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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2008/04/29 [Tue] 17:29:52 » E d i t
外資系会社社員三橋祐輔さん殺害事件で、殺人と死体損壊などの罪に問われた妻歌織さんの判決が4月28日、東京地裁であり、河本雅也裁判長は被告の完全責任能力を認め、懲役15年(求刑懲役20年)を言い渡しました。


東京・夫バラバラ殺人:三橋被告に懲役15年 「責任能力ある」--東京地裁

 東京都渋谷区の会社員、三橋(みはし)祐輔さん(当時30歳)を殺害し切断した遺体を捨てたとして、殺人や死体損壊などの罪に問われた妻歌織被告(33)に対し、東京地裁は28日、「あまりに残酷で無残な犯行」として懲役15年(求刑・懲役20年)を言い渡した。公判では鑑定医2人がともに「事件当時は心神喪失状態だった」と報告していたが、判決は歌織被告の完全責任能力を認めた。

 河本雅也裁判長は、事件当時の歌織被告の精神状態について「意識障害を伴うもうろう状態や幻視、幻聴状態に陥り、適切な行動の抑制が困難な状態にあった」と、鑑定の信用性を認めた。その一方で(1)頭部を集中して攻撃するなど一定の運動能力があった(2)自らの行動や被害者の反応なども記憶し、意識の清明さを保っていた--などの理由から「精神の障害は責任能力に問題を生じさせる程度ではなかった」と結論付けた。

 そのうえで「生存を装うメールを送るなどの隠ぺい行為を繰り返し、遺族の気持ちを踏みにじった」と非難。しかし「夫から暴行を受け続けながら、夫は離婚の求めにも応じず、精神的にも追いつめられ、地獄のような夫婦生活を送っていた。同情の余地が相当ある」と述べた。

 判決によると、歌織被告は「夫から逃れたい。この生活を終わらせたい」などと考え、とっさに殺意を抱き、06年12月、自宅マンションで寝ていた祐輔さんの頭をワインボトルで殴って殺害。遺体をのこぎりで切断して、東京都新宿区の路上などに捨てた。【伊藤一郎】」(毎日新聞平成20年4月28日付夕刊1面


公判では2人の医師による鑑定によると、殺害時の歌織氏を「心神喪失」と診断していたため、責任能力の有無が最大の争点だったのですが、河本裁判長は鑑定結果について、「精神医学の専門家としての分析結果で、責任能力の判断は拘束されない」として、完全責任能力を認めるという驚きの結果を示しました。

この問題については、「責任能力の判断基準・方法について:最高裁平成20年4月25日判決は、「精神鑑定結果は、鑑定人の公正さや能力に問題があるなどの事情がない限り、十分に尊重すべき」との判断」(2008/04/28 [Mon] 17:10:23)で幾らか触れましたが、解説記事を紹介して、再び論じてみたいと思います。



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テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

裁判例 *  TB: 5  *  CM: 12  * top △ 
2008/04/28 [Mon] 17:10:23 » E d i t
犯行時、被告に善悪を判断する能力(責任能力)があったかどうかを調べる(正式な)精神鑑定で「心神喪失状態であり、責任能力なし」とされながら、裁判官が有罪としたのが妥当かどうかが問われた裁判の上告審判決が4月25日、最高裁第2小法廷でありました(読売新聞)。

 

 「争われていたのは、二〇〇三年六月、東京都北区で、被告の男(39)が、統合失調症による幻視や幻覚で「ばかにされた」と思い込み、塗装店の経営者=当時(62)=を殴って死亡させた事件。検察側の簡易鑑定では「心神耗弱」とされたが、刑事裁判の弁護側と検察側の正式鑑定で、いずれも「心神喪失」と診断された。(中略)

 一審判決は、鑑定結果を踏まえて心神喪失により無罪としたが、二審判決は、被告が正常に社会生活を送っていた部分を重視して心神耗弱により懲役三年の逆転有罪としていた。」(東京新聞平成20年4月26日付朝刊29面「『精神鑑定意見 尊重を』 傷害致死で最高裁 審理差し戻し」


最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は4月25日、「専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には,鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり,鑑定の前提条件に問題があったりするなど,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,その意見を十分に尊重して認定すべき」との判断を示しました。

その上で、今回のケースでは、「鑑定人は十分な資質を備え、診察方法も問題ない。両鑑定は基本的に高い信用性があった」と判断し(日経新聞4月26日付38面)、心神喪失という鑑定結果を採用せずに、心神耗弱だったとして懲役3年の実刑とした2審判決を破棄、審理を東京高裁に差し戻しました。

この最高裁の判断は、被告の責任能力の有無を判断するのは、あくまでも裁判所だとする従来の判例を踏襲した上でのものではあるとはいえ、明確な制約を加えるため「事実上の判例変更」(東京新聞)であり、今後の責任能力の判断の有無につき、重大な影響を与えるものであり、極めて重要です。

東京都渋谷区の自宅マンションで06年12月、夫(当時30)を殺害し、遺体を切断して遺棄したとして、殺人などの罪に問われた三橋歌織被告(33)に対し、東京地裁(河本雅也裁判長)は4月28日、公判では、検察側、弁護側双方の精神鑑定がいずれも「心神喪失」であったのに、なぜか責任能力を認めて懲役15年(求刑懲役20年)の判決を言い渡しています。この点についても少し触れたいと思います。



1.報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年4月26日付朝刊38面

「心神喪失」で有罪はダメ…「鑑定尊重を」最高裁初判断
2008年04月26日06時20分

 裁判で2度実施された精神鑑定の結果がいずれも刑事責任能力がない「心神喪失」だったのに、二審判決で「心神耗弱」で有罪とされた男性被告(39)の上告審で、最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は25日、「鑑定結果は信用でき、心神耗弱と認めるのは困難」として、二審判決を破棄し、さらに審理を尽くすため東京高裁に差し戻す判決を言い渡した。

 第二小法廷は判決の中で「専門家である精神科医の意見は、公正さや能力に疑いがあったり、鑑定の前提条件に問題があったりするなどの採用できない事情がない限り、十分に尊重するべきだ」とする初めての判断を示した。

 東京・渋谷のマンションで夫を殺害し、遺体をバラバラにして遺棄したとして殺人の罪などに問われている三橋歌織被告(33)の裁判でも、2人の医師による被告の精神鑑定の結果は、ともに「心神喪失」の意見だった。28日に東京地裁で判決が言い渡される予定で、判断が注目される。

 この日の裁判は、03年に東京都北区で、かつて勤務していた塗装店の経営者を殴って死なせたとして、男性が傷害致死罪に問われ、犯行当時、統合失調症による幻聴などにどの程度支配されていたかが争点となっていた。

 一審・東京地裁判決は、「心神喪失」とした鑑定結果に基づき無罪。しかし、二審は「犯行前後は合理的な行動をとっていた」として、鑑定結果を採用せず、「心神耗弱」で懲役3年としていた。

 この日の判決で第二小法廷は、被告の責任能力の有無を判断するのは、あくまでも裁判所だとする従来の判例を踏襲した上で、一審と二審で実施された精神鑑定の中身を検討。「鑑定人としての資質を十分備えており、結論を導く過程にも誤りはない。いずれも基本的に信用できる」と結論づけた。」



(2) 読売新聞平成20年4月26日付朝刊38面

責任能力「鑑定結果十分に尊重すべき」…最高裁が初判断

 犯行時、被告に善悪を判断する能力(責任能力)があったかどうかを調べる精神鑑定で「責任能力なし」とされながら、裁判官が有罪としたのが妥当かどうかが問われた裁判の上告審判決が25日、最高裁第2小法廷であった。

 古田佑紀裁判長は「鑑定医の公正さや能力に疑いがあるなど、特別な事情がなければ、鑑定結果を十分に尊重すべきだ」とする初判断を示し、被告の責任能力を認めて有罪とした2審・東京高裁判決を破棄、審理を差し戻した。

 上告していたのは、東京都内で2003年、昔の勤務先の経営者を殴って死なせたとして傷害致死罪に問われた塗装工の男性被告(39)。判決によると、被告は事件当時、経営者からバカにされるなどの幻覚や幻聴に襲われ、犯行に及んだ。

 1審・東京地裁は「心神喪失状態で、責任能力はなかった」とする鑑定結果を重視し、無罪とした。控訴審の精神鑑定でも同様の鑑定結果が出されたが、東京高裁は、被告が普通の社会生活を送っていたことや犯行後に自首したことなどを理由に、責任能力を認め、懲役3年としていた。

 この日の最高裁判決は、「責任能力の判断は裁判所に委ねられる」としながらも、「鑑定結果を採用できない合理的な事情がない以上、鑑定を十分に尊重すべきだ」と指摘。二つの鑑定結果に反する2審判決を違法とした。

 刑法は、責任能力のない心神喪失者の行為は罰せず、責任能力が低下した心神耗弱者については刑を軽減すると規定している。

(2008年4月25日23時51分 読売新聞)」



(3) 毎日新聞2008年4月26日東京朝刊

東京・北区の傷害致死:最高裁「精神鑑定、尊重を」 被告の責任能力で初判断

 ◇統合失調症被告

 統合失調症の被告の責任能力が争われた事件の上告審判決で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は25日、「精神医学者の鑑定は、公正さに疑いがあったり前提条件に問題があるなどの事情がない限り、十分に尊重すべきだ」との初判断を示した。そのうえで心神喪失と判断した精神鑑定を採用せずに被告を有罪とした2審・東京高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。

 判例では、無罪となる心神喪失や刑が減軽される心神耗弱に当たるかどうかは、精神鑑定のほかに生活状態や動機なども総合的に考慮して裁判所が判断。今回の判決は、判例を踏まえつつ、責任能力の判断にあたって精神鑑定結果を重視するよう求めたものだ。市民が参加する裁判員制度を見据え、裁判員が短期間で判断しやすい基準を示したといえる。

 この事件は、03年に東京都北区で元雇い主の男性を殴って死なせたとして塗装工(39)が傷害致死罪で起訴された。1、2審で計2回実施された精神鑑定はともに心神喪失と結論。1審は鑑定に基づき無罪としたが、2審は「犯行態様に異常はなく、当時の状況も詳細に記憶している」と鑑定結果を採用せず懲役3年を言い渡した。小法廷は「鑑定の信用性は高く、2審が挙げた事情では責任能力があったとはいえない」と指摘した。【北村和巳】

毎日新聞 2008年4月26日 東京朝刊」




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裁判例 *  TB: 2  *  CM: 45  * top △ 
2008/04/27 [Sun] 02:22:16 » E d i t
「同じ仏教徒として、チベットの宗教者に対する弾圧を憂慮している」などとして、聖火リレーの出発式会場を辞退した善光寺では4月26日午前8時15分から、在日チベット人約20人と、支援団体のメンバー、僧侶らが今年3月以降にチベット自治区・ラサなどで発生した暴動で亡くなった人への追悼法要を行いました。


チベット暴動の追悼法要=リレーと同時刻、善光寺で

 聖火リレーの出発地点となることを辞退した長野市の善光寺本堂で26日午前8時15分から、チベット暴動の犠牲者の追悼法要が開かれた。
 追悼法要は約20分間。善光寺の約10人を含む住職ら計約20人と多数のチベット人が参加し、チベット族か漢族かを問わず暴動で犠牲となった数十人の名前を読み上げた。
 法要は当初、同日午前の別の時間に行う予定だったが、「世界平和の実現を目指す聖火リレーの出発と同時刻にすることで、より強く弔いの思いをはせたい」(善光寺の若麻績敬史住職)として変更した。」(時事通信(2008/04/26-11:51)


このように善光寺は、聖火リレーの出発式会場の辞退、聖火リレーの出発と同時刻での法要という形で、「チベットの宗教者に対する弾圧」への抗議の意思を示したものといえます。


「式典の間、会場を囲むように、そろいの白いTシャツ姿の留学生100人以上が両腕でスクラムを組み、「リレーを守ろう」と何度も叫んだ。チベット問題を訴える人も、見に来た日本人も中に入れない。」(朝日新聞平成20年4月27日付朝刊1面)


他国においても中国人で埋め尽くす異様さ。沿道でも大きな中国国旗を振りかざして、沿道に日本人さえ寄せ付けない排他性。中国政府だけでなく中国国民までも大挙して理不尽な行動をするのだと、日本の市民に大きく印象付けたのです。

これでは「市民不在」で、約100人の警察官にガードされるという単なる「聖火護送」であった聖火リレーだったのです。これでは、日本人の間において、ますますチベットへの弾圧に抗議する意識が強くなり、北京五輪への興味が失ったことでしょう。



1.同じく僧侶で、作家の玄侑宗久さんが、「お坊さんだって怒ってる」という表題で、東京新聞4月25日付でエッセイを載せていましたので、それを紹介したいと思います。「お坊さんだって怒ってる」という表題は、東京詩文側が依頼した表題ですが、玄侑宗久さんの著書である『お坊さんだって悩んでる』(文春新書)をもじったものと思われます。

ところで、自民、民主両党の一騎打ちとなった衆院山口2区補欠選挙は、本日(4月27日)投票、即日開票されます。揮発油税の暫定税率復活や、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)などが争点です。この投票結果は、今後の国会においてこれらの争点の行方が左右される可能性が高いため、大変重要度の高い選挙といえます。

衆院山口2区の住民が投票する前に、また、投票する地区でない市民の方にも、そして衆院山口2区の投票結果の如何を問わず、ぜひ読んで頂きたいエッセイだと思います。では、紹介します。


