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1.まず判決と判決後の本人のコメントについての記事を。
(1) 日経新聞平成19年10月6日付
「子どもの歓声は騒音、遊び場の噴水止める・西東京の公園
東京都西東京市の公園の噴水で遊ぶ子どもの歓声がうるさいとして、近くに住む病気療養中の60代後半の女性が市に対し騒音差し止めを求める仮処分を申し立て、東京地裁八王子支部(小林崇裁判長)が噴水の使用を制限する決定をしていたことが5日、分かった。決定は1日に出され、市は2日に噴水を止めた。
決定によると、問題となった噴水があるのは「西東京いこいの森公園」で、噴水周辺では子どもらが水の間を走り回って遊べるようになっている。女性は噴水から約50メートル離れたところに自宅があるという。
公園周辺の騒音の基準値は都の条例で午前8時から午後7時まで50デシベルと規定されているが、噴水で遊ぶ子どもの歓声は女性宅付近で60デシベルと基準値を超えていた。決定は、女性が病気療養中だったことを考慮し、「(騒音が)大きな精神的不安や苦痛をもたらした」と指摘し基準値を超える状態で噴水を使うことを禁止。さらに子どもが過度に歓声を上げないような噴水を設置することは工夫次第で可能だったと判断した。〔共同〕(07:00) 」
(2) 毎日新聞(地域ニュース・東京:2007年10月24日)
「西東京の公園騒音差し止め:静かな日々ほっと 原告、涙ながら心境語る /東京
◇仮処分で原告
西東京市の「西東京いこいの森公園」の噴水で遊ぶ子供の声がうるさいとして、騒音差し止めの仮処分を申し立てた60代女性が23日、記者会見し、訴えを認めた1日の地裁八王子支部の決定について「当然だ。(公園が出来てから)2年間、ほとんど眠れなかった。静かな日々が戻りほっとしている」と涙ながらに心境を語った。今後については「市の対応を見守る」と述べ、現時点で正式な裁判を起こすつもりはないことを明言した。
一方、西東京市には「子供の遊び場を奪う」などと決定を疑問視する声が100件近く寄せられた。女性は「子供が憎くて申請したのではない。静かな公園にしてほしいだけだ」と反論した。
公園のオープンは05年4月。女性は市から噴水が自宅から45メートルと近く、子供が遊べるタイプとは聞いていなかったという。「市に改善を要望し続けたが、『金がかかるので難しい』と突っぱねられた」と説明する。
女性は間もなく不眠症と不安症と診断され、睡眠薬を手放せなくなった。「子供の声を騒音とする感覚が問題」という市の主張には、「職員が私の家に一晩でも泊まって体感すべきだ」と不満を口にした。【神澤龍二】
毎日新聞 2007年10月24日」
(3) まず、この裁判の事案について少し詳しく触れておきます。
・原告の女性(68)は、30年前から同じ場所に住んでおり、子育ての経験もあり、現在孫(公園で遊ぶほど幼くない)もいる。心臓が弱く、不整脈の症状がある女性は、今も入退院を繰り返している。病気のことがあるのか神経質な面もあり、近隣からやや煙たがられる存在である。
・公園は、旧東大原子核研究所の約4万4000平方メートルの跡地に市が約100億円をかけて整備し、05年4月に完成した。事前の住民説明会は2回あった。
・噴水は公園東側に位置し、遊具などが置かれた広場の中にある。地表にある約20の射出口から水が断続的に噴き出す仕組みであり、水の間を縫って遊べるようになっている。4〜10月の体感温度が高いと感じられた日に使われ、夏には多くの子供らで賑わっていた。
・東京都の環境保全条例の騒音規制では、この地域の午前8時から午後7時までの基準値は50デシベル(静かな事務所に相当する)と規定されているが、噴水で遊ぶ子どもの歓声は女性宅付近で60デシベル(通常の会話程度)と基準値を超えていた。
・公園オープン以来、女性が不満を訴えて防音設備設置などを市に対して申し入れていたが、「金がかかるので難しい」として拒絶されていた。
・西東京市側の主張によれば「他の住民の苦情はない」。仮処分を求めた女性宅の隣人も「戸を閉めれば声は一切聞こえないし、開けていても気になったことはない」と話している。公園に接する民間病院は「入院患者からクレームはない。公園で子供たちの歓声を聞いて元気になるという患者もいる」と話す。市にはこれまで100件近くのメールや電話が寄せられた。その9割が「子供の遊び場がなくなる」といった裁判所の判断を疑問視する内容だった。
原告の女性は、当初防音設備装置を申し入れていたのですが、判決後、「静かな公園にしてほしいだけだ」と言っていることからすると、本音は、公園から子供の声を排除すること自体が希望だったということだと思います。「子ども広場」が設けられている点で、こちらは住宅までの距離が10メートルと近く、噴水で遊ぶ子供よりも「子ども広場」で遊ぶ子供の声の方が大きかった可能性があるからです。
防音設備設置については、公園設計に専門家によれば、住宅に面する緩衝緑地帯の幅員が非常に狭く、高木も少ないため、「防音壁」としては植栽だけでは効果が乏しいと理解されています。「金がかかるので難しい」というのは本当の話だと思われます。
防音壁を設置すれば、騒音は減少するでしょうが、公園に集まる子供への防犯対策上、妥当ではなく、また、防音壁により遮蔽されるため、原告女性宅及びその近隣の防犯対策上も、妥当ではない面もあります。現在は、防犯と防音のバランスが必要だと考えますから、行政側の対応が不当だというのは難しいと思います。
原告女性は、「(公園が出来てから)2年間、ほとんど眠れなかった。職員が私の家に一晩でも泊まって体感すべきだ」と不満を口にしています。しかし、4〜10月の体感温度が高いと感じられた日に使われるにすぎないので、1年の中でも限られた日数しか噴水を使用しておらず、深夜、噴水で遊ぶ子供の声がするはずがないのに、2年間眠れなかったことを噴水で遊ぶ子供の声のせいにするのは無理があります。また、噴水の形態からして昼間のみ噴水を使用したと思われ、(欠陥住宅でなければ)戸を閉めれば子供の声も聞こえないのだから、職員が原告の女性に泊まったとしても、通常の住宅と同様に静かだと分かるだけだと思われます。
(4) 東京地裁八王子支部10月1日決定が「基準値を超える状態で噴水を使うことを禁止」した理由として、次の2点を挙げています。
イ:1つ目は、東京都の環境保全条例の騒音規制では、この地域の午前8時から午後7時までの基準値は50デシベル(静かな事務所に相当する)と規定されているのに、噴水で遊ぶ子どもの歓声は女性宅付近で60デシベルと基準値を超えていた点です。
確かに、騒音規制を遵守することは重要です。ただ、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と子供が集まる場所の近隣は基準値を超える場合が少なくないのですが、騒音規制を墨守するべきとなれば、軒並み使用差し止めになりかねません。それはあまりにも不合理です。「社会的使命を考えると一様な規制は困難」(東京都環境改善部)なのです。
騒音規制基準をできる限り細かく設定することで、騒音規制を墨守するべきとも考えられますが、東京都の環境保全条例の騒音規制をみると分かりますが、今でも地域や時間帯を細かく設定していますので、もっと細かく設定することは建設的ではないでしょう。騒音規制はあくまで目安であって、寛容の精神でもって互いに配慮を心がけるものべきだと考えます。
ロ:2つ目は、水遊びができない構造にするなど、子どもが過度に歓声を上げないような噴水を設置することは工夫次第で可能だったとする点です。
確かに、地表にある約20の射出口から水が断続的に噴き出す仕組みであり、水の間を縫って遊べるようになっている噴水だったので、もっと遊びにくい噴水に変更することも可能です。しかし、噴水業者からすると、「子どもが過度に歓声を上げないような噴水」とは、一体どんな施設なのか、噴水を見ても何も感じないような、どうでもいい噴水施設なんてあるのだろうかと疑問を投げかけています。噴水の音がうるさいのならば、音を消す方法・技術もあり、設計段階から音の問題も十分考慮して工夫できるそうですが、子供はどんな噴水だろうと興奮して歓声を発するものだから、それを押さえるような施設にすることは無理だと。
2つ目の理由は、噴水で子供に声を出させるなということですから、つまるところ子供(及びその親)の責任ということになってしまうのですが、子供広場や遊具や噴水を置きながら子供に声をだすなという方がどうかしているのです。公園設計者も、噴水の位置を変更するならわかるが、噴水自体や子供の声自体に責任はないと批判しています。
ようするに、2つ目の理由は、噴水や噴水で遊ぶ子供を知らない、一般知識の欠けた裁判官の抽象論にすぎず、妥当な理由ではないと考えます。
ハ:このように検討すると、東京地裁八王子支部10月1日決定が「基準値を超える状態で噴水を使うことを禁止」した最大の理由(=本音)は、女性が病気療養中で、子供の騒音で2年間眠れないと主張するなど、神経質な性格から騒音に過度に過敏だったことに配慮したためであろうと思います。
行政側としても、原告女性1人しか「子供の声が騒音だ」と文句を言わない状況で、その1人のために防音壁などを設置する必要性があったのだろうかと苦慮する面もあったとは思いますが、もう少し違った対応のあり方があったかもしれません。だからこそ、裁判所としても、噴水使用差し止めという決定をし易かったのでしょう。
しかし、この決定により、子供の声が騒音であるとして、より規制し易い根拠になってしまったわけですから、子供を抱える親や子供が集う場所を管理する施設側としては、騒音に過敏にならざるを得ず、寛容さに欠け、より住みにくい日本社会を突き進むことになります。このように、東京地裁八王子支部10月1日決定の主要な理由は妥当でなく、将来的に規制が厳しくなる契機になりかねない点をも考慮すれば、東京地裁八王子支部10月1日決定は、妥当ではなかったと考えます。
1.日経新聞平成19年12月28日付夕刊12面「クラスルーム」欄
「揺れる規範意識 先生も見て見ぬふり
修学旅行2日目の夕方、教育委員会から電話が入った。班別行動中の小学六年生の行動に対し、女性旅行者から苦情電話があったという。
「たまたま乗り合わせた観光地の電車内で小学生が暴れまわり、騒いでいた。傍若無人ぶりにあきれた。大学生らしき人が注意をしたが従わない。しかもそばにいた教員と思われる数人は、注意することもなく知らん顔。本当に腹が立った」。女性の苦情は、ざっとこんな内容だったという。
修学旅行に行く前には、「班別行動では、一般の旅行者の方々に迷惑をかけないように、最低限の公共のルール、マナーは守りなさい」と、何度も口を酸っぱくして指導してきた。
子供たちも分かってくれたと思っていたので、にわかには信じられず、「どうして本校の児童だとわかったのですか?」と聞き返した。近くにいた児童の荷物から市の名前がわかり、学校名の一字も特定できたので、教育委員会に電話をしてきたということらしい。
どうやら、本校の児童にほぼ間違いないようで、私は愕然(がくぜん)とした。残念で、涙が出そうになった。最高学年の六年生の修学旅行といえば、小学校教育の最終的な仕上げだ。今回の行動で、本校の教育すべてが否定されたような気がした。
すぐに、修学旅行を引率している校長に連絡を取り、事実を伝えると、やはり驚いた様子で、「何も報告は聞いていない」という。校長が帰校後に、詳しく調査することにして電話を切った。その日の夜、帰校した引率教員から情報を集め、次の登校日に六年生からも話を聞いた。情報を総合した結果、「問題の電車に本校の教員と児童が乗り合わせていたことは事実だが、騒いでいて注意されたのは他校の児童」とわかった。
引率教員に苦情を伝えると、「私たちも注意すればよかったのですが、他校の児童だったので二の足を踏んでいる間に時間が過ぎてしまいました」と肩を落とす。本校の児童ではなかったことに一安心したものの、釈然としない思いが残った。
子供の規範意識の低下が深刻だ。規範意識は学校だけでなく、家庭や地域が果たす役割が重要だといわれるが、教員でさえ、他校の児童の行儀の悪さに見て見ぬふりをしてしまうところに、問題の根深さがある。今回の“事件”を題材に、保護者会や地域の住民会議などで、しっかり議論したいと思った。 (学校研究会)」
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1.まず報道記事をいくつか。
(1) 時事ドットコム2007/12/22-10:31
「安田弁護士、処分せず=光市母子殺害−第二東京弁護士会
山口県光市の母子殺害事件で、殺人罪などに問われた元少年の弁護人2人が昨年3月の最高裁弁論を欠席し、遺族から懲戒請求された問題で、第二東京弁護士会は22日までに、主任弁護人の安田好弘弁護士を「懲戒しない」と決定した。
元少年の上告審で、最高裁は昨年3月14日を弁論期日と指定していた。安田弁護士らは弁護人に就任して間もないことから訴訟記録の検討が不十分として期日延期を求めたが、却下された。期日前日に「当日は日弁連による裁判員制度の模擬裁判のリハーサルに重なる」として欠席届を提出し、出廷しなかった。
遺族の本村洋さんが訴訟遅延行為に当たるとして、2人の所属弁護士会に懲戒請求を申し立てていた。」
(2) YOMIURI ONLINE(2007年12月22日3時6分)
「光市母子殺害事件の安田弁護士懲戒せず…第2東京弁護士会
山口県光市の母子殺害事件で殺人罪などに問われた元少年の弁護士2人が昨年3月、最高裁の弁論を欠席し、遺族から懲戒請求されていた問題で、第2東京弁護士会が主任弁護人の安田好弘弁護士(60)について「懲戒しない」とする決定をしていたことが分かった。
決定は20日付。
安田弁護士らは元少年の上告審の弁護人に就任したが、昨年3月14日、裁判員制度の模擬裁判のリハーサルに参加することや、事件記録の検討に時間が必要なことなどを理由に、最高裁の弁論を欠席した。遺族の本村洋さん(31)は、弁論欠席は訴訟遅延行為だとして、所属する弁護士会に懲戒請求していた。
関係者によると、第2東京弁護士会の綱紀委員会は「模擬裁判のリハーサルと重なることを欠席の理由の一つにしたのは妥当ではなかった」としながらも、「被告の権利を守るため、やむを得ず欠席したもので、引き延ばしなどの不当な目的はなかった」と議決。これを受け、同弁護士会は懲戒せずの決定を下した。
本村さんは、「弁護士会に襟を正してもらいたいと思って懲戒請求したが、免罪符を与えたような決定で残念。内容をよくみて納得できなければ、日本弁護士連合会に異議を申し立てたい」と話している。
もう1人の足立修一弁護士については、広島弁護士会が今年3月、同様の決定を出している。
2人の弁論欠席について最高裁は昨年3月、「何ら正当な理由に基づかずに出頭しなかったと認めざるを得ない」として、翌月に延期した弁論への出席を命じる初の「出頭在廷命令」を出した。
(2007年12月22日3時6分 読売新聞)」
(3) 共同通信(2007/12/25 17:11)
「安田弁護士、懲戒せず 母子殺害の上告審欠席で
山口県光市の母子殺害事件で、殺人罪などに問われた元少年の弁護人2人が昨年3月の上告審を欠席して弁論が開かれなかった問題をめぐり、第2東京弁護士会は25日までに、遺族から懲戒請求が出ていた安田好弘弁護士を「懲戒しない」と決定した。決定は20日付。
関係者によると、安田弁護士らは当時、弁護人になった直後のため「準備期間が必要な上、模擬裁判のリハーサルがある」という理由で弁論を欠席。遺族の本村洋さんが「正当な理由なく裁判を遅らせた」として懲戒を求めていた。
同弁護士会の綱紀委員会は「リハーサルを欠席理由にしたのは妥当ではない」とした上で「欠席は被告の権利を守るためにやむを得ないもので、引き延ばし目的はなかった」と議決した。
同じく懲戒請求された足立修一弁護士についても、広島弁護士会が既に懲戒しないと決定している。
2007/12/25 17:11 【共同通信】」
(4) 東京新聞2007年12月25日17時11分
「安田弁護士、懲戒せず 母子殺害の上告審欠席で
2007年12月25日 17時11分
山口県光市の母子殺害事件で、殺人罪などに問われた元少年の弁護人2人が昨年3月の上告審を欠席して弁論が開かれなかった問題をめぐり、第2東京弁護士会は25日までに、遺族から懲戒請求が出ていた安田好弘弁護士を「懲戒しない」と決定した。決定は20日付。
