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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2008/05/31 [Sat] 17:03:30 » E d i t
長崎市長射殺事件については、「長崎市長射殺事件:長崎地裁平成20年5月26日判決は、「民主主義を根幹から揺るがす犯行」として死刑に~長崎地裁判決の問題点を検討する」(2008/05/28 [Wed] 23:53:58)で一度触れていますが、秀逸な論説がありましたので、再び触れてみたいと思います。


1.長崎地裁が死刑判決を下したことについては、多くの新聞社が社説で取り上げ、しかも全面的に肯定する扱いでした。その各新聞社の社説を一部引用しておきます。もっとも、全国紙では、毎日新聞だけは社説で取り上げていません。

市長殺害死刑―テロへの怒りを新たに

 殺された人が1人の場合、死刑判決はめったにない。あえて死刑を選んだ理由として、長崎地裁は次のように述べた。

 男は市役所に不当な要求を繰り返して拒まれたため、市長を逆恨みした。市長を殺して当選を阻止し、自らの力を誇示しようと考えた。暴力によって、選挙運動と政治活動の自由を永遠に奪い、有権者の選挙権の行使も妨害した。これは民主主義を根幹から揺るがす犯行だ。到底許しがたい――。

 暴力で言論や政治活動を封じようというのは、民主主義に対するテロである。裁判官はテロの社会的な影響の深刻さを重く見て、いまある刑罰の中で最も重い死刑を選んだということだろう。厳罰化の流れが背景にあるとはいえ、そうしたテロに対する厳しい姿勢は十分うなずけるものだ。(中略)

 今回の事件をきっかけに、暴力団対策法が改正された。行政の許認可への介入や入札への参加を要求する行為にも中止命令などを出せることになった。警察は行政と連携を強め、あらゆる法令を使って、暴力団を排除していってもらいたい。

 テロを憎み、暴力団を追いつめる。今回の判決を機に、その思いを新たにしたい。」(朝日新聞2008年05月27日(火曜日)付「社説」




長崎市長射殺 「選挙テロ」に下った死刑判決(5月27日付・読売社説)

 犯行の悪質さや動機の理不尽さを考えれば、極刑以外の選択はあり得なかったのだろう。

 昨年4月、当時の伊藤一長・長崎市長を射殺したとして殺人罪などに問われた元暴力団幹部の被告に、長崎地裁は死刑判決を言い渡した。

 伊藤市長は4選を目指して市長選に出馬中だった。検察側は「選挙テロ」だと主張していた。判決も、暴力によって選挙運動と政治活動の自由を永遠に奪った、「民主主義社会において到底許し難い」犯行だったと指摘した。

 長崎市に難癖をつけては不当に資金を得ようとしたものの、ことごとく拒絶されたことが市長を恨んだ動機だったという。」(読売新聞2008年5月27日付「社説」



社説2 市長射殺に死刑判決の意味(5/27)

 今回の事件はどうか。動機は先に書いたとおり、身勝手なばかりか極めて反社会的だ。人命だけでなく、民主主義を保障する制度である自由な選挙と、公正な行政が、ともども標的にされたと言える。

 「犯行の態様」も、反社会的存在というほかない暴力団の幹部が、所持そのものが違法である拳銃を使った点で、甚だ悪質だ。社会的影響は、あれこれ指摘するまでもない。

 長崎での事件の4年半前、やはり選挙で公職に選ばれた政治家の石井紘基・民主党衆院議員が刺殺され国民を暗然とさせた。犯人の右翼団体代表は1審の無期懲役が最高裁で確定している。1審判決後、石井議員の妻は「愚劣な暴力行為に断固たる態度がとれない日本の司法に不満を感じる」と述べた。

 長崎の犯人は石井事件の判決を見て「日本の司法はテロ行為に断固たる態度をとれない」などと高をくくって同種の凶行に及んだ、ということはないのだろうか。

 死刑の適用には慎重な検討が要るのは論をまたない。今回の死刑判決は、民主主義を暴力で突き崩そうとするテロに厳しく対処する社会の意志を示すものと考えたい。」 (日経新聞平成20年5月27日付「社説」



どれも「民主主義を根幹から揺るがす犯行」だとか、「民主主義を保障する制度である自由な選挙と、公正な行政が、ともども標的にされた」とか、「テロ行為」だとか指摘して、死刑判決を妥当と理解しています。日経新聞にいたっては、「長崎の犯人は石井事件の判決を見て『日本の司法はテロ行為に断固たる態度をとれない』などと高をくくって同種の凶行に及んだ、ということはないのだろうか」などと、何の客観的証拠もない憶測まで繰り広げる始末です。

しかし、この事件は、本当に民主主義社会へのテロ行為と呼ぶような性格のものだったのでしょうか? 

この長崎地裁判決について、作家の村薫さんは疑問を抱いており、その論説を朝日新聞平成20年5月29日付「私の視点―ワイド―」で掲載していましたので、紹介したいと思います。



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テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

裁判例 *  TB: 4  *  CM: 20  * top △ 
2008/05/30 [Fri] 05:40:26 » E d i t
東京都渋谷区の自宅で2006年末、短大生の妹を殺害、遺体を切断したとして、殺人と死体損壊の罪に問われた元歯学予備校生武藤勇貴被告(23)に、東京地裁(秋葉康弘裁判長)は5月27日、死体損壊を無罪として殺人罪のみ認定し、懲役7年(求刑懲役17年)の判決を言い渡しました。

公判では被告人側が殺害などの事実は認めていたため、精神鑑定では「殺害時は心神耗弱で、遺体の切断時は『別人格』が現れて心神喪失の状態」とされていたことから、責任能力の有無が最大の争点でした。

弁護側請求で被告人を精神鑑定した医師、牛島定信・東京女子大教授は「殺害時は感情を抑える機能が弱体化した心神耗弱状態。死体損壊時は殺害の衝撃で人格の乖離が生じ、本来の人格とは異なる獰猛な人格的状態で心神喪失状態だった」と報告していました。これに対して、検察側は、「遺体を切断するなど手の込んだ隠蔽工作を行っており、精神障害をうかがわせる事情はない」として完全な責任能力があると主張していました。


1.まずは、【共同通信(2008/05/27 18:44)】による判決要旨と、精神医学の用語について引用しておきます。

短大生殺害事件 東京地裁判決要旨

 短大生殺害事件で殺人と死体損壊の罪に問われた兄武藤勇貴被告に東京地裁が27日、言い渡した判決の要旨は次の通り。

 【鑑定結果の信用性】

 鑑定医は経歴、専門分野、臨床経験等に照らし、被告の精神鑑定に適任の専門家であったと認められ、手法や判断方法にも不合理なところは認められないから鑑定結果は十分に信頼できる。

 【精神疾患と病態】

 鑑定結果によると、被告の精神疾患と病態には次の事実が認められる。

 被告は生来的にアスペルガー障害に罹患(りかん)し、中学生ごろからは強迫性障害が加わり、さらに犯行の1カ月以上前から解離性障害にかかっていた。

 被告はアスペルガー障害を基盤にして、激しい攻撃性を秘めながらそれを徹底して意識しないという特有の人格構造を形成しており、激しい怒りが突出して行動しても、それを感じたと認識する過程を持っていない。

 【殺害時の精神状態】

 鑑定医の判断によると、被告はアスペルガー障害により攻撃性などの衝動を制御する機能が弱い状態にあったが、解離性障害が加わって外の世界の刺激が薄れることによってこの機能がさらに弱体化し、被害者から挑発的な言動を受けたことで抱いた怒りの感情を抑制できず、激しい攻撃性が突出し殺害に及んだ。

 【殺害時の責任能力】

 被告は殺害前1カ月間以上にわたり、大学受験の浪人生として家族などと日常生活を送りトラブルを起こしたことはなかった。また犯行後も発覚を防ぐための言動を取り、予備校の冬期合宿に参加していて、犯行当日前後において自己の行為を適切に制御する能力を全体として維持していた。

 したがって殺害時に被告の制御能力はかなり減退していたことは否定できないが、責任能力が限定されるほど著しい程度とはいえない。

 【死体損壊時の状態】

 鑑定医は死体損壊時の被告の状態について「殺害した衝撃から解離性同一性障害による解離状態が生じ、死体損壊に及んだ際には、本来の人格とは異なるどう猛な人格状態になっていた可能性が高い」という判断を示し、理由として次の点を上げている。

 (1)死体を左右対称に15にも解体するなどしたという手の込んだものであるが、その意図と作業過程は隠しやすくするためとか運びやすくするためということで説明ができず、別の人格を仮定しないと説明がつかない。

 (2)怒り狂った行為である殺害行為と、非常に冷静で整然とした行為である死体損壊行為とは、意識状態が変わったと見るべきである。

 【損壊時の責任能力】

 以上2点の指摘は証拠から認められる事実に照らしてもうなずける。

 このため、アスペルガー障害を基盤にして解離性障害を発症した症例に関する研究が十分になされていない状況の下ではあるが、死体損壊時、被告は解離性同一性障害による別の人格状態に支配され、自己の行為を制御する能力を欠き心神喪失の状態にあった可能性も否定できず、心神喪失状態にあったと認定した。

 【量刑理由】

 被害者は20歳の若さで、長年にわたり一緒に育てられた兄に殺され、また解体された娘の姿を目の当たりにした両親の悲痛は想像を絶する。しかも殺害は強固な殺意に基づいており、責任は極めて重大だ。

 一方で生まれながらにアスペルガー障害を患っていながら両親からも気付かれずに成長し解離性障害にまで至り、責任能力にこそ影響はしないものの是非善悪の判断に従って行動する能力がかなり弱まっていた状態にあったことなど、酌むべき事情も認められる。

2008/05/27 18:44 【共同通信】



「・アスペルガー障害(2002年10月8日) 他人の感情に配慮することなどが困難とされる先天的な疾患で発達障害の一種。他人とのかかわりが薄く、限られた狭い興味にこだわる点で自閉症と類似するが、言葉の発達に遅れがないのが特徴。ルール違反に厳しく、しゃくし定規にルールを守りすぎて周囲とトラブルを起こすことが多い。犯罪など反社会的行動を起こすのは例外的。研究者の推定では、この障害を持つ人の割合は1000人に3人程度。犯罪に絡む国内の精神鑑定では、愛知県豊川市で2000年5月に起きた夫婦殺傷事件で、医療少年院送致となった元高校生のケースがある。

解離性障害(2007年8月20日) トラウマ(心的外傷)や強いストレスが原因となり、それへの防衛手段として、話し掛けなどへの反応が鈍くボーッとしたり(混迷)、記憶を失ったり(健忘)、自宅や職場から逃げ出したり(遁走(とんそう))と、さまざまな症状が出る。自分が自分でないような感じがする「離人症性障害」や、多重人格とも呼ばれる「解離性同一性障害」も解離性障害の一つ。治療は薬物療法やカウンセリングなどで、数週間で治る場合もあれば、1、2年と長引く場合もある。

解離性同一性障害(2002年7月19日) 強いストレスや心的外傷(トラウマ)が原因で、記憶や意識などと、行動のつながりが失われる精神障害「解離性障害」の一つ。同一の人物に二つ以上の人格が現れ、それぞれの人格は独立した思考や感情、記憶を持ち、反復的に現れて行動する。」(共同通信)




なお、東京新聞は、この東京地裁判決について詳しく報道しています。

東京新聞平成20年5月28日付朝刊1面「多重人格、切断は無罪 東京地裁判決 心神喪失認定 殺人で懲役7年」(2008年5月28日 朝刊)、 
東京新聞平成20年5月28日付朝刊29面「【関連】鑑定重視の司法判断 渋谷・妹殺害判決 裁判員制度控え 多様な判断材料を」(2008年5月28日 朝刊)
東京新聞平成20年5月28日付朝刊3面【核心】「異例の『多重人格』認定 渋谷・妹殺害損壊判決」(2008年5月28日)




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2008/05/25 [Sun] 22:24:32 » E d i t
各テレビ局には、放送法に基づいて、放送番組の適正を図るため、全ての放送事業者(テレビ局・ラジオ局)に設置を義務づけられている審議機関である「番組審議会」が存在しています。


1.TBSにも、「TBSレビュー」(毎月最終日曜日 あさ5時30分~6時00分放送)という、TBSのみならず、放送全般が抱える問題について、幅広く取上げ、検証していく番組があります。この「TBSレビュー」において、5月25日、「裁判員制度導入と事件報道」というテーマについて、報道していました。そのテーマを論じる際に参考になる事案として、光市事件の裁判報道と、光市事件テレビ報道に関する放送倫理・番組向上機構(BPO)の意見書を取り上げていました。
5月28日追記:BPOの意見書について、BPOに寄せられた視聴者の意見を引用しました。)


検証番組 TBSレビュー

 「TBSレビュー 5月号 #137 のお知らせ」

テーマ
裁判員制度導入と事件報道

出席者
■田中早苗
弁護士(TBS放送と人権特別委員会委員)
■岩城浩幸
TBSテレビ 報道局 専門・解説室室長

■長岡杏子
TBSアナウンサー

・放送:5月25日 日曜日 朝5:30 ~ 5:59」


特に、「番組スタッフに刑事裁判の仕組みに対する前提的知識に欠けていた」部分などに注目したVTRを作成し、検証委員会の作家の吉岡さんへのインタビューを行っていました。

岩城浩幸・報道局 専門・解説室室長は、「(BPOの意見書に指摘していた)『集団的過剰同調』という言葉は非常に重い意味が含んでおり、うちに抱えている問題点を適切に捉えている。事実に忠実でなければならないという原点に改めて立ち変えなければならない。」と述べ、BPOの意見書を真摯に受け止めなければならないとしていました。そして、長岡杏子・アナウンサーは、「この教訓を生かしていかなければなりません」とまとめていました。