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選挙 *  TB: 9  *  CM: 4  * top △ 
2008/04/25 [Fri] 05:21:17 » E d i t
蛇の目ミシン工業(東京都中央区)が仕手集団の小谷光浩元代表(70)=実刑確定=の恐喝事件で抱えた巨額負債について、株主が元役員5人に約612億円の損害賠償を求めた株主代表訴訟(責任追及等の訴え)の差し戻し控訴審判決で、東京高裁(宮崎公男裁判長)は4月23日、元役員らの責任を認めなかった1審判決を取り消し、約583億6000万円の支払いを命じました。なお、この賠償額は、負債額から小谷元代表の破産配当金などを差し引いた額です。

大手企業の株主代表訴訟では、ダスキンの元経営陣に53億円の賠償を命じた判決が今年2月に確定していますが、4月23日の判決は、この10倍を超える巨額の賠償を命じたことになります(NHKニュース4月23日19時16分)。


1.まず、報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年4月24日付朝刊39面

蛇の目旧経営陣に583億円支払い命令 東京高裁
2008年04月23日20時49分

 仕手集団「光進」の小谷光浩元代表=恐喝罪で有罪確定=から約300億円を脅し取られるなどした「蛇の目ミシン工業」(東京都中央区)の旧経営陣5人に対し、約610億円の損害賠償を求めた株主代表訴訟の差し戻し後の控訴審で、東京高裁(宮崎公男裁判長)は23日、同社に約583億円を支払うよう5人に命じる判決を言い渡した。

 巨額の賠償金が認められた株主訴訟としては、旧大和銀行の役員らに約830億円の支払いを命じた00年の大阪地裁判決(01年に大阪高裁で2億5千万円で和解)などがあり、今回の判決はそれに匹敵するものとなった。

 宮崎裁判長は、株を暴力団関係者に流すと脅された旧経営陣が小谷元代表に融資したことについて、「経営者は株主の地位を乱用した不当な要求がされた場合に、法令に従った適切な対応をする義務があった」と指摘した。

 そのうえで、「警察に届け出るなどの対応が期待できない状況ではなく、理不尽な要求に従った行為がやむを得なかったとは言えない」として5人の経営責任に言及。同社が小谷元代表側の債務の肩代わりを続けた結果、最終的な利益供与額は約583億円に上ったとして、それが損害額にあたると認定した。

 訴訟をめぐっては、一審、二審がともに「企業としてのやむを得ない融資だった」として、旧経営陣の過失を認めなかった。これに対し、最高裁は06年、旧経営陣の負担すべき損害について審理を尽くすよう求め、東京高裁に差し戻していた。」



(2) 読売新聞平成20年4月24日付朝刊38面

蛇の目ミシン元取締役5人に583億円賠償命令…東京高裁

 仕手集団「光進」(破産)の小谷光浩元代表に恐喝されて多額の利益供与を行い、蛇の目ミシン工業(東京)に損害を与えたとして、同社の男性株主が、当時の取締役5人に損害賠償を求めた株主代表訴訟の差し戻し控訴審判決が23日、東京高裁であった。

 宮崎公男裁判長は「理不尽な要求に従って、巨額の利益供与を提案・同意した取締役らの過失は否定できない」と述べ、5人に約583億6000万円の賠償を命じた。

 株主代表訴訟の賠償額としては、大和銀行の巨額損失事件で約830億円の賠償を命じた大阪地裁判決(大阪高裁で2億5000万円で和解)に次いで過去2番目の高額となった。

 判決によると、蛇の目ミシン工業は1989~90年、同社の株を大量に買い占めた小谷元代表から、「暴力団に株を売却したので、取り戻すのに300億円が必要」と脅迫されて300億円を提供したほか、関連会社を通じて光進の多額の債務を肩代わりした。

 1、2審は「取締役5人は脅迫にやむを得ず応じた」として、請求を棄却したが、最高裁は2006年4月、取締役5人の責任を認め、賠償額算定のため審理を高裁に差し戻していた。

 この日の判決は、「取締役らは、小谷元代表の要求に対し、警察に届け出るなど法令に従った適切な対応をすべきだった」と指摘。同社の最終的な損害額を約583億6000万円と算定した上で、「580億円余りの賠償命令は極めて酷ではあるが、取締役らの対応は大局的視野に欠け、稚拙であり、健全な社会常識とかけ離れたものと言わざるを得ない」と述べ、損害全額について賠償責任があると結論づけた。

 株主代表訴訟については、02年施行の改正商法で、会社は賠償額の上限(代表取締役で報酬の6年分など)を定められるようになったが、重い過失があれば、この上限は除外される。

(2008年4月23日21時50分 読売新聞)」



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裁判例 *  TB: 3  *  CM: 0  * top △ 
2008/04/23 [Wed] 20:33:18 » E d i t
山口県光市で、殺人と強姦致死、窃盗の罪に問われた元少年(27)に対する差し戻し控訴審で、広島高裁(楢崎康英裁判長)は4月22日、無期懲役とした1審・山口地裁判決を破棄し、死刑の判決を言い渡しました。犯行時少年の死刑判決は、連続リンチ殺人で当時18~19歳の元少年3人に対する2005(平成17)年の名古屋高裁判決以来であり、犯行当時18歳1ヶ月だった者への死刑判決は、最高裁に記録が残っている昭和41年以降で最も低い年齢でした。弁護側は上告しています。



1.報道記事を幾つか。

(1) 毎日新聞平成20年4月22日付夕刊1面

山口・光の母子殺害:差し戻し控訴審 元少年に死刑判決 広島高裁「新供述は不自然」

 ◇「情状斟酌できぬ」

 山口県光市で99年4月、母子を殺害したとして殺人と強姦(ごうかん)致死罪などに問われた当時18歳の元少年(27)に対する差し戻し控訴審の判決公判が22日、広島高裁であった。楢崎康英裁判長は「身勝手かつ自己中心的で、(被害者の)人格を無視した卑劣な犯行」として、無期懲役とした1審判決を破棄し、求刑通り死刑を言い渡した。元少年が差し戻し審で展開した新供述を「不自然不合理」と退け、「1、2審は改善更生を願い無期懲役としたのに、死刑を免れるために供述を一変させ、起訴事実を全面的に争った」と批判した。弁護側は即日、上告した。

 最高裁は06年6月、高裁が認めた情状酌量理由を「死刑を回避するには不十分」として1、2審の無期懲役判決を破棄し、高裁に差し戻した。

 判決によると、元少年は99年4月14日、光市のアパートに住む会社員、本村洋さん(32)方に排水管検査を装って上がり込み、妻の弥生さん(当時23歳)を強姦目的で襲い、抵抗されたため手で首を絞めて殺害。長女夕夏ちゃんを床にたたきつけた上、首にひもを巻き付けて絞殺した。

 元少年は差し戻し審で弥生さん殺害について、「甘えたい気持ちで抱きつき、反撃され押さえつけたら動かなくなった」とし、夕夏ちゃん(同11カ月)について「泣きやまないので抱いてあやしていたら落とした。首を絞めた認識はない」と述べた。

 供述を変えた理由については、「自白調書は警察や検察に押し付けられ、1、2審は弁護人が無期懲役が妥当と判断して争ってくれなかった」とした。

 判決は「弁護人から捜査段階の調書を差し入れられ、『初めて真実と異なることが記載されているのに気づいた』とするが、ありえない」と、元少年の主張を退けた。

 また、弥生さんの殺害方法について元少年が「押し倒して逆手で首を押さえているうちに亡くなった」としたのに対しても「困難と考えられ、右手で首を押さえていたことを『(元少年が)感触さえ覚えていない』というのは不自然。到底信用できない」とした。夕夏ちゃん殺害についても、「供述は信用できない」と否定した。

 また、元少年が強姦行為について「弥生さんを生き返らせるため」としたことについて、「荒唐無稽(こうとうむけい)な発想であり、死体を前にしてこのようなことを思いつくとは疑わしい」と退けた。事件時、18歳30日だった年齢についても「死刑を回避すべきだという弁護人の主張には賛同し難い」とした。

 また、元少年の差し戻し審での新供述を「虚偽の弁解をろうしたことは改善更生の可能性を大きく減殺した」と批判。「熱心な弁護をきっかけにせっかく芽生えた反省の気持ちが薄らいだとも考えられる」とした。

 2審の無期懲役判決を差し戻した死刑求刑事件は戦後3例目だが、他の2件は死刑が確定している。【大沢瑞季、安部拓輝、川辺康広】(以下、省略)

毎日新聞 2008年4月22日 東京夕刊」


■解説:被害者2人「境界事例」で判断

 量刑が最大の焦点になった差し戻し審で、広島高裁は結果の重大性を重視して極刑を選択した。たとえ少年でも故意に複数の命を奪った事件は、積極的に死刑を適用すべきだとの司法判断を明確に示したと言える。

 06年6月の最高裁判決は、元少年が事件当時18歳30日だった点を「考慮すべき一事情にとどまる」とし、差し戻した。これに対し弁護側は、元少年の成育環境による未熟さを背景とする偶発的事件と主張。1、2審で認めた殺意や強姦の意図を争い、高裁が弁護側の主張をどこまで認めるかが焦点となった。

 最高裁は83年の永山則夫元死刑囚(97年執行)に対する判決で、死刑選択の判断基準として9項目を挙げた。判例をみると被害者の数が重要な要素とされるが、明確な基準はなく、被害者2人の場合は、判断が分かれる「境界事例」だった。更に、永山判決以降、被告が少年の事件で死刑判決が確定したのは2件だけで、いずれも被害者は4人だ。

 高裁が従来の量刑判断から大きく踏み出した背景として、来年始まる裁判員制度を前に「死刑基準を明確化したもの」と指摘する専門家もいる。厳罰化世論が高まる中、死刑に慎重であるべき少年事件で示された判決は、量刑を巡る議論に一石を投じるものだ。【安部拓輝、大沢瑞季】

毎日新聞 2008年4月22日 東京夕刊」




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2008/04/21 [Mon] 21:56:10 » E d i t
「修復腎移植を考える超党派の会」の第5回の会合を紹介します。(第5回の会合については、「修復腎移植推進・万波誠医師を支援します」さんの「着々と進む「修復腎移植を考える超党派の会」第5回」(2008/04/16 20:11)でも紹介なされています。)


1.前回の会合については、「「修復腎移植を考える超党派の会」の第3・4回の会合を紹介~デビッド・ニコル教授(豪州)は“レストア腎移植はすでに確立された医療”と明言!」(2008/04/05 [Sat] 17:06:08)をご覧ください。

(1) 「修復腎移植を考える超党派の会」の第3回会合では、修復腎移植に関係する学会関係者からの意見聴取が行われたのですが、このブログでも触れたように、そこでの学会関係者の発言はデマにも等しい発言でした。そのため、この学会関係者の発言に対して、米フロリダ大学シャンズ病院移植外科医・藤田士朗准教授が詳細な反論を行っています。

「修復腎移植推進・万波誠医師を支援します」さんの「移植学会等の見解に反論する(1)」(2008/04/19 14:03)「移植学会等の見解に反論する(2)」(2008/04/20 21:00)。まだ続きがあります)で、紹介なされていますので、ぜひご覧ください。

こうして、「修復腎移植を考える超党派の会」の発言は明らかにされ、インターネットを通じて広く知られることになり、根拠のない批判を受けた、オーストラリアのニコル先生にも伝わりますし、米国の移植医にも伝わり、全世界の移植関係者に伝わることになります。日本の学会関係者は、こんなにもデマを吹聴して恥ずかしくないのだろうかと、同じ日本人として恥ずかしくなります。



(2) 気になった部分を1つ引用しておきます。(高原)は高原氏の発言であり、下の段落の( )は批判です。

 「(高原) 私は大阪大学の高原といいます。泌尿器科医です。腎臓移植の経験はだいたい1,000例ほど有りますけれども……。

 (ネットで経歴を見ると、大阪大学に1985年から在籍、大阪大学は年間15例前後しか腎臓移植をおこなっていないのに、どうやって1000例の移植ができるのか。もしも、他の病院での症例をふくめているのであれば、それらすべての日付と大学への届け出、報酬や税金の支払い等を文章で報告していただきたい。)」



まさか高原氏は、ご自分移植経験数ぐらいは嘘は言わないだろうと思い、大阪大学のHPで明らかにしている腎移植手術数(7年分)を調べてみましたので、挙げておきます。

「2001年16例、2002年14例、2003年13例、2004年17例、2005年13例、2006年12例、2007年12例 」


ここ7年間としては平均13.85例ですから、「年間15例前後」という評価さえも多いくらいでしょう。そして、7年前以前のデータも、平均13.85例以上であったと推測するのも困難ですし(もしこれ以上多かったら、それこそ大阪大学で医療過誤があったか、または優秀な移植医が退職したため、激減したことになる)、高原氏が大阪大学在籍時、全部の腎臓移植に携わっているわけではないだろうという推測を考慮すれば、高原氏の腎臓移植経験は300例に達していないと判断できます(推測を抜いても、300例を少し超える程度ですが)。

高原氏の発言が正しいのであれば、大阪大学での移植以上の移植数を他の病院で行っていることになります。しかし、もしそんなことをしていたら、それこそ万波誠医師のように出身大学から非難を受けるため、極めて困難であるように思えます。大阪大学医学部は、大阪大学での腎移植を遥かに超える移植を他の病院で行っても、非難したりしないほど、寛容の精神にあふれた大学なのでしょうか。