関係者によると、安田弁護士らは当時、弁護人になった直後のため「準備期間が必要な上、模擬裁判のリハーサルがある」という理由で弁論を欠席。遺族の本村洋さんが「正当な理由なく裁判を遅らせた」として懲戒を求めていた。
同弁護士会の綱紀委員会は「リハーサルを欠席理由にしたのは妥当ではない」とした上で「欠席は被告の権利を守るためにやむを得ないもので、引き延ばし目的はなかった」と議決した。
同じく懲戒請求された足立修一弁護士についても、広島弁護士会が既に懲戒しないと決定している。
(共同)」
なお、危険運転罪に関しては、最近、「福岡市・3児死亡交通事故事件:危険運転致死罪適用否定へ〜福岡地裁が訴因追加命令」でも触れています。こちらは、危険運転致死傷でなく、業務上過失致死傷を適用する可能性が高い点で、正反対の結論となったため対比されて報道していました。こちらもご覧ください。
1.まず報道記事をいくつか。
(1) 時事ドットコム(2007/12/25-13:09)
「二審は危険運転罪認定=赤信号無視、懲役18年−6人死傷飲酒事故・名古屋高裁
愛知県春日井市で昨年2月、車を飲酒運転してタクシーと衝突し6人を死傷させたとして、一審名古屋地裁が懲役6年とした元会社員桑山健被告(27)の控訴審判決公判が25日、名古屋高裁であった。片山俊雄裁判長は「赤信号を無視して交差点に進入したと推認できる」として、業務上過失致死傷罪を適用した一審判決を破棄、危険運転致死傷などの罪で懲役18年(求刑懲役20年)を言い渡した。
片山裁判長は「(被告は)事故があった1つ手前の交差点では赤信号に気付きながら進入したと認めており、続けて高速のまま赤信号に進入したということは、信号無視以外のケースでは考えにくい」と指摘。「ことさらに赤信号を無視した」と認定した。
また、信号を青と思い込んだ可能性があるとして、危険運転致死傷罪の適用を認めなかった一審判決について、「危険回避のためクラクションを鳴らしていないことを理由としているが、安全運転をする通常の運転者を想定しており、その論理自体が相当でない」と述べた。」
(2) 朝日新聞平成19年12月25日付夕刊17面
「懲役18年言い渡し 一審を破棄 春日井6人死傷控訴審
2007年12月25日10時23分
愛知県春日井市で昨年2月、6人が死傷した事故で、危険運転致死傷と道路交通法違反(酒気帯び運転)の罪に問われた同市知多町4丁目、元会社員桑山健被告(27)の控訴審判決が25日、名古屋高裁であった。片山俊雄裁判長は「被告は殊更に赤信号を無視した」として危険運転致死傷罪の成立を認め、同罪の成立を認めずに業務上過失致死傷と道交法違反の罪で懲役6年(求刑懲役20年)を言い渡した一審判決を破棄し、被告に懲役18年を言い渡した。
控訴審の最大の争点は、一審と同様、危険運転致死傷罪の構成要件である「殊更に信号を無視した」行為が認定できるかどうか。被告は事故現場の交差点に赤信号で進入したが、「青信号だと思い込んでいた」と供述していた。
片山裁判長は、被告が、事故現場の交差点の一つ手前の交差点を赤信号で通過したことに気付いており「(普通なら)次の交差点にまで赤信号で高速度で進入する事態は起きない」とし「赤信号かどうかを意に介さず、殊更に無視した」と認定。「信号確認は運転者の初歩的かつ基本的な注意義務で殊更に無視した犯行は無謀。虚偽の弁解で自己の責任軽減に終始した」と述べた。
控訴審判決によると、被告は昨年2月25日午前1時ごろ、酒気帯び運転で同市味美白山町2丁目の交差点に殊更に赤信号を無視して時速約70〜80キロで進入。タクシーと衝突し、男性運転手(当時68)と乗客の自衛官3人の計4人を死亡させ、乗客の女性と、被告と同乗していた女児にけがを負わせた。
一審判決は、被告が事故現場の赤信号交差点に進入時、クラクションを鳴らして危険回避をしていないなどとして、「信号を無視する者の行動としてはあまりにも無防備」「信号機が青色と思い込んでいた可能性を払拭(ふっしょく)できない」と指摘し、危険運転致死傷罪の成立を否定。訴因変更命令によって検察側に予備的に追加させた業務上過失致死傷罪を認定していた。
検察側は、信号無視を「不注意」としたのは重大な事実誤認だとして控訴。弁護側も、飲酒量などで一審の事実誤認と量刑不当を主張し控訴したが、控訴審結審前に量刑不当の主張を取り下げていた。」
(3) 中日新聞2007年12月25日 夕刊
「危険運転適用で懲役18年 名高裁判決 愛知・春日井4人死亡
2007年12月25日 夕刊
愛知県春日井市で昨年2月、飲酒運転で赤信号の交差点に入りタクシーに衝突して4人を死亡、2人にけがを負わせたとして、危険運転致死傷などの罪に問われた元会社員桑山健被告(27)の控訴審判決が25日、名古屋高裁であった。片山俊雄裁判長は「赤信号を認識したのに意に介さず、相当な速度で交差点に進入したと認められる」と述べ、業務上過失致死傷罪等を適用して懲役6年(求刑懲役20年)を言い渡した1審・名古屋地裁判決を破棄、危険運転致死傷と道交法違反の併合罪を適用して懲役18年を言い渡した。
控訴審も1審と同様、危険運転致死傷罪の成立要件である「桑山被告が意図的に赤信号を無視したかどうか」が争点となった。
片山裁判長は、事故現場の1つ手前の交差点で桑山被告が赤信号を無視したことを認識していた点に着目し、「次の交差点では、それ以上に信号表示に注意するのが普通。赤信号を意に介さず交差点に入った以外に考えがたい」と指摘して、同罪の成立を認めた。
弁護側は「青信号と思いこんでいた」と主張したが、判決は「なぜ思いこんだかについての具体的な説明がなく、信用できない」と退けた。
量刑について、片山裁判長は「酒を飲んだ後に帰宅するために車を運転したという動機に酌量の余地は皆無」と指摘した上で、「無謀な行為で取り返しのつかない結果を生じた。過去に6回の交通違反があり意識に問題がある」と述べた。
判決によると、桑山被告は昨年2月25日午前1時ごろ、酒を飲んでワゴン車で同市の国道302号を運転しながら赤信号の交差点に進入。青信号で入ってきた航空自衛隊小牧基地の隊員4人を乗せたタクシーに衝突し、運転手と隊員ら4人を死亡させ、女性隊員と桑山被告の車の同乗者の2人に重軽傷を負わせた。
■久保田明広・名古屋高検次席検事の話 検察官の主張をいれた判決の内容は今後、同種事件の先例ともなりえる極めて妥当なものと評価している。
【危険運転致死傷罪】 1999年、東京都の東名高速で飲酒運転のトラックに追突された車が炎上し、女児2人が焼死した事故などをきっかけに2001年の刑法改正で新設された。悪質な交通事故の厳罰化が目的で、法定刑の上限は死亡事故で懲役20年で、業務上過失致死傷罪の4倍。(1)泥酔状態での運転(2)無軌道な高速走行(3)対向車線を走るなどの妨害走行(4)故意の赤信号無視−などで死傷事故を起こした場合に適用される。」
そのコラムのうち、クリスマスに関わる話題を1つ紹介します。
1.asahi.com:「住まいコラム・世界のウチ」年がら年中クリスマス?
「年がら年中クリスマス?
2007年12月12日
アラブ首長国連邦・ドバイ 伊勢本ゆかり クリスマスを楽しみマス
アラブ首長国連邦はれっきとしたイスラム教国。世界各国の人々が居住し、観光客が闊歩(かっぽ)するドバイにいるとふと忘れがちではあるが、生活はしっかりとイスラムの教えに基づき、祝日は太陰暦で数える宗教記念日。他宗教の信仰や外国人に関して寛容な国ではあるが、イスラムでご法度とされていることはおおっぴらには許されていない。例えば飲酒は限られたホテルやレストランでのみ。市中での購入にはあらかじめ警察署で発行される「許可書」が必要という具合だ。
そんなイスラム教国のドバイでは、クリスマスも言わば他宗教のお祭り。おおっぴらには許されていないかと言うと、実はそうでもない。そう、クリスマスはドバイお得意の「ビジネスチャンス」でもあるからだ。ショッピングモールには巨大なツリーが立てられ、人々のお財布の紐を緩めるプロモーションやセール、在住外国人が楽しめるよう様々なクリスマスツリーやオーナメント、電飾などもしっかりヨーロッパからの輸入販売。クリスマスケーキやターキーだってあるのだ。
在住外国人キリスト教徒は教会に集い、ホームパーティーを開いたり家族でクリスマスを過ごしたりする。何しろドバイは輸入品の集まる街、本国と変わらぬクリスマスが12月の暖かい日に祝えるというもの。在留邦人家庭にとっても、世界中から洒落たクリスマス用品やおもちゃが集まるので日本にいるよりも出費はかさむと言えるだろう。
当然、アラブの富豪たちはイスラム教徒。インターナショナルスクールに通う子どもたちにせがまれてプレゼントを購入することはあっても、クリスマスをおおっぴらに祝ったりはしない。だがしかし夜の街中で時折「あれ? もうクリスマスの準備??」と思うような光景に出会う。電飾でいっぱいに飾られた彼らの家なのだがクリスマスの時期だけではなく、不特定にまれに見かける。この不思議な光景、実は結婚式などのお祝いごとを控えたアラブ人家庭が家に施す電飾である。その家でおめでたいことが起きているということをご近所や通りがかりの人たちにお知らせしているというものだそうだ。
それにしても家の周りをびっしりと豆電球が取り囲む様子は、眩しくてとってもゴージャス。日本のシンプルな門松など、彼らの美意識の範疇では絶対にあり得ないのだと実感する毎日である。」
1.団藤重光博士のことは、「なぜ死刑は廃止されねばならないのか〜元最高裁判事の団藤重光氏のメッセージ」(2007/11/14(水) 20:18:43)でも触れたことがありますが、戦後(現在に至るまで)の刑事法学(刑法、刑事訴訟法)において、最も傑出した業績を残し多大な影響力を与えた、刑事法学の泰斗です。
(1) その団藤博士が死刑廃止論を唱えるようになった経緯は、次のようなことからです。
「傍聴席の声、転機に
団藤氏は終戦後、刑事訴訟法全面改正に指導的役割を果たした。東大法学部長を経て、74年から83年まで最高裁判事。
死刑廃止論に転じた決定的契機は、最高裁時代の、毒殺事件の法廷だった。
被告は否認したが、高裁判決は死刑。「絶対に間違いないか」と悩んだが、重大な事実誤認があるといえなければ、最高裁は高裁判決を破棄できない。「何とも仕方なかった」。上告棄却を宣告した裁判長と、団藤氏が退廷しかけた時だ。
「人殺しーっ」。傍聴席から鋭い声が響いた。「一抹の不安を持っていたから、こたえました」。死刑がそもそもいけないと確信を持つようになった。
最近も、著書「反骨のコツ」(朝日新書)を出版し、死刑をめぐる法務省の勉強会にメッセージを寄せるなど、死刑廃止を求める発言を続けている。」(朝日新聞平成19年12月20日付朝刊3面)
記事中に「死刑をめぐる法務省の勉強会にメッセージを寄せる」とありますが、そのメッセージについては、「なぜ死刑は廃止されねばならないのか〜元最高裁判事の団藤重光氏のメッセージ」をご覧ください。全文を紹介しています(「保坂展人のどこどこ日記」さんからの引用)。
(2) 団藤重光・元最高裁判事は、死刑制度について語っているのですが、その記事を読む前に死刑制度論の論点(死刑存置論と廃止論の理由)について触れておきます。
「◆死刑存置論と廃止論の主な論点
◇誤判
・存置論:誤判が起こりうるのは死刑についてだけではない。司法制度全体の問題だ
・廃止論:誤判の危険性が常にあり、死刑は処刑したら取り返しがつかない
◇世論
・存置論:世論調査では「存置」が常に多数。世論が支持している以上、死刑は必要だ
・廃止論:死刑を執行される側という少数者の人権の問題について、多数派の意見を重視するのは誤りだ
◇被害者
・存置論:凶悪犯罪の犠牲となった被害者の遺族を納得させるためにも必要だ
・廃止論:犯人を殺すことが被害者にとって問題解決になるのかどうか、疑問だ
◇抑止力
・存置論:凶悪犯罪を防ぐのに役に立っている。廃止すると凶悪犯罪が増える
・廃止論:死刑に凶悪犯罪の抑止力があるとは実証されていない」(朝日新聞平成19年12月20日付朝刊3面)
では、団藤重光・元最高裁判事へのインタビュー記事を引用します。なお、記事中には、「死刑廃止なくして裁判員制度なし 団藤重光・元最高裁判事に聞く」という最初の見出しのほかに、「法相は世界の大勢直視せよ」、「感情と国が命奪うことは別」という見出しが掲載されています。
テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済
1.まず報道記事をいくつか。
(1) 東京新聞平成19年12月20日付夕刊1面
「薬害肝炎 一律救済せず 国が和解修正案 原告は協議打ち切り
2007年12月20日 夕刊
舛添要一厚生労働相は二十日午前の記者会見で、薬害肝炎訴訟をめぐる大阪高裁の和解協議について、原告側が求めていた一律救済は国として受け入れない方針を明らかにした。東京地裁判決が認めた国と製薬会社の法的責任の期間外に投与を受けた被害者に対しては、法的責任は認めないものの、救済基金として、大阪高裁が和解骨子案で示した八億円を三十億円に積み増す修正案を同高裁に提出する。
未提訴者を含む被害者全員の一律救済を目指す原告・弁護団は「被害者が線引きされている」として和解協議を打ち切る方針を表明。一万人以上の被害者がいるとされる薬害肝炎問題全面解決への道のりは不透明になった。
舛添厚労相は、会見で「再び薬害を引き起こしたことを反省し、被害者に心からおわびしたい」と謝罪。一方で「大阪高裁の骨子案と矛盾する形の和解はできない。直接、間接に事実上、全員救済するものだ。今日の案が政治決断だ」と述べた。
国の修正案は、東京地裁判決を基準に、補償の対象となる投与期間を(1)フィブリノゲンは一九八五年八月−八八年六月(2)第九因子製剤は八四年一月以降と限定する和解骨子案を踏襲。肝硬変と肝がんは四千万円、慢性肝炎は二千万円、感染したが発症していない場合は千二百万円の三ランクに分けて直接補償する。
さらに、その補償基準から外れた被害者を間接的に救済するため、基金の形で計三十億円を支払う。基金の運営は、原告側が設立する財団に委ねる方針。
厚労相は、和解金が支払われる対象について、原告約二百人、未提訴者約八百人の計約千人となるとの見通しを示した。
<薬害肝炎訴訟> 1970−90年代前半に出産や手術の際の止血用などとして、汚染された血液製剤を投与されてC型肝炎に感染した患者らが、国と製薬企業に損害賠償を求めた訴訟。02年10月から全国5カ所で順次提訴し、現在の原告数は約200人。昨年6月の大阪以降、福岡、東京、名古屋の4地裁は国の責任を認めたが、今年9月の仙台地裁判決は国に責任はなかったとした。全面解決を目指して大阪高裁が11月7日、和解を勧告、12月13日に和解骨子案を提示した。」
(2) 産経新聞平成19年12月21日付朝刊26面
「「大臣にもてあそばれた」 薬害肝炎・原告団
2007.12.20 20:29
薬害肝炎訴訟で舛添要一厚生労働相は20日、線引きの大阪高裁和解骨子案を支持した。原告団は舛添厚労相と2回面談し、解決を期待していた分、ショックは大きく「大臣にもてあそばれた」と怒りをあらわにした。
20日午前会見した舛添厚労相は会見冒頭、椅子(いす)から立ち上がって「心からおわび致します」と深々と頭を下げた。一方で「骨子案に矛盾しない形で解決する。限られた中で智恵を絞った」と、線引きの正当化に終始。原告の求める全員救済の政治決断は「今日の案が政治決断です」とすり替えた。
会見の後には、原告団の会見が迫っていた。隣室で待機する原告団と“ニアミス”を気にしたのか、舛添厚労相は矢継ぎ早に質問が飛ぶ中、「もういいですか」と20分で会見打ち切り、足早に立ち去った。
原告団代表の山口美智子さん(51)は「私たちを避けて、違う出口から出ていった。自分は原告に顔向けできないということ」と憤った。
会見で山口さんは「和解という最後の山で『解決』のアドバルーンを上げた舛添大臣は、握っていた手を解き放った」と辛辣(しんらつ)に批判。感情が高ぶり、嗚咽(おえつ)する原告の姿もあった。
会見を終えた原告団は20日午後、あいさつのため、運動を支援した各政党を回った。民主党のヒアリングで九州原告の福田衣里子さん(27)は「『心を一つにしましょう』といったのに、官僚と心が一つになってしまった。大臣は『全面解決に向け、一生懸命、頑張る』といっていた。期待を持たせるだけ持たせて…。もてあそばれた」と、疲れ切った様子で話した。
原告団の和解協議打ち切りについて舛添厚労相は同日夕、記者団に「引き続き、全力をあげて解決するようにしたい」と繰り返した。」
今回の政府案は、原告が掲げてきた「救済は全員、一律」のうち、一応は「全員」救済になり得るのですが、法的責任を認めた期間が最も短い東京地裁判決を基準とし、投与の時期で被害者を線引きしているので「一律」救済になっていないのです。
