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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2008/06/29 [Sun] 22:42:34 » E d i t
国営諫早湾干拓事業をめぐり、長崎、佐賀県など有明海沿岸4県の漁業者ら約2500人が国に対し、潮受け堤防の撤去などを求めた訴訟の判決が6月27日、佐賀地裁であり、神山隆一裁判長は事業による漁業環境の悪化を認めた上で、環境への影響調査が必要として、国に5年間、排水門の開放を命じました。堤防の撤去については棄却しています。


1.まず、報道記事を幾つか。

(1) 読売新聞平成20年6月27日付夕刊1面(4版)

諫早堤防5年開門 干拓、漁業に悪影響 環境調査命じる…佐賀地裁判決

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)で有明海の環境が変化し漁業被害が発生するなどしたとして、福岡、佐賀、長崎、熊本の沿岸4県の漁業者ら約2500人が国を相手取り、潮受け堤防撤去や堤防の排水門の常時開放などを求めた訴訟の判決が27日、佐賀地裁であった。神山隆一裁判長は干拓事業と一部海域での環境悪化や漁業被害との因果関係を認め、「国は中・長期の開門調査を実施すべきだ」として、国に対し、判決確定後、代替の防災工事などに要する3年間の猶予後に南北2か所の排水門を少なくとも5年間開放するよう命じた。

 堤防撤去や漁業者への慰謝料の支払いについては認めなかった。排水門の常時開放の仮処分は却下した。農水省は控訴する方向で検討している。

 提訴は2002年11月。原告側は、1997年に潮受け堤防により諫早湾の3分の1が閉め切られた後、諫早湾内や有明海全域で高級二枚貝のタイラギやアサリが取れなくなり、有明海全体で00年度にノリが凶作になるなど漁業被害が生じたと主張。国側は、堤防閉め切りで漁業環境は悪化しておらず、漁獲量の変化は見られないと反論していた。

 判決では、堤防閉め切りで泥の質が悪化したと認定。魚介類の生息が困難になるほど水中の酸素濃度が低下する「貧酸素水塊」が頻発する事態を招いたとした。

 また、干拓工事で海底の泥が拡散し、毒性の強い赤潮の増加につながった可能性を指摘。これらの影響で、諫早湾内や近隣海域でアサリ養殖や漁船漁業に被害が出たと認定した。

 因果関係の立証に関しては、原告側について「相当程度のがい然性の立証がされている」とし、「これ以上求めるのは酷」とした。

 一方、国に対しては「中・長期の開門調査をして干拓と環境変化の因果関係がないことを反証する義務があるのに、協力しないことは立証妨害と言っても過言ではなく、訴訟上の信義則に反する」と批判した。

(2008年6月27日15時11分 読売新聞)」




(2) 東京新聞平成20年6月27日付夕刊1面

諫早水門 開放を命令 湾の漁業被害認定 佐賀地裁判決  調査妨害と国を非難
2008年6月27日 夕刊

 有明海の漁業不振は、国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防閉め切りが原因だとして、同海に面する長崎、佐賀、福岡、熊本各県の漁業者ら約二千五百人が、国に堤防の撤去や排水門の開門などを求めた訴訟の判決で、佐賀地裁の神山隆一裁判長は二十七日、南北排水門の五年間常時開放を命じた。諫早湾の環境変化や漁業被害と閉め切りの因果関係を認め、国に中・長期の開門調査を速やかに実施するよう異例の付言をした。

「5年間、常時開門」 

 準備に必要な三年間は開門を猶予するとしたが、巨額な費用がかかることなどを理由に開門を拒否してきた国は根本的な対応の転換を迫られた。

 漁業者らが開門を求めた仮処分申請については「速やかに実施しなければ有明海の環境が回復不能な損害を被るとまではいえない」と却下した。

 判決理由で神山裁判長は「有明海の漁業被害と堤防閉め切りの因果関係は、データが不足しており認めるのは困難だが、諫早湾内とその近くの漁場については相当程度の立証がされている」と認定。「中・長期の開門調査に応じないのは、原告が主張する被害の立証を妨害するものと言わざるを得ない」と国の姿勢を厳しく非難した。

 事業の公共性については「防災機能は新たな工事により代替できる」とし、調整池への海水導入により支障が出る干拓地の農業も「漁業行使権の侵害に優越する公共性や公益があるとは言い難い」と指摘。「判決を契機に中・長期開門調査が実施され、それに基づき適切な施策が講じられることを願ってやまない」と結んだ。

 諫早湾の干拓には、総事業費約二千五百億円が投じられ、費用対効果や環境への配慮をめぐり、大型公共事業の在り方が問われてきた。

 原告らが工事差し止めを求めた仮処分申請では、佐賀地裁が二〇〇四年、漁業被害を認めて差し止めを命令。工事は約九カ月間中断したが、福岡高裁の取り消し決定で再開され、今年三月に完了した。現在は干拓地で営農が始まっている。

 判決によると、一九九七年に諫早湾の湾奥部を全長約七キロの堤防で閉め切ったため、潮流が弱まり赤潮が発生するなど諫早湾の環境が悪化、深刻な不漁となった。」



判決の骨子

一、国は潮受け堤防の南北排水門を5年間常時開放せよ
一、防災機能代替工事のため、判決確定から3年間は開放を猶予する
一、堤防閉め切りと有明海全体の環境変化の因果関係は認められないが、諫早湾内については相当程度立証されている
一、国が中・長期の開門調査に協力しないのは漁業者らへの立証妨害
一、開放で農業生産に支障が生じたとしても、漁業行使権侵害に優越する公共性、公益上の必要があるとは言い難い」




(3) 朝日新聞平成20年6月27日付夕刊1面(4版)

諫早干拓 常時開門命じる  漁業影響 調査促す 期間5年、猶予3年 佐賀地裁判決

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)で有明海の漁場環境が悪化したとして、有明海沿岸の漁民らが同事業で設置された潮受け堤防の撤去や排水門の常時開門を求めた訴訟の判決が27日、佐賀地裁であった。神山隆一裁判長は、環境変化の調査期間などとして5年間、排水門を常時開門するよう国に命じた。ただし、防災上必要な工事のために国に3年間の猶予期間を与えるとした。司法が、完成した大型公共事業の見直しを迫る異例の判決だ。

 神山裁判長は国が中・長期開門調査を実施しなかったことについて、原告側に対する「立証妨害」と批判。堤防撤去の請求は退けたが、諫早湾内などの環境悪化と同事業の因果関係については「相当程度の蓋然(がいぜん)性がある」とした。

 佐賀地裁は同日、原告団が05年10月に同地裁に申し立てていた排水門の常時開門を求める仮処分は却下した。

 判決は、国が97年4月に潮受け堤防で諫早湾を締め切った後、同湾や有明海湾奥部などで赤潮の発生期間が増大したと指摘。ただし、有明海全体については「原因を特定できるほどに科学的知見の集成が行われておらず、高度の蓋然性で認定するのは困難」とした。だが、諫早湾内と付近に限っては「漁船漁業やアサリ漁、養殖漁業の環境を悪化させた」として閉め切りと漁場不振との因果関係を認めた。

 さらに、国の公害等調整委員会などが求めた中・長期開門調査を国が実施しないのは「立証妨害と同視できるといっても過言ではなく、訴訟上の信義則に反する」と批判。国には因果関係について反証する義務があると指摘した。

 常時開門にむけた防災工事には少なくとも3年かかるとし、判決確定から3年以内の開門を求めた。開門期間を5年とした理由については、調整池が海域の生態系へ移行するのに2年、その後の調査期間に3年が必要としている。

 開門などに伴って支障が生じる農業生産についても「漁業行使権の侵害に対して優越する公共性ないし公益上の必要性があるとは言い難い」と断じた。

 長崎県によると、排水門は現在、農業用水として使用している淡水の調整池の水位を一定に保つため干潮時などに定期的に開かれているが、常時開門すれば海水が流れ込み、営農に支障が出る。池の水位も上昇するため、防災機能も低下する、としている。

 判決に先立って佐賀地裁は、04年8月、事業と漁業被害の因果関係を原告の主張の沿う形で認め、干拓工事の差し止めを命じる仮処分を決定し、工事が一時中断。この決定は05年5月、福岡高裁で「因果関係の証明が十分でない」として取り消され、工事は再開された。最高裁も05年9月、原告側の抗告を棄却した。


<キーワード>諫早湾干拓事業 防災と農地造成を目的に、長崎県諫早湾億部を長さ約7キロの潮受け堤防で閉め切り、干拓地と調整池を設けた事業。89年に着工し、97年に堤防が閉め切られ、97年11月に完工。今年4月から営農が始まっている。00年に養殖ノリの大凶作が発生し、事業との関連を指摘する声が沿岸の農民を中心に相次いだ。総事業費は当初見込みの1350億円から2533億円に膨れ上がった。」





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2008/06/26 [Thu] 23:19:46 » E d i t
首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)は6月24日、米国に向かう弾道ミサイルを迎撃できるようにするなど、従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認するよう求める報告書を政府に提出しました。

 「懇談会は、憲法解釈変更に前向きな安倍前首相が設置した。集団的自衛権の行使容認に積極的なメンバーが多く、「結論ありき」(政府関係者)の懇談会という側面もあった。報告書の内容も「米国との強固な信頼関係なしに同盟関係は成り立たない」という安倍前首相の主張を、論理的に補強するものとなっている。

 しかし、現在の政府・与党には、憲法解釈変更の意欲は乏しい。福田首相にとっても、「ねじれ国会」の下では、与野党の火種になる憲法解釈変更の「優先度」は決して高くない。通常国会閉会後に受け取ったのも、野党との衝突を避けるためだ。

 「中身はこれから研究する。ご苦労さまでした」

 首相は24日夕、柳井氏から報告書を受け取ると、こう告げた。面会時間はわずか13分間で、報道各社の写真撮影も認めなかった。」(読売新聞平成20年6月25日付朝刊4面)



報告書を通常国会閉会後に受け取り、面会時間もわずか13分間というそっけなさ、報道各社の写真撮影による写真という証拠を残すことも否定したことは、福田首相は、懇談会に対してかなり冷ややかな姿勢であることが分かります。

報告書を受け取った首相は6月24日夜、記者団に「内容はまだ見ていません」。「(憲法解釈を)変えるなんて話したことはない」と語ったうえで、懇談会を閉じる考えを明らかにしています(朝日新聞)。

福田首相は、おそらく今後、報告書を見るつもりもないのでしょう。報告書は最初から棚上げされて、終わるという結果になりました。懇談会の意義は、安倍首相の辞任とともに、事実上、終了していたということだったのです。




1.報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年6月25日付朝刊4面

集団的自衛権の論議失速 首相冷ややか、法制懇幕引き
2008年6月25日8時14分

 首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)は24日、福田首相に報告書を提出し、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認するよう政府に求めた。だが、首相に提言を正面から受け止め、本格検討するそぶりはない。安倍前首相の肝いりで設置された懇談会は、議論を喚起できないまま役目を終えた。

 安倍前首相は、現在の政府解釈で自衛隊の活動が困難とされる(1)公海上での米艦船への攻撃への応戦(2)米国に向かう弾道ミサイルの迎撃(3)国際平和活動をともにする他国部隊への「駆けつけ警護」(4)国際平和活動に参加する他国への後方支援の4類型について検討を指示。報告書は、いずれも可能とすべきだと提言し、(1)(2)は集団的自衛権の行使容認、(3)(4)は憲法解釈の変更を求めた。

 だが、福田首相の視線は冷ややかだ。そもそも、福田氏は集団的自衛権の行使には慎重で、福田政権誕生後は同懇談会は一度も開かれず、約10カ月にわたり「休眠状態」に置かれていた。

 懇談会は集団的自衛権の行使容認論者が大勢を占め、首相が「私が受け取れる内容にしてくれ」と間接的にメッセージを出したが、変わらなかった。政府高官は「(メンバーの)頭の中を変えるわけにはいかない。現実の政権のあり方とはかけ離れた報告書」と突き放す。

 報告書を受け取った首相も24日夜、記者団に「内容はまだ見ていません」。「(憲法解釈を)変えるなんて話したことはない」と語ったうえで、懇談会を閉じる考えを明らかにした。

 国会閉会を待って報告書を提出した懇談会だが、提出の場面は報道陣には公開されなかった。柳井氏は提出後の会見で「今までのような憲法解釈で、激変した安保環境で日本の安全保障が達成できるのか」と報告書の意義を強調したが、提案が政策に生かされるかについては「国内政治的には厳しい。一朝一夕には変わらないことは分かっている」と語った。(金子桂一)

     ◇

 〈安保法制懇報告要旨〉

 【憲法9条への基本認識】

 これまでの政府解釈の踏襲では今日の安全保障環境で生起する重要問題への対処は困難。現行解釈に固執することは法的に合理的でない解釈の連鎖を生み出しかねず、国際的に適切と考えられる新しい解釈を採用することが必要。