高原氏の腎移植経験数の真偽をぜひ知りたいと思います。



それはともかくとして、第5回会合の様子について紹介します。第5回会合も、残念ながら報道機関による報道は見当たりませんでした。そこで、その様子を記事にしている「徳洲新聞」を引用して、紹介したいと思います。



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2008/04/20 [Sun] 07:46:06 » E d i t
「光市事件報道問題:BPOは各局に裁判報道の改善要求(上)~「極めて感情的に制作、他局より輪をかけて大袈裟にやるという『集団的過剰同調番組』、刑事裁判の知識なし、「素材負け」していた、巨大なる凡庸」など徹底して酷評!」(2008/04/16 [Wed] 23:46:53)の続きです。

放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会の「光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見書」(PDF版(HTMLバージョンもある))を一部引用して論じてみたいと思います。


1.報告書の内容に触れる前に2点ほど。

(1) まず、報告書の目次は、次のようになっています。

目  次

Ⅰ はじめに-事件・犯罪・裁判報道の重要性

Ⅱ 光市母子殺害事件―差戻控訴審までの経緯と報道側の変化

Ⅲ 33本、7時間半の番組-委員会検証の対象と方法

Ⅳ 集団的過剰同調-本件放送の事例と傾向

Ⅴ 刑事裁判-その前提的知識の不足

Ⅵ 被告人報道-いわゆる「素材負け」について

Ⅶ おわりに

【註1】 放送倫理基本綱領(NHK・民放連)
      国内番組基準(NHK)
      新放送ガイドライン(NHK)
      放送基準(民放連)
      報道指針(民放連)
      裁判制度開始にあたっての取材・報道指針(日本新聞協会)
      裁判員制度下における事件報道について(民放連)
【註2】 放送倫理検証委員会運営規則第4条
【註3】 裁判員制度のもとでの報道のあり方について
【別添資料】 各放送局への質問と回答例」


目次をざっとみると、「集団的過剰同調-本件放送の事例と傾向」「刑事裁判-その前提的知識の不足」「被告人報道-いわゆる「素材負け」について」という項目が並んでいます。番組内容としては、捏造番組の次に許されない事柄を行っていたことが一目瞭然ではないかと思います。



(2) この委員会および小委員会が視聴した番組は、以下の8放送局、20番組、33本の放送済み番組の録画であり、その総時間は約7時間30分でした。   

[光市母子殺害事件 委員会が視聴した33本の番組一覧表]
(日付はいずれも2007年。分数は概算)

=第1回公判を機に放送されたもの=

1. 「報道ステーション」 (テレビ朝日 5月24日) 11分
2. 「たかじんのそこまで言って委員会」 (讀賣テレビ 5月27日) 8分
3. 「新報道プレミアA」 (フジテレビ 5月27日) 10分

=第1回集中審理を機に放送されたもの=

4. 「NHKニュース7」 (NHK 6月26日) 4分
5. 「ニュースウォッチ9」 (NHK 6月26日) 4分40秒
6. 「速ホゥ!」 (テレビ東京 6月26日) 4分55秒
7. 「ザ・ワイド」 (日本テレビ 6月27日) 21分
8. 「みのもんたの朝ズバッ!」 (TBS 6月28日) 7分
9. 「ザ・ワイド」 (日本テレビ 6月28日) 39分
10. 「速ホゥ!」 (テレビ東京 6月28日) 3分40秒
11. 「ワイド!スクランブル」 (テレビ朝日 6月29日) 18分

=第2回集中審理を機に放送されたもの=

12. 「ニュースJAPAN」 (フジテレビ 7月24日) 3分
13. 「スーパーJチャンネル」 (テレビ朝日 7月24日) 12分
14. 「イブニング・ニュース広島」 (中国放送 7月25日) 4分
15. 「ピンポン!」 (TBS 7月26日) 8分
16. 「NHKニュース7」 (NHK 7月26日) 55秒
17. 「ニュースウォッチ9」 (NHK 7月26日) 3分30秒
18. 「速ホゥ!」 (テレビ東京 7月26日) 3分10秒
19. 「ピンポン!」 (TBS 7月27日) 12分
20. 「ワイド!スクランブル」 (テレビ朝日 7月27日) 16分
21. 「The・サンデー」 (日本テレビ 7月29日) 18分

=第3回集中審理を機に放送されたもの=

22. 「スーパーJチャンネル」 (テレビ朝日 9月19日) 10分
23. 「FNNスーパーニュース」 (フジテレビ 9月20日) 28分
24. 「スーパーJチャンネル」 (テレビ朝日 9月20日) 27分
25. 「ズームイン!!SUPER」 (日本テレビ 9月21日) 11分
26. 「スッキリ!!」 (日本テレビ 9月21日) 15分
27. 「ザ・ワイド」 (日本テレビ 9月21日) 18分
28. 「みのもんたの朝ズバッ!」 (TBS 9月21日) 28分
29. 「とくダネ!」 (フジテレビ 9月21日) 18分
30. 「やじうまプラス」 (テレビ朝日 9月21日) 15分
31. 「ワイド!スクランブル」 (テレビ朝日 9月21日) 26分
32. 「The・サンデー」 (日本テレビ 9月23日) 25分
33. 「サンデー・ジャポン」 (TBS 9月23日) 3分


こうして挙げてみると、日本のテレビ番組中、およそすべての報道番組が検証対象になっていることが分かると思います。これだけ多いとなると、視聴者は影響を免れることができません。日本の報道番組すべてが、全国の視聴者に対して、光市事件について誤った認識を与え続けていたとさえ、いえるわけです。薄さ寒い思いがします。なお、ここに含まれていない著名な報道番組は「ニュース23」ですから、この番組だけは、裁判報道に関して許容できる範囲であったということになります。

番組数をまとめてみると、NHK:4本、日本テレビ:7本、TBS:5本、フジテレビ:4本、テレビ朝日:8本、テレビ東京:3本、読売テレビ:1本、中国放送:1本となっています。読売テレビは日本テレビ系列ですから、日本テレビ8本となります。こうして比較すると、日本テレビとテレビ朝日が飛びぬけて問題番組を放映していたことになります(もちろん、数本ぐらいは問題視しないで済むものもあったとは思いますが)。

特出して指摘しておくべきことは、娯楽番組が2つ、すなわち、司会:やしきたかじん氏、辛坊治郎氏の「たかじんのそこまで言って委員会」 (讀賣テレビ 5月27日)、司会:太田光(爆笑問題)氏、田中裕二(爆笑問題)氏の「サンデー・ジャポン」 (TBS 9月23日) が含まれていることです。娯楽番組だからといって、好き勝手なことを論じていいわけではないのです。これらは要注意番組であることを記憶にとどめておく必要があります。



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2008/04/19 [Sat] 18:10:14 » E d i t
東京新聞による死刑問題に関する連載記事、「死刑――存廃を問う前に」第2回「東京新聞平成20年3月31日付朝刊26・27面【こちら特報部】)を紹介します。


1.「死刑――存廃を問う前に」第2回は、冤罪であるとして一貫して無実を叫んでいた者に死刑が執行されてしまった「福岡事件」について取り上げています。そこで、「死刑――存廃を問う前に」第1回と同様に、記事を紹介する前に、死刑制度論の論点(死刑存置論と廃止論の理由)について触れておきます。

(1) ◇死刑存置論と廃止論の主な論点

「◇誤判・冤罪の可能性について
・存置論:誤判・冤罪が起こりうるのは死刑についてだけではない。司法制度全体の問題である
・廃止論:誤判・冤罪の危険性が常にあり、死刑は処刑したら取り返しがつかない

◇世論
・存置論:世論調査では「存置」が常に多数であり、世論が支持している以上、死刑は必要である
・廃止論:死刑を執行される側という少数者の人権の問題について、多数派の意見を重視するのは誤りだ

◇被害者・遺族感情
・存置論:凶悪犯罪の犠牲となった被害者の遺族を納得させるためにも必要である
・廃止論:犯人を殺すことが被害者にとって問題解決になるのかどうか、疑問である

◇死刑の抑止力
・存置論:凶悪犯罪を防ぐのに役に立っている。廃止すると凶悪犯罪が多発する
・廃止論:死刑に凶悪犯罪の抑止力があるとは実証されていない」(朝日新聞平成19年12月20日付朝刊3面参照)



(2) ◆法律論としての死刑存廃論の主たる論点

「◆国家は犯罪者の生命を奪う権限を認められているか(法哲学的論点)
・存置論:殺人犯など凶悪な犯罪者に対しては、死刑をもって臨むべきであるということが国民の道義的・法的確信ないし国民感情になっている
・廃止論:国に生命の絶対的価値を前提として殺人行為を犯罪としておきながら、犯人の生命を剥奪するのは矛盾である

◆死刑に一般予防機能があるか(刑事政策的論点)
・存置論:死刑には威嚇力があり、凶悪な犯罪から社会を防衛し法秩序を維持するためには、その威嚇力に期待しなければならない
・廃止論:死刑に威嚇力があるかどうか不明であり、少なくとも「疑わしきは使わず」とする態度をとるべきである

◆死刑は憲法36条にいう「残虐な刑罰」にあたるか(憲法的論点)
・存置論:執行方法が適切であるから「残虐な刑罰」にあたらない
・廃止論:死刑は現在の文明に照らして残虐な刑罰に当たることは明らかである

◆誤判の可能性がある以上、取り返しのきかない死刑を宣告することは適正手続に反しないか(適正手続的論点)
・存置論:刑事裁判制度論とは別個の問題であり、犯行が明々白々の犯人に対しても死刑を認めないのか否かが問題であり、凶悪な犯罪者は生命剥奪によって社会から完全に隔離する必要がある(特別予防的観点)
・廃止論:死刑は一たび執行されれば事態を回復することはできず、裁判に誤判の可能性がある以上死刑の判決を言い渡すことは適正手続に反する」(川端博『刑法総論講義』(成文堂、2006年)参照)



今回紹介する東京新聞「こちら特報部」の記事は、誤判・冤罪の可能性と死刑の問題、すなわち、死刑廃止の理由(◇)として挙げられている、「誤判・冤罪の危険性が常にあり、死刑は処刑したら取り返しがつかない」について、着目した記事です。 また、記事中では、冤罪事件での被害者遺族の発言も記載していますので、冤罪事件での被害者感情(◇)の問題も関連してきます。それを頭に入れて読んで下さい。



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2008/04/18 [Fri] 20:56:49 » E d i t
自衛隊のイラク派遣は違憲として、愛知県などの弁護士と各地の住民らが国を相手に、派遣差し止めと慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決が4月17日、名古屋高裁であり、青山邦夫裁判長(3月31日依願退官。高田健一裁判長代読)は「米兵らを空輸した航空自衛隊の活動は戦争放棄を規定した憲法9条1項に違反する」との判断を示しました。派遣差し止めと慰謝料請求の訴えは認めませんでした。

自衛隊イラク派遣をめぐる同様訴訟は全国で起こされていますが、違憲判断は初であり、国側は勝訴のため上告できず、確定する見通しです。なお、1審名古屋地裁は憲法判断をせずに訴えを退けており、また、原告側弁護士によると、9条違反を認めたのは1973年の札幌地裁・長沼ナイキ基地訴訟判決以来35年ぶりで、高裁では初めてだとのことです(時事通信:2008/04/17-21:05)。


1.名古屋高裁の違憲判断は、「政府が公表しない活動実態」(東京新聞)を踏まえたものです。その実態に触れた記事(東京新聞4月18日付「核心」)を最初に紹介しておきます。

「青山裁判長は、イラクの現況について「国際的な武力紛争が行われ、特にバグダッドは戦闘地域に該当する」と認定。その上で空自が2006年7月以降、米国の要請を受け、クウェートからバグダッド空港に多国籍軍の兵士を輸送している点について「多国籍軍の戦闘行為に必要不可欠な軍事上の後方支援」と指摘し、「他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力行使を行ったとの評価を受けざるを得ず、イラク特措法や憲法に違反する」と述べた。」(「時事通信:2008/04/17-21:05 自衛隊イラク派遣に違憲=兵士空輸「武力行使と一体」-名古屋高裁」



(1) 東京新聞平成20年4月18日付朝刊3面【核心】欄

日米一体 政策に暗雲 イラク空輸『違憲』 未公表の実態触れる  インド洋補給 影響も
2008年4月18日

 「航空自衛隊のイラクでの空輸活動は憲法九条違反」とした十七日の名古屋高裁判決。自衛隊と米軍との一体化を進め、海外活動に軸足を移そうとしてきた日本の安全保障政策に冷や水を浴びせる形になった。判決は政府が公表しない活動実態に触れ、武装米兵の空輸を「武力行使」と断定。これによりイラク特措法、テロ特措法、さらには米軍再編の日米合意に基づき米軍の後方支援を担ってきた自衛隊海外派遣に、疑問符が付いた。 (編集委員・半田滋)

■8割は米軍支援

 航空自衛隊はクウェートに隊員210人とC130輸送機3機を派遣、イラク南部のアリ、首都バグダッド、北部アルビルの3ヶ所へ週4回から5回の定期便を飛ばしている。空輸の8割以上は米兵や米軍物資で、復興支援の国連空輸は週1回だけだ。

 政府は空輸の中身を明かさないまま「人道復興支援活動が中心」とし、バグダッドの治安悪化が進む中でも「飛行機と経路は非戦闘地域」と説明して活動を合法・合憲としてきた。