投与時期を問わず何の落ち度もないのに、出産や手術で止血剤として血液製剤を使われたため、肝炎ウイルスに感染したのですから、投与時期による差別は妥当ではなく、また、東京地裁判決の認定から外れる85年以前の感染者ほど、病状が深刻なケースが多い事情があり、原告側としては「感染時期による線引き」を認める余地はなかったのです。原告側が政府案を拒絶し、和解協議が決裂したのは当然といえる結果でした。
舛添氏のことは、「年金問題で、舛添厚労相と自治体が“過激な舛添発言”で対立〜民主主義がわかっているのか?(東京新聞「こちら特報部」より)」で触れたことがありますが、舛添氏は「よく考えることなく、すぐぱっとモノ言う人」であり、聞こえのいいことばかり言うだけで信用性に乏しく、話半分に聞いていた方がよい人物であるのです。
「会見で山口さんは「和解という最後の山で『解決』のアドバルーンを上げた舛添大臣は、握っていた手を解き放った」と辛辣(しんらつ)に批判。感情が高ぶり、嗚咽(おえつ)する原告の姿もあった。……九州原告の福田衣里子さん(27)は「『心を一つにしましょう』といったのに、官僚と心が一つになってしまった。大臣は『全面解決に向け、一生懸命、頑張る』といっていた。期待を持たせるだけ持たせて…。もてあそばれた」と、疲れ切った様子で話した。」
舛添氏は、今回も最初は色よいことを言っておいて、実行しなかったのです。相変わらずの無責任ぶりを発揮したのでした。政府案は、少しも政治決断になっていないのです。
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死刑執行停止を求める決議が、192の全加盟国が参加する本会議で採択されるのは極めて異例で、潘基文事務総長は歓迎の声明を出しています。
そして忘れてはならないことは、同日の国連総会本会議において、北朝鮮の人権侵害に「極めて深刻な懸念」を表明、外国人拉致問題の解決と拉致被害者の即時帰国を求める人権決議案をも採択、決議が成立したということです。同じく法的拘束力はない決議ですが。
では、この報道について触れたいと思います。(12月22日付追記:安保理決議につき記事を引用しました。)
1.まず報道記事についていくつか。
(1) 東京新聞平成19年12月19日付夕刊10面
「死刑停止決議が成立 国連本会議日米中反対 賛成100カ国上回る
2007年12月19日 夕刊
【ニューヨーク=共同】国連総会本会議は十八日、死刑の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を賛成一〇四、反対五四、棄権二九で採択、決議が成立した。決議案作成は欧州連合(EU)が主導。
日米中やシンガポール、中東諸国などが反対に回った。
死刑執行停止を求める決議が、百九十二の全加盟国が参加する本会議で採択されるのは極めて異例で、潘基文(バン・キムン)事務総長は歓迎の声明を出した。賛成国数は、決議案を上程した第三委員会(人権)での九十九カ国より増えた。決議に法的拘束力はないが、死刑制度の是非をめぐる論議に一石を投じそうだ。
決議は、死刑が「(犯罪)抑止に結び付くという確実な証拠はなく、死刑の誤判は取り返しがつかない」とした上で、死刑制度を定めている国に「死刑廃止を視野に死刑執行のモラトリアムの確立」を求めた。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、死刑制度を廃止したり、十年以上執行していない国は百三十カ国以上に上る。
昨年は二十五カ国で少なくとも計千五百九十一人が死刑となり、うち中国だけで千十人を占めた。」
(2) 朝日新聞平成19年12月19日付夕刊12面(4版)
「「死刑停止」を国連決議 日本反対、孤立深める
2007年12月19日11時36分
【ニューヨーク=立野純二】国連総会は18日、死刑執行の停止を求める決議案を賛成多数で採択した。日本を含む死刑制度の存続国に対し国際世論の多数派が「深刻な懸念」を示した形だ。決議に法的拘束力はないが、存続国には死刑制度の状況を国連に報告するよう求めており、制度の見直しへ向けた国際圧力が高まるのは確実だ。
国連加盟国192カ国のうち、欧州連合(EU)のほか、南米、アフリカ、アジア各地域の87カ国が決議の共同提案国になった。採決は、賛成104、反対54、棄権29。死刑制度を続けている日本、米国、中国、シンガポール、イランなどは反対した。
決議は、人権尊重の意義や、死刑が犯罪を抑止する確証がないこと、誤審の場合は取り返しがつかないことなどを指摘。存続国に対し、執行の現状や死刑囚の権利保護を国連事務総長に報告▽死刑を適用する罪名の段階的な削減▽死刑制度の廃止を視野にした執行停止――などを求めている。
採択後、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は「世界の多様な地域から支持されて心強い。死刑廃止へ向けた潮流の証しだ」と歓迎の声明を出した。
国連総会は71年と77年にも死刑に関する決議を採択した。当時は制度の乱用が問題視され、死刑の対象となる罪名の規制に力点を置き、廃止については「望ましい」との表現にとどまっていた。今回は廃止を視野に入れ、その前段階として存続国に執行の停止を求めたのが特徴だ。
死刑廃止の動きはEUの主導で広がっている。国連総会での死刑廃止要求決議案は90年代に2回提案されて採択に至らなかったが、今回は「予想を超える大差の賛成数」(EU代表)になった。
決議の内容を死刑の即時廃止ではなく、執行停止に緩めたことで中間派が賛成に回った事情もある。だが最大の主因は、廃止・停止に動く国々の急速な広がりだ。
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、77年当時、死刑を廃止した国は16だったが、現在は90。制度は残っていても執行を長期停止した韓国やロシアなどの停止国を加えると133カ国に達する(今年11月現在)。この10年間だけでも約30カ国が廃止・停止した。
一方、存続国は中国、イラン、サウジアラビア、米国など64カ国。そのうち昨年中に執行した国は25カ国。死刑制度を維持し、実際に執行も続ける国は日本を含め世界の少数派になった。」(*見出しは紙面どおりに変更)
(3) 毎日新聞平成19年12月19日付夕刊1面(4版)
「国連:死刑執行の一時停止求める決議案、初の採択
【ニューヨーク小倉孝保】国連総会は18日、欧州連合(EU)などが提出した死刑執行の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を賛成多数で採択した。国連が死刑のモラトリアム要求決議案を採択したのは初めて。総会決議に拘束力はないが、国際社会の多数意見を反映するものとして加盟国には一定の圧力となる。
賛成はEUのほかトルコ、イスラエルなど104カ国。反対は日本、米国、中国など54カ国、棄権が韓国など29カ国。総会内の第3委員会(人道問題)が既に同決議案を採択していたが、総会の採択で正式な決議となった。日本はモラトリアムが憲法に反することなどを理由に一貫して決議案に反対した。
この結果を受け、潘基文(バンギムン)国連事務総長は「国際社会の勇気ある一歩を象徴している。死刑廃止傾向が強まっていることの証拠だ」とする声明を発表した。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」も「反人道的な処罰を終わらせることへの歴史的な一歩だ」と歓迎した。
採択された決議案は▽死刑は人間の尊厳を否定し、死刑廃止は人権保護に貢献すると確信する▽世界的な死刑廃止や執行一時停止の動きを歓迎する▽死刑を廃止した国には死刑制度を復活させないことを求める−−とした。その上で、死刑執行を続ける国に対して▽死刑を制限して執行を受ける者の数を減らす▽死刑廃止に向けてモラトリアムを行う−−ことなどを求めている。
EUはここ数年、決議案採択を目指してきたが、そのめどが立たず、提案を見送ってきた。国連人権委員会(現在の人権理事会)では「死刑に疑問を投げかける」決議案が採択されたことがある。
米国では、ニュージャージー州が17日、同国で死刑が復活した76年以来初めて死刑制度を廃止するなど、死刑の是非を巡る議論が盛んになっている。
元死刑囚、免田栄さんは10月、国連内の討論会で決議案への支持を訴えていた。
毎日新聞 2007年12月19日 11時12分」
(4) 国連総会本会議で採択された決議案は、
となっています。「採択された決議案は
▽死刑は人間の尊厳を否定し、死刑廃止は人権保護に貢献すると確信する
▽世界的な死刑廃止や執行一時停止の動きを歓迎する
▽死刑を廃止した国には死刑制度を復活させないことを求める−−とした。
その上で、死刑執行を続ける国に対して
▽死刑を制限して執行を受ける者の数を減らす
▽死刑廃止に向けてモラトリアムを行う−−ことなどを求めている。」(毎日新聞平成19年12月19日付夕刊1面)
「国連の委員会、“死刑執行一時停止”決議案を採択〜日米などは反対したとのことだが……。」(2007/11/20(火) 23:59:41)で触れように、国連総会第3委員会(人道問題)で採択された決議案は、
としていたのですから、国連総会第3委員会での決議案と国連総会本会議の決議案は、全く同じであり、国連総会本会議も修正することなく決議したようです。「採択された決議案は
▽死刑は人間の尊厳を否定し、死刑廃止は人権保護に貢献すると確信する
▽世界的な死刑廃止や執行一時停止の動きを歓迎する
▽死刑を廃止した国には死刑制度を復活させないことを求める−−としたうえで、
死刑執行を続けている国に対して
▽死刑を制限して執行を受ける者の数を減らす
▽死刑廃止に向けてモラトリアムを作る−−ことなど求めている。」(毎日新聞平成19年11月16日付東京夕刊)
「死刑廃止の動きはEUの主導で広がっている。国連総会での死刑廃止要求決議案は90年代に2回提案されて採択に至らなかったが、今回は「予想を超える大差の賛成数」(EU代表)になった。
決議の内容を死刑の即時廃止ではなく、執行停止に緩めたことで中間派が賛成に回った事情もある。だが最大の主因は、廃止・停止に動く国々の急速な広がりだ。
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、77年当時、死刑を廃止した国は16だったが、現在は90。制度は残っていても執行を長期停止した韓国やロシアなどの停止国を加えると133カ国に達する(今年11月現在)。この10年間だけでも約30カ国が廃止・停止した。」
90年代では採決に至らなかったのに、今回は賛成104、反対54という大差の賛成数になったの最大の理由は、 「廃止・停止に動く国々の急速な広がり」ということです。「10年間だけでも約30カ国が廃止・停止」したというのですから、日本と異なり、国際社会では急速に人権尊重の意識が広がったことが伺えます。
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検察側は危険運転致死罪と道交法違反(ひき逃げ)を前提として懲役25年を求刑していますが、危険運転致死罪でなく、業務上過失致死罪が適用されると、上限は道交法違反罪(酒気帯び運転)と合わせても懲役7年6月となるため、大幅に量刑が下がることもほぼ確実となりました。この報道について触れてみたいと思います。
1.まず、報道記事をいくつか。判決が下されたわけではなく、各記事に不一致があることから、記事の添削(良い点・悪い点の指摘)の形でコメントしていきます。このブログでエントリーとして取り上げる際の思考過程を披露しているものともいえます。
(1) 【共同通信2007/12/18 14:12】
「危険運転罪見送りか 3児死亡事故で福岡地裁
飲酒運転で多目的レジャー車(RV)に追突して海に転落させ3児を死亡させたとして、危険運転致死傷罪などに問われた元福岡市職員今林大被告(23)について、福岡地裁(川口宰護裁判長)は18日、福岡地検に対し訴因変更を命じた。予備的訴因として業務上過失致死傷と道交法違反(酒気帯び運転)の罪を追加する内容。地裁は危険運転の適用は困難と判断した可能性が高い。
結審後の訴因変更命令は異例という。
地検によると、地裁が求めてきた業務上過失致死傷罪の内容は、脇見による前方不注意だという。地検は「年内に結論を出す」としているが、応じない場合は危険運転致死傷罪が無罪となる可能性があるため、命令には従うとみられる。事前に地裁から打診があり、遺族には既に経緯を説明しているという。
今林被告は、危険運転致死傷と道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われ、検察側は併合罪の最高刑となる懲役25年を求刑して結審、来年1月8日に判決の予定だった。
2007/12/18 14:12 【共同通信】」
イ:良い点
「予備的訴因として業務上過失致死傷と道交法違反(酒気帯び運転)の罪を追加する内容」
「地検によると、地裁が求めてきた業務上過失致死傷罪の内容は、脇見による前方不注意」
「事前に地裁から打診」
起訴時の訴因は「ひき逃げ」の訴因でしたが、「酒気帯び運転」の訴因をも追加するよう求めたことも分かるのがまず良い点です。過失犯の態様は様々なので具体的な過失内容が重要なので、業務上過失致死の内容が「脇見による前方不注意」であることを指摘しているのも良い点です。訴因変更は本来は検察官の専権なので、まず裁判所は訴因追加・変更を促すのが通常ですので、「事前に地裁から打診」があった点の指摘も良い点です。
ロ:悪い点
「結審後の訴因変更命令は異例」
確かに一度結審してはいますが、弁論を再開することも決定しているので、誤解を招く記述ゆえ、悪い点です。ただ、さほどの瑕疵ではなく、全体的に分かりやすいので、大変よい記事だと思います。
(2) 朝日新聞平成19年12月18日
「3児死亡で危険運転罪見送り 福岡地裁、業過致死適用か
2007年12月18日13時32分
福岡市東区で06年8月、幼児3人が死亡した飲酒運転事故で、危険運転致死傷などの罪に問われた元同市職員今林大(ふとし)被告(23)について、福岡地裁は18日、予備的訴因として業務上過失致死傷罪と道路交通法違反(酒気帯び運転)を追加するよう検察側に命じた。検察側は同被告に危険運転致死傷罪と道交法違反(ひき逃げ)の併合罪で最高刑の懲役25年を求刑していたが、地裁は危険運転致死傷罪の適用は困難と判断したとみられる。
危険運転致死傷罪(最高刑懲役20年)とひき逃げとの併合罪は最高刑が懲役25年。これに対し、業務上過失致死傷(同5年)と酒気帯び運転、ひき逃げの併合罪は同7年6カ月(今年6月の法改正で15年に引き上げ)。この場合、適用できる最高刑が3分の1以下となることになる。検察側は「適切に対応したい」としているが、変更命令に応じない場合、地裁は危険運転致死傷罪については無罪を言い渡すとみられる。検察側は、予備的訴因の追加に応じるか、危険運転致死傷罪について補充して立証できるか検討する。
裁判では今林被告が事故当時、危険運転致死傷罪の適用要件である「アルコールなどの影響で正常な運転が困難な状態」だったかどうかが争点になった。事故直後の飲酒検知では、今林被告の呼気1リットルから0・25ミリグラムのアルコールが検出され、酒気帯び運転の水準にとどまっていた。
検察側は、今林被告は事故前に多量の酒を飲んで泥酔状態だったと指摘。事故直前まで急ブレーキなど衝突を避ける措置もとっておらず、「飲酒の影響で正常な運転ができない状態だったことは明らかだ」と主張していた。
被告、弁護側は事故前に酒を飲んだことは認めながら、「正常な運転ができないほどではなかった」と反論していた。
起訴状によると、今林被告は06年8月25日夜、酒を飲んで乗用車を運転し、福岡市東区の海の中道大橋で、大上哲央さん(34)のRVに追突。海に転落させて逃走し、大上さんの長男紘彬(ひろあき)ちゃん(当時4)、次男倫彬(ともあき)ちゃん(同3)、長女紗彬(さあや)ちゃん(同1)を水死させ、大上さん夫妻に軽傷を負わせたとされる。
◇
〈訴因変更〉 検察官が公判の途中で、起訴状に記載した事実の範囲内で該当する罪名を変更したり追加したりすること。裁判所は訴因に対してしか判断できないが、刑事訴訟法は、審理の経過をみて適当と認めたときには検察官に訴因変更を命じられると定めている。例えば、ほかの訴因に変更すれば明らかに有罪なのに、検察官の主張する訴因のままだと無罪になると判断した場合などに変更を命じるケースなどが想定されている。ただし、検察官は命令に従わなくても構わないとされる。」