 【4類型に関する提言】

 〈公海における米艦防護〉これまでの憲法解釈、現行法の規定では自衛隊は極めて例外的にしか米艦を防護できない。集団的自衛権の行使を認める必要がある。

 〈米国に向かう弾道ミサイル迎撃〉弾道ミサイルを打ち落とさないことは日米同盟を根幹から揺るがす。絶対に避けるべきだ。集団的自衛権の行使に頼らざるを得ない。

 〈国際平和活動での駆けつけ警護〉国際的平和活動は憲法9条で禁止されないと整理し、認めるべきだ。

 〈国際平和活動に参加する他国の後方支援〉憲法上の評価を問う「他国の武力行使と一体化」論をやめ、政策的妥当性の問題として決定すべきだ。」




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2008/06/25 [Wed] 22:50:16 » E d i t
イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、第3管区海上保安本部(横浜)は6月24日、あたご側が動静監視を怠り、回避動作が遅れたのが原因で事故を招いたとして、業務上過失致死と業務上過失往来危険の容疑で、衝突時と衝突前の当直責任者だった3等海佐2人を書類送検しました。衝突時が前水雷長の長岩友久3佐(34)で、衝突前が前航海長の後潟桂太郎3佐(36)です。

海上保安大学校(広島県呉市)の鑑定で、あたごは、衝突直前に右転した清徳丸の左舷後方から40-50度の角度で、減速が間に合わずに衝突したことが判明し、そこで、3管本部は、回避が大幅に遅れたあたご側の過失が裏付けられたと認定しました(共同通信)。
6月27日追記:「あたご側、十数秒前に気づく」との毎日新聞の記事を引用しました。)



1.報道記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成20年6月24日付夕刊1面【社会】

あたご2士官書類送検 イージス艦事故 『監視不徹底主因』
2008年6月24日 夕刊

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、第三管区海上保安本部(横浜)は二十四日、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで、衝突直前に当直士官を交代した前航海長の後潟(うしろがた)桂太郎三佐(36)と、衝突時の当直士官だった前水雷長の長岩友久三佐(34)を書類送検した。三管本部は、両者が見張りやレーダーの監視を徹底せず、回避が大幅に遅れたことが事故の主因として過失を認定。後潟三佐は引き継ぎも不適切だったとした。 

 調べでは、あたごは事故当日の二月十九日未明、千葉県・房総半島沖を約十ノット(時速約十八キロ)で北上。後潟三佐は同日午前三時四十分ごろ、右前方に清徳丸を含む漁船団を視認し、衝突の危険を予測できたにもかかわらず、継続的な監視を怠って航行を続け、長岩三佐に「衝突の危険はない」と不適切な引き継ぎを行った疑い。

 長岩三佐も、漫然と直進を続け、回避行動を取らずに、同四時六分に清徳丸と衝突し、船長の吉清(きちせい)治夫さん=当時(58)=と長男哲大(てつひろ)さん=同(23)=を死亡させた疑い。長岩三佐は衝突直前に後進命令を出したが、ほとんど減速しないまま衝突。清徳丸は衝突直前に右にかじを切っていたが、よけきれなかった。

 三管本部は、二士官の認否について「供述内容にかかわるので差し控える」として発表しなかった。

 船渡健前艦長(53)については、事故当時は仮眠中で直接操艦に携わっていなかったとして、送検を見送った。清徳丸側も業務上過失往来危険容疑での書類送検を検討したが、操船者が特定できず見送った。」



(2) 朝日新聞平成20年6月24日付夕刊15面(13版)

当直士官2人を書類送検 イージス艦衝突事故 判断ミス原因
2008年6月24日11時21分

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸が2月19日未明、千葉・房総半島沖で衝突した事故で、第3管区海上保安本部(横浜市)は24日、交代前後の当直士官の判断ミスが衝突の主因だったとして、衝突時に操艦責任を担う当直士官だった長岩友久・元水雷長(34)と、前の当直士官だった後瀉(うしろがた)桂太郎・元航海長(36)を、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで横浜地検に書類送検した。

 海自の最新鋭艦が漁船を巻き込んだ事故は当直仕官2人の刑事責任追及に発展した。

 3管の調べでは、あたごでは、事故当日の午前3時50分ごろから午前3時55分ごろまでの間に、前の当直と衝突時の当直が引継ぎをした。

 当直交代前、艦橋で見張りをしていた当直員は、清徳丸を含むと見られる漁船群の灯火を複数回、右前方に確認。情報を元航海長に報告した。元航海長も午前3時40分ごろ、灯火を確認していた。

 海上衝突予防法は、船が互いに針路を横切る関係にある場合、相手を右に見る側に回避義務があるとしている。しかし、後瀉元航海長はレーダーなどで漁船群の動きを継続的に確認せず、漁船群は停船した状態であり、あたごの針路を横切るなどの危険性はないと判断したとされる。

 引継ぎ時には、後瀉元航海長と長岩元水雷長はともに灯火を確認していたという。

 当直交代後も、あたごは自動操舵(そいだ)のまま航行を続けた。長岩元水雷長は、漁船群の動きを十分に確認せず、衝突直前になってから、全速で後進する回避動作をとったが、間に合わなかったとされる。

 清徳丸側については、乗っていた吉清治夫(きちせい・はるお)さん(当時58)と長男哲大(てつひろ)さん(同23)が死亡しているため、どちらが操船していたか特定できなかった。海保は、清徳丸側にも一定の過失があったとみているが、あたご側に一義的な回避義務があったとして父子の立件は見送った。

 事故後に解任された舩渡(ふなと)健前艦長(53)は、操艦の全責任を負う立場だったものの、事故当時は、仮眠中で艦橋におらず、直接の過失はなかったと判断した。

 海保とは別に、事後原因を調べている横浜地方海難審判理事所は、舩渡前艦長や、あたごの所属部隊だった旧第63護衛隊など海自関係者4人と1部隊を対象に、週内にも横浜地方海難審判庁に審判の開始を申し立てる。」




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事件 *  TB: 4  *  CM: 1  * top △ 
2008/06/24 [Tue] 22:21:07 » E d i t
先日、「東京・秋葉原殺傷事件」の現場となった秋葉原に行ってきました。


二十代・アキバ献花台発:/上 孤独、焦り…思い重ね

 ◇事件起こすかどうか、一線どこに?
 ◇クビになるかも。怖い


 東京・アキバ(秋葉原)--。大通りの交差点に献花台はある。

 花束、スナック菓子、アニメキャラクター……。下段にはペットボトルの白キャップが、ハチの巣のように並ぶ。

 今月8日、7人の命をトラックとナイフで不条理に奪い、加藤智大容疑者が逮捕された。25歳の男は、ネアカ、ネクラ、ロリコンなどの言葉が流行した1982(昭和57)年に生まれている。惨劇の犠牲者を悼む献花台には若者がひっきりなしに訪れ、その大半が男と同じ20代だ。(以下、省略)」(毎日新聞平成20年6月24日付東京朝刊13面


今でも献花台には、花束やペットボトルが数多く並んでいますし、献花台以外にも歩道の何ヶ所かに花束やペットボトルが供えられています。献花台の写真を撮る人もいますが、多くは手をあわせ拝んでおり、誰かがそこで拝んでいるという様子でした。

献花台は、シンプルなものであって追悼する旨の簡単な紙が貼っているくらいで、何か仏像が置かれているわけでありません。献花台に神様が宿っているとも思えません。では、献花台へ向けて手を合わせて拝んでいる人達は、何を想って拝んでいるでしょうか。拝む際にこの事件が起きた背景についても思い巡らしているのでしょうか……。



1.秋葉原殺傷事件については、何度もエントリーにしています(その中で「晴天とら日和」さんと言った秀逸なエントリーも紹介しています)が、再び触れてみたいと想います。

<1>「秋葉原通り魔事件:秋葉原で無差別に7人殺害、10人重軽傷~犯罪が発生した背景をよく考える必要があるのではないか?」(2008/06/09 [Mon] 23:11:16)

<2>「派遣労働の世界とは? 35年目の「自動車絶望工場」~秋葉原無差別殺傷事件・容疑者の勤務先ルポ “派遣契約をすべて解除!?”(東京新聞平成20年6月12日付「こちら特報部」より)」(2008/06/12 [Thu] 17:00:36)

<3>「絶望生む「使い捨て」やめて~秋葉原事件契機に派遣法抜本改正を!(東京新聞6月19日付「こちら特報部」より)」(2008/06/20 [Fri] 00:43:38)




この秋葉原無差別殺傷事件については、容疑者である加藤智大氏が派遣社員であったことから、非正規雇用の実情に詳しい作家の雨宮処凛さんの発言は、注目しておく必要があります。

「秋葉原」と若者の暴発

 発生後2週間がたつ秋葉原17人殺傷事件。背景を若年貧困層の実情に詳しい作家、雨宮処凛さんが論じる。」(毎日新聞平成20年6月23日付朝刊1面)


雨宮処凛さんは、この事件につき、すでにいくつかコメントを残されていますが、毎日新聞6月23日付にかなり長文の論説を寄せていたので、紹介したいと思います。



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2008/06/22 [Sun] 20:05:49 » E d i t
鳩山法相は、6月20日午前の閣議後の記者会見で、就任以来13人という最多の死刑執行を命令した法相を「死に神」と表現した朝日新聞の6月18日付コラムを取り上げ、抗議の意思を明らかにしました。そして、その抗議に同調した人達は、朝日新聞に対して「電話やメールなどで約1130件の抗議」を寄せたそうです。


1.実に馬鹿馬鹿しい出来事なので、どうでもいいと思うのですが、テレビで大きく報道され、新聞各紙(読売、毎日、日経、朝日)が掲載しています。その幾つかを引用しておきます。

(1) 毎日新聞平成20年6月20日付夕刊10面

連続幼女誘拐殺人:「死に神」報道、鳩山法相が不快感--朝日「素粒子」

 鳩山邦夫法相は20日の閣議後会見で、連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚ら3人の死刑執行について法相を「死に神」と表現した朝日新聞の報道に「執行された方々に対する侮辱。彼らは死に神に連れて行かれたのとは違う」と不快感を示した。

 問題となった記事は朝日新聞18日夕刊1面コラム「素粒子」。執行再開以降の法相で最多の執行数となったことに触れ、「またの名、死に神」などと表現した。

 鳩山法相は「マスコミは(執行数を)野球の打率のように論評するが、私は粛々と正義の実現のために法相の責任を果たしている」と述べたうえで、「人の命を絶つ極刑を実施するのだから、私も心境穏やかではないが、社会正義のために苦しんで執行した。恐ろしい事件を起こした宮崎死刑囚にも人権も人格もある。軽率な文章だ」と話した。【石川淳一】

毎日新聞 2008年6月20日 東京夕刊」



(2)  【共同通信】(2008/06/20 13:16)

「死に神」表現に猛抗議 死刑執行で鳩山法相

 「苦しんだ揚げ句に死刑を執行した。彼らは『死に神』に連れて行かれたのか」。鳩山邦夫法相は20日の閣議後会見で、13人の死刑執行を命令したことを朝日新聞が「死に神」と表現したことに対し「軽率な文章には心から抗議したい」と怒りをあらわにした。

 朝日新聞18日付夕刊の「素粒子」欄は、鳩山法相について「2カ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。またの名、死に神」などと記載した。

 これに対して鳩山法相は「極刑を実施するんだから、心境は穏やかでないが、どんなにつらくても社会正義のためにやむを得ないと思ってきた」と語り、「(死刑囚にも)人権も人格もある。司法の慎重な判断、法律の規定があり、苦しんだ揚げ句に執行した。彼らは死に神に連れて行かれたのか」とマイクが置かれた台をたたいて声を荒らげた。

 さらに「私に対する侮辱は一向に構わないが、執行された人への侮辱でもあると思う。軽率な文章が世の中を悪くしていると思う」と語った。

2008/06/20 13:16 【共同通信】」



(3)朝日新聞平成20年6月21日付朝刊34面(asahi.com:2008年6月20日13時35分)

■法相、「素粒子」を批判

 鳩山法相は20日の閣議後の記者会見で、朝日新聞の18日夕刊1面の時事寸評コラム「素粒子」で死刑執行に絡んで「死に神」と表現されたことについて「大変な問題だ。そういう軽率な文章を平気で載せるということ自体が、世の中を悪くしている」と批判、「司法の慎重な判断、法律の規定により、私も苦しんだ揚げ句に執行した」などと述べた。

 「素粒子」では「2カ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。またの名、死に神」などと表現した。朝日新聞には20日、電話やメールなどで約1130件の抗議が寄せられた。

