(4) 気になった点を幾つか触れていきます。
イ:1点目。
「宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師の処分も不要としている。議連は自公民の厚労部会長らがメンバーで、厚労省が方針変更しない際の議員立法も視野に入れており、同省は苦しい選択を迫られる。」(東京新聞)
「修復腎移植を考える超党派の会」は自公民の厚労部会長らがメンバーなのですから、十分に議員立法できるだけの能力があるのです。しかも、「厚労省が方針変更しない際の議員立法も視野に入れて」いるのですから、厚労省としては、否が応でも「臨床研究以外の病腎移植の原則禁止」の運用指針を変更せざるを得なくなったのです。
ロ:2点目。
「杉浦会長は「腎移植を待つ人は多い。日本社会全体で考えていくべき課題」と強調。メンバーの古川俊治議員は「腎移植を待っている人はたくさんいる。透明性・客観性を確保してやっていけば、修復腎(病腎)移植は十分な解決策になりえる」と話している。」(産経新聞)
日本での腎臓移植は、現在、死体腎移植の平均待機期間は16.6年(2002年時の平均待機期間は約14年だった。)という、あまりに長期間であって、死体腎移植を受けることは絶望的な状況です。これほどの深刻なドナー不足のなかで、腎臓移植を待つ患者のために、ドナーを増やす実効的な方法を探すことは急務です。「日本社会全体で考えていくべき課題」という言葉は、決して大げさなものではないのです。
ハ:3点目。
「日本移植学会広報委員の湯沢賢治・水戸医療センター移植外科医長の話 十八日の理事会後に学会としての正式なコメントが出ると思うが、病気腎移植は容認できることではない。専門家集団として五学会がまとめた見解を尊重すべきであって、専門家でもない政治家が、政治的な意味合いで見解を出すのは理不尽だと思う。」(東京新聞)
専門家の判断を尊重するべきことは誰もが異論のないところです。
問題は「5学会がまとめた見解」が妥当なのかどうか、なのです。
「5学会がまとめた見解」とはいっても、日本病理学会が参加していない見解ですから、元々、その見解をそのまま受け入れるわけにはいかないのです。病理医(病理学者)は「医療の裁判官」と言われているのですから、「病理学会抜きで移植医療にかかわる医学的判定を下しても、それは裁判長も弁護士もいない法廷で、検事が勝手に論告求刑したのと変わらない」(難波紘二・広島大学名誉教授)からです。
そして、病理医の難波名誉教授、堤寛教授だけでなく、日本病理学会の常任理事・藤田保健衛生大の黒田誠教授さえも、修復腎移植に賛成の意思を表明しているのですから(
「難波紘二・広島大学名誉教授「私は病理学者・生命倫理学者として「病腎移植」を支持する」、
「日本病理学会、「『病気腎』もっと検証を」と主張!〜病気腎移植の道を主張することは正論」( 2007/03/26 [Mon] 07:50:16)、
「堤寛・藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授『「病腎移植」禁止の動きに異議あり」参照)、これらの
病理医の判断こそ、専門家の判断として尊重するのが筋というべきです。
海外での修復腎移植の実情に目を向けると、「5学会がまとめた見解」が奇怪であることがよく分かります。イタリア、EU(欧州連合)諸国は担がん臓器の積極的な運用を目指しているのが実態ですから、修復腎移植に肯定的なのです。また、オーストラリアでレストア腎移植を通常医療として行っているデビッド・ニコル教授は、古川議員の「レストア腎移植は確立された医療と見るべきか、臨床研究として進めるべきか」との質問に、
「すでに確立された医療だと考えている」と答えているほどなのです(
「「修復腎移植を考える超党派の会」の第3・4回の会合を紹介〜デビッド・ニコル教授(豪州)は“レストア腎移植はすでに確立された医療”と明言!」(2008/04/05 [Sat] 17:06:08)参照)。
アメリカの移植外科学会は、修復腎移植を進めてきた宇和島徳洲会病院の万波誠医師らの論文をトップ10に入った論文として表彰しているのです(
「万波医師らによる病気腎移植(レストア腎移植)を、米移植外科学会が表彰〜万波医師らの論文を上位10本の1つとして」(2008/01/29 [Tue] 18:13:21))。「(病気腎移植で)どれだけの患者が救われるかはわからないが、これは斬新なアプローチで、とても興奮すべき発想だ」(アメリカ移植外科学会 ゴーラン・クリントマム会長)というほどの高評価なのです。これこそが、修復腎移植に対する国際的な評価なのです。
