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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2008/03/31 [Mon] 23:13:33 » E d i t
静岡県清水市(現静岡市)で1966年(昭和41年)、みそ製造会社専務一家4人が殺害された「袴田事件」で、強盗殺人罪などに問われ、死刑が確定した元プロボクサー袴田巌死刑囚(72)の再審請求について、最高裁第2小法廷(今井功裁判長)は3月24日、死刑囚側の特別抗告を棄却する決定をしました(最高裁平成20年03月24日決定)。1981年(昭和56年)の請求から約27年を経て、再審を開始しないことが確定しました。

昭和55年11月に最高裁で死刑確定後、袴田さんが静岡地裁に再審請求したのは昭和56年(1981年)4月でしたが、静岡地裁の棄却決定が出たのはなんと約13年後の平成6年であり、東京高裁での即時抗告審はさらに約10年後の平成16年になってから棄却しました。そして、最高裁は平成20年になって判断を出したのですから、あまりにも長い年月が経過していまいました。

もっとも、弁護団が最終意見書を提出したのが今年の3月4日であり、それから20日後に最高裁が棄却を決定したのですから、最終意見書なんてまるで読んでもいないかのようです。



1.まず、事件の概要と、これまでの裁判の経過を説明しておきます。

どんな事件か

 1966年(昭和41年)6月30日未明、静岡県清水市の味噌製造会社の専務宅から出火、全焼した現場から、刃物による多数の傷がある一家4人(専務42歳、妻39歳、長女17歳、長男14歳)の焼けた死体が発見されました。焼け跡のガソリン臭から、放火であることが明らかでした。工場従業員の犯行という見込みでの捜査が進められ、元フェザー級全日本6位のプロボクサーで、体をこわして、事件発生の前半からこの味噌会社に勤務し、現場近くの味噌工場の寮に住んでいた袴田巌さん(当時20歳)が、寮から消火活動に飛びだしたとのアリバイが証明できなかったこと、事件後左手中指などに負傷していたこと(実際には消火活動によって負傷したもの)、そして特に元プロボクサーであったことを理由として警察から追及を受け、事件発生から49日後の8月18日に逮捕。逮捕から20日目に至った9月6日に「自白」したことにより、9月9日、パジャマ姿で、窃盗目的で侵入・物色中に発見され、そのような場合を予測して用意していたくり小刀で突刺して殺害したうえ、現金などが入った布袋(甚吉袋)を奪い、死体にガソリンをかけてマッチで順番に火をつけて焼いたとして起訴されました。

裁判と再審の経過

 1審の公判中である1967(昭和42)年8月31日、工場内の醸造用味噌タンクの中から、被害者2人の血液型と一致する多量の血痕が付着した5点の衣類(ズボン、ステテコ、緑色ブリーフ、スポーツシャツ、半袖シャツが麻袋に入っていた)が発見され、同年9月12日には袴田さんの実家からこのズボンと生地・切断面が一致する端切れを警察官が「発見」したことにより(弁護団はすり替えを指摘)、検察は訴因を変更。1審の静岡地裁は、「自白」調書45通のうち、起訴当日の検察官調書以外の44通について、違法な取調べであるとして証拠から排除しましたが、味噌タンクの中から発見された衣類は袴田さんのものであると断定して、1968(昭和43)年9月11日死刑判決を下しました。2審の東京高裁は、このズボンを袴田さんにはかせる実験をし、装着不能なことを確認しながら、裏地の縮みによるとの根拠のない非科学的見解により1976(昭和51)年5月18日控訴棄却。1980(昭和55)年11月29日、最高裁第二小法廷の上告棄却により死刑が確定しました。

 袴田さんは、翌1981(昭和56)年、脱出したとされる裏木戸は、実際には出入不能であるのに警察が証拠を捏造していたことなどを明らかにして、再審請求を申立てましたが、1994年(平成6)年8月9日、静岡地裁は確定判決の証拠構造を吟味することなく、有罪心証のみを引き継ぐ立場から新証拠を個別に論難して、申立を棄却してしまいました。

 現在、東京高裁第二刑事部に即時抗告審が継続しています。袴田さんは、現在東京拘置所に収監されていますが、長い間の拘禁生活によって拘禁症に苦しんでおり、適切な医療措置と処遇の改善運動も再審を求める運動とあわせて行っています。」(小田中ほか『えん罪入門』(日本評論社、2001年)116頁) 

*なお、2001年当時の書籍ゆえ、2004年の東京高裁で棄却する前のものとなっています。



「検察は訴因を変更」とありますが、どのように変更したのかを少し書いておきます。

「事件では、一審開始後に、みそ工場のタンク底部から血痕の付いたズボンなど衣類五点が見つかり、それまで「犯行時はパジャマ姿」と主張していた検察が、これらの衣類を犯行時の着衣として事件の構図を変更。」(東京新聞平成20年3月26日付朝刊1面)


要するに、「自白」にしたがって、パジャマの上に雨合羽を着て犯行を行ったとしていたのですが、パジャマには微量の血痕しかついていなかったために、公判が袋小路に迷い込み始めた67年8月31日(起訴から1年後)、突然、大量の血痕が付着した5点の衣類が工場内の味噌タンクから発見されたということで、これら5点を着て犯行を行ったということに変更されたわけです。

そのため、1・2審判決では、

<1>会社の売上金を奪う目的で、
<2>5点の衣類を着用し、その上に雨合羽を着て、「くり小刀」(刃渡り約13cmで、鍔はなく柄に刃体が差し込んであるだけのもの)を所持し、
<3>味噌工場から専務宅裏口に立つ木に登り、鉄道の防護柵(専務宅と工場・従業員宿舎は東海道線の線路を隔てて建っていた)を乗り越えて専務宅の屋根に昇り、そこから中庭に降りて専務宅に侵入し(工場から裏木戸までの距離は約32メートル)、
<4>専務(柔道2段の猛者)と妻子の計4人を格闘の末、「くり小刀」で大小40ヶ所も突き刺して殺害し、
<5>その後、金袋3個を奪って、
<6>裏木戸をくぐって味噌工場内に戻り、5点の衣類を脱いでパジャマに着替え、
<7>三角部屋横においてあった石油缶から混合油を持ち出し、再び裏木戸を通って専務宅に入り、4人の死体に混合油を振り掛けてマッチで点火して放火し、
<8>その後、裏木戸から味噌工場に戻り、
<9>前記の<6>以降の時期に、5点の衣類を味噌工場の1号タンクの中に入れた。


と認定され(秋山賢三『裁判官はなぜ誤るのか』102頁)、ほぼこのまま確定しました。5点の衣類が発見されたため、犯行途中で他人に発覚する危険を冒しながら味噌工場に戻って「お着替え」を行い、しかも、工場内の味噌タンク内といういずれ必ず発見されてしまう場所に5点の衣類を隠したなどあまりにも不自然な行動を認定を認めて有罪としたのです。しかも、袴田巌さんは4人と格闘しておきながら、袴田巌さんは「左手中指」に切り傷があるだけです。

このような認定事実だけでもあまりにも疑問があるのに、最高裁は怪しいとは思わず再審開始を認めませんでした。


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2008/03/30 [Sun] 22:18:01 » E d i t
今日本では、生活保護を受ける世帯が増えています。北九州市では、生活保護を受けられなかった男性3人が孤独死し、特に昨年、小倉北区の独居男性が生活保護打ち切り後に孤独死したことは、日本中に衝撃を与えました。


1.この悲惨な事件は決して忘れることができないとは思いますが、まずこの事件についての記事を引用しておきます。

(1) asahi.com(2007年07月11日16時16分)

 「日記に「おにぎり食べたい」 生活保護「辞退」男性死亡
2007年07月11日16時16分

 北九州市小倉北区の独り暮らしの男性(52)が自宅で亡くなり、死後約1カ月たったとみられる状態で10日に見つかった。男性は昨年末から一時、生活保護を受けていたが、4月に「受給廃止」となっていた。市によると、福祉事務所の勧めで男性が「働きます」と受給の辞退届を出した。だが、男性が残していた日記には、そうした対応への不満がつづられ、6月上旬の日付で「おにぎり食べたい」などと空腹や窮状を訴える言葉も残されていたという。

 市などによると、10日、男性宅の異変に気づいた住民らから小倉北福祉事務所を通じて福岡県警小倉北署に通報があり、駆けつけた署員が部屋の中で、一部ミイラ化した遺体を発見した。目立った外傷はなく、事件の可能性は低いという。

 男性は肝臓を害し、治療のために病院に通っていた。市によると、昨年12月7日、福祉事務所に「病気で働けない」と生活保護を申請。事務所からは「働けるが、手持ち金がなく、生活も窮迫している」と判断され、同月26日から生活保護を受けることになった。

 だが、今春、事務所が病気の調査をしたうえで男性と面談し、「そろそろ働いてはどうか」などと勧めた。これに対し男性は「では、働きます」と応じ、生活保護の辞退届を提出。この結果、受給は4月10日付で打ち切られた。この対応について男性は日記に「働けないのに働けと言われた」などと記していたという。

 その後も男性は働いていない様子だった。1カ月ほど前に男性に会った周辺の住民によると、男性はやせ細って、「肝硬変になり、内臓にも潰瘍(かいよう)が見つかってつらい」と話していたという。

 小倉北区役所の常藤秀輝・保護1課長は「辞退届は本人が自発的に出したもの。男性は生活保護制度を活用して再出発したモデルケースで、対応に問題はなかったが、亡くなったことは非常に残念」と話している。

 同市では05年1月、八幡東区で、介護保険の要介護認定を受けていた独り暮らしの男性(当時68)が生活保護を認められずに孤独死していた。06年5月には門司区で身体障害者の男性(当時56)がミイラ化した遺体で見つかった。この男性は2回にわたって生活保護を求めたが、申請書すらもらえなかった。

 こうした市の対応への批判が高まり、市は今年5月、法律家や有識者らによる生活保護行政の検証委員会を設置し、改善策を検討している。」




(2) 生活保護制度は、憲法25条の生存権規定に基づく社会保障立法による制度であり、最低限度の生活を保障するものです。社会的・経済的弱者に安定した生活を確保し、「人間に値する生存」を保障すること、生活保護を受けることは、憲法上保障される国民として当然の権利なのです。

社会保障の具体的なあり方は、一般には、立法府及び行政府の具体的な政策的決定が尊重されるものですが、国民の「最低限の生活」にかかわる施策の場合には、憲法25条1項の規範力が強く及ぶものです(戸波江二『憲法(新版)』306頁)。ですから、行政がなすべきことを怠り、不当に拒否する場合には「人間に値する生存」を脅かされ、憲法25条に違反することになります。

その生活保護制度の現状について、東京新聞では最近、3回にわたって記事にしていました。全国紙ではこうした実態は一切報道されることはないので、紹介したいと思います。なお、見出しの文章は、東京新聞のHP掲載のままではなく、紙面にしたがったものです。



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2008/03/29 [Sat] 10:39:01 » E d i t
太平洋戦争末期の沖縄戦で住民に集団自決を命じたと虚偽の事実を著書に書かれたとして、元日本軍隊長らがノーベル賞作家で「沖縄ノート」の著者大江健三郎さん(73)と出版元の岩波書店を相手に出版差し止めや2000万円の慰謝料などを求めた訴訟の判決で、大阪地裁(深見敏正裁判長)は3月28日、「集団自決に旧日本軍が深くかかわったと認められる」とした上で、名誉毀損は成立しないとして請求を棄却しました。

