠がないことがあるようだ。林被告は捜査段階から一審まで黙秘を続けた。二審では一転して無罪の主張を語り始めた。それなら、なぜ最初から潔白を訴えなかったのか、釈然としない。

 最大のポイントであった犯行の動機や目的については、どこまで明らかにされたのだろうか。控訴審判決は「他の主婦から疎外されたことへの腹立ち紛れの犯行と見るのが最も自然」との見方を示しながらも、「被告が真実を語ろうとせず、断定は困難」と述べている。裁判所が動機の解明をあきらめたようにも受け取れる。

 ヒ素混入の機会については、住民証言を基に「犯行時間帯に被告が一人でいた時間があった」とした。一方、「一緒にいた」などとする次女の供述は「被告をかばう虚偽の可能性が高い」と退けた。

 直接的な証拠がない中、被告宅にあったヒ素とカレー鍋のヒ素が同じかどうかも、焦点となった。科学鑑定の結果、同一性があると認定。入手が難しいヒ素を被告が一連の殺人未遂事件でも使っていたことと合わせ、「被告が犯人であることは疑いを入れる余地がない程度まで立証されている」と結論づけている。

 客観的な状況証拠を積み重ねた判断といえるだろう。近年、こうして立証する事件が増えているが、間接的な証拠をどう評価するか判断が分かれるケースも多い。

 八一年の「ロス銃撃事件」のように、一審の無期懲役が二審で逆転無罪となって確定した例もある。上告審では、裁判所としてさらに真実を突き止める努力が必要ではないか。

 事件では、報道のあり方をめぐって批判が相次いだ。被告宅周辺に大勢の報道陣が張り付いて、外出の時も追いかけた。取材攻勢で近隣住民の平穏な生活を脅かしたことも否めない。節度ある取材をあらためて肝に銘じたい。」



この中国新聞の社説は、報道機関の和歌山毒物カレー事件に対する一般的な評価だと思います。そして、刑事裁判に対する評価についても。

「真相解明を困難にしている背景には、自白や犯行そのものの目撃証言といった容疑者に直接結びつく証拠がないことがあるようだ。林被告は捜査段階から一審まで黙秘を続けた。二審では一転して無罪の主張を語り始めた。それなら、なぜ最初から潔白を訴えなかったのか、釈然としない。」


この記述を見ると、「最初から潔白を訴えなかった」ことを疑問視しています。つまり、黙秘していたこと自体を怪しみ、非難しているのです。

被疑者は、拷問によって供述を強要されないというにとどまらず、供述するか供述しないかの自由な自己決定権を有しています。供述しないことも供述することも自由です。ただ、黙っている権利を保障しただけでなく、こうした自由な供述を保障しているのが黙秘権であり、人間の尊厳に由来しているのです(刑事訴訟法198条2項、憲法38条1項。田口守一『刑事訴訟法(第4版補正版)』(弘文堂、平成18年)132頁)。

中国新聞の社説は、黙秘していたこと自体を怪しみ、非難しているのですから、自白を強要するのと何も変わらず、黙秘権の保障の意義を見失ったものです。結局は、黙秘権を軽視し、自白の強要を行いがちな捜査機関に同調してしまっているわけです。冤罪事件のたびに、「自白の強要を防止すべき」と述べるのが報道機関の一般的傾向ですが、こうして馬脚を露わしてしまい、理解の薄さを露呈してしまうのです。


東京新聞「こちら特報部」では、和歌山毒物カレー事件が発生してから、今年の7月25日で丸10年ということで記事にしていましたので、紹介したいと思います。



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事件 *  TB: 2  *  CM: 8  * top △ 
2008/07/23 [Wed] 21:39:38 » E d i t
茨城県利根町布川(ふかわ)で1967年に起きた「布川事件」を巡り、強盗殺人罪で無期懲役刑を受けた同町出身の桜井昌司さんと杉山卓男さんが起こした第2次再審請求で、東京高検は抗告期限の7月22日、水戸地裁土浦支部の再審開始決定を支持した東京高裁決定(7月14日)を不服として、最高裁に特別抗告しました。判例違反(刑事訴訟法433条1項、405条)のほか、開始決定を破棄しなければ著しく正義に反する事実誤認がある(刑事訴訟法411条準用、最決昭26・4・13刑集5・5・902)と主張しているようです(毎日新聞)。



1.報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年7月23日付朝刊34面(13版)

「布川事件」高裁再審決定 東京高検が特別抗告 
2008年7月22日21時57分

 67年に茨城県で起きた強盗殺人事件「布川(ふかわ)事件」で無期懲役が確定し、服役した桜井昌司さん(61)と杉山卓男さん(61)の再審請求を認めた今月14日の東京高裁の決定に対し、検察側は22日、最高裁に特別抗告した。再審を開始するかの審理が最高裁でも続くことになる。

 東京高検は特別抗告にあたって、東京高裁の即時抗告審で弁護側から提出された証拠が「事実認定を揺るがすだけの新たな証拠には当たらない」などと主張しているが、弁護団によると、死刑や無期懲役判決が確定した重大事件で、一審、二審の両方で再審開始を認められながら特別抗告に至った例はないという。

 14日の高裁決定は、再審請求後に検察側が初めて開示した証拠などについて検討。殺害の状況が自白の内容と一致せずに変遷したことなどに触れ、「新証拠が確定判決までに提出されていれば、有罪を認定するには疑いがあった」と判断した。さらに「取調官の誘導があったことをうかがわせる」とも指摘し、「自白には重大な疑問がある」と認めていた。

 この日、東京・霞が関の弁護士会館で記者会見した桜井さんは「警察や検察が強引につくりあげた事件であることは、もはや言い逃れできないはずで、(特別抗告は)無駄な抵抗で信じがたい」と語った。また、2人の弁護団は「いたずらに審理を長引かせるものでしかなく、検察側は決定を謙虚に受け止めるべきだ」と批判。来年5月から始まる裁判員制度を前に、「部分的な証拠開示では判断を間違うということをこの事件が示した」と訴えた。」

(*見出しは、紙面のものに変更しました。)



(2) 東京新聞平成20年7月23日付朝刊1面

布川事件で特別抗告 検察側 再審開始重ねて異議
2008年7月23日 朝刊

 茨城県利根町で一九六七年、男性が殺害され現金が奪われた「布川(ふかわ)事件」で、第二次再審請求抗告審で元被告二人の再審開始を認めた東京高裁決定について東京高検は二十二日、「判例違反があり、重大な事実誤認がある」として最高裁に特別抗告した。裁判をやり直すかどうかは最高裁の審理に委ねられることになった。 

 再審請求が二度認められながら、検察側が二度とも抗告するのは極めて異例。

 特別抗告は憲法違反や判例違反に限られるが、再審決定の決め手となった新証拠について、東京高検は「最高裁で確定した判決を覆すだけの明白な証拠はない。判決を揺るがす力のある新規かつ明白な証拠があるとは思えない」と指摘した。

 再審請求しているのは、無期懲役刑が確定し、現在は仮釈放中の桜井昌司さん(61)と杉山卓男さん(61)。

 十四日の東京高裁決定は、最大の争点だった自白内容について「手で首を絞めたとされる殺害行為など重要部分で客観的事実に合致せず、犯行に至る経緯、殺害状況などに著しい変遷がある」として虚偽の自白を誘導されたとする弁護側の主張を認めた。」



(3) YOMIURI ONLNE:地域・茨城(2008年7月23日)

布川事件特別抗告

異例の展開怒りと落胆 請求人「あきれている」

 「布川事件」の再審請求は22日、検察側の特別抗告で新たな局面を迎えた。弁護団によると、過去の重要事件の再審請求で、検察側の特別抗告が認められたケースはなく、再審開始は濃厚と見られていた。異例とも言える検察の対応に、請求人や弁護団からは怒りと落胆の声が上がった。

 請求人の桜井昌司さん(61)と杉山卓男さん(61)は22日夕、東京都千代田区の弁護士会館で記者会見し、検察側の姿勢を批判した。桜井さんは「正直あきれている。検察は自分たちの組織のことしか考えていない」と話し、杉山さんも「検察は恥知らずだ」と強い口調で批判。弁護団は「特別抗告は公平な裁判を求める国民世論に背き、検察の威信を損なうものである」などとする声明を発表した。

 検察が正式に態度を表明したのは同日午後6時過ぎ。桜井さんと杉山さんは同4時ごろ、弁護士会館前で街頭演説に立ち、「検察が特別抗告しても再審無罪まで頑張る」などと声を張り上げた。その後、検察庁を訪れ、抗告断念を申し入れたが、かなわなかった。桜井さんは「99%(抗告)できないと思っていた」と驚きを隠せない様子だった。

 特別抗告について、かつて弁護団の一員として証拠集めなどに奔走した故山川豊弁護士(2003年10月に死去)の妻清子さん(55)は「『まだやるの?』という感じ。信じられない」と驚き、県内の支援者らでつくる「布川事件茨城の会」の畑沢信善事務局長(70)(那珂市)は「無罪判決まで2人を支えていく」と決意を新たにした。

(2008年7月23日 読売新聞)」



東京高検は、次のように述べています。

「再審決定の決め手となった新証拠について、東京高検は「最高裁で確定した判決を覆すだけの明白な証拠はない。判決を揺るがす力のある新規かつ明白な証拠があるとは思えない」と指摘した。」(東京新聞)