2.このように、TBSは「BPOの意見書を真摯に受け止めなければならない」として、BPOの意見書を妥当なものとしているわけですが、民放連会長も妥当な意見書であったと評価しています。報道記事を幾つか引用しておきます。

(1) 時事通信(2008/05/22-18:00)

BPO検証委は「見識高い意見」=光市母子殺人報道で民放連会長

 民放連の広瀬道貞会長(テレビ朝日会長)は22日の記者会見で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が出した山口県光市母子殺害事件での各局の裁判報道をめぐる意見書について「時宜を得た、極めて見識の高い、しっかりした意見」と高く評価した。
 広瀬会長は「最も感銘を受けたのは、いつの間にか被害者家族と加害者側弁護士との善と悪の戦いのような様相になってしまい、裁判報道として妥当であったかとした点だ」と述べた。また「裁判の在り方について理解していない記者もいたのではないかとの指摘もあったが、新聞を含めて今のジャーナリズムへの批判だと思う」と付け加えた。 」



(2) 東京新聞平成20年5月23日付朝刊14面「放送芸能面」

BPO「光市事件裁判」意見 「見識高い」と評価 民放連会長

 民放連の広瀬道貞会長(テレビ朝日会長)は、22日の定例会見で、山口県光市の母子殺害事件裁判の放送に対し、「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会が公表した意見について、「委員会の効用があらためて示されたケースではないか」と評価した。

 同会長は「時宜を得た極めて見識の高い意見。新聞を含めて今の裁判ジャーナリズムに対する批判で、BPOがなければ、ああいう意見は出なかっただろう」と述べた。

 委員会が個別の番組ではなく、一連の放送に対して意見を公表したことについては、「一緒にしたことで、委員は相当、自由に意見が言えたのではないか」と述べた。」



このように、民放連の広瀬道貞会長は、「時宜を得た、極めて見識の高い、しっかりした意見」「最も感銘を受けたのは、いつの間にか被害者家族と加害者側弁護士との善と悪の戦いのような様相になってしまい、裁判報道として妥当であったかとした点だ」として、と高く評価しています。光市事件報道を見聞きし、BPOの意見書を読めば、こうした評価になるのは当然でしょう。


「「裁判の在り方について理解していない記者もいたのではないかとの指摘もあったが、新聞を含めて今のジャーナリズムへの批判だと思う」と付け加えた。」


この点も重要です。差し戻し控訴審では、多くの新聞報道は抑制的でしたが、それ以前は多くの新聞報道でも、実に扇情的であり、刑事裁判の基本的な理解に欠けた報道でした。光市事件報道以外でも、問題のある報道も多々見られます。ですから、民放連の広瀬道貞会長が述べるように、「新聞を含めて今のジャーナリズムへの批判」と受け止めるべきであり、新聞社側も、BPOの意見書を他人事のように捉えるべきではないというべきです。



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事件 *  TB: 10  *  CM: 6  * top △ 
2008/05/24 [Sat] 22:54:02 » E d i t
原発での作業時の被ばくが原因で、がんの一種の「多発性骨髄腫」になったとして、元建設会社社員の故長尾光明さんが東京電力に約4400万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(松井英隆裁判長)は5月23日、請求を棄却しました。


1.まず、報道記事を幾つか。

(1) 時事通信(2008/05/23-19:53)

元原発作業員の請求棄却=労災認定と異なる判断-「骨髄腫」診断を否定・東京地裁

 東京電力福島第1原子力発電所の作業で被ばくし、血液のがんの一種である多発性骨髄腫になったとして、元作業員が同社に慰謝料など約4400万円を求めた訴訟の判決で、東京地裁は23日、訴えを棄却した。元作業員は被ばくが原因とした労災認定を受けていたが、判決は骨髄腫との診断結果自体を否定した。原告側は控訴を検討している。
 訴えていたのは、配管工事などの下請け作業員だった大阪市の長尾光明さん(82)で、結審直後の昨年12月に死亡した。
 松井英隆裁判長は2003年に示された多発性骨髄腫の国際診断基準に照らし、長尾さんは臓器障害の発生など3項目中2項目を満たさないと判断した。
 多発性骨髄腫の発生原因は未解明とした上で、「国内外の調査結果から被ばく線量が多いと発症しやすいという傾向は読み取れない」と述べ、因果関係も認めなかった。
 因果関係を肯定した厚生労働省の検討会については、「文献の採用が一方的で、説得力が非常に乏しい」とした。」



(2) 毎日新聞平成20年5月24日付朝刊25面

福島第1原発被ばく訴訟:「被ばくでがん」認めず 東京地裁が請求棄却、診断自体否定

 原発で作業中に被ばくし骨髄がんの一種の多発性骨髄腫になったとして、元作業員が東京電力に約4400万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁(松井英隆裁判長)は23日、請求を棄却した。元作業員は被ばくが原因だとして労災認定を受けたが、判決は「多発性骨髄腫とは認められない」と診断自体を否定した。【銭場裕司】

 ◇04年に労災認定
 訴えていたのは、大阪市の元プラント建設会社社員、長尾光明さん(82)で、結審後の07年12月に死亡した。長尾さんは77~82年に東電福島第1原発などで勤務し、年間平均では電力会社員平均の4~5倍にあたる計70ミリシーベルトの被ばくを受けた。98年に多発性骨髄腫と診断され、04年に労災認定された。

 長尾さんの病気について判決は、国際診断基準の3要件のうち「関連臓器障害の存在」など2要件を満たしていないとして、多発性骨髄腫ではないとした。さらに「多発性骨髄腫は症例が少なく、被ばくとの間に一定の傾向を読み取れない」と指摘し、因果関係も否定した。

 原告側は「極めて異常で政治的な判決だ。労災認定が、薄弱な根拠で覆ると労災制度の信頼性を失わせる」と批判し、控訴を検討するという。東京電力は「心よりご冥福をお祈りしたい。判決は当社の主張が認められたものと考えている」とのコメントを出した。

     ◇

 被ばくによる健康被害の実態を把握しようと、原発作業に携わる従業員らも参加する全日本造船機械労働組合(東京都千代田区)は24~25日午前10時~午後5時、電話相談(0120・00・2385)を受け付ける。原発の元従業員や労働災害の相談専門員ら数人が応じる。

==============

 ■解説

 ◇行政と司法、異なる判断

 原発被ばく訴訟で、元作業員の賠償請求を退けた23日の東京地裁判決は、労災と認定した厚生労働省の行政判断を否定し、被ばく労働者の救済へのハードルの高さを改めて示した形になった。

 原告は、被ばくの労災認定基準に対象病名の例示がない多発性骨髄腫を発症し、労災申請した。このため厚労省は専門家による放射線障害の検討会を開催。被ばくとの因果関係を認め、労災認定した経緯がある。

 この行政判断をステップに原告は提訴した。しかも、原子力損害賠償法は、原子力事業者に災害の予見可能性がなくても賠償を課す「無過失責任」を定めており、因果関係があれば救済が図られる。

 これに対し東京電力は多発性骨髄腫の発症自体を否定したうえ、厚労省が認めた被ばくレベルでの多発性骨髄腫の発症も否定。判決はこの主張を受け入れ、行政と司法の判断が分かれることになった。

 被ばくによるがんの労災認定は、白血病で5人が表面化しているが、専門家の議論も踏まえた行政判断も否定された展開は「原子力という国策ならではのもの」との指摘も出ている。原子力被害者は救済されているのか。議論が起こることは必至だ。【大島秀利】

毎日新聞 2008年5月24日 東京朝刊」



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2008/05/22 [Thu] 23:40:25 » E d i t
原子力発電所で働いていたことによって被曝し、その被曝から長い潜伏期間を経て発症した放射線障害で賠償を求めた初めての裁判が明日、5月23日、東京地方裁判所527法廷で判決がでます。


「元原発労働者で昨年末に82歳で亡くなった長尾光明さん(大阪市)が、東京電力に損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、東京地裁で言い渡される。長尾さんは多発性骨髄腫で労災認定を受けた原発労働者の第1号。労災認定後に民事裁判に踏み切った初のケースでもあり、勝訴すれば被ばく労働者の補償問題に大きな道が開かれるとして、関係者は注目している。」(東京新聞5月22日付)




1.原子力発電所の高汚染区域で働く労働者は、被爆することを避けることができません。

(1) 「東京電力原子力発電所、その他の原子力発電所におけるトラブル隠し等不祥事に関する再質問主意書」(平成十四年十二月十日提出 提出者:楢崎欣弥)には、次のように出ています。

「5 原発被ばく労働者はこれまでに三十万人を数えるまでになった。同じ放射線被爆者として、広島・長崎の被爆者集団がある。現在被爆者健康手帳(被爆者手帳)を持っている被爆者の数はおおよそ三十万人である。日本にはほぼ同じ規模の二つの被爆・被ばく者の集団があることになる。

 原爆被爆者に対しては、『原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律』があり、広島・長崎で被爆した者には被爆者手帳が交付されることになっている。手帳を持っている被爆者は国費で年に二回健康診断を受けることができ、視診、問診、聴診、打診などの他に、血液検査、尿検査、肝機能検査など七項目の一般検査が受けられる。それだけでなく、被爆者が希望すれば、胃ガン、肺ガン、乳ガン、子宮ガン、大腸ガン、多発性骨髄腫、などの検診を受けることができる。さらに必要に応じて精密検査も受けることもできるようになっている。

 同じ被爆者でありながら、原発労働者は被ばく者としても全く無権利状態に置かれている。なぜ原発被ばく労働者は二重三重に差別されなければならないのか。日本のエネルギー産業をその根底で支えている原発被ばく労働者が、他の労働者とも、また他の被爆者と比べても著しい無権利状態に放置されているこの現状をいつまでも続けてよいわけはない。」



(2) ですから、「よく分かる原子力・原子力教育を考える会」の「原発で働く人々」では、原子力発電所の労働者の実例を挙げて、結論として次のように書いています。

「原発は事故がなくても、仕事の中で被ばくをしいられている労働者がいなければ絶対に動かないことをよく理解しておく必要があります。」



このように原発では被曝を避けることができず、被曝する労働者は多数に及んでいるのに見捨てられているのが実情です。ですから、「勝訴すれば被ばく労働者の補償問題に大きな道が開かれる」ため、東京新聞「こちら特報部」は、明日の判決は注目する必要があるとして、記事を掲載しています。では、紹介します。



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裁判例 *  TB: 3  *  CM: 2  * top △ 
2008/05/21 [Wed] 22:35:10 » E d i t
「離婚後300日問題:離婚後300日規定で無戸籍の女性、出産へ~出生届不受理で無戸籍児の連鎖に」(2008/05/20 [Tue] 23:59:36)の続報です。

「無戸籍児家族の会」は5月20日、鳩山法相と面会し、改善を求める兵庫県の井戸敏三知事からの要望書とともに、法務省通達(医師の証明書で「前夫との離婚後に妊娠した」と証明すれば現在の夫の籍に入れられるとの内容の通達にとどまる)の運用の見直しや民法772条の抜本改正を求めました。面会には、公明党の浜四津敏子代表代行らが同行し、家族の会の井戸正枝事務局長ら約10人が臨んだとのことです(毎日新聞 2008年5月20日 東京夕刊)。


1.まず報道記事を幾つか。

(1) 毎日新聞 2008年5月21日 東京朝刊

無戸籍児家族の会:事態改善へ一歩…法相の意欲を評価

 離婚後300日規定(民法772条)により無戸籍になった子供の家族で作る「無戸籍児家族の会」のメンバーらは20日、鳩山邦夫法相と面会後、記者会見した。無戸籍児を抱える家族が法相に面会するのは初めて。家族によると、面会で法相は「772条難民を作っている」と現状を表現するなどし、事態の改善に意欲を示したという。

 会見では、東京都墨田区の川村美奈さん(39)が「戸籍のない子がいなくなる一歩」と話すなど、面会をおおむね評価する声が相次いだ。また、三重県亀山市で行政サービスを受ける際に、「念書」を書かされた小島典子さん(37)は「いまだに自治体によって対応がまちまちな現状を大臣に知ってほしい」と話した。

 面会は、離婚後妊娠に限って「現夫の子」の届を認める法務省通達(昨年5月21日から出生届の受け付け開始)から1年になるのを機に、家族会の要望で実現した。

 法務省によると、以前なら「前夫の子」とせざるをえなかったが、通達によって「現夫の子」で出生届を受理されたのは472件(9日現在)に上る。規定の見直しを求める地方議会からの声も多く、20日現在114の議会で意見書を可決している。【工藤哲】

毎日新聞 2008年5月20日 21時03分」




(2) NHKニュース(5月20日 12時35分)

民法規定で無戸籍 法相に要望

 女性が離婚して300日以内に出産した場合、戸籍上、前の夫の子どもと推定する民法の規定が障害となって戸籍がない子どもの親たちが鳩山法務大臣と面会し、離婚前に、後に再婚した夫との子どもを妊娠した場合も、実の父親の子としての出生届を認めるよう要望しました。

 申し入れを行ったのは兵庫県の井戸正枝さんら10人で、20日午前、法務省を訪れて鳩山法務大臣と面会しました。いわゆる民法の300日規定をめぐっては、去年5月から、女性が離婚して300日以内に出産した場合でも離婚後に妊娠したことが確認できれば、再婚した夫の子としての出生届が認められるようになりました。

 しかし、離婚前に妊娠した場合は、戸籍上、前の夫の子どもとなるため、母親が出生届を出さず、戸籍がない子どもが問題となっています。このため、井戸さんらは「夫の暴力などの理由で、離婚したくてもできない場合もある」などと実態を説明し、やむをえない事情がある場合は、離婚前に、後に再婚した夫との子どもを妊娠した場合も、実の父親の子としての出生届を認めるよう要望しました。