イ:良い点
「危険運転致死傷罪(最高刑懲役20年)とひき逃げとの併合罪は最高刑が懲役25年。これに対し、業務上過失致死傷(同5年)と酒気帯び運転、ひき逃げの併合罪は同7年6カ月(今年6月の法改正で15年に引き上げ)。」
「検察側は「適切に対応したい」としているが、変更命令に応じない場合、地裁は危険運転致死傷罪については無罪を言い渡すとみられる。」
「裁判では今林被告が事故当時、危険運転致死傷罪の適用要件である「アルコールなどの影響で正常な運転が困難な状態」だったかどうかが争点になった。事故直後の飲酒検知では、今林被告の呼気1リットルから0・25ミリグラムのアルコールが検出され、酒気帯び運転の水準にとどまっていた。」
「〈訴因変更〉」
裁判所が「ひき逃げ」の点も立証不十分との心証を抱いているか不明ですが、この記事からすると、「ひき逃げ」の点は立証可能であったようにも思えますので、判決時に着目すべき点だと分かりますので、良い点です。訴因が変わることで量刑の上限が懲役7年6月と分かる点も良い点です。訴因変更追加命令に応じないと、地裁は危険運転致死罪につき無罪を言い渡すと分かるのも良い点です。裁判での争点を明確にしている点でも良い点です。訴因変更という用語の説明をしている点も、一般市民向けには必要ですから良い点です。
ここで、なぜ、「変更命令に応じない場合、地裁は危険運転致死傷罪については無罪を言い渡す」のか、について説明しておきます。
犯罪(構成要件)が異なったり、同一犯罪でも事実(行為態様・結果)が異なれば、訴因変更をする必要があります。ただし、訴因の中に包含された犯罪事実(例えば、傷害致死を傷害に、強盗を恐喝に、酒酔い運転を酒気帯び運転に)を認定するには訴因変更を必要としないという縮小認定の理論が認められています。なぜなら、事実が大は小をかねる形ですし、認定する事実は検察官も黙示的・予備的に主張していたといえ、被告人に不意打ちにならないからです。
縮小認定の理論が適用できる事実であれば、裁判所は訴因変更なしに「小」の事実を認定して判決を下すことができるのです。今回の事案の場合、危険運転致死傷と業務上過失致死傷の事実につき、もし縮小認定の理論が適用できれば、訴因変更なしに業務上過失致死罪として有罪とすることができます。
この事件の場合、危険運転致死傷罪(刑法208条の2)の4類型のうち、酩酊危険運転致死罪(同条1項前段)が問題となっていますが、福岡地裁が抱いた心証は、「脇見による前方不注意による致死」であって、起訴時の訴因事実のように「アルコールの影響で正常な運転が困難になって致死となった」ではなかったのです。このように事実にズレがあるため、縮小認定は難しい事案と思われます。そのため、訴因(追加)変更をしないと、裁判所は訴因から外れた事実の認定はできないので、危険運転致死罪について無罪となるだろうということです。
ロ:悪い点
「予備的訴因として業務上過失致死傷罪と道路交通法違反(酒気帯び運転)を追加するよう検察側に命じた」
「酒気帯び」の点を明示した点は良いのですが、業務上過失における過失の内容が明示していないため、過失の態様を特定できず悪い点です。
1.まず社説とコラムを。
(1) 日経新聞平成19年12月17日付「社説」
「社説1 肝炎訴訟和解も「意気込み」だけか(12/17)
薬害C型肝炎訴訟の和解交渉で、政府の対応が注目されている。「年内に和解を成立させる」(舛添要一厚生労働相)、「患者の方々に満足いただけるようになってほしい」(福田康夫首相)と明言して裁判所の和解勧告に応じたのだから、“公約破り”にならないよう、和解を成立させ早期に薬害被害者の救済策を実行しなければならない。
同訴訟は全国5つの裁判所に提訴された。9月までに出そろった地裁判決は「国に感染被害を止められなかった責任があるかどうか」について、感染源である薬剤の種類や薬剤を投与された時期で区切って判断した。その結論は、「どの時期も責任なし」からほぼ原告の訴えどおりに広い範囲で認定したものまで、5つの判決がそれぞれに異なる。
大阪高裁が提示した和解案は、国の責任を限定的にとらえる内容で、原告側は薬害被害者の一部が救済されないとして拒否する意向を表明した。同高裁は和解案と同時に出した所見・説明書で「(原告側が要求する)全員、一律、一括の和解金支払いによる解決が望ましいが、被告の国・製薬会社の格段の譲歩がない限り、地裁判決の内容から外れられない」旨、述べている。
ここで留意すべきは、裁判で争われる「国の責任」の有無とは賠償責任が生じる「違法な行政」があったか否かだ、という点である。肝炎訴訟のような、行政の不作為を問責するケースでは「行政権限を行使しなかったことが著しく不合理」と判断された場合だけが「違法な行政」になり「国の責任」が認定される。
国民が薬事行政に求める「安全確保の責任」が、そんなものでないのは論をまたない。当の厚労省も「“著しく不合理”にならなければいくらサボっても構わない」などとは考えていないだろう。血液製剤を原因とするC型肝炎感染が発生し広がった原因に、「著しく不合理」とまではいえなくても薬事行政の手抜かりや怠慢があったのは明らかだ。
政府は、福田内閣発足後の10月になって従来の姿勢を変え、和解交渉の席に着いた。訴訟の経緯と原告側の要求を理解したうえでの方針転換なのだから、国側には何らかの形で責任を認め謝罪する覚悟と、薬害肝炎の患者・感染者全員を救済する腹案がなければおかしい。それなしに「和解成立を目指す」と言ったのならば無責任である。
約束を果たせそうにない「宙に浮いた年金記録」の名寄せと同じく、肝炎訴訟和解も意気込みを語ったにすぎない――では許されない。」
(2) 東京新聞平成19年12月17日付「筆洗」
「正確な日付は記憶にないが、水俣病の未認定患者の救済を求め、熊本県から上京したときのことはよく覚えている。環境庁を訪れると、仲間が一斉に「よろしくお願いします」と頭を下げたが、自分一人、頭を上げたままで役人に言った。「なぜ、被害者が加害者に頭を下げねばいけないのですか」と
▼約七年前に取材したときの水俣病患者、木下レイ子さんの回想である。不知火海に臨む漁師の家で育ち、海の幸が主食だった。だから両親、自分、夫、姉や妹…と、一族が水俣病に苦しむことになった。だが、全員が認定されていない。何も悪いことをしていないのに、なぜこんな目に遭うのか。納得できるはずがない
▼国と製薬会社に損害賠償を求めている薬害肝炎訴訟の原告の思いも同じであろう。被害者全員の一律救済を求めているが、国は「薬害」と認めながら、原告の言い分に首を縦に振らない
▼国に法的責任があると認められた期間は、裁判によってばらつきがある。救済範囲が際限なく拡大しないよう、救うか救わないかの線引きをしたいらしい
▼原告団の団長が「勇気ある政治決断をお願いします」と訴えていた。どうして被害者の苦しみが分からないのか。煮えたぎるような怒りを抑えての「お願い」だろう。二度と言わなくていいようにしたい。国の指導者こそ、大局的な判断から一人でも多くの人を救うことに腐心すべきである
▼「無学で難しいことは分かりませんが、人間の命より尊いものは世の中にありませんよ」。木下さんの言葉が頭から離れない。」
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1.まず、報道記事をいくつか。
(1) 東京新聞平成19年12月17日付朝刊1面
「福田内閣支持急落35% 年金『公約違反』57%
2007年12月17日 朝刊
共同通信社が十五、十六両日実施した電話世論調査によると、福田内閣の支持率は35・3%と十一月上旬の前回調査に比べ11・7ポイント落ち込んだ。不支持率は47・6%で11・0ポイント上昇、初めて不支持が支持を上回った。年金記録問題で政府が全面解決を事実上断念したことに対し「公約違反に当たる」との回答が57・6%を占め、「当たらない」は34・3%だった。
福田康夫首相が年金問題で「公約違反というほど大げさなものか」と発言したことや、防衛省をめぐる一連の疑惑が支持率急落に結び付いたとみられる。再延長した今国会の最大の焦点である新テロ対策特別措置法案(給油新法案)については「反対」が46・7%で、「賛成」の38・8%を上回った。
望ましい政権の枠組みについて、前回は「自民党中心」が多かったが、今回は「民主党中心」が44・7%で「自民党中心」の28・5%を引き離した。次期衆院選の時期は「来年前半までに」が47・0%、「来年後半までに」は26・0%、「再来年」は12・8%。
内閣不支持の理由は「経済政策に期待が持てない」が21・6%で最も多かったが、「首相に指導力がない」が16・5%と8・1ポイント増えた。支持理由は「ほかに適当な人がいない」が46・6%だった。
給油新法案を参院が否決した場合、与党が衆院で再議決して成立させることについては、賛成41・2%、反対43・6%で拮抗(きっこう)。反対の理由は「給油活動は必要ない」36・8%、「参院の否決を尊重した方がよい」35・1%だった。
来年三月に期限切れを迎える、揮発油税の暫定税率の延長については、反対が75・4%に上った。道路特定財源の一般財源化には賛成50・8%、反対38・3%。
各党支持率は自民党が25・2%で、前回より13・0ポイント下落、民主党の28・5%を下回った。公明党3・1%、共産党3・6%、社民党1・5%、国民新党0・3%、新党日本0・2%。一方、支持政党なしは36・0%と12・5ポイント増だった。」
(2) 朝日新聞平成19年12月17日付朝刊2面
「「政治の基礎、首相に欠落」 小沢氏、公約発言を批判
2007年12月16日21時51分
民主党の小沢代表は16日、山梨県昭和町であった同党の輿石東参院議員会長のパーティーで講演し、年金記録問題の「公約」をめぐる福田首相の発言について「『言ったかな』なんてとぼけているのは、政治の基礎的な部分が欠けている。馬鹿げた無責任な政治がまかり通っている」と述べ、名指しで強く批判した。
小沢氏は「日本で一番偉い人が公約なんかどうでもいいという考え方で政治やったら、こんな国民をバカにした、政治を冒涜(ぼうとく)した態度はない。国民と約束したことを一生懸命守ろうとするのが政治家、人間として当たり前だ」と語った。
一方、輿石氏も講演で「福田さんに政権を維持させておいてはダメだ。暮れから正月、3月にかけてどうするか、腹は決まった。参院の意思は必ず示す」と語り、首相問責決議案の提出を視野に国会審議に臨む姿勢を強調した。」
(3) 産経新聞平成19年12月17日付朝刊1面
「首相発言 世論と乖離 年金不信から政治不信へ
誰のものか分からない年金記録約5000万件のうち、約2割が統合困難であることが判明し、「最後の1人、最後の1円まで確実に年金を支払う」という政権公約の実現は絶望的になった。ところが、福田康夫首相や舛添要一厚生労働相からは公約撤回に対する謝罪の言葉は聞かれない。民主党など野党は、1月15日まで再延長された国会で政府・与党を追及していく構えだ。政治家の言葉の軽さに、年金不信だけでなく政治不信も広がりつつある。
(河合雅司、桑原雄尚)
「記録統合作業はエンドレスで、できないこともある」。舛添要一厚生労働相は11日の記者会見で、あっさりと公約断念を表明した。
来年3月までの照合完了−。なぜ、政府・与党は、できもしない公約をしたのだうか。夏の参院選で、自民党が劣勢を盛り返そうと、誤解を承知で誇張し過ぎた結果、公約の中身が変質したことに原因がある。
「最後の1人まで記録をすべてチェックし、正しく年金を支払う」。
参院選前、安倍晋三首相(当時)が何度となく街頭演説で使ったフレーズだ。自民党は「5000万件を1年間ですべて統合できる」とのチラシを作成した。政府や自民党は記録の持ち主の手がかりを探すための作業に過ぎない「照合」と、記録の持ち主を特定し修正する「統合」を、しばしば混同して使った。
この結果、「来年3月までの照合完了」は「来年3月までの問題解決」として国民に浸透していった。自民党のチラシについては、野党が何度も国会で取り上げ批判したが、明確に訂正されることはなかった。
福田康夫首相も10月3日の衆院本会議で「来年3月までに実施する」と安倍政権の作業スケジュールの踏襲を明言。舛添氏は「最後の1人、最後の1円まで確実にやる」とさらに踏み込んだ。
だが、福田政権は、国民が年金記録の公約をどのように理解しているのか、あまり気に留めていなかった節がある。
首相は945万件について、「公約違反というほど大げさなものなのか」と語った。さらに「公約でどう言っていたか頭にさっと浮かばなかった」と、国民の神経を逆なでするような言葉も飛び出した。
14日には「誤解を招いたという意味では、説明した人の責任でもある」と謝罪を口にしたが、これは混乱を招いたことをわびただけとみられる。「みなさんが公約違反だと決めつけているから、いくら抗弁しても、なかなか説明するのは難しい」とも述べているためで、相変わらず公約違反との認識は持っていないようだ。
安倍政権は年金対応のまずさがきっかけで支持率が急落した。それだけに、与党内では、福田首相の発言と世論の温度差の乖離(かいり)に懸念が広がりつつある。(以下、省略)」
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1.まず報道記事を。
(1) 日経新聞平成19年12月14日付朝刊42面
「代理出産、条件付き容認論相次ぐ・学術会議検討委
日本学術会議の生殖補助医療の在り方検討委員会(委員長・鴨下重彦東京大学名誉教授)は13日、都内で会合を開いた。焦点となっている代理出産の是非について、委員からは条件付きで容認すべきだとする意見が相次いだ。意見集約や結論はまだ先としているが、現在は認められていない代理出産が解禁される可能性が高まってきた。
13日の会合では「全面禁止は今の状況では難しいのではないか」「認めるならば、実施条件を細かく決めるべきだ」との意見が出た。容認を前提として、認める条件や規制をどうするかについての議論が大勢を占めた。ただ、一部の委員からは「全面的に禁止すべきだ」との発言もあった。「委員会としての結論はまだ先」(鴨下委員長)としており、26日に開く次回会合以降に持ち越しとなった。(12月14日07:02) 」(*見出しは日経新聞のHP掲載のまま)
(2) 時事ドットコム(2007/12/13-21:27)
「代理出産、全面禁止回避へ=「法規制は必要」−学術会議
日本学術会議の生殖補助医療の在り方検討委員会が13日開かれ、代理出産について論議した。何らかの法規制が必要であり、商業的実施は禁止すべきだとの点でおおむね一致したが、「全面的に禁止するのは難しいのではないか」との意見が大勢を占めた。
代理出産は「第三者に多大な危険性を負わせる」などとして、厚生労働省の部会が法制化を前提に、罰則付きで禁止する報告書をまとめている。その結論が見直される可能性が高まった。」
(3) 毎日新聞平成19年12月14日付東京朝刊28面
「代理出産:学術会議検討委「営利目的は禁止」
日本学術会議の生殖補助医療のあり方に関する検討委員会が13日開かれ、不妊夫婦の受精卵で他の女性が妊娠、出産する代理出産について「営利目的の代理出産とあっせんは何らかの形で禁止すべきだ」との意見が大勢を占めた。
代理出産をめぐっては現在、日本産科婦人科学会が指針で禁止。03年には厚生労働省生殖補助医療部会が刑罰付きで禁止すべきだとの報告書をまとめている。この日の委員会では「学会の指針に任せるのではなく法整備が必要」が大勢。また営利目的以外については「部分的に許容すべきだ」と「全面禁止すべきだ」とに分かれた。同委員会は報告書案を作成する作業部会を設置し年明けの完成を目指すという。【永山悦子】
毎日新聞 2007年12月14日 東京朝刊」(*紙面とHPとの見出しは若干異なる)
1.まず、この事件の事実の概要についてよく知らない方も多いようです。なので、このエントリーでもう少し詳しく触れておきます。
