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2007/06/29 [Fri] 23:00:40 » E d i t
オーストラリアでは、通算42例目となるがんの病腎移植を行ったことが明らかになりました。この報道を紹介したいと思います。


1.産経新聞平成19年6月28日付朝刊30面

 「豪州で病腎移植42例目

 腎臓がん患者からの病腎移植を行っているオーストラリア・クイーンズランド大学のデビッド・ニコル教授は27日、通算42例目となるがんの病腎移植を行ったことを明らかにした。摘出と移植は26日に行い、双方の患者の経過はいずれも良好という。

 ニコル教授によると、腎臓提供者(ドナー)は60歳代の男性。片方の腎臓に直径約2.5センチの腎細胞がんが見つかり、患者は担当医師の説明を受けた上で、がん組織の部分切除ではなく腎臓の摘出を希望し、移植に同意した。移植を受けた患者(レシピエント)は60歳代の女性の腎不全患者で、がんの再発リスクなどについて説明を受けた上で、移植を望んだという。

 医師らが移植待機リストの患者からレシピエントを選定。ドナーとレシピエントは互いに面識はないという。摘出はニコル教授が執刀し、がんの組織を切除した上で、別の医師が移植した。」




2.このオーストラリアでの病腎移植事情については、以前、「病腎移植、オーストラリアで41例~11年前から。しかも、すべてがん再発なし」「日豪の病腎移植グループ交流~産経新聞6月18日付より」で触れていますが、今回の記事はその続報といえるものです。

「ニコル教授によると、腎臓提供者(ドナー)は60歳代の男性。片方の腎臓に直径約2.5センチの腎細胞がんが見つかり、患者は担当医師の説明を受けた上で、がん組織の部分切除ではなく腎臓の摘出を希望し、移植に同意した。移植を受けた患者(レシピエント)は60歳代の女性の腎不全患者で、がんの再発リスクなどについて説明を受けた上で、移植を望んだという。

 医師らが移植待機リストの患者からレシピエントを選定。ドナーとレシピエントは互いに面識はないという。」


こういった事情からすると、ほぼ親族間に限定されている「生体腎移植」ではなく、いわゆる「病気腎移植」であることが分かります。

このオーストラリアの病院では、以前触れたように、「移植対象の患者(レシピエント)は、移植を待つ腎不全患者の中でも死亡率が比較的高い60歳以上の人や、合併症のため将来の移植が危ぶまれる患者などに限定し、リスクを説明した上で患者に選択を委ねるという。」(産経新聞平成19年6月16日付朝刊1面) というように、レシピエントを限定しているのですが、今回もこの基準に従って、「60歳代の女性の腎不全患者」に、「がんの再発リスクなどについて説明を」した上で実施しています。


日本では、「がんの病腎移植」どころか、「病腎移植」が全面禁止され、今のところ将来においても実施する可能性がほとんどありません。オーストラリアでは、順調にがんの病腎移植が実施できているのですから、オーストラリアの一般市民、医師ともども、「禁止せよ」といきり立つことなく、実施することに理解があるのだと推測できます(批判はあるのでしょうが)。「教科書」と違うからといって、ねちねちと病腎移植を批判してくるような医師もいないのだと思います。実に羨ましい限りです。

オーストラリアの病院において、長年、がんの病腎移植が実施できているのは、患者の自己決定権が尊重されているからなのでしょうが、日本では、日本移植学会が病腎移植を選択するという「患者の自己決定権」を奪う判断を行っても、それを咎めるどこか妥当と判断するのがマスコミの一般的な傾向です。

患者の選択権は、患者の自己決定権の尊重そのものであり、自己決定権は憲法13条に基づく権利でもあるのですから、それを法律で過度に規制することは憲法13条違反となるのです。しかし、日本の市民は、人権が制限されようとしているのに無頓着なようです。

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2007/06/28 [Thu] 06:24:41 » E d i t
米下院外交委員会は6月26日午後(日本時間27日未明)、いわゆる従軍慰安婦問題をめぐり、日本政府に公式謝罪を求める決議を採択しました。この報道を紹介したいと思います。


1.まず、決議案可決に関する報道記事から。

(1) 朝日新聞平成19年6月27日付夕刊1面

 「慰安婦決議案、米下院委が可決 下院議長が支持表明
2007年06月27日10時38分

 米下院外交委員会は26日午後(日本時間27日未明)、従軍慰安婦問題に関する決議案を一部修正のうえ、賛成39、反対2の大差で可決した。

 決議案の可決を受け、民主党のペロシ下院議長は同日、「下院がこの決議案を採択し、慰安婦が受けた恐怖を我々は忘れないという強いメッセージを送ることを期待している」との声明を発表。7月にも本会議が開かれ、決議案が採択される可能性が強まった。

 民主党のラントス委員長らがこの日提出した修正案は、日米同盟の重要性を確認する文言を追加。首相に謝罪の声明を求めた部分について「首相が公式の謝罪声明を出せば、日本の誠意と、従来の声明の位置づけに対する一向にやまない疑いを晴らすのに役立つ」との文言も盛り込んだ。

 ラントス氏は「日本政府が公式で明確な謝罪をいやがるのは、今日の世界での日本の役割と明確に相反する。日本は誇り高い世界のリーダーであり、貴重な米国の同盟国だ。それだけに、誠意を持って過去を説明しようとしないことには困惑させられる」と語った。また、共和党のロイス議員は「昨日のことに誤って対処すれば、正しい明日を得ることも難しくなる」と述べ、今回の決議案は過去の話ではなく、現在も重要な意義があると強調した。

 一方、米国務省のケーシー副報道官は同日、記者団に「安倍首相の訪米時にブッシュ大統領が(謝罪の受け入れに)言及しており、政権に関する限り、付け加えることはない」と述べ、政府間では解決済みとの姿勢を示した。」



(2) 東京新聞平成19年6月27日付朝刊7面「国際面」

 「慰安婦問題で関係きしむ恐れ 米、首相の歴史観に疑念
2007年6月27日 07時31分

 【ワシントン=小栗康之】米下院外交委員会が26日、従軍慰安婦問題で日本政府の公式謝罪を促す決議案の採決を行い、可決される見通しになったことは長期的に見れば、日米関係の一つの「潮目」になる可能性は否定できない。

 こうした状況をつくった原因の一つは3月の安倍晋三首相の発言だった。首相は国会答弁で「(慰安婦に対し)強制性を裏付ける証言はなかった」と発言。米メディアに「安倍首相は二枚舌」(ワシントン・ポスト紙)と批判され、決議案採決に向けた米国内のムードは急速に強まった。

 日本政府は、植民地支配への「おわび」と謝罪の意思を示した1993年の河野洋平官房長官(当時)談話や、元慰安婦への償い事業を行うアジア女性基金の設置によって、慰安婦問題には一定の決着がついていると説明。首相の4月訪米時の「反省」でやや沈静化の兆しもあったが、結局、同委員会は日本の主張に耳を傾けなかった。

 下院本会議で可決されても、短期的には日米関係が急速に悪化するようなことは考えにくい。しかし、理屈よりも感情に流された印象も否めない下院やメディアの反応を考えると、今回の採決は慰安婦問題に限らず、歴史観の見直しに積極的な安倍首相に対する米国の「疑念」の表れという見方ができる。

 14日に自民、民主両党などの有志議員や有識者が米紙に掲載した日本に対する慰安婦問題批判への意見広告に対しては、日本に理解を示すブッシュ政権のチェイニー副大統領までが強く批判した。

 米国は日米安保同盟の強化につながる憲法改正などには「関心」を示す一方、歴史観の修正めいた動きには強く反応することが今回の件ではっきりしたといえ、日本がこうした方向に進めば、蜜月だったはずの日米関係はあっという間にきしむことになる。

 (東京新聞)」


民主党のペロシ下院議長が、「下院がこの決議案を採択し、慰安婦が受けた恐怖を我々は忘れないという強いメッセージを送ることを期待している」との声明を発表し、ラントス委員長が、「日本政府が公式で明確な謝罪をいやがるのは、今日の世界での日本の役割と明確に相反する」と述べて、明確な謝罪を要求しているのですから、無視できない決議案といえます。

決議案のみならず、ここまで強い調子で謝罪を求めるとなると、「理屈よりも感情に流された印象も否めない下院やメディアの反応」というのも理解でき、しかも、「今回の採決は慰安婦問題に限らず、歴史観の見直しに積極的な安倍首相に対する米国の「疑念」の表れという見方ができる」(東京新聞)との判断もうなづけるところがあります。安倍首相は、無視できない決議案に対して、慎重な発言が必要でした。


ところが、安倍首相は次のように答えました。

 「「たくさんある中のひとつだ」 従軍慰安婦決議で首相
2007年06月27日20時08分

 安倍首相は27日夜、米下院外交委員会が従軍慰安婦問題に関する決議案を可決したことについて、「米議会の決議だからコメントするつもりはない。すでに私も米国を訪問した際、私の考えを説明している」と述べた。そのうえで「米議会では相当たくさんの決議が決議されている。そういう中の一つなんだろう」と語った。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 首相は「米議会でたくさん決議されていてもその一つひとつは割と重要ではないか」との記者団の問いに対し、「それはあなたの意見ですね」と不快感をにじませ、質問を続けようとする記者団を振り切って質疑を打ち切った。」(asahi.com(2007年06月27日20時08分)


確かに、「下院決議案は年間約500本が提出されており、通常は米メディアの関心も高くない」(朝日新聞)とはいえ、居酒屋で酒を飲んで息巻いている場で発言しているサラリーマンならともかく、たくさんある決議の1つなどと、決議案をあからさまに軽視する発言をしてしまったら、明らかに挑発的な言動であって、余計に米国を不快にさせてしまいます。

米国議会は米国民の代表者の集まりなのですから、議会制民主主義国であれば、少なくとも軽視する言動をすることは、自らの憲法観を疑われるものとなります。安倍首相の“たくさんある中のひとつだ”発言は、民主主義国家の首相として妥当でなく、決議の深刻さを理解できてない、あまりにも軽率な発言でした。

安倍首相は、いい加減に米国を挑発する発言は止めてほしい。冷静で臨機応変な発言はできないのですから、誰かにすべて発言内容を決めて貰うべきではないかと思います。安倍首相は首相としての器がないのですから。
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2007/06/26 [Tue] 23:59:57 » E d i t
山口県光市の母子殺害事件の弁護団に対して、インターネットを利用した懲戒請求が相次いでいるとの報道を聞き、「弁護士に対する懲戒請求と不法行為の成否~“母子殺害で懲戒請求数百件”との報道を聞いて」を書いてみました。

その後、幾つかの法律系ブログや社会問題系ブログを拝見しても、いまだに裁判制度、法曹三者の役割、刑事弁護についての理解が全く欠けているコメントが押し寄せています。

こんなにも、一般市民の側に司法制度全般に対する理解がないなんて、「日本のどこが先進国なのだろうか」と思い至り、東京新聞6月22日付「こちら特報部」の記事を思い出しました。それは、国連拷問禁止委員会から日本政府が改善勧告を受けているとの内容です。


1.「国連拷問禁止委員会から日本政府が改善勧告を受けている」との情報は、(日本での)直後の報道記事は1つぐらい、他には次のようなブログで言及されています。

 「日本の救済措置は不十分=従軍慰安婦問題で国連報告書
 
【ジュネーブ21日時事】国連の拷問禁止委員会は21日、日本など7カ国での拷問禁止条約の運用状況を分析した報告書を公表した。
報告書は、第2次世界大戦中の従軍慰安婦の生存者を含む性的暴力被害者への日本の救済措置は「不十分だ」と指摘。性的暴力などの差別的行為の根源に関する教育や被害者の救済を日本政府に勧告した。」(時事通信)



「国連・拷問禁止委員会は、21日、拷問禁止条約の規定に基づき、自白強要、冤罪の温床とされる代用監獄などを改善するよう求める勧告を発表した……。……

 拷問禁止条約というレベルの法規に違反していると国際的に指摘されたことは、先進国として本当に恥ずかしいことだ。直ちに改善しなければ、そのうち、北朝鮮レベルの国だと思われることになるのではないか。

 でっ、勧告の内容に優る劣らず問題なのは、実は、日本政府がこの問題を隠蔽していることだ。外務省のウェブサイトには委員会の対日審査が行われていることは書いていないし、国際連合日本政府代表部のウェブサイトにもない。国際連合広報センター東京事務所のウェブサイトならあるだろうと思ったが、全然ない。かけらもない。」(「情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士」さんの「国連・拷問禁止委員会が日本政府に代用監獄などを改善するよう勧告~そんなことは隠してしまえホトトギス」(2007-05-21 23:58:39)



(勧告の中から「代用監獄について、委員会は、未決拘禁を国際的な最低基準に適うものとするための効果的手段を即時に講ずるべきこと、とりわけ、未決拘禁における警察留置場の使用を制限すべく刑事被収容者処遇法の改正を求めている。」との文章を引用して)

 「最低水準に合わせろといわれる自称先進国というのは、かなり痛い存在なのでは。

まあ、日本国政府(ようするに自民党政権)というものは、この手の国民の権利がかかわってくる条約なんかだと、勧告を変な理屈をつけて無視してみたり、締結するけど批准するまで時間稼ぎしてみたり、「先進国」としてはいかがなものかと思われるような留保をしてみたり、おもしろおかしい行動をとるのが常なので、ほっておけば今回の勧告もスルーすることとなるでしょう。」(「捨身成仁日記」さんの「ブクマやトラックバックで教わったことのメモ ~人権を守るという価値観のない国」



いずれのブログも、“先進国”日本の政府が「この問題を隠蔽」したり、「今回の勧告もスルーすることとなる」のではないか、として政府の不誠実な対応に問題があると指摘しています。日本政府は条約、しかも拷問禁止条約という何よりも遵守すべき法規範の履行が不十分と勧告されてるのにもかかわらず。


拷問禁止条約は、1984年の第39回国連総会において採択され、1987年に発効し、日本は1999年に加入しています。その条約に基づく、「日本に対する国連拷問禁止委員会の勧告」の全文については、「情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士」さんの「画期的な拷問禁止委員会の勧告書全訳その1~NGOなどによる暫定訳」「日本に対する国連拷問禁止委員会の結論及び勧告 文書番号 CAT/C/JPN/CO/1 2007年5月18日」に出ています。ぜひご覧下さい。


では、この問題に触れた、東京新聞平成19年6月22日付朝刊22・23面「こちら特報部」について紹介したいと思います。詳しく言及しています。
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2007/06/25 [Mon] 23:29:17 » E d i t
「米議会、慰安婦決議案26日採決へ~種をまいたのは日本!」(2007/06/21(木) 06:40:29)の続報といえるエントリーです。

日本政府に従軍慰安婦問題の公式な謝罪などを求めるアメリカ議会の決議案が、来週26日に外交委員会で採決されるのを前に、決議案に賛同する共同提案者は増え続けています。この決議案が付託されている米下院外交委員会のラントス委員長(民主)までも、同決議案の共同提案者に加わったそうです。
このように、「決議案の所管委員長が賛成の立場を明確にしたことで、可決に向けた流れは一層強まった」【ワシントン22日時事】(2007/06/23-12:07)ことになります。この報道について紹介したいと思います。


1.まず、報道記事について。

(1) 東京新聞(2007年6月23日 10時51分)【国際】

 「下院外交委員長も提案者に 慰安婦決議、可決確実
2007年6月23日 10時51分

 【ワシントン22日共同】太平洋戦争中の従軍慰安婦問題をめぐり日本政府に謝罪を求める米下院決議案で、共同提案者の1人に下院外交委員会のラントス委員長(民主党、カリフォルニア州選出)も名を連ねたことが22日分かった。関係筋が明らかにした。

 「行司役」の委員長自らが共同提案者に加わったことで決議案の可決はほぼ確実になった。委員会は26日に決議案を採決する予定。委員長はこれまでも決議案に賛同する意向を表明していたが、提案者に名を連ねることは控えてきた。

 共同提案者の数は22日現在、最初に提出したホンダ議員(民主党、カリフォルニア州選出)を含め146人。下院の定数435人の3分の1を超えており、本会議にかけられた場合も可決の公算が大きくなっている。」



(2) 毎日新聞 2007年6月24日 20時18分 (最終更新時間 6月24日 22時26分)

 「従軍慰安婦:対日謝罪要求決議案、米下院委で26日に採決

 【ワシントン及川正也】米下院外交委員会は26日、いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる対日謝罪要求決議案を採決する。可決される見通し。同委では昨年に続いて2度目の可決となるが、今後は下院本会議で採択されるかどうかが、焦点となる。

 採決は26日午前(日本時間26日深夜)に行われる予定だ。同決議案はカリフォルニア州選出の日系のマイケル・ホンダ下院議員が1月末に提出。元慰安婦の悲惨な境遇から人権問題として米国内での関心が高まり、共同提案者は23日現在、下院議員435人中145人に上っている。同委のラントス委員長も決議案に同調する意向で、可決されるのは確実な情勢だ。

 同決議案の採決は、4月下旬の安倍晋三首相の訪米後が予定されていたが、いったん見送られた。

 しかし、今月14日付の米紙ワシントン・ポストに、日本の超党派国会議員や評論家らが、「旧日本軍が強制的に慰安婦にさせたとする歴史的文書は見付かっていない」との全面広告を出し、これへの米国内の反発が強まったとの指摘もある。加藤良三駐米大使も20日、「(全面広告について)米政府や議会関係者の一部から照会があった」と明らかにした。

 日本政府は採決阻止に向け、首相訪米時にラントス委員長やペロシ下院議長と会談し、元慰安婦への「同情の念」を伝えた。しかし韓国系団体が決議案採決を求めて下院議員に働き掛けを続け、結果的には採決を阻止することができなかった。