 これに対し、鳩山大臣は「論点が多い問題なので、方針が決まっているわけではないが、子どものことを中心に考えなければならない。虚心たんかいに受け止めたい」と答えました。

 10か月の息子が戸籍のない状態になっている三重県の小島典子さんは、法務大臣との面会を終えて「戸籍のない子どもへの対応が自治体によって異なることなどを訴えました。現状を把握して早急に対応すると大臣に言ってもらえたので、三重県から来たかいがありました。戸籍のない子が一日も早く救われるようにしてほしいと思います」と話していました。」(原文と異なり、段落分けをしました。)




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2008/05/20 [Tue] 23:59:36 » E d i t
「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」と推定する民法772条の規定のため、母親が出生届を提出できず無戸籍となった兵庫県の女性(27)が、6月中旬に出産予定であることが分かりました。出生届には母親の本籍地を記載する必要があるため、自治体は出生届を受理しておらず、子供もまた無戸籍となる可能性が高いことになりました。


1.まず報道記事を幾つか。

(1) 毎日新聞平成20年5月20日付朝刊1面

無戸籍児:離婚後300日規定で無戸籍の女性、出産へ 出生届、不受理の恐れ

 離婚後300日規定により親の出生届が受理されずに無戸籍となった兵庫県内の女性(27)が妊娠し、6月中旬に出産する予定であることが分かった。戸籍法は、出生届に母親の本籍地記載を義務付けている。地元自治体も「現状では出生届は受理できない」としており、生まれる子供も女性と同様に無戸籍となる可能性が高い。無戸籍となった人が出産するケースが明らかになるのは初めて。

 女性の50代の母親は、前夫の暴力などが原因で離婚。離婚から73日後、後に再婚した男性との間に女性を産んだ。母親は、規定を覆す手続きの複雑さや、前夫に居所を知られたくない事情から、前夫を巻き込んだ裁判をすることが難しい状態だった。このため女性は無戸籍となり、小学校には4年間しか行けなかった。医療サービスも受けられず、投票もできなかった。

 女性は昨年夏、小中学校の同級生の夫(27)と結婚式を挙げたが、戸籍がないため婚姻届を出すことができず、事実婚の状態。昨年秋に妊娠が分かり、順調なら6月中旬に出産する。不安に思った女性は今月、地元自治体に相談したが、「母親の戸籍がなければ、子供の出生届は受理できない」との対応だった。女性は「子供にまで自分がした苦労はさせたくない」と話している。

 法務省民事局は「無戸籍となった人が出産する例は今まで聞いたことがない。どうすべきか今後検討したい」と話している。【工藤哲】

毎日新聞 2008年5月20日 東京朝刊」




(2) 毎日新聞平成20年5月20日付朝刊30面

無戸籍児:27歳女性出産へ 「子に同じ思いイヤ」 2代続けて「無戸籍」も

 ◇以前から懸念、早急に対策を

 「これ以上、私と同じ思いをさせたくない」。離婚後300日規定により無戸籍となった兵庫県の女性(27)は、自分と同じ無戸籍となる可能性の高い子供の出産を控え、不安な思いを毎日新聞の取材に訴えた。初めて明らかになった母親と子供の「2代に及ぶ無戸籍」。無戸籍児家族の会は20日午前、鳩山邦夫法相と面会し、女性のケースなどを例に規定の早急な見直しを求める。

 戸籍も住民票もない女性。私立幼稚園には通えたが、自治体は女性の母親に「小学校には入れない」と説明した。しかし、同じ集合住宅にいる子供は小学校に通う。ふびんに思った母親が校長と掛け合い、入学がかなったのは、3年生の年齢になってからだった。

 入学して1年生と同じ授業を受けたが、3カ月後に3年生に編入され、授業についていけなくなった。「1年生に帰れ」。同級生の言葉に傷つき、学校から足が遠のいた。女性は中学でも、あまり学校に行けなかった。高校には行っていない。

 小学校の同級生の男性(27)と再会したのは数年前。それまで家に引きこもりがちだったが、そのころから母親の仕事を手伝うようになった。男性とは07年夏、家族だけで式を挙げた。その日に婚姻届を出す予定だったが、前日に母親から無戸籍と告げられた。

 「事実婚」とならざるをえなかったが、女性は「結婚して一緒の姓になるはずだった」と言う。07年秋に妊娠が分かり無戸籍はより切迫した問題になった。保険証もなく、帝王切開になった時の医療費の負担も心配になり、今月に入り家族の会に相談を持ちかけた。【工藤哲】

==============

 ■解説

 「無戸籍の人が子供を産めば、その子もまた無戸籍になってしまう」。無戸籍児の存在が明らかになり、関係者の間では懸念は以前からささやかれていた。今回のケースは、こうした事態が現実になったことを示している。

 戸籍法は、出生届に「父母の名前と本籍」の記載を義務付ける。このため、母の戸籍がなければ子供は無戸籍とならざるをえない。女性の母親が、女性の無戸籍を解消しない限り、無戸籍は代々続くことになる。

 無戸籍児の社会問題化により07年以降は行政サービスの徹底が図られている。ただ最も公的な証明である戸籍記載について、300日規定で多くを占める「離婚前妊娠」の場合は従前と変わりがない。

 このため、今回の母親のように前夫を巻き込んだ裁判ができない場合などで無戸籍児となる状況は今も変わらない。国会や行政は、異常な状態を改めるべく対策を早急に講じるべきだ。【工藤哲】

毎日新聞 2008年5月20日 東京朝刊」




(3) NHKニュース(5月20日 17時7分)

民法が障壁 親子で無戸籍か

 女性が離婚して300日以内に産まれた子どもは戸籍上、前の夫の子どもと見なす民法の規定が障害となって戸籍がないまま暮らしてきた兵庫県の27歳の女性がまもなく出産を迎え、生まれてくる子どもも戸籍を得られない見通しになっていることがわかりました。法務省によりますと、2代にわたって戸籍が得られないのは異例だということです。

 出産を予定しているのは、兵庫県に住む27歳の女性です。50代の母親が、前の夫の暴力が原因で離婚し、その73日後に女性は生まれました。実の父親は母親がその後再婚した男性ですが、民法では、離婚して300日以内に出産した子どもは戸籍上、前の夫の子どもと見なす規定があることや前の夫に住所を知られたくないといった事情から母親が出生届けを出さなかったため、女性には戸籍がありません。

 女性は、去年の夏から男性と結婚生活を送っていますが、戸籍がないため婚姻届けは出せませんでした。女性は来月の出産を控え、地元の自治体に相談しましたが「母親に戸籍がないので生まれてくる子どもの出生届けを受理するのは難しい」と言われたということです。

 法務省民事局は「戸籍のない人が出産する例は今まで聞いたことがない。何らかの対応ができないか、検討したい」と話しています。戸籍がない子どもの親たちでつくる「家族の会」の井戸正枝事務局長は「親子がともに戸籍を得られないような状況を変えるには、民法の規定を根本的に変えるしかない」と話しています。」





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2008/05/19 [Mon] 23:11:06 » E d i t
死刑と無期懲役の量刑の開きを埋めるため、超党派の議員により結成された「量刑制度を考える超党派の会」が5月15日、設立総会を国会内で開いたとの報道については、「「死刑――存廃を問う前に」(第8・9回):「量刑制度を考える超党派の会」発足、死刑存置派と廃止派も「量刑ギャップ解消」を(東京新聞5月13・16日付「こちら特報部」より)」(2008/05/16 [Fri] 19:20:02)で紹介しました。

この終身刑の導入を想定している「量刑制度を考える超党派の会」の動きについて、異議を唱える声があります。この声を記事にしたものについて紹介したいと思います。なお、「死刑――存廃を問う前に」(「こちら特報部」)の記事の多くは、仮釈放のない終身刑を妥当としているためか、今回の記事を書いた記者は別の方が担当しています。


1.東京新聞平成20年5月18日付朝刊24面「こちら特報部」

「超党派の会」に異議あり  終身刑すでに導入!? 無期囚の仮釈放まで25年以上  

 与野党の国会議員が15日、終身刑導入などを目指す「量刑制度を考える超党派の会」(加藤紘一会長)を発足させた。死刑廃止を求めてきた議員も名を連ねる一方、こうした流れに懸念を抱く人々もいる。 (田原牧)

◆厳罰化は止まらない 死刑回避は疑問

 「超党派の会」には死刑廃止、存置両派が加わっている。会では死刑存廃論議を切り離し、裁判員制度開始を来年5月に控え、仮釈放のない終身刑の導入、無期懲役の仮釈放禁止期間の大幅延長を討議していくという。

 とりわけ廃止派は終身刑の導入が、増え続ける死刑確定判決(昨年1年で23件)と死刑執行(同9件)への歯止めになることを期待する。

 だが、一連の流れは「逆効果だ」と疑問視する専門家がいる。「監獄人権センター」事務局の田鎖麻衣子弁護士は「すでに日本での無期懲役は世界の水準では終身刑に等しい」と話す。「無期囚で仮釈放を得た人の平均在所期間はここ数年、25年以上。仮釈放される人数より獄死者の数が勝るのが現実だ」

 今年施行される更生保護法では、仮釈放審理に被害者側の意見聴取が制度化される。無期囚の仮釈放が一段と難しくなるとみられている。

 死刑廃止、存置両派の溝は被害者感情の扱いに顕著だ。アムネスティ・インターナショナル日本の寺中誠事務局長は「刑事司法の根幹は報復感情の排除にあったが、それが崩れた」と語る。「心の問題を含め、裁判とは一線を画した被害者保護の不足が厳罰化の形で歪(ゆが)められている」

 そのうえで「終身刑導入で一番困るのは法務省矯正当局だろう。どんなに小さな可能性でも社会復帰の希望があって初めて更生を促し、管理ができる。恩赦制度が機能していない現状で、終身刑が導入されれば管理は破たんする」と言う。

 「超党派の会」にメンバーが加わる「死刑廃止議連」(亀井静香会長)は、終身刑導入と死刑執行の停止を掲げてきた。だが今春、死刑執行の停止を棚上げし、裁判員裁判では6人の裁判員と3人の裁判官の全員一致を死刑判決の条件とする法案を準備してきた。

 「超党派の会」の設立で法案提出の行方は不透明になり、さらに「超党派の会」が検討するのは終身刑の導入のみ。同会の死刑廃止派の間には終身刑が導入されれば、死刑判決は自然に減るという希望がある。 

 田鎖弁護士はこうした希望的観測に懐疑的だ。

 「死刑執行停止と引き換えの終身刑導入なら分かる。だが、現状では執行停止に何の担保もなく、終身刑のみが導入されかねない。現行なら無期判決のケースを終身刑に押しやりかねない」

 寺中氏も「厳罰化にたどり着く」とみる。「一度、厳罰化が進み始めた社会はよほどのことがないと、その方向に突き進んでしまう。それは世界の常識だ」」





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2008/05/18 [Sun] 23:24:49 » E d i t
以前、修復腎移植(病気腎移植)の理解と推進を求めるシンポジウム「レストア腎移植を考える会」が4月26日、松山市山越町の愛媛県女性総合センターで開かれたことを、「修復腎移植の理解と推進を訴える講演会、松山で開催~新聞の全国版では未報道だが、国際移植学会は“臓器移植は国内完結で”と学会宣言している以上、修復腎移植を肯定する道しかないのでは?」(2008/05/06 [Tue] 17:41:10)において、紹介しました。


1.この4月26日の講演会では、講演だけでなく、兵庫県加古川市で音楽教室を主宰している作曲家・編曲家・ジャズピアニストの有末よしひろ(佳弘)さんと、講演も行った堤寛・藤田保健衛生大学教授による演奏も行われたことも、触れました。その有末佳弘さんに対するインタビュー記事が、東京新聞「こちら特報部」に掲載されていましたので、紹介したいと思います。

生まれつき強度の近視という不自由さを抱えながら、ジャズを中心にしたピアニストになった切っ掛け、順調な演奏家としての生活が一転するさま、透析患者の現実が記されています。では、東京新聞の記事を紹介します。



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2008/05/16 [Fri] 19:20:02 » E d i t
死刑と無期懲役の量刑の開きを埋めるため、死刑制度の存置派と廃止派の国会議員がともに、超党派の議員連盟「量刑制度を考える超党派の会」を結成しました。これは、来年から始まる裁判員制度を前に、死刑判決の増加への懸念から終身刑の創設を目指す廃止側と、死刑の下に無期懲役より重い「中間刑」をつくりたい存置側が結びついたものです(朝日新聞平成20年5月3日付朝刊30面「裁判員時代:「終身刑」目指し議員連盟 超党派で数十人が賛意」)。

死刑の「存廃議論を切り離したことで、法案提出に向けて議論が高まる可能性が出てきた」(朝日新聞平成20年5月3日付朝刊30面)との評価もなされています。



1.まず、5月15日、初会合の記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成20年5月16日付朝刊3面

「終身刑」めぐり 秋に改正案提出 量刑制度議連

 「量刑制度を考える超党派の会」は15日、設立総会を国会内で開き<1>仮釈放のない終身刑を新設する<2>現在は10年間の無期懲役刑の仮釈放期間を大幅に延長する―の2案のどちらかを選択し、秋の臨時国会に関係法の改正案を提出することで一致した。

 会合には、与野党の議員55人と代理45人が出席。死刑制度の是非は議論しないことも確認した。」



(2) 東京新聞平成20年5月16日付朝刊25面「こちら特報部」(「死刑―存廃を問う前に」第9回)