この訴訟がおきたことを理由の1つとして、昨年度の高校教科書検定では「旧日本軍による強制」の記述を削除させたという経緯があったために、この判決が広く注目されていました。

4月1日追記:名誉毀損に基づく損害賠償につき、細かい法解釈論を追記しました)
4月5日追記:判例解説があることの指摘と、原告が控訴したとの事実と引用しました)


1.まず報道記事をいくつか。

(1) 東京新聞平成20年3月28日付夕刊1面

集団自決『軍、深く関与』出版差し止め訴訟 大江さん側勝訴 大阪地裁
2008年3月28日 夕刊

 太平洋戦争末期の沖縄戦で軍指揮官が「集団自決」を命じたとする岩波新書「沖縄ノート」などの記述をめぐり、沖縄・慶良間諸島の当時の守備隊長らが、岩波書店と作家大江健三郎さん(73)に出版差し止めなどを求めた訴訟の判決で、大阪地裁は二十八日、請求を棄却した。元守備隊長らは控訴の方針。 =判決要旨<2>関連<11>面

 判決理由で深見敏正裁判長は「集団自決に軍が深く関与したのは認められる」と指摘。その上で「元守備隊長らが命令を出したとは断定できないとしても、大江さんらが命令があったと信じるに相当の理由があった」とした。

 この訴訟は軍の「強制」の記述削除を求めた教科書検定意見の根拠の一つともされたほか、ノーベル賞作家の大江さん本人が出廷し証言するなど司法判断が注目を集めていたが、判決は史実論争に一歩踏み込んだ形となった。

 判決は、軍が関与した理由として(1)兵士が自決用の手りゅう弾を配ったとする住民証言(2)軍が駐屯していなかった島では集団自決がなかった-を挙げた。

 その上で「守備隊長の関与は十分推認できる」としたが、命令の伝達経路がはっきりしないことから「本の記述通りの命令まで認定するのはためらいがある」とした。

 座間味島の元守備隊長梅沢裕さん(91)と、渡嘉敷島の元守備隊長の弟赤松秀一さん(75)は二〇〇五年八月、大江さんの「沖縄ノート」、故家永三郎さんの「太平洋戦争」の集団自決に関する部分をめぐり「誤った記述で非道な人物と認識される」として提訴した。

 岩波書店の話 わたしたちの主張を認めた妥当な判決。沈黙を破って貴重な証言をしていただいた沖縄の生存者の方々ほか、多くの支援、協力に感謝する。」




(2) 朝日新聞平成20年3月28日付夕刊1面

「沖縄ノート」訴訟、元隊長の請求棄却 大阪地裁
2008年03月28日12時23分

 太平洋戦争末期の沖縄戦で、旧日本軍が住民に集団自決を命じたとした岩波新書「沖縄ノート」などの記述で名誉を傷つけられたとして、元戦隊長と遺族が著者でノーベル賞作家の大江健三郎さん(73)と出版元の岩波書店(東京)に出版差し止めや損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。深見敏正裁判長は「元戦隊長の命令があったとは断定できないが、関与は十分推認できる」とし、集団自決には「旧日本軍が深くかかわった」と認定。元隊長らを匿名で「事件の責任者」などとした記述には「合理的資料や根拠があった」として名誉棄損にはあたらないと判断し、請求をすべて棄却した。元隊長側は控訴する方針。

 原告は、大阪府内に住む元座間味島戦隊長で元少佐の梅沢裕さん(91)と、元渡嘉敷島戦隊長で元大尉の故・赤松嘉次さんの弟秀一さん(75)。裁判は、高校歴史教科書の検定にも影響を与えており、軍の関与の有無が最大の争点だった。

 判決は、集団自決について、軍から自決用に手榴弾(しゅ・りゅう・だん)が配られたという生存者の証言が多数ある▽手榴弾は戦隊にとって極めて貴重な武器で、軍以外からの入手は困難▽集団自決が起きたすべての場所に軍が駐屯し、駐屯しない場所では発生しなかったことなどを踏まえ、集団自決への「軍の深い関与」を認定した。

 そのうえで座間味、渡嘉敷両島では元隊長2人を頂点とする「上意下達の組織」があり、元隊長らの関与は十分に推認できるとしつつ、「自決命令の伝達経路は判然とせず、命令それ自体まで認定することには躊躇(ちゅう・ちょ)を禁じ得ない」とした。だが、本のもととなった住民の証言集など元隊長の関与を示す内容は「合理的で根拠がある」と評価し、大江さん側が「命令があったと信じる相当の理由があった」と結論づけた。

 「隊長命令説」は遺族年金を受けるために住民らが捏造(ねつ・ぞう)したとする元隊長側の主張についても、住民の証言が年金の適用が始まる前から存在していたとして退けた。

 また判決は、元隊長らの実名を挙げて住民に自決を命じたと指摘した歴史学者の故・家永三郎さんの著作「太平洋戦争」(68年、岩波書店)も、名誉棄損は成立しないとの判断を示した。

 「沖縄ノート」は、住民の証言集など集団自決の証言を集めた文献を引用しながら、両島では「部隊の行動をさまたげないために、また食糧を部隊に提供するため、いさぎよく自決せよ」という軍の命令があったと指摘した。

 元隊長側は裁判で「住民に集団自決を命じた事実はない。逆に、住民には自決しないよう厳しくいさめ、後方で生き延びるよう伝えた」などと軍の命令を否定。集団自決は「家族の無理心中」と受け止めるのが自然と訴えた。

 大江さん側は、「日本軍が『軍官民共生共死』の方針を住民らに担わせ、タテの構造の中で自決を強制したことは明らか」と反論していた。

     ◇

 〈沖縄戦集団自決と教科書検定〉 1945年3月下旬、米軍は沖縄本島西の座間味島と渡嘉敷島を攻撃し、4月に本島に上陸した。沖縄各地で住民の集団自決が相次ぎ、座間味島では約130人、渡嘉敷島では300人以上の住民が手榴弾などで亡くなったとされる。

 05年8月に提訴された今回の訴訟は、高校の教科書検定に影響を与え、昨春には「軍の強制」を示す記述がいったん削除された。だが、沖縄県で反発が強まり、文部科学省は昨年末までに、「軍が強制した」という直接的な記述は避けつつ、「軍の関与」を示す表現を復活させる教科書6社の訂正申請を承認した。」




この訴訟については、「軍や元隊長による自決命令の有無が主な争点」とされていますが、法律的には、出版物の表現が個人の名誉を毀損するか否か(名誉毀損に基づく不法行為(民法709条)の有無)を巡って争われたものです。ですから、法律的には、「『軍や元隊長による自決命令があった』と信じる相当の理由があったか否か」が争点であり、「軍や元隊長による自決命令の有無」は法律的に主要な争点ではありません。

「判決理由で深見敏正裁判長は「集団自決に軍が深く関与したのは認められる」と指摘。その上で「元守備隊長らが命令を出したとは断定できないとしても、大江さんらが命令があったと信じるに相当の理由があった」とした。」(東京新聞)

「判決は、集団自決について、軍から自決用に手榴弾(しゅ・りゅう・だん)が配られたという生存者の証言が多数ある▽手榴弾は戦隊にとって極めて貴重な武器で、軍以外からの入手は困難▽集団自決が起きたすべての場所に軍が駐屯し、駐屯しない場所では発生しなかったことなどを踏まえ、集団自決への「軍の深い関与」を認定した。

 そのうえで座間味、渡嘉敷両島では元隊長2人を頂点とする「上意下達の組織」があり、元隊長らの関与は十分に推認できるとしつつ、「自決命令の伝達経路は判然とせず、命令それ自体まで認定することには躊躇(ちゅう・ちょ)を禁じ得ない」とした。だが、本のもととなった住民の証言集など元隊長の関与を示す内容は「合理的で根拠がある」と評価し、大江さん側が「命令があったと信じる相当の理由があった」と結論づけた。」(朝日新聞)


このように本判決は、著作のもととなった住民の証言集(1950年に地元新聞「沖縄タイムス」の記者がまとめた住民の証言集「鉄の暴風」)や関連文献(『沖縄県史 第10巻』『座間味村史 下巻』『沖縄の証言』)など元隊長の関与を示す内容は「合理的で根拠がある」と評価して、 「軍や元隊長による自決命令があった」と信じる相当の理由があったと認定したため、名誉毀損は成立しないことになったわけです。

戦後まもなくの住民証言(「鉄の暴風」)は、もっとも生々しい記憶を基にしてなされたのですから、信用性は高いといえます。ですから、その住民の証言集などに基づいた記述は、 「軍や元隊長による自決命令があった」と信じる相当の理由があったといえることは、ごく素直な判断です。この意味で、本判決の判断はどの裁判所であっても揺らぐことのない判断であり、(原告は控訴する意向のようですが)控訴審においても名誉毀損は成立しないとの判断が認められる可能性が極めて高いといえます。



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2008/03/26 [Wed] 21:29:50 » E d i t
愛媛・宇和島徳洲会病院の万波誠医師らによる修復(病気)腎移植問題で、愛媛社会保険事務局による聴聞会は5月19日になされることが予定されています(「病気腎移植「処分」、反撃に遭って聴聞延期に~保険医療機関や保険医の取り消しは“死刑”に等しい(東京新聞2月26日付「こちら特報部」)」(2008/02/26 [Tue] 22:49:15)参照)。この聴聞会が行われた後は、保険医療機関や保険医の取り消しがなされる可能性があります。

この取り消し処分がなされると最も被害を被るのは地域住民と患者です。藤枝市立総合病院の指定取り消しがなされた場合の惨状を見ても明らかです。その実情については、「「修復腎(レストア腎)移植推進・万波誠医師を支援します」さんの「-大混乱は必至・・・最大の被害者は患者-」(2008/03/23 06:37)をぜひご覧ください。


1.保険医療機関や保険医の取り消しがなされたときの「最大の被害者は患者」であるため、住民や患者による署名活動が行われています。万波誠医師と弟の廉介医師が「取消処分に反対する署名活動を行ってきた同窓生らの報告会に参加した」とのことです。


病気腎移植:万波医師兄弟が支援者集会に参加--備前 /岡山

 厚労省が保険医登録を取り消す方針を固めている宇和島徳州会病院の万波誠医師と弟の廉介医師が22日、出身地の備前市吉永町で開かれた取消処分に反対する署名活動を行ってきた同窓生らの報告会に参加した。

 会場の備前市立吉永地域公民館(備前市吉永町三股)には、小中学校時代の同窓生ら約200人が集まり、2月14日~27日に集めた署名数が2万7787に上ったことや、厚労省への働きかけなどが報告された。また、テレビ番組の録画を上映して問題への理解と協力を求めた。

 万波誠医師は、人工透析のつらさや海外と日本の移植事情の違いを説明し、「捨てる腎臓を使う修復腎(病気腎)移植は誰も痛まない方法だ。私は処分を受けてもいいが、修復腎移植がいつまでも残ってほしいと思っている」と述べ、廉介医師も「私らがどうなっても修復腎移植は残していかなくてはならない。そのために患者や国民が立ち上がることが大切だ」と語った。

 署名実行委事務局の湯口信寿さん(63)は「万波兄弟は、備前の、日本の誇り。2人の知識や技術が患者には必要だ」と話していた。【横山三加子】

毎日新聞 2008年3月25日 地方版





2.今日は、ある女性の日記を紹介します。


「どうか、助けて。 2008年02月21日00:45 今日は、ちょっとお堅い話です。
でも、どうしても聞いていただきたい。
私の、全てのお知り合いの方へ。

そして、もっとそこから先の方へ。


今、ここを見ているあなたへ。」



で始まる日記をご存じでしょうか?

