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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2008/01/29 [Tue] 18:13:21 » E d i t
宇和島徳州会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らは27日朝(現地時間26日午後)、米フロリダ州のマルコ島で行われている米国移植外科学会の冬季シンポジウムでレストア腎(病気腎)移植の症例や成果を発表しました。しかも、米国移植外科学会は、今回応募された約120の演題のうち、万波医師らの論文を上位10本の1つに選出して表彰を行いました。


1.報道記事をいくつか。

(1) 日テレNEWS24<1/27 20:19>

万波誠医師の論文 米国の学会で入選<1/27 20:19>

 病気の腎臓を移植していたことで論議を呼んでいる愛媛県の万波誠医師の論文が、アメリカの学会でトップ10の評価を受け、入選した。

 宇和島徳洲会病院の万波医師は、がんなどの病気で摘出した腎臓を修復した上で別の患者に移植する、いわゆる「病腎移植」を行い、日本の学会から批判を受けた。しかし、アメリカ移植外科学会からは「革新的で素晴らしい」との評価を受け、現地時間26日にフロリダ州で開かれた学会でトップ10に入った論文として、発表の機会を与えられた。

 病腎移植については、日本移植学会などは「妥当性がない」として禁止すべきとの姿勢を取っており、新たな論議を呼ぶものとみられる。」




(2) TBS NEWSi(1月28日23:31)

病気腎移植めぐり米で万波医師ら表彰

 日本では厚生労働省が原則禁止とした病気腎臓移植をめぐって、アメリカの移植外科学会は、移植を進めてきた宇和島徳洲会病院の万波誠医師らの論文に高い評価を与え、表彰しました。

 病気腎臓移植は、宇和島徳洲会病院の万波誠医師らが、小さなガンなどに侵された腎臓からガンの部分などを切除した上で、希望する患者に移植していたもので、1991年から合わせて42例行われました。

 アメリカの移植外科学会が表彰したのは、病気腎移植をめぐって万波医師らがその成果をまとめた論文で、優れた論文トップテンのひとつに選ばれました。

 「(病気腎移植で)どれだけの患者が救われるかはわからないが、これは斬新なアプローチで、とても興奮すべき発想だ」(アメリカ移植外科学会 ゴーラン・クリントマム会長)

 アメリカ・フロリダ州で行われた学会のシンポジウムには万波医師らが出席。研究発表も行われました。厚生労働省は去年7月、病気腎臓移植を原則禁止としていますが、論議に一石が投じられたかたちです。(28日23:31) 」



米国移植外科学会会長のこの言葉が、万波医師の論文の価値を端的に表していると思います。

「(病気腎移植で)どれだけの患者が救われるかはわからないが、これは斬新なアプローチで、とても興奮すべき発想だ」(アメリカ移植外科学会 ゴーラン・クリントマム会長)


1月20日、日本で行われたシンポジウム(「国際シンポジウム「日本とオーストラリアの病腎移植」」(徳洲新聞No.606[2008(平成20)年2月4日]))でも、次のように米国移植外科学会が評価しているとの発言がありました。

「泌尿器科の医療と移植医療が別々であったため、(移植医側としては)今まで多くの腎臓が捨てられていたことを知らなかった。捨てていた腎臓があったという事実が驚きであった。しかも、万波医師らの論文によれば、捨てていた腎臓が移植に使えるというのであるから、ごく身近に多数のドナーがいたことになる。移植の手続きで騒動になったようだが、ドナーソースを見つけ出したこと自体が素晴らしいことなのだ。」

と。

このような評価からすれば、米国移植外科学会が、今回応募された約120もの演題のうち、万波医師らの論文を上位10本の1つに選出し、高く評価したことも十分に理解できることだと思います。


追記:米国では、“インフォームドコンセント(十分な説明と同意)”について、有名なメイヨークリニックをはじめ、同意書に患者のサインを求めない病院は少なくない。このように各病院・医師の裁量に委ねられているため、万波医師らの医療行為につき同意書の有無は、法的にも医学的にも全く問題にならなかった。)



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2008/01/27 [Sun] 21:49:14 » E d i t
国際シンポジウム「日本とオーストラリアの病腎移植」が、1月20日東京で開催されたことについては、「国際シンポジウム「日本とオーストラリアの病腎移植」が開催」で紹介し内容について幾ら触れています。そのシンポジウムのために来日したオーストラリア・クイーンズランド大のデビッド・ニコル教授(47)へのインタビュー記事が東京新聞に掲載されましたので、紹介したいと思います。

紙面では、デビッド・ニコル教授とコーディネーターのゲイル・フローロフさんの写真(1月20日撮影)も掲載されています。図書館などで東京新聞の記事をぜひご覧ください。

1月29日追記日テレNEWS24<1/27 20:19>での報道を追記として引用した。シンポジウムの内容は、「国際シンポジウム「日本とオーストラリアの病腎移植」」(徳洲新聞No.606[2008(平成20)年2月4日]))もご覧ください)



1.東京新聞平成20年1月27日付朝刊28面「こちら特報部」

がんの病気腎移植 世界で試み  万波医師と共同研究へ 豪ニコル教授 「再発率は低いと思う」

 日本では「現時点では医学的妥当性が無い」として原則禁止となった病気腎移植。だが今、世界各地から、がんの病気腎移植の試みを報告する論文が出始めている。今後の動向などについて先日、講演のために来日したオーストラリア・クイーンズランド大のデビッド・ニコル教授(47)に聞いた。(片山夏子)

 ニコル氏は1996年から、クイーンズランド州立プリンセス・アレクサンドラ病院で小さながんを取り除いた腎臓を60歳以上の患者に移植してきた。その実績は死体腎からの5例を含む計49例に上り、昨年は15例を行った。

 「今後は年間15例のペースで行いたい。昨年論文をまとめたが、米国からも報告が出るなど動きが出てきている。一般的にがんに対する抵抗感は強いが、透析患者の死亡率とがんの再発率を比べて、冷静に病気腎移植について考えるべきだと思う」

 拒絶反応による摘出例は今のところない。一例は移植から9年後に小さながんが発見されたが、「場所が離れていることなどから、ドナー(臓器提供者)由来のがんの再発や転移ではないとみている」。がんが小さいことと、患者が高齢なことから経過を観察している。

 移植するのは60歳以上に限定し、糖尿病で合併症があるなど病状が悪い透析患者に限っている。

 「オーストラリアで60歳以上の透析患者の死亡率は約25%で、3センチ以下のがんの再発率は3―4%。移植を待っている間に患者が亡くなる現状を考えると、(日本で問題になったように)ドナーや患者への十分な説明や手続きの透明性は必要だが、これまで捨てていた腎臓を使うことは有効な手段のように思う」

 ニコル氏は昨年、論文をまとめて英国の医学雑誌に受理されたが、米国からも報告が出されたという。

 海外のほかの症例や研究はどのような状況なのか。

 米カリフォルニア大のジェアード・ホイットソン教授は、22歳男性から摘出した腎臓から2センチのがんを除去し、62歳の糖尿病で末期腎疾患の男性に移植したことを発表。「新しい臓器の利用価値は十分にある」とし、患者の登録制度を検討するとしている。

 米ピッツバーグ大のエマヌエラ・タイオーリ教授らは、2002―04年にイタリア国内での約8200例の臓器移植を研究。がんやがんのリスクのあるドナーから移植した場合、ドナー由来のがんが再発や転移する可能性は、極めて低いことを報告している。

 ニコル氏は「移植患者は免疫抑制剤を使っているので一般的にがんの発症率を高い。日本でも指摘されたようだが、オーストラリアでも当初はドナー由来のがんの再発が懸念されたが、症例を重ねるについて受け入れられてきた。移植でドナーと違う免疫系に入るため、ドナー由来のがんの再発率はむしろ低くなると考えている」と説明する。

 宇和島徳州会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らは27日朝(現地時間26日午後)、米フロリダ州のマルコ島で行われている米国移植外科学会の冬季シンポジウムで病気腎移植の症例や成果を発表する。