死刑―存廃を問う前に:極刑 無期 「差」解消へ 超党派の会  

 死刑と無期懲役とのギャップ(差)の解消を目指す議員連盟「量刑制度を考える超党派の会」が15日発足した。市民が参加する裁判員制度を来年5月に控え、死刑存置派と廃止派がともに、新たな「中間刑」などを目指して意見を交わした。 (岩岡千景)

◆終身刑新設 ■ 仮釈放までの期間延長

◆裁判員制度控え「中間刑」を検討

 会長に就任した加藤紘一自民党元幹事長が「裁判員制度では量刑も市民に委ねられる。量刑にギャップがあるまま市民に判断を迫るには問題があり、この会で解消を考え、慎重かつ早く結論をまとめたい」とあいさつした。

 死刑の次に重い無期懲役は、現行刑法の規定上、10年で仮釈放が可能。8日の準備会合ではこの点を踏まえ、「中間刑」として▽仮釈放のない終身刑を新設する▽仮釈放になる最短期間10年を延長する―2案が出ている。

 衆議院法制局の担当者は、ギャップの解消に向けた法改正の方向性と論点を説明した。例えば、仮釈放のない終身刑を新設する場合「死刑でも認められている恩赦を認めるか」「仮釈放を一切認めなければ残酷」といった疑問や指摘がある。

 一方、無期懲役の仮釈放までの期間を長期化する場合、「最長30年の有期刑とのバランスをどうするか」「長期化は無期刑の重罰化にすぎず、ギャップ解消にならない」などが論点という。続いて法務省の担当者が、仮釈放を許さない無期刑がある米国や中国の例や、死刑を廃止した欧州の国々で無期刑に仮釈放が許されている事情などを紹介した。

 席上、議員から「ギャップを埋めるには終身刑を設けるのがいいのでは」「終生投獄ではなく、例外的に釈放の可能性も認めるべきだ」「25年か30年後に恩赦による減刑で仮釈放があり得るなら、仮釈放のない終身刑でもいいだろう」などの意見が出された。」



これを見ると、「中間刑」として「▽仮釈放のない終身刑を新設する▽仮釈放になる最短期間10年を延長する―2案が出ている」とのことですから、「仮釈放のない終身刑」の創設だけを目標にしているのではないことが分かります。


(3) 「量刑制度を考える超党派の会」の動きについて、何らかの評価をする前に、無期懲役に関する基礎的な知識について、示しておきます。日本の無期懲役刑とは、刑期の定めがない刑のことを言います。

刑法第28条(仮釈放)は、「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。」と規定していることから、文言上は、無期懲役に処せられた者でも10年で仮釈放が可能です。

しかし、実際上は、10年で仮釈放されることはありません。

結局、無期懲役って何年で仮釈放されるの?

そもそも、無期懲役とはどんな刑罰なのか。本当に7年ぐらいで出所できるのか。法務省の刑事法制管理官室に聞いてみた。

「一部の国や地域では、生涯出所できない無期懲役の制度もありますが、日本では『仮釈放』が認められる制度を採用しています。一般的に『終身刑=死ぬまで服役』と思われているようですが、たとえ仮釈放がある無期懲役でも“一生その刑が続く”という意味では同じものなのです」

この「仮釈放」が、刑期中でも出所できる制度だ。ただし、出所できるといってもあくまで「仮」。刑が消えるわけではない。

「仮釈放された受刑者は、保護観察下に置かれます。住居が規制され、長期の外出も許可が必要になる。無期懲役は、このような制限のある生活が一生続くのです」(同)

もちろん、無期懲役囚の仮釈放は容易ではない。まず、その申請には最低10年の服役が必要だ。さらに、引受人や帰住地環境などが調査され、厳重に審理が行われる。「犯罪白書」(05年版)によると、04年に仮釈放された無期懲役囚数は全無期懲役受刑者1467人中3人。いずれも20年以上服役し、仮釈放許可人員の平均服役期間は27年2カ月(「矯正統計年報」05年版より)である。7年はおろか、十数年で出所できるなんてありえない話なのだ。」(R25.jp:社会(2007.07.05)から一部引用)」


このように、無期懲役の受刑者すべてでなく、仮釈放が許可された者であっても平均服役期間は27年2カ月ですから、今でも30年近く服役しているのが現実です。

もし、「仮釈放」できたとしても、仮釈放された受刑者は、すべて必要的に保護観察下におかれるのですから(犯罪者予防更生法33条1項3号)、自由ではないのです。しかも、この記述にはでていませんが、服役が40年を超える者も少なくなく、50年に及んでいるケースもあるほど長期間に及んでいますから、10年で仮釈放されるなんて、実際上は、あり得ないのです。


注意しておきたいのは、「仮釈放許可人員の平均服役期間は27年2カ月」というのは、平成16年刑法改正による「刑法の重罰化(有期刑引き上げ等)」がなされる前に判決が出た場合の運用なのです。

平成16年刑法改正前は、有期懲役・禁錮の法定刑の上限は15年、加重された場合で20年とされていたのですが、平均寿命が伸びたことを理由に平成16年刑法改正は、それぞれ20年、30年に引き上げました(刑法12条1項、14条)。

刑期の上限が20年のときに平均服役期間が27年(40年・50年に及ぶこともある)なのですから、上限が30年になれば、有期刑とのバランス上、当然、(平成16年改正後に犯罪行為を行い無期懲役となった者については、)平均服役期間が30年以上になることは必至です。

30~40年前の自分に立ち返って考えてみてください。今ある生活環境、社会状況を想像できたでしょうか。刑務所でも一定の情報は得られるとはいえ、30~40年世間と隔絶していたら、刑務所から出てきても全くの「浦島太郎」状態でしょう。無期懲役刑とは、それほどまでに長期間服役しているものなのです。


さらに言えば、検察庁は無期懲役者の仮釈放について秘密通達を出しており、その通達では、無期懲役刑が確定した事件のうち、「動機や結果が死刑事件に準ずるくらい悪質」などの「マル特無期事件」について、刑務所長・地方更生保護委員会からの意見照会に対し、「仮出獄不許可」の意見を作成し、事実上の「終身刑」とするよう求めています。すなわち、実際上は、検察庁は、「仮釈放のない終身刑」を勝手に創設しているのです(「終身刑創設法案を今国会提出へ~亀井静香・死刑廃止議連会長に真意を聞く(東京新聞平成20年3月18日付「こちら特報部」より)」(2008/03/20 [Thu] 00:08:48))。

裁判所も、死刑の求刑に対して無期懲役を言い渡した場合、仮釈放については「被告の性格の改善が容易でないことに十分留意するよう希望する」と慎重な運用を求めることがあります(秋田県藤里町で2006年にあった連続児童殺害事件・秋田地裁平成20年3月19日判決)。要するに、裁判所も、検察庁の秘密通達を事実上、黙認していると理解できるのです。


確認しておきます。

無期懲役の受刑者は、刑期の上限が20年のときに平均服役期間が27年(40年・50年に及ぶこともある)であり、今後は30年以上服役するのが通常となるのであり、さらに、「動機や結果が死刑事件に準ずるくらい悪質」などの「マル特無期事件」については、すでに仮釈放のない終身刑として運用されているのです。これが無期懲役の現実です。

そうなると、はて?と思うはずです。

「死刑と無期懲役とのギャップ(差)はあるのだろうか?」

と。

その問いへの答えは明白です。実際上は、「死刑と無期懲役とのギャップ(差)」はないのであって、一部のマスコミ(それを妄信している一部の市民)が勝手に勘違いしているだけなのです。



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2008/05/15 [Thu] 23:10:49 » E d i t
作家の村薫さんは、東京新聞夕刊において「社会時評」という論説を連載しています。鋭い論説であるため、このブログでも何度か引用しているのですが、5月14日付の「社会時評」では、光市事件裁判への評価を織り交ぜながら、裁判員制度について触れていました。


1.その「社会時評」の書き出しは、次のようなものです。

 「裁判員制度の開始までちょうど1年となった。一市民が法廷の最上段に並んで座(すわ)り、被告人を目の前にして有罪か無罪かを決めるなんて、真面目(まじめ)に考えれば考えるほど困惑するというのが、市井の本音である。現に最近の世論調査で、6割の人ができればやりたくないと回答している現実を、国は座視すべきでない。

 折りしも先月、犯行当時18歳と1ヶ月の少年であった山口県母子殺害事件の被告が、差し戻し審で死刑判決となった。数ある刑事裁判のなかでも、極刑を求める被害者遺族の活発な活動によって、ひときわ世論の注目を集めてきた裁判だったが、私などは最後まで、何が正しいのか分からなかった。」



(1) 裁判員制度については、6割というか、8割以上が「できればやりたくないと回答している」のが現実です。

裁判員参加「消極的」8割 最高裁調査、義務でも拒否37%
2008年4月2日 朝刊

 来春までにスタートする裁判員制度に、8割以上の人が参加したくないと考えていることが、最高裁が1日発表した全国意識調査で明らかになった。「参加したい」「参加してもよい」は合わせて15・5%だった。「判決で被告の運命が決まるため責任を重く感じる」と不安を訴える声が4分の3に達しており、開始まで約1年となっても新制度への参加意識が高まっていない実態が、あらためて浮き彫りになった。

 調査によると、最も多かったのは「あまり参加したくないが義務なら参加せざるを得ない」の44・8%。「義務であっても参加したくない」が37・6%で参加に消極的な人が計82・4%に上った。

 質問項目が同じ内閣府の調査(2006年12月)では78%が消極派だったが、今回はさらに増えた。

 比較的若い世代に参加する意向が高かったが、最も高い20代でも積極派は27・4%にとどまった。

 地域別では大都市圏で参加の意向が高かったが、最も高い千葉でも積極派が23・8%だった。中部6県は愛知16・2%、三重15・7%、福井14・3%、岐阜13・3%、長野12・4%、滋賀11・9%。

 裁判員になった場合の不安(複数回答)については、「被告の運命が決まるため責任を重く感じる」が75・5%と最多だった。「身の安全が脅かされるのでは」との回答も54・6%と過半数に達した。

 ▽調査の方法 1-2月に実施。全国50地裁の各管轄区域で、20歳以上の男女210人を無作為抽出し、1万500人を対象に面接した。実際の人口に対応するよう数値を調整した。」(中日新聞2008年4月2日 朝刊


(なお、「参加したい」「参加してもよい」と意欲を示した市民の割合は15.5%であり、「あまり参加したくないが義務なら参加せざるを得ない」とした割合は44.8%であるので、それらを加えると約6割になるため、最高裁は「一定の水準には達している」と、手前勝手な好評価をしています(朝日新聞平成20年4月2日付朝刊30面)。)


(2) 裁判員制度は、「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項1号)といった重大な刑事裁判に限定して適用されます。そうすると、将来、「光市事件」と同様の犯罪が生じた場合には、その事件は裁判員制度の対象事件となり得るのです。

では、その「光市事件」裁判の差戻控訴審の判断を慎重に検討してみると、「被告人を目の前にして有罪か無罪かを決めるなんて、真面目に考えれば考えるほど困惑するというのが、市井の本音」というのです。この「市井の本音」は、村薫さんの論説の続きを読めば、多くの共感を得る見方だと思います。 では、引用します。



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2008/05/14 [Wed] 19:58:33 » E d i t
自公民の厚労部会長や医師出身の議員など、超党派のおよそ80人の議員からなる「修復腎移植を考える超党派の会」(杉浦正健会長)が、修復腎(病気腎)移植を容認するとの見解を打ち出したことについては、「病気腎移植容認・万波医師ら処分不要の提言へ、超党派議連が方針決定」(2008/05/10 [Sat] 17:01:26)「超党派議連が「病気腎移植容認、万波医師と病院への処分不要」を発表~5月19日開催予定の聴聞会も延期に」(2008/05/13 [Tue] 22:22:34)において、触れたとおりです。

この議連の見解は、病気の腎臓の移植を原則禁止とする厚労省の見解とは正反対の内容です。しかも、修復腎移植について保険診療を認めていくべきであるとしていることも重要です。

「厚生労働省や学会から「医学的妥当性がない」とされ、同省が臨床研究以外は「原則禁止」とした病気腎(修復腎)移植をめぐる情勢に13日、大きな変化が起きた。与野党の議員連盟「修復腎移植を考える超党派の会」(会長・杉浦正健元法相)が、逆に「容認」の見解を打ち出し、「保険診療も認めるべき」と、踏み込んだからだ。宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師の症例批判を展開する学会とは対極に踏み出した議連。議論の詳報をお伝えする。」(東京新聞5月14日付)



このように、東京新聞5月14日付「こちら特報部」では、超党派議連の議論の詳報を伝えているので、この記事を紹介したいと思います。

5月15日追記「現在のガン治療の功罪~抗ガン剤治療と免疫治療」さんも、超党派議連の見解報道について触れているので追記として紹介しました。)
5月20日追記:鈴木宗男議員も、超党派議連に参加なされていたので、触れた部分を引用しました。)



1.その前に。

あらゆる社会問題についても言えることではあるのですが、この修復腎移植問題についても、根本的な点について勘違いしている方がいる点が気になります。そこで、1つ触れておきます。それは、「修復腎移植を希望する患者がいるはずがない、大部分の患者さんは部分切除を望むはずだから、病腎移植を提供する者はほとんどいるはずがない」という否定論です。

(1) 徳洲新聞No.620[2008(平成20)年5月12日]3面

レストア腎、患者さんの半数が移植を希望

レストア腎移植(いわゆる病腎移植)問題で、とかく置きざりにされがちなのが患者さんからの視点。実際にレストア腎移植を希望する患者さんは、いったいどれほどいるのだろうか。こうした興味深い研究が発表された。