東京高裁決定は、「確定判決の根拠(証拠構造)は(1)犯行に接着した時間帯と場所で2人が目撃されていること(2)2人が捜査段階で自白し、その自白が信用できること-の2点である」とし、「主な新証拠は近隣女性の捜査段階の供述調書など5点で、いずれも新規性があり、確定判決の証拠構造に動揺を与える」と判断していました。

新たな証拠として出されたのは、<1>桜井さんらと容姿が異なる2人の男を見たという近隣女性の供述調書、<2>第三者の存在を示唆する茨城県警による毛髪鑑定書、<3>編集・中断された、桜井さんの自白を録音したテープなどで、いずれも「確定判決の根拠」を揺るがす、決定的といえる証拠であり、この3点はすべて検察側が隠していた証拠なのです。他にも、自白と異なる「絞殺」と書かれた死体検案書までもありました。

ここまで有罪認定を覆す決定的な証拠が出ているのですから、東京高裁決定が、「新証拠には新規性、明白性が認められ、無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見した場合に当たる」とし、「新証拠が確定審における審理中に提出されていれば有罪認定には合理的疑いが生じていたというべきである」と判断したことは、極めて合理性があります。

東京高検は、「最高裁で確定した判決を覆すだけの明白な証拠はない」とか、「判決を揺るがす力のある新規かつ明白な証拠があるとは思えない」と述べていますが、そう言えるだけの根拠はまるでありません。正気で言っているのか、疑いたくなるほどです。このように、特別抗告が認められる可能性はほとんどないのですから、東京高検は、無理に特別抗告をしたといえそうです。



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2008/07/22 [Tue] 07:28:04 » E d i t
「重厚長大」産業への長期融資を通じて、戦後の高度成長を支えた日本長期信用銀行(現新生銀行)の破綻から10年。元頭取の大野木克信氏(72)らが逮捕、起訴された粉飾決算事件の公判は7月18日、最高裁の逆転無罪判決で幕を閉じました。いわゆる「国策捜査」に対して、最高裁が歯止めをかけた形になったのです(東京新聞平成20年7月19日付朝刊3面【核心】)。この判例について触れてみたいと思います。



1.まず、報道記事を。

(1) 朝日新聞平成20年7月19日付朝刊1面(13版)

元長銀頭取ら逆転無罪 最高裁 決算「違法でない」 
2008年7月19日3時3分

 98年に経営破綻(はたん)した旧日本長期信用銀行(現・新生銀行)の粉飾決算事件で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は18日、証券取引法違反と商法違反の罪に問われた元頭取・大野木克信被告(72)ら旧経営陣3人について執行猶予付きの有罪とした一、二審判決を破棄し、いずれも無罪とする判決を言い渡した。

 この決算をめぐって第二小法廷はまた、整理回収機構が旧経営陣7人に損害賠償を求めた民事訴訟についても18日、賠償責任を否定した一、二審判決を支持し、機構の上告を棄却する決定をした。これにより、長銀の旧経営陣は刑事、民事とも「責任なし」という形で決着した。

 無罪判決を受けたのは、大野木元頭取のほかに元副頭取の須田正己(68)と鈴木克治(71)の両被告。3人は破綻直前の98年3月期決算で(1)関連ノンバンクなどへの不良債権を処理せず、損失を約3130億円も少なく記載した有価証券報告書を提出した(2)株主に配当できる利益がなかったのに約72億円を違法に配当した、として東京地検特捜部に逮捕・起訴された。

 裁判では、当時の会計慣行に照らして、決算が適正だったかどうかが争点となった。

 02年9月の一審・東京地裁判決、05年6月の二審・東京高裁判決はともに、旧大蔵省が97年3月に出した通達に従って関連ノンバンクなどへの融資を厳しく査定するべきだったと認定した。

 これに対して第二小法廷はこの通達が「大枠の指針」にとどまり、関連ノンバンクなどへの融資の査定に適用するには明確でなかったと指摘。同じ時期に大手18行中14行も長銀同様の会計処理をしていたことを挙げ、「従来の会計基準で査定しても違法とはいえない」と結論づけた。

 最高検の井内顕策刑事部長は「有罪を確信していたところであり、誠に遺憾である」とのコメントを出した。

 長銀と同じ98年に破綻した旧日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)の粉飾決算事件も第二小法廷に係属中。争点が重なっており、旧経営陣3人を有罪とした一、二審判決が見直される可能性が出てきた。(岩田清隆)」



<キーワード>旧長銀の破綻と責任追及

 戦後の産業金融を支えた長銀は、バブル期の過剰融資などで多額の不良債権を抱え、98年10月に金融再生法の適用第1号として一時国有化された。

 資産24兆円の大規模銀行の破綻は世界でも例がなく、巨額の公的資金が投入された。金融再生法は、国有化された銀行の旧経営陣について刑事、民事での責任追及を求めており、長銀の旧経営陣も両面から責任が問われた。」



(2) 日経新聞平成20年7月19日付朝刊1面

旧長銀粉飾、元頭取ら逆転無罪 最高裁判決 会計処理、違法といえず

 経営破綻した旧日本長期信用銀行(現新生銀行)の粉飾決算事件で、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と商法違反(違法配当)の罪に問われた元頭取、大野木克信被告(72)ら旧経営陣3人の上告審判決で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は18日、3人を有罪とした一、二審判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。全員の無罪が確定する。

 ほかに無罪とされたのは元副頭取、鈴木克治被告(71)と同、須田正己被告(68)。

 同小法廷は(津野修裁判長)は同日、旧長銀の債権を引き継いだ整理回収機構(RCC)が違法配当を巡り、大野木被告ら7人に計10億円の損害賠償を求めた民事訴訟でRCC側の上告を棄却を決定。同被告らの勝訴とした一、二審判決が確定した。一時国有化され、7兆円超の公的資金が投入された旧長銀の破綻は、刑事・民事両面で旧経営陣の責任は問えないという結論に終わった。

 公判では、旧長銀が1998年3月期決算で、旧大蔵省が前年に出した新基準に従って関連ノンバンク向け不良債権を厳格に処理せず、旧基準に従って査定したことの適否が争われた。

 同小法廷は「関連ノンバンクに新基準を適用するかが明確だったとはいえず、過渡的な状況にあった」と指摘。旧基準を適用したことが「『公正な会計慣行』に反して直ちに違法だったとはいえない」と判断した。

 一、二審判決は検察側主張に沿って、新基準が「唯一の公正な会計慣行だった」として、3被告は不良債権を約3130億円少なく計上し、原資がないのに約71億円を違法配当したと認定。大野木被告を懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役3年)、ほかの2被告を懲役2年、執行猶予3年(求刑懲役2年)の有罪としていた。

 弁護団の話 客観的な証拠に基づいた冷静な判断で、法の番人にふさわしい判決だ。

 井内顕策・最高検刑事部長の話 検察庁は有罪を確信しており、誠に遺憾だ。」



  イ:経営破綻した旧日本長期信用銀行(現新生銀行)の粉飾決算事件で、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と商法違反(違法配当)の罪に問われた元頭取、大野木克信氏(72)ら旧経営陣3人の上告審判決で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は7月18日、3人を有罪とした一、二審判決を破棄し、逆転無罪を言い渡しました(破棄自判)。

また、同第二小法廷は(津野修裁判長)は同日、旧長銀の債権を引き継いだ整理回収機構(RCC)が違法配当を巡り、大野木氏ら7人に計10億円の損害賠償を求めた民事訴訟において、賠償責任を否定した一、二審判決を支持し、RCC側の上告を棄却を決定したのです。

要するに、刑事・民事ともに旧経営陣の「責任なし」という結論に終わったのです。長銀事件全体からみると、下級審の段階から「(賠償)責任なし」という判断を行っていた民事裁判の結果の方に、刑事裁判の結果もそろえたわけです。刑法の謙抑性の見地からすれば、同じ事件・争点であるのに、民事賠償を否定しておいて刑事責任を問うのは不当なので、民事賠償が問えないのであれば、刑事責任も否定する結論を採用することには合理性があります。


  ロ:今回の最高裁判決は、他の類似事件にも影響する点でも重要です。

「長銀と同じ98年に破綻した旧日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)の粉飾決算事件も第二小法廷に係属中。争点が重なっており、旧経営陣3人を有罪とした一、二審判決が見直される可能性が出てきた。」(朝日新聞)


今回の長銀に関する粉飾決算事件と、旧日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)の粉飾決算事件とは、同じ98年に破綻した銀行に関する事件であって、争点が重なっているのです。ですから、「旧経営陣3人を有罪とした一、二審判決が見直される可能性が出てきた」のであり、無罪となる可能性が高くなったといえるわけです。

  ハ:なお、長銀を巡る裁判は他にもあり、その民事裁判も終結しています。

民事訴訟もすべて終結

 旧日本長期信用銀行を巡る民事訴訟では、旧長銀の債権を引き継いだ整理回収機構(RCC)が、18日に確定した違法配当を巡る訴訟とは別に、旧経営陣にずさん融資の損害賠償を求める4件の訴訟を起こした。