毎日新聞 2007年6月24日 20時18分 (最終更新時間 6月24日 22時26分)」



米下院外交委員会のラントス委員長は、決議案に賛同する意向を表明してはいても、「行司役」ゆえに「提案者に名を連ねることは控えてきた」(東京新聞)のに、共同提案者に加わったようです。そこまで、決断させた原因は、やはり「THE FACTS(事実)」と題した全面意見広告でしょう。

「今月14日付の米紙ワシントン・ポストに、日本の超党派国会議員や評論家らが、「旧日本軍が強制的に慰安婦にさせたとする歴史的文書は見付かっていない」との全面広告を出し、これへの米国内の反発が強まったとの指摘もある。加藤良三駐米大使も20日、「(全面広告について)米政府や議会関係者の一部から照会があった」と明らかにした。」

どうやら、議会関係者だけでなく、米政府までも、全面意見広告について照会をしてきたようです。「照会」の事実は、米政府までも、この全面意見広告は到底無視できないほど、不快感を抱いていることの表れだと思います。
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2007/06/24 [Sun] 23:59:57 » E d i t
国会は6月22日午後の衆院本会議で、23日で切れる会期を7月5日まで12日間延長することを自民、公明両党などの賛成多数で議決し、通常国会の会期延長は1回しかできないため、参院選の「7月12日公示、同29日投開票」ということが確定しました(時事ドットコム2007/06/22-13:57)。次々と法案を強行採決してきたため、参議院ではより一層十分な審議なしで、強行採決されることが予想されます。


1.そのため、扇参議院議長は次のような反応を示しています(日テレNEWS24<6/21 19:48>

政府・与党 会期の12日間延長を申し入れ<6/21 19:48>

 政府・与党は21日、会期を12日間延長することを確認した。参議院選挙の投票日は当初の7月22日から29日に1週間ずれ込むことになった。

 与党は21日午後、党首会談を行い、会期を12日間延長することを確認した。与党の幹事長は、衆参の議長に会期延長を申し入れたが、野党側はこれに反発し、国会の審議はストップした。

 会期の延長については与党からも批判が強く、「安倍首相はわがままだ」との批判もある。扇参議院議長が「最後のしわ寄せが参議院にきて、落ち着いた議論ができないのは大変不本意だ」と苦言を呈する一幕もあった。また、自民党・鴻池元防災担当相は、ホームページで「苦労知らずの仲良し官邸団の諸君よ。参院は官邸の下請けとは違う」などと述べて、安倍首相の国会運営には無理があると痛烈に批判した。会期を延長しても重要法案は強行採決が予想され、与党内では選挙にはマイナスとの見方が大勢となっている。

 一方、野党は、年金問題などでさらに攻勢を強める考え。内閣不信任案も提出する構えで、与野党の激突は来週、山場を迎えることになりそうだ。」



この参議院軽視の状況下、さすがに扇参議院議長も

「最後のしわ寄せが参議院にきて、落ち着いた議論ができないのは大変不本意だ」

と苦言を呈したのです。当然の反応といえると思います。もっとも、次々と強行採決をしてきた安倍政権にとっては、参議院でも審議は適当にしてもらえばよく、すぐに強行採決して法案を成立させてほしいというのが願いであり、扇参議院議長の苦言なんぞ、全く聞く耳を持たないのです。

要するに、安倍政権にとっては、参議院の意義・二院制の意義はないに等しく、あまりにも軽い扱いです。そうすると、いったい二院制の意義とは何でしょうか? 東京新聞平成19年6月23日付朝刊24・25面「こちら特報部」の記事を紹介したいと思います。
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憲法 *  TB: 21  *  CM: 0  * top △ 
2007/06/23 [Sat] 09:08:30 » E d i t
代理出産の是非について、厚生労働省が3月に実施した国民意識調査によると、過半数以上の人が「代理出産を認めてよい」と答えたことがわかりました。NHKニュースでは、すでに6月21日に報道していましたが、この意識調査に関する報道を紹介したいと思います。
年金問題や被害者参加制度、改正少年法にも触れたいところですが……(首相は、すでに「半年前」には年金問題を認識していてずっと放置していたのだから、年金なんてどうでもいいと思っていた証拠)。


1.まず、報道記事を幾つか。

(1) NHKニュース(6月21日 18時42分)

 「代理出産“容認”が過半数に

 赤ちゃんをほかの女性に産んでもらう代理出産の是非について日本学術会議が検討を進める中、厚生労働省が行った調査で、半数以上の人が「代理出産を認めてよい」と答えたことがわかりました。これまでの国の調査では、認める人が最も多く、今後の学術会議の議論に影響を与えそうです。

 この調査は、厚生労働省がことし3月に実施したもので、20代から60代の全国の男女3400人余りから回答がありました。それによりますと、妻が子どもを産めない場合に夫婦の受精卵を使ってほかの女性に産んでもらう代理出産について、「社会的に認めてよい」と考える人は54%と半数を超え、「認められない」とする16%を大きく上回りました。

 「認めてよい」と考える人の割合は、4年前に厚生労働省の研究班が行った調査を8ポイント上回り、国の調査ではこれまでで最も高くなっています。一方、子どもを望んでいるのになかなかできない場合に代理出産を「利用したい」と答えた人は10%、「配偶者が賛成したら利用したい」が41%で、みずから積極的に利用することには慎重な姿勢もうかがえました。代わりに出産してもらう人としては「姉妹」が最も多く38%、「仲介業者から紹介される女性」が28%、「母親」が16%となっていました。

 代理出産をめぐっては、タレントの向井亜紀さんがアメリカで行ったケースなどをきっかけに、日本でも認めるかどうか議論が高まり、日本学術会議が国の依頼を受けて検討を続けています。この調査結果は学術会議に報告される予定で、今後の議論に影響を与えるものとみられます。
 
 これについて、科学史の研究者で生殖医療に詳しい米本昌平さんは「代理出産は基本的には禁止だが、全面的に禁止するのはしのびないので、聞かれれば認めてもよいという人が増えているのだと思う。過半数というのは無視できない数字で、今後、代理出産を例外的に認めるケースについて議論を始める段階に来ていると思う」と話しています。」(*原文と異なり、見やすくするため段落分けしました。)



(2) asahi.com(2007年06月22日06時27分)

代理出産容認54% 自分なら利用10% 厚労省調べ
2007年06月22日06時27分

 生殖補助医療について厚生労働省が実施した国民の意識調査で、子どもをほかの女性に産んでもらう代理出産を「社会的に認めてよい」とした人が54%にのぼったことが21日わかった。「認められない」は16%にとどまった。代理出産の是非などを巡っては、厚労省などの依頼で日本学術会議が年内にも結論を出す予定で議論を進めており、今回の調査結果は影響を与えそうだ。

 調査は3月、一般国民(20~69歳の男女)5000人と小児科や産婦人科の医師らを対象に行った。

 一般国民への調査では、約3400人から回答を得た。その約半数が代理出産を容認した一方で、「第三者の卵子を用いた体外受精」や「第三者の精子による人工授精」を認める回答は4割弱で、代理出産が最も強く支持されていた。

 ただ、自分が子どもに恵まれない場合の代理出産については「利用したい」が10%、「配偶者が賛成したら利用したい」が41%。これに対し「配偶者が望んでも利用しない」も48%おり、より慎重な傾向がうかがえた。

 代理出産をしてもらう女性は誰がいいか(複数回答)は「姉妹」が38%で最も多く、「分からない」が34%。「仲介業者から紹介される女性」28%、「母親」16%だった。」



(3) YOMIURI ONLINE(2007年6月22日11時9分)(読売新聞6月22日付夕刊22面)

代理出産、条件付き容認派が過半数…厚労省調査で判明

 タレント向井亜紀さんの裁判などで社会の関心が高まっている代理出産について、「一定条件のもとで認めてよい」と考えている人が5割以上いることが、厚生労働省が実施した国民の意識調査でわかった。

 同省が今年3月、20~60代の男女約5000人を対象にアンケートを実施、3412人が回答した。

 代理出産を認めるべきかどうか尋ねたところ、「認めてよい」は54・0%、「認められない」は16・0%、「わからない」は29・7%だった。

 2003年の調査では、「認めてよい」は45・8%、「認められない」は22・0%で、認めてよいと考える人の割合が増えていた。

 子どもに恵まれない場合に、代理出産を利用しようと思うかという質問には、「利用したい」は9・7%にとどまり、「配偶者が賛成したら利用したい」は40・9%だった。

 一方、「配偶者が望んでも利用しない」が48・4%で、代理出産を社会的に認めても、当事者になると、利用には積極的ではない姿勢がみえた。

 同省は今回の結果を、代理出産の是非を検討している日本学術会議の委員会に提出する。

(2007年6月22日11時9分 読売新聞)」



(4) 東京新聞平成19年6月23日付朝刊3面

 「代理出産、容認54% 厚労省調査
2007年6月22日 22時54分

 妊娠できない妻の代わりに別の女性に出産してもらう「代理出産」について、厚生労働省が実施した国民意識調査で「認めてよい」と答えた人が半数を超えたことが22日分かった。一方、自分が不妊だった場合に「利用したい」と答えたのは1割に満たなかった。

 結果は、厚労・法務両省の委託を受け、代理出産の是非などを検討している日本学術会議の委員会にも伝えられる。

 調査は全国の20-60代の男女5000人を対象に実施、約3400人から回答を得た。一定の条件下で代理出産を行うことについては、54・0%が「社会的に認めてよい」と答えた。「認められない」としたのは16・0%だった。4年前に厚労省研究班が実施した調査で「認めてよい」と答えたのは46%だった。

 不妊だった場合に、代理出産を利用するかどうかについては「利用したい」が9・7%、「配偶者が賛成したら」との条件付きは40・9%。「配偶者が望んでも利用しない」は48・4%だった。

 出産してもらう相手としては「姉妹」が最も多く38・3%、それに「仲介者から紹介される女性」が28・0%、「母親」16・0%と続いた。」



検討する前に。読売新聞の記事については一言触れておきます。

紙面では、「代理出産 容認派5割超す」(4版)とか、「『代理出産』容に5割超す」(3版)という見出しであったのに、ネット上では「条件付き容認派が過半数」というように「条件付き」を付け加えています。

しかし、代理出産においては、代理母依頼夫婦と代理母へのケアが必要ですし、第三者が代理母を実施する場合は出産代理母契約が必要であり、子供の身分関係の確定も問題となるのですから、全くの無条件での実施は事実上・法律上あり得ません。

そうすると、他の新聞社と異なって、読売新聞だけが「条件付き」などという見出しをあえて付けたことは、読売新聞の記者だけが、代理出産問題をよく分かっていないことを意味している、と判断できそうです。いい加減に、理解してほしいものです。
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2007/06/22 [Fri] 07:30:56 » E d i t
山口県光市の母子殺害事件の弁護団に対して、インターネットを利用した懲戒請求が相次いでいるそうです。


 「母子殺害で懲戒請求数百件 弁護士が中止求めアピール
2007年6月19日 16時56分

 山口県光市の母子殺害事件で殺人罪などに問われた当時18歳の元少年(26)の弁護人に対する、インターネットを利用した懲戒請求が相次いでいることが分かり、有志の弁護士508人が19日、「被告が弁護を受ける権利を否定する言動に抗議し、直ちに中止を求める」との緊急アピールを発表した。請求は計数百件に上るという。

 アピールなどによると、ネット上に「意図的に裁判を遅らせている」などとして懲戒を求める書面のフォームが出回り、これを使った請求が各弁護人の所属弁護士会に届いている。

 アピールの呼び掛け人の1人、前田裕司弁護士は「基本的人権を守る弁護士への攻撃だ」と話している。

 日弁連は、こうした懲戒請求の有無について「答えられない」としている。

(共同)」(東京新聞(2007年6月19日 16時56分)

懲戒請求が数百件に及ぶという事態になり、「被告が弁護を受ける権利を否定する言動に抗議し、直ちに中止を求める」との緊急アピールまで行っているのですから、かなり異常な事態になっているといえます。



1.「情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士」さんの「橋下弁護士の口車に乗って光市事件弁護団の懲戒請求をしたあなた、取り下げるべきだとアドバイスします!」によると、懲戒請求が殺到しているのは、「橋下弁護士がテレビの番組で、光市母子殺人事件にからんで、誰でも懲戒請求できるとコメントしたこと」が発端となっているようです。


(1) この「情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士」さんの「橋下弁護士の口車に乗って光市事件弁護団の懲戒請求をしたあなた、取り下げるべきだとアドバイスします!」には、弁護士に対する懲戒請求を行った者に対して不法行為責任(民法709条)を認めた判例(最高裁平成19年4月24日判決を引用されていて、次のようなコメントを出されています。

 「橋下弁護士は、懲戒請求をしても、光市の弁護団が懲戒されるとは思っていないはずだ。もし、本気でそう思っているなら、弁護士失格だ。弁護人は、一見、不合理だと思われることでも、被告人がその主張をしてほしいと望むのであれば、法廷で主張することもある。そのこと自体が懲戒の対象となるならば、弁護活動に多大な支障を来すことになる。

 おそらく、橋下弁護士に煽られて懲戒請求した人も、本気で懲戒されるとは思っていないだろう。軽い抗議のつもりで懲戒請求しているのだろう。

 そのような懲戒請求は、明らかに違法な行為であり、光市母子殺人事件の弁護団が損害賠償請求をしたら支払い義務を負うことになるだろう。

 そして、多くの懲戒請求者はそのことを知らないまま、懲戒請求したのだろうが、知らなかったと言って、責任を免れるわけではない。」

と述べ、「専門家として、直ちに、懲戒請求を撤回されることをお奨めします。」としています。


(2) 最高裁平成19年4月24日判決というごく最近の判例なのですが、この判例を引用したことで、ネット上では、懲戒請求をした者(懲戒請求をしようと思っている者)が

「損害賠償責任を負うのか!? シマッタ! 橋下弁護士に乗せられてしまったのか!?」

と、かなりの動揺が広がっているようで、この判例を引用して懲戒請求殺到に関して諌めるエントリーを行ったブログに対して、批判的なコメントが押し寄せています。


「弁護士に対する懲戒請求と不法行為の成否」については、最高裁判例としては1つだけのようですが、下級審判例は多数ありますので、突如として出てきた判例ではありません。また、類似する事例としては、理由なく相手を訴える「不当訴訟」があり、こちらはすでに最高裁判例(最高裁昭和63年1月26日判決民集第42巻1号1頁、最高裁平成11年4月22日判決判時1681-102)がありますので、最高裁平成19年4月24日判決が、弁護士に対する懲戒請求を行った者に対して不法行為責任を認める結論を導いたことも、当然の結論といえます。

その意味で、弁護士に対する懲戒請求を行う者にとっては、最高裁平成19年4月24日判決は当然知っておくべき判例といえます。そこで、すでに幾つかの法律系ブログでは触れている判例ではありますが、以下、下級審判例の傾向や「不当訴訟」の判例について触れつつ、最高裁平成19年4月24日判決の検討を行いたいと思います。

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2007/06/21 [Thu] 06:40:29 » E d i t
米下院外交委員会は18日、いわゆる従軍慰安婦問題で日本政府に対して明確に歴史的責任を認め、公式に謝罪するよう求める決議案を26日に採決する方針を固めた、との報道がありました【6月19日 AFP】。この決議案は採決される見通しですが、この決議案がなぜ、今可決に向かっているのでしょうか? について触れたいと思います。


1.まずは、慰安婦決議案採決へ、という報道記事から。
(1) asahi.com(2007年06月19日09時57分)

 「従軍慰安婦問題、決議案を採決へ 米下院外交委
2007年06月19日09時57分

 米下院外交委員会は18日、従軍慰安婦問題で日本政府に対して明確に歴史的責任を認め、首相が公式に謝罪するよう求める決議案を26日に採決する日程を固めた。米議会関係者が明らかにした。本会議での採決は未定だが、ラントス外交委員長も決議案を支持する考えを示しており、同委員会での可決は確実な情勢だ。

 決議案は1月末に日系のマイク・ホンダ議員(民主、カリフォルニア州)が提出。この日までに共同提案者は民主、共和両党の140人(下院の定数は435)に達した。4月末に訪米した安倍首相が謝罪を表明し、5月下旬の委員会採決は見送られたが、米側には人権問題との認識が強く、韓国人団体の働きかけもあって、共同提案者が増え続けていた。

 これに対し、日本の国会議員有志や言論人らは今月14日付の米紙ワシントン・ポストに強制性を示す文書はないとする全面広告を出した。だが、議会関係者の一人は「この広告は確実に採決を促す要因になった。態度を保留していた議員も『決議を通すのは今だ』と確信したかもしれない」と、逆効果だったとの見方を示した。

 広告には「1945年に占領軍当局は、米兵による強姦(ごうかん)を予防するため慰安所の設置を日本政府に要請した」とあり、これが反発を招いた可能性もある。」



(2) 東京新聞(2007年6月19日 夕刊)

 「慰安婦決議案26日採決 本会議でも可決の公算
2007年6月19日 夕刊

 【ワシントン=小栗康之】米下院外交委員会は十八日、第二次世界大戦中の従軍慰安婦問題に対し日本政府の謝罪を求める決議案の採決を二十六日に行う方針を固めた。

 決議案を提出した民主党のマイク・ホンダ下院議員の関係者が十八日明らかにした。採決されると民主、共和両党の賛成多数で可決される見通し。

 同決議案はホンダ議員が一月に提出。日本政府に従軍慰安婦問題での謝罪と歴史上の責任を明確に認めることを要請。与野党の百四十人が共同提案者に名を連ねている。

 一部メディアによると、ラントス同外交委員長(民主党)が地元ロサンゼルスの韓国人系団体の会合で二十六日に採決する意向を表明、圧倒的多数で可決される見通しを示したという。