 しかし、判決は「空輸活動は主として(米軍の後方支援に当たる)安全確保支援活動」と政府見解と異なる活動を認定。さらに「武装兵員を戦闘地域であるバグダッドへ空輸するのは、他国の武力行使と一体化した行動」と、武力行使を禁じた憲法9条に違反すると断定した。

■飛行停止も頻発

 この判決に防衛省首脳は「バグダッド全体の治安状況は関係ない。飛行場と経路はあくまで非戦闘地域」と主張、増田好平事務次官は会見で「活動の見直しはしない」と明言した。

 だが、昨年から今年にかけて空自のC130輸送機がバグダッド上空に来ると、携帯ミサイルに狙われていることを示す警報が鳴り響く事態が頻発。治安悪化からの飛行見合わせも珍しくない。実態を伝えない政府に対し、本紙が報道してきた「命懸けの空輸活動」を判決が追認したといえる。

 戦闘地域への輸送や補給が違憲とすれば、期限切れになったテロ特措法に基づくインド洋における海上自衛隊の洋上補給も、違憲の批判を免れない。昨年10月10日、衆院予算委で高村正彦外相は「(海上自衛隊の補給は)アフガン空爆を行う米艦艇にも行っていた」と、提供した燃料が戦争に使われたことを認めたからだ。

■見直しも必至

 一昨年5月に日米合意した米軍再編協議で、米軍と自衛隊の連携は日本防衛と周辺事態への対応にとどまらず、「国際安全保障環境の改善」を旗印に世界に広がった。同年12月には自衛隊法を改正して海外活動を本来任務に格上げ、世界各地で米軍と自衛隊が一体化する礎ができた。

 しかし、戦闘地域で活動する米軍への後方支援が違憲とされたことで、政府は自衛隊の海外活動を見直す必要に迫られる。国連の要請で行う国連平和維持活動(PKO)への参加にはそれほどの問題がないとしても、「日本の独自判断による海外派遣」という名目で行ったイラク派遣のような事実上の米軍支援は、いっそうの慎重さが求められる。」

*「イラク派遣をめぐる経過」の年表については省略しました。  




(2) この記事を見ると、名古屋高裁はイラクの真実の実態を踏まえた上での判断であることが分かると思います。

「航空自衛隊はクウェートに隊員210人とC130輸送機3機を派遣、イラク南部のアリ、首都バグダッド、北部アルビルの3ヶ所へ週4回から5回の定期便を飛ばしている。空輸の8割以上は米兵や米軍物資で、復興支援の国連空輸は週1回だけだ。

 政府は空輸の中身を明かさないまま「人道復興支援活動が中心」とし、バグダッドの治安悪化が進む中でも「飛行機と経路は非戦闘地域」と説明して活動を合法・合憲としてきた。」


このように、空輸の8割以上は米兵や米軍物資であるのが真実の実態なのですから、判決が「空輸活動は主として(米軍の後方支援に当たる)安全確保支援活動」と政府見解と異なる活動を認定するのは、当然とさえ言えます。


「この判決に防衛省首脳は「バグダッド全体の治安状況は関係ない。飛行場と経路はあくまで非戦闘地域」と主張、増田好平事務次官は会見で「活動の見直しはしない」と明言した。

 だが、昨年から今年にかけて空自のC130輸送機がバグダッド上空に来ると、携帯ミサイルに狙われていることを示す警報が鳴り響く事態が頻発。治安悪化からの飛行見合わせも珍しくない。実態を伝えない政府に対し、本紙が報道してきた「命懸けの空輸活動」を判決が追認したといえる。」


このように、バグダッド上空では携帯ミサイルで狙われ、治安悪化からの飛行見合わせも珍しくないという真実の実態からすれば、判決が「武装兵員を戦闘地域であるバグダッドへ空輸するのは、他国の武力行使と一体化した行動」と、武力行使を禁じた憲法9条に違反すると断定するのも素直な判断といえます。

むしろ、バグダッド上空は「戦闘地域」であるのに、防衛省首脳のように、飛行場と経路はあくまで「非戦闘地域」などと非現実的なごまかしをしたり、また、戦闘地域か否かについては客観的な状況で判断するものなのに、小泉元首相が「自衛隊が行く所が非戦闘地域」などと、自衛隊が行けば非戦闘地域に変わるという手品のような非論理的な言い逃れをすること自体がおかしかったのです。


「「日の丸の存在を示し、米軍とともに汗を流すためだった」。自衛隊関係者はバグダッドへの飛行当初をこう振り返る。「日本政府の『戦闘地域』『非戦闘地域』なんて米国からはクレージーと言われるだけで、日米同盟が緊密化するどころではない。日本政府はそれを承知で空自隊員を派遣してきた」。複数の派遣隊員はバグダッド空港の発着を「とても緊張する時間」とし「非戦闘地域なんてありえない」と話す。

 バグダッドへの飛行途中、自動的に攻撃を感知し、警報音がC130輸送機内に響き渡り、機体からおとりのフレア(火炎弾)が発射されることもたびたびあったという。クウェートの自室に遺書を置いて輸送機に乗り込んだ隊員もいるほどだ。

 空自関係者は「昨年来の米軍増派でバグダッドをめぐる治安はいくらか改善したが、空自機に何があってもおかしくない状況は変わっていない」と話す。」(東京新聞平成20年4月18日付朝刊28面「『非戦闘』の詭弁断罪 空自隊員 被弾常に警戒 遺書書く」)」


「「日本のため、国際貢献のためにやってきた僕らの空輸は憲法違反なのか」。名古屋高裁が示した判断を受け、空自のイラク派遣の中核を担う小牧基地(愛知県小牧市)には衝撃が走った。

 複数回の派遣経験がある隊員はニュースを基地のテレビで見た。同僚と目を合わせ、のど元まで出かかった「やっぱり、やばいことをしていたんだ」をのみ込んだ。バグダッドへの飛行が始まってから、C130輸送機上で身の危険を感じるようになった。武装した米兵にも接し「実戦にかかわっている」ことへの緊張感や高揚感も体験してきた。」(東京新聞平成20年4月18日付朝刊29面「“国際貢献”揺れる評価 空自イラク派遣『違憲』 歓声、涙ぐむ原告」


隊員自体が「非戦闘地域なんてありえない」と感じ、遺書まで用意している状態になっているのに、どうして「非戦闘地域」などといえるのでしょうか。このように、航空自衛隊は、戦闘地域へ「命懸けの空輸活動」を行っている現実を踏まえた対応をした方が、自衛官の生命の安全に寄与するのだと思います。真実とはかけ離れた、いわゆる「大本営発表」は止めるべきです。

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裁判例 *  TB: 4  *  CM: 6  * top △ 
2008/04/17 [Thu] 23:02:47 » E d i t
4月1日から始まった、公的医療保険「後期高齢者(長寿)医療制度」で、年金から保険料を天引きする特別徴収が、4月15日から始まりました。今回の天引き対象者は約800万人です。



1.コラムを幾つか。

(1) 中国新聞平成20年4月15日付「天風録」

うば捨て山 '08/4/15

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 「やさしいネうば捨て山へ手を引いて」―。今月から、七十五歳以上の全員が対象となる後期高齢者医療制度がスタートした。これまでの老人保健に代わる新たな「おきて」だが、お年寄りの戸惑いやため息が、本紙の時事川柳や投書からもうかがえる

▲通知書に記された夫の保険料を見て驚いたという広島市の女性(77)。今まで払っていた世帯分よりもはるかに大きい金額に、途方に暮れる。「年金収入しかないのに、どうやって生活すればいいのでしょう」

▲きょう、最初の保険料が年金から天引きされる人も多いはずだ。以前からの介護保険料に加え、ダブルパンチになる。一年以上滞納すると、保険証を取り上げるなど、「長寿医療制度」という言い換えとは裏腹の厳しさだ

▲若い世代にばかり負担をかけないように、高齢者も一部を負担しようという新制度の趣旨に、文句はつけにくい。その一方で、「お荷物」扱いするような社会の空気を、お年寄りたちは肌で感じ取っているようだ

▲長野県に伝わる姨捨(おばすて)山の民話は、こう結ぶ。母を捨てに行った息子は親心の優しさに触れ、こっそり連れ帰る。その後、老母の知恵で国の危機が救われ、殿様も年寄りを捨てるおきてを改める―。民話のように、温かみを取り戻す柔軟さも必要ではないか。」



(2) 東京新聞平成20年4月16日付「筆洗」

「「4・15ショック」を心配する声があるという。七十五歳以上を対象にした後期高齢者(長寿)医療制度で、年金からの天引きが昨日から始まった。対象は約八百万人。制度を知らずに、年金が突然目減りしたと、ショックを受けた人がいてもおかしくない

▼天引きを知っていたとしても、ショックはある。大都市で独り暮らしの七十九歳の女性の記事を読んだ。国民健康保険では所得が少ないために保険料を免除されていたが、新制度では年間に一万二千円の負担を求められる。節約のため、趣味の絵画グループを昨年やめた

▼地方で三人暮らしの七十七歳の男性読者の一家は、年間で二万円以上の負担増となる。幸いなことに最近、若いころの年金の加入記録漏れを確認できたが、支払われるのは八カ月ほど先になると言われた。まず年金の額を正せと言いたいという

▼正しい持ち主と統合が困難な年金記録は約二千万件ある。正当な額を受け取れぬまま、保険料だけ天引きされた人もいると推定できる。釈然としない

▼自治体の窓口には問い合わせや苦情が相次いでいる。準備に抜かりがあったことは間違いない。制度の中身を知らない分、ショックも大きくなる

▼孔子の言葉に<父母在すときは、老を称せず>とある。父母に心細さを感じさせないためだという。親子関係にとどまらず、政治にあるべき心配りである。」



「年金収入しかないのに、どうやって生活すればいいのでしょう」とか、「節約のため、趣味の絵画グループを昨年やめた」と嘆く方たちに対して、政府は説明すれば納得してもらえるとでもいいのでしょうか? テレビで「これでは餓死者が出る」といったご高齢の方がいましたが、本当にそうなるでしょう。

90歳代の母親と暮らす名古屋市北区の男性(77)は「これまでは2人で6000円だった保険料が、3倍以上になった。前の制度がよかった。国は高齢者の現実を見るべきだ」と声を荒らげた(読売新聞2008年4月16日)とあるように、許容できる負担をはるかに超えています。




2.「天引かれ」の日に、衆院山口2区の補選が告示されました。自民が担ぐのは、自前の財源を好きに使っていた国交省のOBであり、これに対して、民主の候補は旧大蔵省出身で国税庁にもいた人物です。「同じ元官僚でも、税金の『出』と『入』に携わった者の争い」です(朝日新聞平成16年4月16日付「天声人語」)。

後期高齢者医療制度:政府・与党に危機感 保険料天引き、野党が補選争点化

 15日に始まった後期高齢者(長寿)医療制度による年金からの保険料天引きをめぐり、政府・与党が危機感を強めている。天引きに対する高齢者の不満が高まる中、同日告示された衆院山口2区補選で野党が争点化を図っているからだ。政府・与党は制度の広報徹底に努めるなど防戦に躍起だが、「7~8割の人は保険料が下がる」と町村信孝官房長官らがPRする一方で、舛添要一厚生労働相が「正確な数字は言えない」と火消しに回るなど混乱気味だ。

 「丁寧に説明しなければいけない。公費も半分投入するし、4割は若い人が支える」。福田康夫首相は15日、記者団に制度の丁寧な説明で、負担増を懸念する高齢者に理解を求める考えを示した。(以下、省略)」(毎日新聞 2008年4月16日 東京朝刊



福田首相は、後期高齢者(長寿)医療制度について、いまだに丁寧に説明すれば足りると考えているようです。餓死者が出るかもしれないという深刻な事態であるのに、実に他人事であり、本当に日本国の首相なのだろうかと思えるほどです。

また、町村官房長官は、根拠もないのに「7~8割の人は保険料が下がる」などと吹聴するのです。現在苦しんでいる方たちの命なぞどうでもいいのでしょう。

やはり、今のあまりにもおかしな状況を変えるためには、民主主義社会では選挙しないのです。そうすると、当然、衆院山口2区補選の争点には、後期高齢者(長寿)医療制度(姥捨山政策)の是非が含まれることになります。

もし自民党の候補者が当選すれば、「姥捨山政策」は今後ずっと維持されることになり、民主党の候補者が当選すれば、「姥捨て山政策」の廃止へ大きく傾くことになります。「姥捨て山政策」によって深刻な被害を受ける多数の人の健康・生命が、この衆院山口2区補選の結果で左右されることになるのです。衆院山口2区の住民には、多数の命の命運がかかっています。


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2008/04/16 [Wed] 23:46:53 » E d i t
光市事件の裁判を扱ったテレビ各局の番組について、以前、放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、調査して意見をまとめることにしたとの記事を紹介しましたが(「「放送倫理・番組向上機構」(BPO)、光市事件裁判報道の調査を決定」(2008/01/13 [Sun] 23:49:29)参照)。

4月15日、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、「番組の多くが極めて感情的に制作され、偏った内容になっていた」などと指摘、各局に裁判報道の改善を求める意見を通知しました。

対象は民放キー局や中国放送(広島市)、NHKなどが、昨年5月から9月に放送した20番組計33本で、いずれも事件の差し戻し控訴審を取り上げたニュースや情報系番組です。当然ながら、橋下徹大阪府知事が就任前の昨年5月、被告弁護人への懲戒請求を呼び掛けたバラエティー番組「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ、大阪市)も含まれています(共同通信)。特に、「たかじんのそこまで言って委員会」は番組改善に努め、その番組で刑事裁判・刑事弁護に関する基本的な理解について全く欠如した煽り立てを行った橋下徹氏は、猛省すべきです。