海外では修復腎移植は、オーストラリアでは「すでに確立された医療」であり、アメリカの移植外科学会から高評価される医療であるのに、「5学会がまとめた見解」は修復腎移植は認められないというのですから、「5学会がまとめた見解」は奇怪としか言いようがありません。
元々、「5学会がまとめた見解」は、欺瞞に満ちたデータ分析に基づいて「病気腎移植は認められない」と判断したものであって、
5学会がまとめた見解こそ、冷静さを欠いた、到底、専門家の判断といえない「政治的な見解」でした(
「病腎移植に関する質問主意書と答弁書」(2008/02/29 [Fri] 00:58:44)参照)。
さらに言えば、
「5学会がまとめた見解」に対しては、日本でも異論を唱える発表が行われているのです。現に「第96回日本泌尿器科学会総会」では、腎臓移植を希望している患者のうち、修復腎移植を希望する患者が半数を超えており、「ドナーの適応拡大について議論すべき時期にきている」との発表がなされています。発表後、「患者の声が大切」であるとの話を行っています。
「レストア腎、患者さんの半数が移植を希望
レストア腎移植(いわゆる病腎移植)問題で、とかく置きざりにされがちなのが患者さんからの視点。実際にレストア腎移植を希望する患者さんは、いったいどれほどいるのだろうか。こうした興味深い研究が発表された。
横浜市で開催された「第96回日本泌尿器科学会総会」(4月25〜27日)で、「腎移植ドナーの適応拡大は議論されるべきでは:腎癌腎移植に関する献腎移植希望登録者および透析患者の意識調査から」との演題を発表したのは、長崎医療センターの松屋福蔵・泌尿器科医長らのグループ。
研究は、長崎県内の献腎移植希望登録更新者74名(男47名、女27名)、透析患者さん87名(男56名、女31名)が対象。一般的な腎がんの医学的解説を行い、転移しない可能性は約9割とした上で、レストア腎の移植を受けたいかどうかをアンケート調査した。
その結果、条件つき希望を含め肯定的意見は更新者39名(53%)、透析者39名(45%)。絶対に受けないとしたのは、更新者で32名(43%)、透析者で41名(47%)となった。
発表を行った松屋医師は「生体腎移植のあてもないまま、腎移植を待たざるを得ない患者さんやご家族の、移植できる腎臓さえあればとの思いを切実なものとして受け止め、ドナーの適応拡大について議論すべき時期にきている」と主張した。
この発表に対し、日本移植学会の高原史郎副理事は「しっかりとしたインフォームドコンセント(十分な説明と同意)をすれば、大部分の患者さんは部分切除を望むはず。病腎移植といっても(全摘を前提としているため)数はほとんど限られるのではないか」と質問した。しかし、日本泌尿器科学会の公式データとして「修復腎移植を考える超党派の会」に提出された腎がんの全摘率は82%となっている。
高原副理事の質問に松屋医師は「私の経験では、部分切除と全摘の両方を説明しても、全摘を望む患者さんはそれほど稀ではない。助かる患者さんがたとえ1人でも、その可能性を検討すべき。無条件にノーというべきではない」と答えている。
また、発表後に同医師はレストア腎移植問題に言及。「C型肝炎問題と同じように、患者さんの声が大切。そうした臓器でも移植を望む患者さんがどれだけいるかによると思います」と話した。」(徳洲新聞No.620[2008(平成20)年5月12日]3面)
日本移植学会広報委員の湯沢賢治・水戸医療センター移植外科医長は「専門家でもない政治家が、政治的な意味合いで見解を出すのは理不尽」と吠えています。しかし、「修復腎移植を考える超党派の会」は自公民の厚労部会長や医師出身の議員などがメンバーなのですから、素人ではないのです。よくも面と向かって「修復腎移植を考える超党派の会」を侮辱できるものだと、恐ろしくなるほどです。(自公民の厚労部会長を侮辱した
「水戸医療センター」は政治判断により多くの不利益を受けても構わないということなのでしょう。)
このように、
「5学会がまとめた見解」よりも、日本移植学会の会員が格段に優れた経験と技量を有する海外の移植医や、「医療の裁判官」である病理医の判断の方が、客観的にみれば専門家として尊重できるのです。
「修復腎移植を考える超党派の会」は、「5学会」よりも優れた専門家の判断を尊重したものであって、極めて妥当な結論なのです。
2.テレビ報道もなされています。
(1)