 このうちリゾート開発会社「イ・アイ・イ―インターナショナル」への融資を巡る訴訟にでは、最高裁でRCC側の敗訴が確定。イ社向けの別の融資や関連ノンバンク向け融資を巡る3件も和解成立などで終結した。全訴訟でのRCCの請求額は計94億円。和解で回収したのは計約3億7000万円となっている。」(日経新聞平成20年7月19日付34面)




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2008/07/20 [Sun] 23:30:10 » E d i t
「非正規雇用・ワーキングプア(働く貧困層)と生存権(憲法25条)」に関わる問題は、「憲法施行61年:5月3日は憲法記念日~あまりにも憲法の理念が損なわれている「現実」を放置していていいのだろうか?」(2008/05/03 [Sat] 23:59:19)で触れたことから分かるように、現在の労働問題・憲法問題の最大の問題点の1つです。

憲法第25条(生存権)

1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。




1.秋葉原殺傷事件では、容疑者である加藤智大氏が派遣労働者(日研総業から関東自動車工業東富士工場に派遣)であり、「生活に疲れ、世の中が嫌になった」と述べ、日研総業による大幅なピンハネの事実が露呈したことから(「秋葉原通り魔事件:秋葉原で無差別に7人殺害、10人重軽傷~犯罪が発生した背景をよく考える必要があるのではないか?」(2008/06/09 [Mon] 23:11:16)参照)、にわかに非正規雇用問題に注目が集まり始めましたが、この事件の背景には、以前からずっと問題視されてきた労働問題・憲法問題があったのです。

本来、派遣先の都合による派遣契約の中途解約がおきた場合、いわゆる「派遣先指針」(平成15年厚労省告示第449号「派遣先が講ずべき措置に関する指針」)では、派遣社員の雇用安定のため、「就業機会の確保措置」を派遣先に要求しています。しかし、関東自動車工業は、今年5月26日、関東自動車工業が派遣契約の6月末での中途解約を派遣会社4社に一斉に通知し、「就業機会の確保措置」を行わず、「派遣先指針」を無視したのです。「派遣先指針」は画餅にすぎませんでした。

加藤氏の派遣契約は今年4月から来年3月までの1年間だったのですが、加藤氏は、わずか2ヶ月弱で突如解雇通知を受けたわけで、この「派遣先指針」を無視した解雇が「犯行の重要な動機となっている」とみられています(「保坂展人のどこどこ日記」さんの「厚生労働省に「派遣労働者」の契約打ち切り規制を要請」(2008年07月18日))。
 

そこで、ガテン系連帯は、関東自動車工業に対して、次のような申し入れを行っています(3点の申し入れのうち1点を紹介。「緊急座談会 秋葉原事件は何を問うているのか――若者の生きることと働くことをめぐって―― 」(鎌田 慧/池田一慶/小林美希/本田由紀)・「世界」2008年8月号47頁以下)。

「今後ふたたび派遣社員を受け入れる場合、今回の事件を教訓として、派遣社員に人間らしい生活条件を確保するための改善措置を検討してもらえないか」


国民が、人間らしく生きてゆくために必要な条件、待遇などの確保を要求することは、生存権(憲法25条)の主張そのものです。

「非正規雇用・ワーキングプア(働く貧困層)と生存権(憲法25条)」に関わる問題について、東京新聞(中日新聞)が社説として取り上げていましたので、紹介したいと思います。



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2008/07/19 [Sat] 01:17:39 » E d i t
動物の供養で知られる東京・両国の「回向院」の境内にあるペットの遺骨保管施設などが、課税(固定資産税と都市計画税)の対象にならない宗教施設に当たるかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(涌井紀夫裁判長)は7月17日、東京都の上告を棄却する決定をしました。これにより、東京都の課税処分を違法とした2審・東京高裁判決が確定しました。



1.まず、報道記事を幾つか。

(1) YOMIURI ONLINE(2008年7月17日23時25分)(紙面未掲載)

回向院のペットの骨保管施設「課税処分は違法」確定…最高裁

 江戸時代の相撲興行などで知られる東京都墨田区の「回向院(えこういん)」が、ペットの骨の保管施設は宗教施設ではないとの理由で固定資産税など約138万円を課されたのを不服とし、都に課税処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(涌井紀夫裁判長)は17日、都の上告を棄却する決定をした。

 都の課税処分を違法とした2審・東京高裁判決が確定した。

 1審・東京地裁判決は、「民間業者の動物霊園と大きな違いはない」として課税を適法としたが、2審は、「回向院は江戸時代から動物供養が行われ、地域住民からも厚い信仰の対象とされている」と判断していた。

(2008年7月17日23時25分 読売新聞)」



(2) MSN産経ニュース(2008.7.17 22:16)

ペット供養施設「課税取り消し」が確定
2008.7.17 22:16

 動物供養で知られる東京都墨田区の寺院「回向(えこう)院」が、都が行ったペット供養施設への固定資産税課税処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(涌井紀夫裁判長)は17日、都側の上告を棄却する決定をした。処分取り消しを命じた2審東京高裁判決が確定した。

 回向院は飼い主から持ち込まれたペットの遺骨を、境内のロッカーで年2~5万円で保管。都側は「民間業者の動物霊園と違わない」としてロッカーの敷地などに課税した。

 1審東京地裁は都側の主張を認めたが、2審は「回向院では江戸時代から動物供養が行われており、ロッカーも宗教活動のために欠くことができない施設」と指摘し、課税処分を取り消した。」




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2008/07/17 [Thu] 22:17:59 » E d i t
毎日新聞の全国世論調査(7月12、13両日、電話)によると、「殺人事件の時効」(25年。2005年以前に発生した事件は15年)をなくすべきだと考える人が77%いたそうです。また、「発生年で時効までの期間が15年と25年に分かれている現状に疑問を持つ人も68%いた」ようです。

そのため、毎日新聞は、「時効廃止や改善要望が7~8割あったことで、刑事訴訟法の改正論議が活発化することも予想される」と高らかに述べています。殺人事件の公訴時効廃止については、全国犯罪被害者の会(あすの会)が今年5月、自民党司法制度調査会に要望しているとのことです。では、刑事訴訟法を改正して、少なくとも殺人罪に関する公訴時効制度を廃止するべきでしょうか? 論じてみたいと思います。



1.では、毎日新聞平成20年7月16日付朝刊1面を。

殺人の時効:なくせ77% 維持は15%--毎日新聞世論調査

 殺人事件の時効をなくすべきだと考える人が77%いることが、毎日新聞の全国世論調査(12、13両日、電話)で分かった。発生年で時効までの期間が15年と25年に分かれている現状に疑問を持つ人も68%いた。時効廃止や改善要望が7~8割あったことで、刑事訴訟法の改正論議が活発化することも予想される。(社会面に質問と回答、連載「忘れない」)

 殺人事件の時効を維持すべきかどうか聞いたところ、「なくすべきだ」が77%で、「維持すべきだ」の15%を大きく上回った。刑事訴訟法の04年改正で、05年以降に発生した事件の時効は25年になったが、それ以前は15年のままになっている。しかし、発生年で時効の年数が違うのは「おかしい」が68%、「当然だ」が21%だった。

 また、強姦(ごうかん)などの犯罪でも、血液などのDNAがあれば、容疑者を特定しないまま起訴し時効を停止させる制度が米国ニューヨーク州などにあるが、日本でも同様の制度を「取り入れるべきだ」が69%、「取り入れるべきでない」が15%だった。

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 ■解説

 ◇制度と世論にずれ

 殺人事件の時効を「なくすべきだ」が8割に迫ったことは「時効の存在意義」に根源的な問いを国民が持っていることを表している。制度と世論とのずれを是正すべき時期だ。

 今回の結果は、社会の処罰感情が15~25年では薄れないことを物語る。DNA鑑定の精度アップで、時効の維持を訴える法学者でも、「証拠の散逸」を制度の理由にするのは難しくなり、長い逃走時にできた新しい家族や平穏な生活を尊重すべきだとの説明が取られるようになってきた。

 また、刑事訴訟法が改正前にさかのぼって適用されないのは法律家の常識とされるが、「発生年で年数が違うのはおかしい」との声は、既成概念にとらわれない一般の疑問を表している。制度存在の是非に関する論議が望まれる。【宮川裕章】

毎日新聞 2008年7月16日 東京朝刊」





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2008/07/16 [Wed] 23:55:13 » E d i t
三菱自動車(三菱ふそうトラック・バスに分社)製大型車のタイヤ脱落事故をめぐり、リコール(無料の回収・修理)を回避するため国に虚偽報告をしたとして、道路運送車両法違反の罪に問われた三菱ふそう元会長宇佐美隆被告(67)、三菱自の元常務花輪亮男(67)、元執行役員越川忠(65)の3被告人と法人としての三菱自の控訴審判決で、東京高裁は7月15日、一審の横浜簡裁の無罪判決(「三菱ふそう元会長らに無罪判決(横浜簡裁平成18年12月13日判決)」(2006/12/14 [Thu] 23:35:14)参照)を破棄し、求刑通り罰金20万円を言い渡しました。一連の欠陥隠し事件をめぐる3つの刑事裁判で初の控訴審判決となります。

公判では横浜市で2002年、同社製大型車の車輪と車軸をつなぐ金属部品のハブが破損、脱落したタイヤが歩行中の母子3人に直撃し、死傷させた事故に関する報告をめぐり、<1>道路運送車両法に基づく国土交通相からの正式な報告要求があったか<2>報告や説明について虚偽の認識があったかどうか、が争われたのですが(東京新聞平成20年7月15日付夕刊1面)、主要な争点は<1>の点でした。