 横浜市で開催された「第96回日本泌尿器科学会総会」(4月25~27日)で、「腎移植ドナーの適応拡大は議論されるべきでは:腎癌腎移植に関する献腎移植希望登録者および透析患者の意識調査から」との演題を発表したのは、長崎医療センターの松屋福蔵・泌尿器科医長らのグループ。
 研究は、長崎県内の献腎移植希望登録更新者74名(男47名、女27名)、透析患者さん87名(男56名、女31名)が対象。一般的な腎がんの医学的解説を行い、転移しない可能性は約9割とした上で、レストア腎の移植を受けたいかどうかをアンケート調査した。
 その結果、条件つき希望を含め肯定的意見は更新者39名(53%)、透析者39名(45%)。絶対に受けないとしたのは、更新者で32名(43%)、透析者で41名(47%)となった。
 発表を行った松屋医師は「生体腎移植のあてもないまま、腎移植を待たざるを得ない患者さんやご家族の、移植できる腎臓さえあればとの思いを切実なものとして受け止め、ドナーの適応拡大について議論すべき時期にきている」と主張した。
 この発表に対し、日本移植学会の高原史郎副理事は「しっかりとしたインフォームドコンセント(十分な説明と同意)をすれば、大部分の患者さんは部分切除を望むはず。病腎移植といっても(全摘を前提としているため)数はほとんど限られるのではないか」と質問した。しかし、日本泌尿器科学会の公式データとして「修復腎移植を考える超党派の会」に提出された腎がんの全摘率は82%となっている。
 高原副理事の質問に松屋医師は「私の経験では、部分切除と全摘の両方を説明しても、全摘を望む患者さんはそれほど稀ではない。助かる患者さんがたとえ1人でも、その可能性を検討すべき。無条件にノーというべきではない」と答えている。
 また、発表後に同医師はレストア腎移植問題に言及。「C型肝炎問題と同じように、患者さんの声が大切。そうした臓器でも移植を望む患者さんがどれだけいるかによると思います」と話した。」


この発表での質疑は実に興味深いものがあります。

日本移植学会の高原史郎副理事は、「大部分の患者さんは部分切除を望むはず」だと批判しているのに対して、松屋医師は「私の経験では、部分切除と全摘の両方を説明しても、全摘を望む患者さんはそれほど稀ではない」と答えています。松屋医師の経験は、実績のある泌尿器科専門医では誰もが共通して経験している事実なのですから、高原氏は、泌尿器科専門医の経験則について無知であることを自ら暴露しています。



(2) 「第96回日本泌尿器科学会総会」での長崎医療センターの松屋福蔵・泌尿器科医長らのグループの研究発表によれば、「条件つき希望を含め肯定的意見は更新者39名(53%)、透析者39名(45%)。絶対に受けないとしたのは、更新者で32名(43%)、透析者で41名(47%)」という調査結果が出ています。これは、腎臓移植を希望している患者のうち、修復腎移植を希望する患者が半数を超えているのですから、病気腎移植を希望する患者はいるのです。

また、十分な実績のある泌尿器科専門医の経験からすれば、「部分切除と全摘の両方を説明しても、全摘を望む患者さんはそれほど稀ではない」(松屋医師の話)のです。ですから、「日本泌尿器科学会の公式データとして「修復腎移植を考える超党派の会」に提出された腎がんの全摘率は82%となっている」のです。このように、80%も捨ててしまっている腎臓があるのですから、病気腎移植を提供する者はいるのです。

このように、「修復腎移植を希望する患者がいるはずがない、大部分の患者さんは部分切除を望むはずだから、病腎移植を提供する者はほとんどいるはずがない」という否定論は、間違っているわけです。

修復腎移植問題は、死体腎移植の平均待機期間は16.6年というあまりにも深刻なドナー不足の状況において、修復腎移植であっても移植を望む「患者の声を大切」しようではないか、ということなのです。

「患者の声を大切」にする――。

これは医師としてごく基本的な態度であるのですが、修復腎移植の是非は、「医師としてごく基本的な態度」が問われている問題でもあるのです。


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2008/05/13 [Tue] 22:22:34 » E d i t
宇和島徳洲会病院の万波誠医師らによる修復(病気)腎移植をめぐり、自公民の厚労部会長や医師出身の議員など、超党派のおよそ80人の議員からなる「修復腎移植を考える超党派の会」(杉浦正健会長)が、修復腎移植を容認するとの方針を決定したとのことについては、すでに報道されています(「病気腎移植容認・万波医師ら処分不要の提言へ、超党派議連が方針決定」(2008/05/10 [Sat] 17:01:26)参照)。この方針通りに「正式見解」を発表しました。

すなわち、「修復腎移植を考える超党派の会」は5月13日、「第三者委員会を設け、リスクなどについて患者への説明を十分に行えば、修復(病気)腎移植は認められる」との「正式見解」を公表しました。この提言は、病気の腎臓の移植を原則禁止とする厚労省の見解とは正反対の内容です。

また、厚労省が万波医師と病院を処分する方針を固めていることについて、「処分する理由は認められない」としています。今回の議員連盟の動きを受けて、愛媛社会保険事務局は12日、宇和島徳洲会病院に対し、今月19日に予定していた聴聞会の延期を伝えており、聴聞会の期日はあらためて指定するとのことです(日経新聞〔共同通信配信〕)。



1.新聞記事は、次のような内容で報道しています。

(1) 東京新聞平成20年5月13日付夕刊1面

超党派議連が容認発表 病気腎移植 第三者委設置条件 議員立法も視野
2008年5月13日 夕刊

 与野党国会議員約八十人でつくる議員連盟「修復腎移植を考える超党派の会」(会長・杉浦正健元法相)が十三日、厚生労働省が臨床研究以外は「原則禁止」とした病気腎移植について、第三者委員会設置などを条件に容認する見解をまとめた。

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師の処分も不要としている。議連は自公民の厚労部会長らがメンバーで、厚労省が方針変更しない際の議員立法も視野に入れており、同省は苦しい選択を迫られる。

 見解は万波医師らの病気腎移植の一部に「腎摘出の適応が適切だったか疑問がある」としたものの、臓器不足解決のため「インフォームドコンセント(十分な説明と同意)の確認等を要件とすれば(病気腎移植は)認められる」とした。

 病気腎移植は修復腎移植とも呼ばれる。議連見解に盛り込まれた第三者委は、がん患者が腎臓摘出を希望しているか、部分切除はできないのかなど、摘出の妥当性を確認する。

 見解は、病気腎移植は法が禁じた特殊療法とは断定できず、臨床実施例の知見も蓄積されていると指摘。高度医療や先進医療の枠組みで「保険診療を認めていくべき」とした。

 厚労省や愛媛社会保険事務局は、万波医師らの病気腎移植について、保険請求が不当として、宇和島徳洲会病院などの保険医療機関指定取り消しと、万波医師らの保険医登録取り消しも検討中だが、見解は、一部は社会保険診療報酬支払基金の審査を経ており、処分は不要とした。

政治見解は理不尽

 日本移植学会広報委員の湯沢賢治・水戸医療センター移植外科医長の話 十八日の理事会後に学会としての正式なコメントが出ると思うが、病気腎移植は容認できることではない。専門家集団として五学会がまとめた見解を尊重すべきであって、専門家でもない政治家が、政治的な意味合いで見解を出すのは理不尽だと思う。」



(2) 産経新聞(2008.5.13 11:19)

病腎移植問題、超党派議連の見解案まとまる 議員立法化も検討
2008.5.13 11:19

 厚生労働省が「原則禁止」の指針を示している病腎移植について、超党派の国会議員約80人でつくる「修復腎移植を考える超党派の会」(会長・杉浦正健元法相)は13日午前、会合を開き、第三者による客観的評価などを条件として、容認できるとする見解案をまとめた。今後、厚労省や移植関連学会などと調整をはかりながら、議員立法化も検討するとしている。

 この日の会合には議員のほか、厚労省の担当者ら約30人が出席。杉浦会長は見解案を担当者に手渡した後、メンバーに見解案を諮り、了承された。ただ、議員立法化については慎重な意見もあった。杉浦会長は「腎移植を待つ人は多い。日本社会全体で考えていくべき課題」と強調。メンバーの古川俊治議員は「腎移植を待っている人はたくさんいる。透明性・客観性を確保してやっていけば、修復腎(病腎)移植は十分な解決策になりえる」と話している。

 見解案では、宇和島徳洲会病院の万波誠医師らが実施した病腎移植について「適切だったか問題がある」としながらも、絶対的なドナー不足を考慮。「第三者委員会によるドナー疾患の客観的な評価や適切なインフォームドコンセントの確認を要件とすれば認められる」とした。

 超党派の会は病腎移植の有効性を検討するため、2月から議論を進めてきた。

 厚労省は昨年7月、臓器移植法の運用指針を改正し、臨床研究以外の病腎移植を原則禁止にしている。」



(3) 朝日新聞平成20年5月13日付夕刊14面

超党派議連、病気腎移植を認める
2008年05月13日

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師による病気腎移植の妥当性を検証する議員連盟「修復腎移植を考える超党派の会」(会長、杉浦正健・元法相)は13日、衆議院議員会館で会合を開き、第三者による疾患の客観的評価などを条件に、移植を容認する見解をまとめた。

 議連は2月の結成後、万波氏や日本移植学会幹部らに意見を聴いてきた。その結果、万波氏の移植の一部に、十分な術前の診断やインフォームド・コンセントが足りなかった疑いがあると判断。一方で、「移植腎の絶対的不足は看過し得ない問題。解決の選択肢として、(病気腎移植は)認められると考えられる」と結論づけた。

 厚生労働省は、診療報酬の請求が認められない特殊な療法である病気腎移植を不正に保険請求したなどとして、万波氏の保険医登録と同病院の保健医療機関指定を取り消す方針。しかし、議連は「十分な理由がない」として、指定を取り消さないよう厚労省に求めた。見解を受け取った厚労省幹部は「持ち帰って検討する」としている。」



東京新聞の記事が最も詳しく掲載していますが、「正式見解」のポイントは、次の3点です。

「<1>修復腎移植の容認:病気腎移植は「第三者委員会によるドナーの疾患の客観的な評価や、適切なインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の確認等を要件とすれば認められる

<2>修復腎移植については、保険診療を認めていくべきである

<3>修復腎移植を実施した病院や万波誠医師に対する、保険医療機関指定・保険医登録の取り消しは不要である」





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2008/05/12 [Mon] 19:23:53 » E d i t
臓器移植法が施行されてから、10年半を経過しました。臓器移植法の施行3年をめどに見直す、と規定されているのですが、改正のための審議は進んでおらず、一度も改正されていません。


1.臓器移植法の改正案は、一度廃案になった後、2006年3月に国会に提出されました。現在、3案(ABC案)が提出されています。自民党の中山太郎党臓器移植調査会顧問らの「A案」は、家族の同意があれば年齢に関係なく脳死判定も臓器移植も可能にするというものであり、公明党の斉藤鉄夫政調会長の「B案」は、臓器提供できる年齢を15歳以上から12歳以上に引き下げるものです。その後、社民党の阿部知子衆院議員らが、脳死の定義を厳格化し、生体間移植の範囲を狭める「C案」を提出しています。

(1) こうして、改正案は提出されているのに、なぜ、法改正が先送りになってきたのでしょうか? 

  イ:東京新聞平成19年5月19日付夕刊4面「解説」(吉田薫記者)

臓器移植法の改正 死の定義、再び議論に

 長い間たなざらしになっていた臓器移植法の改正が、議員立法によってようやく動きだそうとしている。しかし、日程からみて今国会での成立は微妙だ。脳死移植に関する問題点と今後の見通しは―。 (中略)

 今後の審議では、「脳死を人の死としていいのか」というテーマが蒸し返されたり、「子供の脳死判定で虐待死を判別できるか」といった疑問が出てくると思われる。

 法改正が先送りになってきたのは、国会の日程のせいだけではない。死の定義という倫理的、宗教的なことにまで踏み込まなくてはならないのに、利益を受ける当事者の数は、政党や政治家の関心を呼ぶほどには多くない。」


  ロ:要するに、元々、衆院厚生労働委員会では、いつも重要法案の審議がなされておりそちらが優先されてしまっていたこと(昨年は、社会保険庁改革関連法案、最低賃金法改正案など)、与党は会期末まで約1ヶ月という日程上難しい段階に至ってから審議を進めるよう打診するなど、「国会の日程」上の問題があるのです。もちろん、与党だけで専門の小委設置を決めたり、委員会審議なしで本会議採決に持ち込むことも可能でしょうが、「生命にかかわる問題を強行採決した」ことになり、著しく不適当です。

さらには、「死の定義という倫理的、宗教的なことにまで踏み込まなくてはならない」という議員個人の生命観の問題にかかわるのです。ここまで遡るとなると、法改正の必要性があっても、そう簡単に改正することは難しいことになります。(後述する日経新聞は、A案、B案は与党提出の法案であるため、「民主党など野党は、改正法の審議に乗りにくかったのが実情」などとしてますが、根拠の乏しい下種の勘ぐりでしょう。日経新聞らしい態度とはいえますが。)

こういった2点を理由として、臓器移植法の改正が先送りになってきたわけです。



(2) ですが、最近になって、多少改正へ向けての活動が活発になっていることは確かです。次の記事にも、出ています。 

 「衆院の厚生労働省委員会に07年6月、臓器移植小委員会が設置され、12月に一度開かれた。厚労省関係者は「厚労委は年金問題や医師不足など課題山積で、臓器移植まで手が回らなかった。97年の法施行前に国を挙げて大論争になったことも、及び腰の原因」と指摘する。

 事態を打開しようと、臓器移植に関連する各学会は、患者・家族団体と一体化して議員への陳情を活発化。家族と議員の懇談も実現し、国会の審議に向けた動きがわずかだが出始めた。