 朝日新聞社広報部の話 「素粒子」は、世の中の様々な出来事を題材に、短い文章で辛口の批評をするコラムです。鳩山氏や関係者を中傷する意図は全くありません。」





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2008/06/20 [Fri] 00:43:38 » E d i t
派遣労働者を支援するNPO「ガテン系連帯」は6月18日、衆議院第二議員会館第二会議室において、この事件と派遣労働の関係をどのように考えるべきかを、メディアの方々と話し合うため、「秋葉原事件と派遣労働を考える懇談会」を開催しました。



1.この懇親会について、報道記事とガテン系連帯側のブログから引用しておきます。

(1) 東京新聞平成20年6月19日付朝刊25面「こちら特報部」

絶望生む「使い捨て」やめて  秋葉原事件契機に労働者支援NPO 派遣法抜本改正を

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件を受け、派遣労働者を支援するNPO「ガテン系連帯」が18日、派遣労働の実態を考える懇談会の衆議院第二議員会館で開いた。同連帯側は「なぜ殺人を犯すまでの絶望感に襲われたのかを考えたい」と、不安定な雇用形態が労働者を絶望させていると強調した。

 加藤智大容疑者(25)は昨年11月から、派遣社員として静岡県裾野市の関東自動車工業で働いていた。同社はことし5月末、200人のうち150人の派遣労働を解除することを派遣元に伝えたが、加藤容疑者自身は今月3日に解除対象でないことを知ったという。

 だが、携帯電話サイトの掲示板に「また別の派遣でどっかの工場に行ったって、半年もすればまたこうなるのは明らか」などと書き込んだとされている。

 懇談会で同連帯の小谷野毅事務局長は「労働力の使い捨てを日常的に無慈悲に通告され、労働者を絶望させているのが大企業の派遣労働の実態。残酷な契約体系を許す社会や労働の仕組みが問題だ。事件で『派遣社員は危険だ』との誤解が広まれば、彼らをさらに絶望させる」とした。

 厚生労働省告示では派遣契約を期間満了前に解除する際、派遣先が自社の関連会社での就業をあっせんするなど、就業機会の確保を定めている。小谷野事務局長は「今回、確保があった形跡がない」と疑問を投げかけた。

 別の自動車工業で働く派遣社員の男性(48)は「私たちは企業から見れば、物を造る機械の部品と同じ。いつ切られるか分からない」と不安を訴えた。

 同連帯は20日にも、関東自動車工業に派遣契約の中途解約の経緯説明などを求める。25日は他の労働団体と合同で、労働者派遣の抜本改正を求める集会を都内で開き、党首や党代表に出席を求める方針だ。」



(2) 「ガテン系連帯☆ブログ」の「「秋葉原事件と派遣労働を考える懇談会」を開催しました。」(2008年06月18日)

「秋葉原事件と派遣労働を考える懇談会」を開催しました。 

 本日、ガテン系連帯は「秋葉原事件と派遣労働を考える懇談会」を開催しました。
会場となった衆議院議員会館には、メディアを中心におよそ90名が詰めかけました。

 小谷野事務局長、小谷フルキャストセントラル委員長、木下共同代表がそれぞれ発言し、労働者派遣制度=「人間使い捨て」のしくみが事件の背景にあることを強く訴えるとともに、派遣社員の実情を知らせ、こうした派遣労働をつくりだし、派遣社員をほしいままにしている派遣先にこそ責任がある、と強調しました。そして、ガテン系連帯は、働く派遣社員たちに対して熱烈に連帯を呼びかけました。

 関東自動車は自分たちの責任を省みることなく、「今後、人材派遣会社に対しては、このような不祥事が二度とないように、人材の確保、管理、監督について要請していきたいと思います」などと、まるで被害者のような顔をしています。これをこのまま放っておくわけにはいきません。

 ガテン系連帯は他ユニオンらとともに、今週20日、派遣先である関東自動車への申し入れを行い、来月25日には各党トップを招いての派遣法改正へ向けた集会を開催します。

 またこれからさらに一層身を引き締めて、派遣社員として働く仲間たちに対し、絶望するな、ともに手を取り合おうと呼びかけを広く行っていきたいと思います。

 みなさんのご協力よろしくお願いします。」




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事件 *  TB: 6  *  CM: 9  * top △ 
2008/06/19 [Thu] 04:18:33 » E d i t
「「叫びたし 寒満月の割れるほど」2008(上):冤罪なのに死刑が執行された「福岡事件」のことを知っていますか?~東京(6月14日)でシンポジウムを開催」(2008/06/15 [Sun] 10:54:50)の続きです。

なお、平成20年6月17日に3人の死刑囚に死刑が執行されましたが、くしくも6月17日は、「福岡事件」の西武雄死刑囚も死刑を執行された日でありました。


1.まず、東京(6月14日)でのシンポジウムについて、「プログラム進行予定表」を引用しておきます。司会進行を務めたのは、フリーアナウンサーの一色映里さんです。予定では、16:45終了予定でしたが、実際には5時を過ぎていました。

福岡事件の真実を明らかに!~61年間の無実の訴え」 
6月14日13:00~17:00

YMCAアジア青少年センター(スペースY地下ホール・地下一階)
〒101-0064 千代田区猿楽町2-5-5 TEL:03(3233)0611

                            開場 13:00~

1.開会のあいさつ   古川龍樹 13:30~ (5分)

2.基調講演   八尋光秀弁護団代表 13:35~ (50分)
 ・福岡事件解説と再審の展望
 ・ビデオ上映あり(約20分)

3.福岡事件再審運動を支援する学生の会からの挨拶 14:25~ (10分)

(途中休憩) 14:35~ (10分)

4.シンポジウム
「福岡事件から考える日本の司法、冤罪、死刑の問題」14:45~ (70分)
 シンポジスト:土井たか子さん、森達也さん、落合恵子さん、
 コーディネーター:八尋光秀さん
 司会:関東学院大学、宮本弘典法学部教授
 質疑応答あり(10分)

5.コンサート「いのちの調べ」 15:55~ (40分)
 <1>横笛献曲(鯉沼廣行さん、金子由美子さん
 <2>ピアノ献曲(ウォン・ウィン・ツァンさん)

6.閉会のあいさつ  学生、古川 16:35~16:45  終了予定

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*シンポジウムの最後に、質疑応答の時間を設けます。休憩時間に回収しますので、ご質問のある方は、ここにご記入頂き、お手数ですが、切り離してスタッフにお渡し下さい。
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2008/06/18 [Wed] 00:01:09 » E d i t
鳩山邦夫法相は6月17日、東京、大阪両拘置所で幼女4人連続誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚(45)ら3人の死刑を執行したと、自ら発表しました。宮崎死刑囚の裁判は刑事責任能力が争われ、約16年に及んだのですが、執行は確定から約2年4ヶ月後という短い期間でした。ほかに執行されたのは、東京・品川の風俗店主殺害事件の陸田真志死刑囚(37)と宮城、香川両県で主婦2人を殺害した山崎義雄死刑囚(73)です。

鳩山邦夫法相下での死刑執行は、昨年12月からほぼ2ヶ月間隔で執行し、4月以来4回目で、死刑が3年余りの中断後再開された1993年以降、計13人で過去最多という、異常なペースで執行しています。今回の執行で未執行の確定死刑囚は102人となりました。執行官には本人及家族に不幸がある場合とされていることからしても、鳩山法相は、死刑囚とはいえ、これだけ多数人を手にかけているのですから、「地獄行き」は間違いなさそうです。



1.まず、報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年6月17日付夕刊1面

連続幼女誘拐殺人 宮崎勤死刑囚らの死刑を執行
2008年6月17日12時38分

 法務省は17日、88~89年にかけて東京や埼玉で起きた連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚(45)について、東京拘置所で死刑を執行したと発表した。幼い子が標的にされ、被害者宅に遺骨が届けられるなどした衝撃的な事件は、発生から20年を経て刑が執行された。

 宮崎死刑囚のほか、2人の死刑も同日執行された。死刑執行は、鳩山法相が昨年8月に就任して以来、昨年12月の3人、今年2月の3人、4月の4人に続いて4回目で、計13人。鳩山法相は2カ月に1度の間隔で執行命令を出し続けている。止まっていた執行が93年に再開されて以降、1人の法相のもとでの執行としては長勢前法相の10人を上回り、最多となった。鳩山法相は執行が2カ月に1度のペースで進んでいることについて「粛々と執行させていただいている。その結果が、たまたま何カ月おきという議論だ」と述べた。

 宮崎死刑囚は(1)88年8月、埼玉県入間市で4歳の女児を車で誘拐し、山林で絞殺(2)88年10月、同県飯能市で7歳の女児を誘拐し、山林で絞殺(3)88年12月、同県川越市で4歳の女児を誘拐し、山林で絞殺(4)89年6月、東京都江東区で5歳の女児を誘拐し、直後に車内で絞殺(5)89年7月、東京都八王子市で6歳の女児を裸にした(年齢は当時)。

 宮崎死刑囚は当初から殺害などの事実は認めていたが、公判に入って「もう1人の自分が現れた」などと述べるようになり、刑事責任能力の有無が最大の争点となった。一審段階の鑑定は、責任能力を完全に認めるものから限定的とするものまで3通りに分かれた。

 97年4月の東京地裁判決は、「人格障害の範囲だった」とする鑑定を採用。責任能力があったと認定して死刑を言い渡した。二審・東京高裁も01年6月に完全な責任能力があったと認めた。06年1月に最高裁が「性的欲求を満たすための犯行だ」と述べて被告側の上告を棄却する判決を言い渡し、同年2月に死刑が確定した。

 法務省によると、ほかに執行されたのは、東京拘置所の陸田(むつだ)真志死刑囚(37)と大阪拘置所の山崎義雄死刑囚(73)。

 陸田死刑囚は95年12月、兄と共謀し、勤めていた都内の風俗店事務所で店長(当時33)と経営者(当時32)をナイフで刺すなどして殺害し、財布を奪った。2人の遺体をコンクリート詰めにし、茨城県の鹿島港に捨てた。

 山崎死刑囚は85年11月、共犯の男と共謀し、知人の仙台市の主婦(当時49)を絞殺し、自殺に見せかけて保険金約700万円を受け取った。90年3月、別の男とともに、保険金目的で香川県の男性(当時48)の頭を鉄亜鈴で殴るなどして殺害し、遺体を高知県内に遺棄した。

 死刑確定から執行までの期間は、宮崎死刑囚が2年4カ月、陸田死刑囚は2年8カ月、山崎死刑囚も3年4カ月となっており、「約8年」といわれてきた期間が大幅に短縮されたことになる。

     ◇

 〈連続幼女誘拐殺人事件〉 88~89年、東京や埼玉で女児4人が相次いで誘拐、殺害された事件。捜査が進展しない中、被害女児宅に「鑑定」などと書かれた段ボール箱が届いた数日後、マスコミには「今田勇子」の名で告白文と題する犯行声明が届いた。89年7月23日、宮崎勤死刑囚が強制わいせつの疑いで現行犯逮捕された。06年2月、死刑が確定した。」



(2) 東京新聞平成20年6月17日付夕刊11面

宮崎死刑囚刑執行 謝罪なく、残るナゾ 発生20年、事件風化も

 1988年から89年にかけて東京と埼玉で幼女4人を殺害し、首都圏を震撼(しんかん)させた連続幼女誘拐殺人事件での逮捕から19年。宮崎勤死刑囚(45)に死刑が執行された。刑事裁判の精神鑑定で、刑事責任能力に疑問を呈する医師もいるなど、精神状態が疑われる中での執行。鳩山邦夫法相になってから4回目、計13人というハイペースに、死刑囚と交流の会った関係者らは、衝撃を隠さなかった。

 「踏み台が外されて落下する最中は恐怖のどん底に陥られる。人権の軽視になる」。宮崎勤死刑囚は2006年の死刑確定後、月刊誌「創」の篠田博之編集長に拘置所から手紙を出し、絞首刑への恐怖を訴えていた。

 篠田さんは「ショックだ。まさかこんなに早いとは…。本人もこんなに早いとは思っていなかったと思う」と驚きを隠さない。

 「確定死刑囚に対する影響は大きい。すごく残念なのは、死刑が執行される意味を彼がどこまで理解していたか疑問が残る点だ。罪を認めて処罰を受けるという本来の意味を持たず、抹殺したという意味しか持たない死刑執行ではないか」と、法務省を批判した。

 同誌同年7月号によると、手紙は死刑確定後から5月までに、宮崎死刑囚の母親を経由するなどして5通届いた。宮崎死刑囚は「法律は残虐な刑罰を禁じている。薬で意識を失わせ、心臓を停止される方法にしなければいけない」などと書いていた。薬物使用の場合は「余裕があり、反省や謝罪の言葉を述べる確率も断然高い」とも記載している。

 拘置所から出した手紙をまとめた著書「夢のなか、いまも」(創出版)では、最高裁判決を「『あほか』と思います」と批判。判決が大きく報道されたことについて「やっぱり私は人気者だ」と感想を述べた。事件については「良いことができてよかったです」と振り返るだけで、被害者や遺族への謝罪は一度もなかった。