 民主党のペロシ下院議長も決議案に賛成の姿勢を示しており、同委員会で可決後、本会議で採決、可決される可能性が高い。

 同様趣旨の決議案は過去にも提出されているが採決には至っていない。委員会レベルの可決にとどまったにしても、日本政府にとっては大きな痛手となる。

 同決議案提出以降、日本政府は採決回避に向けて議会関係者に対し働き掛けを強めていたほか、四月に訪米した安倍晋三首相が議会指導者との会談で同問題について「申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と表明していた。

 首相発言により採決は見送られるのではとの見方も出ていたが十四日、自民、民主両党などの一部国会議員や有識者が米紙ワシントン・ポストに旧日本軍によって強制されて慰安婦になったとの歴史的証拠は発見されていないと主張する全面広告を掲載。

 米国内の反発がかえって強まり、採決の流れが強まったとの指摘も出ている。」


この2つの記事によると、安倍首相が謝罪行脚をし、沈静化したはずだったのですが、その後に日本の国会議員有志や言論人が行った「全面意見広告」が、慰安婦決議案の採決へつながったとの見方を示しています。

「日本の国会議員有志や言論人らは今月14日付の米紙ワシントン・ポストに強制性を示す文書はないとする全面広告を出した。だが、議会関係者の一人は「この広告は確実に採決を促す要因になった。態度を保留していた議員も『決議を通すのは今だ』と確信したかもしれない」と、逆効果だったとの見方を示した。

 広告には「1945年に占領軍当局は、米兵による強姦(ごうかん)を予防するため慰安所の設置を日本政府に要請した」とあり、これが反発を招いた可能性もある。」


米兵による強姦予防のために慰安所を置いたというのは、米国政府や市民側にとってかなり刺激的でしょう。「お前も同じことをしたのだから、黙っていろ!」と言うつもりなのかと、感情的な反発をもたらすことは必然でしょうから。


では、慰安婦決議案がなぜ、今可決に向かっているのでしょうか? については、東京新聞6月21日付「こちら特報部」が詳しく掲載しています。
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政治問題 *  TB: 3  *  CM: 5  * top △ 
2007/06/19 [Tue] 23:28:03 » E d i t
産経新聞6月14日付朝刊では、オーストラリアの病院では、腎臓がん患者から摘出した腎臓の病変部分を切除し移植する病腎移植を、11年も前から続けていて既に計41例にのぼっている、との記事が掲載されました。その記事は「病腎移植、オーストラリアで41例~11年前から。しかも、すべてがん再発なし」で紹介しましたが、その続きともいえる記事が、産経新聞6月18日付に掲載されました。その記事を紹介します。


1.産経新聞平成19年6月18日付朝刊25面

日豪の病腎移植グループ交流 「患者の苦しみ同じ」

 ■万波医師「時代の必然」

 オーストラリアで広がりつつある腎臓がん患者からの病腎移植。日本で同じ試みをしていた「瀬戸内グループ」の万波誠医師らは17日、「患者さんの苦しみはどこも同じ。この医療が決して無理なものではないと知ってもらうために喜ばしい」などと感想を話した。日豪で病腎移植に対する受け止めの温度差は大きいが、グループの医師は既に、豪の医師とメールで論文を送りあうなど交流を始めた。(石塚健司)

 豪クイーンズランド大学のデビッド・ニコル教授らによる病腎移植の動きは今月上旬、万波医師とともに病腎移植をしてきた光畑直喜医師の同僚が偶然、分厚い抄録集の中に埋もれていたニコル教授の初期の論文を見つけたことから分かったという。

 論文は、ニコル教授が2004年、米国の全米泌尿器科学会で発表していた。移植患者の追跡調査結果をもとに、微小な腎がんを切除した腎臓の再発リスクの低さなどを示した内容だった。

 日本では昨年秋から、関係学会が瀬戸内グループの病腎移植の検証を進めたが、委員らは「聞いたこともない無謀な実験」「前例がなく、是非を判断できない」などと批判し、豪の動きは知られていなかった。

 光畑医師はさっそくニコル教授にメールをし、自らの論文を送った。返事はすぐにきた。

 「私の仕事に興味を持ってくださり感謝します…」

 その後の移植経過などについて情報交換が始まった。

 海外で同じ時期に同じ試みをした医師がいたことについて、万波医師はこう語る。「病腎で患者さんを救おうという発想は、移植の技術や薬剤の進歩によって可能になったことだ。別にたいしたことではなく、時代の必然だったんだと感じる」。光畑医師も「私たちと同じように、腎不全の患者さんの苦しみと向き合った医師が、同じ発想に行き着いたのだと思う。移植の機会がない患者さんは、大変な苦しみを訴え、死んでいく。ニコル教授は逃げずに救う道を考え、切り開いた」。

 病腎移植の最大の問題点は、腎臓提供者となる患者(ドナー)の利益を守る方策だ。日本の泌尿器科学会は「他人を救える腎臓なら、摘出せずに病変を部分切除すべきだった」と指摘し、病腎移植を否定した。

 だが、実際の医療現場では、微小な腎がんであっても、患者の希望で全部摘出されることが頻繁にあるという。部分切除しても再発のリスクはわずかながら残るし、腎臓は人体に2つあるので、1つを失っても通常は機能するからだ。

 実際に病腎移植には踏み切らなくても、「摘出して捨てる腎臓を使って、患者を救ってあげたい」と感じる泌尿器科医は多いという。

 ニコル教授は光畑医師へのメールの中で、こう言っている。「日本はドナーソース(臓器提供源)が少ない国だと聞いている。こうした試みをもっと進めるべきではないでしょうか」

(2007/06/18 03:19)」




2.幾つかの点に触れていきます。

(1) 

「光畑医師はさっそくニコル教授にメールをし、自らの論文を送った。返事はすぐにきた。

 「私の仕事に興味を持ってくださり感謝します…」

 その後の移植経過などについて情報交換が始まった。」


移植経過などについて情報交換を行っているようですから、医学上、より細かく詳しい点まで検討できるかと思います。今後、がんの病気腎移植を実施する場合には、レシピエントにとってよりよい結果をもたらすのではないかと推測できます。


(2) 

「海外で同じ時期に同じ試みをした医師がいたことについて、万波医師はこう語る。「病腎で患者さんを救おうという発想は、移植の技術や薬剤の進歩によって可能になったことだ。別にたいしたことではなく、時代の必然だったんだと感じる」。光畑医師も「私たちと同じように、腎不全の患者さんの苦しみと向き合った医師が、同じ発想に行き着いたのだと思う。移植の機会がない患者さんは、大変な苦しみを訴え、死んでいく。ニコル教授は逃げずに救う道を考え、切り開いた」。」


日本で病気腎移植を思いついて実施したのは、万波医師らだけですが、オーストラリアでは、同じように病気腎移植を思いついて実施した医師がいたわけです。それも11年も前からの実施です。日本での病気腎移植を特異なものと扱い、騒ぎ立てたのは、あまりにも適切でない対応であったといえそうです。


(3) 

「ニコル教授は光畑医師へのメールの中で、こう言っている。「日本はドナーソース(臓器提供源)が少ない国だと聞いている。こうした試みをもっと進めるべきではないでしょうか」」


ニコル教授も、今後も病腎移植を行うようアドバイスしています。海外から見れば、日本ではドナーソース(臓器提供源)が少ない……日本はこうした試みをもっと進めるべき」とアドバイスするのは、当然でしょう。日本ではドナーが少なすぎて、諸外国と比較して深刻なのですから。移植を10年以上、待つなんて異常すぎです。

ところが、日本移植学会など関連学会は、病気腎移植を事実上全面否定する態度を示すのです。このような関連学会の態度は、海外の医療機関から見れば、「移植を待つ患者を見殺しにするのか」と不可思議極まる態度と思っているに違いありません。

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2007/06/18 [Mon] 00:12:22 » E d i t
6月17日深夜0時50分~1時45分、日本テレビにおいて「声の壁~発言できない議員」という報道ドキュメンタリー番組(制作=中京テレビ)が放映されます。した。
がんの手術で声帯を失った中津川市の市会議員が、声を失った後、4年間一度も本会議で質問させてもらえず、認めない市議会との闘いを追ったという内容です。この番組について、放映前にエントリーとして紹介しておきますが、コメントは放映後に行う予定です。6月19日、コメントを掲載しました。(他の市町村の対応も追加)


1.まず、日本テレビ「NNNドキュメント'07」での番組紹介です。

(1) 日本テレビ「NNNドキュメント'07」

 「2007年6月17日(日)/55分枠 声の壁発言できない議員 制作=中京テレビ

 去年12月、岐阜地方裁判所にがんの手術で声帯を失った男性が提訴した。小池公夫さん(67)、中津川市の市会議員だ。しかし声を失った後、4年間一度も本会議で質問させてもらえない。議会事務局員による代読を求めたが、議会はそれを拒絶。「声なき声」をすくいあげ民意を市政に反映させていくはずの議員たちが、なぜ彼の声を奪うのか?小池さんと、父の仕事を支える娘・木綿子さん(34)の姿を通し、日本の社会や私たち自身の内に存在する、見えない「壁」を映し出すとともに、民主主義を成熟させるために大切なこととは何かを考える。
 
ナレーター:渡辺えり子」



(2) 「中京テレビリアルタイム NNNドキュメント'07:声の壁~発言できない議員」

「中京テレビ制作 日本テレビ系全国放送
2007年6月17日(日) 深夜0時50分~1時45分
(録画予約される場合の日付は18日(月)です)

「好きだった歌が歌えない、得意の口笛もふけない。
声を出して笑えない…。それよりも 何よりも
自分の気持ちを 自分の言葉で思うように伝えられない…。」

深く、よく響く声。
その声を 喉のがんの手術で失った父…。
岐阜県中津川市の小池木綿子さんは、
その日から 父の思いとともにすごし
父の「生き方」を見守り続けてきました。
父、公夫さんの仕事は市議会議員。
この4年間、市民の切実な願いを市政に届けたい、と
人に代わりに読み上げてもらう「代読」で
議会での一般質問を求め続けてきました。
          
父と娘が4年間、挑み続けた「声の壁」。
岐阜県の山あいの町での出来事が教えてくれる
とても、とても、大切なこと-。」





2.各新聞紙のテレビ欄の番組紹介を引用しておきます。全国紙すべてで掲載していますので、関心の高さが伺えます。中でも、最初の方に挙げた、東京新聞と読売新聞の紹介内容が良いのではと思います。

(1) 東京新聞平成19年6月17日付(日曜)13面「試写室」

『NNNドキュメント'07』 ★日本=深0.50

 声を失い、本会議で発言できない市議会議員。声の壁を崩そうと奮闘する父娘の姿を追う。

 岐阜県中津川市の前市議会議員・小池公夫さん(67)はがんで声帯を失い、4年間一度も質問できなかった。議会事務局員による「代読」を申し出たが、「発言は口頭が原則」という市議会会則を盾に議会はこれを拒んだ。パソコンで音声変換したものなら認めるという。小池さんは議員1期目の最後の年に手術。いつかは声が出ると信じ、再び立候補して当選した。娘の木綿子さんに支えられながら、食道発声などの努力を重ねた。

 こんなことがあるのかと、びっくり。だが、同様のケースはほかにもあった。神奈川県鎌倉市だ。こちらは、代読が認められている。多角的な取材で、見えない声の壁に挑む小池さん父娘の姿を通じ、人が人らしく生きることとは?などを問い掛けていく。 (八)」




(2) 読売新聞平成19年6月17日付(日曜)36面「試写室」

 「NNNドキュメント'07「声の壁 発言できない議員」(日本=深夜0.50)

声帯失い「代読」要請するが……

 がんの手術で声を失った岐阜県中津川市議とその家族が、議会に代読を要請していく姿を追う。産科医不足の窮状を訴えた「消える産声」で数々の賞に輝いた中京テレビの大脇三千代ディレクターが手がけた。

 小池公夫さん(67)=写真左=は、市議1期目最後の年に声帯を失い、再選後の4年間、本会議で1度も質問できなかった。口頭での発言が原則だったためだ。質問を誰かに読んでもらう「代読」を要請したが、パソコンの音声変換機能の使用のみが許可される。小池さんは機械の音声を拒み、なおも訴えるが、かなわぬまま引退する。

 極めて単純な問題を、議会はなぜ受け入れられなかったのか。障害を持つ立場を顧みず尊大な姿をさらす議員や、硬直した説明に終始する職員、取材から逃げるばかりの議員たちをカメラは追う。確かに、小池さんも頑固だ。だが、自由に意見を交換できるはずの社会が十分に機能していない現実を、あくまで自分らしく生きようとする姿が、一層強くあぶり出している。 (清)」

 


(3) 朝日新聞平成19年6月17日付(日曜)朝刊40面「試写室」

声を失い、取り戻す闘い

 NNNドキュメント'07 声の壁~発言できない議員
 ★日本 深0.50

 自分の意見や主張を人々に伝えるのが議員の仕事だ。岐阜県中津川市の共産党市議だった男性は、のどのがんで声帯を失い、市議会での質問を議会事務局員に代読してもらうよう求めてきた。それを認めない市議会との闘いを追った。中京テレビ制作。

 小池公夫さん=写真左=は市議1期目の最後の年から普通に話せなくなり、2期目の4年間は一度も本会議の質問に立てなかった。ほかの市議は、パソコンに文字を打ち込んで音声に変換する方法を勧めたが、彼はその無機質な音声を嫌い、「感情を含めて伝えられる」という代読にこだわる。

 ほかの市議たちは、冷静に小池さんの希望を聞き入れて協議する状況ではなかったようだ。彼は今年、2期で引退したが、最後の本会議まで「壁」を越えようと奮起する。娘=同右=が、父にネクタイを送り続けたエピソードが温かい。 (岩本哲生)」




(4) 日本経済新聞平成19年6月17日付(日曜)33面「TVはいらいと」

 「ドキュメント'07 (日本=深夜0.50)

 岐阜県中津川市の市会議員・小池公夫さんは、1期目の4年間、本会議が開かれるたびに発言していた。しかし、2期目に入り状況は一変。がんで声帯を失ってからは、4年間一度も本会議で質問させてもらえない日々が続いた。議会事務局員による代読を議会で求めるものの、聞き取れる声を出すべきだと言われ、拒絶されてしまう。小池さんと、父の仕事を支える娘・木綿子さんの姿を通して、民主主義を成熟させるために大切なこととは何かを考える。」




(5) 毎日新聞平成19年6月17日付(日曜)32面

ドキュメント'07 (日本 深0.50)

 がんで声を失った市議会議員とその娘が、ある願いを懸けて議会と闘う姿を追う。

 岐阜県中津川市の市会議員、小池公夫さんは、1期目の4年間、本会議が開かれるたびに発言していた。しかし、2期目に入り状況は一変。がんで声帯を失ってからは、4年間一度も本会議で質問させてもらえない日々が続いた。議会事務局員による代読を議会で求めるものの、聞き取れる声を出すべきだと言われ、拒絶されてしまう。小池さんと、父の仕事を支える娘木綿子さんの姿を通して、民主主義を成熟させるために大切なこととは何かを考える。」




(6) 産経新聞平成19年6月17日付(日曜)30面

ドキュメント'07 (日本 深0.50)

 岐阜県中津川市の市会議員・小池公夫さん=写真左=は、1期目の4年間、本会議が開かれるたびに発言していた。しかし、2期目に入り状況は一変。がんで声帯を失ってからは、4年間一度も本会議で質問させてもらえない日々が続いた。議会事務局員による代読を議会で求めるものの、聞き取れる声を出すべきだと言われ、拒絶されてしまう。」


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2007/06/17 [Sun] 17:26:35 » E d i t
外国での病腎移植事情ついて、産経新聞6月16日付朝刊に記事が掲載されていました。それによると、オーストラリアの病院では、腎臓がん患者から摘出した腎臓の病変部分を切除し移植する病腎移植を、11年も前から続けていて既に計41例にのぼっている、との内容です。
この記事について紹介します。(6月19日追記:産経新聞6月17日付の「オランダでの臓器移植番組」再検証記事を追記しました)


1.産経新聞平成19年6月16日付朝刊1面

病腎移植、豪で41例 がん患者から、再発なし

 オーストラリアの病院で、腎臓がん患者から摘出した腎臓の病変部分を切除し、第三者に移植する病腎移植を11年前から続け、既に計41例にのぼっていることが15日、分かった。早急に移植が必要な60歳以上などの腎不全患者のみを対象とし、これまで移植した腎臓からがんの再発が確認された例はなく、うち3人は他の病気で亡くなったという。担当医師は「移植せず透析を続ける場合より高い生存率で推移しており、臓器提供者(ドナー)不足が続く現状では有効な手段だ」とし、豪では他の2病院にも同じ試みが広がったという。

 日本で宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らが行った腎臓がん患者からの病腎移植と同じ試み。海外ではこのほか、米国シンシナティ大学で少なくとも11例のがんの病腎移植が行われたことが明らかになっている。

 がんの病腎移植を続けているのは、豪ブリスベーンにあるクイーンズランド大学のデビッド・ニコル教授と同僚医師ら。

 ニコル教授が泌尿器科と腎移植の責任者を務めるプリンセス・アレクサンドラ病院で、1996年5月に1例目を行って以後、今年に入ってからも既に9例行うなど、現時点で計41例にのぼっている。近くもう1例行う予定という。

 このうち初期の3例は死体腎で、腎がんのあったドナー3人から死後に腎臓を摘出し、病変の切除後3人に移植した。他の38例はすべて生体腎で、1~3・5センチ大の腎がんが見つかり、全摘を希望した患者の腎臓から病変を切除し、第三者38人に移植した。

 移植対象の患者(レシピエント)は、移植を待つ腎不全患者の中でも死亡率が比較的高い60歳以上の人や、合併症のため将来の移植が危ぶまれる患者などに限定し、リスクを説明した上で患者に選択を委ねるという。

 ニコル教授らは全患者の追跡調査を続けており、41人中3人が他の病気で死去したが、他の38人の移植した腎臓に機能廃絶はなく、これまでのところ、がんの再発を確認した例はない、としている。