日記のご本人が、「この日記を、コピペして、日記か、blogや掲示板等に貼り付けていただけませんか」と記されているので、このブログでも紹介することにしました。

病気を患っている彼を思い遣る気持ちにあふれた内容です。
ぜひじっくりと読んでみてください。




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2008/03/25 [Tue] 05:07:13 » E d i t
戦時下最大の言論弾圧事件とされる横浜事件の再審上告審において、最高裁平成20年03月14日判決は、「旧刑訴法適用事件について再審が開始された場合,その対象となった確定判決後に刑の廃止又は大赦があったときは,再審開始後の審判手続においても,同法363条2号,3号の適用があり,免訴判決が言い渡されるべきである」として、上告を棄却しました。これにより免訴判決が確定することになります。

「横浜事件:最高裁は免訴判決で確定(上)~言論弾圧に加担した司法の戦争責任を何ら清算せず」(2008/03/16 [Sun] 06:18:35)の続きとなりますが、この最高裁判決について、ネットの一部や雑誌では間違った理解が横行しているようです。そこで、その間違いを匡しておくことにします。


1.田中良太「横浜事件免訴 戦犯支配下の「有罪」を原告は誇れ」(Jan Jan・2008/03/18)という記事は、最高裁判決は「限りなく無罪に近い免訴判決」であるとしています。これは、正しい理解なのでしょうか?

 「再審で横浜地裁は、06年2月判決を下し、元被告らが求めていた「無罪」ではなく、「免訴」を言い渡した。治安維持法の失効にともない元被告5人はいずれも大赦を受けている。刑事訴訟法337条は、大赦があったときは、「判決で免訴の言渡をしなければならない」と明文で規定している。無罪ではなく免訴とならざるを得ないという論理だ。

 判決理由の中では、とくに東京高裁の再審開始決定に触れ、「免訴理由がなければ、抗告審決定に沿った判決が言い渡されることになる」「(同決定において)5人が神奈川県警特別高等課(特高)により拷問を受けた事実が明らかにされた」などと述べた。さらに免訴判決の意味について、「元被告は無罪判決と同様に将来的にも訴訟から解放される」と述べた。

 つまり「限りなく無罪に近い免訴判決」なのである。それを東京高裁も最高裁も支持した。朝日の社説は、「免訴」という形式だけをみて、最高裁の姿勢が「過去の過ちを直視しようとしない」と断じており、最高裁によって支持された横浜地裁判決の内容を無視していると言わざるをえない。

 横浜事件再審の経過を見てみると、裁判所の姿勢は、「元被告らの主張無視」ではない。逆に法の枠内で、元被告らの主張に最大限の配慮をしていると評価できるのではないか?」 



(1) まずは、「免訴判決」について説明しておきます。

免訴判決とは、免訴事由(刑事訴訟法337条)の存在を理由として、実体審理をすることなく(=有罪か無罪かを判断せずに)形式的に訴訟を打ち切る形式裁判のことをいいます。

刑事訴訟法第337条(免訴の判決) 左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。
一  確定判決を経たとき。
二  犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。
三  大赦があつたとき。
四  時効が完成したとき。



旧刑事訴訟法までは予審制度(公判前に、予審判事が、必要な事項を 取り調べ、被告事件を公判に付すべきか否かを決める手続)があり、その予審では、公判であれば無罪となる場合に「免訴」という裁判形式が用いられていました(例えば大正刑訴313-4条)。そのため、免訴は無罪と近似した性格のものと考えられ、したがって形式裁判でなく、実体審理を行う「実体裁判」でした(田宮裕『刑事訴訟法(新版)』(有斐閣、1996年)221頁)。

しかし、現行刑事訴訟法では、免訴判決は、実体審理をしない(むしろ、「実体審理を禁じられている」)形式裁判と理解されています(最高裁昭和23年5月26日大法廷判決)。だからこそ、元被告人たちの遺族は、実体審理を行い、捜査の違法性を明らかにして無罪判決を認めて名誉回復を図ってほしかったと、最高裁判決を批判しているわけです。

そうすると、最高裁判決は「限りなく無罪に近い免訴判決である」という理解は、現行刑事訴訟法について全く理解に欠けているものといえます。



(2) もっとも、この記事では、再審第1審(横浜地裁)が、「(同決定において)5人が神奈川県警特別高等課(特高)により拷問を受けた事実が明らかにされた」という東京高裁の再審開始決定について言及している点、免訴判決の意味について、「元被告は無罪判決と同様に将来的にも訴訟から解放される」と述べている点を挙げ、これを最高裁も支持していることをも根拠に挙げています。

しかし、最高裁は、再審「制度は,所定の事由が認められる場合に,当該審級の審判を改めて行うものであって,その審判は再審が開始された理由に拘束されるものではない」としており、東京高裁の再審開始決定と再審公判手続は別個に判断するものだと明言しているのです。つまり、再審第1審(横浜地裁)が東京高裁の再審開始決定に触れていたとしても、それは再審公判手続での判断に影響していないのですから、「限りなく無罪に近い免訴判決」であるという根拠になりません

また、免訴判決の意味について、「元被告は無罪判決と同様に将来的にも訴訟から解放される」と述べたことは、免訴判決は形式裁判として訴訟から解放するものであるため、一般論としては、「訴訟から解放する」という点において「無罪判決と同様」としただけのことです。無罪判決と同様に、罪を犯した事実がないと判断しているわけではなく、「限りなく無罪に近い免訴判決」という意味ではないのです。

しかも、元被告人はすべて死亡しているのですから、「将来的にも訴訟から解放される」という点は、この事案には当てはまりませんから、この事案では、無罪判決と同様に訴訟から解放される利益を受けていないのです。今井功裁判官の補足意見も、「本件のように有罪の確定判決を受け,死亡した被告人にとっては,審理打切りによる利益はほとんどないということができるであろう。」と述べているとおりです。



(3) このようなことから、「『限りなく無罪に近い免訴判決』である」という理解は、最高裁判決を読み違えたものであり、現行刑事訴訟法における免訴判決の意味について理解に欠けているものであって、間違っているのです。

この「Jan Jan」の記事は、横浜事件自体の理解さえも危ういものであり、誰も信用しないとは思いますが、万が一、間違った理解が人々の間に根付いたりしないように一言しておきます。



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2008/03/22 [Sat] 23:59:32 » E d i t
中国チベット自治区ラサで3月14日、チベット仏教僧侶らの大規模な暴動が起きました。中国政府は、3月14日にチベットで発生した中国の統治に反発する激しい暴動で市民13人が死亡したとして「暴徒」を非難していますが、亡命チベット人団体は、中国当局によるデモ鎮圧で100人以上が死亡したと発表しています「暴動鎮圧後、チベット封鎖続く」(2008年03月18日 21:21・発信地:ラサ/中国・AFP)


1.この暴動の発端について、「アムネスティ・アップデート」(2008.3.20 通巻317号)によると、次のように記しています。

「……………………………………………………………………………………………
チベット人の人権と権利の尊重を!
……………………………………………………………………………………………

抗議行動は、先週月曜に約400人の僧侶がデプン寺院からラサの中心部に向かって、行進を開始したことから始まりました。僧侶らは政府が強制したキャンペーンを緩和するよう要求していました。そのキャンペーンとは、ダライ・ラマへの非難を書くよう僧侶に強制し、政府の政治的プロパガンダに従わせようとするものでした。

50人以上の僧侶がラサ市内の路上で拘束され、それに続き彼らを支持する他の僧侶たちによって抗議行動が起きました。その後、チベット全土で一般の人びとが参加し、全面的な騒乱に発展したのです。

警察と軍は催涙ガスを群集に向けて発砲し、抗議行動参加者を殴打し、群集を散会させるために実弾を発射したと報道されています。中国の当局筋によれば10人が死亡し、その大半がラサの実業家であると伝えています。より多くの犠牲者がいるとの未確認情報もあります。

今回表面化した長期にわたるチベット人の不満には、経済発展の利益から排除されているという認識と、宗教活動が制限され、チベットの文化や民族的アイデンティティが中国政府の政策によって弱められているという背景があります。中国当局は、チベットの人びとの根本的な不満や、人びとのそうした憤りを生み出した長期にわたる政策の問題に取り組まなければなりません。

アムネスティは、中国当局に対して、継続中の抗議行動に対して自制をもって対応するよう要請しています。また、先週行われた抗議行動への弾圧において、ラサやチベットのその他の地域で拘禁されたすべての人びとの消息を明らかにし、拘禁された人びとを釈放するよう要請しています。また、日本支部からも、駐日中国大使館の孔鉉佑臨時大使代理にあてて、抗議の書簡を送付しました。」


中国当局は、長年チベットを強行に抑圧してきたこと、現在、北京で人権弁護士やその他の活動家に対して取り締まりを行っていることからしても、これが事実だと思われますから、今回の暴動は明らかに中国当局側に非があります。

      


2.中国外務省の劉建超・報道局長は3月17日夜、中国チベット自治区ラサで起きた大規模暴動について初めて記者会見し、「(当局側は)致命傷を負わせるいかなる武器も携帯、使用していない。」などと述べています。しかし、次のような記事が掲載されています。

デモ参加者の遺体写真公表 国際人権団体

 【ロンドン=池田千晶】 中国のチベット自治区の独立運動を支援する国際人権団体「フリー・チベット・キャンペーン」(本部・ロンドン)は18日、治安部隊に射殺されたとするデモ参加者の遺体写真を公表した。遺体には銃創がみられ、同団体は「中国当局が武器を使用した証拠」と反発を強めている。

 写真は16日から17日にかけ、多数の死傷者が出たとされる四川省アバ県の僧院で撮影された。逮捕された修道僧の解放を求める抗議デモに対し、治安部隊が発砲したとされ、数枚には、遺体の首や胸に銃創が写し出されている。

 中国当局は、殺傷能力のある武器の使用や発砲を否定している。同団体は「目撃証言と合わせ、当局が銃殺したのは明らか。国際社会は中国政府を厳しく非難すべきだ」と訴えている。」(東京新聞平成20年3月20日付朝刊4面)


こういう「中国当局が武器を使用した証拠」がある以上、中国当局が武器を用いてデモ参加者を殺害していることは確かなことだといえます。

インドに活動拠点を置く非政府組織(NGO)チベット人権民主化センターは19日、中国四川省甘孜チベット族自治州甘孜県で18日午後、市場で「チベット独立」などを訴えて抗議デモを行った数100人の群衆に武装警察部隊が無差別発砲、3人が死亡し、15人が負傷したと発表しました(北京19日共同通信)。このようにデモは続いており、中国当局による武装弾圧もまた続いています。

中国チベット自治区ラサの暴動発生後、衝突が周辺の四川、青海、甘粛各省のチベット族自治州に拡大する中、中国当局は3月21日までに、外国メディアの記者を検問、尾行、取材規制などさまざまな手段で現地から排除しています。18日以前から甘南チベット族自治州につながる主要道路のいたるところで検問が行われ、外国人記者の進入を阻んでいます(成都(中国四川省)3月21日共同通信)。このように、中国は武力弾圧の実態を公表されないように画策しているといえそうです。