 ニコル氏はシンポジウムに合わせて訪米し、病気腎移植を検討するフロリダ大学で講演する。「世界的な臓器不足の中で関心が高い。がんへの抵抗感は根強いので広がるか分からないが、検証を重ねたい」

 今後は、がんの病気腎移植について万波医師らと論文をまとめる予定で、5月の米国移植外科学会に共同で演題を提出した。また、8月にシドニーで行われる国際移植学会に向けて、各国からの病気腎移植に関する報告を集めている。

 ニコル氏は「病気腎移植は症例が少ない。国際的にできるだけ多くの症例を集めてデータを一本化したい」と話した。」






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2008/01/26 [Sat] 18:40:46 » E d i t
宗教法人「回向院」(東京都墨田区)が東京都側に供養施設への課税(固定資産税と都市計画税)取り消しを求めた訴訟について、控訴審判決が1月23日、東京高裁でありました。東京高裁の一宮なほみ裁判長は「回向院での動物供養の宗教性は社会的に認知されている」と述べ、訴えを退けた一審東京地裁判決を取り消し、課税(固定資産税と都市計画税)を認めませんでした(時事通信(2008/01/23-21:53)「ペット供養は宗教行為=寺院への課税取り消し-東京高裁」)。そこで、「ペット供養訴訟」に関するこの判決について、取り上げたいと思います。


“ペット供養は宗教活動”

 東京の寺で江戸時代から続く飼い犬や飼い猫の供養が課税の対象になるかどうかが争われた裁判で、東京高等裁判所は、地域に根ざした宗教活動で営利活動ではないとして、東京都が行った130万円余りの課税を取り消しました。

 東京・両国にある「回向院」は350年余り前の江戸時代から飼い犬や飼い猫などを供養する寺として知られています。寺には高さ10メートルを超す動物の供養塔があり、お彼岸に営まれる動物の法要には、かわいがっていたペットの死を悼む大勢の参拝客が訪れます。

 これについて、東京都が「料金をとる供養は営利活動に当たる」として、4年前、固定資産税など130万円余りを課税したため、寺が「人の供養と同じ宗教活動だ」として取り消しを求めていました。

 23日の2審の判決で、東京高等裁判所の一宮なほみ裁判長は「江戸時代の文献には回向院に多くの動物が埋葬されたという記述があり、動物を供養する寺として古くから地域の人々のあつい信仰の対象だったことが認められる。供養料は取っているが、地域に根ざした宗教活動で営利活動ではない」と指摘し、東京都の課税を認めた1審とは逆に課税を取り消しました。

 判決について東京都の主税局は「主張が認められず、きわめて残念だ。判決の内容をよく見たうえで今後の対応を検討したい」と話しています。

1月23日 18時16分」(NHKニュース(1月23日 18時16分)



新聞紙面では大きな扱いではありませんでしたが、NHKで何度も報道されたためか、多くの関心を呼んだ裁判例だったようです。



1.いわゆるペット供養訴訟については、「ペット供養訴訟~宗教法人が行うペット供養(葬祭)も収益事業なのか?(上)」(2006/07/26(水) 23:04:32)「ペット供養訴訟~ペットの火葬や霊園の現状」(2006/08/13(日) 09:10:57)で触れています。


古来から日本の動物観は、どんな動物でも命あるものとして尊重し、供養を行ってきていました。動物供養で有名な「回向院」は、今からおよそ350年前の明暦3年(1657年)に開かれた浄土宗の寺院ですが、その理念は、「有縁・無縁に関わらず、人・動物に関わらず、生あるすべてのものへの仏の慈悲を説くもの」であり、その理念は現在までも守られてきているのです。

回向院の開創間もない頃、将軍家綱公の愛馬が死亡し上意によってその骸を当院に葬ることになりました。その供養をする為、回向院二世信誉貞存上人は馬頭堂を建て自らが鑿をとって刻し安置した馬頭観世音菩薩像は、享保年中(1716~35)の頃から「江戸三十三観音」に数えられています。また、回向院の境内には、猫の報恩伝説で知られる「猫塚」(文化十三年・1816)、「唐犬八之塚」(慶応二年・1866)、「オットセイ供養塔」(大正15年)、さらに義太夫協会の「犬猫供養塔」、飼鳥獣商協同組合による「小鳥供養塔」、邦楽器商組合の「犬猫供養塔」など、さまざまな動物の慰霊碑、供養碑があります。

人間はもちろん、生あるすべてのものへの仏の慈悲を説くという、回向院の理念が守られていることは、「平成19年春季彼岸会・犬猫小鳥等家畜総回向~彼(か)の岸(きし)へ生まれることを願う」(2007/03/17(土) 22:25:41)「平成19年総回向・家畜諸動物施餓鬼会」(2007/07/01(日) 23:36:53)「平成19年秋季彼岸会・犬猫小鳥等家畜総回向」(2007/09/23(日) 21:14:58)といったようなことでも、いくらかでも理解できるかと思います。

このように、回向院での動物供養の歴史は回向院の開創間もない頃(回向院二世信誉上人の時代)まで遡るほど古いものであり、動物供養は回向院と切り離せないものなのです。東京高裁は、「回向院での動物供養の宗教性は社会的に認知されている」としていますが、極めて妥当な理解です。



この問題について検討する前に。

飼い主により、死後回向院に供養のために連れてこられたペットは幸せです。多数の犬・猫などが殺処分となっており、生涯を全うできずにいるのですから。

「無責任な飼い主による動物虐待や置き去り、利益追求ばかりで無計画な繁殖を行う悪質な業者は後を絶たない。炭酸ガスにより殺処分される犬や猫は年間約40万匹。環境省は、罰則などを強化した改正動物愛護管理法を先月から本格運用した。しかし、引き取り手がない犬や猫を動物管理センターからもらい受け、民間の動物愛護団体などが新たな飼い主を探す構図は変わってはいない。」(YOMIURI ONLINE:ズームアップ・ウィークリー(2007年7月4日)「無責任飼い主の罪」



深夜、犬が吠えて近所から苦情を受け、家族が睡眠不足になったからなど多くの身勝手な理由――深夜吠えないように教えるのが飼い主の務めなのに――で、殺処分になっているのです。殺処分を待つ犬は、目が虚ろになり、恐怖におびえ口からよだれを流し続けています。飼い主としての務めを果たす意思がない者に飼われる動物は不幸です。

昔の地域住民は、犬が吠えるのは当たり前だと思い、文句を言い出すものはほとんどいませんでした。昔に比べれば、今の犬はほとんど吠えることがなくなっているのにも関わらず、今の日本社会は、犬が少しでも吠えることを許容出来ないほど寛容さをなくしてしまっているようにも思います。



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テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

2008/01/24 [Thu] 17:51:33 » E d i t
近時、日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」に対して、「代理出産一律禁止、代理母以外の関係者すべて処罰」とする学術会議報告書素案が提出され、検討されたとの報道がありました(素案の検討については、「「代理出産一律禁止、代理母以外の関係者すべて処罰」の学術会議報告書素案提示(上)~委員会では賛否両論で結論持ち越し」「「代理出産一律禁止、代理母以外の関係者すべて処罰」の学術会議報告書素案提示(下)~憲法に対する意識、日本人の生き方が問われている問題である」をご覧ください)。


1.その素案では子供の法的地位の問題、生まれてきた子供の出自を知る権利、第三者の配偶子(卵子又は精子)の提供については触れておらず、検討委員会の作業部会は結論を出すことを諦めてしまったのです。

「生まれた子が出自を知る権利の確保や、第三者から卵子などの提供を受ける不妊治療の是非についても検討課題だったが、「十分な検討時間がない」として、結論を出さないことにした。」(毎日新聞平成20年1月19日付朝刊30面)



第三者の生殖により生まれた子の法的地位は、日本法では明文規定がなく、しかも母子関係を決定する規定さえもないため、かなり不安定な状況であり、一刻の猶予もないのです。子の法的身分関係が不安定となると、養育監護を受ける権利が保障されないなど「子の保護」が危うくなるのですから、「子の保護」を最優先とする(比較法的にも)親子法制の基本原則に著しく反している状態なのです。

ですから、なぜ作業部会は、子供の出自を知る権利や、第三者の配偶子(卵子又は精子)の提供につき、なぜ結論を出さなかったのか疑問に感じたと思います。では、学術会議報告書素案が出自を知る権利や配偶子提供の是非につき沈黙したのはなぜでしょうか? 

