2.「修復腎移植を考える超党派の会」は、何回か会合を開いてきました。
(1) このブログでも、明らかになっている会合については、すべて紹介してきました。今度の会合は正確には何回目なのかは不明ですが、5月13日には正式見解をまとめるとのことです。
・第1回会合について:「“レストア腎(病気腎)移植”超党派の議員連盟発足〜厚労省による「病気腎禁止」見直し求める(東京新聞2月22日付「こちら特報部」より)」(2008/02/23 [Sat] 06:12:46)
・第2回会合について:「『修復腎』移植、万波氏以外に全国76例も〜「修復腎移植禁止」は妥当だったのか?(東京新聞3月1日付「こちら特報部」より) 」(2008/03/02 [Sun] 05:42:42)
・第3・4回会合について:「「修復腎移植を考える超党派の会」の第3・4回の会合を紹介〜デビッド・ニコル教授(豪州)は“レストア腎移植はすでに確立された医療”と明言!」(2008/04/05 [Sat] 17:06:08)
・第5回会合について:「「修復腎移植を考える超党派の会」の第5回の会合を紹介〜現場の医師たちが臨床の証言」(2008/04/21 [Mon] 21:56:10)
(2) 「修復腎移植を考える超党派の会」の見解案は、記事によると次のようなものです。
「「見解案」によると、「超党派の会」は、症例の一部に「腎摘出の適応が適切だったか疑問がある」としつつも、臓器不足を考慮すると、病気腎移植は「第三者委員会によるドナーの疾患の客観的な評価や、適切なインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の確認等を要件とすれば認められると考えられる」と判断。
さらに、病気腎移植は、既存療法の組み合わせであり、臨床実施例の知見が蓄積されていると指摘。高度医療や先進医療の枠組みで、「保険診療を認めていくべきだ」とした。
その上で、病気腎移植の中には、診療報酬請求を社会保険診療報酬支払基金で審査して適用した例もあると指摘。万波医師や病院を処分する「理由は認められるとはいえない」と、処分は不要との考えを示した。」
正式見解によると、3点を挙げています。
「<1>修復腎移植の容認:病気腎移植は「第三者委員会によるドナーの疾患の客観的な評価や、適切なインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の確認等を要件とすれば認められる
<2>修復腎移植については、保険診療を認めていくべきである
<3>修復腎移植を実施した病院や万波誠医師に対する、保険医療機関指定・保険医登録の取り消しは不要である」
これらは、厚生労働省が「臓器移植法運用指針」改正の中で、臨床研究以外での病気腎移植は「原則禁止」としたこと、保険医療機関指定と保険医登録の取り消し処分の意向、保険診療否定の意向という、修復腎移植の(事実上の)全否定に対して、真っ向から反対を唱えるものになっています。
これで、「病気腎移植に『NO』を出した厚労省・学会と、『YES』を志向する超党派議連」(東京新聞)という図式が明確になったのです。
(3) 東京新聞の記事では、「正式見解」が出た後の今後の予測について触れています。
「社会保険庁(厚労省の外局)の地方組織で、宇和島徳洲会病院や万波医師らの処分を検討している愛媛社会保険事務局は、19日に聴聞会を開く予定だったが、直前の13日に超党派の会の見解が出ることで、延期の可能性も出てくる。」
保険医療機関指定・保険医登録の取り消しがなされれば、その処分取り消しを求める訴訟になることは予測されることは当然としても、「修復腎移植を考える超党派の会」に属する議員らからの猛反発が出ることが予想されます。
「修復腎移植を考える超党派の会」に属する議員らは、自公民各党の厚労部会長ら医療行政に通じた議員たちなのですから、もし社会保険事務局が、保険医療機関指定と保険医登録の取り消し処分の意向、保険診療否定の意向を貫くならば、国会でも問題視される可能性が高まってきます。そうなれば、厚労省や社会保険事務局の職員だけでなく、日本移植学会の会員も国会で参考人質疑される可能性も出てきます。
このようなことを考えると、聴聞会延期の可能性もありうるということなのだと思います。