 
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2008/03/21 [Fri] 23:08:57 » E d i t
日本臓器移植ネットワークは3月18日、関東甲信越地方の病院に入院中の女性が、臓器移植法に基づく脳死と判定されたと発表し、全国4病院で移植する手術が20日終了しました。脳死判定は67例目で、脳死での臓器移植は66例目となります。

日本臓器移植ネットワークによると、心臓は東京大病院で20代男性に、肝臓は北海道大病院で30代女性に、膵臓と片方の腎臓は大阪大病院で30代男性に、もう片方の腎臓は国立病院機構千葉東病院で50代男性に移植し、小腸移植は医学的理由で断念したとのことです(毎日新聞 2008年3月21日付)。

少しでも移植を受ける機会が得られたことは幸いなことではあるのですが、臓器移植法を制定して約10年半も経過しているのに、未だに66例にとどまっているというのが現実です。


1.3月19日、臓器移植を待っていて受けられずに死亡した患者の遺族が、国会議員有志と面会し、厚生労働省内で臓器移植法改正を訴える記者会見を行いました。

移植法改正案の早期審議を 患者の遺族が訴え
2008年3月19日 21時13分

 臓器移植を受けようと待っていたが、受けられずに死亡した患者の遺族らが19日、都内で記者会見し「このまま国会が臓器移植法改正案を審議せず、放置するのは許せない」などと、早く審議入りするよう訴えた。

 同法は1997年に施行。脳死での臓器提供には本人の事前の意思表示と家族の同意が必要などの条件があり、15歳未満の人は提供できない。これまで脳死での臓器提供は66件。提供範囲を広げる改正案が国会に提出されているが、審議は進んでいない。

 福岡県の石川祥行さん(35)は、海外での心臓移植を計画していた9歳の息子が2月に死亡。「国会では審議してもらえず土俵にも上がっていない状態。とにかく審議を」と怒りを込めて話した。

 11歳の息子が移植を受けるため渡航したドイツで死亡した大阪府の森本隆さん(45)は「今も大勢の患者がいるが、今のままでは何も変わらない」。夫が心臓移植を待ちながら死亡した千葉県の田和秀子さん(55)は「犠牲者を増やさないよう、国会議員は明日はわが身と考えてほしい」と、それぞれ訴えた。

(共同)」(東京新聞2008年3月19日 21時13分

*東京新聞のHPでは掲載していますが、この共同通信配信記事は重複するためか紙面未掲載でした。



脳死判定がなされた事実・臓器移植が実施されたこと自体はたびたび報道されていますが、臓器移植法改正を希望する患者の記者会見は、ほとんど報道していないのです。東京新聞「こちら特報部」では、この記者会見について詳しく報道していましたので、紹介したいと思います。



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2008/03/20 [Thu] 00:08:48 » E d i t
超党派の国会議員による「死刑廃止を推進する議員連盟」(亀井静香会長)は3月4日、役員会を開き、2009年から導入される裁判員制度で、死刑については裁判官と裁判員の全員一致を条件とする裁判員法改正案などの今国会提出を目指すことで合意しました。仮釈放のない終身刑を創設するための刑法改正案も、今国会への提出を目指しています。


1.まず報道記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成20年2月10日付朝刊3面

「終身刑創設」盛る 死刑廃止議連法案 今国会提出めざす

 国民新党の亀井静香代表代行や公明党の浜四津敏子代表代行らがつくる超党派の「死刑廃止を推進する議員連盟」が、死刑廃止に向けてまとめた法案が9日、明らかになった。(1)終身刑の創設(2)死刑制度調査会の国会設置と4年間の死刑執行停止-が柱で、今国会での参院提出を目指す。死刑執行の停止を求める法案が国会に出されれば1956年以来、52年ぶりとなる。

 議連は近く幹部会を開き法案内容を確認、各党に働き掛ける。2003年に同様の法案を提出しようとした際は民主、公明、共産、社民各党が賛成したが、亀井氏が当時所属していた自民党が反対し断念した経緯がある。今回も自民党や法務省が強く反対するとみられ、状況によっては「4年間の執行停止」の部分などの修正も検討する。

 現行の「無期刑」では10年を過ぎれば仮釈放の対象となり、法務省によると06年に仮釈放された3人の平均受刑在所期間は約25年だった。

 法案では、これよりも重い「重無期刑」を創設、事実上の終身刑とする。これまで死刑を言い渡された罪状を重無期刑とすることで実質的死刑を減らす狙い。「廃止」を掲げなければ存続派が受け入れやすいとの判断もある。施行は09年4月1日としている。

 同時に12年3月末まで衆参両院に死刑制度調査会を設置し、死刑制度の存続を含めて調査。法整備などのため13年3月末まで死刑執行を停止する。議連は調査会で廃止への道筋を付けたい意向で、終身刑導入と二段階で臨む方針だ。」



「4年間の死刑執行停止」の点については、3月4日に発表した議連による法案では、削除したとのことです。後述する、東京新聞「こちら特報部」では死刑執行停止を削除した点について、議連の亀井会長にインタビューした記事を掲載しています。

この法案では、「重無期刑」を創設し、事実上の終身刑を認める内容とすることが特徴です。この終身刑の是非については、賛否が分かれています。もっとも、実は、検察庁は無期懲役者の仮釈放について秘密通達を出しており、「無期懲役の中に仮釈放の認められない特別の類型」を作っているのです(詳しくは後述します)。仮釈放を認めない以上、これは、実質的には終身刑であり、実際の運用としては日本にも終身刑が存在するわけです。

このように日本でも実際の運用上、終身刑が存在するのですから、「死刑廃止を推進する議員連盟」による法案は、検察庁が秘密裏に勝手に行っている「終身刑」を明文化しようとするものです。



(2) 朝日新聞平成20年3月4日付朝刊

死刑「全員一致のみ」 廃止議連、裁判員法改正案提出へ
2008年03月04日

 裁判員制度が来春始まるのを前に、超党派の国会議員でつくる「死刑廃止議員連盟」(会長・亀井静香衆院議員)は3日、市民の裁判員と裁判官計9人が多数決で決める量刑について、死刑判決の場合に限っては全員一致を条件とすることを柱とする裁判員法改正案を提出する方針を決めた。4日の役員会でとりまとめ、仮釈放のない終身刑を創設する刑法の改正法案などとあわせて今国会の提出を目指す。

 裁判員裁判では6人の裁判員と3人の裁判官が議論し、裁判官を最低1人含む計5人が賛成すれば、死刑判決が下されることになる。こうした仕組みをめぐって、「市民が死刑判決を出すのは荷が重すぎる」などの意見が出ている。

 役員会に示す骨子案では「死刑判決を下すに当たっては、(多数決ではなく)構成員全員が賛成することを要件とする」と定める。また、死刑と、仮釈放がある無期懲役刑の差が激しすぎるとして、刑法などを改正して終身刑を創設することも提案。裁判員裁判で、死刑賛成の意見が過半数に達したものの全員が一致しない場合は終身刑とする、と定める方針だ。

 議連は「最終的な目的は死刑廃止だが、裁判員制度が始まるなか、存廃論議を超えて、死刑判決を抑制する方法の議論を巻き起こすべきだと考えた」としている。」



この記事によると、「死刑判決の場合に限っては全員一致を条件とすることを柱とする裁判員法改正案」を提出するということです。要するに、死刑判決の場合には評議方法を厳格にしようとするものです。そこで、死刑判決の評議方法について、説明しておきます。紙面では、以下のように説明しています。

「裁判員裁判では6人の裁判員と3人の裁判官が議論し、裁判官を最低1人含む計5人が賛成すれば、死刑判決が下されることになる。」



もう少し詳しい説明となると、次のような説明になります。「愛媛県弁護士会『改正刑訴法・裁判員法講座 裁判員制度における評議・評決の手続きと判決』」から、引用しておきます。

「3、 評決について
(1)  基本原則 過半数が原則であるが、裁判官及び裁判員の双方の意見を含むとの要件があり、裁判員のみ、あるいは裁判官のみの全員一致で有罪にはできない(67条1項)。
(2)  量刑の評決方法 量刑の場合も過半数が原則だが、67条2項に固有の特例がある。同条項の文言は難解であるので具体例で示すと、例えば、死刑・無期・懲役20年に分かれた場合、死刑選択意見が過半数(5人以上)であっても、その意見の中に裁判官の意見が含まれていなければ双方の構成員を含まないため死刑は選択できない。この場合、死刑選択意見を順次無期選択意見数に加算し無期選択意見の中に裁判官の意見が含まれている場合には、無期以上の意見が過半数かつ双方の構成員を含むとの要件をみたし、無期以上の意見の中で最も被告人に利益な無期が結論となる。」



「死刑を求刑する検事も、死刑判決を言い渡す裁判官も、身を清め、新しく真っ白な下着を着けて法廷に臨むといわれる。執行に直接携わる刑務官らの心理的な負担は想像を絶するという。関係する誰もが、神仏に許しを請うような気持ちで任務を果たしている」(毎日新聞2007年9月27日東京朝刊「社説」)のです(鳩山法相を除く)。死刑とは、他人の命を奪うこととは、こういうことです。

裁判員制度において裁判員として参加する市民は、陪審制度と異なり、量刑まで決定しなければなりませんから、自らの意思で死刑判決を決定することになります。職業としての裁判官、検事、弁護士、刑務官として覚悟があるにもかかわらず、神仏に頼らざるを得ないほど背負いきれない思いを感じているのに、職業としての覚悟がない裁判員にとっては、想像を超えるほどの重荷になるはずです。

40年間、冤罪無実を訴えながら獄中にいる袴田巌さんの一審判決(1968年静岡地裁)で、死刑を言い渡した裁判官だった熊本元裁判官(69歳)は、他のふたりの裁判官に押し切られて多数決の合議で「死刑判決」を出してしまったとして、29歳の時に出した袴田さんへの死刑判決を69歳となった今も、一日たりとも忘れられずに悔いているというのです(「保坂展人のどこどこ日記」さんの「袴田巌さんの無実を元裁判官が証言」(2007年02月26日))。

有罪、しかも死刑相当であると信念を持って確信しているのであればともかく、いくら無罪と考えていても裁判官を最低1人含む計5人が賛成すれば、嫌でも死刑判決になってしまいます。そうなると、たった一回限りの裁判員であったのに、心ならずも冤罪を作ってしまったというトラウマを一生涯、背負って生きなければならなくなります。できる限り冤罪を防止するためにも、裁判員のためにも、「死刑判決の場合に限っては9人全員一致を条件とする」ことは妥当性のあるものだといえます。


では、東京新聞3月18日付「こちら特報部」を紹介します。


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2008/03/18 [Tue] 19:58:09 » E d i t
お彼岸を迎えました。3月17日、諸宗山回向院(東京都墨田区)において春季彼岸会「家畜総回向」がありましたので、この法要のため参詣してきました。前回の「家畜総回向」については、「平成19年秋季彼岸会・犬猫小鳥等家畜総回向」(2007/09/23 [Sun] 21:14:58)をご覧下さい。


諸宗山回向院は、有縁・無縁にかかわらず生きとし生けるすべてのものを供養する寺院であり、動物供養の寺としても有名です。この回向院は、今からおよそ350年前の明暦3年(1657年)に開かれた浄土宗の寺院ですが、「有縁・無縁に関わらず、人・動物に関わらず、生あるすべてのものへの仏の慈悲を説く」というのが、この寺院の理念となっています。