検討委員会作業部会の委員に見識がなかったことが最大の理由でしょうが、最近の海外事情を知ったことで、結論が出せなくなってしまったのではないかと推測しています。そこで、海外における配偶子提供の現状に関して報告した論文(石原 理・他『卵子提供,代理懐胎(IVFサロガシー)の実態と展望』 臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)1496頁)を紹介しつつ、説明していきたいと思います。


臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)の論文を紹介する前に。

ネットでの議論を見ると、古い海外データを使い、1980年代のフェミニストグループやカトリック教会の主張をそのまま受け売りにして、代理出産などの生殖補助医療を巡る問題に関して強行に反対する方が多いようです。誰がその主張をしているのか、なぜ探らないのでしょうか? 日本ではこんなにもフェミニズム――しかも1980年代半ばの――を肯定する意識が増えて、いつの間にカトリック教会(バチカン)の信者が増大したのだろうかと皮肉りたくなります。

そして、代理出産などの生殖補助医療を巡る問題は、どのような立法を行うかの段階に入っているのです(立法論)から、関連する法分野(憲法、民法、刑法、国際私法、国際民事訴訟法)に目を配りつつ法律的な議論を行うことが不可欠なのです。しかし、代理出産などの生殖補助医療を巡る問題に関して、幅広い法分野の問題であることを意識しつつ法律的な議論をして、否定的に論じている方は皆無です。少なくとも、もっと法律論であることを意識して論じるべきではないでしょうか。「向井亜紀さんが気に食わないから代理出産に反対」だといった趣旨のことを述べている方もいますが、あまりにも情けないと思うのです。



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2008/01/22 [Tue] 23:30:28 » E d i t
がんで摘出された腎臓の移植を数多く成功させている海外の専門医らにより、平成20年1月20日(日曜)、「日本とオーストラリアの病腎移植」 という国際シンポジウムが東京(東京商工会議所ビル7階・国際会議場)で開かれました。このシンポジウムは万波誠医師を支援する患者団体である、「移植への理解を求める会」が主催したものです。

このシンポジウムについては、「万波誠医師を支援します」さんの「日本とオーストラリアの病腎移植」シンポジウム開催」でも、情報を掲載しています。ぜひご覧下さい。

1月23日付追記:次回のシンポジウム情報について追記しました)
1月29日追記:シンポジウムの内容については、(「国際シンポジウム「日本とオーストラリアの病腎移植」」(徳洲新聞No.606[2008(平成20)年2月4日])をご覧ください。詳しく掲載されています。)


このシンポウジムの趣旨は、

「病腎移植を通常医療として行い、すでに数十例の実績を上げているクイーンズランド大学(オーストラリア)のデビッド・ニコル教授が初来日。日豪を結ぶネットワークの中で、新しい腎不全治療の可能性を探る。」(「徳洲会グループ」の「ご案内 国際シンポジウム『日本とオーストラリアの病腎移植』」より)

というものです。


1.では、国際シンポジウム「日本とオーストラリアの病腎移植」のプログラムと報道記事を。

(1) 「日本とオーストラリアの病腎移植」のプログラム<最新版>

●司会進行
野村正良
「移植への理解を求める会」代表幹事

13:55~
「開演の挨拶」
向田陽二「移植への理解を求める会」代表

14:00~
「日本の病腎移植の歴史と可能性」
光畑直喜医師 呉共済病院泌尿器科部長

14:30~
「オーストラリアの病腎移植49例」
デビッド・ニコル クイーンズランド大学教授

15:20~
「オーストラリアの患者さんへの説明と同意取得」
移植コーディネータ ゲイル・フローロフさん

15:50~
「患者の治療の選択権」
林秀信 弁護士

16:10~
<パネルディスカッション>
「病腎移植のリスクとメリット」~講演者全員参加~




(2) Newsi-TBSニュース(1月20日21:02)

豪州医師ら、「病腎移植は有益」と訴え

 病気腎臓移植をめぐって東京でシンポジウムが開かれ、オーストラリアの移殖医らが「移殖は有益なもので、禁止されるべきではない」と訴えました。

 シンポジウムに参加したオーストラリア・クィーンズランド大学のデビッド・ニコル教授は、小さなガンなどに侵された腎臓からガンを切除したうえでドナーに移殖する病気腎臓移植を96年から49例行ってきました。

 移殖手術は60歳以上の患者に限定して行われていて、これまでガンの転移などは確認されていないということです。ニコル教授は「病気腎臓移植はドナー不足への対策として有効で、禁止されるべきではない」と話しています。

 国内では、宇和島徳洲会の万波誠医師らが91年から42例行ってきましたが、厚生労働省は去年7月、「医学的な妥当性がない」として原則禁止を通知しています。(20日21:02)」






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2008/01/21 [Mon] 20:03:37 » E d i t
「「代理出産一律禁止、代理母以外の関係者すべて処罰」の学術会議報告書素案提示(上)~委員会では賛否両論で結論持ち越し」(2008/01/19(土) 21:04:44)の続きです。



1.検討委員会素案の内容について検討します。素案の内容ついて詳しく触れた記事を幾つか。

(1) 毎日新聞平成20年1月19日付朝刊30面

代理出産:「禁止」の報告書案提示 対象、処罰は調整継続--学術会議

 不妊夫婦のために他の女性が夫婦の受精卵を妊娠・出産する代理出産について、日本学術会議の検討委員会は18日、代理出産を法律で一律に禁止することを求める報告書案を提示した。法で規制する方針については合意したが、一部容認を求める意見も出され、調整を続けることにした。

 この日は、背景説明や代理出産の許容性に関する部分の報告書案が示された。代理出産を許容するか否かに関し、▽死亡の危険性のある妊娠・出産を第三者に課す問題が大きい▽胎児への影響が不明▽「家」を重視する日本では強制や誘導が懸念される▽本来の生殖活動から大きく逸脱している▽胎児に障害があった場合の解決が当事者間の契約だけでは困難--などの問題点を指摘した。

 そのうえで、このような技術を不妊夫婦の希望や妊娠・出産者との契約、医師の判断だけに委ねることは「妥当性を欠く」として、法規制を求めた。

 だが、法律で禁止する対象や処罰の範囲については意見が分かれた。委員の中には「全面禁止にはすべきでない。報告書は両論併記にすべきだ」との意見もあり、次回の検討委を目指して調整することになった。

 一方、生まれた子が出自を知る権利の確保や、第三者から卵子などの提供を受ける不妊治療の是非についても検討課題だったが、「十分な検討時間がない」として、結論を出さないことにした。

 また、報告書の取りまとめ作業のため、今月末までとされていた検討委の任期を、今年3月末まで延ばすことになった。今月末に開かれる、日本学術会議幹事会で正式決定する。【永山悦子】

毎日新聞 2008年1月19日 東京朝刊」




(2) 北海道新聞(01/19 08:28)

代理出産を新法で禁止 検討委が素案提出(01/19 08:28)
 代理出産の是非を検討している日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東京大名誉教授)は十八日、会合を開き、代理出産を法的に禁止すべきだとする報告書素案が示された。素案では「営利目的の場合は処罰が必要」と指摘し、罰則を設けている。一方、是非を判断するための科学的データが十分でないとして、国による厳格な管理、要件を定めた上で試行する余地を残した。

 検討委は、今月末から国民の意見を聞いた上で本年度内に報告書をまとめ、国は来年度にも法制化を目指す。ただ、この日の委員会では素案について一部で異論が出ていて、今後なお曲折が予想される。

 素案は代理出産について、妊娠・出産に伴う代理母の身体的、精神的負担や、生まれてくる子供への影響を「深刻な問題」と懸念。出生後に子供の障害が判明した場合、依頼者が引き取りを拒否する事態にも言及し、「事前の契約のみでの解決は困難で不適切」と、倫理面での問題点も挙げた。