1.「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、意見書のなかで次のように徹底して酷評しています。

<1>多くは極めて感情的に制作していた、
<2>その場の勢いで、感情的に反応するだけで、他局でやっているから自局でもやる、さらに輪をかけて大袈裟にやる、という『集団的過剰同調番組』であった
<3>番組制作者に刑事裁判の仕組みについての前提知識が欠けていた、
<4>独自の取材や考察をすることがなく、いわゆる「素材負け」していた、
<5>実感のおもむくまま放映しただけで、何も残らない「巨大なる凡庸」につきる



これらを端的にまとめているのが、次の記者会見での川端委員長の言葉です。

「 検証委の川端和治委員長は記者会見で「刑事裁判に関する基本的な理解が不足しており、裁判報道に求められる公平性、正確性、公正性が忘れられた一方的な番組が相当数見られた」と指摘した。(02:03) 」(日経新聞平成20年4月16日付朝刊「「光市母子殺害「TV放送は感情的」・BPO検証委が意見書」 )


要するに、憲法上、定められている刑事裁判のやり方について(憲法34条、36条、38条、37条)、理解不足なのですから、番組制作者に憲法の理解に欠けていたこと放送倫理要綱や放送基準などで定めている公正性・正確性・公平性の原則に違反していることの2点が最大の問題でした。


放送倫理検証委員会はその「報告書」において、公正性・正確性・公平性の原則違反について、次のように特に「付言」しています。

「ここで、こうした問題にもまして委員会が強調したいことは、番組制作者の主体的意欲の問題である。公正性・正確性・公平性の原則は、表面的に捉えれば、真実を明らかにするための手続きにすぎない。真正面から事象に向き合い、取り組もうとする放送人にとっては、足して2で割るような公平性ではなく、みずからが、みずからの力で切り開く真実性こそが唯一の原則であろう。もしかしたらそこで、被疑者・被告の有罪・無罪までが見通せることにもなるかもしれない、そのような深い調査と洞察に基づく原則である。
 番組制作者には、委員会がこの段落の「付言」に込めた期待を読み取っていただきたいと思う。」


検察と弁護側の主張を単に並べるだけで、とって付けたような「公平さ」は意味がない。当事者の主張は、ごく最初の取っ掛かりにすぎず、もっと踏み込んだ考察をし、「みずからが、みずからの力で切り開く真実性」を追及した番組を制作してほしい――。番組制作者が「主体的意欲」をもって臨んでほしいというのが、「公正性・正確性・公平性の原則」の真の意味である、ということなのだと思います。



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2008/04/15 [Tue] 19:05:48 » E d i t
東京新聞「こちら特報部」では、「死刑――存廃を問う前に」という表題で、死刑の存廃に関する連載記事を始めました。第1回の記事の終わりの方に、その意図が記してありましたので、最初に紹介しておきます。

「死刑を自動的に」の鳩山邦夫法相発言や、目前に迫る裁判員制度をきっかけに、死刑への関心が高まっています。しかし、私たちは死刑について考える材料をどれだけ持っているでしょうか。「死刑―存廃を問う前に」では、死刑をめぐる話を紹介していきます。」(東京新聞3月23日付「こちら特報部」




1.「死刑―存廃を問う前に」第1回は、死刑制度存置に疑問を投げかける被害者遺族である、原田正治さんのインタビュー記事です。そこで、その記事を紹介する前に、死刑制度論の論点(死刑存置論と廃止論の理由)について触れておきます。

(1) ◇死刑存置論と廃止論の主な論点

「◇誤判・冤罪の可能性について
・存置論:誤判・冤罪が起こりうるのは死刑についてだけではない。司法制度全体の問題である
・廃止論:誤判・冤罪の危険性が常にあり、死刑は処刑したら取り返しがつかない

◇世論
・存置論:世論調査では「存置」が常に多数であり、世論が支持している以上、死刑は必要である
・廃止論:死刑を執行される側という少数者の人権の問題について、多数派の意見を重視するのは誤りである

◇被害者・遺族感情
・存置論:凶悪犯罪の犠牲となった被害者の遺族を納得させるためにも必要である
・廃止論:犯人を殺すことが被害者にとって問題解決になるのかどうか、疑問である

◇死刑の抑止力
・存置論:凶悪犯罪を防ぐのに役に立っている。廃止すると凶悪犯罪が多発する
・廃止論:死刑に凶悪犯罪の抑止力があるとは実証されていない」(朝日新聞平成19年12月20日付朝刊3面参照)



(2) ◆法律論としての死刑存廃論の主たる論点

「◆国家は犯罪者の生命を奪う権限を認められているか(法哲学的論点)
・存置論:殺人犯など凶悪な犯罪者に対しては、死刑をもって臨むべきであるということが国民の道義的・法的確信ないし国民感情になっている
・廃止論:国に生命の絶対的価値を前提として殺人行為を犯罪としておきながら、犯人の生命を剥奪するのは矛盾である

◆死刑に一般予防機能があるか(刑事政策的論点)
・存置論:死刑には威嚇力があり、凶悪な犯罪から社会を防衛し法秩序を維持するためには、その威嚇力に期待しなければならない
・廃止論:死刑に威嚇力があるかどうか不明であり、少なくとも「疑わしきは使わず」とする態度をとるべきである

◆死刑は憲法36条にいう「残虐な刑罰」にあたるか(憲法的論点)
・存置論:執行方法が適切であるから「残虐な刑罰」にあたらない
・廃止論:死刑は現在の文明に照らして残虐な刑罰に当たることは明らかである

◆誤判の可能性がある以上、取り返しのきかない死刑を宣告することは適正手続に反しないか(適正手続的論点)
・存置論:刑事裁判制度論とは別個の問題であり、犯行が明々白々の犯人に対しても死刑を認めないのか否かが問題であり、凶悪な犯罪者は生命剥奪によって社会から完全に隔離する必要がある(特別予防的観点)
・廃止論:死刑は一たび執行されれば事態を回復することはできず、裁判に誤判の可能性がある以上死刑の判決を言い渡すことは適正手続に反する」(川端博『刑法総論講義』(成文堂、2006年)参照)



今回紹介する東京新聞「こちら特報部」の記事は、死刑存置論の理由(◇)として挙げられている、「凶悪犯罪の犠牲となった被害者の遺族を納得させるためにも必要だ」についての妥当性について、着目した記事です。 それを頭に入れてこれから紹介する記事を読んで下さい。



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2008/04/14 [Mon] 23:14:41 » E d i t
自治会費に募金を上乗せして徴収するとした総会決議は違法として、滋賀県甲賀市甲南町希望ケ丘の住民男性5人が、所属する自治会を相手に、決議の無効確認などを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(横尾和子裁判長)は4月3日、自治会側の上告を棄却する決定をしました(時事通信2008/04/03-19:42)。これで、「徴収は思想・信条の自由(憲法19条)を侵害する」として決議を無効と認め反対住民側の逆転勝訴の二審大阪高裁判決が確定しました。

大阪高裁は昨年8月24日、決議による募金徴収は事実上の強制で、社会的に許容される限度を超えており、公序良俗に反すると判断し、「思想信条への影響は抽象的。上乗せ徴収には必要性、合理性がある」とした一審判決を取り消していました。


1.まずはこの事案の経緯を説明しておきます。

「滋賀県甲賀市甲南町の「希望ケ丘自治会」(地域自治体・約940世帯)は、従来、赤い羽根共同募金や日本赤十字社への寄付金などを各世帯を訪問して任意で集めてきた。

 このように、この寄付金は班長・組長らが訪問して集めていたが、約940世帯ある上に高齢者も多く、各家を1軒ずつ回って徴収するのは負担が大きいこと、しかも協力を得られなかったり留守だったりするなどでより負担が重くなったため、班長になるのを避けようと休会する人もいた。

 そこで、集金にあたる班長・組長らの負担を解消しようと2006年3月の定期総会で、年会費6000円の自治会費に募金や寄付金など2000円分を上乗せ(増額)して徴収することを定期総会で賛成多数で決議した。その決議では、増額分の会費は、全額、地元の小中学校の教育後援会、赤い羽根共同募金会、緑化推進委員会、社会福祉協議会、日本赤十字社及び滋賀県共同募金会への募金や寄付金に充てる、としていた。

 これに対して、原告らは「寄付するかどうかは個人の自由」と一律徴収に反対し、翌月に「本件決議は思想・良心の自由等の侵害を理由として決議の無効確認等を求めて訴訟を起こした。

 1審判決(大津地判平成18・11・27判例集未搭載)は、本件募金対象団体が政治的思想や宗教に関わるものではなく、寄付の名義は原告らではなく「希望ケ丘自治会」であることからも構成員の思想信条に与える影響は直接かつ具体的なものではなく、また負担金額も過大ではない、として本件決議が公序良俗に反しないとしていた。

 これに対して、大阪高裁平成19年8月24日判決は、募金及び寄付金は、その性格上、「すべて任意に行われるべきものであり」班長や組長の集金の負担の解消を理由に、これを会費化して一律に協力を求めようとすること自体、「希望ケ丘自治会」の性格からして、「様々な価値観を有する会員が存在することが予想されるのに、これを無視するものである上、募金及び寄付金の趣旨にも反する」としました。

 そして、募金及び寄付金に応じるかどうかは、「各人の属性、社会的・経済的状況等を踏まえた思想、信条に大きく左右されるものであり」、会員の任意の態度、決定を十分に尊重すべきだとし、「その支払を事実上強制するような場合には、思想、信条の自由の侵害の問題が生じ得る」。

会費を納付しなければ脱会を余儀なくされる恐れがあったが、自治会未加入者はごみステーションを利用できないなどの不利益を受け、脱退の自由を事実上制限されていた。したがって、本件募金の徴収は、「会員の生活上不可欠な存在」である「希望ケ丘自治会」により、事実上強制されるものであり、「社会的に許容される限度を超える」と判示して、1審判決を取り消していました。」(判例セレクト2007(有斐閣、2008年)6頁)、朝日新聞4月4日付滋賀県版など参照)



私が住んでいる地域では、もう随分前から、赤い羽根共同募金の事実上の強制はなくなっていますから、未だにこの判例の事案のような「強制」が行われているのかと思うと、ちょっと驚きを感じます。

もっとも、訴訟の判決が4月3日に(最高裁で)確定したのを受け、原告代理人の吉原稔弁護士は、大津市内で会見し、県内ではほかにも募金を強制的に徴収する同様の事例が多く見受けられるとし、「判決が与える影響は大きいだろう」と話しています(朝日新聞)。おそらくは、全国では、事実上の強制がまだまだ多いのだと思いますから、この最高裁決定は、全国の地域自治体に対して影響を与えるものと思われます。



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2008/04/13 [Sun] 23:59:42 » E d i t
雑貨輸入販売会社の元社長三浦和義氏は、米ロサンゼルスで1981年に起きた銃撃事件(いわゆる「ロス疑惑」事件)の容疑者として、日本で無罪が確定しながら、米自治領サイパン島で逮捕され身柄拘束されています。これは、カリフォルニア州では同一の犯罪で重ねて刑事責任を問われない「一事不再理」の原則を定めた州法があったのですが、これが修正されて米国外の判決は適用除外になりました。そこで、米捜査機関は、「一事不再理効」が及ばないとして起訴可能だと判断したことから、逮捕し身柄拘束しているわけです。

ところが最近、「ロス疑惑」事件と類似したケース(法改正前に米国外で判決が出ていたケース)について、米カリフォルニア州サンディエゴ郡地裁は4月11日、他国での判決確定後に同じ事件で再び刑事責任を問うことを禁じた「一事不再理」を適用し、メキシコ人セレスティノ・メンデス・マルチネス被告(43)の殺人罪での起訴を取り消しています。「ロス疑惑」事件の裁判のを行方を決定付ける判断ですので、紹介したいと思います。


1.まず、ロス市警側が、起訴可能だと判断した経緯についての記事を幾つか。

(1) 時事通信(2008/03/01-10:17)

州議会の適用廃止で可能に=国外裁判の一事不再理-ロス疑惑銃撃事件・米紙報道

 【ロサンゼルス29日時事】1981年に起きた米ロス疑惑銃撃事件で、地元の有力紙ロサンゼルス・タイムズは29日付紙面で、米警察が元会社社長三浦和義容疑者(60)を逮捕した経緯などを初めて詳細に報じた。
 同紙の記事によると、日本で無罪が確定した事件を改めて取り上げるのは、一事不再理の原則に反する恐れが以前はあった。しかし、カリフォルニア州議会は2004年、ロス郡保安官を殺害した外国人容疑者がメキシコに逃亡する事件が発生後、国外で裁判を受けた者への一事不再理適用を廃止したため、三浦容疑者の起訴も可能になったという。」



(2) 朝日新聞平成20年3月1日付夕刊1面

州刑法改正、三浦元社長訴追に道開く 適用の是非焦点
2008年03月01日17時02分

 米国ロサンゼルス市内で81年に妻を殺害したとして元雑貨輸入販売会社社長、三浦和義容疑者(60)が逮捕されたことがわかって1日で1週間。同市があるカリフォルニア州では、04年の州法改正で、米国外で判決が確定した容疑者の再訴追が可能なことをはっきりさせていたことが分かった。元社長の身柄を拘束しているサイパンの自治領政府は、カリフォルニア州の引き渡し要請に応じる見通しだ。一方、ロサンゼルスでは、日系人社会の印象が悪くならないか、懸念が広がっている。