1.まず、報道・解説記事を幾つか。

(1) 毎日新聞平成20年7月15日付夕刊1面

三菱自・欠陥隠し:ふそう元会長、逆転有罪 虚偽報告認定--東京高裁判決

 三菱自動車(三菱ふそうトラック・バスに分社)製大型車のタイヤ脱落事故を巡り、リコールを避けようと国に虚偽報告をしたとして、道路運送車両法違反に問われた三菱ふそう元会長、宇佐美隆被告(67)に対し、東京高裁は15日、1審の無罪判決(06年12月)を破棄し、罰金20万円を言い渡した。永井敏雄裁判長は「報告内容が虚偽と十分に認識しながら、部下らと共謀してうその報告をした」と認定した。

 同じく1審無罪の三菱自元常務、花輪亮男(あきお)被告(67)▽同元執行役員、越川忠被告(65)▽法人としての三菱自も、それぞれ求刑通り罰金20万円の逆転有罪判決を受けた。3被告は上告する方針。

 判決によると、母子3人が死傷したタイヤ脱落事故(02年1月)を受け、国土交通省リコール対策室は三菱ふそうに報告を要求。宇佐美元会長らは02年2月、ハブの強度不足が疑われたのに「整備不良による異常摩耗が原因だからリコールしない」と主張。過去に0・8ミリ未満の摩耗量でハブが破損した事故事例を隠し、「摩耗量0・8ミリ以上のハブを交換すれば事故を防げる」と虚偽の報告をした。

 1審・横浜簡裁は、道路運送車両法違反の成立要件となる国交相の正式な報告要求がなかったとした。しかし、永井裁判長は「大臣の事務は極めて広範で、すべてを自ら処理できないことは明らか。部下らに処理権限が委ねられ、大臣もこれを了承していた」と指摘。リコール対策室職員らが報告要求をしていたことから同法違反は成立すると判断した。

 事故を巡っては、三菱自元部長ら2人も業務上過失致死傷罪で起訴された。横浜地裁は07年12月、執行猶予付きの有罪判決を言い渡し、元部長らが控訴している。【伊藤一郎】

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 ■ことば

 ◇タイヤ脱落事故

 横浜市瀬谷区で02年1月10日、走行中の三菱自動車製大型けん引車から脱落した左前輪が、歩道を歩いていた神奈川県大和市の主婦、岡本紫穂さん(当時29歳)と長男(当時4歳)、次男(当時1歳)を直撃し、紫穂さんが死亡、2児がけがをした。ハブ(車輪と車軸を結ぶ金属部品)の破損が原因とされる。

毎日新聞 2008年7月15日 東京夕刊」




(2) 毎日新聞平成20年7月15日付夕刊8面「解説」

交通行政の実態に理解

 三菱ふそう元会長らに逆転有罪を言い渡した東京高裁判決は、法律の条文を厳格に解釈して無罪とした1審判決を「形式論」として退け、交通行政の現場の実態に理解を示した判断と言える。

 1審・横浜簡裁は、ふそう側の虚偽報告を認めながら、道路運送車両法が定める「国土交通相の報告要求」がなかったという理由で無罪とした。国交省のリコール対策室職員らが実質的に報告要求をしている実務とはかけ離れた結論で、高裁は「かえって法律の趣旨を損なうことになりかねない」として覆した。

 同省の統計では、分社後の三菱ふそうのリコール届け出件数は03~07年の5年間で計205件。国産車メーカー14社で件数の多さを比べると03年度2位、04~07年度は1位と他社を圧倒する。同社は「車両の問題点を早期に発見した結果であり、開発段階から不具合の撲滅に取り組んでいる」と説明しているが、重大事故を起こした会社として、今後、改善状況を明確な数値で示す責務があることは言うまでもない。

 横浜の事故では、若い母親が幼い子供たちを残して先立った。何の落ち度もない市民が突然、命を奪われる事故はいわば通り魔事件に遭ったに等しい。三菱ふそうのみならず、メーカー各社が「車は走る凶器」と肝に銘じ、安全性を最重視した経営に努めなければならない。【伊藤一郎】

毎日新聞 2008年7月15日 東京夕刊」




(3) 読売新聞平成20年7月15日付夕刊19面(2版)「解説」

企業のウソ 厳しく対処

 三菱自動車の虚偽報告事件で、1、2審の判断が分かれた背景は、ドライバーや歩行者を守るリコール制度の目的をどの程度重視したかの違いがある。

 1審は、自動車の欠陥に関するメーカーへの「報告要求」について「大臣が行う」とした道路運送者車両法の規定を厳密にとらえ、虚偽報告者を処罰するには、大臣の決裁を経る必要があると判断した。

 しかし、リコール制度は、メーカーが自主的に自動車の欠陥を国に届け出ることで、速やかに使用者に知らせて回収などの改善措置を図り、事故を未然に防ぐのが最大の目的だ。国による報告要求は、こうした措置の前提となる。

 2審は「国による迅速かつ柔軟な対応」の必要性を強調。大臣の決裁を得るのは現実的でないと判断した。そのうえで三菱自動車が虚偽報告により、国の実態把握を遅らせたことはリコール制度の根幹を揺るがすと考えた。

 同社は2001年にも、「リコール隠し」で同法違反に問われており、その隠ぺい体質は根深い。耐震強度や食品偽装問題など、国民の生命や健康を脅かす「企業のウソ」は後を絶たない。この日の判決は、この種のウソには、厳しく対処するという司法の姿勢を示したと言える。(稲垣信)」




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2008/07/15 [Tue] 23:59:22 » E d i t
1967年に茨城県利根町布川(ふかわ)で男性(当時62)が殺害され、現金が奪われた「布川事件」で、強盗殺人罪で無期懲役刑が確定し、仮出所した桜井昌司さん(61)と杉山卓男さん(61)が裁判のやり直しを求めた第2次再審請求の即時抗告審で、東京高裁(門野博裁判長)は7月14日、水戸地裁土浦支部が出した再審開始決定を支持し、検察側の即時抗告を棄却する決定をしました。

数ある冤罪事件のなかでも、この事件・裁判は特に注目に値するものです。それは、<1>典型的な冤罪事件の特徴をもっていること(別件逮捕などの見込み捜査、不自然な供述の変遷、客観的証拠の乏しさ、証拠の隠蔽・捏造、自白と客観的な証拠との不一致、代用監獄を利用した自白の強要、経験則から逸脱した認定)、<2>戦後直後に起きた事件ではなく、現行刑事訴訟法が定着してから起きた事件であるため、現在の捜査にも妥当すること、<3>重大事件で再審開始が認められる例は極めて少ない現状において(東京新聞平成20年7月14日付夕刊10面)、再審開始を認めた極めてまれな決定だからです。

布川事件 高裁も再審支持 「自白・目撃証言に疑問」

 戦後発生した事件で、無期懲役刑か死刑が確定した後、再審が開始されたのは5件しかなく、いずれも無罪が確定したが、これらは終戦後約10年の間に起きた事件だった。現行刑事訴訟法が定着してから起きた今回の事件で東京高裁が再審開始を認めたことは、捜査のあり方にも問題を投げかけそうだ。」(読売新聞平成20年7月14日付夕刊1面)





1.この「布川事件」の概要と裁判の経過について触れておきます。

どんな事件か

 1967(昭和42)年8月30日の朝、茨城県利根町布川で、ひとり暮らしの玉村象天(しょうてん)さん(当時62歳)が自宅で殺されているのが発見されました。死体は、足首を布で縛られ、口内に布片が詰められており、死因は絞頸による窒息死。机、ロッカー、タンス等に物色のあとが見られました。現場の特徴として、八畳間の床が抜けて畳が落ち込んだところに死体が横たわっており、また、死体には敷布団がかけられ、現場には毛布・掛け布団などが散乱していました。さらに、間仕切りのガラス戸が隣の部屋に倒れ、ガラス数枚が割れており、便所の小窓が開いて、桟が2本取り外されていました。犯人の手がかりもつかめないまま10月に入り、10日に同町出身の桜井昌司さん(当時20歳)が窃盗で、16日に同じく杉山卓男さん(当時21歳)が暴力行為で、それぞれ別件逮捕されました。

 桜井さんは、強盗殺人の容疑を否認したのですが、警察官から、「母親が世間を騒がせないようにと言っている」「(当日一緒にいたはずの)兄はアリバイを知らないと話している」などと言われ、「どうにでもなれ」という気持ちになって、逮捕から5日後、警察から突きつけられた容疑事実をそのまま認める形で自白してしまいました。一方、杉山さんは、強盗殺人の容疑は否認したのですが、桜井さんが杉山さんとの共犯を認めた供述調書を見せられた上、警察官から「罪を認めないと死刑になるぞ」などと言われ、10月17日、自白してしまいました。その結果、各十数通の「自白」調書が作成されました。