 さらに、日本産科婦人科学会が自主的に規制している現状を「すでに医療者の自律と責任に委ねられる段階を超えている」と指摘。依頼する夫婦や代理母、医師の三者だけで判断するのは「妥当性を欠く」として、法的規制が不可欠とした。

 処罰行為は、営利目的の場合での実施や依頼、あっせんに限定。対象は依頼者とあっせん者、医師で、代理母は被害者とみなされ除外された。

 一方、国による試行の余地は残すことで、自らの子供を切望する不妊の女性にとって代理出産が「最後の手段」である現状にも配慮した。

 検討委は二○○五年十一月に法務、厚生労働両省から代理出産の法制化の是非について研究を依頼され、検討していた。」




(3) YOMIURI ONLINE:関西発・育児ネット(2008年1月19日)

代理出産 新法で禁止…学術会議検討委

報告書素案示す

 夫婦が妻以外の女性に出産を依頼する代理出産の是非について、日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長=鴨下重彦・東大名誉教授)は18日、代理出産を新法で原則禁止すべきとする報告書素案を提示した。委員からは法規制に対しては異論が出なかったが、素案では「代理出産の是非を判断する科学的データは存在しない」として、今後、国の厳重な管理の下にデータを集める試行的な研究に道を残した。

 素案では、代理出産は代理母と生まれてくる子どもに対し身体的・精神的に重大な影響があると指摘。子宮を病気などで失った女性にも子どもを持つ権利を保障すべきという主張があることを認めつつも、「一部容認は全面解禁へとつながる『アリの一穴』となることも危惧(きぐ)される」として、法律によって禁止することを妥当とした。

 一方で、素案は、将来的に、代理出産の試験的実施の可能性にも言及。国の厳格な管理の下、代理出産が出生児や依頼夫婦、代理母などに医学的、社会的にどんな影響をもたらすか、長期的な追跡調査を行う制度の導入を提案した。

 異論が相次いだのは、営利目的での代理出産の実施やあっせんに対し、刑罰を科すべきとした部分。「非営利の実施も刑罰を科さないと法律の実効性がなくなる」「過半数の国民が容認している医療行為に対し、刑罰を科すのはおかしい」などと賛否両論に分かれた。

 この日、検討委は、審議期間を予定より2か月延長して3月末までとすることも決めた。今月30日に素案に対する一定の結論を出し、同31日に市民の意見を聞く公開講演会を開く。


(2008年1月19日 読売新聞)」




以下検討する前に。

「生まれた子が出自を知る権利の確保や、第三者から卵子などの提供を受ける不妊治療の是非についても検討課題だったが、「十分な検討時間がない」として、結論を出さないことにした」(毎日新聞)



一見して分かるように、この検討委員会の素案では「生まれた子の法的地位」について触れていませんし、産まれてきた子の出自を知る権利の保障さえ決めていないのです。しかし、そうすると現在存在する、更には近い将来、代理出産で生まれた子の地位はどうなるのでしょうか? 作業部会は、代理出産で生まれた子の法的身分関係や権利関係は二の次という意識であり、「子の保護」が最優先である親子法制の基本原則であるということさえ理解していないのです。

検討委員会委員で生命倫理が専門の加藤尚武・東京大医学部特任教授は、生まれてきた子供の法的地位の検討も重要であって、「仮に両親が、禁止された生殖補助医療を行った場合でも、生まれてきた子どもにその尻ぬぐいをさせるのは一般的には考えられない。その子にとって最大の利益が図れるよう対処することが望ましい。」(読売新聞平成19年6月17日付19面「生命を問う 不妊治療(8)」)とまで明言していたのに、作業部会はその意見を無視したのです(「代理出産問題~日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」委員の見解を紹介」(2007/09/01(土) 17:11:24)参照)。

結局のところ、検討委員会の作業部会は、その本音は「一部容認は全面解禁へとつながる『アリの一穴』となることも危惧(きぐ)される」(YOMIURI ONLINE:関西発・育児ネット(2008年1月19日))などと感情的に代理出産を否定することに躍起になっているだけであり、決定すべき順序も理解していないのです。

「日本生殖医学会の石原理・倫理委員長(埼玉医大教授)は『代理出産で生まれたことが明らかな子供たちがいる。最優先に議論が必要なのは、この子供たちを法で実子と認めるかどうかだ。代理出産が日本で許されるかどうかは、その後の話だ』と強調している。」(読売新聞平成19年4月29日付(日曜)15面「生命を問う 不妊治療(2)」)



それなのに、朝日新聞は子ども福祉を尊重した素案であるとの解説をしており、呆れるばかりです。「生まれた子の法的地位」ばかりか、「産まれてきた子の出自を知る権利」の保障さえしてしない素案なのに、どこが「子ども福祉尊重」なのでしょうか? 

解説:代理出産報告書案 子どもの福祉尊重

 「産む権利」や「子どもを持つ権利」が強調されがちな生殖補助医療。日本学術会議の検討委員会が公表した報告書案は、そうした権利に理解を示しつつ、生まれてくる子どもの福祉を最大限考慮すべきだとの姿勢を示す内容になった。(以下、省略)(竹石涼子、武田耕太)」(朝日新聞平成20年1月19日付朝刊)


代理出産を一律に禁止すれば、仮に産まれてきた子の出自を知る権利を保障しても親は事実を告知するはずがなく画餅にすぎなくなります。「生まれた子の法的地位」や「産まれてきた子の出自を知る権利」は、生殖補助医療問題では最優先で解決すべき問題なのに未定のままです(おそらくは、作業部会はすべて(事実上)否定するのでしょうが)。この素案のどこが「子どもの福祉尊重」なのでしょうか? 朝日新聞の竹石涼子記者、武田耕太記者は、代理出産を含む生殖補助医療問題について全く理解していないのです。



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2008/01/19 [Sat] 21:04:44 » E d i t
代理出産の是非を検討していた日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東京大名誉教授)の作業部会が、代理出産を新法で原則禁止すべきだとする報告書素案をまとめ、1月18日の会合で報告書素案を提示しました。委員からは厳しい条件付きで例外的な実施を認める意見なども出され、賛否両論が巻き起こり、結論は1月30日に持ち越しとなりました。この報道についてコメントしたいと思います。


1.検討委員会の作業部会による素案は、作業部会委員によるリーク報道が1月17日付朝刊(中日、東京、日経)や同日夕刊(読売)で行われていました。これらは、共同通信の記事と酷似していることから(  【共同通信】「代理出産、新法で禁止を 学術会議検討委が素案」(2008/01/17 02:05)参照)、元々共同通信の記者にリークしたものと思われます。そのリーク報道を2つ引用しておきます。

(1) 中日新聞平成20年1月17日付朝刊

代理出産「新法で禁止」 処罰は営利限定に
2008年1月17日 朝刊

 子どもを持てない夫婦が妻以外の女性に出産してもらう、代理出産の是非を検討していた日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東京大名誉教授)の作業部会が、代理出産を新法で禁止すべきだとする報告書素案をまとめたことが16日分かった。

 処罰の対象は営利目的での実施に限定。すべての代理出産を罰則付きで禁止すべきだとした2003年の厚生労働省部会の結論をやや緩和した。18日の検討委会合に示される。

 検討委は素案をたたき台に、今月中にも報告書案をまとめるが、素案通りの結論となった場合は、代理出産の容認派、反対派双方から異論が予想される。

 素案は、夫婦の精子と卵子を用いた、いわゆる「借り腹」による代理出産について検討。代理母となる女性が被る身体的・精神的負担や、生まれてくる子どもの心に与える影響など深刻な問題があり、代理母が危険を承知で引き受けたとしても「自己決定が十分と言えるか疑問がある」とした。

 規制策については「医療者の自律と責任に委ねられる段階を超えている」と、学会の自主規制の限界を指摘。新法で基本的に禁止すべきだとした。

 一方、代理出産すべてが人々に害を及ぼす犯罪とは言えないとして、処罰は、対価を得るなど営利目的の場合に限定。少なくともあっせん者と医師は処罰し、国外犯も罰すべきだとの考えを示した。代理母は対象から外した。