 銃撃事件の舞台になった米カリフォルニア州では、同じ犯罪行為の刑事責任を何度も追及することを禁じる「一事不再理」の原則を定めた州刑法が04年に改正されていた。この改正は、米国外での裁判に対して同原則を適用しないとするもので、ロス市警など捜査当局は、日本で無罪判決が確定した元社長を同州で訴追できると判断したという。

 ただ、元社長の日本での無罪確定は03年で同州法改正前。さかのぼって同法が適用されるか、議論が分かれる可能性がある。

 米国で「二重危険の禁止」と呼ばれる同原則を記した州刑法は、改正前は「米国内の他州や他国で有罪または無罪判決を受けた場合は」訴追できないと定めていた。ロサンゼルス市当局者は「この法改正で元社長の訴追が可能になった」とロサンゼルス・タイムズ紙に語った。

 02年にロサンゼルス郡保安官が殺害されてメキシコ人容疑者がメキシコに逃亡する事件が起きたことから、法改正の機運が高まり、04年9月に改正法が成立。条文から「他国」が削られた。  (以下、省略)」



朝日新聞の記事に出ているように、米カリフォルニア州の州刑法が改正されたとはいえ、04年の改正ですから、03年に無罪が確定した三浦氏に対しては、遡及して改正法を適用しなければなりません。本来、改正法を遡及して適用できるか否かは、明文規定で明示しておくべきものなのですが、どうやらそのような規定がないようですので、法解釈論として議論になっていました。

「銃撃事件の舞台になった米カリフォルニア州では、同じ犯罪行為の刑事責任を何度も追及することを禁じる「一事不再理」の原則を定めた州刑法が04年に改正されていた。この改正は、米国外での裁判に対して同原則を適用しないとするもので、ロス市警など捜査当局は、日本で無罪判決が確定した元社長を同州で訴追できると判断したという。

 ただ、元社長の日本での無罪確定は03年で同州法改正前。さかのぼって同法が適用されるか、議論が分かれる可能性がある。」



朝日新聞の記事では、「さかのぼって同法が適用されるか、議論が分かれる可能性がある」としていますが、明文規定がないのですから、「議論が分かれる可能性」ではなく、当然、議論が分かれます。



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2008/04/12 [Sat] 22:59:06 » E d i t
2004年1・2月に「自衛隊のイラク派兵反対!」「ブッシュも小泉も戦争には行かない」と書いたビラを各室玄関ドアの新聞受けに入れる目的で、昼間、東京都立川市の防衛庁(当時)宿舎(1~10号棟あった)に立ち入り(30分程度)、各号棟(3・5・6・7号棟)の各室玄関ドアの新聞受けに投函した行為について、住居侵入罪(刑法130条前段)が成立するかについて、最高裁平成20年4月11日判決は、無罪を主張していた被告人3名の上告を棄却しました。これで、罰金の有罪判決とした2審・東京高裁判決が確定します。

これは、「政治的表現活動の自由の一態様としてのポスティングの自由と刑事責任とをいかに解するか」という論点に関する判例(判例時報1949号170頁参照)であり、政治的主張を記したビラの配布を禁止する行為が、憲法で保障された「表現の自由」の侵害にあたるかどうかが主として争点となりました。この最高裁判決について検討したいと思います。

なお、ビラ配りと住居侵入罪の成否が問題となった裁判例については、「政党ビラ配りと住居侵入罪の成否(上)~東京高裁平成19年12月11日判決」(2007/12/14 [Fri] 23:59:05)「政党ビラ配りと住居侵入罪の成否(下)~東京高裁平成19年12月11日判決」(2007/12/15 [Sat] 23:48:09)でも触れています。こちらもご覧ください。
4月13日追記:読売新聞4月13日「社説」について一部引用して検討を行った)


1.まず、簡単な事案の概要・主なビラ配布事件の経緯・判例に触れた記事を紹介しておきます。

(1) 簡単な事案の概要

<立川反戦ビラ配布事件> 東京・立川基地の在日米軍が横田基地に移った後、自衛隊が使用することに反対した市民らが1972年、市民団体「立川自衛隊監視テント村」を結成。反戦や基地反対を訴えた。2004年1月に「自衛隊のイラク派兵反対!」と書いたビラを各戸の新聞受けに入れるため、隊宿舎の通路や階段に立ち入ったとして、警視庁は翌2月、住居侵入容疑でメンバー3人を逮捕。東京地検八王子支部が起訴した。3人は75日間拘置された。人権団体のアムネスティ・インターナショナルは04年、3人を思想信条を理由に拘禁された「良心の囚人」に日本で初認定した。」(東京新聞平成20年4月12日付朝刊1面



(2) 主なビラ配布事件の経緯(東京新聞平成20年4月12日付朝刊11面)

「2004年1月 市民団体「立川自衛隊監視テント村」の大洞俊之被告ら3人が、反戦ビラ配布のため東京都立川市の自衛隊宿舎敷地内に立ち入る
     2月 大洞被告ら2人が、再び立ち入る。警視庁が、住居侵入容疑で3人を逮捕
     3月 共産党機関紙の号外などを配ったとして、警視庁が国家公務員法違反(政治的行為の制限)容疑で社会保険庁職員を逮捕。東京地検八王子支部がテント村の3人を起訴
     12月 東京地裁八王子支部がテント村の3人に無罪判決。東京都葛飾区のマンションで共産党の「区議団だより」を配った僧侶が現行犯逮捕される
05年9月 東京都世田谷区の警視庁官舎で共産党機関紙の号外を配った厚生労働省職員が、住居侵入の現行犯で逮捕。地裁が拘置を認めず釈放されたが、東京地検は国家公務員法違反罪で在宅起訴
   12月 東京高裁がテント村の3人に罰金20万―10万円の逆転有罪判決
06年6月 東京地裁が社保庁職員に罰金10万円、執行猶予2年の判決(職員・検察双方が控訴)
   8月 東京地裁が僧侶に無罪判決
07年12月 東京高裁が僧侶に罰金5万円の逆転有罪判決。僧侶が上告
08年4月 最高裁がテント村3人の上告棄却判決。罰金刑が確定へ」


この最近の判決をみると、警察や検察は、反戦を主張する市民団体、共産党の配布物を狙い撃ちして処罰を求めているようにも受け取れます。日本の警察や検察の態度・意識としては、昔も今も変わらないようです。


(3) 判例に触れた記事(朝日新聞平成20年4月12日付朝刊34面(13版)

ビラ配り有罪確定へ 最高裁上告棄却 表現の手段 処罰

 東京都立川市の自衛隊官舎で自衛隊のイラク派遣に反対するビラを配った3人が住居侵入罪に問われた事件で、最高裁第二小法廷(今井功裁判長)は11日、無罪を主張していた3被告の上告を棄却する判決を言い渡した。有罪とした二審・東京高裁判決が確定する。

 第二小法廷は「官舎の管理者の意思に反して立ち入れば、住民の私生活の平穏を侵害する」と指摘。集合住宅でのビラ配りを住居侵入罪に問うことは、憲法が保障する「表現の自由」に反しないとする初判断を示した。

 有罪が確定するのは、市民団体「立川自衛隊監視テント村」のメンバー大洞俊之被告(50)=罰金20万円▽高田幸美被告(34)=同▽大西章寛被告(34)=罰金10万円。自衛隊のイラク派遣の是非が問題となっていた時期の04年1月と2月の2回にわたり、「自衛隊のイラク派兵反対!」などとしたビラを官舎各室の新聞受けに入れようと敷地に入った。

 第二小法廷は、塀などで囲われた官舎の敷地や各戸の玄関前までは、自衛隊側が管理していると指摘。関係者以外の立ち入りを禁じる表示があったことや、3人が立ち入ってビラを配るたびに被害届が出ていたことなどから、無断で立ち入ることは管理権者の意思に反し、被害の程度も軽くないと述べた。

 「表現の自由」については、「無制限に保障されるものではなく、公共の福祉のために必要かつ合理的な制限を受ける」とした過去の最高裁判例を踏襲。「表現そのもの」でなく表現の手段を処罰する今回のケースは、憲法に反しないと結論づけた。

 3人は04年2月に逮捕され、5月まで勾留(こうりゅう)が続いた。一審・東京地裁八王子支部は04年12月、政治ビラの配布について「民主主義の根幹を成し、商業ビラより優越的な地位が認められる」と指摘、刑事罰を科すほどの違法性はないとして無罪とした。二審・東京高裁は05年12月に「管理者の意思に反して立ち入ってはならない」として逆転有罪にした。(以下、省略)」





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裁判例 *  TB: 11  *  CM: 4  * top △ 
2008/04/11 [Fri] 18:03:22 » E d i t
映画「靖国 YASUKUNI」上映中止問題について、稲田朋美衆議院議員は、産経新聞において弁明を行っています。産経新聞平成20年4月9日付朝刊【正論】「文化庁の映画助成 衆議院議員、弁護士・稲田朋美」がその記事です。

「■助成の妥当性だけを問うた

 表現・言論の自由が保障されたわが国において、たとえ政治的、宗教的な宣伝意図のある映画を製作しようと公開しようと自由である。今回、映画『靖国 YASUKUNI』(李纓監督)の一部映画館での上映中止をめぐって私が批判の矢面に立たされている。私たちが問題にしたのは、この映画自体ではない。そこに文化庁所管の日本芸術文化振興会が750万円の公的助成をしたこと、その一点についてである。」


これがその弁明の書き出しです。
この“産経新聞での弁明”の妥当性について検討したいと思います。



1.「日本映画」ではないのか。

「 ≪「日本映画」ではない≫

 結論からいって同振興会が助成金を出したのは妥当ではない。助成の要件である(1)日本映画であること(2)政治的、宗教的宣伝意図がないこと-を満たしていないからだ。

 まず、この映画は日本映画とはいえない。振興会の助成要項によれば「日本映画とは、日本国民、日本に永住を許可された者又は日本の法令により設立された法人により製作された映画をいう。ただし、外国の製作者との共同製作の映画については振興会が著作権の帰属等について総合的に検討して、日本映画と認めたもの」としている。

 映画「靖国」の製作会社は日本法により設立されてはいる。しかし取締役はすべて中国人である。平成5年、中国中央テレビの日本での総代理として設立されたというが、映画の共同製作者は2つの中国法人(団体)であり、製作総指揮者、監督、プロデューサーはすべて中国人である。」


稲田議員はこのように述べて、映画「靖国」は「外国映画」であるから、「日本映画」であるとして助成金を支出したことは妥当でないとしています。では、この説明は妥当なのでしょうか?


(1) 内国会社(日本会社)か外国会社かを区別する立法政策(内外法人の区別基準。「法人国籍論」とも言います)としては、主として次のような3つの考え方があります。

1 外国会社の考え方

 ある会社がどの国の法律に従って設立されたかにより、それが自国法であれば内国会社、外国法であれば外国会社とする決め方を設立準拠法主義という。客観的に決まる明確な基準であり、いったん決まれば会社の成立後に変わることはない。反面、便利そうな国の法をショッピングする可能性がある。

 これに対し、会社の事業活動の本拠がどこにあるかによって本国法を決める方法を本拠地法主義という。実際に活動している場所と結びつく点では、こちらの方がより客観性のある基準だといえる。他方、どこが活動の中心なのか、とらえにくい場合もありうる。

 このほか、企業を支配する者の国籍等を重視する決め方もある(管理主義)。」(龍田節『会社法大要』(有斐閣、2007年)526頁)


英米法系の国では設立準拠法主義を採用するものが多く、ヨーロッパ諸国では本拠地法主義を採用するものが多いのですが、文化庁所管の日本芸術文化振興会の助成要件としては、設立準拠法主義を採用したわけです。

平成17年に制定した会社法では、初めて外国会社の定義規定を設け、そこでは設立準拠法主義を採用しています(会社法2条2号)。会社に関して国際的な紛争が生じた場合、どの国が適用されるかという問題(国際私法の問題)においても、設立準拠法主義が一般的です。このように、日本法の立法・解釈としては、設立準拠法主義が一般的なのです。

そうすると、映画「靖国」の製作会社は日本法により設立されているのですから、その製作会社が日本芸術文化振興会の助成要件の「日本会社」であることは明白です。


(2) これに対して、稲田議員は、「取締役はすべて中国人」であり、「映画の共同製作者は2つの中国法人(団体)であり、製作総指揮者、監督、プロデューサーはすべて中国人」だとして、「日本会社」でないとしています。この考え方は、従来の法人国籍論を否定し、会社の経営権の帰属を基準とする「管理主義」という見解であり、稲田議員は「管理主義」説を主張しているわけです。

確かに、立法政策としては「管理主義」も存在します。しかし、文化庁所管の日本芸術文化振興会の助成要件としては、設立準拠法主義が基準として明示されている以上、別個の立法政策を主張したところで、まるで的外れの主張であって、明らかに妥当ではありません。稲田議員は、立法政策と解釈論の区別がついておらず、内国会社(日本会社)か外国会社かを区別する立法政策について、全く理解していないと言わざるを得ません。