「被告人は、平成16年12月13日頃、知人から政党ビラ(「都議会報告」「葛飾区議会だより」「区民アンケート」「アンケート返信用封筒」の4種類)を配布するよう依頼され、同月23日午後2時頃、東京都葛飾区内にある本件マンションの玄関口から中に入り、玄関ホール、1階廊下を経てエレベーターで7階に昇り、7階各戸のドアポストから本件ビラを投函し、その階の全戸への配布を終えると、階段を使用して下の階に順次降りていった。本件マンション内の全戸に本件ビラを配布しようと3階まで降りてきたところ(3〜7階27戸に投函した)、3階で居室から出てきた住民(男性)に、背後から突然「このビラを入れたのはお前か。迷惑だからやめろ。」と声を掛けられため、被告人は「今後、あなたのお部屋にはビラを入れませんので、何号室ですか。」と尋ねたところ、その直後に男性住民は携帯電話で「共産党のビラを配って者がいる。PC(パトカーのこと)を使え。ガラ(身柄のこと)は押さえた。」などと警察の隠語を交えながら警察に通報し、パトカー2台と12人もの警官がかけつけ、結局、逮捕に至った。
本件マンションは、地上7階、地下1階建ての鉄筋コンクリート造りの分譲マンションであり、ドア内部の立ち入りについて個別の同意が必要なオートロック式ではない。1階部分は店舗及び事務所用として、2階以上はすべて住宅として分譲されており、1階の店舗用部分の出入口にはガラス製両開きドアがあり、そこから入った場所は、玄関ホールとなっており、その右側の壁には掲示板と集合郵便受けが設置されていた。その掲示板にはA4判大の白地の紙に「チラシ・パンフレット等広告の投函は固く禁じます。」と書かれた本件マンション管理組合名義の張り紙と、B4判大の黄色地の紙に「当マンションの敷地内に立ち入り、パンフレットの投函、物品販売などを行うことは厳禁です。工事施行、集金などのために訪問先が特定している業者の方は、必ず管理人室で『入退館記録簿』に記帳の上、入館(退館)願います。」と書かれた本件マンション管理組合名義の張り紙等があった。その奥にさらにガラス製ドアがあり、その手前の左側に管理室があり、管理員が平日8時から午後5時まで(水曜日及び土曜日は午前中のみ)勤務し、通行人の監視等を行っていた。エレベーター等はその奥のドアを開けてさらに進んだところに設置されていた。
本件マンション管理組合理事会は、葛飾区の広報紙(“広報かつしか”)を除いてビラやパンフレット等を投函する目的で本件マンションの内部に立ち入ることを一切禁止することを決めており(選挙公報の配布さえ認めていなかった)、本件当時の管理員も、その旨伝えられていた。ただし、“広報かつしか”以外、あらゆる内容のビラの配布を阻止していたことは、理事長の指示で行っていたものであって、管理組合が住民全体に図って決定したものではなかった。
被告人は40年以上ビラを配っていても住民からとがめられたことがなく、マンション立ち入りの際に、個別に事前に管理者等から立ち入りについて注意や警告を受けておらず、本件マンションにおいて実効的な立ち入り禁止の措置はとられていなかった。そのため、当時商業ビラが多数、各戸のドアポストに投函されていた。」(川口浩一「政党ビラの配布と住居侵入罪の成否」刑事法ジャーナル9号(2007年)146頁参照)
逮捕後の経緯とやや詳しい判決骨子については、「ビラ配布の自由を守る会」をご覧ください。
日本の集合住宅の形式は様々であり、古い二階建てのアパートのように、集合郵便受けや入り口ドアもなく、自由に立ち入りが可能で、包括的な同意が認められている形態のものもあれば、逆にオートロック式のマンションのようにドア内部に立ち入る場合には個別の同意が必要であって包括的な同意が認められない形態のものもあります。今回の事例は、これらの中間的な形態であり、このような中間的な形態の集合住宅でのみ住居侵入に当たるか否か争いになるのです(川口浩一「政党ビラの配布と住居侵入罪の成否」刑事法ジャーナル9号(2007年)152頁)。
2.まず学者のコメントをいくつか。学者にコメントを求めた新聞社は2紙のみでした(関東版では)。
(1) 日経新聞平成19年12月12日付朝刊42面
「法の適用範囲 広がりを危惧
奥平康弘・東大名誉教授(憲法)の話 立川反戦ビラ事件は自衛隊宿舎だったが、今回は一般住宅のため、法の適用範囲が広がるのではないかと危惧する。判決ではポストへの投函を禁じたマンション管理組合の決議を金科玉条として、個別の住民の情報を受け取る権利性が抜け落ちている。これまではマンションのビラまきが許されるケースもあったが、今回の判決に従えば、住居侵入罪が当たり前に適用される可能性もある。恣意(しい)的な法律の適用が問題になるのではないか。マンションでのビラまきなど、いかなるPR活動も禁じることがいいのか疑問だ。
「政党」のみ排除 整合性が取れず
愛敬浩二・名古屋大教授(憲法)の話 広告などの商業ビラ配布が放置されているのが現状なのに、政党ビラだけを排除するのは整合性が取れない。民主主義社会では多様な意見が流通することが非常に大事で、ビラが必要なければ住民が捨てればよく、コミュニケーション手段として相手にかける負担は小さい。第三者が立ち入ることで生じる「財産権の侵害」の程度も低い。刑事罰を適用すれば表現の自由が過度に抑制されてしまう。」
多くの住居では、政治的ビラだけでなく、地域の情報誌、催し物の案内状、営業の宣伝広告、公共機関や町内会からの通知など多種多様なビラが、毎日何枚も各戸のポストに配布され、個々人が取捨選択して必要な情報を生かしていくのであり、それにより「個別の住民の情報を受け取る権利」の充実を図ることができるのです。「ポストへの投函を禁じたマンション管理組合の決議を金科玉条」として、「個別の住民の情報を受け取る権利」を切り捨ててしまうのは妥当ではないといえるのです。
判決は、住民らが管理組合の決議等を通じてビラ配布のために立ち入り規制を緩和すことも可能であるとしていますが、本来毎日何枚も配布されるビラをいちいち管理組合の決議で決することは非現実的であり、ビラ配布の実態を現実を知らない判断であって妥当でありません。「判決ではポストへの投函を禁じたマンション管理組合の決議を金科玉条として、個別の住民の情報を受け取る権利性が抜け落ちている」点で妥当でないのです。
オートロック方式のマンションを除くマンションにおいては、廊下や階段(共用部分)では、ビラ配りだけでなく、各戸を訪問する友人の行き来、郵便物・新聞等の配達、マンション住民以外の地域住民との交流(例えばバザーやお祭りといった催し)などがなされるが通常です。判決によれば、「マンションでのビラまきなど、いかなるPR活動」も含め、一切を禁じることになってしまい、妥当ではないのです。
「広告などの商業ビラ配布が放置されているのが現状なのに」政治的表現活動の一態様としての「政党ビラだけを排除するのは」、差別的扱い(差別的起訴・処罰)であって、整合性が取れていません。しかも、「ビラが必要なければ住民が捨てればよく、コミュニケーション手段として相手にかける負担」は小さいのに、刑事罰を適用すれば表現の自由を過度に抑制することになってしまいます。刑法の謙抑性の見地や表現の委縮効果の恐れからしても妥当ではないといえるわけです。
(2) 毎日新聞平成19年12月12日付朝刊31面
「◇実情無視した判決−−白取祐司・北海道大大学院教授(刑事訴訟法)の話
今回のマンションは明確な立ち入り禁止の表示がなく、日常的に多数のビラが配布されており、判決は実情を無視した一面的なものだ。表現の自由の重要さも十分検討していない。こうした表現活動を「犯罪」とするのは、言論の自由に大きなダメージを与える。裁判所は権力の行き過ぎをチェックすべきだ。東京高裁は自らの役割を放棄したと言える。
◇「住居不可侵」勝る−−渥美東洋・京都産業大大学院教授(刑事法)の話
表現の自由は重要だが、相手側が任意に受け取る前提で成り立つ。他人から干渉を受けない「住居の不可侵」は、憲法が保護する領域で「表現の自由」よりも勝る。住居の不可侵を侵害する行為を処罰するのは適切である。
伝える側も、街頭で配布するなど、相手側の承諾を得た上で自分たちの主張を訴える方法は他にいくらでもある。」
この2人は刑事訴訟法の学者です。本事案は憲法及び刑法の問題ですから、刑事訴訟法の学者にコメントを求めることは聞く相手を間違っているように思います。もっとも、23日間の逮捕勾留という逮捕手続や差別的起訴の妥当性は刑事訴訟法の問題ですが。ただ、さすがというべきか、白取教授は刑事訴訟法に関わらない点でも妥当な論理を述べています。
渥美教授の説明は、「住居の不可侵」というプライバシーは、憲法13条でなく35条で保障されるとし、無断侵害者は誰に対しても銃をもってしても排除できるとして、プライバシーは表現の自由(憲法21条)より優先するという、渥美教授独自の理論に基づいたものです。渥美教授はほとんどの問題について渥美理論で説明しますが、渥美理論への賛同者は(弟子を除き)皆無です。渥美理論はユニークなものであり学問的には評価に値するとしても、一般的に通用する論理ではありません。なので、なぜ毎日新聞が渥美教授にコメントを求めたのか不可解です。毎日新聞の記者が渥美教授のゼミ生だったのでしょうか。
<12月23日付追記>
渥美理論によれば、公道など「開かれた領域」ではプラバシー保護はないとする。マンションの廊下はマンション住民ならば誰でも通行できるので、個人のプラバシー保護はなく(集団のプライバシーがある?)、仮に集団のプライバシーなるものを認めたとしても、廊下へのガラス戸が無施錠で、管理人室による入館者の統制が実施されておらず、「広告」禁止の意味に取れる張り紙しかなかった状況下では、「閉じた領域」と理解するのは無理があり「開かれた領域」と理解するのが自然だろう。渥美理論からすれば、当然、処罰すべきでないとなるはずだが。
「政治的表現活動の自由の一態様としてのポスティングの自由と刑事責任とをいかに解するか」という論点に関する判例です(判例時報1949号170頁参照)。この東京高裁について検討したいと思います。
1.まず、報道記事をいくつか。
(1) 朝日新聞平成19年12月12日付朝刊1・39面
「政党ビラ配布、逆転有罪 東京高裁 住居侵入罪と認定
政党のビラを配布するために東京都葛飾区のマンションに立ち入ったことで住居侵入罪に問われ、1審・東京地裁で無罪判決を受けた住職荒川庸生(ようせい)被告(60)の控訴審で、東京高裁(池田修裁判長)は11日、1審判決を破棄し、改めて罰金5万円とする逆転有罪判決を言い渡した。検察側は1審で罰金10万円を求刑していた。被告側は「ビラ配布の実態や社会常識を無視して形式的に判断した不当な判決だ」として、 即日、上告した。
最大の争点は「ビラ配布のための立ち入りを罰するのは、憲法21条で保障された表現の自由を侵害するか」だった。判決は「表現の自由は最大限尊重されることが求められている」としたうえで「憲法は公共の福祉のために必要な制限を認めており、たとえ思想を発表する手段であっても他人の財産権などを不当に侵害することは許されない」と指摘。財産権の及ぶ領域に立ち入ったことを罰しても憲法に違反しないとの判断を示した。
被告側は「刑事罰を科すほどの違法性はない」とも主張。判決は、被告がビラを配布した目的自体には「不当な点はない」としたが、「住民らは平穏を守るために政党ビラの配布目的も含めて部外者の立ち入りを禁じており、住民の許諾を得ずに立ち入ってビラを投函(とうかん)しながら滞留した行為は罰するほどの違法性がないとはいえない」と述べた。
そのうえで、1審判決が「ビラ配りを刑事罰の対象とすることへの社会通念は確立していない」などとして住居侵入罪の成立を認めなかったことを「法の適用を誤っている」と結論づけた。」(1面)
この事件は、刑事事件であり、刑事事件としては「合法的な内容のビラを配布する目的で昼間に集合住宅の共用部分に立ち入る行為は、住居侵入罪に当たるか」(松宮孝明「最新判例演習室・刑法」法学セミナー627号117頁)という問題です。
しかし、
と明示しているように、憲法論が最大の争点なのです。「最大の争点は「ビラ配布のための立ち入りを罰するのは、憲法21条で保障された表現の自由を侵害するか」だった」
憲法21条で保障される「表現」については、その内容や手段について広く解するのが一般的であり、ビラ配りも「表現」に含まれることに異論はありません。加えて、大多数の人々にとってビラ配りは、自己の意見を多くの他者に伝えるための簡易かつ効果的な表現手段であることから、ビラ配りは他の表現手段と比べて特異な性質を有しているのです。このようなビラ配りの性質の重要性に注目する必要があったのです。
刑法の問題であるとともに憲法の問題でもあるため、この2つの問題をどのように組み合わせて法解釈を行い、結論を導いていくのかがポイントとなっています。
「ビラ配布 「表現の自由」懸念 被告ら「社会への影響大」
「住民の平穏」を重視するのか、それとも「表現の自由」を尊重するのか――。そのバランスのあり方が問われた刑事裁判で、東京高裁は11日、住民の側に立って有罪の判断を示した。東京都葛飾区のマンションで政党ビラを配った住職荒川庸生被告(60)に言い渡されたのは罰金5万円。しかし、「犯行現場」となったマンションの住民からも、刑事罰を科すことについて「厳し過ぎるのでは」という感想が漏れた。
「東京高裁には憲法はないんですね」
荒川被告は法廷の被告席でつぶやき、首を振った。閉廷後は裁判所前でこぶしを挙げ、「社会常識が通じないところだと分かった。断じて許せない判決だ」と厳しい表情だった。判決後の記者会見でも「たかが罰金判決だが、社会への影響を考えると改めて怒りが燃え上がる」と憤った。
逮捕は予想外だった。マンションの7階からビラを配布しながら下りていくと、3階で住民の男性から抗議を受けた。「今後、あなたのお部屋にはビラを入れませんので、何号室ですか」。そう尋ねたが、110番通報されたという。
記者会見に同席した弁護人は、防犯意識の高まりから部外者の立ち入りに住民の不安があることについては理解を示したうえで、「それが住居侵入罪の成立要素にはならない」と批判。「(高裁判決によれば)集合ポストにビラを入れても違法となりかねず、警察がマンション内で監視する合法的権利も得てしまう。そんな社会がいい社会なのか」と、判決が及ぼす影響を懸念した。
■現場にも賛否
一方、現場となった東京都葛飾区のマンションの住民は、有罪判決に複雑な表情を見せた。「部屋に踏み込んだわけじゃないんだし。当時はほかのチラシもドアポストに入っていた」と女性(58)は言った。男性(45)は「共産党のビラだけ悪いというならば、何らかの意図を感じてしまう」と首をかしげた。
玄関ホールには「関係者以外立ち入り禁止」の立て看板。ただ、オートロックなどはなく、出入りは容易だと住民は話した。別の女性(65)は「一人暮らしやお年寄りがいるから、勝手に入られるのは心配だ。実際、事件が起きてからはドアポストに入るチラシは減った。よいきっかけになったのでは」と語った。
◇
鈴木和宏・東京高検次席検事のコメント 法解釈、社会常識に照らし、極めて妥当で常識的な判決だ。」(39面)
<注>玄関ホールには「関係者以外立ち入り禁止」の立て看板があるという記事だが、これは事件後に設置されたとのことである。なので、この本判決を検討する際には「立ち入り禁止」の看板は除外する必要がある。もっとも、宅急便など住民以外の者も立ち入る必要がある以上、「関係者=住民」に限定できず、意味のある看板か不明だが。
マンションのような集合住宅では、多様な意見が生じるため、マンション管理組合の理事会で多くのことを決定することになりますが、部外者の立ち入り禁止を定めたとしても、部外者の立ち入りをすべて告発し、刑事罰を求めるところまで決定するわけではありません。
「現場となった東京都葛飾区のマンションの住民は、有罪判決に複雑な表情を見せた。「部屋に踏み込んだわけじゃないんだし。当時はほかのチラシもドアポストに入っていた」と女性(58)は言った。男性(45)は「共産党のビラだけ悪いというならば、何らかの意図を感じてしまう」と首をかしげた。
玄関ホールには「関係者以外立ち入り禁止」の立て看板。ただ、オートロックなどはなく、出入りは容易だと住民は話した。別の女性(65)は「一人暮らしやお年寄りがいるから、勝手に入られるのは心配だ。実際、事件が起きてからはドアポストに入るチラシは減った。よいきっかけになったのでは」と語った。」
そのため、ビラを受け取るかどうかは、個々の居住者が独立に判断すべきことで、事前に一括して規制することは許されないのではないか(曾根)という考え方も生じています。
「一人暮らしやお年寄りがいる」のは一戸建て住宅でも同じです。一戸建て住宅で個別に拒否することはあっても、一戸建て住宅の地域すべてでビラ配布を禁止することを決定する町内会決議を行うことはまずありません。一戸建て住宅と異なり、集合住宅ではビラ配布を厳しく規制することが許されるということは、均衡を欠いた対応のように思えます。
「事件の経過