 ニコル教授は産経新聞の取材に「数字を見てもらえば、がん再発のリスクが小さいことが分かる。国内の別の2病院でも同じ移植が昨年と今年に1例ずつ行われ、経過は良好と聞いている」などと語った。

 日本で同様の移植をしていた「瀬戸内グループ」の医師らはいずれも、豪の試みを「知らなかった」としている。

(2007/06/16 11:13)」



データでリスク説明 患者が選択

 豪で続けられている腎がん患者からの病腎移植は、そのまま透析を続けても死を待つしかない患者を救うための取り組みだ。欧米よりはるかに深刻なドナー不足に苦しむ日本では特に、患者の「生きる権利」を守るため、豪で積み重ねられたデータの早急な検証が必要だろう。

 ニコル教授によると、移植先進国の豪でも、腎移植を待つ患者の平均待機期間は3~4年以上(2004年時点)で、ドナー拡大の方策が大きな課題だという。

 二コル教授は移植対象の患者に対し、病腎を移植する場合と、しない場合のリスクをデータで示し、選択させている。豪で、透析を続けながら腎移植を待つ患者の年間死亡率は13%(60歳以上は25%)。一方、微小な腎がんの場合、患者からいったん摘出した腎臓の病変を切除して本人の体内に戻す「自家腎移植」の後、がんが再発するリスクは2%以下だという。

 この比較で患者がどちらを選ぶかは明白だ。がん患者からの臓器職は国際的タブーとされてきたが、患者の自己責任が重んじられる欧米だから容認される試みだろう。

 腎移植の待機期間が10年を超す“透析大国”の日本では今、厚生労働省が病腎移植の指針作りを進めている。そこに必要なのは何より、患者の選択権という視点ではないか。 (石塚健司)」




2.幾つかの点について触れていきます。

(1) 

「オーストラリアの病院で、腎臓がん患者から摘出した腎臓の病変部分を切除し、第三者に移植する病腎移植を11年前から続け、既に計41例にのぼっていることが15日、分かった。……

 がんの病腎移植を続けているのは、豪ブリスベーンにあるクイーンズランド大学のデビッド・ニコル教授と同僚医師ら。

 ニコル教授が泌尿器科と腎移植の責任者を務めるプリンセス・アレクサンドラ病院で、1996年5月に1例目を行って以後、今年に入ってからも既に9例行うなど、現時点で計41例にのぼっている。近くもう1例行う予定という。」


正直な話、色々な病腎移植があり得える中で、がんの病腎移植が41例も、しかも11年前から実施されていたとは驚かされました。プリンセス・アレクサンドラ病院に限定さえているとはいえ(他に2病院でも実施)、41例にも及んでいるということは、「がんのあった臓器の移植は禁忌」と決め付けていないことを意味しますし、11年も前から実施しているとなると、がんの病腎移植が“新しい医療”と評価することもないのではないかと思えるからです。

オーストラリアの病院(プリンセス・アレクサンドラ病院)において、病腎移植を実施していたこと自体は、2004年5月サンフランシスコで行われた第99回米泌尿器科学会において発表され、「第99回米泌尿器科学会ハイライト集」に帝京大学医学部泌尿器科の堀江重郎氏が翻訳・報告したものが掲載されていたようです(「病気腎移植推進・瀬戸内グループ支援ネット」さんの「豪州国でも担癌腎を移植に使っている(改定)」(2007年6月 8日(金曜日) 18:36))。
今回の産経新聞の記事は、2004年5月サンフランシスコで行われた第99回米泌尿器科学会において発表された、がんの病腎移植の続きの報告といえるものです。2004年5月サンフランシスコで行われた第99回米泌尿器科学会での発表については、その後の経過・行方が気になっていたので、その意味でもこの記事は良いものだと思います。


プリンセス・アレクサンドラ病院で実施していたがんの病腎移植は、オーストラリアの国内の別の2病院でも同じ移植が昨年と今年に1例ずつ行われているとはいえ、ほぼプリンセス・アレクサンドラ病院に限って実施されていたことからすると、デビッド・ニコル教授と同僚医師らによる、“生体腎移植の特殊な術式”という評価なのだと思います。

しかも、2004年5月サンフランシスコで行われた第99回米泌尿器科学会において発表され、その後も問題視されることなく11年間実施していたようですから、各医師の裁量の範囲内として許される「生体腎移植の特殊な術式」という評価であると思います。
病腎移植以外にも、優秀な医師が独自の術式を実施している例があり、しかも極めて良好な結果を残しているとのテレビ報道がたびたびあったりします。病腎移植も、“新しい医療”として臨床試験が必要とするというよりも、各医師の裁量の範囲内として許される“生体腎移植の特殊な術式”という評価の方が適切なようです。


(2) 

「このうち初期の3例は死体腎で、腎がんのあったドナー3人から死後に腎臓を摘出し、病変の切除後3人に移植した。他の38例はすべて生体腎で、1~3・5センチ大の腎がんが見つかり、全摘を希望した患者の腎臓から病変を切除し、第三者38人に移植した。」


41例のうち、「3例は死体腎」で「他の38例はすべて生体腎」ですから、生体からのがんの病腎移植を積極的に実施していたことが分かります。その理由は記事には書かれていないのですが、
<1>病院内に(あるいは病院間のつながりによって)腎臓がんの患者が存在するため、(移植に適した)生体ドナーの方が見つけやすいこと(術後の生体ドナーへの治療も容易)、
<2>生体ドナーであれば臓器提供は本人の同意のみで足り(提供)手続きが容易であること、
<3>病気腎であれば捨てるくらいなら提供してもよいと思い、ドナー患者にとって気が楽と思われること、
<4>健康な腎臓移植の場合から判断すると、死体ドナーよりも生体ドナーの方が良好な結果が生じるからであると、
推測しています。

なお、「第99回米泌尿器科学会ハイライト集」に帝京大学医学部泌尿器科の堀江重郎氏が翻訳・報告したものは、死体腎は5例のようですから、ずれが生じています。


(3) 

「移植対象の患者(レシピエント)は、移植を待つ腎不全患者の中でも死亡率が比較的高い60歳以上の人や、合併症のため将来の移植が危ぶまれる患者などに限定し、リスクを説明した上で患者に選択を委ねるという。

 ニコル教授らは全患者の追跡調査を続けており、41人中3人が他の病気で死去したが、他の38人の移植した腎臓に機能廃絶はなく、これまでのところ、がんの再発を確認した例はない、としている。」


「微小な腎がんの場合、患者からいったん摘出した腎臓の病変を切除して本人の体内に戻す「自家腎移植」の後、がんが再発するリスクは2%以下」ですから、再発のリスクがあるとはいえる以上、レシピエントを「60歳以上の人や、合併症のため将来の移植が危ぶまれる患者などに」限定していることが分かります。限定する範囲は色々異なりうるでしょうが、がんの病腎移植では、特にこれくらいの慎重な対応が必要とされているのだと思います。

がん再発のリスクを比較すると、「自家腎移植」では2%以下で、他人へのがんの病気腎移植の場合は「がんの再発を確認した例はない」というのですから、本人か他人かでがん再発のリスクに差異(2%か0%か)があると評価できそうです(まだ、例は少ないため断言はできないですが)。


(4) 

「この比較で患者がどちらを選ぶかは明白だ。がん患者からの臓器職は国際的タブーとされてきたが、患者の自己責任が重んじられる欧米だから容認される試みだろう。

 腎移植の待機期間が10年を超す“透析大国”の日本では今、厚生労働省が病腎移植の指針作りを進めている。そこに必要なのは何より、患者の選択権という視点ではないか。」


1960年代以降、医療における患者の人権擁護が叫ばれるようになり、医療においても、患者の人権の擁護、患者自身が自由な意思に基づき医療を決めるものだという、患者の自己決定権が尊重されることが、今は確立しています(盛岡恭彦著『医の倫理と法-その基礎知識-』7頁(2004年、南江堂)参照)。そうすると、オーストラリアでがんの病腎移植が容認されていることは、患者の自己決定権に適合するものであって、患者の自己決定権の尊重が当然視されている欧米では、そう不自然なものではないわけです。

ところが、日本移植学会の幹部は「がんのあった臓器は禁忌」であるとして、万波医師らが実施した病腎移植を厳しく非難し、全面禁止を予定しているのですから、これは患者の自己決定権を害するものであって、現在の(世界的な)医療倫理から逸脱することを行っているのです。日本移植学会の幹部はいまだ、独善的な態度で規制を行う、悪しきパターナリズムの実践者といえるのです。

欧米諸国からすれば、今回の病腎移植騒動を知ると、

「日本の医師はいまだに患者の自己決定権を尊重しない、遅れた医療現場である、書面だけとればインフォームドコンセントが十分と思ってるのは、インフォームドコンセントが患者の自己決定権に基づくことが分かっていない」

と評価していると思います。

病腎移植も一つの医療行為である以上、「患者の選択権という視点」は、患者の自己決定権の尊重そのものです。自己決定権は憲法13条に基づく権利でもあるのですから、それを法律で過度に規制することは憲法13条違反となります。

ですから、本来、「患者の選択権という視点」は当然のことなのです。それを、わざわざ産経新聞や患者団体が主張し、強調しなければならないこと自体、日本の医療事情は遅れていることを物語っているのです。

日本では、国民や報道機関の間に憲法の知識が欠けているものが多いからこそ、「患者の自己決定権は憲法13条に基づく権利」であるという理解がなく、病腎移植に対して大騒ぎをし、病腎移植否定に躍起になったのだと思います。報道機関も、改憲賛成、改憲反対と様々に唱えながらも、憲法知識の応用といえる「病腎移植問題」ではとたんに多くの報道機関が否定的になってしまいましたから、結局は、表面的にしか憲法の理解をしていないのです。欧米諸国と異なる、根本的な問題性を感じます
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2007/06/16 [Sat] 05:31:02 » E d i t
集団的自衛権の行使について、憲法解釈見直しを含め検討する安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が5月18日、6月11日と会合を開いています。そこで、今回から何回かに渡って、集団的自衛権の問題について触れていきたいと思います。

集団的自衛権を巡る問題は、憲法問題であると同時に、国際法規や軍事的な専門性がからむだけに議論は複雑です。このブログでは、憲法問題を中心に論じることになりますが、集団的自衛権の問題が憲法問題であり、政府見解を変更するしないに関わらず憲法解釈を行う以上、憲法解釈を行うだけの法的知識・法的思考力が必要です。

次に引用する東京新聞の記事は、柳井俊二・有識者懇座長と、阪田雅裕・前内閣法制局長官へのインタビュー記事ですが、座長と内閣法制局長官の法的知識・思考力がよく分かる内容です。この記事を紹介して検討を加えたいと思います。


1.東京新聞平成19年6月12日付朝刊3面「核心」

 「集団的自衛権 憲法解釈どうする

 集団的自衛権行使の事例研究を進める「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(有識者懇)は11日、安倍晋三首相が示した4類型について具体的検討を始めた。保持はしているが、行使はできないとされてきた集団的自衛権の憲法解釈の見直しが焦点となる今後の議論の方向性と課題を聞いた。 (政治部・本田英寛、中山高志、大杉はるか)


◆答弁で変更余地認める

 ――なぜ集団的自衛権の議論が必要なのか。

 「冷戦が終わり、テロや地域紛争、核・大量破壊兵器の拡散、北朝鮮情勢など安全保障環境が大きく変わった。日米同盟を円滑に機能させ、国連平和維持活動(PKO)など国際平和活動の参加も強化しなければならないが、障害がある」

 ――障害とは。

 「個別的自衛権しか行使できないという障害がある。今の憲法解釈は個別的自衛権を越えるものはすべて認めない」

 ――米国に向かうミサイルを撃墜しないと日米同盟が危うくなるのか。

 「そうだ。日本の安全保障にとって日米同盟は不可欠だ。同盟国として、米国が困ったら助けることも最低限必要だ」

 ――60年間積み上げた憲法解釈を変更できるのか。

 「前提となる国際関係が根本的に変わった。今までの憲法解釈は法律になってないし、国会の承認で決まっているものでもない。結局、行政府がそう解釈して国会答弁したのが今の解釈だ。だから同じ手続きで変えることができるはずだ。以上は私個人の考えである」

 ――国会で答弁すれば変更できるのか。

 「個人的にはそう思う。憲法に集団的自衛権を行使してはいけない、国連の集団安全保障に参加できないと明文で書いてあるなら別だが、そうではない。解釈の余地がある」

 ――有識者懇談会は集団的自衛権の憲法解釈変更まで踏み込むのか。

 「個別的自衛権で対応できるのか、集団的自衛権でないと説明がつかないのか、国連の安全保障措置なのか、別の法理があるのか。これから問題点を洗い出す」

 ――解釈変更するなら、改憲すべきとの意見がある。

 「(4類型は)解釈の余地が相当あると思う。改憲には何年かかるか分からない。その間、国際環境は待っていない。できることはやらないといけない。どこまでやれて、どういう歯止めをかけるか。これからの議論に期待されるところだ。

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 柳井俊二・有識者懇座長

 やない・しゅんじ 東大法卒。1961年、外務省に入省。条約局長、事務次官を経て99年、駐米大使に就任。2005年から国際海洋法裁判所判事。1937年生まれ。
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◆法治国家 改憲が必要

 ――集団的自衛権の行使はなぜ違憲なのか。

 「日本は外国からの武力攻撃を排除するため、必要最小限度の武力行使しか認められない。日本への武力攻撃がないのに、日本が武力行使をするのは憲法9条あるいは憲法全体をどう読んでも出てこない」

 ――集団的自衛権という権利はあるが、行使できない政府解釈が分かりにくいとの批判がある。

 「法律のイロハを知らない人の議論だ。国際法は国家にあらゆる権利を認めている。国際法上、権利があるというなら戦力を持つこともできる。国民の意思で国家の権利の行使を制限しているのが9条だ」

 ――憲法解釈を一内閣が変更できるのか。

 「憲法解釈が変わっていけないことはないが、日本は法治国家だ。論理的な解釈を超えて変えるのは無理だ。戦後60年間、国会で積み重ねた議論を無視できない」

 ――解釈変更でなく憲法を改正すべきか。

 「改正手続き法もできた。国民の憲法に対する信頼を維持するためにも、改正という手順を踏むのが王道だ。集団的自衛権を行使できないのが不都合で、日米同盟に差し障りがあるとすれば、憲法を改正すればいい」

 ――憲法問題ではなく首相が決める政策判断だという意見もある。

 「憲法解釈は政策ではない。規定をどう読むかは政策論ではない」

 ――首相は米国に向かうミサイルを撃墜しないと日米同盟の信頼をなくすと主張している。

 「現在、技術的に不可能な問題で、実益があるとは思えない。技術的に可能となっても、現行の9条の下では難しい問題ではないか」

 ――有識者懇のメンバーの人選は。

 「憲法解釈の問題だとすれば、憲法学者などがもう少しいてもよいのではないか」

 ――憲法改正ではなく個別法で認められるのか。

 「集団的自衛権の行使や多国籍軍への参加は、(憲法改正でないと)難しい。違憲の法律は無効だ」

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 阪田雅裕・前内閣法制局長官

 さかた・まさひろ 東大法卒。1966年、大蔵省に入省。官房審議官、内閣法制次長などを経て2004年、内閣法制局長官。06年に退官し現在は弁護士。1943年生まれ。
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◆安倍首相が検討を指示した4類型

 <1>公海上で自衛艦の近くにいる米艦船が攻撃された場合、自衛艦の対処<2>米国に向かうかもしれない弾道ミサイル迎撃の可否<3>同じPKO活動に従事する他国の部隊が攻撃を受けた場合、自衛隊員が救援に駆けつけ、武器を使用できるのか<4>同じPKOなどの活動に参加する他国への「後方支援」のあり方―の4点。」



(1) まずは、柳井俊二・有識者懇座長の発言ですが、驚かされます。

「 ――60年間積み上げた憲法解釈を変更できるのか。

 「前提となる国際関係が根本的に変わった。今までの憲法解釈は法律になってないし、国会の承認で決まっているものでもない。結局、行政府がそう解釈して国会答弁したのが今の解釈だ。だから同じ手続きで変えることができるはずだ。以上は私個人の考えである」

 ――国会で答弁すれば変更できるのか。

 「個人的にはそう思う。憲法に集団的自衛権を行使してはいけない、国連の集団安全保障に参加できないと明文で書いてあるなら別だが、そうではない。解釈の余地がある」」


憲法解釈は文意、制定趣旨、議論の積み重ねなどを踏まえて論理的に確定するものですから、「今までの憲法解釈は法律になってない」からといって、自由に憲法解釈を変更できるわけではありません。条文ごとに多くの憲法解釈がなされていますが、憲法解釈すべて法律で規定しているわけでもなく、いちいち法律で規定することは不可能です。

また、「国会の承認で決まっているものでもない」という発言もまた問題です。憲法解釈は論理的に決定するのであって、国会の承認の有無は無関係ですから、「国会の承認で決まっているものでもない」からといって、憲法解釈を変更できるわけではないのです。

憲法解釈は、論理で決まるのであって国会答弁で決まるわけではないことは当然のことなのですが、柳井俊二・有識者懇座長は「国会で答弁すれば変更できる」と述べています。国会答弁で憲法解釈が決まるのならば、憲法の条文の文言はなきに等しく、憲法典の存在自体無意味であるばかりか、法解釈論を否定するに等しい言動です。

このように発言を検討すると、柳井俊二・有識者懇座長は「法律のイロハ」を知らない人物であることが明白であると思います。このような人物が座長なのですから、有識者懇談会は、集団的自衛権を議論できるだけの法的知識・法的思考力をもち合わせていないといえそうです。


(2) 次に、阪田雅裕・前内閣法制局長官の発言を見てみます。

「――集団的自衛権という権利はあるが、行使できない政府解釈が分かりにくいとの批判がある。

 「法律のイロハを知らない人の議論だ。国際法は国家にあらゆる権利を認めている。国際法上、権利があるというなら戦力を持つこともできる。国民の意思で国家の権利の行使を制限しているのが9条だ」」