もしかしたら、文化庁所管の日本芸術文化振興会の助成要件を「管理主義」説に改正したいという意図があるのかもしれません。しかし、日本法は、設立準拠法主義が一般的ですから、「管理主義」説に改正される見込みはありませんし、「管理主義」説は基準が不明確すぎるので、「管理主義」説は少数説であり、「管理主義」説を採用することは非常に考えにくいのです。

「管理主義」説は、第一次大戦中、フランスで法人の敵性決定の問題を巡って主張された見解です。すなわち、資本も経営権もドイツ人に帰属している会社で、フランス法に準拠して設立された会社は、設立準拠法主義によればフランス法ですが、果たしてドイツとフランスの戦争中これをフランス法人として、敵国人とみなさないでよいかという問題が生じて、主張された見解なのです(澤木敬郎『国際私法入門(第3版)』168頁)。このように、元々、過去の戦争中の見解であり、今や呆れるほど時代錯誤の、過去の見解にすぎません。

どう考えても、稲田議員の主張は妥当でないことは明白です。



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2008/04/10 [Thu] 23:27:11 » E d i t
法務省は4月10日、死刑囚4人の刑を執行したと発表しました。鳩山邦夫法相の下での死刑執行は昨年12月7日、2月1日に続き3回目で計10人にも及ぶことになり、3回とも国会開会中の執行です。この日の執行で、死刑確定囚は計104人となりました。鳩山法相は前回同様、執行した死刑囚の人数だけでなく、氏名、執行場所などを公表しています。


1.報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年4月10日付夕刊

4人死刑執行 鳩山法相のもと10人目「今後も粛々」
2008年04月10日13時25分

 法務省は10日、同日午前に4人の死刑を執行したと発表した。鳩山法相が昨年8月に就任以来、執行は昨年12月の3人、今年2月の3人に続いて3回目で計10人。法相は午前11時からの記者会見で「これからも、粛々とやらせていただく」と語った。これで確定死刑囚は104人になる。

 一時止まっていた執行が93年に3年4カ月ぶりに再開されてから、1人の法相のもとでの10人の執行は長勢前法相と並んで最多。前法相は4カ月に1度だったが、鳩山氏は2カ月に1度の間隔で執行命令を出していることになる。

 また、死刑判決の確定から執行までの期間は07年までの10年間でみると平均8年だったが、この日執行された4人のうち3人は確定後4年以内だった。

 法務省によると、執行されたのは、中元勝義(64)、中村正春(61)、坂本正人(41)、岡下(現姓・秋永)香(61)の4死刑囚。中元、中村の両死刑囚は大阪拘置所で、坂本、岡下の両死刑囚は東京拘置所で執行された。

 中元死刑囚は82年、大阪府和泉市の宝石商夫婦を殺害し、現金や宝石を奪った。中村死刑囚は89年に滋賀県内で、わいせつ目的や金目当てに、路上生活者と職場の元同僚の男性計2人を相次いで殺害、遺体を切断して捨てた。

 坂本死刑囚は02年、群馬県内で高校1年の女子を自分の車に押し込み、絞殺。女子の両親に電話し、生きていると装って身代金を要求した。岡下死刑囚は89年、東京都杉並区のアパート経営者を絞殺し、その殺害を共犯者の男性による犯行と偽装するために、男性を射殺した。」



(2) 東京新聞平成20年4月10日付夕刊1面

4人の死刑執行 鳩山法相 4カ月で計10人
2008年4月10日 夕刊

 法務省は十日、アパート経営の女性らを殺害した元不動産ブローカー秋永香死刑囚(61)ら四人の死刑を執行したと発表した。鳩山邦夫法相の命令による執行は三度目で、四カ月間で計十人になった。これだけ短期間に執行が集中するのは極めて異例。鳩山法相は記者会見で「粛々と執行している。人数や執行の間隔は意識していない」と述べた。

 一日に四人の執行は、二〇〇六年十二月の長勢甚遠法相(当時)下での執行以来。国会開会中は執行を避けるのが慣例となっていたが、鳩山法相は三度とも開会中に執行を命じた。

 執行されたのは▽一九八九年、東京都杉並区のアパート経営の女性=当時(82)=の土地を転売して二億八百万円をだまし取り、女性と詐欺の共犯者を殺害した秋永(獄中結婚で岡下から改姓)香死刑囚▽〇二年、群馬県の女子高生=当時(16)=を拉致して殺害後、父親から身代金を受け取った坂本正人死刑囚(41)=いずれも東京拘置所在監▽八二年、大阪府和泉市で顔見知りの宝石商夫婦を殺害した中元勝義死刑囚(64)▽八九年、滋賀県内で元同僚ら二人を殺害し現金を奪った中村正春死刑囚(61)=いずれも大阪拘置所=の四人。

 死刑確定から十一年一カ月で執行された中元死刑囚以外は、確定後三年-三年半での執行になった。法務省によると、現在の確定死刑囚は百四人になった。」



鳩山法相は、2カ月に1度の間隔という異例のスピードで次々と死刑執行を行っていますが、その点につき、次のように述べています。

「法相は午前11時からの記者会見で「これからも、粛々とやらせていただく」と語った。」(朝日新聞)

「鳩山法相は記者会見で「粛々と執行している。人数や執行の間隔は意識していない」と述べた。」(東京新聞)


鳩山法相にとっては、次々と「人殺し」を実行しているのに、人数も執行間隔も意識していないのですから、鳩山氏にとってはまるで「人殺し」も日々の食事であるかのような気軽さです。鳩山氏にとっては、なんて人の命は軽いのだろうと、しばし呆然としてしまいました。

以前、鳩山法相は、「法相の署名なしで自動的に執行できないか」ととか、ベルトコンベヤーのように執行できないかと述べたため、暴言であると批判を受けていましたが(「鳩山法相“署名なしで死刑執行を”発言~暴言に法相の資質を疑う!(毎日新聞9月27日付「社説」より)」(2007/09/29 [Sat] 05:51:11)参照)、自ら、自動的に死刑を執行・ベルトコンベヤーのように執行しているのです。

「死刑判決の確定から執行までの期間は07年までの10年間でみると平均8年だったが、この日執行された4人のうち3人は確定後4年以内」(朝日新聞)とのことです。原則として、確定後6ヶ月以内に死刑を執行とはいえ、確定から執行までの期間は平均8年だったのですから、死刑囚にとって予測可能性に反するものです。死刑囚の行った事実自体は当然非難に値するものであるとはいえ、死刑囚の命は、国によって軽く扱われていると感じます。

中国当局が長年、チベット人を強硬な弾圧を行ってきており、チベット人らによるデモ参加者への弾圧・殺害に対して世界中の人々から厳しい非難が集まり、ロンドン、パリ、サンフランシスコにおいて、聖火リレーへの猛烈な抗議活動が相次いでいます(聖火ランナーの傍には中国当局のガードマン(武装警察の疑いが強い) がおり、勝手に火を消したりしている)。そういう人権抑圧への非難が高まっている中で、日本ではこうして次々と「人殺し」を気軽に実行しているのですから、日本政府は中国政府に対して何も言える立場ではなくなってしまいました。

もっとも、元々、先進国の中で日本政府だけはほとんど中国政府に抗議の意思を示しておらず、まるでチベット人の自由・命を軽く見ているかのような対応です。保護する義務がある日本人の命さえ軽いのですから、今の自民党政府にとっては、当然の対応なのかもしれません。


4月22日は、光市事件差し戻し控訴審の判決日であり、死刑判決になるのか否か注目されているといえます。東京新聞4月10日付「こちら特報部」では、判決が間近になったことから、再び、安田弁護士へのインタビュー記事を掲載しています。そこで、この記事を紹介したいと思います。



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事件 *  TB: 5  *  CM: 7  * top △ 
2008/04/07 [Mon] 05:07:58 » E d i t
75歳以上の方(75歳の誕生日から)、および65歳以上75歳未満で一定程度の障害の障害のある方を対象とした公的医療保険「後期高齢者医療制度」が4月1日から始まりました。75歳以上の方(75歳の誕生日から)、および65歳以上75歳未満で一定程度の障害の障害のある方は、現在加入している国民健康保険又は被用者保険(被扶養者含む)から脱退させられ、後期高齢者だけの独立保険に組み入れられるというものです(65歳以上75歳未満で一定程度の障害の障害のある方は、今までの通りか新制度に加入するか選択する。選択しないと自動的に新制度に組み込まれる)。


1.この新制度を創設した理由は、「75歳以上の後期高齢者の医療費は、高齢化の進展に伴い、今後、ますます増大する」ことから、「この医療費を安定的に確保するため」、「現役世代と高齢者の負担を明確にし、負担能力に応じたものにする」とともに「公費(税金)を重点的に充て、国民全体で支える仕組み」とする(厚労省の「後期高齢者医療制度に関するQ&A」より)ものです。

簡単に言えば、国民から保険料をできる限り巻上げ、診療費を減らすことで、医療費抑制を主要な目的とする制度です。そうすると、巻き上げられる国民側は非常に不安になります。その不安感を端的に示した社説を挙げておきます。

(1) 宮崎日日新聞平成20年4月2日付「社説」

後期高齢者医療制度
2008年04月02日

年金天引きの不安どうする

 複雑な思いで成り行きを見守っている。1日からスタートした「後期高齢者医療制度」だ。75歳以上の全員と65歳から74歳で寝たきりの人などが加入する。対象者は全国で約1300万人。本県には約15万人いる。

 保険料は原則、年金から天引きされる。全国平均では月額6千円程度とされるが、その地域で掛かった医療費が算出のもとになり、所得も考慮されるため都道府県によって金額に幅がある。

 県後期高齢者医療広域連合によると本県は東北地方の各県などに次いで平均負担額は低く、九州では最低になるという。それだけ、なけなしのお金から拠出する人が多いということになる。

■思いやり感じられず■

 滞納が続いた場合、保険証は取り上げられ、医療機関の窓口で医療費をいったん全額払わなければならない事態が発生する。その場合は資格証明書が発行され、保険分は申請すれば戻ってくるとはいうものの、国民健康保険ではこの年齢層にはその規定がなかった。

 もちろん保険証を取り上げることには、各広域連合とも慎重で、払えるのに払わない悪質なケースに限定される。だとしても、高齢者がただ一つ暮らしの支えにしている十分とは言えない年金の中から、機械的に差し引くという仕組みに思いやりや優しさを感じろ、という方が無理だろう。

 これまで、会社勤めの子どもの扶養家族として保険料を払っていなかった高齢者にとっては大きな負担増になる。そんな人たちが約200万人もいる。半年は免除されるが、段階的に負担が増え、3年目からは本来の額になる。

 負担増とともに気になるのは、受けられる医療の内容だ。厚生労働省は今までと変わらないという。しかし、本当にそうなのか。

■医療費の抑制ありき■

 新制度の背景には、高齢化で膨れ上がる老人医療費の伸びの抑制目的がある。老人医療費の財源は公費(税金)が5割、加入者の保険料が1割、4割は働く現役世代からの支援金で賄う。保険料の引き上げには限界があるため、結果として全体の医療費に枠がはめられることになる。

 県内の医師から「初めに医療費抑制ありきの制度」と批判の声を聞いた。国民健康保険から移る人は、一部地域を除き今月15日の年金支給分から天引きされる。その医師は、4・15に衝撃を受ける人がいるだろうとも、予想する。制度の周知徹底もまだまだ十分とはいえないようだ。

 そもそも一定の年齢でドライに区切ることがいいのか、どうか。いまだに議論の余地が大いにある。全国の多くの地方議会が、制度の見直しを求める意見書を採択している。ことは命にかかわる問題だ。新制度で内容が悪くなっては元も子もない。

 誰でも年を取る。そして誰もが必要な医療を、お金のことは心配せずに受けたいと願っている。矛盾が出ればいつでも、ちゅうちょなく制度を見直す柔軟さが不可欠だ。そのために、最初に対象者となった高齢者の声に耳を傾ける姿勢が大切だろう。」




(2) この社説の中では、次の部分が問題点を端的に示していると思います。

 「滞納が続いた場合、保険証は取り上げられ、医療機関の窓口で医療費をいったん全額払わなければならない事態が発生する。その場合は資格証明書が発行され、保険分は申請すれば戻ってくるとはいうものの、国民健康保険ではこの年齢層にはその規定がなかった。

 もちろん保険証を取り上げることには、各広域連合とも慎重で、払えるのに払わない悪質なケースに限定される。だとしても、高齢者がただ一つ暮らしの支えにしている十分とは言えない年金の中から、機械的に差し引くという仕組みに思いやりや優しさを感じろ、という方が無理だろう。

 これまで、会社勤めの子どもの扶養家族として保険料を払っていなかった高齢者にとっては大きな負担増になる。そんな人たちが約200万人もいる。半年は免除されるが、段階的に負担が増え、3年目からは本来の額になる。」


75歳以上の高齢者は、障害者や被爆者などと同じく、“保険料を滞納しても、保険証を取り上げてはならない”とされていました。これに対して、新制度は、自ら保険料を払うことになり、もし払わないと保険証を取り上げる形で追い込むという手口を採用したのです。「保険証を取り上げることには、各広域連合とも慎重で、払えるのに払わない悪質なケースに限定される」とは言うものの、明文規定があるという話もありませんから、本当に悪質なケースに限るのか不明です。

この保険証没収制度があるため、新制度は、まるでヤミ金(闇金融・やみきんゆう)の追い込みのような悪質さと言われるゆえんとなっています。

そして、高齢者になるほど、正当な額の年金が支払われていないケースが多く、仮に年金記録を修正できてもその正当な金額の支払いは半年先だったりする方もいる中で、保険料は年金から天引きをするのですから、ただ取られるだけの「ぼったくり」の被害に遭うようなものです。