 11月に拘置所に移されて検察の取調べが開始されてから、2人は一転して犯行を否認し、杉山さんは、事件当日のアリバイを詳細に書き出し、検事に必死で「殺しはやっていない」と訴えたところ、その検事は「君の目を見ていると、ウソをついているとは思えない」として否認調書を作ったのです。ところが、杉山さんは、12月1日に警察の留置場(代用監獄)へ送り返され、警察官から「なんで、検察官の前で否認したんだ」と、厳しい取り調べが連日続き、自白してしまいました。12月中旬、杉山さんは検察にまた送られたのですが、検察官は交代していて、別の検察官が、「否認していれば助からないぞ」と死刑を暗示させる脅しを行うなど犯人と決め付けるような取り調べを行い、「自白」してしまいました。一方、桜井さんは、最初の検察官の取り調べでは、その検察官は桜井さんの話を素直に聞いていたのですが、12月6日に警察の留置場(代用監獄)へ送り返され、警察官は、「1回調書を作ったら、いまさら何を言ってもだめだ」などと虚偽を述べながら、連日長時間取り調べを行い、12月中旬、別の検察官が「お前が犯人だ」などと取り調べを行い、結局、2人は再び「自白」に転じてしまいました。そして、12月18日、遊興費欲しさに犯行を行ったとして起訴されました。


裁判の経過

 桜井さん、杉山さんは、翌年2月の第1回公判で強盗殺人を否認し、以来一貫して無実を訴えましたが、2年後の1970(昭和45)年10月6日、水戸地裁土浦支部は無期懲役の判決。1973(昭和48)年12月20日東京高裁の控訴棄却判決、1978(昭和53)年7月3日最高裁第二小法廷は、「自白は真実の供述を内容とするものだ」として上告を棄却し、2人は、1996(平成8)年11月の仮釈放まで千葉刑務所に服役し、逮捕から実に29年余の獄中生活を余儀なくされました。

 この事件は、捜査過程が語るとおり、代用監獄が自白調書作成の手段とされた典型です。そして、裁判所自身が、「現場に残されたものに被告人らと犯行を直接結びつけるものは発見されていない」(東京高裁判決)、「被告人と犯行との結びつきに関し物証等の動かし難い客観的証拠を発見し難い」(最高裁決定)とみとめるとおり、「自白」以外にはまったく直接証拠がありません。しかも、「自白」は現場の客観的状況と矛盾し、また、公判で明らかになった被害者の死亡時刻の枠内からは、逃走のために乗る電車の発車時刻に間に合わないなど、「自白」による犯行は不可能です。裁判所はこれを、形式論理をもてあそぶ手法で退けました。さらに、通行中の姿を「目撃」したとの証言が「はたして当日だったかどうかわからない」などと、核心部分が変転・混乱し、矛盾極まりないことについては、「若干の乱れ」にすぎず「大筋において一貫」しているとして有力な有罪証拠としたのです。

 1983(昭和58)年12月23日に、確定判決の被害者の死亡時刻に誤りがあるとする法医学者の鑑定などを新証拠として再審請求(第1次)しましたが、1992(平成4)年に最高裁が棄却を決定しました。2001(平成13)年に別の証拠で第2次再審請求を行い、2005(平成17)年9月、水戸地裁土浦支部は再審開始を決定し、水戸地検が即時抗告していました。」(小田中聰樹ほか「えん罪入門」(日本評論社、2001年)42~56、111・112頁、読売新聞平成20年7月14日付夕刊23面参照)



(1) こうした事件の概要や裁判の経過だけを読むと、捜査機関は、犯人が発見されない焦りもあったためか、疑問を抱く検察官を交代させてまで、桜井さんや杉山さんを無理やりに強盗殺人の犯人に仕立て上げたことが分かります。

また、裁判所の方も、「自白」以外にはまったく直接証拠がなかったのですが、その「自白」は現場の客観的状況と矛盾するものだったり、通行中の姿を「目撃」したとの証言が「はたして当日だったかどうかわからない」としたままで有罪の証拠にしてしまうなど、無茶苦茶な論理で有罪にしてしまったのです。


(2) こうした捜査・裁判の経過を踏まえて、木谷明元判事(現在、法政大教授)は、次のようなコメントを述べています。

「物証が1つもなく、確定審の判断があまりにもお粗末だったのに、(再審開始に)これほどエネルギーと時間を費やさなくてはいけないのかと思う。」(読売新聞平成20年7月14日付夕刊)


あまりにもお粗末な有罪認定を正すだけのことなのに、再審が認められるまで41年も時間を費やしたのです。お粗末な有罪認定をした数人の裁判官、証拠の隠蔽・捏造や自白強要を行った数人の検察官の責任は、極めて重いのです。


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裁判例 *  TB: 0  *  CM: 2  * top △ 
2008/07/14 [Mon] 01:48:44 » E d i t
朝日新聞7月12日付朝刊において、「公貧社会 支え合いを求めて」という表題でのルポを掲載していました。この「公貧社会」は、毎週土曜日経済面に掲載するとのことですが、こうしたルポを連載する意図について、次のように記しています。


「公」の支え 作り直す時

 日本がかつてない少子高齢化社会に向かう中で、「公」のほころびが広がっています。医療や年金制度は揺らぎ、都市と地方、正社員と非正社員など様々な格差は深刻になるばかり。その一方で、税金のむだ遣いは後を絶ちません。

 困った時の支えとなるのが「公」の役割だったはずです。そんな機能が失われた今の日本を、私たちは「公貧社会」と名付けました。

 新たな成長の道を探りつつ、財政や社会保険の「負担と受益」を大胆に見直し、NPOや企業も参加した新たな支え合いの仕組みを作り直す時です。長期連載の第1部「千葉・東京ベイエリア」は、戦後日本の発展を象徴する東京湾岸地帯が舞台です。急速な高齢化が見込まれるこの一帯で「公」のほころびの現場を歩き、再生の道を探る作業を始めます。(経済政策エディター・高橋純一)」(1面)



この朝日新聞の記事を、一部紹介しておくことにします。



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論評 *  TB: 2  *  CM: 2  * top △ 
2008/07/11 [Fri] 23:59:43 » E d i t
総務省が7月3日公表した2007年の就業構造基本調査(速報)によると、パートやアルバイトなど非正規就業者の割合が過去最高の35.5%に達したということについては、「就業構造、非正規就業者の割合が過去最高に~非正規雇用の女性の実情に目を向けていますか?(東京新聞平成20年7月7日付より)」(2008/07/09 [Wed] 06:54:51)で触れました。


就業構造 非正規の割合最高 07年35.5%、20年で倍近くに2008年7月4日 朝刊

 総務省が三日まとめた二〇〇七年の就業構造基本調査(速報)によると、パートやアルバイトなど非正規就業者の割合が35・5%と過去最高を記録し、二十年前と比べ二倍近くに上昇した。

 企業がバブル崩壊後にコスト削減で非正社員化を積極的に進めたことが背景。〇七年は景気拡大を受けて企業が労働力を確保するため、主婦層や団塊の世代の非正規雇用を増やした結果とみられる。

 男女別では男性19・9%、女性55・2%とそろって過去最高を記録、男性は二十年前の二倍以上、女性は一・五倍に上昇した。一九八七年は男性が9・1%、女性は37・1%だった。前回調査の〇二年は前々回九七年と比べ、男性が5・2ポイント増の16・3%、女性は8・9ポイント増の52・9%と急上昇。さらに〇七年は男性が3・6ポイント、女性は2・3ポイント上がった。(以下、省略)」(東京新聞平成20年7月4日付朝刊3面)




1.こうした非正規雇用の実情については、東京新聞(のみ?)が積極的に報じているのですが、大変珍しいことに読売新聞も報じていました。

「「働く貧困層」が社会問題となっているが、特に深刻なのが母子家庭だ。「女性」「子持ち」「非正社員」と、働く上で不利な要素が重なっていることが背景にある。一方、これまで注目されなかった父子家庭も、厳しい状況にあることがわかってきた。ひとり親家庭の実情と課題を、2回にわたって報告する。(大津和夫)」(読売新聞平成20年7月8日付夕刊)



朝刊でなく、目にすることが少ない夕刊で報じている(夕刊でしか報じることができない!?)ことが読売新聞らしいといえますが、意義ある内容ですので、この記事について紹介したいと思います。



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論評 *  TB: 0  *  CM: 5  * top △ 
2008/07/09 [Wed] 06:54:51 » E d i t
総務省が7月3日公表した2007年の就業構造基本調査(速報)によると、パートやアルバイトなど非正規就業者の割合が過去最高の35.5%に達しました。男女別では男性19・9%、女性55・2%であり、男女とも過去最高を記録しています。


1.東京新聞平成20年7月4日付朝刊3面

就業構造 非正規の割合最高 07年35.5%、20年で倍近くに
2008年7月4日 朝刊

 総務省が三日まとめた二〇〇七年の就業構造基本調査(速報)によると、パートやアルバイトなど非正規就業者の割合が35・5%と過去最高を記録し、二十年前と比べ二倍近くに上昇した。

 企業がバブル崩壊後にコスト削減で非正社員化を積極的に進めたことが背景。〇七年は景気拡大を受けて企業が労働力を確保するため、主婦層や団塊の世代の非正規雇用を増やした結果とみられる。

 男女別では男性19・9%、女性55・2%とそろって過去最高を記録、男性は二十年前の二倍以上、女性は一・五倍に上昇した。一九八七年は男性が9・1%、女性は37・1%だった。前回調査の〇二年は前々回九七年と比べ、男性が5・2ポイント増の16・3%、女性は8・9ポイント増の52・9%と急上昇。さらに〇七年は男性が3・6ポイント、女性は2・3ポイント上がった。