「法律のイロハを知らない人の議論だ」と、かなり辛辣に切り捨てています。国際法と憲法とは別法規である以上、国際法上認められている「集団的自衛権」を、憲法が制限することは当然あり得る議論です。「政府解釈が分かりにくいとの批判」は、批判になっていないといえるでしょう。


「 ――憲法問題ではなく首相が決める政策判断だという意見もある。

 「憲法解釈は政策ではない。規定をどう読むかは政策論ではない」」


一体、どこの誰が、集団的自衛権の問題を「首相が決める政策判断」と言っているのでしょうか? 憲法解釈は論理で決めるものであって、政策論ではありません。日本国は、法の支配があり、法治国家である以上、論理をまげて自由に憲法解釈を変更できないのです。
大体、憲法は公権力を制限する法規範なのですから、首相も憲法の縛りを受ける立場であって、首相が自由に憲法解釈を変更できるわけがないのです。


「 ――有識者懇のメンバーの人選は。

 「憲法解釈の問題だとすれば、憲法学者などがもう少しいてもよいのではないか」」


有識者懇では、憲法学者といえば西修・駒澤大学教授ぐらいで、しかも実績からしても憲法学上全く影響力のない人物です。靖国神社への首相の公式参拝を巡る議論の際にも、懇談会が設けられましたが、その懇談会には有力な憲法学者(芦部、佐藤功)が存在しましたのとは大違いです。
真っ当な憲法学者なしでは、60年に間に渡って積み上げ確定した、集団的自衛権を巡る議論の政府見解の変更を正当化することは極めて困難です。安倍首相の憲法感覚のなさが現れているメンバーです。


このように、阪田雅裕・前内閣法制局長官は、かなり強い調子で集団的自衛権を巡る政府見解の変更を拒絶する発言をしています。なぜ、ここまで発言できるのか疑問に思う方もいるかもしれません。一官僚にすぎないはずなのに、なぜ首相の意に反するのかと。そこで、次に朝日新聞の解説を引用して、この点を説明したいと思います。
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憲法 *  TB: 2  *  CM: 1  * top △ 
2007/06/15 [Fri] 01:45:54 » E d i t
広島県の呉共済病院に勤務する光畑医師が、腎臓や尿管下部のがんの腎臓を移植した四人の症例を論文にまとめ、その論文が米国の移植専門誌「トランスプランテーション」に掲載されることになったという報道が、2月9日にありました(「病腎は提供可能、論文が米雑誌掲載へ」(2007/02/10(土) 00:52:59)「病気腎移植、続く論戦~東京新聞2月14日付朝刊「こちら特報部」より」(2007/02/15(木) 17:17:18)参照)。
早くても3ヵ月後に掲載ということでしたが、6月14日、光畑医師の論文が掲載されたとの報道がありました。この報道について紹介します。


1.中国新聞('07/6/14)

 「病気腎移植 世界的専門誌に論文 '07/6/14

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▽呉共済病院の光畑医師らが報告

 呉共済病院(呉市)の光畑直喜医師らが、がんで摘出された腎臓を使った移植症例の報告が十三日、世界的に権威のある移植専門誌「トランスプランテーション」六月十五日号(電子版)に掲載された。一連の病気腎移植が論文として報告されるのは初めて。

 掲載された論文は「小さな腎がんや悪性度の低い下部尿管がんの腎臓は、移植に使える可能性がある」のタイトルで、光畑医師をはじめ宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師ら六人の共著。

 呉共済病院で一九九七―二〇〇一年に実施した腎がんと下部尿管がんの腎移植四例について、がんの再発もなく、移植を受けた全員が元気に生存していることを報告。提供側と移植患者の双方の意思確認がある場合、がんの摘出腎の一部を使った移植は、世界のドナー不足を補う方法になる可能性を秘めている―と結論づけている。

 万波医師らが五月に予定していた米国移植外科学会での発表は、日本移植学会が米国側に異例の取り消しを要請したことから中止。今月十一日、ドイツであった国際シンポジウムでの発表に続く論文掲載で、ドナー不足に悩む各国からも病気腎移植が注目されそうだ。

 光畑医師は「今回報告した四人のドナーも全員生存している。事実を後世に残すことが責務と考え、論文にまとめた。国際的な評価につながる場に取り上げられてうれしい」と話している。(編集委員・山内雅弥)」




2.藤田士郎助教授によると、日本移植学会は「トランスプランテーションという雑誌に掲載が決まった光畑先生の論文を掲載しないようにと働きかけている」ようだったそうです(「地獄への道は善意で舗装されている」さんの「陰謀専門委員会」(2007/3/15(木) 午後 8:36))。しかし、日本移植学会の妨害工作は実ることなく、残念ながら(苦笑)、掲載されるに至りました。実に喜ばしいことです。

「今月十一日、ドイツであった国際シンポジウムでの発表に続く論文掲載で、ドナー不足に悩む各国からも病気腎移植が注目されそうだ。」



ドイツでの国際シンポジウムでの発表、世界的に権威のある米国の移植専門誌「トランスプランテーション」での論文掲載がなされたのですから、日本と異なり、世界的には積極的に発表の機会を与えているといえます。

藤田士郎助教授によると、ドイツでの国際シンポジウムについては、「演題応募締め切りが1月下旬で2ヶ月もすぎていたにも関わらず、直接Dr. Broelschにメールを送ったところ、心よく、発表を認めていただ」いたそうです(「地獄への道は善意で舗装されている」さんの「病気腎移植、ドイツの国際学会にて発表される。藤田士郎医師の日記から転載」(2007/6/13(水) 午前 6:06)「万波誠医師を支援します」さんの「ドイツ・万波医師ら論文、有効性主張 産経新聞」(2007/06/13 21:24))。このようなやり取りを読むと、世界の移植医療に携わる者にとっては、応募締め切りをすぎていても発表を認めるほど、病腎移植は非常に関心があり注目していると判断できます。

ちなみに、 ドイツでの国際シンポジウムの評価については、藤田士郎助教授によると、「死体腎臓の少ないアジア諸国からは、賛成や強い興味を示され」、他方で、西洋諸国からは、「もっとやってみて、可能性を探ってみたいと言ったところ」だったようです。特に、「この学会の主催者のDr. Broelschから、素晴らしい発表だったと個人的にコメント」があり、「有名な移植外科医のDr. ST Fan, Dr. Sung Gyu Lee, Dr. Heffron、Dr. Nansy Asher らからも、肯定的なコメントを個人的にいただきました」とのことです。

このように、世界的なドナー不足の中、有名な移植外科医が高評価している以上、これらの医師はもちろん、他にも自ら病腎移植を実践する医師が出てくることが予想され、世界の移植医療ではもっと病腎移植を推進する方向にあることは間違いなさそうです。

米国の移植医療では、(死体移植では)広範囲に病気臓器移植を認め推進していますし、米国移植外科学会元会長のリチャード・ハワード教授は、「臓器提供者(ドナー)と移植希望者(レシピエント)がリスクと利益を完全に理解しているならば容認できると思う」と肯定の立場を表明しています(「「病気腎移植禁止」に米国学会元会長らが反論~世界の流れに逆行している!!!」(2007/04/21(土) 06:48:37))。また、うえで引用したように、ドイツでの国際シンポジウムでは好意的な評価だったわけです。

このようなことからすると、「トランスプランテーション」に掲載された光畑医師の論文も、かなり関心を呼ぶものであり、好意的な評価を受けることになりそうです。



3.このように世界的には病腎移植を積極的に評価する方向にあるのに、日本移植学会は、いわゆる「病腎移植」(治療目的で摘出した腎臓を移植)を事実上全面禁止して、世界的な流れに逆行する動きをしています。臓器移植法の運用指針の改定案では臨床試験としてはできるかのような文言ですが、現実には全面禁止の予定です。

がんの場合は別として、世界的には「死体移植での病気腎移植」は臨床試験の段階でなく通常の移植医療として実施され、日本でも「生体移植での病気腎移植」は臨床試験でなく、通常の生体移植と同じに扱われて、かなりの数がほとんど問題視されることなく(例えば倫理委員会に諮ることなしで)実施されてきました。

腎臓の場合ではありませんが、FAP患者からの肝臓摘出やドミノ肝移植は、病腎移植と比較して「病気の臓器を移植するという意味では大きな違いはない」」(読売新聞「医療ルネサンス:「病気肝ドミノ」次善の策(2007年5月30日))のに国際的に認知されているのにもかかわらず、病腎移植だけは否定するのはおかしいという批判は常になされています。

このように考えると、病気腎も様々であることも相俟って、いわゆる「病腎移植」をすべて臨床試験の段階にとどめることも妙なことであり、少なくとも全面禁止することは、世界的な流れに逆行するものであっておかしなことだと思うのです。(もっとも、現実には臨床試験での実施さえ可能か怪しいところですが)

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2007/06/13 [Wed] 04:51:31 » E d i t
少し前の報道になりますが、余命6カ月と診断され、死期の迫った女性が自分の腎臓を提供する移植希望者を選ぶという内容により、国内外の物議を醸していたオランダのテレビ番組が6月1日に放送され、その中で実は作り話だったことが明かされました(朝日新聞)。
「死期の迫った女性」は現実には健康だったのですが、ここで注目したいのは、「死期の迫った女性」の死期の理由・何の疾患なのか、なのです。この点については、すでに「病気腎移植推進・瀬戸内グループ支援ネット」さんの「オランダの臓器提供ショー」(2007年6月 6日(水曜日) 15:25)で触れています。こちらもご覧下さい。


1.オランダでの臓器移植ショー番組の記事を引用しておきます。

(1) CNN(2007.05.31Web posted at: 13:55 JST- AP)

腎臓移植、テレビ番組で提供相手を決定 オランダ
2007.05.31 Web posted at: 13:55 JST- AP

オランダ・アムステルダム(AP) 手術不能な脳のがんを患い、存命中に腎臓を提供する考えを表明しているオランダ人女性(37)が、テレビ番組で提供相手を決めることになった。放送には反対の声もあがっているが、テレビ局は、移植腎臓の提供が危機的に少ない状況をアピールしたいと説明。政府は、番組内容がいかに非倫理的なものであっても、放送に介入できないとしている。

「ビッグ・ドナー(提供者)・ショー」という名がつけられたこの番組は、公共放送局BNNが来月1日に放送を予定している。「リサ」と呼ばれる腎臓提供者が、移植候補3人とその家族および友人たちと面談し、誰に提供するのかを決める。視聴者もインターネットを通じ、望ましいと思う候補者に投票できるが、最終的な決定はリサが下す。

3人が女性の提供する腎臓に医学的に適合しているのかは不明。そのため、リサの選んだ人物に必ずしも移植されるわけではないという。

この番組に関しては、与党キリスト教民主同盟の議員が国会で是非について質問した。答弁に立った教育相は「番組内容は放送にふさわしくなく非倫理的だと聞いているが、判断するのはテレビ側だ」と述べ、政府の介入は検閲に相当するとの考えを示した。

BNNの会長は「番組を悪趣味と感じる人もいるだろうが、現実はもっとショッキングで悪趣味だ。臓器の提供を待つのは、宝くじの当選を望むのと同じなのだ」と述べている。

腎臓移植を推進する立場の腎臓協会は、移植をめぐる問題への関心が高まったことを歓迎する一方で、番組については注目が集まり過ぎたとしてBNNに放送を見送るよう求めている。

オランダでは、放送に適しているかどうかの議論を呼ぶような番組が過去にも放送されている。2年前には、民間放送局が女性の出産の様子を生放送。BNNはほぼ同時期に、記者が麻薬(コカイン)を吸引し、どのような感覚なのかについてインタビューに答える番組を放送した。」



(2) CNN(2007.06.02Web posted at: 20:39 JST- CNN/REUTERS)

 「腎臓移植の提供相手決める番組、「架空の物語」と判明
2007.06.02 Web posted at: 20:39 JST- CNN/REUTERS

アムステルダム――手術不能な脳のがんを患い、存命中に腎臓を提供する考えを表明しているオランダ人女性(37)がテレビ番組で提供相手を選ぶと宣伝されていた番組が1日放映され、公共放送局BNNは番組の最後で「架空の物語」と告白した。

女性は健康な女優であることも分かった。オランダでの臓器提供者の不足に焦点を当てるための創作だったとしている。「架空」であることを明らかにしたのは女性が提供相手を発表する直前だった。

移植候補3人とその家族および友人たちと面談し、誰に提供するのかを決めるとされていたが、この3人は腎臓関連疾病を実際患っていた。

同放送の宣伝を受け、国内ではモラルの面などからの論争が起きていた。政府は番組内容がいかに非倫理的なものであっても、放送に介入できないとの立場を取っていた。

番組のプロデューサーは視聴者に謝罪を表明しながらも、番組内容への怒りが移植臓器の少なさへの批判に結びつくことを期待するともした。番組の創作の是非をめぐり新たな論争が起きそうな気配ともなっている。」



2.日本の報道記事では明示がなかったので、CNNの記事を引用しました。

(1) この記事によると、

「手術不能な脳のがんを患い、存命中に腎臓を提供する考えを表明しているオランダ人女性(37)」

です。要するに、がん患者だったのです。

記事を読むと、オランダではがん患者からの臓器提供については、「番組内容は放送にふさわしくなく非倫理的だ」とか、「人間の生死を見せ物にする」(産経新聞(2007/06/03 00:46))という批判はあっても、がん患者からの移植は「禁忌」であるといった批判は、オランダ市民レベルでも全くありません。オランダでは、医師に限らずオランダ国民は、臓器提供者ががんであっても、移植に使用することは問題視しない意識が根付いているわけです。もちろん、腎臓にがんがあったのではなく、脳にがんがあったケースですが。

そうすると、日本移植学会の大島氏が常々唱えている「がんは禁忌」としてすべて排除するという考えは、市民レベルでも世界的には通用しない考えであるようです。どんな場合でも許されない「絶対禁忌」ではなく、場合によって可能である「相対禁忌」というのが、世界的な理解ではないでしょうか。


(2) これに対して、日本では、提供された臓器は次のような評価によって、移植に使用する臓器かどうかを判断しています。なお、これは、死体臓器移植の場合の判断基準です。

ドナーの適応評価

 臓器提供の意思を持ったドナー候補が現れても、その臓器が医学的に移植に適しているとは限らない。移植される臓器は健康で、レシピエントの体の中で十分に機能を果たせると評価されるものでなければならない。またドナーがウイルスなどに感染したり、悪性腫瘍に冒されていると、臓器とともにレシピエントの体に病気を持ち込んでしまう可能性がある。

 したがって、臓器そのものが十分に機能できるものであるか、感染症にかかっていないか、悪性腫瘍を伴っていないか、肝炎ウイルス、エイズウイルスのキャリアでないか、などの点についてチェックする。高齢者では臓器も老化しているため、原則として心臓は50歳以下、肝臓は60歳以下、腎臓は70歳以下が望ましいとされている。

 またレシピエントとの適合性を調べるには、血液型、HLA型の検査、リンパ球交叉試験などが必要であり、そのために血液が採取され、検査センターに送られて分析される。」(「Transplant Communication」(臓器移植の情報サイト)より「臓器移植のプロセスを明らかにする」から引用)


この(死体臓器移植での)ドナー適応評価によると、「移植される臓器は健康で、レシピエントの体の中で十分に機能を果たせると評価されるもの」に限り、「ドナーがウイルスなどに感染したり、悪性腫瘍に冒されていると、臓器とともにレシピエントの体に病気を持ち込んでしまう可能性」があるので、それを排除するというのです。そうすると、おそらくは、臓器自体に悪性腫瘍がなくても、ドナーの他の臓器に悪性腫瘍がある場合には、その多くは(ほとんどすべて!?)そのドナーの臓器は移植に使用していないものと推測できます。

米国では、死体腎移植の場合ですが、かなり広範囲に病気腎移植が行われていますし、オランダではそこまで広範囲でなくても、移植される臓器の範囲が日本よりも広いといえそうです。

そうすると、日本では、諸外国と比較して、捨てている臓器がかなり多いと判断できるのですから、もっと諸外国の例を参考にして、捨てずに移植に使用することを考える必要があるように思います。

もっとも、捨てていた臓器を移植に使用する場合、生着率が低くなることが予想されますから、そういったリスクがあることをレシピエント側が十分に理解し、なるべく生着率を低くしないためにも、極めて優れた技量を有する移植医の手によることが不可欠になってくるのだと思います。
ただ、日本では諸外国と比較すると、移植数が少なく優れた技量のもつ医師が少ないため、捨てていた臓器を十分に活用できるか、現実的にはかなり厳しいのが難点ですが。
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2007/06/12 [Tue] 01:31:35 » E d i t
ドイツのエッセンで開かれた移植に関する国際シンポジウムにおいて、6月11日、フロリダ大学の藤田士郎助教授が病腎移植の有効性を報告しました。万波医師も会場入りして出席したそうです。この報道について紹介します。(6月13日追記:産経新聞でも報道していたので追記しました)


1.まず報道記事から。まだ、ほとんど報道記事としてはほとんど出ていませんが、いずれ続報など紹介したいと思います。

(1) TBSニュースi(06月11日23:36)

万波医師の病腎移植、ドイツで発表

 宇和島徳洲会病院の万波 誠医師らが行ない波紋を広げた病気の腎臓を使った移植が、ドイツで開かれている移植シンポジウムで、万波医師も出席のうえ、研究発表されました。

 シンポジウムでは、万波医師らがこれまで行ってきた病気腎臓移植の症例と、その有効性などが発表されています。

 発表を行ったのは、万波医師と交流があるフロリダ大学の藤田士朗助教授ですが、研究に参加した万波医師自身も会場に姿を見せています。

 「(移植の)臓器不足は世界中にあるわけですから、ドイツでどう議論されるか、不安と期待がある」(万波 誠 医師)