 中山氏は「自分がまとめ役になって参院と調整中」と明言。4月11日には、中山氏と斉藤氏が法案について、一本化が可能かどうか調整を図った。公明党の坂口力元厚労相も、今国会での法案提出の動きがあることを示唆している。

 A案、B案は与党提出の法案で、社民党の阿部知子衆院議員らが提出したC案は、移植を制限する内容。このため、民主党など野党は、改正法の審議に乗りにくかったのが実情だ。しかし、ここに来て民主党の中からも「政治家の良心で最終的な判断を」(長島昭久衆院議員)との声が上がり、署名活動が始まった。舛添要一厚労相は「国民の命にかかわる問題はどういう国会状況であれ、審議を早めてほしい」との認識だ。」(日経新聞平成20年5月11日付朝刊29面「臓器移植法 提供者「15歳以上」の壁 小児患者家族の訴え切実 改正の動きもジワリ」)



ここで出ているA案とB案の一本化とは、「書面で生前に臓器提供の意思表示をしておく必要がある現行法の原則は変えないが、一定年齢以下の子どもの場合は、保護者の承諾のみで可能とする内容を想定している。」(毎日新聞 2008年4月12日 東京朝刊)ようです。確かにAB案一本化の動きもありました。

また、国会での審議が中断している改正臓器移植法案について、舛添厚生労働相は4月25日、閣議後の記者会見で「国民の命にかかわることは審議を速めてもらいたい」と述べ、提案から2年経ても進展しない現状の打開を求めてもいます(読売新聞2008年4月26日)。大臣が進まぬ審議に注文を付けるのは異例でもあります。

(なお、日経新聞5月11日付朝刊29面の記事の前半は、臓器移植を待っていて受けられずに死亡した患者の遺族が3月19日、厚生労働省内で臓器移植法改正を訴えた記者会見について触れています。その点については、東京新聞はすでに詳しく報道済みです(「臓器移植法施行10年半、審議たなざらし~患者の遺族“移植法改正案の早期審議を”と訴え(東京新聞3月20日付「こちら特報部」より)」(2008/03/21 [Fri] 23:08:57)参照)。また、この記事の後半は、海外渡航しての心臓移植は、費用が億単位となるなど様々な困難があることを強調しています。結局、日経新聞の記事は、小児の心臓移植のみについて触れた記事になっていますが、なぜ、臓器移植全般でないのか、意図が不明です。)。



(3) しかし、上で引用した日経新聞の記事は、すでに内容が古いものを再検討せずに掲載してしまったものであり、誤解を招くものであって妥当ではありません。今の状況は、次の記事内容こそが正確でしょう。

  イ:AB案の一本化は、すでに4月24日の段階で撤回されているのです。

改正2案の一本化を断念 臓器移植法で中山氏
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 臓器移植法の改正をめぐり、有志議員が国会に提出した2法案の一本化を目指していた中山太郎元外相(自民)が、24日までに一本化提案を撤回した。同氏の事務所が明らかにした。(中略)

 事務所によると、A案を強く支持する患者団体や与党議員が一本化に反対したほか、民主党内でも、A案での審議促進を求める署名を集める動きがあることから、中山氏が撤回したという。(共同)」(U.S. FrontLine(更新2008年04月24日 13:58米国東部時間)


一本化の内容にもよるとは思うのですが、A案を制限する法案になることは確かです。A案を支持する立場であれば、一本化に反対するのも自然な流れでしょう。

一本化は、B案を提出した与党である公明党への配慮としか言いようがないのですが、自民党が相変わらずくだらない調整をしていることがよく分かる出来事です。


  ロ:北海道新聞(05/11 00:32)

臓器移植法改正案 今国会も成立困難 与野党の3案に溝(05/11 00:32)

 臓器提供者(ドナー)の年齢基準を十五歳以上から引き下げることを柱とする臓器移植法改正案は今国会も成立困難となった。与党議員から提出された二つの法案を一本化する調整が難航しており、野党議員提出の改正案との隔たりも大きい。患者の家族や医療現場からは「子供の命を救ってほしい」との切実な声が寄せられるが、合意の機運は生まれていない。

 衆院厚生労働委員会では二〇〇六年提出の与党の二案がすでに審議入りしており、昨年十二月提出の野党案も九日に審議入りした。

 しかし三案の溝は深い。与党の二案のうち、臓器移植により積極的なA案は脳死を人の死ととらえ、年齢制限を撤廃して家族の承諾のみで提供は可能としている。B案は提供は本人の意思表示と家族の承諾があった場合に限るとする現行法を基にドナーの年齢基準を十二歳以上に引き下げる内容。

 与党内では四月中旬、一定年齢未満の子供は家族の承諾だけで臓器提供可能とする方向で一本化の調整に入る動きがあったが、A案支持の議員が「移植が必要な患者を救えない」などと反発し、着地点は見えていない。

 また、野党議員提出のC案は子供の臓器移植には慎重な立場で、現行法で定める脳死の判定基準もより厳密に定義するなど与党案とは折り合わない内容。

 一九九七年十月施行の臓器移植法には施行後三年をめどとした見直し規定があるが、十年を経過しても、なお脳死に関して国会のコンセンサスは得られていない。与党内では党議拘束を外して採決する考えも浮上しているが混乱は必至のため、「三案とも成立は難しい」(与党国対幹部)情勢だ。」


3案が提出されているといっても、小児での臓器移植を含めた臓器移植拡大を目指すAB案に対して、C案は、慎重な臓器移植、というと聞こえがいいですが、さらなる臓器移植の縮小と、小児における臓器移植の拡大をより縮小することを求めているのですから、調整がつくはずがありません。また、A案は「本人同意の原則」の例外を設けるものですが、C案の提出者の阿部議員は、「本人同意の原則を崩してはならない」とするのですから、AとC案は相容れないといえます。

AB案とC案は、臓器移植の拡大を求めるのか、それとも臓器移植にさらなる慎重さを求めるのか、という臓器移植に対する根本的な思想が違うのですから、C案が提出されたため、審議はますます進まないことになっているのです。


「臓器提供者(ドナー)の年齢基準を十五歳以上から引き下げることを柱とする臓器移植法改正案は今国会も成立困難となった。」(北海道新聞)


毎度のことではありますが、やはり今国会も成立困難となったようです。しかし、患者家族は、「一日でも早く審議進めて」と訴えています。東京新聞の記事を紹介しておきます。



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2008/05/10 [Sat] 17:01:26 » E d i t
東京新聞平成20年5月10日付朝刊1面トップに、「病気腎移植容認提言へ」「万波医師処分は不要」という大見出しでの記事が出ていたので、かなり驚きました。これは、「修復腎移植を考える超党派の会」による提言ですが、東京(中日)新聞のみでの報道のようですし、「修復腎移植を考える超党派の会」が5月13日に正式見解をまとめるとのことですから、早速、紹介したいと思います。


1.報道記事を。

(1) 東京新聞平成20年5月10日付朝刊1面(11版S)

病気腎移植容認提言へ 超党派議連が方針  万波医師処分は不要
2008年5月10日 朝刊

 厚生労働省が「原則禁止」とした病気腎移植について、与野党国会議員約八十人からなる「修復(病気)腎移植を考える超党派の会」(会長・杉浦正健元法相)が、正反対に病気腎移植容認の見解をまとめる方針であることが九日、分かった。議員立法も視野に、十三日に正式見解をまとめるが、自公民各党の厚労部会長ら医療行政に通じた議員たちによる反対論に、厚労省は苦慮しそうだ。 

 厚労省や愛媛社会保険事務局は、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らが手がけた病気腎移植について、保険請求が不当だったとして、同病院などの保険医療機関指定取り消しと、万波医師らの保険医登録取り消しを検討している。

 しかし、「見解案」によると、「超党派の会」は、症例の一部に「腎摘出の適応が適切だったか疑問がある」としつつも、臓器不足を考慮すると、病気腎移植は「第三者委員会によるドナーの疾患の客観的な評価や、適切なインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の確認等を要件とすれば認められると考えられる」と判断。

 さらに、病気腎移植は、既存療法の組み合わせであり、臨床実施例の知見が蓄積されていると指摘。高度医療や先進医療の枠組みで、「保険診療を認めていくべきだ」とした。

 その上で、病気腎移植の中には、診療報酬請求を社会保険診療報酬支払基金で審査して適用した例もあると指摘。万波医師や病院を処分する「理由は認められるとはいえない」と、処分は不要との考えを示した。」(*見出しは、紙面のものに変更しました。)




(2) 東京新聞平成20年5月10日付朝刊3面(11版S)

病気腎移植 認めぬ学会、厚労省  超党派議連13日に正式見解

 宇和島徳洲会病院の万波誠医師らが行った病気腎移植は、昨年3月、日本移植学会など関連学会が、医学的に問題があり、インフォームドコンセントなど手続き上も問題だと指摘し、「現時点では医学的に妥当性がない」との統一見解を発表。これを受け、同7月、厚生労働省が「臓器移植法運用指針」改正の中で、臨床研究以外での病気腎移植は「原則禁止」とした。

 日本移植学会などは、「修復(病気)腎移植を考える超党派の会」の意見聴取でも、「治療上摘出の必要のない腎臓を移植している」などとし、あらためて妥当性を否定。

 しかし、超党派の会は万波医師や海外で病気腎移植をしている医師の意見聴取も行い、万波医師は「捨てるなら、と利用した。問題なかったと思っている」と発言。病気腎移植を第3の道として認めてほしい考えを強調した。

 社会保険庁(厚労省の外局)の地方組織で、宇和島徳洲会病院や万波医師らの処分を検討している愛媛社会保険事務局は、19日に聴聞会を開く予定だったが、直前の13日に超党派の会の見解が出ることで、延期の可能性も出てくる。

 超党派の会は、厚労省や学会からも見解について意見を聞く予定だが、病気腎移植に「NO」を出した厚労省・学会と、「YES」を志向する超党派議連。患者たちは、早急かつ真剣な議論を望んでいる。 (特別報道部・片山夏子)」




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2008/05/08 [Thu] 21:59:39 » E d i t
憲法9条の「戦争放棄」の理念を世界に発信しようというイベント「9条世界会議」(主催・同会議日本実行委)が、開催されました。9条世界会議は、千葉県の幕張メッセで4日~6日に開かれ(5月3日夜はレセプション)、期間中に大阪や仙台、広島でも大規模な集会がありました。

5日は「世界の紛争と非暴力」「アジアの中の9条」などの分科会を開催し、最終日の6日、武力によらない平和実現を呼び掛けた世界宣言を採択し、閉幕しました。


1.まず、初日である5月4日についての報道記事を。

初日は、北アイルランド問題の平和的解決に取り組み、1976年にノーベル平和賞を受賞したマイリード・マグワイア氏らの基調講演が行われました。そして、夜には、趣旨に賛同する加藤登紀子さんやUA(ウーア)さんらのコンサートも行われました。

 「基調講演した英国北アイルランドの平和運動家で、1976年にノーベル平和賞を受賞したメイリアド・マクガイアさんは「9条は60年間にわたって世界の人々に希望を与え続けた」と評価。「北アイルランド紛争で、私たちは武力なしで平和をつくることが可能だと実践した」と非暴力の重要性を説いた。

 一方で「9条をないがしろにすることは、広島、長崎の被爆者への侮辱でもある」と憲法改正の動きを批判した。(共同通信)」(東京新聞2008年5月4日 20時20分:「9条は希望与え続けた」 平和憲法を考える世界会議



(1) 朝日新聞平成20年5月5日付朝刊千葉版

9条世界会議
2008年05月05日

 「世界は、9条をえらび始めた」を合言葉に国内外から平和運動に取り組む人々が集まった。4日、千葉市の幕張メッセで始まった「9条世界会議」。定員を超える約1万5千人が訪れ、3千人が会場からあふれた。「予想以上。長期化するイラク戦争など世界情勢の変化で憲法9条への関心が高まっているのでは」という。5日は午前10時から9条をどう生かすかを分科会で話し合う。

 第一部のテーマは「世界の希望としての9条」。北アイルランド紛争の平和的解決に尽くしたノーベル平和賞受賞者マイレッド・マグワイアさんと、米国・ハーグ平和アピール代表のコーラ・ワイスさんが基調講演した。ワイスさんは「教育や医療費などに使われるべき予算が、軍事費に向けられないようにするために9条は役立つ」と訴えた。

 マグワイアさんは記者会見で、「暴力」を公共の場所での喫煙に例え、キャンペーン(運動)でなくせる事例として紹介、「暴力は健康に悪い」ということを広めるため、「例えば、非暴力や非戦を呼びかける広告をバスや電車の車中に下げてみては」などと提案。「市民一人ひとりができる等身大の活動をやっていきましょう」と呼びかけた。ブース会場では、各地の市民団体121グループが写真やキルトなど憲法9条を考える展示を披露した。

 5日の分科会のテーマは「世界の紛争と非暴力」「アジアのなかの9条」「平和を創る女性パワー」「環境と平和をつなぐ」「核時代と9条」「9条の危機と未来」。」



(2) 東京新聞平成20年5月5日付朝刊23面

『9条で命守られた』 9条世界会議 高遠さん語る 千葉で開幕
2008年5月5日 朝刊

 世界各地で紛争が絶えない中、戦争放棄をうたった日本国憲法九条の意義を再確認する「9条世界会議」が四日、千葉市の幕張メッセで始まり、海外の参加者も含め約一万五千人(主催者発表)が会場を埋めた。

 イラク支援ボランティアの高遠菜穂子さんは、武装勢力に拘束された経験を基に発言。「(自衛隊のイラク派遣で)日本が九条を突破したことで人質にされた。殺されなかったのは、私たちがイラクで丸腰で対話を続けてきたと分かったから。九条(の精神)を実践し、九条で命を守られた」と振り返った。