 就業者数は、女性と団塊の世代に当たる六十歳前後の男性を中心に、〇二年から九十六万八千人増加して六千五百九十七万八千人となった。このうち自営業者などを除いた雇用者数は五千三百二十六万三千人(正社員など正規雇用者三千四百三十二万四千人、非正規千八百九十三万九千人)。

 都道府県別の就業率は、愛知県(64・2%)を筆頭に静岡県(63・6%)、東京都(63・5%)と続く。一方、雇用者のうち正規就業者の割合が高いのは、富山県(70・7%)、徳島県(70・1%)、福井県(69・9%)の順。」




就業構造基本調査は、5年ごとに実施するもので、今回は昨年10月1日に15歳以上の約100万人を対象に行い、人口全体について推計したものです。特に注目したいのは、女性の非正規雇用の割合です。

「男女別では男性19・9%、女性55・2%とそろって過去最高を記録、男性は二十年前の二倍以上、女性は一・五倍に上昇した。一九八七年は男性が9・1%、女性は37・1%だった。前回調査の〇二年は前々回九七年と比べ、男性が5・2ポイント増の16・3%、女性は8・9ポイント増の52・9%と急上昇。さらに〇七年は男性が3・6ポイント、女性は2・3ポイント上がった。」


男性が19・9%であるのに対して、女性が55・2%にも上っており、女性就業者の半分以上は、収入が極めて少ない非正規雇用者にとどまっており、ますます増えてしまっているのです。

秋葉原無差別殺傷事件では、容疑者が派遣労働者であったことから、派遣労働という非正規雇用の実態に目が向けられることになり(「秋葉原無差別殺傷事件:「暴力の連鎖はもうたくさん、人間らしく働きたいというだけ」(毎日新聞平成20年6月23日付朝刊より)」(2008/06/24 [Tue] 22:21:07)参照)、事件後になって、政府は慌てて労働者派遣法の改正に着手し始めました。こんな経緯を見れば、派遣労働者を支援する「派遣ユニオン」(東京都)の関根秀一郎書記長(43)が、「遅きに失したとしか言いようがない。事件が起きなければ問題だと思わなかったのか」と憤るのも当然です(毎日新聞2008年7月2日東京朝刊「発信箱:使い捨て社会=磯崎由美」(生活報道センター))。

こうして、派遣労働者の労働条件の改善に繋がる動きがあること自体は妥当なのですが、非正規雇用に推し止められている女性の側に目を向けている方はほとんどいません。しかし、女性就業者の半分以上が非正規雇用者にとどまっている以上、もっと、非正規雇用の女性の実情に目を向け、語り、改善を図るべきではないでしょうか?

東京新聞平成20年7月7日付夕刊は、「非正規雇用の女性たち」に目を向けた論説を掲載していましたので、紹介しておきたいと思います。



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2008/07/07 [Mon] 23:16:48 » E d i t
民法の規定が壁になって無戸籍となった子どもら5都府県の6人が7月1日、自らの戸籍を得るため、実の父親との親子関係の確認を求める調停(認知調停)を地元の家庭裁判所に一斉に申し立てました。「認知調停」は、前夫にかかわりなく進められるのがメリットのはずであり、最高裁が「認知調停」が可能であることを各裁判所に周知したこともあって、無戸籍の子どもや母親たちは、安心して地元の家庭裁判所に申し立てたのですが、現実の裁判では異なっていたことが判明しました。



1.毎日新聞平成20年7月7日付夕刊9面

無戸籍児:認知調停で「前夫に連絡」も 戸惑う母たち「かかわりなしのはずが」

 ◇300日規定、無戸籍の「解消」

 離婚後300日規定による無戸籍児について「現夫の子」と戸籍に記載するため、母親らが各地の家庭裁判所に申し立てている認知調停。子が実父(母親の現夫)を相手に「自分の子」と認めてもらう手続きのため、前夫にかかわりなく進められるのがメリットとされていた。しかし実際には、家裁から「前夫に連絡を取らなければならないこともある」と説明されるケースが相次いでおり、母親らに戸惑いが広がっている。【工藤哲】

 300日規定に基づく「前夫の子」を「現夫の子」と戸籍に記載するには▽親子関係不存在確認▽嫡出否認の調停や裁判の手続きが一般的だが、いずれも前夫が手続きの直接の当事者となる。一方、認知調停は、前夫が直接の当事者にならないため、前夫から暴力を振るわれたりして連絡を取りたくない場合などに役立つとされる。

 最高裁は先月、ホームページで「(前)夫が長期の海外出張、受刑、別居など、妻が(前)夫の子を妊娠する可能性がないことが客観的に明白である場合」との前提で、この手続きを紹介した。裁判所内部の研修でも認知調停の講義を取り入れるなど周知徹底に乗り出した。これを機に「無戸籍児家族の会」が無戸籍児の母親らに呼びかけ、今月から次々と家裁への申し立てが行われている。11日までに全国で25人が予定している。

 しかし、1日に千葉家裁の支部に申し立てた千葉県内の女性(38)によると、家裁の窓口の担当者から「前夫に連絡して確認させていただく可能性がある」と言われたという。昨年12月に産んだ女児が無戸籍で、前夫は携帯電話にも応じない状態が続いている。女性は「もし、このまま連絡が取れなければ、調停はできないのでは」と心配する。

 昨年3月に出産した女児を抱える埼玉県の女性(36)は、3日にさいたま家裁の支部に申し立てたが、「裁判所から『親子関係不存在確認の方がいいかもしれない』と言われた。調停に期待していただけに不安」と話す。

 こうした対応について、最高裁家庭局は「夫婦の別居状況や離婚の理由などは個々で異なる。調停では、それらの事情を基に判断することになる。必要があれば前夫から話を聞くこともある」と説明。ただ、具体的な判断基準は示していない。

 自身も認知調停で子供の無戸籍状態を解消した無戸籍児家族の会の井戸正枝事務局長は「私の場合は前夫とかかわらずに調停を成立させることができた。前夫とかかわれない、あるいはかかわりたくない事情がある母親らが認知調停に踏み切っている。裁判所は理解してほしい」と訴えている。

 ◇データの蓄積で条件見えてくる--離婚訴訟や家族法に詳しい榊原富士子弁護士の話

 住民票など客観的資料で妊娠時に前夫と別居していたことを示せない場合、確認のため裁判所が前夫を呼ぶこともあり得る。申し立てが増え、前夫を巻き込まないケースに関するデータが蓄積されれば、呼ぶ、呼ばないの条件も見えてくるだろう。

毎日新聞 2008年7月7日 東京夕刊」

(*「『現夫の子』とするための調停や裁判」についての図表は省略しました。)




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2008/07/06 [Sun] 22:17:59 » E d i t
諸宗山回向院(東京都墨田区)において、7月5日、家畜お施餓鬼法要(施餓鬼会)がありましたので、この法要のため参詣してきました。以前に「家畜お施餓鬼法要」に参詣したときのことは、「平成19年総回向・家畜諸動物施餓鬼会」(2007/07/01 [Sun] 23:36:53)をご覧下さい。



1.施餓鬼会(せがきえ)とは、生きとし生けるものすべてを対象にして行われる法会です。施餓鬼会は布施の実践であり、供養を受けることのできない無縁の精霊を供養する儀式でもあります。このような法会なのですから、回向院は7月5日、動物供養のために行ったわけです。

(1) 施餓鬼会の由来について説明しておきます。

釈尊の弟子の阿難(あなん)は、喉が針のように細く、やせ衰えて醜い姿をした餓鬼から、「お前の命はあと3ヶ月しかなく、死んだ後は餓鬼に生まれ変わる」と言われました。そこで、阿難は釈尊にどうしたらいいかと教えを乞うたのです。阿難は、釈尊に教えられた陀羅尼(だらに)を唱えながら餓鬼に食を施したところ、かえって長寿を得られたのです。施餓鬼会は、こうした、はからずも餓鬼道に堕ちた精霊に布施をしたという、仏説に由来しています(藤井正雄監修「わが家の仏教・浄土宗」147頁参照)。


(2) 今回、参詣した印象について幾つか書いておくことします。

参詣者をカウンターで計測しているわけではないのですが、年々、彼岸会や施餓鬼会のために参詣する方々は増えているように感じます。毎回、法要のための参詣者が本堂に入りきれず、整列している方々がいるのですが、年々、長くなっているからです。

何十年か昔は、ペットが亡くなった場合、役所に問い合わせをすると、「箱に入れずにビニールに入れてゴミとして出して欲しい」などということであったり、飼っていた側としても良くて庭に埋める程度が普通でした。ペットを寺院で供養するという意識は、一般的ではなかったのです。

法要のために参詣者が増え続けている様子を見ると、ペットを供養する意識は根付いていると感じられます。

もちろん、回向院は、今からおよそ350年前の明暦3年(1657年)に開かれた浄土宗の寺院ですが、回向院での動物供養の歴史は、回向院の開創間もない頃(回向院二世信誉上人の時代)まで遡るほど古いものです。動物供養は回向院と切り離せないものなのです。回向院で供養できるほどの距離に住んでいる方に限られるのでしょうが、回向院で供養する方は、ペットを供養する意識がとくに強いといえるのかもしれません。