 国内では、国の委員会が病腎移植を原則禁止することで大筋合意していますが、海外での発表は、そうした流れに一石を投じるものといえそうです。(11日23:36)」



(2) 東京新聞(2007年6月11日 23時48分)(←現在削除ゆえ、東京新聞(2007年6月12日 00時26分)を参照へ)

 「病気腎移植の論文発表 万波医師ら独シンポで
2007年6月11日 23時48分

 病気腎移植問題で、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らは11日、ドイツのエッセンで開かれた移植に関する国際シンポジウムに出席し、病気腎移植の成果をまとめた論文を発表した。

 万波医師は発表後、共同通信の取材に「日本では全面的に否定されたが、こちらでは好感を持って受け止められたと思う」と話した。

 論文は、万波医師らが実施した病気腎移植の結果を分析、生着率などのデータから「世界的な臓器不足の現状を打開する方策」として、有効性を主張する内容。共著者が発表し、万波医師も同席した。

 万波医師らは5月に米サンフランシスコで開かれた米国移植外科学会で発表予定だったが、同学会側から「時期尚早だ」との連絡があり、発表を断念していた。

(共同)」




2.病気腎移植について、やっと国際的なシンポジウムで発表できたのですから、万波医師らの行ってきた腎移植を正当に評されるためにも、世界的な臓器不足解消の一方法を提示するという世界の医療の進歩のためにも、大変有意義なことです。

(1) 本当なら、米国移植外科学会で発表予定だったのですが、日本移植学会会長による悪質な工作のため、発表断念となったのですが、今回は妨害工作を受けずにすんだようです。

学会とは、医療の進歩に寄与するために存在するはずなのですが、日本移植学会は、発表を妨害し、学問の自由や表現の自由を制約するような行為を行い、日本移植学会は学会の意義を否定する行動をとったのですから、呆れた学会です。

この報道を聞いた日本移植学会の幹部は、妨害工作ができなかったことを悔やんでいるのでしょうが、学会の存在意義とは何かをよく考えて、二度と妨害工作といった恥ずべき行動をとらないと自己反省して頂きたいと思います。


(2) 

「万波医師は発表後、共同通信の取材に「日本では全面的に否定されたが、こちらでは好感を持って受け止められたと思う」と話した。」

万波医師から見た評価ですから、客観的な評価といえない面があることは確かですが、好意的な評価を受けたと感じているようです。

日本で実施された腎不全シンポジウム(徳洲新聞 2007年(平成19年)4月30日 月曜日 No.567 1面より)などでも分かるように、米国政府は2003年より「臓器ドナー現状打破共同作戦」を開始、より高齢者、乳児、C型肝炎やB型肝炎、糖尿病の患者、同性愛者、麻薬中毒者、さらにはがんの既往のあるドナーからの臓器を移植に利用し始めています。
また、イタリアのタイオーリ教授が移植医療専門誌『トランスプランテーション』に発表した論文に基づいた講演によると、「大規模集団での追跡調査を複数行った結果、ドナーからレシピエントへのがんの転移は、非常にまれであることがわかりました。移植を決める際には、がんの存在は問題にすべきではありません」と話しています。

このように、世界では病腎移植を認め、いかにして広げていこうかと実施・模索を行っているのですから、万波医師が好意的な評価を受けたと感じるのも当然のことと思います。


(3) 日本では、なぜか世界的な潮流に反して病腎移植を事実上前面禁止しようとし、臓器不足解消の道を自ら絶ち、日本の腎不全患者を見殺しにしようとしています。

こうなると、今後とも、国際的なシンポジウムなどで病腎移植の有効性について発表して、外圧によって病腎移植を認める方法をとることが賢明であるように思います。外圧でしか物事が動かないことは、日本の昔からの傾向であり、情けないことですが、有効な医療が不当な扱いを受ける以上、有効な手段は使うべきでしょう。
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2007/06/11 [Mon] 21:21:03 » E d i t
今日、6月11日は、「『臓器の移植に関する法律の運用に関する指針』の一部改正に関する意見募集について」の意見募集」の意見・情報受付締切日です。


1.日本移植学会の意向はともかく、また意見・情報受付の結果、どうなるのかは不明ですが、病腎移植問題について、医事法に詳しい刑法学者である甲斐克則・早稲田大学教授が、法学教室2007年6月号2~3頁において「生体腎移植」という表題で論文を発表されています。この甲斐教授の論文について、病腎移植問題に関する部分につき紹介します。

 生体から腎臓の1個を摘出してそれを他の生体へ移植する「生体腎移植」は、どこまで許されるか。脳死移植や生体部分肝移植と比較して従来あまり表に出てなかった生体腎移植の問題が、愛媛県宇和島市内で起きた腎臓・臓器売買事件(2005年9月実行、2006年10月逮捕)及びM医師による病気腎移植事件が表面化(2006年11月)するに及び、クローズアップされている。いったい真の問題は、どこにあるのであろうか。

  1979年(昭和54年)に成立し、1980年(昭和55年)に施行された旧・角膜及び腎臓の移植に関する法律(角膜腎臓移植法)は、死体からの眼球または腎臓の摘出を、原則として遺族の書面による承諾がある場合に限定し、ドナーが生存中に書面による承諾をしている場合であって、医師がその旨を遺族に告知し、遺族が摘出を拒まない場合、および遺族がいない場合を例外としていた(同法3条3項)。また、変死体または変死の疑いのある死体からの摘出を禁止していた(同法4条)。要するに、同法は、摘出対象体を同法4条が禁止する対象以外の死体としていたのである。したがって、腎臓が各人に2個あるがゆえに実態としてはむしろ生体からの1つの腎臓摘出が「被害者の承諾」を論拠としてより多く行われていたにもかかわらず、これに関する規定は盛り込まれていなかった。

 加えて、臓器移植法が1997年に成立し、施行されて以来、あるいはそれ以前からかもしれないが、臓器移植問題の中心は、脳死体からの臓器摘出をめぐる問題に置かれてきた。もちろん、それ自体は間違いではない。「脳死は人の死か」という問題は、以前ほどではないにせよ、なお課題として残り続けているし、小児に対する臓器移植の問題も、重要課題であり続けている(日本医事法学会シンポジウム「臓器移植」年報医事法学20〔2005〕参照)。他方、日本臓器移植ネットワークに登録している腎臓移植を望む患者は約1万2000人いるが、国内で1年間に実施される生体腎移植は約800例、心停止後の移植は約200例、脳死移植は4~16例にすぎず、人工透析(患者数約26万人)を受けて待機する期間も長期化し、その間に死亡した患者は、約2000人に達する、といわれている(読売新聞2007年2月2日付朝刊等参照)。このような状況下にもかかわらず、生体からの腎臓摘出および腎移植の問題は、正面から十分に議論されてこなかったように思われる。何よりも、公的な明文のルールが存在しなかったのである。

 ところが、宇和島市内の病院のM医師による病気腎移植の問題は、脳死体からの臓器提供数の不足を補うべく実施されている生体腎移植の問題性を浮き彫りにした。問題点は、3つある。第1は、臓器売買の問題であり、第2は、疾患者の腎臓を摘出してレシピエントに移植することが許されるか、という病気腎移植の問題であり、第3は、近親者からの臓器提供に関わる提供意思の問題である。以下、これらを順次論じてみよう。(中略)

  つぎに、病気腎移植の問題について。上記宇和島市の腎移植事件では、腎移植の前提となる疾患者(ネフローゼ、尿管狭窄、腎動脈瘤、腎結石、がんの患者を含む)の提供意思(摘出意思)の適格性が問題とされている。M医師による病気腎移植は、1980年代初頭から実施されていて、倫理委員会に諮ることもなく、文書によるインフォームド・コンセントもなかったという(毎日新聞2007年4月1日付朝刊報道参照)。中には、ドナーからの腎臓摘出に適さなかったケースもあった。何よりも、腎がん患者の腎臓をレシピエントに移植すれば、がんが転移する危険性があることは重大である。日本移植学会等も調査に乗り出し、42件の病気腎移植について検討を加え、2007年3月31日、関連4学会が、こうした実験的医療が医学的・倫理的な観点から実施されていたことに対して非難声明を出した。

 真の法的・倫理的問題は、この種の医療行為が「治療的実験」ないし「実験的治療(医療)」の段階にあるものであり、したがってプロトコール作成のうえで、ドナーとレシピエント双方についてインフォームド・コンセントの徹底をし、利益とリスクの衡量をしてリスクが著しく上回らないことを確認し、倫理委員会の審査を経て人体実験・臨床試験のルール(メディカル・デュープロセスの法理)に則って実施されるべきであったのに(甲斐克則『被験者保護と刑法』〔2005・成分堂〕参照)、それが無視されていた点にある。他方、臓器不足の現状からして、腎移植であれ、「第三の道」として病気腎移植の禁止に反対する見解も根強い。結局、選択肢は3つある。第1は、ルールのない現状の追認であるが、これはもはや許されないことは明らかである。第2は、法律またはガイドラインで病気腎移植を全面禁止することである。しかし、病気の種類も様々であり、ドナーの希望が強く、レシピエントの希望とも合致し、かつ双方に高度の危険性がない場合、全面禁止することには抵抗もあるであろう。そこで、第3に、ドナーの疾患を入念に確認し、プロトコール作成のうえで、ドナーとレシピエント双方についてインフォームド・コンセントを徹底し、利益とリスクの衡量を慎重に行い、リスクが著しく上回らないことを確認し、厳格な第三者的倫理委員会の審査を経て、人体実験・臨床試験のルール(メディカル・デュープロセスの法理)に則って実施する場合にかぎり例外的に認めることも検討の余地がある。2007年4月23日段階の厚生労働省の「生体腎移植に関する指針案」も、この方向性にあると思われる。」



2.この論文の良いところは、病気腎移植を例外的にでも認めるべきであるという主張をしている点です。
(1) 

「ドナーの疾患を入念に確認し、プロトコール作成のうえで、ドナーとレシピエント双方についてインフォームド・コンセントを徹底し、利益とリスクの衡量を慎重に行い、リスクが著しく上回らないことを確認し、厳格な第三者的倫理委員会の審査を経て、人体実験・臨床試験のルール(メディカル・デュープロセスの法理)に則って実施する場合にかぎり例外的に認めることも検討の余地がある。2007年4月23日段階の厚生労働省の「生体腎移植に関する指針案」も、この方向性にあると思われる。」


「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」の改正案についての理解についても、例外的に、臨床試験としては病気腎移植を認める案と評価していて、この案の結論が妥当であると主張している点もよい点でしょう。

改正案の文言を解釈する限り、病気腎移植を臨床試験としては認めるというのが素直な理解ですから、法学者としては真っ当な理解です。もっとも、日本移植学会は、事実上全面禁止する予定でいるわけですが。


(2) また、この見解は、病気腎移植については、インフォームドコンセントの徹底、リスクが著しく上回らないことの確認、厳格な第三者的倫理委員会の審査を経て、臨床試験のルール(メディカル・デュープロセスの法理)に則って実施する場合にかぎり例外的に認めるというものです。

甲斐教授が自説を披露し、その自説の売り込みをしているという面もありますが、今の日本の医療のレベルでは、臨床試験のルール(メディカル・デュープロセスの法理)に則って実施するというのが、臓器不足の現状と病気腎移植への抵抗感(市民の側の理解不足、移植医側の医学的知識不足が原因)を考えると、現実的な結論なのだと思います。

もっとも、かなり実施されていた「生体腎移植での病気腎移植」では、レシピエントにとっては同じく病気腎移植であるのに、倫理委員会に諮るわけではなかったのですから(最近の秋田大病院での事例)、倫理委員会を重視することは不均衡のように感じます。


(3) この見解の面白いところは、ドナーとレシピエントの双方の意思確認や臨床試験のルールで実施することを強調し、提供された臓器を日本臓器移植ネットワークの手続きによって分配することを予定していないのです。

病気腎移植も臓器移植の問題であることは確かですから、日本臓器移植ネットワークによって分配するのも一案だとは思います。臨床試験の段階だとしたら、日本臓器移植ネットワークによって分配するのは非現実的ですが、いずれは特別枠という形で実施することも可能でしょう。ところが、甲斐教授は、日本臓器移植ネットワークによる分配を予定せず、「臓器の公平な分配がなされなかった」という批判があったことも言及していません。甲斐教授にとっては、「臓器の公平な分配がなされなかった」という批判は、病腎移植の真の問題とは無関係と考えているようです。




3.しかし、この論文には多くの問題点が含まれています。

(1) この論文は、大雑把に言えば、手続きを重視しようという主張です。手続き不足であったことが「病気腎移植の真の問題」であるとして、その手続きのみに着目して具体的な手続きを提示していることに尽きるといえます。手続きの重視自体は悪いことではないのですが、「臓器不足だから病気腎移植を認めてよい、あとは手続きだけが問題」という論調だけではあまりにも理解不足な論文です。

腎不全の患者にとっては、手術の手続き如何よりも“腎不全の状態から回復する”という結果こそ一番希望していることです。さらに、病気腎移植の結果生じるリスクを考慮するのも重要ですが、その前に、病腎移植を実施したとしても生着しなければ、患者にとって何の意味もありません。

病気腎移植では、極めて優れた技量をもつ医師によって実施されないと生着させることが困難なのですから、極めて優れた技量をもつ医師によって実施されることが不可欠なのです。甲斐教授の論文では、病気腎移植実施において最も必要とされることついて無視されているのです。致命的な欠落のある論文といえるでしょう。


(2) この見解は、移植する際の手続きが真の問題だと理解し、世間で言われてる「ドナー保護こそが問題」という点については、ほとんど無視しています。

病気腎移植とは、主として移植目的で提供するのではなく、治療目的で摘出した臓器を使うことであるのですから、摘出自体の医学的妥当性という「ドナー保護」は、議論に値しないと考えているのかもしれません。しかし、病気腎移植が(臨床試験という形でも多くの病院に)広く普及するようになれば、移植優先にならないよう、摘出自体の妥当性があるのかに注意する必要があります。


(3) 甲斐教授もまた新聞報道を鵜呑みにし、疑問を抱いていないのです。

「中には、ドナーからの腎臓摘出に適さなかったケースもあった。何よりも、腎がん患者の腎臓をレシピエントに移植すれば、がんが転移する危険性があることは重大である。」


外国の論文(タイオーリ教授が移植医療専門誌『トランスプランテーション』において発表した、イタリアでがんのドナー(臓器提供者)から臓器移植した後のがん発症に関する共同研究論文)によれば、腎がん患者の腎臓をレシピエントに移植しても、がんは転移はないか、ほとんどまれであるという論文がでているのですし、M医師らの移植においても、臓器を提供した患者の方は死亡していても、がんの部分を切除した腎臓の移植を受けた患者にはがんは転移していませんでした。

病腎移植においては、「生体腎移植での病気腎移植」の事例も含めて、レシピエント側にどのような影響があるのかについて、医学上、客観的・正確に検証していくことが必要なのです。「腎がん患者の腎臓をレシピエントに移植すれば、がんが転移する危険性がある」という思い込みを捨てるべきなのです。


(4) 甲斐教授が提示する手続き要件についても疑問があります。
「厳格な第三者的倫理委員会の審査を経て」実施するといいますが、日本の医療機関が抱える倫理委員会は、各医療機関ごとにある以上、当然ながら倫理委員会の委員は身内を含めたものであり、その審査内容は非公開がほとんどです。

「厳格な第三者的倫理委員会」を設置するとなれば新たな委員会を設置することになります。そうなると、どこにその委員会を設置するのか、どれだけの数を設置するのか、その設置・維持費用は誰が負担するのか、各医療機関が抱える倫理委員会と重複させて審査(二重審査)するのかなどの多くの問題点を解決する必要があります。

何よりも、臨床実験実施の際に行われる倫理委員会の審査は、各医療機関で行っていたのに、なぜ、病気腎移植だけ「厳格な第三者的倫理委員会」を設置する必要があるのか、アンバランスです。諸外国ですでに(死体腎移植において)病気腎移植は実施され、「生体腎移植での病気腎移植」は倫理委員会の審査もなく実施されることもあったのですから、病気腎移植問題だけ、「厳格な第三者的倫理委員会」を設けるべきなどと言って、大騒ぎしてみせるのはどうかと思います。もっと冷静さが必要です。

米国の移植医療では、ルールは各医療機関それぞれであり、臓器不足解消に向けて(死体移植での)病気腎移植をできる限り認めているのであり、患者にとってよい結果をもたらすことを第一義としています。法律の研究者は手続きを重視する傾向にあり、そのこと自体は不当ではないのですが、患者の希望は何かを考え、ルールよりも結果(病腎移植によって臓器不足の解消につながる、よい結果をもたらすための医師の技量の必要性など)を重視すべきだと思います。

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2007/06/10 [Sun] 23:41:32 » E d i t
3月ころの報道でしたが、病気腎移植問題について、病気腎を摘出することが傷害罪にあたるのではないかとの報道がありました。検証し残していましたので、触れておくことにします。

移植に限らず、手術はすべて侵害を傷つけるのですから、傷害罪(刑法204条)の構成要件に該当します。ただ、医療行為(治療目的、医学上の法則に従うこと、患者の同意)ということで(又は被害者の同意という理論で)、違法性を阻却し不可罰となる、という論理の中で議論するのが基本です。これを確認しておきます。


1.報道記事を2つほど。

(1) YOMIURI ONLINE(関西発:問われる腎移植)(2007年03月01日)

 「病気腎移植問題、傷害罪の可能性も

◆学会でも言及

 宇和島徳洲会病院の万波誠医師(66)らによる病気腎移植問題で、岡山、広島両県の5病院での病気腎摘出を検証した厚生労働省調査班委員の臼木豊・駒沢大教授(刑法)が28日、石川県で開かれた日本臨床腎移植学会で「移植を念頭にして臓器提供者に摘出をすすめたのなら、傷害罪にあたるかもしれない」と批判。医学的な問題だけでなく、刑事責任追及の可能性があるとの見解を示した。