 営利目的でない場合に処罰はないが、関与した医師の保険医指定を取り消すなどの制裁により、抑止は十分可能だと判断した。検討委は代理出産の是非のほか、生まれた子の法的地位などについても見解をまとめ、報告書案に盛り込む予定だ。」




(2) 日経新聞平成20年1月17日付朝刊42面

代理出産、法律で原則禁止  学術会議素案、研究の必要性は認める

 代理出産の是非を議論している日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東大名誉教授)の報告書素案が16日明らかになった。法律で代理出産を原則禁止し、営利目的については処罰すべきだとしている。ただ国の管理下で厳格な条件を定めて、代理出産を研究する必要性は認めた。

 素案は18日の会合に提示。一般の意見も聞いた上で2月にも決定する。ただ委員の意見は分かれており、素案通りにまとまるかは不透明だ。

 代理出産を巡っては厚生労働省の専門部会が2003年、罰則付きで禁止する報告書を策定。法制化は棚上げされたが、日本産科婦人科学会が自主規制で禁止してきた。今回の素案は原則禁止としながらも、将来的に容認する道を残した。

 報告書素案では、代理出産を引き受ける代理母に身体的・精神的に負担がかかるほか、生まれる子どもの心に深刻な影響がある問題点を挙げた。学会の規制では限界があることから、法律で基本的に禁止。処罰の規定がなくてもあえて実施する医師がいるとは考えにくいとして、処罰対象は営利目的のみに絞った。

 ただ、世論では容認派が過半数を占めているほか、子宮がないなどの理由で妊娠・出産できない女性が、遺伝的につながりがある子どもを持つ手段として限定的な容認を求める声が根強い。

 そこで、素案では代理出産の是非を判断できる十分な科学的データがない現状に言及した。国の管理下で代理出産を依頼できる女性の要件などを限定、生まれた子どもや代理出産を依頼した夫婦、代理母、社会に対してどのような結果をもたらすか、詳しく研究する必要性があるとした。(07:00)」

(*紙面には解説記事もあるが、省略)



このリーク報道は、ある程度正しい素案内容だったのですが、間違っていた部分もあるなど不正確な内容でしたし、素案は検討委員会のうちでも代理出産強硬反対派の立場そのものですから、当然委員会の委員からの批判があり得るはずでそのまま受け入れがたいものであるばかりでなく、会合前に(=委員の同意なく)リーク報道をしてよいのかどうか問題でした。ですから、検討委員会の委員の多くは、このリーク報道を不快に思ったはずです。(ですから、このブログでも、18日の会合前まで触れませんでした)

リークを行ったのは作業部会の委員でしょうが、こういう不正確(=歪んだ)で委員の同意のない身勝手なリークは妥当ではありません。レストア腎移植(病気腎移植)問題でも、不正確で間違ったリーク報道が相次いでおり、妥当ではありませんでした(「病気腎移植は学会と現場にギャップ~田辺功 (著)『ドキュメント医療危機』より」参照)。

こういう一方の意見のみ(代理出産強硬反対派の作業部会委員)を有利に事を運ぼうというあざとい意図での、政治的なリークは止めるべきです。日本学術会議は、学者らしい冷静な行動を行うべきであり、政治家集団の集まりのような行動をすべきではないのですから。




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2008/01/16 [Wed] 18:32:19 » E d i t
危険運転致死傷罪について、同罪で起訴されたものの、1審(地裁)で、業務上過失致死傷罪に訴因変更されたケースが少なくとも11件あるとの報道(読売新聞1月15日付)がありました。この報道を紹介しておくことにします。

1月17日追記:危険運転致死罪で起訴されたが、業務上過失致死罪に当たると判断された下級審判例を追記した)



1.読売新聞平成20年1月15日付朝刊31面

危険運転致死傷罪、訴因変更11件→3件で再適用  揺れる司法判断

 悪質で故意性のある交通事故に適用される「危険運転致死傷罪」が2001年12月に新設されてから、同罪で起訴されたものの、1審(地裁)で、業務上過失致死傷罪に訴因変更されたケースが少なくとも11件あることが、法務省のまとめでわかった。このうち3件では、控訴審(高裁)などで危険運転致死傷罪が再び適用されており、司法の判断が揺れる現状に、専門家は「法体系全体を見直すべきだ」などと指摘している。

 最も重い場合、懲役20年が科せられる危険運転致死傷罪を巡っては、福岡市で幼児3人が死亡した飲酒運転事故で、福岡地裁が昨年12月、上限5年の業務上過失致死傷罪を訴因に追加するよう命令。今月8日の判決では、危険運転致死傷罪の要件である「正常な運転が困難な状態」とは断定できないとして、福岡市の元職員・今林大被告(23)に、同罪を適用せず、業務上過失致死傷罪と道交法違反を合わせ、懲役7年6月を言い渡した。

 法務省によると、このほか東京、愛知、千葉、徳島など10都県の計10件の事故でも、1審で、業務上過失致死傷罪に変更された。

 このうち最多は「信号無視」による事故の8件。特に02年4月に横浜市で起きた死亡ひき逃げ事故では、警察・検察側は、運転していた男が飲酒のうえ故意に信号を無視したと主張したのに対し、横浜地裁は、信号の見落としの可能性もあるとして故意ではなく過失とする判決を出している。

 残る2件は「飲酒運転」と、スピードの出し過ぎによる事故で、02年4月に千葉県茂原市で2人が死亡した事故では、制限速度を30キロ上回る70キロで走行していたことを「制御困難運転」とする警察・検察の判断に、千葉地裁は「制御が困難とはいえない」と指摘した。

 ただ10件のうち、1件は1審の判決段階で、2件は控訴審で危険運転致死傷罪が再度適用されており、06年2月に愛知県春日井市で4人が死亡した事故では、名古屋高裁が、1審の「青信号だと思いこんだ可能性は否定できない」とした判決を破棄、「赤信号を認識しながら無視した」と逆の判決を言い渡している。

 昨年1年間に全国で危険運転致死傷容疑で立件された事故は、前年比55件増の434件。警察庁は「捜査を尽くして、要件にあてはまる事故には積極的に適用したい」(交通局幹部)としているが、福岡市の幼児3人死亡事故では、現場の警察官が、今林被告に行ったアルコール濃度の検知方法が、マニュアル通りではなかったことが公判で判明するなど、今後は、捜査のあり方も問われそうだ。

(2008年1月15日9時11分 読売新聞)」 

*HPでは、「危険運転致死傷罪、訴因変更11件→再適用3件」という見出しだったが紙面の見出しに変更。紙面では図表があるが省略



 「京都産業大の川本哲郎教授(刑事法)の話 「昨年からは、過失による交通事故に対し、自動車運転過失致死傷罪が新設されたが、最高刑は懲役7年で危険運転致死傷罪に比べると、やや中途半端。大きな事故が起きてから、その場しのぎで法律を作るのではなく、全体的な法体系や量刑のバランスを見直し、整理する必要があるのではないか」

 交通事故裁判に詳しい高山俊吉弁護士の話 「危険運転致死傷罪では、立証上必要となる『正常な運転が困難な状態』という要件を、厳しくとらえるかどうかで司法の判断が分かれている。ただ、これ以上、悪質な事故を厳罰化するのには限界がある。酒気を検知すればエンジンがかからない車の普及など、国は総合的な対策を進めるべきだ」」




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刑法 *  TB: 8  *  CM: 15  * top △ 
2008/01/13 [Sun] 23:49:29 » E d i t
光市事件の裁判をめぐるテレビ局の報道について、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、調査して意見をまとめることを決めたとのことです。この問題について触れたいと思います。
1月14日追記:共同通信の記事も引用した)


1.まず報道記事をいくつか。

(1) 時事通信(2008/01/11-21:37)