荒川被告は04年12月23日午後2時20分ごろ、支援する共産党の「都議会報告」などを配るためにマンションに入った。各戸のドアポストに投函(とうかん)していたところ住民に通報されて逮捕され、23日間の身柄拘束の後に起訴された。高裁判決の認定によると、マンションにはオートロック方式の玄関はなく、管理人も常駐していなかったが、管理組合理事会はチラシやビラの配布のために立ち入ることを禁止していた。玄関ホールの掲示板には「敷地内に立ち入り、パンフレットの投函、物品販売などを行うことは厳禁です」などと記した紙が張り出されていた。」(39面)
「表現の自由をめぐる最近の判決
04年12月 東京都立川市の防衛庁官舎での反戦ビラ配布をめぐり、市民団体のメンバー3人が住居侵入罪に問われた事件で全員に無罪判決(東京地裁八王子支部)
05年12月 立川事件の控訴審で3人に罰金10万〜20万円の逆転有罪判決(東京高裁)
06年6月 社会保険庁職員が共産党機関紙を配って国家公務員法=政治的行為の制限=違反の罪に問われた事件で職員に罰金10万円執行猶予2年の有罪判決(東京地裁)
8月 葛飾政党ビラ配布事件で無罪判決(同)
07年12月 葛飾政党ビラ配布事件で罰金5万円の逆転有罪判決(東京高裁)」(抜粋)(39面)
この最近の判決をみると、共産党の配布物を狙い撃ちして処罰を求めているようにも受け取れます。警察や検察が共産党のみ目を付けて妨害を行うことは昔も今も変わらないようです。
(2) 東京新聞平成19年12月12日付朝刊26面
「政党ビラ配り逆転有罪 罰金5万円 僧侶の住居侵入認定
2007年12月12日 朝刊
政党ビラをマンションのドアポストに投函(とうかん)したとして、住居侵入の罪で逮捕、起訴された東京都葛飾区の僧侶荒川庸生(ようせい)被告(60)の控訴審判決公判で、東京高裁(池田修裁判長)は十一日、「立ち入り禁止を知りながら中に入ったのは違法」として、一審の無罪判決を破棄、罰金五万円(求刑罰金十万円)の有罪判決を言い渡した。荒川被告は同日、上告した。
判決は焦点となった「表現の自由」との関係について「憲法で無制限に保障されたものではなく、他人の権利を不当に害することは許されない」と述べた。ビラの配布という草の根の政治活動への制限につながりかねない判決で、今後、市民運動を委縮させる可能性が懸念される。
一審判決は「ドアポストに配布する目的で、昼間に短時間、通路などに立ち入ることは許されないという社会的な合意は成立していない」と判断。「政党ビラ配布のための立ち入りを禁じる表示はなかった」として、無罪を言い渡していた。
これに対し二審判決はマンション管理組合の理事会がビラ投函禁止を決め、玄関ホールの掲示板に二枚の張り紙を掲示したことを指摘。「住民から張り紙への異論や苦情はなく、立ち入り禁止は住民の総意といえる。禁止を知りながら許可なく立ち入った行為は住居侵入にあたる」と認定。
さらに、「玄関ホールを含めてビラ配布のための立ち入りは予定されていないのは明らか」と指摘。立ち入り禁止の意思表示が来訪者に伝わりにくかったと認定した一審とは異なり、「禁止を伝える措置は取られていた」と判断を覆した。
荒川被告は二〇〇四年十二月二十三日、葛飾区のマンションでドアポストに共産党の「都議会報告」や「区議会だより」を投函。住人に通報され、逮捕、起訴された。」
この事件でも問題となったビラは、政治的表現活動の自由に関するものでした。
「荒川被告は二〇〇四年十二月二十三日、葛飾区のマンションでドアポストに共産党の「都議会報告」や「区議会だより」を投函。住人に通報され、逮捕、起訴された」
有権者にとっては、都議会・区議会の様子は選挙権行使のために必要な情報であるだけでなく、有権者の責務として知るべき内容です。また、都議会議員や区議会議員としても、日々の政治活動はもちろん、特に議会での活動は選挙民から選ばれた者として、どこの政党であろうとも、自ら明らかにする政治的責任があります。
そうすると、「都議会報告」や「区議会だより」という有権者及び議員にとって必要な情報について、同じビラであるからといって排除するようなことは、有権者及び議員の責務として妥当性を欠くといえるのです。
「政党ビラ配り逆転有罪 『高裁に憲法ないのか』 被告僧侶怒りあらわ
2007年12月12日 07時09分
「憲法を無視した不当な判決。表現の自由が奪われれば思想・信条の自由も奪われる。最高裁まで闘い抜く」。マンションのドアポストに政党ビラを投函(とうかん)した行為の違法性が争点になった裁判の控訴審で、東京高裁から逆転有罪判決を受けた被告の荒川庸生(ようせい)さん(60)は十一日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、怒りで声をふるわせた。
逆転有罪は、まったく考えていなかった結果だった。「こんなことが犯罪になるなんて…」。荒川さんは言い渡しの瞬間、ぼうぜんと裁判長を見上げ最後に「東京高裁に憲法はないんですね」と法廷でつぶやいた。
三年前の突然の拘置は正月をはさんで二十三日間にも及んだ。判決は未決拘置日数(二十一日間)を一日五千円に換算して刑に参入することを認めており、すでに罰金五万円は払い終えた計算になる。「有罪ありきの政治的な判決。この五万円が日本社会にどれだけの影響を与えるかと考えると、あらためて怒りがこみ上げる」と荒川さん。
中村欧介弁護士は「判決は、住民がビラを通して情報を知る権利も侵害している」と指摘。「張り紙があれば住居侵入罪が成立するというのは、一般社会の実態をまったく考慮していない形式判断。世の中の集合住宅へのビラ投函はすべて刑事罰の対象になってしまう」と話す。
政治色の強いビラだからねらい撃ちされたのではないか−。支援者からはそんな疑念も持ち上がっている。
このマンションでは、宅配ピザ業者らがチラシをドアポストに投函するために頻繁に出入りしていたことが、証拠採用された防犯ビデオの映像で明らかになっている。
「住民の総意で立ち入りを禁じていた」と指摘した高裁判決。中村弁護士は、住民の中に「ビラは不要なら捨てればいい。どうしてこんなことで犯罪になるのか分からない」という声もあったことを明らかにした。」(東京新聞平成19年12月12日付朝刊26面)
この記事には、注目すべき点が取り上げられています。
「三年前の突然の拘置は正月をはさんで二十三日間にも及んだ。判決は未決拘置日数(二十一日間)を一日五千円に換算して刑に参入することを認めており、すでに罰金五万円は払い終えた計算になる。」
通常、罰金刑を宣告する場合、未決拘置日数を刑に参入することはしませんが(参入したらその罰金を科する意味がなくなる。参入すると温情判決という評価に)、この判決では参入しており、しかも、実質0円の罰金刑になってしまっています。これでは処罰の必要性がないと表明したのと変わりがないのです。
要するに、1審判決は素直に住居侵入罪を不成立にしたのであり、これに対して2審判決は形式的には有罪(住居侵入罪成立)としつつも、実質的には不処罰としたわけであり、1審・2審判決とも処罰の必要性がないとした事件だったのです。
同じく処罰の必要性がないとするのであれば、1審判決のように素直に無罪とした方が妥当なように思います。後々判例として基準となるのは判決文のところだけであり、政党ビラ配りでも処罰されるという基準のみが残ってしまうからです。
(3) 日経新聞平成19年12月12日付朝刊42面
「政党ビラ配布、逆転有罪・東京高裁「表現の自由、無制限でない」
政党ビラを配るため東京都葛飾区のマンションに立ち入ったとして住居侵入罪に問われ、1審で無罪判決を受けた僧侶、荒川庸生被告(60)の控訴審判決が11日、東京高裁であった。池田修裁判長は「憲法は表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、他人の財産権を不当に害することは許されない」として東京地裁の無罪判決を破棄、罰金5万円(求刑罰金10万円)の逆転有罪判決を言い渡した。
2審判決は、住民がビラやチラシの配布禁止を明示している場合、各戸のドアポストだけではなく、集合ポストへの配布のための玄関ホールへの立ち入りも「住居侵入罪を構成する」と厳格な判断を示した。被告は判決を不服として最高裁に上告した。
池田裁判長は判決理由で、住民がチラシなどの投函(とうかん)禁止の張り紙を玄関ホールに掲示していたことを挙げ、「被告はビラ配布が許容されていないことを知っており、エレベーターや各階廊下はもちろん、玄関ホールへの立ち入りも住居侵入罪にあたる」と判断した。
弁護側は、政党ビラ配布のためのマンション立ち入りを処罰するのは「表現の自由」を保障する憲法に違反するとも主張した。この点について同裁判長は「被告の立ち入りの目的に不当な点はない」としつつも、「住民は住居の平穏を守るため、政治ビラ配布も部外者のマンション立ち入りを禁止できる。住居侵入罪を適用しても憲法違反にならない」と弁護側主張を退けた。
1審判決は同被告がマンションに立ち入ったのが昼間の7、8分と短時間だったことなどから、「階段や廊下など共用部分への短時間の立ち入りについて、刑事罰の対象とすることへの社会通念は確立していない」と判断。住居侵入罪は成立しないとして無罪とした。
判決によると、荒川被告は2004年12月、葛飾区内の7階建てマンションに立ち入り、各戸の玄関ポストに共産党の「都議会報告」などのビラを投函した。
鈴木和宏・東京高検次席検事の話 極めて妥当で常識的な判決だ」
「憲法 大事にしない」被告が批判
無罪判決から一転、有罪を言い渡された僧侶の荒川庸生被告(60)は判決後に記者会見し、「憲法の番人であるべき裁判所が憲法を大事にしていない。思ってもみなかった不当判決だ」と憤りをあらわにした。
政党ビラ配布のためにマンション内に立ち入った行為に刑事罰を科した高裁判決について、「ビラ配布という表現方法が奪われれば、思想・良心の自由まで奪われてしまう。上告して闘いたい」と強調した。
弁護団は「判決に従えばポスティング業者が集合ポストに広告を入れることさえ犯罪になる。国民生活の実情を無視した判決だ」と批判した。
この日の法廷で、同被告は判決理由が述べられている間、硬い表情で裁判長をじっと見つめ続けた。傍聴席の支援者からは「不当判決だ」などと不満の声も上がった。」
この記事でも判決中、注目すべき点を取り上げています。
「池田裁判長は判決理由で、住民がチラシなどの投函(とうかん)禁止の張り紙を玄関ホールに掲示していたことを挙げ、「被告はビラ配布が許容されていないことを知っており、エレベーターや各階廊下はもちろん、玄関ホールへの立ち入りも住居侵入罪にあたる」と判断した。」
玄関ホールであっても立ち入ると住居侵入に当たると判断したため、この判決からすると、かなり広範囲に処罰されることになります。
「チラシなどの投函禁止の張り紙」は玄関ホールに掲示しているのですから、玄関ホールに入らないと張り紙が分からないはずですが、張り紙を見る前から玄関ホールにはいった途端、住居侵入罪が成立するわけです。そうすると、立ち入り禁止の張り紙を知っていてもいなくても、住居侵入罪を認めるのですから、なぜ、「住民がチラシなどの投函(とうかん)禁止の張り紙を玄関ホールに掲示していたことを挙げ」たのか、論理が通っていないのです。
「住民がチラシなどの投函(とうかん)禁止の張り紙を玄関ホールに掲示していたこと」を理由に挙げるのであれば、張り紙を見るために玄関ホールまで立ち入ることは認める必要があります。論理が通らない判決文であるため、「玄関ホールへの立ち入りも住居侵入罪にあたる」とした部分は、最高裁では否定されるものと思われます。
1.まず報道記事から。
(1) 朝日新聞平成19年12月11日付朝刊1面
「名寄せ困難な年金、1975万件 宙に浮く5000万件
2007年12月11日06時06分
基礎年金番号に統合されず、持ち主の分からない5000万件の「宙に浮いた年金記録」の内訳の全容が10日、社会保険庁の調査で分かった。コンピューター上の照合作業で本人を特定できた記録は2割にあたる1100万件にとどまった。厚生年金を脱退済みなど、統合の必要のない記録が3割あるとし、4割近くの1975万件は入力ミスなどで本人の特定が困難とした。
政府・与党は来年3月末までに「名寄せを完了する」としていたが、持ち主が分かったのは一部にすぎず、記録問題の解決にはほど遠いことが浮き彫りになった。
調査結果は現時点での作業をもとに推計した。11日にも発表される。
年金記録は現在、1人で複数の記録をもつ人もおり、記録件数に比べて持ち主の人数は少なくなる。このため、特定できた1100万件は、850万人分に相当する。
照合作業では、年金の受給者と現役世代の加入者を合わせた計1億300万人の記録と、宙に浮いた5000万件を突き合わせるコンピュータープログラムを開発し、持ち主を捜している最中だ。
作業の結果、氏名、生年月日、性別の3条件が一致したのは、年金受給者では300万件(250万人分)。現在3700万人いる年金受給者のうち、少なくとも約7%にあたる250万人が本来の年金の一部を受け取れず、受給漏れを起こしている計算だ。
また、現役世代で先の3条件が一致したのは800万件(600万人分)。両方を合わせ、本人が特定できたのは計1100万件、全体の21.6%とした。社保庁はこれらの記録について、12月中旬から本人に該当の可能性を知らせ、確認を求める。
社保庁は今後、データを修正中で名寄せの成否が不透明な「氏名欠落」の470万件などを対象に、検索条件を広げて持ち主を捜す「2次名寄せ」も実施する。この作業で持ち主が特定できそうなのは「100万〜200万人」と見込んでいる。3月末までに持ち主が分かるのは最大でも、850万人にこれらを加えた1000万人程度となりそうだ。
一方、本人の特定が困難な記録は、1975万件、全体の38.8%に達する見込み。このうち、社保庁によるコンピューターへの入力ミスと考えられる記録が945万件、漢字の氏名をカナに変換するときの誤りが240万件。これらのずさんな事務上のミスだけで宙に浮いた5千万件の2割以上を占めている。
これらの記録については、コンピューター上だけでなく、紙台帳などの原簿にさかのぼって照合するなどして、来年4月以降も本人の特定作業を続けるという。」
(2) 産経新聞平成19年12月11日付朝刊1面
「年金統合2割困難 945万件 首相公約に黄信号
2007.12.11 00:56
社会保険庁は10日、基礎年金番号に未統合で宙に浮いた年金記録約5000万件のうち、18・5%にあたる約945万件が、手書き台帳と照合したとしても統合が難しい記録であるとの調査結果をまとめた。社保庁は、こうした記録が一定程度出ることを認めていたが、5件に1件もが特定困難な記録であることが判明したことで、「最後の1人、最後の1円まで確実に年金を支払う」との福田政権の公約は実現が難しくなった。
調査結果は、11日の自民党の年金記録等適正化推進チーム(座長・衛藤晟一厚生労働部会長)に報告される。
調査結果によると、今後手作業による解明が必要な記録は、全体の38・8%の1975万件に上った。このうち945万件が、手書き台帳との照合だけでは特定が困難で、統合が難しい記録として分類された。
大半は、手書き台帳からオンラインシステムに移行する際の社保庁職員の入力ミスや、加入者が就職採用条件をクリアするために年齢を虚偽申請したケースとみられる。外国に移住した人や、日本で一時的に働いていた外国人の記録も含まれるという。
入力ミスや年金加入時に生年月日、氏名を虚偽申請した記録については、本人が名乗り出ない限り手がかりすらつかめないことが想定されるという。このため、社保庁は「最終的に特定できないものが相当数残る」(幹部)とみている。ただ、平成9年の基礎年金導入以前は1人で複数の年金番号を持っていたため人数を特定するのは困難だ。
1975万件には、すでに亡くなった人のものとみられる記録や、婚姻で氏名が変わった人の記録も含まれていた。これらは自治体公報などを通じて申し出を呼びかける。オンライン化の際に氏名の漢字を変換するソフトが誤入力していたケースについては、照合プログラムの一致条件を緩和して調べ直す。
一方、氏名、生年月日、性別の3条件がオンライン記録と一致し、有力な手がかりが見つかったのは1100万件(850万人分)。これらについては17日から順次「ねんきん特別便」を発送し、確認を呼びかける。」
2.自民党政府は、次のように公約していました。
「5000万件の記録について、政府・与党は参院選前の7月5日にまとめた対策で、「2008年3月までに照合・通知を完了する」としていた。(中略)