 埼玉県入間市の女児=当時(4つ)=の母親は県外に転居したが、今も同市の寺院に墓参りに通うという。おかっぱ頭の地蔵がある墓には花が絶えない。05年9月には、17回忌の法要が営まれた。生きていれば、成人していることになる。

 誘拐された歩道橋近くには、事件の3年後に交番が設置された。近くの小学校の校門に残る「2人以上で帰ります」という看板が事件の風化をかろうじて押しとどめる。

 東京都あきる野市にあった宮崎死刑囚の自宅は壊された。家族や親類の多くも婚約の破談、離婚、退職に追い込まれたという。父親は被害者への賠償金を支払うため先祖代々の土地を売り払い、5年後の94年11月、青梅市の多摩川に飛び降り、自殺した。

 かつての自宅は、現在、駐車場となっており、その片隅には事件前から置かれていたとされる石仏がひっそりとたたずんでいる。

精神障害演じる

 作家佐木隆三氏の話 1審から最高裁の死刑確定まで欠かさず傍聴したが、精神鑑定を含めて長い裁判だった。彼の犯行であることは疑いの余地がなく、刑事責任能力が争われたが、私は、精神障害を演じる詐病とみている。これほど非道な犯罪はなく、4人も続けて殺害した重みを忘れてはいけない。」




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2008/06/17 [Tue] 01:07:28 » E d i t
親子2代にわたる「無戸籍の連鎖」が解消されることになりました。

いわゆる民法の離婚後300日規定が原因で戸籍がない兵庫県の女性が先月出産した男の子について、子供の出生届が受理されず無戸籍のままになる恐れがありました。その解消の要望を受けて鳩山邦夫法相が配慮する考えを示したため、法務省の異例の指示で、女性の夫である男性の長男として6月11日、出生届が受理され、戸籍が作られたからです。



1.まず、報道記事を幾つか。

(1) 毎日新聞平成20年6月12日付朝刊1面

無戸籍:女性の子に戸籍 法律婚認め、救済--法務省

 離婚後300日規定により無戸籍となった兵庫県内の女性(27)が5月末に出産した男児が11日、同県内の自治体で出生届を受理され、戸籍に記載された。女性は戸籍がなく事実婚を余儀なくされた。このため男児の出生届の受理には女性の戸籍が必要で、男児も無戸籍となることが懸念されていた。法務省は、女性の無戸籍のままでの結婚(法律婚)を認め、通常の夫婦のケースと同様に夫の戸籍に記載することで、無戸籍となることを避けた。

 法務省によると、当事者が無戸籍での婚姻届を認めたのは初めて。無戸籍者の結婚を認めて親子2代にわたる無戸籍を回避した手続きは、同様のケースの救済につながりそうだ。

 戸籍法の施行規則は、結婚を届ける際に、戸籍謄本など名前や年齢など身分を証明する書類の提出を義務付けており、自治体は通常、戸籍謄本の提出を求めている。

 法務省民事局によると、今回は代替書類として、医師による出生証明書などで、女性の身分事項が証明できたため、これまで事実婚だった夫との法律婚を認めた。

 そのうえで、結婚によって新たに作られた夫を筆頭者とする戸籍では、「無籍者」である女性との結婚経緯を記載。妻である女性の欄は無戸籍のため記載せず、生まれた男児の欄には、「父」として夫の名前、「母」として女性が使っている名前を記した。

 2代にわたる無戸籍をめぐっては、離婚が成立していない母親と別の男性との間に生まれたため無戸籍になった大阪府の女性(24)が、子供2人を産み、戸籍がない状態になったケースが明らかになっている。

 民事局の担当者は「今回、民法や戸籍法の枠内で救済できた。同様のケースでは、詳細を調査したうえで適切に対応したい」と話している。【坂本高志】

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 ■ことば

 ◇無戸籍者

 戸籍に記載がなかったり戸籍自体がない状態。離婚後300日規定により「前夫の子」となるのを拒んで親が出生届を出さなかったり、前夫の子を覆す裁判手続きを取らないなどの理由で子供が無戸籍となる。

毎日新聞 2008年6月12日 東京朝刊」



(2) 毎日新聞平成20年6月12日付朝刊26面

無戸籍児:無戸籍女性の子、父親戸籍に記載 救済の道、広げて 同じ境遇の女性ら期待

 親子2代にわたり無戸籍となる懸念があった兵庫県の無戸籍女性(27)が先月産んだ男児は11日、戸籍に記載された。法務省が取った手続きは、無戸籍のまま女性の結婚を認める内容。この特例に従えば、親子で無戸籍という事態が避けられるだけでなく、結婚は困難とされてきた無戸籍の人たちの結婚が認められることになる。関係者から期待の声が相次いだ。

 「(息子の)戸籍が取れて本当にうれしく思います。私も含め無戸籍の問題が残っているが、できれば何らかの救済方法を考えてほしい」

 先月29日に男児を出産した女性は、支援者を通じてそうコメントした。

 関係者によると、地元の法務局から今回の手続きの説明があったのは出産の数日前。出産前日に婚姻届を提出したが、「これで夫の姓を名乗ることが公的に認めてもらえた」と感じた。多くの人に支えられてきたため、男児には「思いやりのある元気な子に育ってほしい」と願っているという。

 戸籍がない2人の幼児を育てる大阪府内の無戸籍女性(24)も「自分の子供も戸籍登録され、親子2代の無戸籍が解消できるかもしれない」と期待を膨らませた。女性は、母親が前夫との離婚協議が困難な中、別の男性との間に生まれた。05年と06年に生まれた子供が住民票に記載されているのが救いだ。「私も結婚できたり子供の戸籍が取れるのか役所の窓口で相談したい」と話した。

 「無戸籍児家族の会」の井戸正枝事務局長(42)は「無戸籍者でも結婚できることが確認できた。大きな一歩だ。法務省には、こうした措置を全国で共有できるように徹底してほしい」と求めた。【工藤哲】

毎日新聞 2008年6月12日 東京朝刊」




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2008/06/15 [Sun] 10:54:50 » E d i t
現在、「『叫びたし 寒満月の割れるほど』2008~福岡事件の再審開始を求めて~」という、キャンペーンが行われています。キャンペーン日程は、5月20日(福岡)から始まり、日本各地を回って6月23日までとなっています。



1.このキャンペーンためのチラシがあるので、その表面の説明を引用しておきます。

「叫びたし 寒満月の割れるほど」2008
~福岡事件の再審開始を求めて~


 この句は、28年もの間「無罪」を訴えながら、1975年6月17日、刑場の露と消えた西武雄さんの魂の叫びです。

 西さんは1947年に起こった「福岡事件」で、強盗殺人事件の主犯として死刑判決を受けました。しかし彼は逮捕されてから一貫して「冤罪」を主張、何度も裁判のやり直しを求めましたが、すべて棄却、その挙句に突然処刑されてしまったのです。

 彼は獄中で、約3000巻の写経と仏画を描き続けました。それは自らの罪を償うためではなく、「誰にも聞いてもらえないこの胸のうちを仏様に訴えるために、描き続けているのだ」と生前語っていました。

 2005年春、西さんの遺族らは、死刑執行後では史上初となる再審請求を福岡高裁に提出しました。それから3年が経ち、関係者が次々にいなくなる中、一刻も早い再審の開始を求めて、私たちは全国でキャンペーンを開催することにしました。今も起こる冤罪事件、その原点ともいえるこの事件の真実を明らかにするために、どうぞ皆様のお力をお貸しください。ご参加をお待ちしております。


キャンペーン日程
5月20日 福岡
  22日~25日 岡山
  30日~31日 静岡
6月1日~6日 京都・神戸
  10日~12日 横浜
  13日~14日 東京
  17日~23日 福岡
  23日 署名提出


主催:生命山シュバイツァー寺・福岡事件再審運動を支援する学生の会・福岡事件再審請求活動を支える会」







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2008/06/13 [Fri] 06:09:01 » E d i t
世界保健機構(WHO)の移植担当理事ルーク・ノエル氏と国際移植学会会長のジェレミー・チャップマン氏は6月10日、衆院厚生労働委員会の小委員会で参考人として、「臓器移植法改正推進議員連盟」(河村建夫会長)の勉強会で話すため、来日しました。このお二人は、「臓器移植法改正推進議員連盟」の招きに応じたものです。



1.まず、日経新聞と東京新聞の記事を紹介しておきます。

(1) 日経新聞平成20年6月11日付朝刊38面

海外渡航移植は「臓器売買助長」 WHO理事が指摘

 臓器移植法の改正をめぐり、世界保健機構(WHO)の移植担当理事、ルーク・ノエル氏が10日、国会内で講演し、日本の移植医療の問題点などを指摘した。15歳以下の脳死移植を可能にすることなどを柱に同法の改正を目指す「臓器移植法改正推進議員連盟」(河村建夫会長)の招きに応じた。

 ノエル氏は自国内でのドナー確保の重要性を強調し、日本の国内での臓器提供数が先進諸国の水準から大きく立ち遅れている現状を指摘。自国外で移植手術を受ける「渡航移植」に触れ、「海外に渡って臓器移植手術を受けることは発展途上国での臓器売買を助長する」と述べた。」



(2) 東京新聞平成20年6月11日付朝刊24面「こちら特報部」

SOS臓器移植:WHO理事ら国会議員に警鐘  「自給自足 世界の流れ」

 衆議院で臓器移植法の改正案が審議される中で、世界保健機構(WHO)の移植担当理事ルーク・ノエル氏と国際移植学会会長のジェレミー・チャップマン氏が10日、衆院小委員会や超党派議連の勉強会で世界の現状を話した。ノエル氏は日本の臓器移植数が世界の中でかなり少ないことを指摘した上で、「各国は臓器を自給自足すべきであり、その流れになってきている。日本は(自国での臓器提供を)もっと考えるべきだ」と警鐘を鳴らした。 (片山夏子)

■国民の意識共有必要

 国際移植学会などは今年5月、臓器の商取引などに反対する「イスタンブール宣言」をまとめた。同宣言は「死体ドナー(臓器提供者)を増やし、自国での臓器移植を増やすべきだ」ともうたっている。WHOも1991年に発表した臓器移植のガイドライン以来、同様の方針を貫いており、その背景をノエル氏は、こう説明する。

 「91年以降、世界50ヶ国が臓器売買を禁止する法を制定したが、売買はなくならず、移植のために国境を越える移植ツーリズムも問題になっている。貧困者や社会的弱者が犠牲になっている。これをやめるためには、移植を国内で自給自足するしかない」

 残念ながら日本は、“優等生”とはいいがたい。

 2002年の人口100万人当たりの臓器提供者数(死体・生体臓器の合計)==を見ると、スペインが33.7人、米国が21.5人。欧州諸国の平均は16.6人であるのに対して日本では0.5人にすぎない。

 「人口100万人当たり80人になれば、自給自足できると推定されている。スペインは国を挙げて取り組み、ここ10年、死体からの臓器提供を増やし続けている」とノエル氏。

 日本は脳死下や死体からの提供が増えない上、現行法では15歳未満は臓器提供できず、子どもの心臓移植などは海外に頼るしかないのが現状だ。

 しかし、オーストラリアの腎臓内科医であるチャップマン氏は「以前は日本の子どもの移植も受け入れていたが、今はまず自国民を優先しており、受け入れができないのが実情」と説明。ノエル氏も「米独などは全移植の5%の外国人枠があるが、長期的に(一方的な)受け入れが続くかは難しい」とした。

 では、自給率をあげるためには、どうすればいいのか。

 臓器移植法改正の審議では、脳死下での、特に子どもの臓器提供の条件を緩めるか否かが議論の焦点となっている。勉強会に参加した議員からも、親が子どもの臓器提供を決めていいか、植物状態の長期生存者など(脳死が)疑わしい場合はどうするのか、などの質問が相次いだ。

 ノエル氏は「小児の脳死はこの30年の間に各国で判定基準が作られ、明確になっている。明らかなものだけを対象にしていくことを考えないと前に進まない」と現実的な対応を強調した。

 チャップマン氏によると、本人の提供意思が不明な場合は、近親者の同意で提供が可能な国が増えているという。「それだけでも提供の数は変わる。どう透明性を確保するか。国民への情報提供をどのように行い、教育や意識を共有するか。政治的に指針を明確にし、国全体と地域ごとの組織やシステムをつくることが重要だ」と同氏は話す。」

 (*「世界の臓器提供数」(2002年)についての図表は省略しました。) 





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2008/06/12 [Thu] 17:00:36 » E d i t
秋葉原無差別殺傷事件(秋葉原通り魔事件)では、派遣労働の劣悪な労働環境に焦点が向けられています。この事件の容疑者である加藤智大氏は、勤め先で派遣社員という立場ですから、収入や身分保障が不安定であり、ワーキングプア状態から脱出できない問題がクローズアップされているばかりか、男は「生活に疲れ、世の中が嫌になった」と供述しています。