 作家の雨宮処凛さんは「貧困で生存権を脅かされた人が『希望は戦争』と言う状況は、貧困層が戦争に駆り出される米国と近いものがある。軍事費を削って人が生きるために使うべきだ」と話した。

 「人類の敵は貧困、病気、無学、人権侵害、テロ、温暖化。戦争ではなくせない。むしろひどくしている」と訴えたのは、米国の平和運動家コーラ・ワイスさん。元日弁連会長の土屋公献さんは「立派な軍隊を持ちつつ九条を世界に広めようとはおこがましいが、矛盾を打破して堂々と呼び掛けるべきだ」。

 連合国軍総司令部(GHQ)で憲法草案を執筆した米国のベアテ・シロタ・ゴードンさんは「押し付けというが、自分より良いものは押し付けない。日本の憲法は米国より素晴らしい」と日本語で演説し、拍手を浴びた。

 会議は作家井上ひさしさん、国際政治学者の武者小路公秀さん、歌手の加藤登紀子さんら各界の著名人が呼び掛け人となって催した。五日は分科会、六日は総会を開く。」



(3) 朝日新聞平成20年5月5日付朝刊

「9条世界会議」開幕 市民続々、約3千人会場に入れず
2008年05月04日19時13分

 作家の井上ひさしさんらが呼びかけ人となった「9条世界会議」が4日、千葉市の幕張メッセで始まった。憲法9条の意義や核兵器撤廃などについて議論する。9条を守ろうという趣旨に賛同する市民らが主催者の予想を超えて各地から集まり、主催者によると、3千人以上が会場に入りきれない事態になった。

 この日は、9条にエールを送る海外ゲストの発言が相次いだ。76年にノーベル平和賞を受賞した北アイルランドのマイレッド・マグワイアさんは「9条を放棄しようとする動きが日本にあることを憂慮している」と述べた。

 約1万2千人が入れる会場からあふれた人たちは近くの広場で、講演を終えたアメリカの平和活動家コーラ・ワイスさんらを囲んで、集会を開いた。バス2台で福島県郡山市から来た星光行さん(57)は「会場に入れなかったのは残念だが、ゴールデンウイークのさなかに9条のためにこれだけ人が集まったことに感動した」と話していた。

 会議は5日に分科会などを開き、6日に閉会する。」



まさか「9条世界会議」の初日に、海外の参加者も含め約1万5千人(主催者発表)も参加するとは思いませんでした。しかも、そのうち「3千人以上が会場に入りきれない事態」になったのですから、参加者も予想外だったようです。

改憲の旗振り役をつとめてきた読売新聞の調査では今年、93年以降の構図が逆転し、改憲反対が賛成を上回り、朝日新聞の調査でも、9条については改正賛成が23%に対して、反対は3倍近い66%でした(朝日新聞)。このように、改憲を行う意識が減退し、むしろ現行9条の「戦争放棄」の理念を維持しようという意識が増しています。 「9条世界会議」が大規模集会になったことは、この世論調査が正しいものであったことを物語っています。



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2008/05/06 [Tue] 17:41:10 » E d i t
修復腎移植(病気腎移植)の理解と推進を求めるシンポジウム「レストア腎移植を考える会」が4月26日、松山市山越町の愛媛県女性総合センターで開かれました。この講演会では、講演だけでなく、兵庫県加古川市で音楽教室を主宰している作曲家・編曲家・ジャズピアニストの有末よしひろ(佳弘)さんと、講演も行った堤寛・藤田保健衛生大学教授による演奏も行われました。


1.まず、報道記事を幾つか。

(1) 毎日新聞 2008年4月27日 地方版(愛媛)

病気腎移植:理解訴え講演会 患者ら150人参加 /愛媛

 宇和島徳洲会病院の万波誠医師(67)らによる病気腎移植の理解と推進を訴える講演会が26日、松山市山越町の県女性総合センターであり、患者ら約150人が参加した。

 同病院調査委の外部専門委員も務めた堤寛・藤田保健衛生大教授(病理学)は、各病院の調査委が出した「4センチ以下の腎がんは部分切除すべき」などの結論について、「実際には8割以上が全摘している」などと批判。「都会で考えられないぐらいに医師と患者の関係は密だという医療現場を無視している」とした。

 堤教授は、ネフローゼ症候群の患者4人から提供された腎臓の移植を受けた患者8人のうち、4人の腎臓が機能している一方で、2人が悪性リンパ腫と骨髄異形成症候群の血液疾患を発症し死亡したことも明らかにした。【加藤小夜】

毎日新聞 2008年4月27日 地方版」



(2) 産経新聞(2008.4.27 02:31・愛媛版)

病腎移植の推進を訴えるシンポ 松山で開催
2008.4.27 02:31

 厚生労働省や移植関係学会が原則禁止する病腎移植について、“第3の道”として推進を求めるシンポジウム「レストア腎移植を考える会」が26日、松山市山越町の愛媛県女性総合センターで開かれ、専門家らが「医療費の削減のためにも病腎移植を進めるべきだ」と訴えた。

 病腎移植推進への支援を呼びかける「移植への理解を求める会」(向田陽二)などが主催。藤田保健衛生大の堤寛教授と広島県医師会の高杉敬久・副会長が、病変部位を切除した「レストア腎」(修復腎)による移植の有効性や必要性について講演した。

 堤教授は、宇和島徳洲会病院(同県宇和島市)での病腎移植を外部委員として検証した経験を踏まえ、患者の満足度の高さや移植を受ける患者の心理的な負担の少なさを指摘。「移植までの待機時間の短縮にもつながる」と主張した。

 また、国内では腎がん患者から年間に約2000個の腎臓が全摘出されている-との試算を提示。そのうち1000個を移植に利用した場合、「10年間で1538億円の医療費を削減できる」とし、「第3の道として有用性が高い」との見解を示した。

 一方、高杉副会長は、臓器移植法の施行後に死体腎移植の数が減ったことをデータで示したうえで、「自国での脳死移植が少ない中で、海外への渡航移植が増えている」と指摘。「医療は常に挑戦。現在の常識で未来の可能性をつぶしてはいけない」と話し、病腎移植のもつ可能性を強調した。」



(3) 愛媛新聞2008年04月27日(日)付「特集宇和島 腎移植」

修復腎移植の有効性を訴え 松山で講演会

 病気腎移植に理解を求める講演会「レストア腎(修復腎)移植を考える会」が二十六日、松山市山越町の県女性総合センターであり、県外医師二人が同移植の有効性を訴えた。厚生労働省が原則禁止とした病気腎移植を支持する「移植への理解を求める会」(向田陽二代表、約千三百人)と「えひめ移植者の会」(野村正良会長、約百人)が主催。両会会員ら百数十人が参加した。

 同移植問題で、宇和島徳洲会病院(宇和島市)の専門委員を務めた藤田保健衛生大医学部(愛知県豊明市)の堤寛教授は「レストア腎移植と腎不全治療」と題し講演。病気、死体、生体の各腎移植の生着率などを示し、慢性透析患者に有用と強調。一方で「論文を発表し、世の中を納得させる活動をしていなかったのが残念」と述べた。

 広島県医師会の高杉敬久副会長は「レストア腎移植に思う」と題し、「患者の十分な同意があれば、捨てられる臓器を再利用できるのではないか」と訴えた。」




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2008/05/05 [Mon] 01:15:30 » E d i t
食品偽装表示問題で経営が行き詰まり、民事再生手続き中の高級料亭船場吉兆(大阪市)が、休業前の昨年11月ごろまで、長年、同市中央区の本店で客が食べ残した料理を別の客に提供していたことが5月2日、分かりました。端的に言えば、船場吉兆は、客に告げることなく、正規の料金で(お昼のお弁当(テーブル席) 3675円~、懐石コース(テーブル席) 12600円~、懐石コース料理(座敷) 昼26250円~・夜36750円~(サービス料別途10%) )、客の残飯を別の客に提供した、残飯リサイクルをしたのです。


▼船場吉兆の食品偽装問題 2007年10月、福岡市の店舗でプリンなどの消費・賞味期限のラベルを付け替えていたことが発覚。その後、農林水産省などの調査で本店で販売した牛肉や鶏肉を使った商品も原材料表示を偽装していたことが判明した。船場吉兆は全4店舗の休業に追い込まれ、資金繰りが悪化。08年1月に民事再生法の適用を申請した。湯木正徳前社長の妻、佐知子氏(71)が社長に就任し、本店と博多店(福岡市)の営業を再開している。」(日経新聞平成20年5月3日付朝刊35面)


食品偽装問題は、売れなかった商品の「使い回し」ですが、おなじ使い回しでも「残飯」を使い回すとなれば、不衛生の一言であり、その重大さは段違いに異なります。


1.報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年5月3日付朝刊31面

船場吉兆、食べ残し料理を別の客に
2008年05月03日

 牛肉の産地偽装や総菜の不正表示が相次いで発覚した高級料亭「船場吉兆」(大阪市中央区)=民事再生手続き中=は2日、昨年11月の営業休止前まで、本店の料亭で客の食べ残した食事を別の客に再び出していたことを明らかにした。湯木正徳前社長(74)の指示で、はしをつけていない料理などを「もったいない」として使い回していたという。大阪市保健所は同日、本店に立ち入り調査し、再発防止を指導した。

 市保健所によると、使い回していた料理は、アユの塩焼き▽稚鮎(ちあゆ)の素揚げ▽ゴボウをウナギで巻いた「八幡巻き」▽エビと魚のすり身を蒸した「えびきす」▽サーモンの焼き物▽刺し身の添え物――など少なくとも6種類。

 料理長の山中啓司取締役や代理人弁護士らによると、客が食べた形跡のない料理を置いておき、食材が足りなくなったときなどに再び加熱するなどして別の客に提供していた。こうした使い回しは2~3週間に1回の頻度で繰り返されており、調理場のほぼ全員が知っていたという。6~7年前に正徳前社長から「もったいないから明らかに使えそうなのは使え」と指示を受けたのが始まりで、今年1月の営業再開後はしていないという。

 同社は昨年12月、偽装や不正表示問題を受けて農林水産省に改善報告書などを提出したが、使い回しについては触れていなかった。同日夜、店舗前で報道陣の質問に答えた山中取締役は「お客様に不快な思いをさせ、深く深くおわびします」と謝罪した。

 厚生労働省によると、食品衛生法は、腐敗などで健康を損なう恐れがある食品の販売を禁じているが、食べ残しの使い回しを禁止する規定はない。同省監視安全課の担当者は「同法では、調理側が料理を使い回す事態をそもそも想定していないため、違法行為ではないが、不適切だ」と話している。

 船場吉兆をめぐっては、大阪府警が、同社が九州産牛肉を「但馬牛」と偽ってみそ漬けに加工して販売していたとして、正徳前社長と長男の喜久郎前取締役(45)を不正競争防止法違反容疑で書類送検する方針を固めている。

    ◇

 使い回しはどのように行われたのか――。山中取締役は「(客が)一切手をつけていなかった時に限って再び加熱調理をした。料理人が味見をし、もう一度出すと判断することもあった」と説明した。

 こうした実態については「調理場ではほとんど全員が知っていた」といい、「やっちゃいけないことをやっていたという意識があった」と当時を振り返った。正徳前社長の指示で6~7年前から繰り返すようになったことを認め、「前社長に(やめるよう)忠言をしたことはあったが、どこまで聞き入れてもらったかは分からない」と額の汗をぬぐった。

 前社長の妻で女将(おかみ)の佐知子社長は、この日は報道陣の前に姿を見せなかった。社長は使い回しを知っていたのかとの問いに、山中取締役は「分かりかねる」と答えた。」



(2) 日経新聞平成20年5月3日付朝刊35面

高級料亭「背信」再び

 偽装表示で揺れた船場吉兆で再び食の安全を裏切る行為が発覚した。客が食べ残した料理の使い回しを繰り返し、一連の偽装が明らかになった昨秋以降も自ら事実を明かすことはなかった。

 「きれいなものはもったいない。再利用できる」。使い回しは湯木正徳前社長の指示で6、7年前から始まった。「調理場のほとんど全員が知っていたが、(正徳前社長の)指示を断ることはできなかった」と料理長の山中啓司取締役。トップの意向に逆らえない社内事情をうかがわせる。

 船場吉兆は農林水産省に提出した改善報告書などで、料理の使い回しについて何ら公表していない。同取締役は「やってはいけないことなので恥ずかしく、出せなかった……」と釈明した。

 高級料亭で脈々と続いた背信行為に専門家や客からは批判の声も強い。男性客は「まさか使い回しまで。営業再開後はしていないと言われても信じられない」と驚く。

 食品の流通に詳しい宮城大大学院の大泉一貫教授(食品流通事業論)は「食の安全を守るため、各省庁などが制度作りを進めているが、現場のモラルがこんなに低くては、行政のチェックも行き届かない」と話す。」



使い回しの実態については「調理場ではほとんど全員が知っていた」というのは、隠して調理することはできないのですから、当然といえば当然なのでしょうが、やはり驚きです。



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2008/05/03 [Sat] 23:59:19 » E d i t
今日、5月3日は憲法記念日です。日本国憲法が施行されてから、平成20年で61年を迎えました。


1.毎日新聞平成20年5月3日付朝刊1面

憲法記念日:きょう、施行61年

 日本国憲法は3日、施行61年を迎えた。憲法改正の手続きを定めた国民投票法が昨年5月14日に成立、同18日に公布されてから初の憲法記念日。しかし、衆参両院で与野党勢力が逆転した「ねじれ国会」の中、政界の憲法論議の熱はすっかり冷めた。成田憲彦・駿河台大学長(日本政治論)は「これまでの論議をリセットし、やり直さなければならないことを確認する記念日」と位置づける。