近時、回向院が当事者となったペット供養訴訟の判決が出ているため(「“ペット供養は宗教活動”で課税取り消し~東京高裁平成20年1月23日判決」(2008/01/26 [Sat] 18:40:46)参照)、余計に動物供養を行っている寺院として知られた存在になったといえるでしょう。



以前の「家畜総回向」で気づかなかっただけかもしれませんが、今回の「家畜総回向」では、五つの色が順番に縫い付けられた幕である「五色幕(ごしきまく)」が吊るしてありました。本堂に吊り下げられている幕だけでなく、参道の入り口にもありました(旗の形でしたが、これも「五色幕」のようです)。

「五色幕(ごしきまく)」とは、青、黄、赤、白、紫の五色であり、それぞれに意味があります。

「青」はお釈迦さまの髪の色であって、心が穏やかに落ち着いた状態で「禅定(ぜんじょう)」を表しているあらわします。
「青;お釈迦さまの髪の色。心が穏やかに落ち着いた状態で「禅定(ぜんじょう)」をあらわします。
黄;お釈迦さまの身体。豊かで確固としたゆるぎない性質「金剛(こんごう)」をあらわします。
赤;脈々と流れとどまることのないお釈迦さまの血液の色。大いなる慈悲心で人々を救済してやまない働き「精進(しょうじん)」をあらわします。
白;お釈迦さまが説法されるその口元の清らかな歯の色。諸々の悪業(あくごう)や煩悩(ぼんのう)を清める「清浄(しょうじょう)」をあらわします。
紫;お釈迦さまの聖なるお体を包むお袈裟の色。あらゆる侮辱や迫害などによく耐えて怒らぬ「忍辱(にんにく)」をあらわします。

これら五色は、お釈迦さまの教えといきざまを象徴的に表した色です。五色幕を張ることは、仏教を広めるための道場であること示し、またお釈迦さま以来ご開山(無相大師)さまを経て今日まで伝えられてきた大切な心の教えを、未来永劫にも絶やすことなく伝えていくという強い意思表明でもあるのです。」(「臨済宗妙心寺派 大本山妙心寺」の『五色幕』」


普段は質素な色具合の寺院も、大変色安鮮やかな「五色幕」を吊るすことで華やかな感じになりますが、この「五色幕」にも重要な意味があったわけです。



今回も、「家畜総回向」の際に頂いた「散華」(道場にみ佛をお迎えし、佛を讃え供養する為に古来より広く行われてきたもの。元来は、樒の葉や菊の花、蓮弁等の生花を用いていたが、現在は通常蓮弁形に截った紙花を用いている)に書かれていた言葉を引用しておきます。今回は「法句経」(短詩型の教説を集成したもので、初期の仏教の教えを伝える仏教経典)にある語句であり、お釈迦さまの根本的な教えとして知られている言葉です。




少欲知足


足るを知るは上なき財なり

法句経



「小欲」でなく「少欲」という点が重要です。もちろん「無欲」ということでもありません。

「仏教では、古来「少欲知足」を教えています。「少欲知足」とは、欲を少なくし、
足を知る心をもて、といった教えです。

欲を少なくするのは、別段無欲ではありません。よく、仏教は「無欲」を教えて
いると受け取られますが、それは錯覚です。無欲では、人間は生きられませんよ。
また、「小欲」でもありません。欲望が小さいことはいいことですが、
仏教は必ずしも欲望が小さくなければならない、とは言っていません。

そうではなくて、「少欲」は、私たちの欲望を少なくすることです。
そして、足を知る。それが「少欲知足」です。そして、その「少欲知足」が
ほかならぬ布施そのものであると、仏教は教えています。」(「心のページ」さんの「ひろさちや『般若心経』生き方のヒント」より



道元禅師も自らの最後の教えとして説かれた「八大人覚」において、「多欲の人は、利を求めることが多いから、おのずから苦悩もまた多い。これに対して少欲の人は、求めることもなく、欲もないからわずらうこともない。いつも満ちたりて苦悩もなく心穏やかである」と、このように少欲を行じることを諭されたそうです(「鐘の音 和尚の一口法話」の「第85話・少欲知足」)。

欲望を少なくし、その小欲で満足することは、心豊かに暮らすことができる――。人は自分自身の心の中に生じてしまう、貪りの心、愚かな心に負け、自分を見失ってしまうことがしばしばです。欲望すべて放棄するのではなく、「少欲知足」を実践することで心の満足を得えて良き人生を得ることができ、そして、その心の余裕が他の人を思いやる気持ちにつながるのだと思うのです。



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2008/03/16 [Sun] 06:18:35 » E d i t
戦時下最大の言論弾圧事件とされる「横浜事件」で治安維持法違反の有罪判決を受けた元中央公論編集者の木村亨さんら元被告5人(いずれも故人)の再審上告審判決で、最高裁第2小法廷(今井功裁判長)は3月14日、「再審でも、刑の廃止や大赦があれば免訴になる」と述べ、元被告側の上告を棄却しました。有罪無罪を判断せず、裁判を打ち切る免訴とした1、2審判決が確定します。
3月25日追記:「横浜事件:最高裁は免訴判決で確定(中)」に続くことを追記しました)


1.まず、事実関係について。

(1) 中日新聞2008年3月15日 朝刊

【横浜事件と治安維持法】 戦時中の1942年から終戦前にかけての言論弾圧事件。雑誌「改造」に掲載された故細川嘉六氏の論文が共産主義の宣伝とされ、神奈川県警特高課が、富山県の旅館で開かれた細川氏の出版記念会を「共産党再建準備会議」とみなし、治安維持法違反容疑で改造や中央公論の編集者ら約60人を逮捕。30人余が起訴された。治安維持法は日本共産党を中心とした革命運動などを取り締まり対象とし、25年に公布された。3年後の改正で死刑も導入されるなどし、学問や思想、政治運動の統制手段となった。敗戦を受けて45年10月に廃止され、横浜事件で有罪判決を受けた被告も含め大赦が行われた。」




(2) 東京新聞平成20年3月15日付朝刊31面

凄惨な拷問…逮捕者60人超  丸太に土下座めった打ち

 「再建計画の立案者とされた27歳の僕は、安来節でどじょうすくいを踊っていた」(元被告の故木村亨さんの証言)。学者や編集者らが旅先で開いた宴会は、特高警察によって日本共産党の再建会議に仕立て上げられた。

 米国帰りの労働問題研究家夫妻が突然逮捕された事件など、戦時下の1942年から45年、特高警察は激しい拷問で虚偽の自白を強要し、関係者を次々と摘発した。これらを「横浜事件」と総称するのは、神奈川県警察部特別高等課が中心となったからだ。

 逮捕者は60人以上。共産党再建計画が治安維持法違反との構図だったが、逮捕者には右翼団体の構成員もいたという。4人が獄死、1人が出獄直後に亡くなった。

 拷問は凄惨(せいさん)だった。「裸で後ろ手に縛られ、丸太を並べた上に土下座させられ、ごりごりと踏まれる。ひざの裏に角材を挟まれる。『殺してしまうぞ!』との怒声とともに竹刀やこん棒でめった打ちにされ、全身は真っ黒に膨れ上がった」(木村さん)

 何年も獄中につながれたあと、敗戦直後の混乱期に、たった1回の公判で執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。

 当時の特高警察官3人は特別公務員暴行傷害罪に問われ、1952年に最高裁で実刑が確定したが、サンフランシスコ講和条約の特赦があり1日も服役しなかった。

 再審請求は1986年から2002年まで4次までなされたが、当時の裁判記録が残っていないことなどを理由に認められず、3次請求がようやく認められたのは事件から約60年後。03年の横浜地裁の再審開始決定に続き、東京高裁も05年に「自白の信用性に疑いがあり、無罪を言い渡すべき新証拠がある」と決定を是認した。

 しかし、再審では一審から最高裁まで「無罪」とは判断せず、「でっち上げの事件で人権をじゅうりんされた真相を、再審で明らかにしたい」と訴えた元被告たちの声は届かなかった。審理の終了を待たず、元被告5人は全員死亡した。」



被疑者又は被告人から自白を得る手段として諸外国で行われた拷問は、日本でも明治憲法時代、法律上禁止されていたにもかかわらず、「横浜事件」のように実際にはしばしば行われました。特に、「横浜事件」では、死亡することさえ厭わないほど、凄惨で徹底したものでした。

「拷問は凄惨(せいさん)だった。「裸で後ろ手に縛られ、丸太を並べた上に土下座させられ、ごりごりと踏まれる。ひざの裏に角材を挟まれる。『殺してしまうぞ!』との怒声とともに竹刀やこん棒でめった打ちにされ、全身は真っ黒に膨れ上がった」(木村さん)」



凄惨な拷問で虚偽の自白を強要し、志布志事件のように「でっち上げ」で事件を捏造し、特高警察はそのような凄惨な拷問を平気で行っていたことは、裁判所は十分に知りえたのにもかかわらず、「敗戦直後の混乱期に、たった1回の公判で執行猶予付きの有罪判決が言い渡された」のです。

捏造された犯罪(冤罪)により、逮捕者は60人以上、4人が獄死するほどの拷問が行われたのにもかかわらず、(占領軍に発覚する前に)敗戦直後の1回の公判で有罪とした裁判所(しかも人権蹂躙の証拠を隠滅するため横浜事件の裁判や捜査の記録を焼却した)。このような徹底した言論弾圧に加担した「司法の戦争責任」について、現行憲法下の裁判所、特に最高裁判所はいかに清算する意思を示すのか(謝罪するか)が問われた事件だったのです。


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2008/03/13 [Thu] 23:40:55 » E d i t
中日新聞・東京新聞では、生体腎移植手術の診療報酬が4月1日から4割以上削減されることを6日付朝刊で報道していました。

生体腎移植 報酬4割下げ 厚労省通知 『死体腎』推進へ
2008年3月6日 朝刊

 厚生労働省は五日、新年度から生体腎移植の手術の診療報酬を四割以上引き下げると通知した。同省は「死体腎移植をより推進するため」とするが、死体腎移植が増えない現状で、さらに生体腎移植にもブレーキがかかることになりかねず、現場の医師から反発の声が上がっている。(以下、省略)」(東京新聞平成20年3月6日付朝刊1面



この報道については、「生体腎移植手術の診療報酬、大幅引き下げ~厚労省は“「死体腎移植」推進のため”とするが……。フィリピンでも移植制限で患者はどこへ?」(2008/03/10 [Mon] 19:43:46)においても紹介しました。

この診療報酬の大幅引き下げについては、医師ばかりか患者からも「死体腎移植が進まない中、生体腎移植も減るのでは」と不安がる声が上がっています。東京新聞平成20年3月13日付「こちら特報部」では、「医師、患者、医療事務担当者の声を聞いた」記事を掲載しています。



1.奇しくも今年は本日、3月13日(木)が「世界腎臓デー」です。腎臓病は一般の人々にとって深いかかわりのある病気にもかかわらず、その与える影響について一般にほとんど知られていません。その恐さについて人々に警鐘を鳴らす事を目的とした日です。