ですから、犯罪の背景としては、派遣労働などによる格差や貧困の広がりが影響しているのではないかという見方が出てくるのは、当然の方向でした。本人が悪名高い派遣会社「日研総業」に登録し、労働環境に問題のあるトヨタの自動車部品工場で働いていたことを踏まえると、あの日経新聞でも、「正規と非正規に雇用形態が分かれる職場環境やワーキングプア(働く貧困層)の問題など、社会の変化への不適合が最近の犯罪の背景にある」(日経新聞6月9日付夕刊)のではないか、との指摘をいち早く行っていました。

こうした問題意識については、舛添厚労相もいち早く指摘しています。

「派遣制度転換の時期」「ネット予告把握、議論を」閣僚ら
2008年6月10日12時27分

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件をめぐり、10日午前の閣議後の記者会見などで閣僚からは発言が相次いだ。 (中略)

 舛添厚生労働相は派遣労働制度について触れ、「大きく政策を転換しないといけない時期にきている。働き方の柔軟性があっていいという意見もあるが、なんでも競争社会でやるのがいいのかどうか。安心して希望を持って働ける社会にかじを切る必要がある」と語った。」


しかし、このような派遣労働の実態に問題があるのでないかという指摘については、ネット上では多く指摘されていたのですが、新聞(東京・中日新聞を除く)やテレビ報道ではほとんど触れることがなく、ジャーナリストの江川詔子さんのように「別問題」とまで述べて否定する態度を取る者までいるのです。



1.このように多くの報道機関とネットでの問題意識とが乖離した、奇妙な状況であったのですが、派遣労働者を人扱いしてこなかった日本政府や企業側は、この事件の背景としては派遣労働の状況に問題があったことを直視して、慌てて対策を採ろうとしています。

(1) 朝日新聞平成20年6月12日付朝刊39面

派遣労働規制 あり方議論へ 関係閣僚会議

 事件を受け、政府は11日、関係閣僚会議を開いて再発防止策の検討を始めた。ナイフの所持規制強化に加え、派遣労働の規制のあり方も議論していくことを確認。「小泉改革」の目玉だった労働市場の規制緩和策の見直しに発展する可能性も出てきた。

 町村官房長官は11日の記者会見で「派遣社員の身分の不安定さが本人の精神的不安定を呼んだとの解説もあり、派遣労働者への規制のあり方は今のままでいいのか考える必要がある。できるだけ常用雇用を増やしていく方向で見直すこともある」と述べた。

 このほか、ナイフ販売時の身元確認の徹底▽ネット上の犯行予告を発見した場合の通報を電気通信業界に要請――などを検討する。」



(2) 中日新聞2008年6月11日【静岡】

東京・秋葉原の無差別殺傷事件 派遣社員抱える県内企業にも衝撃
2008年6月11日

 東京・秋葉原の無差別殺傷事件は、県内の大手企業にも衝撃を与えている。派遣社員を生産現場の「支え」としているケースが多いだけに、容疑者が「県内の工場で働いていた派遣社員」であり、労働環境に不満を募らせていたという点が重くのしかかる。「万一、悲劇が繰り返されれば、企業イメージも傷つきかねない」と人事担当者ら。企業側は、派遣社員の心のケアや派遣元との連携強化などに乗り出す方針だ。

 「大きなショックを受けた。ひとごとではない」

 生産現場の従業員約8000人のうち、15%(約1200人)を派遣社員が占めるスズキ(浜松市)の担当者は、沈痛な面持ちだった。

 湖西工場(湖西市)のように、一カ所で400人以上の派遣社員が活躍する現場もあるだけに「派遣会社との連絡体制を密にして、問題を未然に防ぐための対応策を練りたい」と話す。

 犯行の動機など、容疑者の心の闇の解明はまだで、具体的な対策を打ち出しにくい状況にあるものの「二度と同じようなことを起こしてはならない。できる限り対応したい」と決意を語った。

 ヤマハ発動機(磐田市)も同様に危機感を抱いていた。事件の発生直後だけに、「新たに始めた取り組みは現段階ではない」としながらも、同社が既に持っている派遣社員向けの“心のケア”のシステムを、いっそう活用していく方針を示した。

 例えば、社員OBらが務めている「労務管理担当者」。各工場に配置され、派遣社員の悩みや不安の相談に乗っている。生産現場の監督職を務めた経験から仕事の不安などについて的確にアドバイスできる。

 社内の相談窓口「セクハラ・パワハラホットライン」も、派遣社員が利用できる態勢になっているという。」


やっというべきか、派遣労働に対する改善を図ろうとする機運になっているようです。もっとも、人事担当者は、「万一、悲劇が繰り返されれば、企業イメージも傷つきかねない」と心配しているのですから、あくまで企業の利益のためであって、派遣労働者を非人間的に搾取し続けてきたことへの反省ではないことは、よく覚えておくべきです。

では、この秋葉原無差別殺傷事件容疑者の勤務先の労働状況は、どうだったのでしょうか。東京新聞「こちら特報部」では、秋葉原無差別殺傷事件の容疑者の勤務先ルポを記事にしていましたので、紹介したいと思います。

6月12日追記「晴天とら日和」さんのエントリーが詳しいので、紹介しました。)
6月13日追記:関東自動車では、派遣社員の削減方針を示したことで、職場が混乱したとの報道を追記しました。)
6月14日追記:厚労省の通達、派遣ユニオンの発言を追記しました。)



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2008/06/11 [Wed] 06:37:01 » E d i t
原発で被曝し、3年前、悪性リンパ腫で亡くなった喜友名正さん=当時(53)=の労災認定に関する厚生労働省検討会が6月12日の第3回で山場を迎えるとのことです。

ところで、原発での作業時の被ばくが原因で、がんの一種の「多発性骨髄腫」になったとして、元建設会社社員の故長尾光明さんが東京電力に約4400万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(松井英隆裁判長)は5月23日、請求を棄却しました(「東電原発被ばく訴訟(長尾原発労災訴訟):元作業員の賠償請求棄却~因果関係ばかりか、病名までも否定。行政と異なる判断に(東京新聞5月24日付「こちら特報部」より)」(2008/05/24 [Sat] 22:54:02)参照)。この驚きの判決があったことから、この判決の悪影響により、喜友名正さんの労災認定に関して、厚労省は労災認定を否定するのではないかとの懸念が広がっています。

そこで、東京新聞は、喜友名正さんと長尾光明さん2人の労災を認めるべきだとする意見書を書いた、阪南中央病院=大阪府松原市=の村田三郎医師(60)へのインタビューを行い、記事にしています。その記事を紹介したいと思います。



1.東京新聞平成20年6月10日付朝刊24面「こちら特報部」

悪性リンパ腫 原発労災山場  被曝線量 基準の3倍

 原発労働者では初めて、多発性骨髄腫で労災認定を受けた故・長尾光明さん=死亡時(82)=の損害賠償請求を退け、多発性骨髄腫であることも否定した先月23日の東京地裁(松井英隆裁判長)判決。「今後の原発労災認定に悪影響が出る」との懸念が広がっている中、全国の原発で被曝(ひばく)し、3年前、悪性リンパ腫で亡くなった喜友名(きゆな)正さん=当時(53)、沖縄県うるま市=の労災認定に関する厚生労働省検討会が12日の第3回で山場を迎える。2人の労災を認めるべきだとする意見書を書いた、阪南中央病院=大阪府松原市=の村田三郎医師(60)に聞いた。 (片山夏子)

◆村田医師「疑わしきは被害者利益に」

 原発労働者の労災認定は白血病だけだったが、2004年1月、白血病と同じく血液の悪性疾患である多発性骨髄腫として、長尾さんが労災認定された。村田医師は「同じ系列の病気(類縁疾患)である悪性リンパ腫などにも(労災認定の)道が開ける可能性がある」と、期待したが、東京地裁は因果関係はおろか病名も否定した。

 「これまでは、厚労省が否定したものを裁判所が認定してきたのがほとんど」と振り返る村田医師。逆パターンの東京地裁判決について「原発労働者の労災申請に非常に厳しく対応してきた厚労省の検討会が、内外の文献を調査・検討して業務上疾患と判断したのに、それを、判決が否定した。大きな憤りを感じる。裁判官の労働者保護の精神・労働安全衛生法の基本的な考え方に疑問を持つ」。さらに「患者に苦痛を伴う検査結果が足りないなど、過去の検査結果の不十分な点をあげつらい、主治医の診断を否定した。一人の人間の病気の時系列変化を切り刻み、別々の病名で説明しようとする判決は、臨床現場や患者の病状・痛みを理解していない」。

 判決は検討会が検討した国内外の疫学調査を否定。英米仏で多発性骨髄腫が補償対象疾患であることにも「因果関係が肯定されていることの根拠にならない」と取り合わなかった。

 村田医師は「判決は疫学研究の中の都合のいいものだけを評価している。多発性骨髄腫は観察数が少ないというが(それでは)症例の少ない病気は疫学研究ができなくなる」と批判。多発性骨髄腫は白血病の類縁疾患だと分かってきていることを指摘し、国内外の文献でも放射線業務との関連が指摘されてきた。これ以上の必要条件はあるのか」。白血病認定基準に準ずるべきだと主張する。

 喜友名さんの被曝線量は、6年4ヶ月で約99.8ミリシーベルトで、長尾さん(4年3ヶ月で70ミリシーベルト)より多量。白血病の労災認定基準の3倍以上の被曝線量に当たる。

 「何も情報を与えられていない労働者が、業務上疾患だと立証するのは至難の業。悪性リンパ腫は、多発性骨髄腫より、さらに白血病類縁疾患であることが明確。白血病認定基準を適用すべきだ。疑わしきは被害者の利益にというのが労災判断の基本ではないか」と、村田医師。「『一人の被害者も泣き寝入りさせない』という原子力損害賠償法制定の精神を踏みにじった判決に準じることなく、労働安全衛生法の精神や労働者保護の観点から、喜友名さんの労災認定をすべきだ」」




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2008/06/09 [Mon] 23:11:16 » E d i t
東京都千代田区外神田の秋葉原電気街の交差点で6月8日午後0時30分すぎ、男が通行人をトラックではねた後、ナイフで刺す無差別殺傷事件がおき、男性6人と女性1人が殺害されました。死者7人のうち2、3人には刺された傷がないため、はねられ死亡したとみられ、刺された人の多くは傷が1ヶ所だけで、ナイフで一突きされたようです(朝日新聞6月9日付夕刊1面)。ほかに10人が怪我を負い、その10人のうち男性5人と女性2人が重傷です。
6月10日追記:マスコミ報道の比較と、日研総業の実態について追記しました。6月11日追記:「関東自動車工業」の工場の関係者からの情報を追記しました。)



1.まず、報道記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成20年6月9日付夕刊1面

秋葉原通り魔 7人死亡 トラックで突入、刺す
2008年6月9日 夕刊

 東京都千代田区外神田四の秋葉原電気街で八日午後零時三十分ごろ、トラックが歩行者天国の路上に突っ込んで人をはね、車から降りてきた男が両刃のダガーナイフで通行人や警視庁の警察官を次々に刺した。男女七人が死亡、十人が重軽傷を負った。男は約五分後に同庁万世橋署員らに取り押さえられ、殺人未遂の現行犯で逮捕された。 

 捕まったのは、静岡県裾野市富沢、派遣社員加藤智大(ともひろ)容疑者(25)。調べに対し「人を殺すために今日、静岡から秋葉原に来た。誰でもよかった」「生活に疲れ、世の中が嫌になった」「秋葉原には何度か来たことがあり、人がたくさんいるので選んだ」と供述。さらに携帯電話サイトの掲示板に犯行を予告する書き込みをしたことを認めているという。同庁捜査一課は同署に捜査本部を設置し、殺人容疑に切り替えて詳しい動機を調べている。

 警察庁によると、通り魔事件としては過去十年で最悪の被害とみられる。

 死亡した七人は十九-七十四歳の男性六人と二十一歳の女性。男性八人と女性二人が重軽傷を負った。このうち同署交通課の警部補(53)は、トラックにはねられた人を救助していて刺され重傷を負った。

 調べでは、加藤容疑者は二トントラックで神田明神通りを東に走行。歩行者天国の中央通りとの交差点で三人をはねた。約五十メートル先で降車後、中央通りに戻り、ダガーナイフで周囲の通行人らに次々に切りつけた。

 事件発生から約五分後、近くの交番の警察官が加藤容疑者を路地に追い詰め、拳銃を向けて「凶器を捨てろ」と警告。ナイフを捨てたところを取り押さえた。ナイフは刃渡り約十三センチで、加藤容疑者は上着の内ポケットに別の折り畳みナイフを所持していた。