今年、7月5日の法要は、11時と2時の会があったのですが、2時の会の頃は30度近い暑さでしたから、本堂の外に並んでいる方々にとっては、ことのほか体に堪えることになってしまいました。長年、事務を取り仕切っているお坊様は、参詣者に対して並んでいることを求めていましたが、参詣者の体のことを考えれば、良い対応だとは思えませんでした。現に、具合を悪くされてしまったご老人もいたのですから。

お葬式に無理をして出掛けて、その結果、体を悪くして亡くなってしまう……。こうした出来事は、よく聞く話ですが、今回の施餓鬼会の結果、そうしたことがないようと願うばかりです。


3月17日、諸宗山回向院(東京都墨田区)において行われた、春季彼岸会「家畜総回向」では、五つの色が順番に縫い付けられた幕である「五色幕(ごしきまく)」が吊るしてありました。本堂に吊り下げられている幕だけでなく、参道の入り口にもありました(旗の形でしたが、これも「五色幕」のようです)。

ところが、今回の施餓鬼会では、「五色幕(ごしきまく)」は、参道の入り口に旗の形であるだけであって、本堂には吊り下げていませんでした。なぜなのかは、お聞きしませんでしたが、彼岸会と施餓鬼会で異なるのかもしれないとも思いました。

しかし、五色幕を張ることは、仏教を広めるための道場であること示し、またお釈迦さま以来ご開山(無相大師)さまを経て今日まで伝えられてきた大切な心の教えを、未来永劫にも絶やすことなく伝えていくという強い意思表明でもあるのです(「平成20年春季彼岸会・犬猫小鳥等家畜総回向」(2008/03/18 [Tue] 19:58:09)参照)。そうすると、彼岸会と施餓鬼会で異なる理由はないように思います。


今回の法要では、今までずっとお見かけしていた御住職でないお坊様が読経をなされていました。以前の御住職はかなりのご高齢のようでしたから、代替わりをしたのかもしれません。




2.今回も、「家畜お施餓鬼法要」の際に頂いた「散華」(道場にみ佛をお迎えし、佛を讃え供養する為に古来より広く行われてきたもの。元来は、樒の葉や菊の花、蓮弁等の生花を用いていたが、現在は通常蓮弁形に截った紙花を用いている)に書かれていた言葉を引用しておきます。今回の語句(仏教用語)は、親鸞聖人の説かれた教えの1つです(やさしい信仰Q&A 【10】“自然法爾”(じねんほうに)についておしえてください。-親鸞聖人晩年の法語-)。




自然法爾(じねんほうに)  あるがままに




自然法爾(じねんほうに)とは、「自力をすて、如来の絶対他力にまかせきること」、「人為を捨て、ありのままにまかせること」を意味すると、説明されています。“自然”という言葉は仏教語では呉音で“ジネン”と発音し、「阿弥陀さまの救済に一切を委ねる」ということを意味していると説明したほうが分かりやすいかもしれません。
 

 「仏教では、自然を〈じねん〉と訓じて「自ら然る」という意味に解する。人間の作為のない「そのまま」の在り方が自然である。法(真理)が「そのまま」に顕現していることを示す法爾(ほうに)と自然とは同義語で、その両者を合わせて「自然法爾(じねんほうに)」「法爾自然(ほうにじねん)」という四字熟語ができた。
 浄土宗開祖の源空は、「法爾自然」を略して法然と号した。浄土真宗を開いた親鸞は、「自然法爾章(じねんほうにしょう)」と称する一文を認め、その中で「自然といふは、自はをのづからといふ、行者のはからひにあらず、然といふはしからしむといふことばなり」(『末燈鈔(まっとうしょう)』)と説いている。明恵はの、漢語「自然法爾」の意味を「阿留辺幾夜宇和」という和語で表わした。〈あるべきようは〉とは、しかるべき状態のことである。また「自然法爾」を〈身の程を知れ〉と言い換えた古人もあった。これらは「自然法爾」を人間の生き方になぞらえて表現したものである。」(「大谷大学」の「生活の中の仏教用語(244):“自然”」(木村宣彰(きむら せんしょう)・仏教学教授)より引用)




物事や物の見方にしても、自分の都合を優先したり、ごく個人的な経験を一般的な物差しとして使ってしまい、誤った判断をしてしまうこともあると思います。誤解した思い込み・先入観を持って判断していまうこともまた、よくあることだと思います。自分では広い心で判断しているように思えても、他人から見れば、人を受け入れる心が狭いと思われているかもしれません。

こうして人々は、「あるがままに」受け入れることができないでいるのです。

別に運命に任せるとか、成り行きのままの人生を行い、現状維持を肯定しろというのではありません。「自然法爾」とは、先入観を捨てて、度量の狭さを反省し、仏様の眼を基準にして、広い心情・考え方で物事や人に接して生きていくことで、何物にも遮られることのない精神の自由を手にできるのです。それによって、より良い人生となり、ひいては何事でも人と融和できるより良い社会になっていくのではないか、ということなのだと思うのです。



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2008/07/05 [Sat] 12:20:40 » E d i t
国連総会は2007(平成19)年12月18日、死刑執行の停止を求める決議案を賛成多数で採択しています。そうした国際状況であるのに、日本は死刑制度を認めていますが、誤判を回避することはできない以上、死刑制度の存続は冤罪で死刑にすることをも、認めることも意味しています。

日本では、死刑冤罪事件で、再審が認められた事件としては、「免田事件」、「財田川事件」、「島田事件」、「松山事件」があります。他にも、死刑冤罪事件でありながら、再審が認めらない「袴田事件」や、冤罪でありながら処刑されてしまった「福岡事件」、「藤本事件」も現に存在するのです。私たち国民は、これらの理不尽な事実をすべてよく知った上で、死刑存続を認めているのでしょうか。

こうした理不尽な事件の一つである、いわゆる「免田事件」で、“死刑台から生還”した免田栄さんのインタビュー記事を、朝日新聞平成20年7月4日付夕刊で掲載していましたので、紹介したいと思います。免田事件とは、1948(昭和22)年の一家4人殺傷事件で逮捕され、1952(昭和27)年1月5日に最高裁で上告が棄却され、死刑が確定後、第6次再審請求(1979(昭和54)年)に至ってようやく再審が認められ、無実を勝ち取るのに34年と6ヶ月という途方もない歳月を要したという事件のことです。



1.朝日新聞平成20年7月4日付夕刊4面「語る人」欄

元死刑囚 免田栄さん 人と言い交わせる喜び

 免田栄さん(82)は、25年前の7月、再審で無罪判決を得て“死刑台から生還”した。故郷にも戻れない57歳からの後半生で、日々の暮らしや人とのつながりを、どう築いてきたのか。 (塩倉裕)

 ――生命の危機は逮捕される前にもあったのですね。45年の敗戦の時、19歳でした。

 徴用されて長崎県の軍需工場にいました。米軍機の機銃掃射に体を貫かれ、仲間が次々に死んでいきました。自分も死ぬつもりでした。でも敗戦直後、日本軍の滑走路として攻撃され火花が散っていた場所で子どもたちが遊ぶのを見たとき、拝みたいような気持ちになりました。

 ただ、将来の夢などは全くありませんでした。食べていけるかどうかの状態でしたから。

 ――戦後間もない49年に突然逮捕され、51年には死刑が確定しました。

 アリバイを主張したのに「自白」をしたとされ、「意味がわからない」と思いました。闇の中にいるようで。希望を持とうと試みては自分が絶望の中にいることを確認する、その繰り返しでした。

 ――状況が変わったのは?

 拘置所で、房の食器口からチラシが放り込まれたのです。「たとえ我、死の影の谷を歩むとも、災いを恐れじ」とありました。なぜ私の房に入ったのかわかりませんが、聖書の一節でした。半年以内には死刑執行されるだろうと聞かされていた私には、「死の影の谷」という言葉が自分の状況を理解してくれているように思えたのです。

 キリスト教を学び、たとえこの世で敗れてもせめて死後は真実の世界に行きたい、と考えるようになりました。

■死刑囚仲間、裁判官との握手支えに

 ――多くの死刑囚の人々を見送られたそうですね。

 ある朝、数人の足音が近づいてきて、だれかの房の前で止まる。看守たちに刑場へ連れて行かれる途中、仲間たちは私の房の食器口から手を入れ、別れの握手を求めてきました。中には私と同様、無実だと訴えている人もいました。「残念だ。あんただけは頑張ってくれ」と言ってくれた人もいました。彼らの言葉と握手は、再審を求めて闘う私の、強い支えになりました。

 ――再審で無罪になったのは83年。別件逮捕から約34年が過ぎ、57歳になっていました。

 自由な世界に行ける。それだけで「ありがとう」の言葉が出ました。ただ、無罪になっても「うまいことやったな」と言われ続けています。いまだに郷里(熊本県)では暮らせません。

 ――では今、免田さんにとって、ふるさとは?