(3) 最初に、75歳以上の方、および65歳以上75歳未満で一定程度の障害の障害のある方は、現在加入している国民健康保険又は被用者保険(被扶養者含む)から脱退させられ、後期高齢者だけの独立保険に組み入れられると書きました(新制度の対象者は全国で約1300万人)。

これだけ読むと、新制度により、75歳以上の方、および65歳以上75歳未満で一定程度の障害の障害のある方だけが保険料を負担するようにも読めますが、実は違うのです。すなわち、例えば、新制度では被用者保険に加入していた夫が75歳以上で、妻が74歳以下の場合、夫は自動的に新制度に組み込まれますが、妻は自分で手続きをしなければ無保険者になってしまいます(その数は約7万人)。また、サラリーマンの子どもなどに扶養され、これまで保険料を支払ってこなかった約200万人の人にも新たに保険料負担が生じることなります。

まとめると、その高齢者が、被扶養者として保険料を負担してなかった方は、保険料を支払うことになり、また、その高齢者が扶養者として保険料を支払っていた場合は、保険料を負担してなかったご家族は別個に保険料を支払うことになるのです。

新制度によると、後期高齢者自身が加入者になることから、医療費を使いすぎたら保険料アップという形で自分に跳ね返るのです。ですから、保険料アップが嫌なら医者に行くな、ということです。実に念入りです。

こうして、この新制度は、高齢者自身から保険料の巻き上げ及び保険料支払額を増やすだけでなく、他の家族からも保険料を巻き上げることにしたのです。

後述する東京新聞にも次のような声が掲載されています。

「中村さんは最近、東京・練馬で息子家族と同居を始めた。世帯収入が上がり、それで介護保険料が2倍以上に跳ね上がった。「年寄りに厳しいことばかり」とこぼした。」


要するに、世帯単位では、大幅に保険料の負担が増えることになるのです。

このように、いかにして国民から金を巻き上げるかについて、様々な手段を考案した厚労省は、ある意味天才ですし、舛添厚労相は「金は天から降ってこない」などと述べて正当化し謝罪することもないのですから、日本政府は、まるで日本国民を何も文句を言わない奴隷のように思っているようです。



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2008/04/05 [Sat] 17:06:08 » E d i t
「修復腎移植を考える超党派の会」の勉強会は着々と進んでいます。3月18日に第3回、3月24日に第4回の会合を開催しています。

第1回会合については、「“レストア腎(病気腎)移植”超党派の議員連盟発足~厚労省による「病気腎禁止」見直し求める(東京新聞2月22日付「こちら特報部」より)」(2008/02/23 [Sat] 06:12:46)で、第2回会合については、「『修復腎』移植、万波氏以外に全国76例も~「修復腎移植禁止」は妥当だったのか?(東京新聞3月1日付「こちら特報部」より) 」(2008/03/02 [Sun] 05:42:42)で紹介していますので、そちらをご覧ください。


1.「修復腎移植を考える超党派の会」の会員である平沢勝栄衆院議員のHPから、第3・4回会合の様子についての概略を引用しておきます。そのHPによると、第3回会合(3月18日)は、衆議院第一議員会館・第3会議室で、日本移植学会、同腎臓学会などから見解を聴取した後、活発な意見交換を行いました。また、第4回会合(3月24日)は衆議院第一議員会館・第4会議室で、アメリカとオーストラリアの専門家から見解を聴取した後、活発な意見交換を行いました。


第3・4回会合の様子については、残念ながら報道機関による報道は見当たりませんでした。そこで、その様子を記事にしている「徳洲新聞」を引用して、紹介したいと思います。


ちなみに、「徳洲新聞」は第1・2回の会合についても詳しく記事にしています。「発足会に68人の議員が集結 国会議員が「修復腎移植を考える超党派の会」結成」(徳洲新聞No.610[2008(平成20)年3月3日]1面)「人の命が助かることが最も重要 「修復腎移植を考える超党派の会」」(総会徳洲新聞No.611[2008(平成20)年3月10日]3面)が、その記事です。



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2008/04/04 [Fri] 20:05:07 » E d i t
映画「靖国 YASUKUNI」上映中止問題については、「ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」上映中止に~稲田朋美衆院議員の横槍が背景に」(2008/04/02 [Wed] 23:46:46)で一度触れましたが、5月3日から上映予定だった名古屋市千種区の映画館「名古屋シネマテーク」は延期を決めており、また、マスコミ関係者から非難する声明が出るなど、この映画「靖国」上映中止問題の波紋はますます広がっています。


1.すでに触れたことですが、3月31日、日本映画監督協会(崔洋一理事長)は3月31日、映画・演劇をはじめとするマスコミ業界の労組は4月1日、相次いで抗議声明を出しています。

(1) 3月31日、日本映画監督協会(崔洋一理事長)は、「表現の自由を侵害する恐れのあるあらゆる行為に対し、断固として反対する」との声明を発表し、「一部の国会議員が文化庁を通して特別に試写会を要求した行為及びその後の言動等に対し、強く抗議の意を表明する」と指摘しています。

また、新聞労連など9団体でつくる日本マスコミ文化情報労組会議は「日本映画史上かつてない、映画の表現の自由が侵された重大事態。政治的圧力、文化支援への政治介入、上映圧殺に強く抗議する」などと訴えていますし、映画館関係者らでつくる映画演劇労働組合連合会も声明で、「すべての映画各社、映画館、映画関係者は公開の場を提供するよう、映画人としての勇気と気概を発揮して欲しい」と呼びかけています(朝日新聞平成20年4月2日付朝刊29面)。


(2) これらに続いて、日本新聞協会と日本ペンクラブ、日本民間放送連盟は3日、それぞれ談話や緊急声明を出しています。

「靖国」中止に「残念」 新聞協会談話 他団体も声明

 映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止を受けて、日本新聞協会(会長、北村正任・毎日新聞社社長)と日本ペンクラブ(阿刀田高会長)、日本民間放送連盟(会長、広瀬道貞・テレビ朝日会長)は3日、それぞれ談話や緊急声明を出した。=2面に「時時刻刻」

 新聞協会は「公開が決まっていたドキュメンタリー『靖国』の上映中止という事態が生じたことは残念でならない。映画の内容をどう評価するかは個々人の問題であるが、評価、判断の機会が奪われてしまうことは、表現・言論の自由を擁護する立場から看過できない。表現活動が萎縮(いしゅく)する社会にしてはならないと考える」とする斎藤勉・編集委員会代表幹事(産経新聞社取締役・東京本社編集局長)の談話を発表している。

 ペンクラブは「他人の意見に耳を傾けることで、よりよき社会選択を実現するという社会の基本が壊れていく状況を憂慮する。面倒ごとを畏(おそ)れて自発的に場の提供を渋る雰囲気が蔓延(まんえん)してきている傾向を看過できない」との緊急声明を出した。

 また、民放連の堀鉄蔵・報道委員長(名古屋テレビ放送社長)は次のようなコメントを発表した。「映画『靖国』の上映が相次いで中止に向かっていることは、極めて深刻で憂慮すべき事態。言論・表現にかかわる創作物を個々人が享受し、論評・判断する機会が奪われることがあってはならない」」(朝日新聞平成20年4月4日付朝刊29面(13版))



映画・演劇をはじめとするマスコミ業界の労組、単に各新聞社だけでなく、日本新聞協会や日本民間放送連盟までも抗議する声明を出しているのですから、この問題があまりにも深刻であること、表現の自由に対する危機感をあらわしていると思われます。

「新聞協会は「公開が決まっていたドキュメンタリー『靖国』の上映中止という事態が生じたことは残念でならない。映画の内容をどう評価するかは個々人の問題であるが、評価、判断の機会が奪われてしまうことは、表現・言論の自由を擁護する立場から看過できない。表現活動が萎縮(いしゅく)する社会にしてはならないと考える」とする斎藤勉・編集委員会代表幹事(産経新聞社取締役・東京本社編集局長)の談話を発表している。」


編集員会代表幹事という立場とはいえ、産経新聞取締役さえも、「表現・言論の自由を擁護する立場から看過できない。表現活動が萎縮(いしゅく)する社会にしてはならない」として、表現の自由の観点から問題があると表明しているのです。



(3) もっとも、映画「靖国 YASUKUNI」について、大阪市淀川区の映画館「第七芸術劇場」や京都市下京区の映画館「京都シネマ」などは映画を予定通り上映することを決めたとのことです。ですので、全面的な上映中止は避けられたようです。

「靖国」上映中止:「見てもらい評価」 来月、大阪で上映--京都も8月予定

 靖国神社を描いたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止問題で、大阪市淀川区の映画館「第七芸術劇場」や京都市下京区の映画館「京都シネマ」などは映画を予定通り上映することを決めた。「見てもらわないと評価できない」と説明している。

 映画は日本在住の中国人監督、李纓(リイン)さんが、10年かけて撮った映像を編集。週刊誌に「反日的内容」との記事が掲載され、一部の国会議員が助成金の妥当性を問題視。劇場には上映中止を求める抗議などもあったといい、東京と大阪の5館で上映が取りやめになった。

 一方、第七芸術劇場は当初の日程通り5月10日から7日間上映する予定。また京都シネマも8月に上映を予定している。第七芸術劇場の松村厚支配人は「これで全国で中止なら、嫌がらせや抗議で取りやめにできることになる。批判する人がいていいし、その通りと思う人がいてもいい。上映しなければ議論にもならない」と話している。広島サロンシネマ(広島市中区)も6月に上映する方針という。

 配給元のアルゴ・ピクチャーズによると、東京でも新たに上映を希望する映画館が出てきており、日程などを調整中という。【中村一成】

毎日新聞 2008年4月3日 東京夕刊




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2008/04/02 [Wed] 23:46:46 » E d i t
靖国神社を題材にしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)について、上映を決めていた映画館5館(東京都と大阪市)すべてが、3月31日までに上映中止を決定しました。上映を中止するのは新宿バルト9、銀座シネパトス、渋谷Q-AXシネマ、シネマート六本木、シネマート心斎橋です。
4月3日追記:文章の補充や参考文献の引用をしました)


「靖国」今月封切り中止 上映予定館辞退 トラブル警戒
2008年03月31日23時10分

 中国人監督が撮ったドキュメンタリー映画「靖国」をめぐり、公開日の4月12日からの上映を決めていた映画館5館すべてが、31日までに上映中止を決めた。すでに1館が3月中旬に中止を決めていたが、残り4館も追随したかたちだ。

 いずれもトラブルや嫌がらせなどを警戒しての判断という。5月以降の上映をほぼ決めていた別の数館は、日程や上映の可否も含めて配給側と協議を続けている。

 映画は4月12日から都内4館、大阪1館での上映が、配給・宣伝を担当するアルゴ・ピクチャーズと映画館側との間で決まっていた。

 今回中止を決めた銀座シネパトス(東京都中央区)を経営するヒューマックスシネマによると、3月20日過ぎから街宣車などの抗議を受けたことなどから、27日にアルゴに「降りたい」と伝えた。「お客さんや近隣の店への迷惑もあり、自主的に判断した」という。

 また、Q―AXシネマ(同渋谷区)も31日、「お客様に万が一のことがあってはならない」と判断。シネマート六本木(同港区)とシネマート心斎橋(大阪市中央区)を経営するエスピーオーも「他の映画館が中止すると、こちらに嫌がらせが来るのではないか」と、ひとまず中止にした。この3館については、これまで嫌がらせや抗議などはなかったという。

 これより先に新宿バルト9(東京都新宿区)が中止を決め、15日にアルゴ側に申し入れていた。

 この映画をめぐっては、公的助成金が出ていることを疑問視した自民党の稲田朋美衆院議員側が文化庁に問い合わせたのをきっかけに、国会議員向けの異例の試写会が3月12日に開かれた。」(朝日新聞平成20年4月1日付朝刊1面




1.ことの発端は、一部週刊誌などが「反日映画」と批判し、公的な助成金が出ていることに疑問を投げかけ、それを受けて、自民党若手議員らでつくる「伝統と創造の会」の稲田朋美議員が文化庁に問い合わせたことでした。その後、文化庁を通じて同映画の試写を要求し、3月に異例の全国会議員向けの試写会が開かれることになってしまい、稲田朋美議員らは一層騒ぎ立てたのです。

その結果、右翼団体の街宣車が映画館へ妨害行為を始めたこともあり、映画館側は「トラブルや嫌がらせなどを警戒」したため、上映中止となりました。

「過去には92年に「ミンボーの女」の伊丹十三監督が暴力団員に襲われ、翌年、伊丹監督の「大病人」が上映中、右翼団体員にスクリーンを切り裂かれた。98年には「南京1937」のホールなどでの上映会が右翼の街宣活動で相次いで取りやめになった。00年には「バトル・ロワイアル」の暴力描写を、石井紘基衆院議員が問題視して国会で取り上げた。しかし映画館での公開が中止に追い込まれたのは極めて異例だ。」(毎日新聞平成20年4月2日付朝刊3面


このように、映画内容によっては今までもトラブルは生じてきてはいたのですが、「映画館での公開が中止に追い込まれたのは極めて異例」なのです。この上映中止に追い込まれたのは、国会議員として稲田朋美衆院議員が公開前に映画を見せろなどと横槍を入れたことが発端なのですから、稲田朋美議員に何も責任がないとはいえないことは確かです。



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