 トラックは八日朝、静岡県沼津市のレンタカー会社の営業所で「引っ越しに使う」と言って借り、裾野-横浜青葉インターまで東名高速を使い、国道246号で秋葉原に来たという。調べに「犯行は二、三日前に決めた」と供述しているという。」



(2) 読売新聞平成20年6月9日付夕刊1面

逮捕の25歳派遣社員「人を殺すために秋葉原に…」

 8日午後、歩行者天国でにぎわう東京・秋葉原の交差点で、男が通行人をトラックではねた後、サバイバルナイフで次々と切りつける通り魔事件があり、警視庁は、静岡県裾野市富沢、派遣社員加藤智大(ともひろ)容疑者(25)を殺人未遂の現行犯で逮捕した。

 被害者は死者7人、重軽傷者10人にのぼった。加藤容疑者は犯行の約7時間前から携帯電話のサイトで「秋葉原で人を殺します」と犯行を予告。調べに対し「人を殺すために秋葉原に来た。誰でもよかった」などと供述している。同庁捜査1課では特捜本部を設置し、容疑を殺人に切り替えて動機の解明などを進めている。

 同庁幹部によると、加藤容疑者は午後0時35分ごろ、トラックをジグザグ運転しながら、猛スピードで千代田区外神田1の交差点に進入。通行人3人をはねた後、交差点から数十メートル離れた道路脇に止まった。運転席から降りると、サバイバルナイフ(刃渡り約13センチ)を取り出し、交差点付近まで戻って、はねられて倒れていた人たちや通行人らに襲いかかったが、約5分後、交差点から約50メートル離れた路地で、駆け付けた万世橋署員らに取り押さえられた。

 加藤容疑者は「犯行は2~3日前に決意した。秋葉原は人がたくさんいることがわかっていた」「世の中が嫌になった。生活に疲れた」と供述しているという。

 加藤容疑者は昨年11月から派遣会社の日研総業(東京都大田区)に派遣社員として登録、静岡県裾野市にあるトヨタグループの自動車メーカー工場で働いていたが、事件3日前の今月5日から無断欠勤していた。

          ◇

 亡くなった方は次の通り。

 東京都板橋区、無職小岩和弘さん(47)▽杉並区、無職中村勝彦さん(74)▽北区、東京芸大4年武藤舞さん(21)▽埼玉県熊谷市、東京電機大2年藤野和倫(かずのり)さん(19)▽同県蕨市、会社員宮本直樹さん(31)▽千葉県流山市、東京情報大2年川口隆裕さん(19)▽神奈川県厚木市、調理師松井満さん(33)

(2008年6月9日11時41分 読売新聞)」



(3) 日経新聞平成20年6月9日付夕刊18面

疎外感が生む「確定的殺意」

 何の落ち度もない人たちに無差別に危害を加える事件は、これまでも繰り返し引き起こされている。秋葉原の無差別殺傷事件も、たとえば1980年から翌年にかけて東京で相次いだ「深川通り魔事件」や「新宿バス放火事件」などと構図自体は似ている。

 しかし、80年代の両事件が判決で薬物などの影響を指摘されているのと異なり、最近の事件では犯人が社会に対する身勝手な不満や恨みを募らせ、「確定的な殺意」に基づいて犯行に及んでいるケースが目立つ。

 さらに不気味なのは、極めて限られた人々の間であるとはいえ、こうした犯罪者を「すごいことをやった人物」として扱い、共感を寄せる雰囲気が存在する点だ。インターネットや携帯電話の普及で、犯人は犯行予告を書き込み、一般の人がそれを「論評する」という異常な現象が普通になりつつある。

 こうした傾向は、2001年に大阪教育大付属池田小学校で起きた連続児童殺傷事件のころから強まっている。04年、奈良で女児を誘拐・殺害した男が、東京・埼玉の連続幼女殺害事件(88―89年)と大阪の事件の犯人の名を挙げ「第二の宮崎勤、宅間守として世間に名が残ればいい」と供述したことが典型といえる。

 「誰でもよかった」。今回の事件で容疑者が供述しているというこの言葉は、今年3月に茨城県土浦市のJR荒川沖駅前で8人が殺傷された事件や、1999年の東京・池袋の通り魔殺傷事件でも逮捕された男が口にしている。

 確定的な殺意を抱いて犯行を計画し、不特定多数の集まる場所で無差別に凶器を振るうような犯罪は防げない。司法の分野では厳罰化で対処しようとする流れがあるが、「死刑になりたかった」という動機による犯罪が目立ちつつある現状をみると、むしろ逆効果にしかならないというむなしさを感じる。

 今回の事件の容疑者は派遣会社に登録し、自動車部品工場で働いていた。事件との関係は不明だが、正規と非正規に雇用形態が分かれる職場環境やワーキングプア(働く貧困層)の問題など、社会の変化への不適合が最近の犯罪の背景にあるとの指摘は少なくない。

 家庭、地域、職場とあらゆる場所で人間関係が希薄化している。「自分だけが理不尽な扱いを受けている」という疎外感を抱きやすい状況になっているという現実を、社会全体で受け止めなくてはならない。 (編集委員・坂口祐一)」




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2008/06/08 [Sun] 23:59:15 » E d i t
無期懲役の判決を受けて刑務所に服役している受刑者(無期懲役囚)の仮釈放者の平均入所期間は初めて30年を超えたとのことです。このように、仮釈放までの服役期間が長期化し、無期懲役が事実上の「終身刑」となっていることが明らかになりました。



1.報道記事を幾つか。

(1) YOMIURI ONLINE(2008年6月1日03時04分)

無期懲役囚が戦後最多、厳罰求める世論で仮釈放減少

 無期懲役の判決を受けて刑務所に服役している受刑者(無期懲役囚)が、昨年末時点で1670人に達し、戦後最多となったことが法務省のまとめ(速報値)でわかった。

 昨年は89人の無期懲役囚が新たに入所したのに対し、仮釈放は3人にとどまり、仮釈放者の平均入所期間は初めて30年を超えた。

 凶悪犯罪に対して厳罰を求める世論や仮釈放者の再犯に対する社会不安が背景にあるとみられ、仮釈放を認めない終身刑の新設を巡る議論にも影響を与えそうだ。

 米国など一部の国が設けている終身刑は、仮釈放を認めていないが、日本の無期懲役は、10年以上の服役で仮釈放が可能となる。

 法務省矯正局によると、昨年末に全国の刑務所で服役していた無期懲役囚は1670人で、1998年末の968人に比べ、72%増えた。戦後の混乱期に治安が悪化した影響で1279人(1961年)まで増えた後、713人(84年)まで減少していただけに、最近の急増ぶりが際立っている。

 新たに入所した無期懲役囚の数も、90年代には年間20~40人台で推移していたが、2003年に初めて100人を超え、昨年は89人に上った。これに対し、仮釈放された無期懲役囚は98年に18人だったが、その後の平均は年間9・5人で、昨年は3人にまで落ち込んだ。

 仮釈放者の平均入所期間も20年10か月だった98年以降、長期化する傾向が続き、昨年は31年10か月だった。無期懲役囚の今年4月時点での入所期間を見ると、40年以上が24人に上り、55年以上の受刑者も1人いた。

 刑務所は受刑者の受刑態度などを考慮して地方更生保護委員会に仮釈放を申請し、同委員会が悔悟の情や更生の意欲などを検討して仮釈放の可否を決定する。

 同省の調査では、06年に仮釈放中に事件を起こした元受刑者(有期刑、無期刑含む)は、殺人が4人、強盗が13人、傷害が25人に上った。法務省幹部は「厳罰化や再犯抑止を求める世論を背景に、仮釈放が認められにくくなり、事実上の終身刑化が進んでいる」と説明している。

(2008年6月1日03時04分 読売新聞)」



(2) 西日本新聞2008/06/08付朝刊

服役25年超 10年で3倍 仮釈放減り長期化 「無期刑」進む「終身刑」化
2008年6月8日 11:01

 無期懲役受刑者のうち服役25年以上の受刑者が今年4月現在で192人に達し、10年前の3倍近くに増えていることが、法務省や日本弁護士連合会(日弁連)の資料で分かった。このうち24人が40年以上服役し、55年以上も1人いた。高齢化も目立ち服役中の死亡例も少なくない。厳罰化を求める世論を背景に、仮釈放までの服役期間が長期化し、無期懲役が事実上の「終身刑」となりつつあり、裁判員制度導入を来年5月に控え、量刑制度をめぐり議論を呼びそうだ。

■厳罰求める世論背景

 法務省や日弁連によると、服役25年以上の無期刑受刑者は、1999年4月時点では67人。服役40年以上は11人だった。年齢構成は50歳代25人、60歳代33人、70歳代9人。これに対し、今年4月現在の受刑者192人は、40歳代7人、50歳代53人、60歳代85人、70歳代37人。80歳代も10人おり、高齢化がうかがえる。2007年は13人が受刑中に死亡した。

 仮釈放は服役10年過ぎれば可能だが、本人は申請できない。刑務所側の申請で地方更生保護委員会が悔悟の情や更生意欲などを検討して可否を決めるが、今年4月現在の受刑者のうち155人は一度も申請されていない。残り37人は延べ50回申請されたが認められていない。

 仮釈放減少の理由について、法務省は「個別審査の結果なので一概には言えない」とした上で(1)厳罰化を求める社会感情から、早期の仮釈放が困難な重大事案が多い(2)再犯の恐れなど、より慎重に審査している(3)服役が長期化するにつれて親族などが亡くなり、身元引受人の確保が難しい‐などと説明している。

 裁判員裁判の対象となり無期懲役が刑罰として定められている殺人、強盗致死など重大事案の検挙人数は1989年以降ほぼ横ばいだが、無期懲役判決は近年急増。受刑者数も89年末の864人から昨年末には1670人にまで増えた。一方、70年代に年60人程度認められていた仮釈放は減少し、近年は年間1けた台も目立つ。平均服役期間も90年代前半は20年未満だったが、ここ数年は25‐30年に延びている。 (東京報道部・相本康一)

=2008/06/08付 西日本新聞朝刊=」




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2008/06/07 [Sat] 05:36:09 » E d i t
結婚していない日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた子供計10人が日本国籍を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎長官)は6月4日、「家族生活や親子関係への国民意識は変化しており、今日では不合理な差別に当たる」として、両親の結婚を国籍取得の要件とした国籍法の規定を違憲とする初判断を示しました。(時事通信2008/06/04-20:43「国籍法「結婚要件」は違憲=「家族生活の意識変化」-最高裁大法廷」)。その上で原告敗訴の2審判決を破棄、原告に日本国籍があることを認め逆転勝訴としました。

最高裁が法律の規定を違憲としたのは、在外邦人の選挙権を制限した公選法の規定をめぐる2005年の判決以来で、8例目ですが、婚外子差別に絡む最高裁の違憲判断は初めてです。


1.まず、報道記事を幾つか(解説部分を除く)。

(1) 朝日新聞平成20年6月5日付朝刊1面

国籍法 結婚要件は違憲 最高裁判決
2008年06月04日20時57分

 結婚していない日本人の父とフィリピン人の母から生まれた子ども10人(8~14歳)が、日本国籍の確認を国に求めた訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎(にろう)長官)は4日、10人全員に日本国籍を認めた。生まれた後に父から認知されても、両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない現在の国籍法は、憲法14条の「法の下の平等」に反すると判断した。

◆フィリピン人母の子に日本国籍 家族観の変化指摘

 結婚しているかによる区別が違憲とされたのは初めて。同じ国籍問題を抱える子どもについて正確な統計はないが、国内だけで数万人という推計があり、海外にも相当数いるとみられる。法務省は国籍法の改正を迫られる。

 また、最高裁が法律を違憲と判断した判決は、05年に海外に住む日本人に選挙権を認めない公職選挙法を違憲として以来で、戦後8件目。

 国籍法の2条1号によれば、父母が結婚していない「婚外子」でも、生まれる前の段階で父の認知があれば、国籍を取得できる。しかし、国籍法3条1項は、生まれた後に認知された場合に父母が結婚していなければ国籍を得られないと定めており、この規定の合憲性が争点となった。

 違憲と判断したのは15人の裁判官のうち12人。このうち9人が多数意見で、「84年の立法当時は結婚によって日本との結びつきを区別することに理由があったが、その後に国内的、国際的な社会環境の変化があった」と指摘。その例として、家族生活や親子関係の意識の変化や実態の多様化、認知だけで国籍を認める諸外国の法改正を挙げた。

 遅くとも、原告たちが国籍取得を法務局に届け出た03~05年には、結婚を要件に国籍を区別するのは不合理な差別になっていたと認定。3条1項のうち結婚の要件だけを無効にして、その他の要件を満たせば国籍を認めると結論づけた。

 一方、同じ違憲でも3人の裁判官は理由が異なり、本来は国会が立法により解決するべきだったのに怠った「立法の不作為」を違憲とする立場を採った。この3人のうち1人は「現行法の拡張解釈により違憲状態を解消できる」として子どもに国籍を認めたが、他の2人は「違憲状態を是正するには、国会の立法によるべきだ」として、子どもたちの国籍を認めなかった。