 「ねじれ国会」に加え、憲法改正を重点課題に掲げた安倍政権から、慎重姿勢を示す福田政権に代わったことも影響している。

 憲法改正原案の審査や提出を行う衆参両院憲法審査会は昨夏に設置されたが、委員定数などを決める規程も定まらない「開店休業」状態だ。与野党は「今は改憲論議をするタイミングではない」との認識で一致している。

 こうした政界を尻目に靖国神社を舞台にした映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止問題など、日本社会に「表現の自由」の危うさを示す現象が相次ぐ中で迎える記念日ともなった。【大貫智子】

毎日新聞 2008年5月3日 東京朝刊」



昨年の憲法記念日では、国民投票法案を意識してか、憲法改正を巡る議論が多かったのですが、今年は一変してしまいました。

日本国憲法―現実を変える手段として

 たった1年での、この変わりようはどうだろう。61回目の誕生日を迎えた日本国憲法をめぐる景色である。

 昨年の憲法記念日のころを思い出してみる。安倍首相は、夏の参院選に向けて憲法改正を争点に掲げ、そのための手続き法である国民投票法を成立させた。集団的自衛権の政府解釈を見直す方向で、諮問機関も発足させた。

 ところがいま、そうした前のめりとでも言うべき改憲気分は、すっかり鳴りを潜めている。福田首相は安倍時代の改憲路線とは一線を画し、集団的自衛権の見直しも棚上げにした。

 世論も冷えている。改憲の旗振り役をつとめてきた読売新聞の調査では今年、93年以降の構図が逆転し、改憲反対が賛成を上回った。朝日新聞の調査でも、9条については改正賛成が23%に対して、反対は3倍近い66%だ。

 90年代から政治やメディアが主導する形で改憲論が盛り上がった。だが、そもそも政治が取り組むべき課題を世論調査で聞くと、景気や年金など暮らしに直結する問題が上位に並び、改憲の優先順位は高くはなかった。イラクでの米国の失敗なども背景に、政治の熱が冷めれば、自然と関心も下がるということなのだろう。」(朝日新聞平成20年5月3日付「社説」)



昨年の参院選において自民党が大敗したために、憲法改正は全く不可能になったことから、憲法改正論議がしぼんでしまったことは確かです。「福田首相は安倍時代の改憲路線とは一線を画し、集団的自衛権の見直しも棚上げにした」ことも、改正論議がしぼんだ理由の1つでしょう。

しかし、国民の間で憲法改正論議をする気がなくなったのは、安倍前首相が突如辞任するという、「あきれた政権放り出し」があったからです。安倍氏は、あまりにもひ弱で脆弱であり、統治能力がない人物でしたが、こんな人物が首相であったという「怖さ」こそが原因です。

こんな首相としての資質を全く欠いていた人物が、そしてそんな人物を首相に押し上げた自民党がいくら憲法改正を主張したところで、誰も耳を傾けるはずがありません(「安倍首相辞任~今、辞めるのは無責任すぎるが、そこまで病状悪化なのか……。」(2007/09/13 [Thu] 21:04:30)参照)。

しかし、今年ほど、憲法が掲げる理想が失われていると感じた年はないのではないでしょうか。

今の国民には、統治能力のない安倍氏を、愚かにも首相に担ぎ上げた改憲派議員(保守論壇)や読売新聞(日経新聞も同様)が行っている「憲法改正ごっこ」に付き合う余裕はないのです。憲法記念日の3日、非正規雇用で働く人たちが東京で集会を開き、低い賃金や突然の解雇によって、憲法が保障する「生存権」が脅かされていると訴えているくらいなのですから。

各新聞社は憲法記念日にちなんだ社説を紹介していますが、ここでは東京新聞(中日新聞)の社説を紹介しておきます。



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2008/05/02 [Fri] 05:23:47 » E d i t
衆院山口2区補欠選挙は4月27日、投開票され、民主党前職の平岡秀夫氏(54)=社民党推薦=が自民党新人で元国土交通審議官の山本繁太郎氏(59)=公明党推薦=を約2万2000票差という大差で破り、4回目の当選を果たしました。(開票直後に当確が出るほどの大差でした)

この与党の敗因は、投票率の高さと、後期高齢者医療制度であると言われています。


1.東京新聞平成20年4月28日付朝刊1面

民主、自民に大勝 衆院山口2区補選 医療、道路 追い風
2008年4月28日 朝刊

 福田政権発足後初の国政選挙となった衆院山口2区補欠選挙は二十七日投開票が行われ、民主党の前衆院議員で社民党推薦の平岡秀夫氏(54)が、二万一千票余りの大差をつけ自民党新人で公明党推薦の元内閣審議官山本繁太郎氏(59)を破り、四回目の当選を決めた。民主党との一騎打ちに敗れた福田康夫首相(自民党総裁)は、次期衆院選に向け求心力の低下は必至。 

 一方、民主党は、与野党逆転を果たした昨夏の参院選に続き「民意」が示されたとして「ねじれ国会」の主導権確保を図る。選挙戦で自民党は地方経済活性化を軸に主張を展開。民主党は暫定税率の復活阻止に加え、新医療制度廃止を訴えた。こうした政策をめぐる福田政権への不信感が民主党の勝因とみられる。

 投票率は69・00%で、参院選と同日実施だった昨年七月の衆院熊本3区補選を除き、単独で実施した補選の投票率としては二〇〇〇年の統一補選方式導入以降で最高。〇五年の前回衆院選と比べると3・45ポイント下がった。

 岩国市長に就任した自民党の福田良彦前衆院議員の辞職に伴う補選。前回衆院選で平岡氏は福田氏に敗れ、比例代表中国ブロックで復活当選していた。比例復活組が補選で小選挙区へくら替え当選したのは、現行の選挙制度では初めて。

    ◇

 衆院山口2区補選の結果を受けた衆院の党派別勢力分野は次の通り。(無所属には正副議長を含む)

 自民党三〇四▽民主党・無所属クラブ一一四▽公明党三一▽共産党九▽社民党・市民連合七▽国民新党・そうぞう・無所属の会六▽無所属九」


こうして、民意はガソリン税(揮発油税など)の暫定税率復活や後期高齢者医療制度に反対していたからこそ、民主党議員の圧勝となったのです。

しかし、ガソリン税(揮発油税など)の暫定税率復活を含む改正租税特別措置法は4月30日夕の衆院本会議で、与党の3分の2以上の賛成で再可決、成立しました。民主、社民、国民新の野党三党は再可決に抗議して欠席し、自民、公明の与党議員は全員賛成しました。

そして、政府は成立直後に臨時閣議を開き、5月1日に施行する政令を決定し、ガソリン1リットル当たり25・1円の暫定税率は1カ月ぶりに復活し、給油所によっては5月1日未明、小売価格が値上がりしました。要するに、福田政権は、衆院山口2区補欠選挙での民意を無視したのです。




2.では、自民党政権は後期高齢者医療制度を廃止する気はあるのでしょうか?

「年金天引きは便利」 新医療制度で町村氏

 町村信孝官房長官は1日午前の記者会見で、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)で批判が強い年金からの保険料天引きに関し「慣れてくれば便利な制度だ。銀行送金などの手間を省いている」と述べ、見直しの必要はないとの認識を示した。

 同時に「年金制度の問題を背景にした反発があったのだろう。年金の信頼を取り戻せば天引きは定着する制度だと思う」と強調した。

2008/05/01 12:24 【共同通信】


町村官房長官は廃止どころか、見直す気もないことを明言しています。しかも、多額の年金天引きや世帯での保険料の増加など、ほとんどの国民が反発を感じているのに、町村官房長官は、「年金天引きは便利」などと能天気なことを言ってのけるのです。

町村官房長官は、常日頃、国民が反発するような発言を繰り返していますが、これもまた心底から腹が立ってくる発言です。つくづく自民党は腐り切っていると感じます。

自民党や公明党の議員は国民の危機感をまるで分かっていないようですが、後期高齢者医療制度について、国民の多くが抱いている意識を巧みに表現したエッセイを2つ紹介しておきます。


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2008/05/01 [Thu] 22:50:10 » E d i t
1957年7月、米軍の旧立川基地の拡張計画に反対して基地内民有地の測量に抗議して基地内に立ち入ったとして起訴された「砂川事件」をめぐる真相が明らかになりました。

その「砂川事件」につき、1959年3月に出された「米軍駐留は憲法違反」との東京地裁判決(伊達判決)に衝撃を受けたマッカーサー駐日米大使が、同判決の破棄を狙って藤山愛一郎外相に最高裁への「跳躍上告」を促す外交圧力をかけたり、最高裁長官と密談するなど露骨な内政干渉を行っていたことが4月29日、機密指定を解除された米公文書から分かりました。


1.まずは「砂川事件」の事案と東京地裁・最高裁判決を簡単に紹介しておきます。
 

【砂川事件と伊達判決】 1957年7月8日、東京調達局が東京都砂川町(現・立川市)にある米軍立川基地拡張のため測量を始めた際、拡張に反対するデモ隊の一部が立ち入り禁止の柵を壊して基地内に立ち入ったとして、刑事特別法違反の罪でデモ隊のうち7人が起訴された事件。東京地裁(伊達秋雄裁判長)は59年3月30日、駐留米軍を憲法9条違反の「戦力の保持」に当たるとして無罪判決を言い渡した。検察側は最高裁に跳躍上告。最高裁は同年12月16日、「憲法の平和主義は無防備、無抵抗を定めたものではなく、他国による安全保障も禁じていない。安保条約はわが国の存立にかかわる高度の政治性を有し、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査の対象外」と1審判決(伊達判決)を破棄し、差し戻した。後に有罪確定。(共同)」(東京新聞平成20年4月30日付朝刊26面)



新聞での紹介では少ないので、もう少し詳しく説明しておきます(全体を見れば「砂川闘争」といった方が正確でしょう)。

 「1955年、国(特別調達庁)は米軍立川飛行場の拡張計画を内示したが、その収用対象地域を抱えた砂川町では町議会が全員一致で反対を決議するほどに住民の抵抗が生じ(基地を拡張すると、地域の農家の人はほとんど自宅も畑も失ってしまう)、全国の労組・学生・住民の支援を得た反対運動が発展した。しかし国は1957年7月8日、基地内民有地において、拡張のための測量を強行したため、1000名以上が飛行場周辺で集団抗議行動を展開した。そのさい、集団の一部が飛行場境界棚を引き抜き、その破壊箇所から約300名が境界内に数メートルの深さで約1時間にわたり立ち入った。当日は被逮捕者はいなかったが、2ヵ月後である9月22日になって23名が(旧)日米安保条約3条に基づく行政協定に伴う刑事特別法2条違反で逮捕され、10月2日に内7名が起訴された。

 立入禁止場所に正当な理由なく立ち入る行為は軽犯罪法1条32号で拘留又は科料に処せられるが、立入り先が米軍使用区域だと同じ行為が刑特法2条により1年以下の懲役等、より重く処罰されている。そこで、駐留米軍を特に厚く保護するというこの「差別的取扱」規定が違憲かどうかが問題となった。

 1審判決(東京地裁昭和34・3・30下刑集1巻3号776頁。いわゆる「伊達判決」)は、この「差別的取扱」が「もし合衆国軍隊の駐留がわが憲法の規定上許すべからざるものであるならば……憲法31条及び右憲法の規定に違反する結果となる」として、旧安保条約とそれに基づく米軍駐留の憲法判断に踏み込んだ。その判旨は、<1>安保条約によって日本と直接関係のない武力紛争に巻き込まれるおそれがあることから、駐留米軍は憲法9条2項前段にによって禁止されている「戦力」にあたるとして、9条に違反する、<2>違憲の駐留米軍を保護法益として、国民に軽犯罪法1条32号より重い刑罰を科す刑事特別法は、憲法31条に違反して無効であるとして、無罪を言い渡した。

 検察側の跳躍上告(刑事訴訟規則254条)を受けた最高裁(最大判昭和34・12・16刑集13巻13号3225頁)は、<1>憲法9条2項で保持を禁止されている「戦力」とは、わが国が主体となって指揮権・管理権を行使できる戦力をいい、駐留米軍はそれにあたらない、<2>日米安保条約が憲法の平和主義の原理に反しないかどうかについて、日米安保条約は高度の政治性を帯びた条約であるから、一見極めて明白に違憲無効と認められない限りは司法審査にはなじまず、安保条約が一見極めて明白に違憲とはいえない、と判示して、無罪とした原判決を破棄・差戻した。( <2>の論理は「一見明白」論つきの統治行為とみることもできるが、安保条約の合憲性という実体の問題とそれに対する司法審査の可否という訴訟上の問題とを混同しており、明確性を欠く。なお、この論理は、論理的には憲法優位説に立ち、かつ、条約に対する違憲審査を肯定しているものである。)

 差戻し後、7名は罰金2000円の有罪が確定した。しかし、米側は基地拡張を断念し、米軍に接収された農地の返還を求め、1956年に住民が国を訴えた「土地返還訴訟」により、滑走路を畑に戻して無条件返還するという和解が1976年に成立した。1977(昭和52)年11月、立川基地は日本に全面返還された。」(「憲法判例百選2」参照)


これを読むと、国が、地域住民の多数の反対を押し切って立川基地拡張を強行し始めたために、事件が発生したことが分かります。事件の発端からして、国が米政府のために従属的に行動しているのではないか、と推測できます。また、1958年の台湾海峡危機の際、米軍が出撃していましたから(解禁文書で、日本の基地から米軍が出撃していたことが判明)、また戦争なのかという意識もあったはずです。こういう背景があるからこそ、1審判決が違憲判決を出すことに繋がったのでしょう。



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