舛添厚労相は8月28日の就任時の記者会見で、5000万件の記録について、「最後の1人、最後の1円までがんばってやるということを公約として申し上げた」などと述べ、記録の持ち主の全員特定を明言していた。
また、安倍前首相も7月の参院選挙中に、「最後の1人にいたるまで、記録をチェックして、まじめにこつこつと保険料を払っていただいた皆さんの年金を正しくきっちりとお支払いしていくこと」(7月21日、鳥取県米子市内の街頭演説で)などと述べ、すべての記録の特定を約束していた。」(2007年12月12日1時40分 読売新聞)
「4割近くの1975万件は入力ミスなどで本人の特定が困難」なのですから、公約実現は不可能になり、公約違反になることが明白になりました。元々、「「消えた年金記録」問題:突如として柳沢厚労相が謝罪、5000万件の照合来年5月までに照合明言〜本当に可能なのか?」(2007/06/05(火) 08:11:54)で触れたように、最初から照合・通知を完了することが困難であるという見方が大勢でした。今回の報道で、公約実現が不可能であることが正確なデータという形で明白になったわけです。
公約違反であることが明らかになっただけでなく、安倍前首相は、参院選挙中に、「最後の1人にいたるまで、記録をチェックして、まじめにこつこつと保険料を払っていただいた皆さんの年金を正しくきっちりとお支払いしていくこと」とまで明言したのです。首相が率先して公約を明言していたのですから、政府は国民に対して、公約違反となったことにつき謝罪を行い、対応策をはっきり示すべきです。
また、舛添厚労相は就任時の記者会見で、5000万件の記録について、「最後の1人、最後の1円までがんばってやるということを公約として申し上げた」とまで明言していたのです。ですから、舛添厚労相は、公約違反をしたことにつき国民に対して謝罪を行い、責任を取って辞任することが最も適切な判断です。
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「死刑執行は前回8月の3人執行からわずか3カ月半」であり、「国会開会中の執行は、長勢甚遠前法相当時の4月27日以来」。「鳩山法相の執行命令は初めてで、福田内閣での執行も初」であり、死刑確定者は「今回の執行で104人」となりました。「年間の執行者数は9人となり、1976年以来最多となった」のです( 【共同通信・2007/12/07 13:23】)。こういった過去の死刑執行例と比較すると、今回の執行はかなり異例なものであったことが分かります。
1.まずは、死刑を執行したとの記事と、アムネスティや国連人権高等弁務官による声明を引用しておきます。
(1) 朝日新聞平成19年12月7日付夕刊15面(4版)
「死刑、初の氏名公表 法務省、3人執行と発表
2007年12月07日12時09分
法務省は7日、3人の死刑を執行した、と発表した。法相が執行命令書に署名しなくても執行が進む「死刑の自動化」を提案した鳩山法相の下での初めての執行となった。発表にあたり、同省は初めて、対象となった死刑囚の氏名と犯罪事実、執行場所を公表。「情報公開することで死刑制度に対する国民の理解を得られる」との狙いから、実施の事実だけを伝えて氏名などは一切公表しない従来の方針を転換した。
07年中の執行は、長勢法相時代の6人とあわせて計9人で、年間の執行者数としては77年以降で最多となる。刑事事件の厳罰化の流れのなかで、死刑確定者は増え続けており、この日の執行後の生存死刑囚は104人となった。
発表によると、執行の対象になったのは藤間静波(せいは)死刑囚(47)と府川博樹死刑囚(42)、池本登死刑囚(74)の3人。藤間、府川両死刑囚は東京拘置所で、池本死刑囚は大阪拘置所でそれぞれ執行された。
発表された犯罪事実やそれぞれの確定判決などによると、藤間死刑囚は81〜82年、横浜市で盗み仲間の男性(当時20)を刃物で刺殺したほか、神奈川県藤沢市の女性(同16)ら一家3人を刺殺。一緒に逃亡していた元店員の少年(同19)も兵庫県尼崎市で刺殺した。
府川死刑囚は99年、女性との交際費に困って東京都江戸川区の無職女性(同65)に借金を申し込んだが断られ、女性とその母親(同91)を刺殺した。
池本死刑囚は85年、隣人から自分の畑にごみを捨てられるなどの嫌がらせを受けたなどと思い込み、徳島県内の自宅にあった散弾銃で近所に住む3人を射殺し、1人に重傷を負わせた。」
「制度へ理解求める狙い
法務省は初めて氏名を公表した理由について「事件の被害者をはじめとする国民から情報公開をすべきとの要請が高まるなか、死刑が適正に執行されていることを国民に理解してもらうために公開が重要と考え、法相が今回の公表を決断した」と説明している。
もともと法務省は執行の事実についても、法相が記者会見などで言及した例外的なケースを除き公表していなかった。
98年11月、当時の中村法相の「情報公開の観点からも国民に知らせるべきだ」との考えに基づき、執行の事実だけは公表するようになった。しかし、具体的な死刑囚の名前や執行場所については「死刑確定者の遺族や、他の死刑確定者の感情を考えた結果、公表はふさわしくない」との理由で伏せてきた。
このため、これまでは死刑廃止を訴える団体や報道機関などが執行対象者を独自に割り出してきた。
その一方で法務省は、国民の大半が死刑制度の存続に賛成している現状を踏まえ、「秘密主義」との批判を受け続けるよりも「公開したほうが制度への理解が得られる」という観点から、省内で公表に向けた検討を進めつつあった。
そんな最中に就任した鳩山法相は「死刑の自動化」発言後も、絞首刑による執行に疑問を示すなど「問題提起」を繰り返した。すでに検討を始めていた法務省側にとって、氏名公表は、法相の意向を比較的実現しやすいテーマだった。(市川美亜子)」
(2) 日経新聞平成19年12月7日付夕刊23面(4版)
「3人の死刑執行 氏名公表 母娘強殺など 法務省が初
法務省は7日、死刑囚計3人の刑を執行したと発表した。死刑の執行は今年8月以来で、鳩山邦夫法相の就任後では初めて。この日の執行で、死刑確定囚は計104人となった。同省は死刑囚の家族らに配慮して氏名を公表していなかったが、死刑執行が適正に行われていることを国民に知らせるため、初めて氏名を明らかにした。
鳩山法相は7日、衆院法務委員会で「大きな心の痛みがあるが、治安、安全、被害者、遺族の皆さんの気持ち、世論に答える道だと思うと、死刑を執行せざるを得ないと考えた」と述べ、氏名の公表については「私が判断した」と語った。
執行されたのは、1981年から82年にかけて、母子3人を含む計5人を殺害した殺人などの罪で死刑が確定した藤間静波死刑囚(47)=東京拘置所で執行=と、府川博樹死刑囚(42)=同=と池本登死刑囚(74)=大阪拘置所で執行。
確定判決によると、藤間死刑囚は81年10月、横浜市で窃盗仲間の男性(当時20)を刺殺。82年5月、神奈川県藤沢市の会社員宅で、交際を断った女子高生(同16)と母親(同45)、妹(同13)を殺害、翌日には共犯の少年(同19)を口封じのために刺殺した。
府川死刑囚は99年4月、東京都江戸川区の女性(同65)宅で、借金を申し込んだが断られたため、女性と母親(同91)を包丁などで刺して殺害した。1、2審で死刑判決を受けて上告したが、取り下げていた。
池本死刑囚は85年6月、徳島県内で同死刑囚のユズ畑に勝手にごみを捨てたと思い込み、隣人で親類の男性(同46)とその妻(同54)を猟銃で射殺。さらに近所の男性(同71)も近くの路上で射殺するなどした。
執行前に公開を
福島至・龍谷大学法科大学院教授(刑事法)の話 秘密裏に行われてきた死刑執行に関する情報を開示すること自体は評価できる。ただ「適正に執行されていることを国民に知らせる」という趣旨であれば、執行前に情報公開すべきだ。執行日が決まってから処刑されるまでの手続きが開示されてなければ、本当に「適正な執行」だったかどうか外部から検証することはできない。情報公開のあり方としては中途半端だと思う。
執行、誠に遺憾
日弁連会長
日本弁護士連合会の平山正剛会長は「死刑制度の存続について国民的議論が尽くされるまで執行停止を法務省に要請してきたが、今回の死刑執行と合わせ、過去1年間に13人の死刑が執行されたのは誠に遺憾だ」などとするコメントを発表した。」(以下、解説記事は省略)
(3) アムネスティ・インターナショナル日本「日本支部声明 : 死刑執行抗議声明」(投稿日時: 2007-12-7 13:14:02)
「日本支部声明 : 死刑執行抗議声明
死刑の執行に抗議します。
本日、死刑確定者の府川博樹さん(東京拘置所)、藤間静波さん(東京拘置所)、池本登さん(大阪拘置所)に対して死刑が執行されました。
今回の死刑の執行についても、本人や家族を含め誰にも事前の予告はなく、突然に行われました。今回は執行後に執行された死刑囚の氏名が公表され、加えて先月は国会の法務委員会が刑場視察を許可され、私どもの死刑廃止活動について法務大臣が直接に話を聞く機会が設けられるなど、死刑制度をめぐる秘密主義に風穴をあける動きがあることは評価します。しかし一方で、今年は執行数が3回に増加し、昨年を上回る9人の死刑がこの1年間に執行されたことに強く抗議します。
世界の死刑廃止の潮流は、政治制度や宗教、文化の差異を超えて広がっています。そのような中で日本がこの流れに逆行し続けていることに、アムネスティ・インターナショナルは懸念を表します。2006年に死刑を実際に執行した国は、日本を含むわずか25カ国であり、G8諸国で死刑を存置している国は日本と米国のみとなりました。その米国でも死刑廃止の議論が活発化し、執行数、死刑判決数は年々減少しています。
国際連合では11月15日、世界規模で死刑の執行停止を求める決議が国連第3部会で採択されました。この決議は、〇犒最兒澆鯒案に置いて、執行を停止する、∋犒困膨礁未垢觴圓慮⇒の保護を確保する保障規定をさだめる国際基準を遵守し、死刑の適用を厳しく制限し、死刑相当犯罪の数を削減するよう各国に求めています。アムネスティはこの決議採択を歴史的な快挙とみなし、歓迎しています。同決議案は今月中旬に総会に提出され、採択される見通しです。
国連拷問禁止委員会は、2007年5月に拷問等禁止条約の実施状況に関する第一回日本政府報告書に対して最終見解を発表しました。委員会は死刑確定者の処遇状況に関し、日本の死刑制度に関する多くの条項が「拷問あるいは虐待に相当しうる」とし、改善に向けてあらゆる手段をとるよう勧告しました。また、死刑確定者の法的保障措置が制約されている点についても深刻な懸念を表明し、死刑の執行をすみやかに停止し、死刑を減刑するための措置を考慮し、恩赦を含む手続きを改善し、すべての死刑事件の上訴権を必須とし、死刑執行が遅延した場合は死刑を減刑することを確実に法律で規定すべきと勧告しました。
世界中が日本の死刑制度の行方を見守っています。国連をはじめとする死刑執行停止に向けた国際的な圧力は、今後大きくなることが予想されます。死刑制度という究極の人権侵害を廃止する一歩を、日本が近い将来に踏み出すことをアムネスティは期待しています。
2007年12月7日
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本」
(4) 読売新聞平成19年12月8日付夕刊14面(4版)
「国連人権高等弁務官、日本の死刑執行に「遺憾」
【ローマ=松浦一樹】国連人権高等弁務官事務所(本部ジュネーブ)のルイーズ・アーバー高等弁務官は7日、東京と大阪で同日、死刑囚3人の刑が執行されたことについて、「遺憾」とする声明を発表した。
高等弁務官は、刑が執行された死刑囚の中に70歳代の高齢者が含まれていたことを問題視しており、声明の中で、「高齢者に対する刑の執行に正当な理由は見あたらない」とした。
(2007年12月8日10時33分 読売新聞)」
(5) 以前から、死刑を執行した対象者の氏名や執行場所は明らかになっていました。
「98年11月、当時の中村法相の「情報公開の観点からも国民に知らせるべきだ」との考えに基づき、執行の事実だけは公表するようになった。しかし、具体的な死刑囚の名前や執行場所については「死刑確定者の遺族や、他の死刑確定者の感情を考えた結果、公表はふさわしくない」との理由で伏せてきた。
このため、これまでは死刑廃止を訴える団体や報道機関などが執行対象者を独自に割り出してきた。」(朝日新聞)
98年、当時の中村法相は、「死刑の執行は裁判所の判決に基づいて行う行政行為だから、きちんと国民に知ってもらう必要がある」として(毎日新聞平成19年12月8日付3面「クローズアップ2007)、98年11月以降、「本日、死刑確定者○名に対し死刑を執行した」という形で公表していたのです(毎日新聞平成19年12月7日付夕刊)。そして、具体的な死刑囚の名前や執行場所については、「死刑廃止を訴える団体や報道機関などが執行対象者を独自に割り出してきた」ため、死刑を執行した対象者の氏名や執行場所は明らかだったのです。
今回、法務省側が氏名、犯罪事実、執行場所を明らかにしたことは、既成事実であったことを追認しただけであって、到底、「情報公開の流れ」(読売新聞)、「事件の被害者感情に配慮」(読売新聞)したとか、「閉鎖性、一歩脱却」(毎日新聞12月7日付夕刊)などいう大層なものでもなく、法務省が述べるような「死刑が適正に執行されていることを国民に理解してもらうために公開」したという程のことではないのです。ですから、当然ながら真の意図は何だろうかと、疑ってかかる必要があります。
(6) 「国際連合では11月15日、世界規模で死刑の執行停止を求める決議が国連第3部会で採択されました」が、日本もこの決議に参加していたのですから、民主主義国家であればこの決議を尊重し、死刑の執行を停止すべきだったのです。また、「国連拷問禁止委員会は、2007年5月に拷問等禁止条約の実施状況に関する第一回日本政府報告書に対して最終見解を発表」し、日本政府に対して「死刑の執行をすみやかに停止」することを勧告しています。日本国は、この拷問禁止条約に加入しているのですから、勧告を受け入れ、死刑の執行を停止すべきでした。
しかし、日本政府は、国連第3部会での死刑の執行停止を求める決議を無視し、国連拷問禁止委員会の勧告を無視したのです。要するに、日本政府は民主主義のルールを無視し条約遵守を行わなかったのですから、人権を軽視し法秩序を無視する国であることを世界に向けてアピールしたのです。(刑事訴訟法は6ヶ月以内に死刑執行する旨を規定するが、法律よりも条約が法形式上優位にあるため、条約の規定を遵守することになる。念のため。)
1950年の第5回国連総会において、世界人権宣言が採択された12月10日を「人権デー」と定めました。人権デーはすべての加盟国に、人権擁護の立場からさまざまな取り組みや関連行事を行うよう呼びかけており、日本でも、12月4日から人権デーの10日を最終日とする1週間を「人権週間」と定め、人権を尊重する考えを普及、高揚させるための啓発活動が全国各地で行われます。
それなのに、日本政府は12月7日に死刑を執行したのです。人権週間を分かっていながらの死刑執行なのですから、12月7日の死刑執行は、人権週間の意義や「人権デー」を定めた国連決議を否定するに等しい行動でした。 「国連人権高等弁務官事務所のルイーズ・アーバー高等弁務官は7日、東京と大阪で同日、死刑囚3人の刑が執行されたことについて、『遺憾』とする声明を発表」するのも当然の反応です。
「国連をはじめとする死刑執行停止に向けた国際的な圧力は、今後大きくなることが予想され」るにもかかわらず、日本政府は死刑を執行したのですから、国際社会の中でどう説明するのでしょうか? またしても、日本国が国際社会の中で軽視される要因をつくったといえるのではないかと思うのです。
過去の自衛隊派遣の行動はもとより、自衛隊のインド洋での給油活動(無料ガソリンスタンド)にしても、残念ながら当事国はあまり感謝しておらず、国際社会のなかでもあまり高く評価されているわけではありません。これは、日本が国際社会のなかで軽視されている証拠といえるのです。またしても、日本国が国際社会の中で軽視される要因をつくったことは、今後の外交面や国際社会での影響力にも影響するのではないかと懸念しています。
また、北朝鮮による拉致問題は法秩序への挑戦であり人権問題です。拉致被害者奪還のためには各国による圧力が必要なのですが、各国は協力的とはいえません。日本国が、法秩序を無視し人権問題を軽視しておきながら、各国に対して協力を求めても説得力がありません。日本と日本国民は、北朝鮮による拉致問題を解決する気がないのでしょうか?