 同じ調査班委員で移植医の高原史郎・大阪大教授は宇和島徳洲会など4病院の調査委員会の状況に触れ、「意図的に調査結果を曲げたり、不十分な内容にするなら、関係学会で厳しく対応する」とけん制した。

(2007年03月01日 読売新聞)」



(2) 特集宇和島 腎移植2007年03月01日(木)付 愛媛新聞

「病気腎」を問題視 厚労省調査班員が講演 臨床腎移植学会

 日本臨床腎移植学会(会長・高橋公太新潟大教授)の第四十回学会が二十八日、石川県加賀市で三日間の日程で始まった。宇和島徳洲会病院(宇和島市)の万波誠医師(66)らによる病気腎移植について、厚生労働省調査班のメンバーが講演で、医学的妥当性や手続き面などを問題視する意見を述べた。

 同調査班の高原史郎大阪大大学院医学系研究科教授(泌尿器科)と、臼木豊駒沢大法学部教授(刑法)が講演。

 万波医師を支援する大学関係者が病気腎の移植成績が悪くないと主張していることに絡み、高原教授は「データの取り方で良くも悪くもなる」とし、「悪性腫瘍(しゅよう)を持つドナー(臓器提供者)から腎移植した二百七十例のうち、43%の患者が同腫瘍を発症」などとする米国の研究発表を紹介。「米国には生体腎移植時のルールはないが、死体腎移植では悪性腫瘍が絶対禁忌になっている」と説明した。

 臼木教授は「(病気腎移植を)法律で禁じる必要はなく、患者が本当に自発的に申し出た場合は否定できない」との考えを示す一方、他者に移植することをドナー側担当医が持ち掛ける行為は、自発的意思を担保する面から「絶対に駄目だ」と強調した。

 会場からは「患者側から摘出を申し出ることなどあり得ない」「根本的に間違った医療だ」などの声が上がる一方、「患者から申し出る『例外』もゼロではなく、オープンにやれば許される」との意見も出た。

 腎臓病関連の五学会は三月下旬、病気腎移植問題に対する統一見解を声明の形で出す考え。同移植禁止の内容となる見通しで、関係者によると、悪性腫瘍とネフローゼ症候群を絶対禁忌と明示する方向になっている。(以下、略)」




2.傷害罪にあたる可能性があり、刑事責任を追及される可能性があると言及したのは、臼木豊駒沢大法学部教授です。この見解を検証します。

(1) 

 「臼木豊・駒沢大教授(刑法)が28日、石川県で開かれた日本臨床腎移植学会で「移植を念頭にして臓器提供者に摘出をすすめたのなら、傷害罪にあたるかもしれない」と批判。医学的な問題だけでなく、刑事責任追及の可能性があるとの見解を示した。」(読売新聞)

要するに、移植目的での摘出要求は、患者の同意は無効となり、傷害罪にあたるということでしょう。

しかし、生体腎移植は、移植目的での臓器を摘出するものです。ここでは誰か提供を勧められたのか、提供者が自発に思いついたかによって、摘出が違法となるといった議論はありません病気腎移植の場合についてだけ、誰か提供を勧められたのか、提供者が自発に思いついたかを問題にするのは不均衡です。

同意が有効かどうかについては、「これから行われようとする医的侵襲内容を完全に認識した上での真摯な同意」(前田雅英「刑法総論講義」(第4版)309頁)があれば、よいのですから、誰か提供を勧められたのか、提供者が自発に思いついたかは、同意の有効性とは非常に関係が乏しいのです。

この理由は妥当でないと考えます。


(2) 

 「臼木教授は「(病気腎移植を)法律で禁じる必要はなく、患者が本当に自発的に申し出た場合は否定できない」との考えを示す一方、他者に移植することをドナー側担当医が持ち掛ける行為は、自発的意思を担保する面から「絶対に駄目だ」と強調した。」(愛媛新聞)

要するに、ドナー側担当医から臓器提供を持ちかけられると、患者は拒否できず、同意は無効であるということだと思います。
確かに、手術中に執刀医から臓器提供を持ちかけられるとか、緊急の施術中に臓器提供を持ちかけられる場合でしたら、事実上拒絶できず、そのような同意は無効とはいえると思います。

しかし、本来、医療契約は自由な意思で締結されるのですから、患者側は不満があるか否かに関わらず、自由に病院を移ることができ、担当医は何時でも変更できるのですから、通常、臓器提供を拒否できない状態になく、同意が無効であるとの評価は困難です。大体、万波医師らの事例を見ても、手術中に執刀医から臓器提供を持ちかけられるとか、緊急に手術を行うというものではないのです。


ドナー(予定)患者にとって臓器提供を最も拒否しづらい相手は、担当医ではなく家族(及び親戚)です。(生体移植について)家族から臓器提供を暗に求められることはかなりあると思いますが、家族が臓器提供を求めることは禁止されていません。

ドナー(予定)患者にとって臓器提供を最も拒否しづらい相手の要求行為を禁止せずに、ドナー側担当医から臓器提供を持ちかけることは、自発的意思を担保する面から「絶対に駄目だ」というのは、あまりにも不均衡で不合理です。

ドナー側担当医から臓器提供を持ちかけたかどうかは、同意の有効性判断の1要素となるでしょうが、ドナー側担当医から臓器提供を持ちかけたかどうかを最も重要な要素として「絶対に駄目だ」とする理屈は、理由がなく非常に無理があります。同意が有効かどうかは、「これから行われようとする医的侵襲内容を完全に認識した上での真摯な同意」(前田雅英「刑法総論講義」(第4版)309頁)があればよいのですから。


このように検討すると、病気腎を摘出することが傷害罪にあたる可能性があるという臼木教授のご見解は妥当でないと分かります。臼木豊・駒沢大教授のご見解は、少し検討しただけでも妥当性がないと判断できるものであって、とても議論に値するものではないのですが、主張した以上、ぜひ論文として発表して頂きたいと思います。もっとも、多くの刑法学者は苦笑し、無視することになるでしょうが。



3.不思議なのは、なぜ3月ころに傷害罪にあたるという主張をしたのかということです。それは、病腎移植が傷害罪にあたるのかどうかについては、すでに昨年11月の時点で、問題にならないことは分かっていたことです。

 「○木下委員
 今の学会の声明というか考え方は当然のことだと思うのですが、そもそもこれは移植という視点ではなくて、手術の適応自体が問題にならないのでしょうか。何か刑法に抵触しないかどうかという問題はないでしょうか。(中略)

○町野委員
 非常に手短に、今の御質問について。一つ、犯罪にならないかということですが、これは恐らく今までのやり方だと難しいだろうと思います。要するに不必要な摘出手術をしたということが一つですね。それから、後で移植をした相手方に対して何か不利益が生じたときはもちろん刑事事件の訴訟は起こりますが、不適切な摘出手術をしたというのも、前に富士見産婦人科事件というのがありまして、あれは結局のところ刑事事件にならなかった。あのところではかなり医療の裁量性が広く認められている経緯がありますので、今回、それを急にきつくすることは難しいだろうと思います。」(06/11/27 第24回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録


要するに、腎不全の腎臓について、内科治療か外科治療か、外科治療としても全摘か部分切除か、患者の状態(年齢、健康状態など)にもよるのですから、医療の裁量の幅は広いであって、捜査機関側も医療の裁量の幅が大きいことを十分に理解しているのです。ですから、仮に「不適切な摘出手術」であっても、医療行為として違法性を阻却、または刑事責任を問うには軽微な違法であると理解されているわけです。

それゆえ、病腎摘出が仮に「不適切な手術」であっても、起訴され刑事責任追及がなされる可能性は著しく低いのです。ですから、今回も刑事事件にならないということになります。


このように検討してみると、病腎移植問題では、論理の遊びとして傷害罪を議論することあるとしても、現実的には傷害罪にあたるとして、刑事責任追及がなされることはまずありません。刑事責任追及の可能性がほとんどないのに、問題視することは、暴力団の常套手段である「脅しをかける」に等しい行為です。「脅しをかける行為」は恥ずべきこととして、現に慎むべきであると考えます。

傷害罪の可能性に言及した新聞社は、読売新聞と愛媛新聞です。暴力団対策を謳う特集記事を連載していた読売新聞が「脅しをかける行為」を行うのですから、読売新聞にとっての「暴力団対策」や、「脅迫行為」への批判は、場合によるということなのでしょう。読売新聞は部数が多いだけで評価が低いのもうなずけるところがあります。

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2007/06/06 [Wed] 20:59:23 » E d i t
九州大学(福岡市)で5月27日、臓器売買をめぐる国際シンポジウムが開かれました。このシンポジウムについては、幾つか報道するものがありましたが、東京新聞6月3日付「こちら特報部」では詳しく記事にしていました。
そこで、東京新聞「こちら特報部」の記事を中心として、報道記事を紹介したいと思います。


1.まずは、東京新聞の記事以外のものを最初に。

(1) 読売新聞平成19年5月28日付(九州発)

 「フィリピン政府の腎臓売買公認検討で国際シンポ…九州大

 フィリピン政府が腎臓売買を事実上公認する制度の導入を検討していることを受け、九州大学(福岡市)で27日、臓器売買をめぐる国際シンポジウムが開かれた。出席した同国関係者は「提供者に渡る謝礼は売買に当たらない」と制度案の正当性を強調した。

 新制度案は、移植を受けることを希望する外国人に、自分の手術代以外に、提供者への生活支援費や別のフィリピン人患者の移植費用を負担させる内容。外国人の医療費を一元管理し、ブローカーの介在が指摘される水面下の腎臓売買の一掃を目指している。

 シンポジウムには、タイ、インドの医師や倫理学者らも参加し、経済格差に起因する腎臓売買問題を議論した。粟屋剛・岡山大学大学院教授(生命倫理)は、「患者から直接、提供者に謝礼が渡らないとしても、日本人がこの制度に沿って移植した場合、国内外を問わず臓器売買を禁じる日本の臓器移植法に抵触しかねない」と指摘した。

 このほか最終討議では、フィリピン人の倫理観に変化が生じて謝礼目的の腎提供がさらに増える可能性を懸念する声があがった。」



(2) 産経新聞(2007/05/27 20:48)

臓器売買シンポジウム開催 比の合法売買案アピール

 移植医療のドナー(臓器提供者)が世界的に不足し臓器売買が問題になっているなか、九州大学(福岡市)で27日、臓器売買のシンポジウムが開かれた。

 シンポジウムでは、岡山大大学院の粟屋剛教授(生命倫理学)が、フィリピンとインドの腎臓の臓器売買の実態や、死刑囚から臓器を摘出する中国の死刑囚ドナーについて、現地調査した結果を報告した。

 その中で、粟屋教授は「フィリピンとインドには貧しい人々が多く存在するから、彼らをドナーにする臓器売買が成り立つ。中国は死刑が多いので死刑囚をドナーにしている」と指摘した。

 このシンポジウムに招かれたフィリピン国立腎臓・移植研究所のエンリケ・オナ所長らアジアの移植関係者も講演を行った。

 オナ所長は現在、フィリピンで検討が進められている臓器売買を合法化して貧しいドナーを保護する新制度に関し、その正当性を訴えた。

 しかし、フィリピンで仮に臓器売買が合法化されたとしても、日本の患者がこの制度に基づいてフィリピンで臓器移植を受けた場合、臓器移植法に違反する可能性が強い。

(2007/05/27 20:48)」



これらの記事だけみると、フィリピンが事実上、「臓器売買」を認めることを検討していることを巡って議論したように読めます。

「出席した同国関係者は「提供者に渡る謝礼は売買に当たらない」と制度案の正当性を強調した。

 新制度案は、移植を受けることを希望する外国人に、自分の手術代以外に、提供者への生活支援費や別のフィリピン人患者の移植費用を負担させる内容。外国人の医療費を一元管理し、ブローカーの介在が指摘される水面下の腎臓売買の一掃を目指している。……

 粟屋剛・岡山大学大学院教授(生命倫理)は、「患者から直接、提供者に謝礼が渡らないとしても、日本人がこの制度に沿って移植した場合、国内外を問わず臓器売買を禁じる日本の臓器移植法に抵触しかねない」と指摘した。」


どうやら、「売買」に当たるのではないかという批判を受けているため、フィリピン政府は「臓器売買」ではないと主張したようですし、栗屋教授も、日本の臓器移植法における臓器売買等の禁止(11条)に当たりうると述べています。

(臓器売買等の禁止)
臓器移植法第十一条 何人も、移植術に使用されるための臓器を提供すること若しくは提供したことの対価として財産上の利益の供与を受け、又はその要求若しくは約束をしてはならない。(中略)
  6 第一項から第四項までの対価には、交通、通信、移植術に使用されるための臓器の摘出、保存若しくは移送又は移植術等に要する費用であって、移植術に使用されるための臓器を提供すること若しくはその提供を受けること又はそれらのあっせんをすることに関して通常必要であると認められるものは、含まれない。

(罰則)
第二十条 第十一条第一項から第五項までの規定に違反した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
  2 前項の罰は、刑法(明治40年法律第45号)第三条の例に従う。



日本の臓器移植法は、「臓器を提供すること若しくは提供したことの対価として財産上の利益の供与」を受ける場合を禁止していますが、いかなる費用を出してもいけないという規定ではありません

「臓器の摘出、保存若しくは移送又は移植術等に要する費用」であって、かつ、「移植術に使用されるための臓器を提供すること若しくはその提供を受けること又はそれらのあっせんをすることに関して通常必要」な費用を出すことは適法なのです。要するに、レシピエント側がドナー側に通常かかる移植手術費・入院費を出すことは適法ということです。

 「フィリピンでは、外国人患者に<1>ドナーへの生活支援費(1万2000ドル〔約144万円〕)、<2>別のフィリピン人患者1人分の移植手術代(約96万~120万円)を支払わせる(外国人患者は手術・入院代を併せて総額約600万円を支払うことになる)新たな臓器提供制度を政府が公認する方針を固め、国際的に法的・倫理的議論を醸成している。筆者もすでにコメントを出したように、特に<1>の生活支援費については、この臓器提供制度を日本人が利用すれば、わが国の臓器移植法11条及び20条1項の臓器売買罪に当たるように思われる(読売新聞2007年2月2日付朝刊参照)。今回の新たな制度が始まれば、日本人に影響を及ぼしうる。」(早稲田大学教授・甲斐克則「生体腎移植」法学教室2007年6月号3頁)



フィリピンの制度では、自分の手術代以外に、提供者への生活支援費や別のフィリピン人患者の移植費用を負担させるものですが、すべてが臓器提供の「対価」であるとして禁止されるのでなく、このうち、生活支援費を出す点において、臓器売買罪に当たりうるということです。

ただし、注意すべきことは、フィリピンの制度は、臓器提供を行った者すべての者に費用負担をさせるというのではなく、外国人に対してのみ費用負担を課すものです。これは、外国人の移植を管理・抑制し、悪徳ブローカーの介在を排除するという、国家政策・社会政策上、費用を負担させるというものであって、臓器提供に関して契約当事者の自由意思に委ねた「対価」ではないのです。
こうなると、臓器提供の「対価として財産上の利益の供与」をしたとはいえないようにも解されます。

特に生体腎移植では、死体腎移植と異なり、ドナー側は提供したことで体の不調が生じる可能性があるのですから、ドナー側に対して多くの医療費がかかる可能性があります。レシピエント側が移植によって利益を得ている以上、その費用をレシピエント側に負担させることは不合理とはいえません。
そうすると、日本の臓器移植法下においても、提供者への生活支援費を出すことは、「移植術等に要する費用」で「通常必要」(11条6項)な費用ということも可能であるようにも思えます。

しかも、もし日本の患者がこの制度に基づいてフィリピンで臓器移植を受けた場合、国外犯処罰規定により、臓器移植法に違反するとして、起訴すると、移植患者は支払い不能に陥る可能性が生じます。そうなると、フィリピン政府は、日本政府に対して国会政策に対する干渉であるとして、補償を請求する可能性があり、外交問題となりかねません。外交問題を生じてでも、起訴すべき必要性はないのですから、起訴する可能性は極めて低いと考えられます。


このようにみていくと、フィリピンで仮に臓器売買が合法化された場合、「日本の患者がこの制度に基づいてフィリピンで臓器移植を受けた場合、臓器移植法に違反する可能性が強い」として、起訴する可能性はきわめて低く、「今回の新たな制度が始まれば、日本人に影響を及ぼしうる」かどうかはかなり微妙であると考えます。もちろん、日本政府や学者が、臓器売買罪に当たりうると誇大宣伝すれば、事実上、日本人がフィリピンに行って移植することは減少するでしょうが。

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2007/06/05 [Tue] 08:11:54 » E d i t
安倍内閣及び与党による「年金」や「政治とカネ」の問題の対応のせいで、各報道機関による世論調査では、すべて安倍内閣支持率が急落しました。共同通信では、35%、朝日新聞に至っては、30%にまで落ち込みました。

内閣支持率、35%に急落 安倍政権発足以来、最低に

 共同通信社が1、2両日実施した緊急電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は35・8%と5月中旬の前回調査より11・8ポイント落ち込み、昨年9月の内閣発足以来、最低となった。光熱水費問題などを指摘されていた松岡利勝前農相の自殺や、社会保険庁改革関連法案などの強行採決が影響したとみられる。

 松岡氏を一貫して擁護した安倍晋三首相が任命責任を「果たしていない」とする人は69・5%に上り、「果たしている」の19・9%を大きく引き離した。また、参院選を今、実施した場合に投票しようと思う政党を聞いたところ、民主党を挙げた人が28・8%と、自民党の26・5%を上回った。