光市母子殺害事件報道で調査委=BPO検証委

 放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は11日、山口県光市の母子殺害事件の裁判報道で、一方的な弁護団批判や事実誤認、歪曲(わいきょく)があったと市民団体から指摘があった6放送局の18番組について、委員3人で組織する小委員会を設置し、調査に乗り出すことを決めた。
 また、香川県坂出市で起きた殺人事件では情報番組での不適切なコメントや取材方法について視聴者から多数の抗議が寄せられており、5月をめどに犯罪や裁判の報道についてシンポジウムを開き、制作現場に注意喚起する方針を決めた。」



(2) 朝日新聞平成20年1月12日付朝刊33面

山口母子殺害報道 放送倫理委で検証

 NHKと民放でつくる第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は11日、山口県光市の母子殺害事件の裁判をめぐるテレビ局の報道について、「刑事裁判の弁護人の役割に対する無理解や誤解、一方的な見解の表明が見られる」として、小委員会を作って意見をまとめることを決めた。委員長の川端和治弁護士が記者団に語った。」



(3) 【共同通信2008/01/13 20:10】・東京新聞平成20年1月14日付朝刊22面

光事件裁判報道を調査 BPOの放送倫理検証委

 NHKと民放でつくる放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は13日までに、死刑の是非が争われている山口県光市の母子殺害事件の裁判をめぐるテレビ報道について、小委員会を設けて調査することを決めた。

 弁護士や大学教授らが昨年11月、民放6局のニュースやワイドショーなど計18番組について「弁護団を一方的に中傷する不公正な報道があった上、事実関係の間違いや歪曲、過剰な演出も多く、放送倫理に反する」として同検証委員会に審理を要請していた。

 母子殺害事件の男性被告(26)=事件当時(18)=は1、2審で無期懲役とされたが、最高裁が2006年6月、死刑相当として2審判決を破棄し、広島高裁で昨年差し戻し審が続いた。

2008/01/13 20:10 【共同通信】」




(4) 光市事件を巡る裁判のテレビ報道が「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会の調査対象になるのではないか、ということについては、すでに「橋下弁護士の懲戒請求扇動訴訟~弁護士は誰のためにいるのか?」(2007/09/15(土) 22:42:16)や、「東京弁護士会、光市事件の弁護士懲戒せず~正当な弁護活動であるがゆえ」(2007/11/30(金) 06:52:10)で触れていました。

もっとも、「東京弁護士会、光市事件の弁護士懲戒せず~正当な弁護活動であるがゆえ」(2007/11/30(金) 06:52:10)で指摘したように、BPOは、放送倫理検証委員会の「議事概要:第6回 2007年10月12日」において、「◆事務局からの報告 <2>光市母子殺害弁護団に対する懲戒請求発言の放送について、公正・公平な検証を求めるとの要請。すでに、弁護士同士で係争中であり、委員会の審理要件に合致せずと判断。」としており、調査せずに無視する予定だったはずです。

ところが一転して、

「「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は11日、山口県光市の母子殺害事件の裁判をめぐるテレビ局の報道について、「刑事裁判の弁護人の役割に対する無理解や誤解、一方的な見解の表明が見られる」として、小委員会を作って意見をまとめることを決めた。」(朝日新聞)

「山口県光市の母子殺害事件の裁判報道で、一方的な弁護団批判や事実誤認、歪曲(わいきょく)があったと市民団体から指摘があった6放送局の18番組について、委員3人で組織する小委員会を設置し、調査に乗り出すことを決めた。」(時事通信)

「放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は13日までに、死刑の是非が争われている山口県光市の母子殺害事件の裁判をめぐるテレビ報道について、小委員会を設けて調査することを決めた。」(共同通信)

というのですから、ちょっとした驚きでした。

では、なぜ突如として、方針転換を決めたのでしょうか?




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論評 *  TB: 3  *  CM: 2  * top △ 
2008/01/11 [Fri] 05:03:12 » E d i t
飲酒運転で多目的レジャー車(RV)に追突して海に転落させ三児を死亡、両親にけがをさせた事案について、福岡地裁(川口宰護裁判長)は1月8日、業務上過失致死傷と道交法違反(酒気帯び運転、ひき逃げ)の罪を認めました。この判決についての検討は、「福岡市・3児死亡交通事故事件:福岡地裁平成20年1月8日判決は危険運転致死傷罪の適用を否定~感情論で批判するのは止めるべきでは?」で行いましたが、冷静な判断を示している社説(北海道新聞)の紹介を含め、再び論じてみたいと思います。
1月12日追記:鳩山法相の記者会見報道を追記として引用した)



1.まず、社説を紹介する前に、このブログでは何度も触れていることですが、もう一度、危険運転致死傷罪の規定、この事案でも問題となっている犯罪行為と簡単な文言説明をしておきます。福岡地裁判決の是非を判断する前提として、これらの知識が必要だからです。

(1) 自動車事故は、本来的に過失犯です。現行刑法は故意犯と過失犯とを峻別しており、過失犯は原則として処罰せず(刑法38条1項但書)、処罰する場合もその法定刑に相応の差異を設けています。また、自動車を運転する多くの国民の誰もが犯す可能性があることも考慮しなければなりません。これらのことから、自動車事故に関する罪の量刑(法定刑・処断刑)をあまりに重くすることは不合理なのです。

しかし、その自動車事故がどんなに悪質又は危険なときでも業務上過失致死傷罪(刑法211条)でしか処理できず、最高刑も懲役5年であったことから、類型的に悪質または危険な行為を重く処罰するため、平成13年の刑法改正により、故意犯として危険運転致死傷罪(刑法208条の2)を創設したのです。本来的に過失犯である行為を、重罰化するために無理やり故意犯扱いしたことから、無理のある規定となっています。(なお、平成19年改正で自動車運転致死傷罪につき7年以下の懲役などと規定。)

(危険運転致死傷)
刑法第二百八条の二  アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。

 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。


この規定は、1項では、運転者の意思によっては的確に自動車(バイクを含む)の進行を制御することが困難な状態での三類型の危険運転行為による致死傷罪を規定していて、酩酊運転致死傷罪・制御困難運転致死傷罪・未熟運転致死傷罪の3つを含んでいます。

2項では、運転者による自動車の進行の制御自体に問題はないが、特定の相手方や特定の場所・状況との関係において危険性の高い2類型の危険運転行為による致死傷罪を規定していて、妨害運転致死傷罪・信号無視運転致死傷罪の2つを含んでいます。

これら5つの行為は、同じく危険運転罪ですが別個の犯罪行為です。ですから、飲酒が成立要件になっているのは1項の酩酊運転致死傷罪だけであり、また、酩酊運転致死傷罪の成立につき、高速度(例えば時速100キロ)で走行していたことは無関係なのです。もちろん、「5つの行為それぞれ不十分だが幾つかは少しずつ満たすから、危険運転罪が成立する」ということもありません。



(2) 福岡地裁の事案では、刑法208条の2のうち1項前段である、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者」に当たるか否か、すなわち酩酊運転致死傷罪に該当するかどうかが問題となりました。そこで、「正常な運転が困難な状態」の意義がまず問題となるわけです。

「正常な運転が困難な状態とは、道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態である。道路交通法上の酒酔い運転(同法117条の1第1号、65条1項)で問題とする「正常な運転ができないおそれのある状態」であっても、運転が困難な場合にあたるとは限らない。現実に適切な運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることを要し、アルコール、薬物の影響により、前方の注視が困難になったり、アクセル、ブレーキ、ハンドル等の操作が意図したとおりに行うことが困難になる場合を意味する(千葉地松戸支判部平15・10・6判時1848・159、東京地判平14・11・28判タ1119・272、東京地八王子支判平14・10・29判タ1118・299)。」(前田雅英「刑法各論講義(第4版)」49頁)



要するに、「正常な運転が困難な状態」というためには、<1>道路交通法上の酒酔い運転で問題とする「正常な運転ができないおそれのある状態」だけでなく、<2>現実に適切な運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることを要するのです。福岡地裁平成20年1月8日判決も、従来どおりの確立した意義・基準を採用することを明示しています。

道交法では、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」を区別し、酒酔い運転でのみ「正常な運転ができないおそれのある状態」を要求していることからすると、道交法上も、「飲酒運転=正常な運転が困難な状態」ではないという構造になっています。