3.なぜ、「修復腎移植を考える超党派の会」が、「病気腎移植容認提言」「万波医師処分は不要」という結論に至ったか、その背景はどこにあるのでしょうか? (1)
「修復腎移植推進・万波誠医師を支援します」さんの
「移植学会等の見解に反論する(4)」(2008/04/23 22:00)、
「それは何故なのですか教えてください」(2008/04/25 21:09)を読むと分かりますが、「「修復腎移植を考える超党派の会」の国会議員は、学会や厚労省が述べていることに対して、極めて理不尽であるとして憤慨していると受け取れるほどの発言を述べていることが分かります。
「(平沢) ちょっといいですか。(中略)
必要の無いものを摘出されたと言われて提供者の生存率が低いと言われた中で、高原先生が犯罪だとおっしゃいましたが、犯罪であるならば告発する義務があるわけです。私の後ろに厚労省の役人がいますけれども、役人に何回も聞いたのです。
何故告発しないのかと。それに対して厚労省からはまともな返事が返ってこないのです。もし犯罪の疑いがあれば、告発する義務があるのだから行政がまずいと思うのならストップしなければならない。そのためには刑事手続にのっとってやるのが筋であって、それを一切しないというのは厚労省も何故やらないのか、学会も何故やらないのか、それを犯罪だって断定されるのなら当然やるべきなのです。
それは何故なのですか教えてください。」
「(衛藤) 私のほうから質問ですが、「万波病」とかいう形で指摘され非常に非難めいたお言葉をいただきましたので、それであれば私どもも少し踏み込んで質問したい。(中略)
それから海外の学会についても移植学会の理事長名で「これは警察の捜査も入っているから」という内容で出してますよね?これを出した頃というのは実は捜査はもう終わっていて……。
ただ先生がやられたドミノ肝移植も一種の病肝ですよね?そこのところ私どもはどうしてもわかりません。肝臓が良くて腎臓がダメ、というのはどうしてもわかりません。(中略)
万波病という話が出ているのでいいますが、高原教授自身も十数年前の大阪の時に万波さんに患者を送られてますよね?夫婦間と兄弟間ですね。当時これは認められてませんでしたね。当時は夫婦間で血液型の問題があるので、それから兄弟間でもウィルス持ちで、それで大阪の倫理委員会に通らないっていうんで、万波さんのところに紹介状がいってますね。
僕はそれはそういう形でやられて良かったと思っているんですよ。だから最後までそういう姿勢でこの修復腎、病腎移植を可能であってやってもらえたらなぁと。
現実として我が国で死体腎、健腎件数は増えていません。180程度です。生体腎、これまたけしからんことに厚生省は生体腎の点数を半分に下げている。全くもって厚生省がやろうとしていることがわからない。そのような中で修復して使うことが可能なのであればいいのではないかと思う。」
医療の裁量性が広く認められていることなどから、修復腎移植は犯罪にならないことがすでに明らかになっています(
「病気腎移植と傷害罪の成否〜臼木豊・駒沢大教授の見解の検討」(2007/06/10 [Sun] 23:41:32))。それなのに、高原・大阪大教授は「犯罪だ」と誹謗するため、平沢勝栄衆院議員は、その根拠を述べろとして厳しく問いただしています。
衛藤晟一衆院議員も、修復腎移植を認めることについて「万波病」と揶揄されたことを切っ掛けとして、いい加減なことをいうなと、憤慨していると思えるほどの発言を行っています。特に、高原・大阪大教授は、大阪大学の倫理委員会で承認できない移植を、わざわざ万波医師のところに患者を送った過去さえあるのに、そんな過去に頬被りしたままで万波医師たちを批判するのです。高原・大阪大教授の言動は実に理不尽です。
(2) 元々、「修復腎移植を考える超党派の会」は、長期間にわたって腎臓移植を待つ患者のために「修復腎移植を冷静に評価し直そう」という意図で結成されたものです。「趣意書」を引用しておきます。
「「修復腎移植を考える超党派の会」
趣意書
昨今、修復腎移植の是非が大きな社会問題となっておりますことはご案内の通りです。
移植を容認する立場からは、「患者の命を救うための医療行為であり患者に不満の声はなく、海外でも多くの同様の事例が存在し、かつ高い評価を得ている」との見解が示されております。