 このほか、3人の裁判官は「婚外子は両親の結婚と父親の認知により、日本との密接な結びつきをもつ」という法務省の見解を認め、「合憲」とする反対意見を述べた。

 結局、子どもに国籍を認めたのは10人の裁判官。5人は国籍を認めなかった。この判決により、原告の10人の子どもたちは、国籍取得を法務局に届け出た03~05年の時点で日本国籍を得たことになる。(岩田清隆)」(*見出しは、すべて紙面(13版)のものに変更しました。)




(2) 東京新聞平成20年6月5日付朝刊1面

婚外子差別 国籍法は違憲 最高裁 逆転判決 結婚要件の規定、不合理
2008年6月5日 朝刊

 結婚していない日本人の父とフィリピン人の母から生まれ、出生後に父に認知された子どもたちが、国に日本国籍の確認を求めた二件の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎長官)は四日、「両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法の規定は不合理な差別で、法の下の平等を定めた憲法一四条に違反する」との判断を示し、二審判決を破棄、原告全員に日本国籍を認めた。 

 国籍法の規定を違憲とした最高裁判決は初めて。最高裁が法令を違憲と判断した判決は、二〇〇五年九月の在外選挙権をめぐり公職選挙法を違憲として以来で戦後八件目。

 結婚していない日本人の父と外国人の母から生まれた子(婚外子)が日本国籍を取得するには、出生後認知の場合、父母の結婚が要件とされる。裁判では国籍法のこの要件が違憲かどうかが争点となったが、大法廷は違憲無効と判断した。国会は法改正への早急な対応を迫られる。

 最高裁の判事十五人のうち九人の多数意見。三人は立法不作為による違憲と判断したが、うち二人は国籍取得を認めなかった。合憲は三人だった。

 多数意見は、両親の結婚要件は一九八四年の法改正当時は合理的だったとしたが、家族観や家族形態が多様化したことを踏まえ▽婚外子差別を禁じる条約を日本が批准▽諸外国は同様の要件を廃止-など社会的変化を指摘。原告らが国籍取得届を出した〇三年には、要件の合理性は失われていたと判断した。

 さらに「国籍取得は基本的人権の保障に重大な意味があり、子の不利益は見過ごせない」と言及。「日本人の父の婚外子にだけ国籍を認めないのは不合理な差別で違憲」と結論付けた。

 上告していたのは、日本人の父とフィリピン人の母から生まれ、出生後に認知された八-十四歳の子ども十人。一審の東京地裁はいずれも「国籍法の規定は違憲」として日本国籍を認め、原告側が勝訴。しかし二審の東京高裁は憲法判断をせず、「国籍を認める規定は国籍法にはない」としていずれも原告側の逆転敗訴とした。

 <婚外子の国籍> 1984年の国籍法改正前は、結婚していない日本人の父と外国人の母の子は、胎児の時に父が認知していなければ日本国籍の取得が認められなかった。改正後、出生後に認知された子でも、両親が結婚すれば日本国籍を認める(3条1項)との新たな規定ができた。しかし生後認知されても両親が結婚していない子は日本国籍が取得できず、取り残されていた。」




(3) 毎日新聞平成20年6月5日付朝刊1面

婚外子国籍確認訴訟:婚姻条件の国籍法違憲 日比間の子10人を認定--最高裁初判断

 結婚していない日本人父とフィリピン人母10組の間に生まれた子ども10人が、国に日本国籍の確認を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎(にろう)長官)は4日、出生後の国籍取得に両親の婚姻を必要とする国籍法の規定を違憲と初判断した。大法廷は「遅くとも国籍取得を届け出た03年には、規定は合理的理由のない差別を生じさせ、法の下の平等を定めた憲法に反する」と述べ、10人全員の日本国籍を確認した。

 最高裁が法の規定を違憲としたのは在外邦人の選挙権を制限した公職選挙法を巡る訴訟の判決(05年9月)以来で8件目。国会は早急な法改正を迫られる。

 国籍法3条1項は、未婚の日本人父と外国人母の子について、父の出生後認知と両親の婚姻の両方を日本国籍取得の条件とする。原告は関東地方などに住む8~14歳で、父の認知を得て03~05年に国籍取得を届け出たが、認められなかった。

 大法廷は、同項が設けられた84年当時は規定に合理性があったが、その後の家族生活や親子関係の意識変化、多様化で、立法目的にそぐわなくなっていると指摘。「国籍取得は基本的人権の保障を受ける上で重大な意味を持ち、不利益は見過ごせない」と述べた。

 国側は「出生後認知のみで国籍を取得できるとするのは、裁判所が新たな制度を設けることになり、立法権の侵害だ」と主張。大法廷は「原告の救済の観点から、婚姻要件を除いた部分を満たせば国籍取得を認めるというのが合憲的解釈」と退けた。

 裁判官15人中12人が違憲と判断し、このうち9人が多数意見。藤田宙靖(ときやす)、甲斐中辰夫、堀籠幸男の3裁判官は、原告の国籍取得を認める規定がない立法不作為を違憲とした。藤田裁判官は日本国籍を認めたが、甲斐中、堀籠両裁判官は「違憲状態の解消は国会に委ねるべきだ」と反対意見を述べた。

 横尾和子、津野修、古田佑紀の3裁判官は「家族の生活状況に顕著な変化があるとは思われず、規定には合理性があり合憲」と述べた。【北村和巳】

 ◇原告側代理人の話

 不合理な差別を正面から違憲と認め、高く評価できる。同じ境遇にある多くの子どもたちに希望を与える。

 ◇鳩山邦夫法相の話

 国籍法の規定が憲法違反とされたことは、厳粛に受け止めている。判決内容を十分に検討して適切に対応したい。

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 ■ことば

 ◇日本国籍の取得

 国籍法2条は出生時に法律上の父か母が日本人なら子は日本国籍を取得すると定める。母が日本人ならば無条件に子は日本国籍。日本人父と外国人母の子の場合は、出生時に両親が結婚しているか、未婚でも妊娠中に父が認知していれば日本国籍を取得する。一方、出生後認知された婚外子は、20歳までに両親が結婚した場合に限って日本国籍を取得できる。

毎日新聞 2008年6月5日 東京朝刊」




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裁判例 *  TB: 4  *  CM: 0  * top △ 
2008/06/04 [Wed] 07:00:11 » E d i t
夫のDVから逃れて離婚が成立できないままの母親と別の男性との間に生まれ、無戸籍状態になっている大阪府在住の女性(24)が6月2日、大阪市内で記者会見し「自分が産んだ子ども2人も無戸籍状態になっている」と訴えて救済を求めました。またしても「無戸籍の連鎖」の存在が明らかになったのです。

先日、前夫のDVなどが原因で離婚した後、「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」と推定する民法772条の規定のため、母親が出生届を提出できず無戸籍となった兵庫県の女性(27)が、出産予定であることについて紹介しました(「離婚後300日問題:離婚後300日規定で無戸籍の女性、出産へ~出生届不受理で無戸籍児の連鎖に」(2008/05/20 [Tue] 23:59:36)「離婚後300日問題:「無戸籍児家族の会」は鳩山法務大臣と面会し、改善を要望」(2008/05/21 [Wed] 22:35:10)参照。この無戸籍となった兵庫県の女性(27)も5月29日、男児を出産しました。)。


1.まず報道記事を幾つか。

(1) 中国新聞('08/6/2)

子ども2人が無戸籍状態 大阪府女性、救済求める '08/6/2

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 家庭内暴力から逃れたが離婚が成立していない母親と別の男性との間に生まれ、無戸籍状態になっている大阪府在住の女性(24)が二日、大阪市内で記者会見し「自分が産んだ子ども二人も無戸籍状態になっている」と訴えて救済を求めた。

 支援団体は「母親に戸籍がないと子の戸籍取得も難しい。実際の親子関係に即した形で認められる仕組みにしないと、無戸籍の連鎖が起きる」と国に制度と運用の改善を求めている。

 女性や団体によると、母親は三十一年前に暴力をふるう夫と別居。七年後に女性が生まれた。夫は現在も離婚を承諾しておらず、居場所を知られるのを恐れて女性の出生届を出さなかった。

 女性は戸籍がなく、三年前に三十代男性と事実婚状態で初出産。女児(2)と男児(1)の四人で暮らす。

 以前住んでいた東大阪市は二人の子の出生届を受理して住民票を作成。女性も二〇〇六年に国民健康保険に加入できたが、三人の戸籍や女性の住民票はない状態が続いているという。

 先月末には離婚後三百日以内に生まれた子を「前夫の子」とみなす民法規定で無戸籍となった兵庫県の女性(27)が男児を出産。法務省が対応を検討している。」



(2)  asahi.com:関西(2008年06月02日)

「連鎖とめて」国に訴え 無戸籍の母、出産2児も無戸籍
2008年06月02日

 母親の夫によるDV(ドメスティックバイオレンス)が原因で出生届が出されず、無戸籍となった大阪府内の女性(24)が、子ども2人を出産し、無戸籍のまま育てている。女性は2日、支援団体と大阪市内で記者会見し、「同じ境遇の人はたくさんいるはず。無戸籍の連鎖を止めるため、国はきちんと実態を調べてほしい」と訴えた。支援団体によると、「無戸籍2世」の存在が明らかになるのは、兵庫県の女性の子に続いて2例目。

 NPO法人「親子法改正研究会」(大阪市)などによると、この女性の母親は約30年前、暴力をふるう夫と別居するため、近畿圏に引っ越してきた。母親は離婚しようと弁護士や家庭裁判所に相談したが、夫は応じなかった。

 別居から7年後、別の男性との間に、この女性が生まれた。住所を夫に知られたくないなどの事情から離婚手続きをとれなかったため、女性は無戸籍のまま育てられた。

 女性は中学3年の夏、母親から戸籍がないことを告げられた。卒業後に保育士の資格を取ろうと思ったが、戸籍が必要と知ってあきらめた。「好きな仕事ができない」。運転免許証も、選挙権もないままだ。

 05年。30代の男性会社員と東大阪市内で暮らし始め、7月に長女(2)、翌06年11月に長男(1)が生まれた。市役所に出生届を提出すると、市は「子どもに医療サービスなどを受けてもらうための異例の判断」(市民課)を示し、長女を世帯主、長男を同居人とする形で住民票を発行した。現在、府内の別の場所に住民票も移して転居し、一家4人で生活している。

 女性は「私の母も誰にも言えずに悩んでいた。戸籍がないと、人として認められないと感じる。戸籍がなくても人権はある。戸籍が取得できたら、正式に結婚したい」と話している。

 法務省民事局の担当者は「女性の事例は正式に把握していない。今後調査して対応を検討する」としている。

 また、「無戸籍2世」が最初に明らかになった兵庫県内の女性(27)は5月29日に県内の病院で男の子を出産した。関係者によると、近く居住地の自治体に出生届を出す予定だという。女性の夫は「家族としてしっかり支えていきたい」とコメントした。(板橋洋佳、宮崎園子、戸田和人) 」



今回の事案を見ると、女性がDVから逃れることは相当に大変であることが分かります。

 「女性や団体によると、母親は三十一年前に暴力をふるう夫と別居。七年後に女性が生まれた。夫は現在も離婚を承諾しておらず居場所を知られるのを恐れて女性の出生届を出さなかった。」(中国新聞)

 「NPO法人「親子法改正研究会」(大阪市)などによると、この女性の母親は約30年前、暴力をふるう夫と別居するため、近畿圏に引っ越してきた。母親は離婚しようと弁護士や家庭裁判所に相談したが、夫は応じなかった
 別居から7年後、別の男性との間に、この女性が生まれた。住所を夫に知られたくないなどの事情から離婚手続きをとれなかったため、女性は無戸籍のまま育てられた。」(asahi.com:関西)


夫からDVを受けたため、31年前に夫と別居をし、別居のままでは離婚しようと弁護士や家庭裁判所に相談したのに夫は応じることなく、31年も別居しているのに、今でも「夫は現在も離婚を承諾し」ないのです。しかも、今でも「居場所を知られるのを恐れ」なくてはならないほどの事情があるのです。

では、夫と離婚できるでしょうか。

この夫は、31年も別居しているのに未だに離婚を承諾しないほど執念を抱いている持ち主ですから、協議離婚(民法763条)も調停離婚・審判離婚(家事審判法18条・21条1項)も不可能です。そうなると、女性の側とすると、裁判離婚(民法770条1項1号~5号)を請求することになります。

配偶者による暴行・虐待は「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に当たるとされているので(最判昭33・2・25家月10巻2号39頁)、この事例では夫によるDVがあったのですから裁判離婚することは理論上は可能です。しかし、31年前のDVの証拠が残っていない場合には「離婚原因」を立証できずに離婚できない可能性もありますし、離婚裁判を切っ掛けとして現住所を発見されてしまう可能性もあるため、再びDVの被害を受ける可能性があります。