(3) 知識として必要なこととしては、道交法の規定である「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の違いを理解している必要があります。

「酒気帯び」とは、酔っていなくても、身体中に、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15ミリグラム以上の血中アルコール濃度を保有していれば当たります。これに対して、「酒酔い」とは、 飲酒検問の検知値(アルコール濃度)には関係なく、「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態(=まっすぐ歩けない場合など、言語活動、歩行活動、平衡感覚、視力など車両の運転に必要な運動機能が害されている状態)と判断される場合です(橋本裕蔵『道路交通法の解説(12訂版)』95頁参照)。

言い換えると、酒に強い人はどんなに飲酒量が多い場合でも「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」に至らない場合があるので、その場合には「酒酔い」運転になりません。これに対して、酒に弱い人の場合には、ほんの微量の飲酒であっても「酒気帯び」に至るほどのアルコール濃度がなくても、「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」に至っていれば「酒酔い」運転となるわけです。

検察側は、(事件当時の警察官が「酒気帯び運転」と判断していたのに)、今林氏の飲酒量が多かったとして、警察官による飲酒の再現実験などから「被告は相当酩酊し、運転操作が極めて困難な状態だった」と主張しています。しかし、他人がどんなに再現実験をしてもあまり意味がないのです。酒に強い人はどんなに飲酒量が多い場合でも「酒酔い」にならないことがあるのですから。

もし検察側の主張が認められてしまうと、道交法上の「酒気帯び」と「酒酔い」の区分が混乱してしまいますし、現場の警察官が取締りの際に「酒気帯び」と「酒酔い」を区別しても不安定なものになっていまいます。本当にそれでもいいのでしょうか? 福岡地検は、危険運転致死傷罪で処罰したいためとはいえ、今後に及ぼす影響の大きさへの配慮に欠けているように感じられるのです。

ちなみに、(現時点の)違反行為に付する基礎点数については、呼気中のアルコール濃度が0.15以上0.25ミリグラム/リットル未満の「酒気帯び運転」は6点であり、呼気中のアルコール濃度が0.25ミリグラム/リットル以上の「酒気帯び運転」は13点となっています。今林氏の場合、0.25ミリグラムだったので、ぎりぎり13点になるわけです。ただし、ひき逃げ事故やあて逃げ事故の場合の付加点数(ひき逃げは23点)がつくことになっています。

なお、危険運転致死傷罪を適用した80件の平均値は、呼気中のアルコール濃度0.65ミリグラムです。見るからに泥酔状態でないといけないわけです。ところが、今林氏の場合、0.25ミリグラムだったので、危険運転致死傷罪の適用は困難になったのです。



(4) これらが必要とされる知識です。法解釈とは結構大変なんだと思う方もいるかもしれません。ですが、将来、裁判員制度が実施され危険運転致死傷罪を担当した裁判員は、こういった知識を叩き込まれることを覚悟しなければなりません。裁判官がどれほど丁寧に説明してくれるのかどうか分かりませんが。それでは、社説を紹介します。



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裁判例 *  TB: 6  *  CM: 8  * top △ 
2008/01/09 [Wed] 07:39:54 » E d i t
飲酒運転で多目的レジャー車(RV)に追突して海に転落させ三児を死亡、両親にけがをさせたとして、危険運転致死傷罪及び道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた元福岡市職員今林大(いまばやし・ふとし)被告(23)について、福岡地裁(川口宰護(かわぐち・しょうご)裁判長)は1月8日、業務上過失致死傷と道交法違反(酒気帯び運転、ひき逃げ)の罪を認定し、懲役7年6月(求刑懲役25年)を言い渡しました。では、この判決について触れたいと思います。



1.まず、判決自体の記事の前に、予備的訴因を追加したため、弁論を開く必要があり、そのため1月8日の判決前に弁論を開いています。

(1) 朝日新聞平成20年1月8日付夕刊13面

被告、傍聴席に一礼

 今林被告は黒いスーツ姿で入廷。傍聴席と裁判官に向かってそれぞれ一礼し、弁護人に促されて再度、傍聴席に頭を下げた。

 裁判長が審理の再開を告げ、検察官が「脇見して時速100キロで走行し3人を死亡させた」などとする業務上過失致死傷罪の予備的訴因を読み上げた。認否を問われた今林被告は用意した紙を取り出し、「時速100キロという点を除いては間違いありません。私の認識としては80キロから90キロ程度です」と述べ、約10分で結審。すぐに判決が言い渡され、じっと聴き入った。

 事故から約10ヶ月にわたって勾留(こうりゅう)された今林被告は、昨年6月の初公判後に保釈された。公判は危険運転致死傷罪を否認する一方、「愚かな行為をとり申し訳ない。できることを怠ることなく償っていきたい」と謝罪してきた。

 昨年9月の公判に大上哲央さんが出廷した際には、顔を真っ赤にしてすすり泣いた。保釈後は、亡くなった3児のため朝夕に読経を続けているという。」




(2) 弁論の再開につき触れたのは朝日新聞だけのようです。弁論は約10分ほどで終わったため、単なる儀式に過ぎない感じです。問題となるのは、訴因追加によって被告人側が不利益にならないかと言う点ですが、この事案では、弁護側は業務上過失致死傷罪にすぎないと主張していたのですから、訴因追加により防御の不利益は生じていないといえそうです。

今林氏は、「愚かな行為をとり申し訳ない。できることを怠ることなく償っていきたい」と謝罪し、保釈後は、亡くなった3児のため朝夕に読経を続けているというのですから、反省の情が伺えます。




2.では、報道記事をいくつか。

(1) 時事通信(2008/01/08-13:27)

業過致死傷で懲役7年6月=元市職員の危険運転認めず-3児死亡事故・福岡地裁

 福岡市で2006年8月、飲酒運転で車に追突して海に転落させ、幼児3人を死亡、両親にけがをさせたとして、危険運転致死傷と道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた元市職員今林大被告(23)の判決公判が8日、福岡地裁で開かれた。川口宰護裁判長は、業務上過失致死傷と道交法違反(酒気帯び運転、ひき逃げ)の罪を認定し、懲役7年6月(求刑懲役25年)を言い渡した。危険運転致死傷罪は成立しないとした。
 川口裁判長は「被告は事故を起こすべくして起こした。ひき逃げの悪質性もかんがみると、厳しい非難は免れない」と述べた。併合罪の量刑の上限は懲役25年から同7年6月へ大幅に下がったが、判決はその上限を選択した。
 公判では、危険運転致死傷罪が成立する事実として、被告は泥酔して正常な運転が困難な状態だったかが争われた。
 川口裁判長は当時の状況について、被告が酒に酔った状態だったとしながら、警察官による事故時のアルコール測定で酒気帯びとした事実を踏まえ、高度な酩酊(めいてい)状態だったか疑問と指摘。追突事故まで居眠りや蛇行運転した形跡がなく、湾曲した道や狭い道でも接触事故を起こさなかったと認定した。
 その上で、追突直前に衝突回避措置を取った点を挙げ、現実の道路や交通の状況に応じた運転操作をしていたとして、「正常な運転が困難な状態にはなかったことを強く推認させる事情」と断じ、危険運転致死傷罪の成立を否定した。」



「福岡市・3児死亡交通事故事件:危険運転致死罪適用否定へ~福岡地裁が訴因追加命令」で触れたように、福岡地裁(川口宰護裁判長)は12月18日午前、福岡地検に対し、業務上過失致死(前方不注視)罪と道交法違反(酒気帯び運転)の罪の2罪を予備的訴因として追加するよう命じ、検察側は追加していたので、危険運転致死罪の適用を否定することがほぼ確実視されていました。その予測どおりの判決でした。

「川口宰護裁判長は、業務上過失致死傷と道交法違反(酒気帯び運転、ひき逃げ)の罪を認定し、懲役7年6月(求刑懲役25年)を言い渡した。危険運転致死傷罪は成立しないとした。」