日本国民は、国際社会で日本がおかれている状況を意識しておくべきなのです。
なお、検察側は10月の最終弁論の中で、元少年は上告審やこの差し戻し審で、それまで認めていた事実関係を争い、反省するどころか事実を捏造し、遺族にさらなる苦痛を与えているとして元少年への死刑を求めています(TBS Newsi(12月4日17:54)「光母子殺害、差し戻し控訴審が結審」)。
1.まず報道記事をいくつか。
(1) 中国新聞 '07/12/5
「殺意と乱暴目的を再び否定 光母子殺害結審 '07/12/5
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光市母子殺害事件で殺人や女性暴行致死などの罪に問われた犯行時十八歳だった男性被告(26)の差し戻し審公判が四日、広島高裁であった。弁護側が最終弁論をし、殺意や乱暴目的をあらためて否定するとともに、「生きる道しるべを示す判決を」と求め結審した。死刑の適否が焦点となる判決は、来年四月二十二日の予定。
▽来年4月22日判決
弁護側は最終弁論で、被告が乱暴目的や殺意を認めた捜査段階の自白調書について、「捜査官が赤子の手をひねるように作った虚偽の調書で信用性はない」と主張。差し戻し審で被告は記憶通りに証言し、真実が明らかになったと説明した。
弁護側の依頼で法医鑑定や精神鑑定をした専門家による法廷での証言でも最高裁の認定に「事実誤認があることが明らかになった」と述べた。
本村洋さん(31)の妻弥生さん=当時(23)=の自宅を訪ねる前の現場アパートでの戸別訪問は「物色行為ではなく、人恋しさから寂しさを紛らわすためだった」などとし、乱暴目的の犯行と認定した最高裁の判断を否定した。
弥生さんと長女夕夏ちゃん=同(11カ月)=の二人に対する犯行態様の認定にも反論。弥生さんの首を両手で強く絞めたとする行為、夕夏ちゃんの首にひもを巻いて締め付けて殺害したなどとする認定はいずれも「遺体の痕跡と矛盾する」とした。「両手ではなく、右の逆手で押さえた」「ひもで緩く結んだだけ」など、それぞれ別の態様も示して殺意を否定、傷害致死罪の適用を求めた。
また「父親の虐待により極めて精神が未成熟だった少年による偶発的な事件」「被告は贖罪(しょくざい)の中で生きることを決意した」などとして減刑を求めた。(門戸隆彦)
▽クリック 光市母子殺害事件
1999年4月14日、光市のアパートの会社員本村洋さん(31)方で、妻の弥生さん=当時(23)、長女夕夏ちゃん=同(11カ月)=の遺体が発見された。山口県警は4日後、男性被告を殺人容疑で逮捕。山口地検は殺人と女性暴行致死、窃盗の罪で起訴した。検察は死刑を求刑、1、2審は(1)乱暴目的の犯行だが殺害の計画性がない(2)犯行時の年齢は(死刑が適用できる)18歳になりわずか30日で内面が未熟で更生の可能性があるとして無期懲役とした。昨年6月の最高裁判決は1、2審が死刑を回避した理由を退け、特に酌量すべき事情がないか審理をやり直すよう広島高裁に差し戻した。
▽最終弁論の要旨
広島高裁で四日開かれた、光市母子殺害事件の差し戻し審で、弁護側最終弁論の要旨は次の通り。
【殺害行為の不存在】
殺意をもって弥生さんの首を両手で圧迫したものではない。
被告は新供述のように、右の逆手で首を押さえ、気道と一緒に静脈を圧迫した。片手の逆手では体重をかけられず被害者の抵抗を受けて現実的ではない、とする検察側の主張は誤り。
被告は首を圧迫している認識さえなく、殺人の故意は認められない。夕夏ちゃんを床にたたきつけた事実も、頭部の傷などの鑑定からは言えない。首を両手で絞めた痕跡はなく、ひもによる圧迫も強く絞めてはいない。顔を見られて犯行の発覚を恐れる必要はなく殺害の動機はない。本件は傷害致死罪となる。
【女性暴行の不存在】
一審判決は女性暴行の計画性を認めているが、(本村さんの住む)アパートを訪問した際、ほかに訪問した住民と話した内容は変わらず、カッターナイフで弥生さんを脅してもいない。
被告は人恋しい心理状態で、弥生さんに亡くなった実母を感じて抱きついた。無理やり、人の意思を無視してでも性交しようとする意思・意欲の表れとしての暴行行為は見いだせない。
【情状】
父親からのすさまじい虐待は、被告の心身の成長に大きな影響を与えた。母親への暴力も目の当たりにした。父親の暴力から互いをかばい合うことで母子一体の共存関係が形成された。
その母親の自殺に直面した。フラッシュバックを繰り返し、虐待による心的外傷も受けた。精神の未熟さから、犯行当時の被告は退行状態、パニック状態に陥っており、女性暴行目的の計画的犯行ではなかった。
【検察官の批判】
被告人質問で、被告は遺族の意見陳述を丁寧にメモしていた。検察官は「すっと一本ペンを引いて一行削除した」と批判した。被告は「万死に値する」など被害者遺族からの厳しい言葉を書き留めていただけだ。
あらぬ嫌疑を掛けられ、非難された被告は「なめないでいただきたい」とも言った。被告の言葉は場をわきまえない言葉だった。被告は裁判所や遺族に申し訳ないことをしたと謝罪した。自分を恥じ、更生に向けての歩みは始まっている。
【量刑】
本件は精神的に未熟な少年による計画性のない偶発的な事件である。虐待の影響を受けた被告に成人同様の批判を浴びせ、刑を科すことはできない。少年の行状、素質、環境などを無視して刑の量定をなすことはできない。
【結語】
これまで誰も、被告に生きることや命の大切さを教えてこなかった。残された課題は、被告がこれからどう生きていくか。私たちは裁判所に求める。被告に生きる道しるべを指し示す判決を出してほしい。」
(2) 中国新聞 '07/12/5
「生きる道司法に問う 弁護側「被告は反省」 '07/12/5
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光市母子殺害事件の差し戻し審は四日、弁護側の最終弁論をもって広島高裁で結審した。五月から計十二回の公判で重ねた主張、立証で、死刑を回避すべき新たな「事実」を引き出すことはできたのか。弁護側が最後に示したのは、男性被告(26)がどう生きるべきかという司法への問い掛けだった。
五百十ページにも及んだ弁論要旨。弁護側は約三時間かけ、その要点を陳述した。白いシャツに紺のジャケット姿で現れた男性被告は、落ち着いた様子で法廷に臨んだ。
弁護側は法医鑑定証人の証言を交え、検察側が指摘する犯行態様が遺体の痕跡と合致しないなどと主張し、殺意をあらためて否定した。検察官が腕を組み弁護側に鋭い視線を向ける中、「事実こそ最大の情状」と続け、父親から受け続けた虐待が精神発達を阻害していたとも強調した。
「誰も(被告に)命の大切さを教えてこなかった。彼は事件を受けとめ、反省と贖罪(しょくざい)の中で生きている。残された課題は彼がどう生きるかということ」。弁論の最後には被告の成長を示唆する言葉もあった。遺族の本村洋さん(31)は妻子の遺影を抱いたまま時折、目をつぶり聞き入っていた。
公判終了後、広島市中区の弁護士会館で会見した安田好弘主任弁護人は「心理鑑定人ら専門家の意見に多くの教訓があった。二度とこのような事件が起こらないよう、司法の責任として彼にどう生きるか道しるべを指し示す裁判にしないといけない」と話し、弁護への理解を呼び掛けた。(野田華奈子)
【写真説明】記者会見で差し戻し審の主張を総括する安田主任弁護人(左から2人目)ら弁護団」
(3) 朝日新聞平成19年12月5日付朝刊38面
「光市母子殺害事件差し戻し審結審 弁護団、死刑回避主張
2007年12月04日21時05分
山口県光市で99年4月、会社員本村洋さん(31)の妻弥生さん(当時23)と長女夕夏ちゃん(同11カ月)が殺害された事件で、殺人と強姦(ごうかん)致死などの罪に問われている元少年(26)=一、二審で無期懲役=の差し戻し控訴審の第12回公判が4日、広島高裁(楢崎康英裁判長)であった。弁護側は最終弁論で、殺意や強姦目的を改めて否定し、傷害致死罪が適用されるべきだと主張した。少年法で死刑適用が認められる18歳から1カ月で犯行に及んだ点を強調し、精神的に未熟だった元少年が起こした「偶発的な事件」として、死刑回避を求めた。
元少年は一、二審で殺意や強姦目的を認めていたが、最高裁の段階から明確な否認に転じた。06年6月の最高裁判決は、事件の悪質さから「特に酌むべき事情がない限り、死刑を選択するほかない」と高裁判決を破棄し、審理を差し戻していた。裁判はこの日で結審し、判決は08年4月22日に言い渡される。
弁護側はまず、殺害と強姦目的を認定した一、二審は、当時の弁護人が犯罪事実を争わず、裁判所も証拠の吟味を怠ったと批判。差し戻し控訴審で初めて犯罪事実が吟味されたと評価した。
弥生さんの死亡については、最高裁判決まで認定された両手で強く絞め付けたことによる殺害ではないと主張。甘えようとして抱きついて反撃に遭い、「無我夢中で右手逆手で押さえつけた頸部(けいぶ)圧迫による窒息死」とした。夕夏ちゃんへの行為も、頭から床にたたきつけるなどした上、首にひもを巻いて絞め付けて殺害したのではなく、ひもを緩く縛ったことによるむくみで窒息死したと訴え、いずれも殺意があったとは言えないとした。
さらに、アパートを戸別訪問したのは時間つぶしと人恋しさだったと述べ、「計画的な強姦ではなかった」とした。
また、元少年は父親からの虐待や中学1年時の母親の自殺で精神的に未成熟だったと説明。最高裁判決は更生可能性について「困難」としたが、教誨師(きょうかいし)らと出会って内省を深めたとし、「元少年に生きる道しるべを指し示す判決を」と訴えた。
元少年は約3時間に及ぶ弁論の読み上げを、弁護人や裁判官の方をじっと見ながら聞いた。
本村さんは弥生さんと夕夏ちゃんの遺影を抱えて傍聴。弁護人の方を見たり、うつむいて目を閉じたりして弁論を聴いていたが、弁護人が「殺人の故意は認められない」と、改めて傷害致死罪の適用を主張した時、何度もため息をついた。
検察側は10月の最終弁論で改めて死刑を求めている。」
(4) 時事通信(2007/12/04-21:43)
「「最後まで弁護する」と強調=結審受け弁護団が広島で会見−光市母子殺害
山口県光市の母子殺害事件で4日、広島高裁で差し戻し控訴審が結審したことを受け、被告の弁護団が記者会見した。主任の安田好弘弁護士は「被告自身が贖罪(しょくざい)の人生を歩んでいくことを、私たちはぜひ実現したいし、見届けていきたい」と死刑回避を改めて訴え、「最後まで弁護していきたい」と力を込めた。
安田弁護士は今回の差し戻し審を「実質上、彼にとって第一審だった」とし、上告審までの一連の審理を批判。各地から21人が顔をそろえた弁護団について「まともな弁護活動をするために集まった。ごく当たり前の活動をしただけだ」と述べた。」
上で引用ししたように中国新聞の記事((1)(2))で、弁論内容が大体分かると思います。朝日新聞の記事は、その弁論要旨のうち、肝心な点をなるべく拾い上げたものになっています。
これに対して、時事通信の記事は、最終弁論の内容でなく、最終弁論後の記者会見のものです。「弁護側はまず、殺害と強姦目的を認定した一、二審は、当時の弁護人が犯罪事実を争わず、裁判所も証拠の吟味を怠ったと批判。差し戻し控訴審で初めて犯罪事実が吟味されたと評価した。」(朝日新聞)というように、最終弁論でも触れていますが、記者会見でも、「安田弁護士は今回の差し戻し審を『実質上、彼にとって第一審だった』とし、上告審までの一連の審理を批判」していたようです。記事では「弁護団、死刑回避主張」という見出しもありましたが、弁護団としては、まず何よりも事実誤認があった・真実を明らかにすることを求めたと評価した方が妥当なように思います。
差し戻し審は、これまで3回、計9日間の集中審理があり、弁護側と検察側が主張、立証を重ねて、12月4日・12回目の公判で結審しました。判決は平成20年4月22日午前10時、言い渡されます。
来年4月に判決ですから、いくら間がある(結審から判決まで4ヶ月)ようにも思えます。しかし、平成18年6月6月の最高裁判決は、事件の悪質さから「特に酌むべき事情がない限り、死刑を選択するほかない」と高裁判決を破棄し、審理を差し戻し、平成19年5月24日から差し戻し審が始まり、12月4日に結審したのです。実質的な審理期間が6ヶ月で、差し戻し審の開始から判決まで1年未満なのですから、スピード審理・判決だったといえます。
21人もの弁護人が選任されたことから「多すぎる」という批判を受けていましたが、21人もの弁護人がいたからこそ、スピード審理が可能だったのです。弁護団批判が妥当であったとすれば、差し戻し審だけで数年はかかっていたはずであり、「弁護団批判はむしろ長期裁判を望んでいたことになる」のですから、馬鹿馬鹿しい批判であったことが明白だったのです。
このような不当な弁護団批判などに現れているように、光市事件裁判では、裁判外で多くの問題点が生じさせました。そこで、裁判外で巻き起こった問題点について触れてみたいと思います。
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