特集:きょう、世界腎臓デー 防ごう、発症・悪化

 国際腎臓学会と腎臓財団国際連合は06年から、3月の第2木曜日を「世界腎臓デー」と定め、慢性腎臓病(CKD)への理解や早期発見、治療の重要性を呼びかけている。今年は3月13日で、この日を前に各地で講演会などが開かれたほか、日本慢性腎臓病対策協議会は13日、東京や大阪、名古屋など全国5カ所で検尿キットを配るキャンペーンを実施する。(以下、省略)」(毎日新聞平成20年3月13日付朝刊29面



日本は人口当たりの人工透析患者数が世界最多で、しかも、人工透析導入患者は年々増加しており、今や透析患者数は26万人を超えています。透析が必要になると、透析のために長時間拘束され、透析に伴う倦怠感などの苦痛も増すことになるのですから、なるべく透析に至らないように生活習慣の改善を図る必要があるのです。


では、東京新聞平成20年3月13日付「こちら特報部」を紹介します。



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2008/03/12 [Wed] 22:39:04 » E d i t
最近、「共謀罪」という言葉が新聞紙面に出てくるようになりました。1981年のロス疑惑「一美さん銃撃事件」に関して、三浦和義氏は2003年3月に日本で無罪が確定しているにもかかわらず(殴打事件では有罪判決)、27年の歳月を経て再び刑事事件として処罰しようとして問題となったからです。


1.東京新聞平成20年2月29日付夕刊

ブログ情報が端緒に 三浦元社長逮捕 『新証拠なくても十分』2008年2月29日 夕刊

 【ロサンゼルス=阿部伸哉】米ロサンゼルスで一九八一年に起きた銃撃事件を捜査しているロス市警のリック・ジャクソン主任捜査官は二十八日(日本時間二十九日)、本紙の会見に応じ、サイパンで逮捕された元会社社長三浦和義容疑者(60)について「殺人罪と共謀罪の両方での立件を目指す」と明言。いわゆる「新証拠」については「なくても既に十分かつ強力な証拠がある」と述べた。また、三浦元社長が開設したインターネットのブログの書き込みが、逮捕のきっかけになったことも明らかにした。

 ジャクソン捜査官は「二十年前に出された逮捕状を執行した。当時から二十に上る有力な状況証拠がある」と述べ、妻一美さん=当時(28)=の殺人と共謀の罪名は「検察当局からも変更があるとは聞いておらず捜査方針に変化はない」と話した。

 一方で、日本の警察当局などに伝えたとされる「新証拠」について、「証拠内容などを日本側や米連邦捜査局(FBI)などに伝えることはありえない。言えるのは、カリフォルニア州の法律ではこれまでの証拠で十分、勝算があるということだけ」とし、新証拠を日本側に伝えたとする報道を否定した。

 逮捕のタイミングについては、「ミウラは米領に入る過ちを犯した」。ロス市警は二〇〇七年初め、三浦元社長がブログでサイパンなどへの旅行日程をつづっているという情報を日本側から得て、同年秋ごろから三浦元社長逮捕の準備を開始。「今回はグアムの入管当局から連絡を受けて逮捕した」という。「(無罪判決が出ている)日本からでは、身柄の引き渡しは難しいと考えた。米領か、米国と刑法犯身柄引き渡し条約を結んでいる第三国に出る機会をうかがっていた」と述べた。

 当時から捜査の中心として携わっていた元ロス市警のジミー佐古田氏(72)の捜査復帰にも言及。「郡検事局捜査官などに復帰する可能性は高い」と期待感を示した。」




この東京新聞への会見によると、ロス市警は、三浦和義氏を殺人罪と共謀罪で処罰する意思であることを明言しています。

「米ロサンゼルスで一九八一年に起きた銃撃事件を捜査しているロス市警のリック・ジャクソン主任捜査官は二十八日(日本時間二十九日)、本紙の会見に応じ、サイパンで逮捕された元会社社長三浦和義容疑者(60)について「殺人罪と共謀罪の両方での立件を目指す」と明言。いわゆる「新証拠」については「なくても既に十分かつ強力な証拠がある」と述べた。」


「新証拠を日本側に伝えたとする報道を否定」していますし、この記者会見からすると、ロス市警には「新証拠」は存在しないようにも思えます。米国の刑事裁判では、「新証拠」なしに立証することが可能といえるのが、「共謀罪」であるのでしょう。


再び日本で脚光を浴び、よみがえった亡霊「共謀罪」に関して、東京新聞3月6日付「こちら特報部」で記事にしていましたので、紹介したいと思います。


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2008/03/11 [Tue] 19:06:20 » E d i t
佐賀市の中古車販売業の原一弘さん(36)が「知人に誘われた強盗計画を知らせて捜査に協力したのに、強盗予備の共犯容疑で逮捕、勾留され(20日間勾留後、起訴猶予処分)、共犯として氏名を報道発表されたことで名誉を傷つけられた」として、3月7日、佐賀県に330万円の損害賠償を求める訴えを佐賀地裁に起こしました。この事件には多くの問題点が含まれているため、検討してみたいと思います。


1.まず、報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年3月8日付朝刊39面

「おとり捜査」に協力し逮捕 男性が佐賀県相手に提訴
2008年03月07日22時09分

 複数人による強盗計画を佐賀県警に通報したのに、「おとり捜査」に協力させられて強盗予備容疑で逮捕され、「共犯」だと虚偽の報道発表までされて名誉を傷つけられたとして、佐賀市兵庫町の中古車販売業、原一弘さん(36)が7日、佐賀県を相手取り、総額330万円の損害賠償を求める訴えを佐賀地裁に起こした。原さんは「強盗をするつもりはなく、計画を警察に知らせたのに逮捕された」と主張。代理人の弁護士は「違法なおとり捜査だ」と訴えている。

 県警は「捜査は適正だった」としたうえで、報道発表については「原さんが情報提供したことを疑われないようにするため、一部事実を変えた」と認めている。

 原さんは昨年7月29日未明、少年2人を含む3人の男とともに強盗予備容疑で佐賀署に逮捕された。同署は同日、「被疑者らは共謀の上、佐賀市内の民家に押し入り強盗することを企て、目出し帽やバールなどを準備。軽乗用車にのせ、28日午後3時ごろ、佐賀市の民家の前まで行き、強盗の予備をした」として原さんの名前も発表。一部の新聞に掲載された。

 主犯格の男は現場に行かず、29日午後に同容疑で逮捕された。原さんも含め逮捕者は計5人だった。

 訴状などによると、原さんは7月21日、中学時代の同級生で暴力団組員だった主犯格の男から呼び出され、他の男らと一緒に民家を下見。その後、男が強盗計画をほのめかしたという。23日には男に電話で目出し帽を買うように言われ、三つ購入した。

 しかし原さんは、犯行を予定していた28日昼過ぎ、強盗をやめさせようと佐賀署に行き、刑事に計画を知らせたところ、「予定通りやってくれ」と言われたという。犯行に使われる予定だった軽乗用車からバールと目出し帽を取り出していたが、「のせておいてくれないと困る。証拠にならない」とも言われ、再び積み込んだという。

 その後、主犯格の男を除く3人を車に乗せて午後3時ごろ、民家に到着。待ち構えていた警察官から任意同行を求められて佐賀署に連行され、29日未明、目出し帽を23日に購入した事案について強盗予備容疑で逮捕された。約20日間の勾留(こうりゅう)の後、8月17日に佐賀地検から不起訴処分(起訴猶予)とされ、釈放された。他の4人のうち成人の2人は起訴され、主犯格の男は実刑が確定している。

 記者会見した原さんは「釈放され、初めて警察の発表を知った。名誉を損なわれたうえ、仕事もできなくなった」と訴えた。原さんの代理人の本多俊之弁護士は「国民を犯罪に駆り立てており、この事案でおとり捜査は問題だ」としている。

 朝日新聞の取材に対し佐賀県警の江口民雄・刑事部管理官は「捜査は適正だった。報道発表については、原さんがほかのメンバーから情報提供したことを疑われないようにするため、一部事実を変えた。捜査に協力してくれた原さんが提訴したことは残念」と話している。

    ◇

 〈おとり捜査と泳がせ捜査〉 おとり捜査は、捜査員やその依頼を受けた協力者が身分や意図を隠して相手方に犯罪の実行を働きかけ、犯罪に着手したところを検挙する捜査手法。大麻不法所持事件を巡る04年7月の最高裁判決で「直接の被害者がいない薬物犯罪などの捜査で、通常の捜査方法だけでは摘発が困難な場合、機会があれば犯行を行う意思があると疑われる者を対象に行うことは、刑事訴訟法に基づく任意捜査として許される」と、限定的に認める判断が示された。

 泳がせ捜査は、密輸された薬物や拳銃などが発見された際にあえて押収や容疑者の逮捕をせず、偽物にすりかえるなどして流通させ、関係者を一斉に摘発する手法。麻薬特例法や銃刀法で認められている。」




(2) 読売新聞平成20年3月8日付朝刊

おとり捜査に協力させられ逮捕、損害賠償求め提訴…佐賀

 知人らが強盗を企てていることを警察官に知らせたのに「おとり捜査」に協力させられた末、逮捕されて名前を公表され、精神的、肉体的苦痛を被ったとして、佐賀市兵庫町、中古自動車販売業原一弘さん(36)が7日、佐賀県を相手取り、330万円の損害賠償を求める訴訟を佐賀地裁に起こした。

 訴状などによると、原さんは昨年7月23日ごろ、中学の同級生だった暴力団幹部(36)から、同28日に佐賀市の民家まで軽乗用車を運転するよう頼まれ、目出し帽を購入することも指示された。幹部と別の男との話から、強盗を計画していると直感。28日の“犯行”約2時間前に佐賀署を訪れ、刑事に「強盗をやめさせたい」と相談した。

 しかし、刑事から犯行計画に加わるよう言われ、軽乗用車に男3人を乗せて目的の家へ行ったところ、覆面パトカーで追跡するなどしてきた同署員に4人全員が拘束された。原さんは翌29日、事前に強盗目的で目出し帽を買ったとして強盗予備容疑で逮捕され、20日間拘置された後、不起訴(起訴猶予)となって釈放された。

 原さんは「パトカーで現場を巡回してくれれば、仲間が犯行をあきらめると思って話した。逮捕され、共犯者として名前を公表されたのは納得できない」と主張。県警は「知人らを逮捕するためにはやむを得なかった」としている。

(2008年3月8日01時01分 読売新聞)」




(3) 毎日新聞 2008年3月8日 西部朝刊

損賠訴訟:友人の強盗計画通報後、「おとり捜査に協力」も逮捕 佐賀の男性が提訴

 佐賀県警に昨年7月に強盗予備の疑いで逮捕された後、起訴猶予となった佐賀市兵庫町渕の中古車販売業、原一弘さん(36)が7日、「捜査に協力したのに身柄を拘束され、虚偽の発表をされた」として、県に330万円の損害賠償を求めて佐賀地裁に提訴した。

 訴状などによると、原さんは07年7月21日、友人らが強盗を計画していることを知り、指示され目出し帽を購入した。しかし、犯行をやめさせようと同28日、佐賀署に計画を知らせた。

 捜査員は、原さんの話を聞くと「予定通り(計画を)進めてほしい」と要請。当時、原さんは強盗をしようと思っておらず、車からバールや目出し帽を降ろしていた。そのままでいいかを尋ねたところ、捜査員から「載せておいてくれないと困る」などと言われ、再び車に戻したという。