本判決は、危険運転致死傷罪(最高刑懲役20年)の成立を認めず、予備的訴因の業務上過失致死傷罪(同5年)、酒気帯び運転を適用し、起訴時の訴因である「ひき逃げ(救護義務違反罪)」をも適用し併合罪としたようです。「ひき逃げ」は起訴時の訴因であったので「ひき逃げ」を認定するのかどうか、注目していましたが、どうやら「ひき逃げ」も成立すると判断したようです。

複数犯罪がある場合、幾つ罪が成立しようと何人死亡しようとも、一番重い罪の1.5倍が最高刑(上限)になるだけです。ですので、改正前の業務上過失致死罪(5年以下)、酒気帯び運転罪(3年以下)、ひき逃げ(救護義務違反罪5年以下)という3罪が適用されるとしても、5年の1.5倍となるだけなので、最高刑は懲役7年6月となるのです。



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2008/01/07 [Mon] 01:21:06 » E d i t
「「代理出産への扉」(日経新聞12月24・31日付)の批判的検討(上)」の続きです。

1月18日追記:フィンレージの会につき解説を加えた)



1.これから引用する、日経新聞平成19年12月31日付朝刊19面「代理出産への扉(下)」では、代理出産を肯定した場合の論点を幾つか論じています。


どういう点を検討する必要があるかについては、以前論じたことがあるので(「根津八紘院長が代理出産法制化への私案を公表」参照)、そこから引用しておきます。

(1) 妊娠・出産が不可能な場合に限定するのか否か
(2) 代理母は親族に限定するのか、第三者にも広げるのか
(3) 第三者も代理母可能とした場合、第三者の斡旋方法

(4) 依頼者と代理母との法律関係の処理(代理母の必要費等)
(5) 出生した子の法的身分関係の処理
(6) 刑事罰の有無



(1)~(3)が代理出産を実施するうえで必要なことであり、(4)~(6)が代理出産から生じる法律問題です。すべての問題点について、原則として日本で代理出産を行う場合を予定しているのですが、(4)~(6)は外国で代理出産を行った場合も想定して判断する必要があります。

これらの問題点のうち、意思を示すことができず最も弱い立場にあるのが子供であり、「子の福祉」の重視が親子法制の基本原則であるため、(5)の点が最も重要です。


これらの観点を念頭において、以下引用する日経新聞を読んで下さい。
では、日経新聞平成19年12月31日付朝刊19面「代理出産への扉(下)」を引用します。



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2008/01/06 [Sun] 07:22:28 » E d i t
昨年、レストア腎移植問題に続いて、多かったテーマは「代理出産(代理懐胎)」問題「生殖補助医療問題」です。これらの問題は、憲法、民法、国際私法、国際民事訴訟法(さらには刑法も関わり得る)という多数の法分野が広く交錯する問題ですので、広範囲な法知識が要求されることになります。

この代理出産について、日経新聞は、昨年末「代理出産への扉(上・下)」(日経新聞平成19年12月24・31日)という記事を掲載していました。この記事を紹介したいと思います。


1.この「代理出産への扉(上・下)」は、日本学術会議に設置された「生殖補助医療の在り方検討委員会」での議論を多少意識させる内容ですが、全体としては代理出産に反対する学者のコメントを集めた内容になっています。ですので、この「代理出産への扉(上・下)」は、公平な報道ではなく、また、代理出産を容認する前提をとっている「生殖補助医療の在り方検討委員会」の動向を伝える記事になっていません。

柳沢厚労相(当時)は、平成19年4月13日の閣議後会見で、「細い道かもしれないけれども、(日本学術会議には代理出産を認める道は)ないかということを議論いただいている」と話している(大臣等記者会見 閣議後記者会見概要 H19.04.13(金)08:50~09:00)ことから、日本政府は日本学術会議に対して、代理出産を容認する前提で検討を依頼していることが明らかになっています。

そうすると、市民が今必要とする情報は、日本政府及び(日本政府の意向を受け入れた)「生殖補助医療の在り方検討委員会」が代理出産(を含めた生殖補助医療)を容認することをほぼ決定している以上、<1>容認する根拠は何か、<2>容認する場合、どういった点を具体的に整備する必要があるのか、という点なのです。


これから引用する日経新聞の記事は、これら2点の観点を頭において読んでみて下さい。では、引用します。



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2008/01/04 [Fri] 05:45:31 » E d i t
昨年中、最も多く取り上げたテーマは、「Because It's There 病気腎移植問題」でした。今年2回目のエントリーは、病気腎移植(「レストア(修復)腎移植」)問題について触れたいと思います。このエントリーは昨年、触れる機会を逸していたものです。


1.朝日新聞編集委員・田辺功氏は、「田辺 功 (著)『ドキュメント医療危機』(2007年12月07日発売)」を出版しました。これは、日本の医療の現実を多くの国民に知ってもらう目的で、2007年4月から朝日新聞朝刊3面に連載した「ドキュメント医療危機」を中心にしてまとめられたものです。


朝日新聞のHPでは、この著書を次のように紹介しています。

「現場取材歴40年の朝日新聞ベテラン記者による「医療崩壊」の現状レポートと解決策の提案。慢性的な医者不足、相次ぐ医療事故と救急医療、日米の病院格差など「よい医療」を願う患者と医療従事者は必見。テーマごとに参考になる本・HP、資料多数。」



この著作のなかに病気腎移植(レストア腎移植)について触れた項目がありましたので、その部分を引用したいと思います。この「レストア腎移植」について触れた項目は、「“病気腎移植、学会・現場にギャップ”朝日新聞「ドキュメント医療危機」より~散々批判しておいていまさら遅すぎ!」(2007/05/20(日))でも引用したのですが、加筆してありました。そこで、加筆部分を含めて再び引用したいと思います。




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2008/01/01 [Tue] 08:50:24 » E d i t
新年明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。

今年は、昨年よりも良き日々を過ごせますよう、
心から願っています。




1.東京新聞平成20年1月1日付朝刊1面「筆洗」

 「あけまして、おめでとうございます。干支(えと)では子(ね)、ネズミの年の始まりである。古くは夜目が利くためか、「嫁が君」の異称で親しまれている。正月にちなみ、<嫁が君餅(もち)をぞけふは初かぶり>という句もある

▼十二支では一番小さな動物だが、繁殖力は旺盛だ。人間にとって身近な存在のため、ネズミの民話や寓話(ぐうわ)は数多い。一番古いのは、『古事記』に出てくる国造りの神を助ける話だという。今と違って、嫌われ者ではない(前尾繁三郎著『十二支攷(しこう)』)

▼広く知られている寓話に『鼠(ねずみ)の嫁入り』がある。ネズミ夫婦が娘のためにこの世で一番の婿を探そうと太陽、雲、風、壁を次々に訪ねる。だがみんな、自分はふさわしくないと譲る。最後になった壁から、風にはびくともしないが、かじられると穴があくと言われ、ようやくネズミと結婚させる話である

▼一般的には、高望みをせずに分相応にした方がいいとか、より好みをしても代わり映えしない例えとして使われている。心の持ちよう次第で、別の解釈もできるだろう

▼メーテルリンクの『青い鳥』ではないが、本当の幸せは遠い世界にあるのではなく、手の届くところにあるのだと、力説しているのかもしれない。小さな存在のように見えても、実は大きな力を秘めている。今はまだ気付いていないだけだと、励ましているようにも思う

▼ことしも予想できないことが、いろいろと待ち受けていよう。「一寸先は光」という言葉がある。何があっても、希望をもって歩んでいきたい。よろしくお付き合いください。」




2.

「ことしも予想できないことが、いろいろと待ち受けていよう。「一寸先は光」という言葉がある。何があっても、希望をもって歩んでいきたい。」


先の見えない世の中ですし、いつでも前に進むという気力・体力があるわけではないとは思います。それでも、踏み出してみなければ先にある「光」にたどり着くことはできません。「一寸先は光」だと思い、「何があっても、希望をもって歩んでいきたい」という姿勢。新年を迎えるに当たり、心掛けたいことだと思います。

このブログは主として法律論を説くことを主眼としています。このブログにより、多くの方が判例の考え方を知り、法的な考え方を知る切っ掛けとなることで、「光」の方向へ進む一助となることを願っています。


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