TBSニュースi(5月13日11:11)「病気腎移植、議連が「容認」の見解
厚生労働省が原則「禁止」とした病気の腎臓の移植について、超党派の国会議員で作る議員連盟が、「十分なインフォームド・コンセントなどを行えば容認できる」とした見解をまとめました。
与党の厚労部会長や医師出身の議員など、超党派のおよそ80人の議員からなる「修復腎移植を考える会」は、宇和島徳洲会病院の万波誠医師、廉介医師らが実施した病気の腎臓の移植について、議員連盟の見解をまとめました。
万波医師らの移植について、「腎摘出が適切だったか疑問のある症例がある」としました。
しかし、今後、病気の腎臓の移植については、「第三者委員会によるドナーの疾患の客観的評価や、十分なインフォームド・コンセントを条件とするなら認められる」として、病気の腎臓の移植を原則禁止とする厚労省の見解とは正反対の提言内容となりました。
今回の議員連盟の動きを受けて、厚労省などは、19日に予定していた病院側の聴聞を延期しました。(13日11:11)」
(2)
日テレNEWS24<5/13 14:35>「病腎移植容認の見解を提出〜超党派の議連<5/13 14:35>
厚労省が原則禁止している病腎移植について、超党派の国会議員でつくる議員連盟が13日、容認する内容の見解をまとめ、厚労省に提出した。
議員連盟は、万波誠医師らが行った病腎移植について、「疑問がある」としながらも、今後は腎臓の摘出が必要かどうかを判断する第三者委員会を設け、リスクなどについて患者への説明を十分に行えば「認められる」との見解をまとめた。
一方、厚労省が万波医師と病院を処分する方針を固めていることについて、「処分する理由は認められない」としている。
病院側から処分に対する反論を聞く聴聞会は、19日に開催される予定だったが、延期されている。」
(3)
NHKニュース(5月13日 16時12分)「病気腎移植 議連認める見解
病気で摘出された腎臓が別の患者に移植されていた、いわゆる病気腎移植問題を検討してきた超党派の議員連盟は、腎臓を提供する人の病状を第三者機関が客観的に評価することなどを条件に、病気腎移植を認めるべきだとする見解をまとめ、政府に検討を求めることになりました。
与野党の議員が参加しているこの議員連盟は、愛媛県の宇和島徳洲会病院の万波誠医師らが行ってきた病気腎移植の是非を検討するために設けられたもので、13日の会合で病気腎移植に関する見解を取りまとめました。
それによりますと、万波医師らが行ってきた病気腎移植については、腎臓を提供した患者に対し十分な説明が適切に行われていたかどうかなどの点で、疑問が残ると指摘しています。そのうえで、腎臓移植を希望する患者に対し、腎臓が絶対的に不足している現状を見逃すことはできないとして、腎臓を提供する人の病状を第三者機関が客観的に評価することや、提供者に適切な説明が行われて同意を得ていることなどを条件に、病気腎移植を認めるべきだとして、政府に検討を求めることになりました。
また、議員連盟では、健康保険が適用される医療行為として、病気腎移植を認めるかどうかも検討する必要があるとして、今後、専門家の意見も踏まえたうえで、法律の整備などについて議論していくことになりました。」(*原文と異なり、段落分けをしました。)
いずれも、主要な点を報道しています。もっとも、気になったのはNHKニュースです。
「病気で摘出された腎臓が別の患者に移植されていた、いわゆる病気腎移植問題を検討してきた超党派の議員連盟は、腎臓を提供する人の病状を第三者機関が客観的に評価することなどを条件に、病気腎移植を認めるべきだとする見解をまとめ、政府に検討を求めることになりました。」(NHKニュース)
今後、修復腎移植の推進に向け厚労省や学会に働き掛けるとの報道もありますが(時事通信)、「政府に検討を求める」ことのようです。もし、政府の側が、腎臓移植を待つ患者を見捨てしまい、修復腎移植の推進のために動かないようであれば、議員立法で方針変更を行うことになるのでしょう。修復腎移植問題は、いよいよ大きく動いていくことになりそうです。
何度も主張し、強調していることではありますが、やはり述べておきます。
「もし、修復腎(レストア腎)移植を否定するのであれば、ドナー不足解消のための現実的で実効性のある方策を、直ちに提示すべきです。対案のない反対論は、移植を待つ患者の利益を損なうものであって、止めるべきです。」
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