 原さんは同日午後、友人が狙っていた民家近くに車で行って他の3人と共に逮捕された。佐賀署は29日、強盗予備の疑いで原さんを含む5人を逮捕したと発表した。

 原さん側は「強盗予備には故意性がないうえ、車で現場に出かけたのも警察から求められたため」と主張。そのうえで「(他の逮捕者と)共犯関係になることはあり得ない。記者発表は原告に関しては虚偽だ」としている。原さんの弁護士は「違法なおとり捜査に協力させられた」と話している。

 県警刑事部の江口民雄管理官は「目出し帽を買った時点で強盗予備容疑があり、逮捕は適正だった。逮捕や発表には、他の4人に通報したことを分からなくする身辺保護の狙いがあった」と話している。【高芝菜穂子】

毎日新聞 2008年3月8日 西部朝刊」




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2008/03/10 [Mon] 19:43:46 » E d i t
厚生労働省は3月5日、2008年度診療報酬改定に伴う新点数などを告示し、同日付で新しい診療報酬の運用に関する留意事項などを通知しました。08年度の改定は、大まかに言えば、産科・小児科、病院勤務医対策などを重点的に評価する一方、再診料に上乗せする外来管理加算は「おおむね5分を超えて」直接診察することを算定要件に位置付けて算定を抑制させるというものです(キャリアブレイン:2008/03/05 21:55)。

問題なのは、生体腎移植手術の診療報酬を大幅に引き下げたことです。この点について、中日・東京新聞のみで取り上げていましたので、紹介したいと思います。(3月27日追記:フィリピンの腎臓移植の動向について追記しました)


1.中日新聞平成20年3月6日付朝刊

生体腎移植の診療報酬4割減 厚労省通知、医師は反発
2008年3月6日 朝刊

 厚生労働省は5日、新年度から生体腎移植の手術の診療報酬を4割以上引き下げると通知した。同省は「死体腎移植をより推進するため」とするが、死体腎移植が増えない現状で、さらに生体腎移植にもブレーキがかかることになりかねず、現場の医師から反発の声が上がっている。

 診療報酬は、公的医療保険を使って医者にかかった場合に適用される医療行為の「公定価格」。

 今回の改定で大きく変わったのは移植手術分の診療報酬で、改定前は生体腎移植も死体腎も同じ74万8000円だったが、4月からは生体腎は約35万円減の40万円となる。

 一方、「臓器提供者(ドナー)への負担が少ない」として腹腔(ふくくう)鏡下で摘出手術をした場合は新たに38万6000円が加算される。臓器提供者(ドナー)の安全管理にかかる費用として5万円も加算される。

 摘出と移植を合わせた手術では、死体腎移植は脳死の場合119万円、脳死以外の場合約145万円といずれも変更はなかった。生体では、摘出と移植を合わせた手術の診療報酬は、腹腔鏡手術をしない場合は約30万円(3割)下がり、腹腔鏡手術をした場合でも14万円下がる。

 2006年に国内で行われた腎移植手術は1136例で、うち8割を生体が占めている。

 移植は人工透析に比べて生存率が高いとされ、厚労省も移植を推進する路線を取ってきただけに、大きな方向転換となった。

 日本移植学会の寺岡慧理事長は「移植医療機関には大きな痛手。移植を増やしていこうとする流れに逆行することで、到底受け入れられない。腹腔鏡手術を評価するのはいいが、腹腔鏡をしない施設は致命的な打撃を受ける。早急に見直してほしい」と話した。」(東京新聞平成20年3月6日付朝刊1面「生体腎移植 報酬4割下げ 厚労省通知 『死体腎』推進へ」




(1) 今年4月から「生体腎移植の手術の診療報酬を4割以上引き下げる」のですから、急に大幅引き下げを行うことになります。

「今回の改定で大きく変わったのは移植手術分の診療報酬で、改定前は生体腎移植も死体腎も同じ74万8000円だったが、4月からは生体腎は約35万円減の40万円となる。(中略)

 摘出と移植を合わせた手術では、死体腎移植は脳死の場合119万円、脳死以外の場合約145万円といずれも変更はなかった。生体では、摘出と移植を合わせた手術の診療報酬は、腹腔鏡手術をしない場合は約30万円(3割)下がり、腹腔鏡手術をした場合でも14万円下がる。」



要するに、診療報酬について、死体腎移植の手術は現状のまま(引き上げも引き下げもなし)であるのに対して、生体腎移植の手術は大幅に引き下げたわけです。生体腎移植の手術の診療報酬を大幅に引き下げれば、医師側が生体腎移植を避けることが考えられ、生体腎移植を抑制することにはなるでしょう。

厚労省は、生体腎移植の手術の診療報酬の大幅引き下げを「死体腎移植をより推進するため」としています。しかし、生体腎移植の診療報酬を引き下げたところで、死体腎移植を推進することにつながるとは思えません。なぜなら、死体腎移植の診療報酬は引き上げていないのですし、死体腎移植を推進するための具体策を何もしていないため、死体腎移植を行う前提としてのドナーがいないのですから。



(2) 日本移植学会の寺岡慧理事長は、生体腎移植の手術の診療報酬の大幅引き下げについて次のように述べています。

「日本移植学会の寺岡慧理事長は「移植医療機関には大きな痛手。移植を増やしていこうとする流れに逆行することで、到底受け入れられない。腹腔鏡手術を評価するのはいいが、腹腔鏡をしない施設は致命的な打撃を受ける。早急に見直してほしい」と話した。」



病気腎移植につき、日本移植学会の主張に同調することはないのですが、この意見には同調します。今回の診療報酬の改定が実施されると、「死体腎移植が増えない現状で、さらに生体腎移植にもブレーキがかかる」ことになってしまいます。これでは、腎移植全般の抑制策となるだけですから。

日本移植学会にしてみれば、厚労省とともに(焚き付けて?)病気腎移植を否定してだけに、今回の診療報酬の改定には裏切られた気持ちでいっぱいではないかと思います。

ただし、厚労省の態度としては一貫しているといえそうです。腎臓移植の運用指針及び議論からすれば、厚労省も日本移植学会も健康体から腎臓を摘出するという「生体腎移植」は好ましくないものだとしており、厚労省は本気で生体腎移植を抑制する気であったわけですから。言い換えると、日本移植学会としては、(病気腎移植という移植拡大を阻止することは熱心だったが)生体腎移植を抑制する気はまったくなかったのに対して、厚労省は本気だったということだからです。

もしこの診療報酬のまま実施されることになれば、生体腎移植は抑制され、しかも死体腎移植も増えないのですから、病気腎移植を実施することで腎臓移植を増やすしかないともいえます。(病気腎移植も保険適用にすることが前提となりますが)

日本移植学会はどういう態度をとっていくのでしょうか? 生体腎移植の診療報酬引き下げ阻止だけを主張するのでしょうか、それとも死体腎移植を大幅に増やす具体策を提示したり、病気腎移植は妥当であるとの見解変更を行うのでしょうか? 注目したいと思います。


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2008/03/09 [Sun] 23:59:30 » E d i t
「日本学術会議が報告書最終案(上)~代理出産の法律による原則禁止など10項目の提言」の続きです。


本来、日本学術会議が法務省及び厚生労働省から依頼された任務は、「代理懐胎が生殖補助医療として容認されるべきか否かなど、代理懐胎を中心に生殖補助医療をめぐる諸問題について、従来の議論を整理し、今後のあり方等について調査審議を行う。」はずでした。しかし、生殖補助医療をめぐる諸問題すべて検討すべきだったのに、代理出産のみに終始してしまい(子供の権利も不確定のままで、最も必要性に迫られていた卵子提供の是非さえも決定しなかった)、依頼された任務を怠ったのです。

「生殖補助医療の在り方検討委員会」の鴨下重彦委員長は、「国会で幅広い議論が展開され、必要な立法化に向けて準備が開始されることを心から念願する」とし、「放置は許されない」と法規制を強く迫っています。しかし、日本学術会議自体が依頼された任務を怠って不十分な提言しか提出できなかったのに、よくも「放置は許されない」などと法規制を迫ることができるものだと唖然とします。しかも、立法内容を殆ど空白のままで「生殖補助医療法(仮称)」という、すべてを網羅したような新たな立法を要求するのですから、ここまで日本学術会議が厚顔無恥だとは思いませんでした。

こんな厚顔無恥な提言で立法せよというのですから国会議員も呆れていると推測できますが、では、代理出産を含めた生殖補助医療に関する法制化の見込みはどうなっているのでしょうか? 「日本学術会議が報告書最終案(下)」では、この点について触れてみたいと思います。



1.まず、「Q&A」形式で分かりやすい記事を。

(1) 日経新聞平成20年2月25日付朝刊23面「Q&A」欄

代理出産 法制化には時間  倫理観の問題 集約は難しく

 不妊夫婦が妻以外の女性に子どもを産んでもらう代理出産の是非を議論してきた日本学術会議の検討委員会が19日、最終報告書案を提示した。今後焦点となる法制化はどうなるのか、見通しなどをまとめた。

  どこが法制化を担当するのか。

  政府は法案提出に後ろ向きだ。今回の報告書は、政府への答申というわけではなく拘束力がない。加えて「価値観にかかわる問題で、役所が主導することはなじまない」(厚労省)との理由から、国会が議員立法で法案提出すべきだとの考えだ。

  国会の状況は。

  代理出産を議論する超党派の勉強会があるが、昨年6月以来、活動は休止状態。報告書を受けて3-4月から議論を再開する予定だ。法案の提出時期は未定としているが、時間がかかりそうだ。

  なぜ時間がかかるのか。

  全体からみれば熱心な議員は少なく、また代理出産のような倫理観にかかわる問題は意見がまとまりにくい。ただ、最高裁が昨年3月、法整備を求める判決を出している以上、法制化棚上げでは政治が無策との批判も浴びかねない。

 法案の対象範囲をどこまで広げるかで状況は変わりそう。報告書案は代理出産に限らず生殖補助医療(不妊治療)全般の法律を作るべきだと提言。生命倫理政策を決める委員会の設置を求める声もある。国会がこうした抜本的な法整備に動くなら、さらに長期化する可能性がある。

  法案の内容は原則禁止という報告書案通りになるのか。

  超党派の勉強会は条件付きで認める考えを持つ議員が多い。報告書を参考にはするが、必ずしもその通り法案を作るとは限らない構え。さらに国会での議論となると、また違う意見も出るとみられる。全面解禁という逆の結論に至る可能性は低いが、容認方向へ軌道修正される可能性は残る。」




(2) この記事から理解できる重要な点が2点あります。

  イ:重要なポイントとして、「今回の報告書は、政府への答申というわけではなく拘束力がない」のであり、「価値観にかかわる問題で、役所が主導することはなじまない」ために、生殖補助医療の法律は、議員立法で制定するしかないということです。

そうなると、不妊治療・生殖補助医療に理解がある国会議員が主導して立法化することになりますが、そのような議員は少なく、意見集約は難しいのです。また、最も生殖補助医療に関する法案を作成する能力を有する「代理出産を議論する超党派の勉強会」は、「報告書を受けて3-4月から議論を再開する予定」なのですから、これでは早期の立法化のめどが立つわけがありません。

しかも、報告書案は、中身がほとんどないのに「代理出産に限らず生殖補助医療(不妊治療)全般の法律を作るべきだと提言」してしまったばかりか、「生命倫理政策を決める委員会の設置」まで望んだのです。ここまで大風呂敷を広げたら、抜本的な法整備が必要になり、「さらに長期化」します。