1996(平成8)年の民法改正要綱は、5年以上の別居を離婚原因に加えていたため、もしその要綱どおりに民法改正がなされていれば、今回の事例でも裁判離婚は十分に可能でした。しかし、改正されていない以上、どうしようもありません。

仮に、離婚は諦めて、もし子供の出生届を出すとすれば、民法772条1項の推定規定によりDVを行った夫の子供と戸籍に記載され、DV夫に居場所が判明する恐れがあります。ですから、もし判明したら今度は親子共々DVを受ける可能性があるため、出生届を出すことをためらうわけです。

このように、DVを行った夫と離婚することは相当に困難であり、逃げていても、逃げた先で子供を産み育てるという家庭生活を送ることが難しいことが分かります。



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2008/06/02 [Mon] 18:55:27 » E d i t
自分が先に暴行した相手から殴り返され、さらに反撃したことが正当防衛(刑法36条1項)に当たるか、すなわち「自ら招いた正当防衛状況(自招防衛・自招侵害・挑発防衛)」が争われた刑事裁判の上告審決定で、最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は5月20日、自分の不正行為で招いた侵害に対しては、正当防衛は成立しないとする判断を示しました。その上で、傷害罪に問われ、懲役6月執行猶予3年の有罪判決を受けた男(44)の上告を棄却しています。

事案は、被告人は路上で口論となった男性の顔を殴って逃げたが、自転車で追いかけてきた男性に背後から殴り返され転倒してしまい、被告人は直後に起き上がり、持っていた特殊警棒で男性に暴行を加え、約3週間のけがを負わせたというものです(日経新聞平成20年5月22日付夕刊23面)。新聞紙面での事案紹介はこのような扱いですから、新聞での事案からすると最高裁の判断は当然の結論のようにも読めますが、最高裁決定の事案をよく読むとなかなか微妙です。後に詳しく検討します。



1.まず、報道記事を幾つか。

(1) asahi.com(2008年05月22日11時03分)

「自ら招いたけんか、正当防衛には当たらない」最高裁
2008年05月22日11時03分

 自分がきっかけをつくったけんかで傷害罪に問われた被告が、「正当防衛が成立し、無罪だ」と主張した刑事事件の上告審決定で、最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は「自らの不正行為により結果を招いた場合には、正当防衛には当たらない」とする初めての判断を示した。

 裁判員制度が始まったときに市民裁判員が判断に悩まなくてもいいような基準の一つになるとみられる。

 被告は東京都三鷹市の男(44)。05年11月、路上で口論になった相手の男性を殴って走り去った。男性に自転車で追いつかれ、後方から殴られて倒れたが、被告は携帯していた特殊警棒で顔などを殴り返して男性に3週間のけがを負わせた。被告は「相手の攻撃を受けたため、やむをえず殴った」と正当防衛の成立を主張していた。

 決定は20日付。被告は懲役6カ月執行猶予3年の有罪が確定する。」



(2) 毎日新聞 2008年5月22日 東京夕刊

正当防衛:「先に手を出し反撃され攻撃」は認めず 最高裁

 自分が先に暴行した相手から逆に攻撃されたときに、それへの反撃が正当防衛に当たるかどうかが争われた刑事裁判で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は20日付の決定で、相手の攻撃の程度が最初の暴行を大きく超えるような場合でない限り、原則として正当防衛は成立しないとの初判断を示した。その上で、傷害罪に問われ、正当防衛を主張していた派遣社員の男性被告(44)の上告を棄却。懲役6月、執行猶予3年とした2審判決が確定する。

 2審・東京高裁判決によると、被告は05年11月、東京都府中市の路上で50代男性と口論になり拳で顔を殴った。自転車で追いかけて来た男性に後ろから首周辺を腕で強くぶたれたため、特殊警棒で男性の顔などを殴り3週間のけがを負わせた。

 正当防衛が成立するには危険が差し迫っていること(急迫性)が必要。最近の裁判例はこうしたケースでは、相手の攻撃を予期できたかどうかで判断しており、2審は「被告は相手の報復攻撃を十分予期しており、急迫性はない」と正当防衛を否定した。

 これに対し小法廷は「相手の攻撃は被告の暴行に触発された一連の事態であり、被告は自らの不正行為により侵害を招いた」と指摘し、報復攻撃を予期していたかどうかにかかわらず、原則として正当防衛は成立しないと判断した。裁判員制度を控え、客観的行為のみで判断する枠組みを示した形だ。【北村和巳】

毎日新聞 2008年5月22日 12時44分」



(3) スポーツ報知(2008年5月22日12時22分)

暴行し暴行された場合の再反撃を正当防衛と認めず 

 暴行した相手から反撃され、再び暴行に及んだ被告に正当防衛を認めるかどうかが争われた傷害事件の上告審決定で、最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は22日までに、「(反撃は)最初の暴行に触発された」と認定。自らの不正行為が原因の場合、再度反撃すると正当防衛にならないとする初判断を示した。

 正当防衛は「急迫不正の侵害に対し、やむを得ない場合」に成立。自分が先に手を出したケースでの成否は、「急迫性」の有無という主観的な要素を基に争われてきた。

 しかし今回の決定は、自分の行為が原因かどうかという基準のみで判断。「相手の反撃は、最初の暴行の直後に近接した場所でなされた一連、一体の出来事。暴行の程度を大きく超えていない」とし、被告自身の暴行が反撃を招いたと認めた。

 決定は被告の男(44)の上告を棄却。懲役6月、執行猶予3年とした二審東京高裁判決が確定する。20日付。

 決定によると、被告は2005年11月、東京都府中市の歩道で、被害者の男性を不審者と思って声を掛けたことから口論となり、顔を殴り逃走。自転車で約90メートル追い掛けてきた男性に後方から殴り返されたため、特殊警棒で顔面などを殴りけがをさせた。

 被告は「反撃は危険な不意打ち。正当防衛で無罪」と訴えたが、一、二審はいずれも退けた。

(2008年5月22日12時22分 スポーツ報知)」



事案や本決定については、後で決定文で直接検討しますが、その前に記事内容で気になった点があります。

「裁判員制度が始まったときに市民裁判員が判断に悩まなくてもいいような基準の一つになるとみられる。」(朝日新聞)

「小法廷は「相手の攻撃は被告の暴行に触発された一連の事態であり、被告は自らの不正行為により侵害を招いた」と指摘し、報復攻撃を予期していたかどうかにかかわらず、原則として正当防衛は成立しないと判断した。裁判員制度を控え、客観的行為のみで判断する枠組みを示した形だ。」(毎日新聞)


この事案は、「自ら招いた正当防衛状況(自招防衛・自招侵害)」と呼ばれる刑法理論における重要論点の1つにかかわるものです。裁判員制度という手続法での裁判員の便宜のために、実体法である刑法上の刑法理論が左右されるわけがありません。

確かに、「自分の不正行為で招いた侵害に対しては、正当防衛は成立しない」という結論だけは裁判員も迷わないで済むでしょう。「報復攻撃を予期していたかどうか」ということにこだわらずに済むことも確かです。しかし、この決定は結論だけを書いているだけであって、何の判断枠組みも示していませんから(詳しくは後述します)、むしろ、これでは裁判員が困ってしまいます。新しい判例が出れば、何でも裁判員制度と結びつける短絡的な思考は、止めてほしいと思います。



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2008/06/01 [Sun] 18:41:49 » E d i t
最近、透析療法と腎臓移植の優劣を巡るコメントが出てくるようになりました。そこで、修復腎移植の是非を問う前提として、腎移植と透析とはどちらが良いのか、メリットとデメリットについて触れておくことにします。


1.腎移植と透析それぞれのメリットとデメリットについては、色々な書籍やサイトで触れていますが、詳しく触れている東京女子医科大学腎臓病総合医療センター泌尿器科「腎移植と透析どっちがいいの?」を引用しておきます。

Question
腎移植と透析どっちがいいの?



Answer
透析療法と比べ腎臓の機能を代行するという意味では腎移植がはるかに優れていますが、腎移植の最大の問題点は腎臓の提供者が少ないということです。

■腎移植が優れている点

時間
腎移植では通常、月に1度の通院ですみますが、透析の場合週に3回透析センターで透析しなければいけません。1月にすると50時間以上を透析センターで過ごさなければいけないことになります。学業や仕事がある場合、透析は大きな障害になります。

食事
腎移植の場合、食事に関しては一般にいわれている健康的な食事(低塩、低脂肪)であれば特に制限はありません。一方、透析療法の場合、カリウム、リン、塩分などの厳しい制限が必要になります。特にカリウム(果物、生野菜に多く含まれる)を多く取ってしまうと、血液中のカリウム濃度が上昇し、不整脈がおこりときには心臓が止まってしまうことさえあります。

味覚
腎移植を受けた患者さんが最初に受ける印象は味覚が改善され食事がとてもおいしく感じることだそうです。これは透析中は口の中がねばねばし尿毒素により味覚が低下していたのが移植によって改善されるためです。

飲水
腎移植では制限ありませんが、透析療法では尿が出ないため1日500~700mlの飲水に制限されています。

生存率
腎移植のほうが透析療法より長生きできることがわかっています。最近、東京女子医大で腎移植を受けられたすべての患者さんの5年生存率(移植してから5年以上、生存している割合)は94%であるのに対し、30歳から44歳の透析患者さんの5年生存率は87.2%でした。

合併症
長期に透析を行うと、様々な合併症が出現するのに対し、腎移植ではほとんどの透析に伴う合併症は改善します。

小児の成長
小児期から透析療法を行っていると尿毒症のため正常な成長は望めません。それに対し腎移植ではお子さんの成長を阻害しません。小児の腎不全の患者さんには腎移植をできるだけ早期に行ってあげることによって、できるだけ正常に発育するようにします。

医療費
透析、腎移植ともに医療費はそのほとんどを公費が負担し、患者さんの負担には違いはありません。しかし実際に要する金額は、透析療法ではおおよそ月額40~50万円、腎移植では月額15万円です。医療経済的にも腎移植は優れています。


■腎移植の問題点

腎臓提供者の問題
腎移植を受ける場合は腎臓を提供してくださる方が必須です。身内に提供していただく方がいない場合は献腎移植に頼らざるを得ませんが、日本の献腎移植の現状ではそう簡単には移植の機会はまわってきません。そのためわれわれはこの現状を踏まえてご家族に提供者がいる場合は、血液型が違っていてもリンパ球クロスマッチ陽性であったとしても移植可能となるように移植技術の改善を行ってきました。

免疫抑制剤の問題
移植することによって腎臓病から完全に解放されるわけではありません。常に免疫抑制剤を内服し拒絶反応の抑制をしなければいけません。そのため免疫抑制剤による合併症がどうしてもつきまといます。その最も大きな問題は感染症にかかりやすいことですが、われわれの豊富な経験から予防法、早期発見法、治療法が確立されているので現在はさほど心配することではなくなりました。また、免疫抑制剤の内服量は移植から時間が経つにつれ少なくなるので感染症のかかりやすさも低下します。しかし、移植後10年、20年経っても拒絶反応の抑制をするためごく少量とはいえ免疫抑制剤は必要になります。そのためわれわれは免疫抑制剤の不要な腎移植の方法を現在開発中で、近い将来実現されることが期待されています。

手術、入院の問題
腎移植を受ける場合は手術を受けることはさけて通れません。そのため手術に伴う危険性は非常に少ないのですがまったくないとはいえません。」



女性(及びそのパートナー)にとって重要なのは、「●妊娠・出産が可能か否か」です。1996年、東京女子医大の東間先生らが行った調査からすると、透析療法中の女性の妊娠率が低く、妊娠しても流産の可能性が高く、未熟児(低体重児)で産まれる可能性が高いようです。ですから、透析の場合は、出産は「きわめて難しい」のですが、腎移植をすれば「可能」という評価となっています(「臓器移植の情報サイト」の「血液透析と腹膜透析と腎移植にはどのようなメリットとデメリットがありますか」)。

こうしてメリットとデメリットを比較すると、腎移植の方がメリットが大きいといえそうです。ただし、透析療法と腎移植どちらを選ぶかは患者の選択に委ねられていることであり、どちらかを押し付けるものではないことは確かです。患者にはどのような医療行為を選ぶか自己決定権があるからです。


なお、山陽新聞では、「揺れる移植医療」という特集記事を連載していました。そのなかには、透析治療の歴史的な経緯と現状について触れているものがありますから、紹介しておきます。

「第2部 命をつなぐ 1 シャント 『いつだめになるか』」(2007/3/10)

「第2部 命をつなぐ 2 人工腎臓 70年代 苦難の幕開け」(2007/3/11)
「第2部 命をつなぐ 3 不安 心通わせるケア必要」(2007/3/13)




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