他方で、医学的に問題ありとする立場からは、「インフォームドコンセントや倫理面で問題があり、移植した腎臓の生着率や患者の生存率が劣り、修復腎移植は医学的に妥当性がない」との主張がなされております。
このように異なった見解が存在するなかで、中立かつ客観的な立場から両者の見解を検討し、この問題の適切な方向性を追及していくことは国会議員としての責務であると考えます。
そこでわれわれ有志議員が協議し「修復腎移植を考える超党派の会」を設立致しました。多くの議員の皆さま方のご入会をよろしくお願い致します。
平成20年2月21日
発起人 島村宣伸 深谷隆司 杉浦正健 竹本直一 平沢勝栄 衛藤晟一 佐藤信秋 山田正彦 松木謙公 家西悟 福島豊 山本博司 (順不同、敬称略)
議員各位」
それなのに、「修復腎移植を考える超党派の会」の会合において、
日本移植学会の会員らが、根拠なく修復腎移植を犯罪だと誹謗したり、「万波病」などと揶揄することは、実に冷静さを欠いたものであって、「修復腎移植を考える超党派の会」自体を誹謗し侮辱することに等しい発言です。
「修復腎移植を考える超党派の会」に属する議員らは、自公民各党の厚労部会長ら医療行政に通じた議員たちなのですから(大阪HIV薬害訴訟原告代表を歴任したあの「家西悟」参院議員も発起人です)、会合での日本移植学会の会員の発言を聞いて、「医療について何も知らない素人だと侮辱するのか」と、内心では激怒していたのかもしれません。
日本での腎臓移植は、死体腎移植の平均待機期間は16.6年という、あまりに長期間であって、死体腎移植を受けることは絶望的な状況です。これほどの深刻なドナー不足のなかで、どうやって腎臓移植を待つ患者のために、ドナーを増やす実効的な方法を探すことは急務です。そうであれば、国会議員の職務上、修復腎移植を含め、あらゆる可能性を検討するのは当然のことなのです。
それなのに、「修復腎移植を考える超党派の会」自体を誹謗し侮辱することは、国会議員として必要とされている職務上の努力を否定するものです。「修復腎移植を考える超党派の会」の国会議員が、日本移植学会の会員らによる誹謗に対して、反発を感じ激怒したとしても当然といえるのです。
(3) よく考えてみれば、ドナー不足解消への努力が必要なことは、腎臓移植だけでなく、臓器移植全般にいえることです。
賛否両論が入り乱れ、「施行後3年を目途に、必要な措置を検討する」と明記された臓器移植法は、施行から10年半がたっています。しかし、3つの改正案が出ているものの、審議は一向に進まず、患者、医師らには「命の問題。とにかく審議を」と焦りの色がにじむという状況です(
「東京新聞平成20年5月9日付【こちら特報部】「臓器移植法改正へ、命の叫び」参照。近いうち紹介します)。
このように、
今現在、臓器移植法改正に取り組んでいないこと自体が、法律上、妥当でないのです。臓器移植全般という観点からしても、修復腎移植を理不尽な根拠で否定することは、臓器移植拡大への足枷となるものであって、妥当でないともいえるのです。
(4) 「修復腎移植を考える超党派の会」が、「病気腎移植容認提言」「万波医師処分は不要」という結論に至った背景は、
日本移植学会の会員らが、「修復腎移植を考える超党派の会」自体を誹謗し侮辱することに等しい発言を行ったことへの反発のみならず、腎臓移植を待つ患者の利益、臓器移植を待つ患者の利益のためである、と思えるのです。
4.日本では、最近、多くの社会問題(例えば裁判報道など)において、感情的で単に誹謗するだけの論議で終わることが、目に付くように感じます。しかし、そんな議論は無意味です。
「患者たちは、早急かつ真剣な議論を望んでいる」(東京新聞)
修復腎移植に賛成する側は、深刻なドナー不足解消のため、移植を待つ患者の利益を重視するという観点から、客観的で妥当なデータに基づく冷静な判断・議論を早急に求めており、早急に実効的なドナー不足解消方法を求めているのです。
一体何のために議論するのか、「修復腎移植を考える超党派の会」の正式見解の意義は何か――。修復腎移植に反対する方たちは、もっと冷静になって、自己の言動を思い直してみて頂きたいと思います。
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