ですから、日本学術会議の意向とは異なり、代理出産を含めた生殖補助医療に関する法制化の見込みは当分なく、早期の立法化はあり得ないのです。

そうなると、報告書でも例外的にも代理出産を容認し、他の生殖補助医療につき何も決定せず、法制化されないことが前提となるため、生殖補助医療につき各医療機関を法的に制約するものはないことになります。そこで、各医療機関は、独自のガイドラインに基づいて生殖補助医療を実施していくことになるのです。


  ロ:もう1つ重要なポイントは、最も生殖補助医療に関する法案を作成する能力を有する「代理出産を議論する超党派の勉強会」は、条件付きで認める考えを持つ議員が多く、生殖補助医療全般につき原則自由であるという主張であるということです。

ですから、代理出産原則禁止という日本学術会議の報告書とは相容れず、報告書には政府に対しても拘束力がないため、「代理出産を議論する超党派の勉強会」は、報告書を参考にはするとしても、報告書どおりの法案を作る可能性はほとんどないということです。

今やどの意識調査でも、過半数の人が代理出産を認めていますし、昨年3月に厚労省が実施した国民の意識調査では、代理出産を「社会的に認めてよい」とした人は54%、「認められない」は16%というほど大きな差異が生じているくらい、代理出産を認める意識は広がっているのです。しかも、04年4月~05年9月に、浜松医大医学部5年の男女174人を対象に調査した結果によると、代理出産については、70%もの学生が「社会的に賛成できる」と答えています(毎日新聞平成18年11月27日付夕刊2面)。

このように、一般人だけでなく、医者の卵さえも一致して代理出産を容認している以上、そのような世論を無視して代理出産を禁止するような議員立法は不可能です。報告書は全く無意味だったとはいえないまでも、無駄な作業だったといえるでしょう。

そうなると、どういう内容の議員立法になるかが気になります。

野田聖子衆議院議員によると、「生殖補助医療は原則自由、患者主体で行えるとする特例法」となり、母子関係については「生まれた子供は、法的に実子とできる」とし、「本人が納得して責任を取るなら、国はそれを止めません」という原則に基づいた立法になる予定とのことです(「野田聖子議員が語る「代理出産は認めるべき」~nikkeiBPnet(12月1日)より」(2006/12/23 [Sat] 23:14:44)参照)。



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2008/03/08 [Sat] 23:58:21 » E d i t
不妊の夫婦が妻以外の女性に出産を頼む代理出産の是非を検討していた日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東京大名誉教授)は3月7日の会合で、代理出産の法律による禁止など10項目の提言を盛り込んだ報告書最終案をまとめました。学術会議内での審査などを経て、4月上旬をめどに報告書を完成し、厚生労働、法務両相に提出するとのことです。


提言内容について検討する前に、ネットを見ていると勘違いしている方が多いので、代理出産を認めるか否かとはどういうことかを簡単に説明しておきます。

代理出産を認めた場合、代理母と代理出産依頼者夫婦すべての人の同意を必要とするのです。代理出産を認めたとしても、親族又は第三者の意思問わず、女性すべてを代理母として強制するものではありません(強要すれば、強要罪として処罰される)。代理出産を実施する場合、最低限1年半から2年ほどの期間かかり、しかも多数人が関与するのですから、長期間、強要し続けることはまず困難であり、代理母となるためには医学的な適格審査が必要であって誰でも代理母となるわけではないのです。

他方で、代理出産を禁止するということは、代理母と代理出産依頼者夫婦すべてが代理出産の実施に同意していても、そのすべての人の同意という自己決定権(憲法13条)を全面的に制約・禁止するということです。注意すべきことは、代理母の自己決定権も全面的に否定することになる点です。

代理出産を認めるか否かとは、代理母と代理出産依頼者夫婦すべての人の同意を尊重するのか、それともすべての人の同意を禁圧するのか、ということなのです。



1.まず、報告書案の提言の要旨と、批判書の一部を。

(1) 中国新聞3月7日21時14分更新

代理出産に関する提言要旨 日本学術会議検討委員会

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 日本学術会議検討委員会が7日まとめた、代理出産に関する提言の要旨は次の通り。

 一、代理出産は法律で原則禁止とすべきだ。

 一、営利目的の代理出産は、医師、あっせん者、依頼者を処罰する。

 一、代理出産の危険性チェックなどのため、厳重な管理下での試行(臨床試験)は考えられる。

 一、試行には、登録や追跡調査などに当たる公的運営機関が必要。

 一、代理出産でも産んだ女性が母。

 一、生まれた子と依頼者夫婦は、養子縁組で親子関係を確定する。

 一、子が出自を知る権利は今後の検討課題。

 一、議論が尽くされていない生殖医療の課題の検討が引き続き必要。

 一、生命倫理を検討する公的研究機関と、内閣府への常設委員会設置が望ましい。

 一、生殖医療の議論では子の福祉を最優先する。

(初版:3月7日21時14分)」




(2) 産経新聞平成20年3月8日付朝刊29面

代理出産報告書案に盛り込まれた提言(要旨)2008.3.8 00:48

 ▽代理懐胎については、現状のまま放置することは許されず、規制が必要である。規制は法律によるべきであり、例えば、生殖補助医療規制法(仮称)のような新たな立法が必要と考えられ、それに基づいて当面代理懐胎は原則禁止とすることが望ましい。

 ▽営利目的で行われる代理懐胎には、処罰をもって臨む。処罰は、施行医、斡旋者、依頼者を対象にする。

 ▽代理懐胎の医学的問題、とくに出生後子の精神的発達などについて長期的観察の必要性と、倫理的、法的、社会的問題など起こり得る弊害の可能性に配慮するとともに、母体保護や生まれる子の権利や福祉を尊重する立場を重視し、厳重な管理の下に例外的に試行(臨床試験)を行う。

 ▽親子関係については、代理懐胎者を母とする。試行の場合も同じとする。外国に渡航して行われた場合についても、これに従う。

 ▽代理懐胎を依頼した夫婦と生まれた子については、養子または特別養子縁組によって親子関係を定立する。試行の場合も同じとする。外国に渡航して行われた場合もこれに従う。

 ▽新たに内閣府の下に常設の委員会を設置し、生命倫理に関する政策の立案なども含め、処理していくことが望ましい。」




(3) 学術会議報告書に対する批判書(平成20年2月15日)

学術会議報告書に対する批判書

扶助生殖医療を推進する患者会「二輪草」    
法学博士・桐蔭横浜大学法科大学院教授    
世話人弁護士 遠  藤  直  哉
(協力:医師 大谷徹郎、医師 根津八紘)


第1 結論

1 患者不在の報告書である。患者(障害者、弱者)を抑圧し、社会の差別意識を助長するものである。

2 子の福祉を全く保護しないものである。

3 根津医師の代理出産の功績を否定し、会告の禁止では足りないとし、さらに法律で禁止し、患者の人権を侵害し、世論に背くもの。

4 特に、母親の代理出産を否定する理由には全く根拠がない。

5 日産婦会の会告による禁止の状態をやめ、法律で公認する役割を期待されていたが、全く果たしていない。

6 本報告書は、代理出産ではなく養子をすすめるが、本報告書で自白するとおり、「養子」では泣く泣く子を渡す母親及び兄弟から子を引離す点で、「代理出産」(子を渡す意思と義務が明白である類型)より弊害のあることが明らかとなった。」




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2008/03/02 [Sun] 05:42:42 » E d i t
修復(病気)腎移植について禁止した厚生労働省の措置を再検討するため、2月21日に発足した、超党派の国会議員による「修復腎移植を考える超党派の会」(杉浦正健会長)は、その後、2月27日に衆議院第二議員会館・第1会議室で第2回会合を開きました。今週にも第3回会合を予定するなど急ピッチで議論を進めるとのことです。


1.第2回会合では、厚労省の職員を呼んで「厚生労働省の考え方や対応について質し」たのですが(平沢勝栄衆議院議員のHPより)、そこで問題とされたことは、修復腎移植は万波グループ以外にも全国の病院で多数行われていてその移植はまったく問題視していなかったのに、万波グループの移植だけ後出しで問題視したことでした。


そのため、幹事長の衛藤晟一・自民党厚労部会長は、次のように述べています。

 「厚労省の説明では、ともかく病気の腎臓の移植なんておかしいという話だった。だが、実際には病気の腎を修復して移植した例は他にもたくさんあった。それも保険適用している。なのに後になって、学会が医学的妥当性がないとする見解を出し、それに準拠して厚労省がすべての修復腎移植を原則駄目とした」(東京新聞3月1日付「こちら特報部」)



「衛藤氏ら議連が入手したデータによると、1985年以後に全国で行われた修復腎手術は90例あり、このうち76例は今回問題視されている万波医師らの手術とは別」であり、堤 寛・藤田保健衛生大学医学部教授(病理学)の調査によると、「日本のレストア腎移植は、動脈瘤、動静脈奇形などで95例、悪性腫瘍で下部尿管がんが8例、小腎細胞がんが8例」あったとのことです(「「第2回国際腎不全シンポジウム」(徳洲新聞2008年(平成20年)2/25 月曜日 NO.609))。

このように日本でも、万波グループ以外の医療機関も、問題視することなく修復腎移植を行ってており、すべて「特殊診療」に当たるとすることなく、保険適用しているのです(しかも、宇和島徳洲会病院や市立宇和島病院では、厚労省の担当者に保険適用できるか問い合わせをして認められている)。


法原則の1つとして、「自己の行動に矛盾した態度をとることは許されない」という「禁反言」(エストッペル)の原則というものがあります。この禁反言の原則は、民法1条2項「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という、いわゆる「信義則」の一種であり、法律行為解釈の基準となり、社会的接触関係にある者同士の規範関係を具体化する機能があり、条理の一形態として、制定法の規定のない部分を補充し、制定法の形式的な適用の不都合を克服する機能があります。

このように、禁反言の原則は、民事法の分野に適用される原則として説明されることが多いのですが、今や、文明諸国の国内法で共通に認められる「法の一般原則」の1つとして扱われています(法学教育指導研究会『現代法学入門』74頁参照)。

そうすると、厚労省の対応は、以前自ら修復腎移植は保険適用を認めていたのに、学会が医学的妥当性がないとする見解を表明した後になって、万波医師が修復腎移植を行ったことに対して、保険適用外であるというのですから、明らかに禁反言の原則に反するものであって、実に不合理です。


東京新聞3月1日付「こちら特報部」では、このような第2回会合で問題視された点を中心として記事にしているようです。第2回会合の内容について記事にした新聞社は、いまのところ東京新聞だけですから、大変有意義な記事といえます。「修復腎移植を考える超党派の会」が発足したというだけではなく、その活動の状況を伝えるといった継続した深みのある記事こそ、多くの読者は求めているものだからです。



では、東京新聞3月1日付「こちら特報部」の記事を紹介します。

紙面中では文章中に組み込まれていない見出しが多く、うまく組み込みにくいものがあるので、まず見出しすべてを挙げておきます。

SOS臓器移植 「修復腎」移植 いいの? 悪いの?

万波氏以外「全国76例」

議連幹事長「手続き論より志の問題」

「命救うため医療はある」

合法の生体間 「疾患は偶然」

学会「妥当性なし」見解変わらず

万波氏のケース 摘出の必要なかった ■ 患者への説明不十分

議連「処分前に結論出したい」




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