 この地球が仮の宿だ、と考えています。いずれ寿命が来たら神の国へ行ける、と。

 ――再審開始への道を開いた裁判官の西辻孝吉さんに、釈放後に会ったのですね。

 亡くなる直前です。「お世話になりました」と言うと、両手で壊れるほど強く私の手を握り、涙を浮かべてうなずいてくれました。あの温かい握手……。今の私の生きる励みです。

 ――逮捕されたのが23歳、釈放されてから25年になります。

 次々と新しい継母が来て、誰一人として私をかわいがってくれない家庭でしたから、昔の23年はいつも暗い気持ちでした。釈放後の25年は、社会とは解け合わなかったけれど、家内がよくしてくれて、何とか世のため人のために生きられます。

 彼女は労組の事務員で、友達がたくさんいました。その人たちが私の釈放を喜んでくれた。私に、人とつながるきっかけをくれたのです。言葉に尽くせないほど感謝しています。

 いま、時々講演に行くほかは畑仕事をしています。汗をかくとよく眠れますから。それに近所の人の畑を手入れしてあげたり、玄関前のそうじをしてあげたり、採ってきたタケノコをあげたりすると、喜んでもらえます。それがうれしいんです。

 同じ「おはよう」でも、すれ違うだけの間柄で言う「おはよう」とは違う。世話をしあっている関係の中で言う「おはよう」は、うれしいんです。

■良いことだけ思い出して生きたい

 ――免田さんにとって今、生きがいとは何ですか。

 自分の健康を大事にすること、同時に人が健康に生きることも大事に思うこと、でしょうか。「元気ですね」「はい、元気です」。人とそう言い交わせることがうれしい。その気持ちがあるから、明日へ進めます。過去の痛みは……忘れなければ仕方ないのですが……。良いことだけを思い出して、精いっぱい生きていきたいと思います。

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めんだ・さかえ 25年生まれ。48年の一家4人殺傷事件で逮捕され、51年に死刑確定。殺害方法が「自白」と違うとする新証拠などが採用され再審が始まり、83年無罪に。84年に結婚した妻と福岡県で暮らす=森下東樹撮影
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(*朝日新聞は、「51年に死刑確定」としているが、「52年に死刑確定」の間違いである。毎日新聞2008年3月23日東京朝刊「免田事件」参照。




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2008/07/03 [Thu] 06:43:47 » E d i t
臓器移植を行うためには、臓器を提供する方(ドナー)がいることが不可欠です。


1.ところが、2002年の人口100万人当たりの臓器提供者数(死体・生体臓器の合計)を見ると、スペインが33.7人、米国が21.5人となっているなど、欧州諸国の平均は16.6人であるのに対して、日本ではわずか0.5人にすぎません(東京新聞平成20年6月11日付朝刊24面「こちら特報部」)。脳死からの臓器提供は幾らか増えているとはいえ、1万2000人を超える待機患者数からみれば限られた数にとどまっているのです。

(1) 臓器移植、特に脳死移植が進まない理由としては、「救急医療の現場に余裕がない」とか、「救命の現場で、臓器提供について話をすれば、家族に十分に治療してくれないのではという不信感を抱かせるのではないか」といった点が挙がっています(「臓器移植法施行から10年~法改正の審議も必要だが、提供意思を生かせる態勢は? 2007/10/20 [Sat] 16:54:52」)参照)。

 「脳死移植が進まない理由は何か。有賀徹・昭和大学医学部教授(救急医学)は「救急医療の現場に余裕がないためだ」と指摘する。

 06年、全国の救命救急センターなどに前年の脳死発生状況を尋ねた。回答のあった541施設で脳死を経たと見られる死亡例は約5500例。だが、治療目的などで臨床的脳死を判断したのは約1600例だけ。判定しない理由は「時間がかかるから」「面倒な仕事になる」などが多かった。

 法的脳死判定は、臨床判断より時間や人手がかかる。慢性的に人手不足の救急医療の現場には、負担感が強い。

 家族が法的脳死判定を受けて臓器提供をした関東地方の男性(63)は、意思表示カードがあることを主治医に伝えた際の微妙な空気を覚えている。「やっかいなものが来た、という反応に感じた。ややこしくなるので迷惑かな、と思った」

 関東地方の病院では、法的脳死判定の際、集中治療室の看護師や麻酔科医師らが3日間、提供者に付き添った。検査技師や事務職員も普段しない夜勤をした。

 「積極的になれない病院があるのも分かる。多職種がかかわる脳死移植は、病院の総合力が試される」と病院関係者は話す。」(朝日新聞平成19年10月18日付朝刊3面)



 「施設や人手の問題以外にも、医師ら医療関係者側には戸惑う要因がある。「救命の現場で、臓器提供について話をすれば、家族に十分に治療してくれないのではという不信感を抱かせるのではないか。そう不安に感じる医療関係者は多い」と福岡県の岩田誠司・移植コーディネーターは話す。」(朝日新聞平成19年10月18日付朝刊3面)



(2) このように、「救命救急」の場では、「臓器提供」に消極的な事情があり、ある意味、「救命」と「臓器提供」は背反するともいえるわけですが、これを両立できないと臓器移植拡大は不可能です。東京新聞「こちら特報部」では、この両立について取り組んでいる病院を取材していましたので、紹介したいと思います。

「ある意味、背反するともいえる「救命」と「臓器提供」。この両立が難しいとされる命題に、救命救急の現場で取り組む医師らがいる。札幌市の市立札幌病院救命救急センター。心肺停止患者の救命率も社会復帰率も全国トップクラスを誇る同センターは、心停止後の腎臓提供も全国1、2位を誇る。患者本人や家族とどう向き合っているのか、現場に同行して探った。」(東京新聞)




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2008/07/01 [Tue] 00:41:32 » E d i t
病気の腎臓を治した「修復腎」による移植を認めてもらおうと、人工透析患者を中心に組織する「愛媛県腎臓病患者連絡協議会」(戸田淳司会長)は6月25日、「修復腎移植の臨床研究での保険適用を求める要望書」を舛添要一厚生労働相あてに郵送しました。



1.愛媛新聞2008年06月26日(木)付「特集宇和島 腎移植」

病気腎 臨床研究へ保険適用を 県患者連絡協 厚労省に要望書

 県内の人工透析患者を中心に組織する「県腎臓病患者連絡協議会」(戸田淳司会長、約千四百五十人)は二十五日、病気腎(修復腎)移植について「臨床研究への保険適用を求める要望書」を舛添要一厚生労働大臣あてに提出した。

 要望書は、末期腎不全の治療法として、生活の質の面では透析療法よりも移植の方が優れ、待ち望んでいる患者も多いが、腎移植が進まない現状に言及。病気腎移植の臨床研究を「『高度医療』『先進医療』の枠組みで、保険診療として認めてほしい」としている。

 病気腎移植について日本移植学会など腎臓病関連学会は「現時点で医学的に妥当性がない」とし、厚生労働省も原則禁止を打ち出している。一方で、双方とも臨床研究については、適正な手続きを踏まえた上で認める方向性を示している。

 五月には、国会議員グループが条件付きで同移植を容認する見解を発表した。」



要望書の全文については、「修復腎移植推進・万波誠医師を支援します」さんの「修復腎移植に保険適用を-厚労相への要望-」(2008/06/26 22:38)で掲載していますので、ぜひご覧下さい。




2.「愛媛県腎臓病患者連絡協議会」は透析患者を中心とする団体ですが、透析患者団体が、修復腎移植を肯定的に捉えた意思表明をすることは初めてようですし、しかも、修復腎移植について保険適用を求める意思を示したのも初めてのことだと思われます。その意味で、初めて一歩踏み出すという大変勇気のいる、そして意義ある要望書であるといえます。


(1) 一般的には、「透析療法と比べ腎臓の機能を代行するという意味では腎移植がはるかに優れています」(東京女子医科大学腎臓病総合医療センター泌尿器科)ということなのですから(「修復腎移植の是非を問う前提として~腎移植と透析療法ではどちらが良いのか?」(2008/06/01 [Sun] 18:41:49))、腎移植ができるようする意義があり、特に腎移植を切に必要とする透析患者にとっては、腎移植を選択する機会を増やす必要性があります。

臓器移植法は、臓器移植をより可能にするための法律なのですから、臓器移植の可能性を増やすことは、臓器移植法の趣旨にかなうことでもあります。

ところが、現在、死体腎移植の平均待機期間は16年という、あまりにも長い期間であって、臓器移植ネットワークへの登録を止める方もいるほどです。平均で16年もかかるのですから、移植を受ける機会がないに等しいため、登録料を払うだけ無駄になってしまうからです(新規登録料は3万円、毎年3月末に更新するための費用(更新料)は、5000円。なお、2度目の腎移植は殆どなし。)。

このように、死体腎移植は殆どないに等しい状況において、生体腎移植を受ける当てがない患者にとっては、「移植の機会増大は、何よりも切実な問題、願い」(要望書)なのです。もちろん、透析療法と腎移植どちらを選ぶか、修復腎移植を選ぶかどうかは、患者の選択に委ねられているわけですが。



(2) 修復腎移植を認め、腎移植の機会を増やすことは、透析患者にとって利益の多いことなのですから、もっと声を上げていいはずです。「愛媛県腎臓病患者連絡協議会」、すなわち透析患者団体が、修復腎移植を肯定的に捉えた意思表明をすることは初めてというのは、実に妙な感じがするほどです。修復腎移植に対する理解不足もあるでしょうが、おそらくは、団体と言う組織となると、色々なしがらみがあるためなのだろう、と推測しています。

透析患者個人としては修復腎移植に賛成する方もいることは確かです。透析患者団体も、所属する患者の意思を汲んで、修復腎移植をタブー視することなく、積極的に行動することが求められているのではないでしょうか。



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