2007/06/02 18:16 【共同通信】」(【共同通信】2007/06/02 18:16



内閣支持率最低 30% 政権運営手詰まり感
2007年06月04日00時31分

 安倍首相の政権運営が危険水域に近づいた。参院選に向けた朝日新聞の第4回連続世論調査(2、3日。電話)では、内閣支持率は30%で前回(5月26、27日)の36%からさらに下落し、政権発足後最低を更新。不支持率は前回の42%から49%に上昇した。ずさんな年金記録問題への政権の対応や、自殺した松岡利勝前農林水産相をめぐる「政治とカネ」の問題への批判が集まった。政府・与党は年金問題に迅速な対策を取ることで政権を立て直す構えだが、参院選公示を約1カ月後に控え、首相の政権運営には手詰まり感も出始めている。(中略)
 
 支持率低下の背景には「年金」や「政治とカネ」の問題への取り組みに対する厳しい見方がある。

 5千万件の年金記録がだれのものか分からないなど年金をめぐる問題について、衆院での審議が「十分ではなかった」は78%を占め、「十分だった」はわずか7%。

 1年以内に記録を点検するなどと言っている政府の対応は、「適切だ」が49%で「適切ではない」の38%を上回るものの、政府の対応では年金が正しく支給されない恐れがある、との野党の主張を「その通りだ」と思う人は62%にのぼる。自分の年金記録が「きちんと管理されている」と思う人が50%に対し、「不十分かもしれない」は43%あった。

 自殺した松岡前農水相の政治資金をめぐる疑惑について、安倍首相の対応が「適切ではなかった」は69%に達する。「適切だった」は14%で、松岡氏をかばい続けた首相に批判的な見方が強い。松岡氏の自殺で内閣の印象が「悪くなった」は61%で、「そんなことはない」の32%を大きく上回った。

 政党支持率は自民28%(前回29%)、民主17%(同18%)などで、無党派層は50%(同47%)だった。」(朝日新聞平成19年6月4日付朝刊1面



「5千万件の年金記録がだれのものか分からないなど年金をめぐる問題について、衆院での審議が『十分ではなかった』は78%を占めている」わけですが、すでに衆院で採決してしまった以上、取り返しがつきません。「自殺した松岡前農水相の政治資金をめぐる疑惑について、安倍首相の対応が『適切ではなかった』は69%に達する」のですが、自殺という衝撃は、家族のみならず多くの人々の心を傷を付けるのですから、安倍首相の顔を見るたびに「自殺」を思い浮かべ、嫌悪感を抱かせます。


1.「憲法改正ごっこ」や「教育再生ごっこ」を楽しもうと思っていた安倍首相や与党にとっては不本意ですが、支持率回復のため、色々な手立てを慌てて講じました。

(1) まず行ったのは、菅直人民主党代表代行を批判するビラを作成して、首相自ら批判を行うことで、民主党に責任をなすり付け、批判をかわそうというセコイ方法です。

 「民主の年金漏れ争点化をけん制=歴代社保庁長官の責任追及-安倍首相

 安倍晋三首相は2日午後、参院選に向けた遊説で訪れた大津市で演説し、年金保険料の納付記録漏れ問題について「こういうシステムをつくった1996年当時の厚相は、今、口を極めてわが党を攻撃している菅直人民主党代表代行ではないか。この問題で互いに非難するのは無意味だ」と述べ、年金問題を参院選の争点にしようとする民主党の動きをけん制した。

 さらに首相は「96年にシステムを設計し、97年から導入して今日に至るまで、歴代社会保険庁長官を含めどんな問題があったのか。問題の所在、原因、責任を明らかにしていく」と述べ、有識者委員会で責任追及する意向を改めて示した。」(時事ドットコム(2007/06/02-19:20)


この方法は、安倍首相及び与党に対して余計に反感を抱かせる結果をもたらしました。

「自民党は先週末、年金記録問題についてチラシを作成し、都道府県連などに発送。チラシでは「基礎年金番号設計・導入時の厚相は菅直人・民主党代表代行」と批判している。

 しかし、菅氏が厚相だったのは橋本内閣時代で、菅氏の後任の厚相は小泉前首相。責任転嫁ともとれる宣伝戦術に自民党内からも「かえって世論の反感を買う」との声が噴出。森元首相は4日の大阪市の講演で「自民党もみっともない」と批判。首相が演説などで菅氏批判を繰り広げたことについても「総理も一緒になってそんなことを言い出している」と不快感を示した。

 このため、自民党執行部内にはチラシを作り直すべきだとの意見も出始めている。」(朝日新聞平成19年6月5日付朝刊1面



菅氏の厚相時代を含め、それ以後の政権は自民党が握ってきたのですから、自民党が菅氏に責任をなすりつけるのはお門違い(朝日新聞6月5日付社説)なのですから、安倍首相や与党による批判は不当です。

もともと、安倍首相は、党首討論で年金問題を「お互いに政党同士の政争の具にすべきでない」と言いながら、年金番号の統合を決めた時に厚相だった菅直人・民主党代表代行を非難するビラをつくり、先週末から大量にばらまき始めたのですから、安倍首相及び自民党は自ら「政争の具」へと駆り立てたのです。(朝日新聞6月5日付「社説」)。安倍首相は明らかに自己矛盾した行動を行っているのです。安倍首相は党首討論で「政争の具とすべきでない」と言ったことをすっかり忘れてしまっているのですから、安倍首相の頭は、3歩けば忘れるという鳥のようです。

森元首相は4日の大阪市の講演で「自民党もみっともない」と批判していますが、あの森元首相だけが真っ当なことをいうなんて、自民党も真っ当な人物がいなくなったようです。

自民党は恥ずかしくなって「チラシを作り直すべきだとの意見も出始めている」ようですが、みっともない態度をさらしてしまった以上、作り直したところで、好転することはないでしょう。


(2) 民主党への責任転嫁をして国民をごまかす戦術がうまくいかないようだと判断した、安倍内閣及び与党は、謝罪慣れしている柳沢厚労相に年金問題について謝罪させる方法を取ることにしました。ひどく唐突ですが。

 「厚労相、年金は「来年5月までに照合」

 国会では年金をめぐる論戦の場が参議院に移りました。また、柳沢厚生労働大臣は4日夕方に記者会見を開き、5000万件におよぶ、いわゆる「宙に浮いた年金」について、来年5月までに誰のものか照合すると明言しました。
 「国民は最終責任者であるあなた(安倍首相)に責任を求めているのであります」(民主党 山根隆治 議員)

 「政府のトップは私である以上、その責任はすべて私が背負っていると明確に申し上げております。政府の責任者として、国民の皆さまに大変申し訳ないという思いでございます」(安倍首相)

 この中で政府側は、年金問題について、国民の立場に立った対応だと強調。一方の野党側は不十分だと追及しました。

 「年金記録の問題では国民の皆さんにたいへんご心配をかけ、おわびをしなければいけない」(柳沢伯夫 厚労相)

 柳沢大臣はこのように述べ、国民に向けて謝罪しました。このタイミングで謝罪した理由については・・・。

 「安倍首相が大事な会議で海外出かける、こういうことですから、総理にもこの問題について、『後顧の憂い(=立ち去ったあとの心配)』と言ってはなんですが・・・」(柳沢伯夫 厚労相)

 「あすから安倍総理がサミットに出席するため」と言うのです。そのうえで柳沢大臣は、今回の問題について、実施期限を定めた対応策を明らかにしました。

 5000万件におよぶ、誰のものかわからない年金記録、いわゆる「宙に浮いた年金」については、来年5月までに誰のものかを確認することを明言しました。さらに、外部の有識者による検証会議を設置して、歴代長官などの責任を検証するとしています。(04日23:01)」(TBSニュース(2007年06月05日(火) 02時27分)


失望させられるのは、いま謝罪した理由です。「あすから安倍総理がサミットに出席するため」だから……だそうです。だとすると、安倍首相がサミットに行かなかったら謝罪する気がなかったのでしょうか? 柳沢厚労相は、安倍首相の「後顧の憂い」をなくすために謝罪したのであって、国民に向いての謝罪ではないのです。

やはり選挙対策として、柳沢厚労相は、国民をだまして安心させるために、急遽、謝罪することになったということなのだと思います。「産む機械」のときもそうでしたが、柳沢厚労相はただ謝るだけで、辞任することはないのですから、口先だけということでしょう。


柳沢厚労相は、5000万件におよぶ、誰のものかわからない年金記録、いわゆる「宙に浮いた年金」について、来年5月までに誰のものかを確認することを明言しましたが、本当に来年5月までに可能なのでしょうか? この点については、次の東京新聞6月2日付朝刊24・25面「こちら特報部」の記事を引用します。
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2007/06/02 [Sat] 08:36:12 » E d i t
社会保険庁の記録管理の不備で、年金額が減った受給者に本来の額を支給するための年金時効撤廃特例法案と社会保険庁改革関連法案は6月1日未明の衆院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決され、参院に送付されました。両法案は今国会成立が確実な情勢だそうです(東京新聞6月1日付)。
もっとも、国家公務員の「天下り」規制を柱とする政府の公務員制度改革関連法案については、「日替わり強行採決」を取りやめ、今国会での成立を断念しました。「宙に浮いた年金記録」問題や松岡利勝前農水相の自殺などで苦境に立つ首相官邸が、与党に成立を強く働きかけてきたが事実上、断念を受け入れたようです(朝日新聞6月2日付朝刊1面)。


1.まずは、年金時効撤廃特例法案の採決に関する報道記事から。

(1) 東京新聞平成19年6月1日付朝刊1面

 「年金特例法案が衆院通過 与野党、未明の攻防 『社保庁』も今国会成立へ
2007年6月1日 朝刊

社会保険庁の記録管理の不備で、年金額が減った受給者に本来の額を支給するための年金時効撤廃特例法案と社会保険庁改革関連法案は一日未明の衆院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決され、参院に送付された。両法案は今国会成立が確実な情勢。野党側は、逢沢一郎議院運営委員長解任決議案を提出するなど抵抗した。国会会期末(六月二十三日)まで一カ月を切った国会は、七月の参院選をにらみ、与野党の対立が一層強まっている。 

 民主、社民、国民新の野党三党は五月三十一日午後、両法案の衆院本会議採決阻止に向け、衆院に逢沢委員長、桜田義孝厚生労働委員長の解任決議案、さらに、「産む機械」発言や年金問題などへの対応が不十分として、柳沢伯夫厚労相不信任決議案をそれぞれ提出。

 各決議案は両法案に優先して衆院本会議で採決され与党の反対多数で否決された。共産党は各決議案に賛成した。

 野党側の各決議案提出を受け、同日午後二時半に開会した本会議は、二回の休憩を経て同八時すぎに再開。民主党の長妻昭氏による厚労相不信任決議案の提案理由説明が一時間五十分に及んだことから、両法案の採決は一日未明にずれ込んだ。

 特例法案は年金記録の不備で、年金額が少なくなっている受給者が本来の支給額を受け取れるよう請求権の時効(五年)を撤廃。年金記録の徹底調査も義務付けた。」



(2) 日テレNEWS24(<6/1 3:10>)

安倍首相「国民の不安は解消されると確信」<6/1 3:10>

 いわゆる「消えた年金」をめぐって大荒れとなった国会だが、年金時効撤廃法案と社会保険庁改革関連法案が1日未明、衆議院本会議で与党などの賛成多数で可決された。安倍首相は「国民の不安は解消されていくと確信している」と述べた。

 年金問題に対応するため与党が提出した年金時効撤廃法案と社会保険庁改革関連法案は1日午前1時過ぎ、与党などの賛成多数で可決され、衆議院を通過した。先月31日午後2時半に始まった本会議では、野党側が採決の引き延ばしを狙って柳沢厚労相の不信任決議案などを連発した。このため、法案の採決は深夜まで大幅にずれ込んだ。

 本会議での可決を受け、安倍首相は「私どもの対策によって、国民の不安は間違いなく解消されていくと確信しています」と述べた。一方、民主党・鳩山幹事長は「(法案は)急場しのぎで作ったものだから、魂が入っていない。これでは、国民の皆さんは救われない」と語った。

 今後、論戦の舞台は参議院に移るが、野党側は消えた年金問題を参議院選挙の争点にする方針で、与野党の攻防は一層激しくなることが予想される。」




年金時効撤廃特例法案は、5月29日に法案を提出し、委員会でたった4時間審議しただけで、強行採決しました。

 「各メディアの世論調査で内閣支持率が急落。あわてた安倍首相は27日、自民党の中川秀直幹事長に年金特例法案の今国会提出を指示。そこに松岡氏の自殺が飛び込み、さらに前のめりに。29日に同法案を急きょ提出し、委員会では30日に4時間審議しただけで採決を強行した。」(朝日新聞6月1日付朝刊1面「年金法案、未明の衆院通過 審議1日で採決」


これでは、野党側も十分に法案を検討することができませんし、これでは全く国会審議をしなかったのと同じです。

では、与党の多数でいずれ採決という結論が決してしまう以上、議会の審議は意味がないのでしょうか? 議会の審議にはどういう意味があるのかについて、考える必要があります。

 「議会の審議の意味は2つの観点から説明することができる。1つはもちろん建設的な議論にもとづいて法案を作成あるいは修正し、よりよい政策を作り上げていくことだが、もう1つはたとえ結果が変わらないとしても、公開の議場で、すなわち国民の目の前で議論を戦わせて法案などの問題点を明らかにすることである(これを「争点明示機能」という)。国民代表である議員が公開の場で討論を行い、多数の賛成で法案を承認してはじめて、成立した法律は民主的な正当性をもつといえるのであり、また、野党の立場からみれば、議論を通じて世論を喚起し、次の選挙で政権奪取を狙うことも可能にある。」(駒澤大学教授・大山礼子「特集:議会制民主主義と日本の国会『国会における議事進行の問題点』」(法学セミナー2004年11月号23頁)


要するに、議会の審議は、法案の問題点を公開の場で明らかにすることによって、国民に法案に関する情報を提供して注意喚起を促すものであって、そういう経過を経た後、多数の賛成で法案を承認することで、民主的正当性をもった法律となるわけです。

こんな短時間での採決を指示し、本会議で可決してしまったのに、安倍首相は

「『私どもの対策によって、国民の不安は間違いなく解消されていくと確信しています』と述べた。」

のです。要するに、安倍首相は、ただ国民の不安が解消されると自画自賛しているだけです。法案成立という結果があればよく、議会の「争点明示機能」を理解しておらず、議会を通じての国民への情報提供は不要だと考え、国会審議を非常に軽視したことを少しもおかしいと思っていないのです。

とすると、安倍首相は、議会制民主主義を採用する日本国の首相という地位にありながら、議会の審議というものを全く理解していないのです。安倍首相は、議会制民主主義に反する思想・考えの持ち主であって、反憲法的思想の持ち主でなのですから、日本国の首相としても議員としても不適格者であると考えます。

こういう首相としても議員としても不適格な人物の指示通り、与党の議員が唯々諾々と強行採決を繰り返すことは、与党の議員自体も「議会の意義」を理解していないものであって、不適格であるのです。こういう議員は、議会制民主主義から排除した方が懸命です。有権者は、今の与党議員が「議会の意義」に無理解であることをよく覚えておく必要があります。


安倍首相は「私どもの対策によって、国民の不安は間違いなく解消されていくと確信しています」と述べていますが、国民が社保庁に殺到しているのですから、安倍首相の言葉を全然信用していないことが分かります。

年金不安、窓口混雑 HPも接続困難に
2007年06月01日23時59分

 「宙に浮いた年金」問題で国会が混乱するなか、自分の年金記録を心配する人たちが相談窓口に続々と押し寄せている。年金時効特例法案が未明に衆院を通過した1日も、各地の社会保険事務所は大混雑。電話は鳴りっぱなしで、記録確認のための社会保険庁のホームページにはアクセスが殺到した。「宙に浮いた年金記録」をたぐり寄せる作業は容易ではない。

 埼玉県の所沢社会保険事務所。1日は通常の年金相談に来た140人に加え、いま問題になっている記録の照会に100人が訪れた。「連日、開庁前の7時ごろから並び始め業務開始時には20人ほどの列ができる」(吉田達生所長)という。

 待合室は順番待ちの人であふれ、常時2~3時間待ち。最も混雑した29、30日は「5時間待ち」に。このため相談受け付けは午後2時に終了したという。(中略)

 インターネット上の社会保険庁のホームページにも、ネットを通じて自分の年金加入記録を確認するため、ユーザーIDとパスワードを取得する申し込みが殺到。従来は1日500件前後だった申込数は、5月20日にいきなり3000を突破。24日には7000を超え、31日には1万4000近くに達した。ページ自体へのアクセスも困難な状態だ。

 通常は申し込みから2週間程度で自宅にIDとパスワードを郵送するが、それが遅れることも避けられないという。

 電話で全国からの相談を受け付ける「ねんきんダイヤル」も今週に入ってから、普段の4倍の1日4万件を超える日も。今回は現役世代からの問い合わせが約半数と多いのが特徴だ。

 社会保険庁幹部は「従来は中高年の関心が高かったが、今回はネットや電話で若い世代も自分の記録を確認しようとしているようだ」と話す。(以下、略)」(朝日新聞6月2日付朝刊


不安に感じている国民は社会保険事務所に殺到していますが、常時2~3時間待ちで、社会保険庁のホームページ自体へのアクセスも困難な状態です。これでは、社会保険庁も殺到する国民に対応するだけで手一杯の状態なのです。

しかも、政府の改革案では、社保庁は3年後に非公務員型の公法人に改組される。それに向けて社保庁の職員は減らされ、新法人になれば多くの仕事が民間に委託され、人員はもっと減るのです。そんなリストラが進む中で、保険料の徴収率を上げるのも大変なのに、「宙に浮いた年金記録」の調査作業を1年以内にすませることなんて、到底できないでしょう。調査作業にかかる費用は、大手保険会社によると、1000億円かかると推定されていますので(朝日新聞6月1日付朝刊2面)、調査財源をどこから出すのかが非常に気になります。
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