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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2006/01/17 [Tue] 23:45:25 » E d i t
1月17日は、どれも新聞の1面になるような大きな事件が幾つかありましたので、簡単にコメントしたいと思います。


1.まず16日夕方からのことですが、ライブドアへの強制捜査が行われました(16日午後6時半から17日午前6時ごろまで)。


(1) 朝日新聞(1月16日付朝刊1面)によると、

「インターネット関連企業『ライブドア』の関連会社が株価をつり上げるために虚偽の事実を公表した疑いがあるとして、東京地検特捜部は16日、証券取引等監視委員会と合同で、証券取引法違反(偽計取引、風説の流布)容疑で東京都港区の六本木ヒルズにあるライブドア本社や堀江貴文社長の自宅など関係先数カ所を家宅捜索した。
 虚偽の事実を公表した疑いが持たれているのはライブドアマーケティング(東京都港区、岡本文人社長)=東証マザーズ上場。…」


ここで違法行為と疑われているのは、証券取引法158条で、相場の変動などを目的として株などの売買で人をだましたり、株などに関して事実に基づかない情報を流したりすることは、不公正な取引ですので、禁じられています。5年以下の懲役または500万円以下の罰金が課せられることになります(証券取引法197条)。
 ライブドアは、事実上買収済みだったのに、新たに買収すると嘘の事実を公表したこと、業績を水増しして業績が良いように嘘の事実を公表したことが、証券取引法158条違反にあたるのではないかとされているわけです。


 SANSPO.COM(1月17日付)によると、土本武司白鴎大法科大学院教授の話として、

「虚偽の情報を流したことが、もうけるために有価証券などの相場を変動させる目的だったと立証できるかどうかがポイント。株取引では当然損得が出てくるので微妙な要素はあるが、東京地検は地道な基礎捜査を進め、十分に検討したうえで家宅捜索に踏み切ったはずだ。風説の流布は軽い刑ではなく、公正な証券取引を実現する上で立件する意義は大きい」


としています。

ライブドアの監査法人へも捜索を行っているようですし、堀江社長への責任が及ぶことは必然でしょう。証取法違反だけについて東京地検が強制捜査をしているとは思えませんので、これ以上、犯罪事実が出てくるようだと、ライブドアの存続自体が危ぶまれるかもしれません。



(2)また、朝日新聞(1月17日朝刊)で、佐山展生・一橋大大学院教授は、

「企業の公開情報が正しいと思って売買している投資家への背信行為だ。もはや市場で株式を公開する資格はない。背景に、利益の最大化、つまり金もうけのためなら市場を軽んじもいい、という意識が垣間見える。市場では今後、新興IT(情報関連)企業は大丈夫か、といった疑念が広がるかも知れない。しかし今回の捜査は、『法のすき間を突いても構わない』という傾向に歯止めをかける効果もあるだろう。」


と述べています。

SANSPO.COM(1月17日付)に出ていましたが、堀江社長は、

「投資家にとって邪道かどうかは関係ない。ずるいといっても合法だったら許される。倫理観は時代で変わるから、ルール以外にない」(17年3月、共同通信インタビュー)


と言っていました。
このように、堀江社長は遵法意識が希薄でした。「法を守る」ということは、違法ぎりぎりまで許されるのではなく、法のすき間があるなら行っていいのではなく、「法の趣旨からして、してはならないことはしない」ことだと思うのです。堀江社長の行動については、本当に証取法違反があるか否かにかかわらず、非難されるべき言動をしていたといえます。



(3) この点に関して、毎日新聞(1月17日付)では、「強制捜査 衆院選の堀江氏支援、首相「別問題」--亀井氏は批判」という表題で、

「小泉純一郎首相は17日昼、堀江貴文社長を昨年の衆院選で自民党が支援したことについて、『その時点で郵政民営化賛成の方は応援するということなので、今の問題とは別問題。会社でも採用した方が不祥事を起こしたから採用が間違っていると言えるのか』と記者団に強調した。
 これに対し、広島6区で堀江氏と戦った国民新党の亀井静香代表代行(元自民党政調会長)は17日昼、東京都内で記者団に『(堀江氏を)『小泉改革の旗手』として私の選挙区に刺客として送り込んだ。そういう意味で(首相に)責任がある』と批判した。一方、自民党の武部勤幹事長は17日午前の記者会見で、『個人的に応援したが、誠に遺憾の極みであり、厳正な捜査当局の捜査を望みたい』と語った。」


という記事が出ています。

有権者が投票する際の判断には、候補者・候補者の所属する党の全体を考慮して判断するわけです。政党は民意を議会に媒介するなど、公的存在ですし、議員は全国民を代表して(憲法43条)、民意を反映する存在ですから、国政全般を委ねてよいほど信頼に値する候補者・党である必要があるからです。

自民党や小泉首相が法的責任を負うものではありませんから、その意味では小泉首相の言い分は妥当です。しかし、ここで問題とすることは、投票における判断要素や政治的責任なのです。

有権者としての投票判断という政治的行為を行う場合には、当然、自民党や小泉首相が、堀江社長を散々利用していて、堀江社長と密接な関係がずっと続いていることを考慮しなければなりません。亀井議員が言うように、「(首相)に責任がある」、すなわち、首相・自民党には事実上の公認候補者であった堀江社長の行動について政治的責任が問われるというべきです。亀井議員の言い分が妥当でしょう。

小泉首相や武部幹事長は、自民党に影響が及ばないように逃げの姿勢ですが、小泉首相の無責任な発言について、有権者はしっかり覚えておく必要があります。




2.1月17日は午後から、ヒューザーの小嶋社長の証人喚問がありました。


(1) 耐震強度偽装について、違法性の認識はなかったしましたが、偽証罪を恐れて、再三にわたり補佐人(鶴見俊夫弁護士)と相談して、刑事訴追の恐れがあるからとして証言拒否を連発し、マスコミ向けへのインタビューとは別人のようでした。今回は自民党の議員は、細かく質問をしていましたが、あまり意味のないものだと思いました。

あまりに補佐人との相談が多いので、小嶋社長と補佐人との打ち合わせが十分でなかったと思われます。また、問題のないと思われる質問でも証言拒否をしていたので、補佐人の行動自体が問題視されるおそれがあります。


この証人尋問で意味のあったことは、Yahoo!ニュース(1月17日付)で、

「安倍長官秘書に相談 問題発覚でヒューザー社長

 耐震強度偽装問題をめぐり17日開かれた衆院国土交通委の証人喚問で、ヒューザー(東京都千代田区)の小嶋進社長(52)は、問題発覚後の国土交通省への働き掛けについて「安倍晋三官房長官の秘書に議員会館で相談したことがある。飯塚さんというお名前だったと思う」と証言した。
 安倍官房長官は秘書が面会したことを認めた上で「一切働き掛けはしていない。わたしは小嶋氏と面識がない」と述べた。
 昨年11月にあった「グランドステージ川崎大師」(川崎市)の住民に対する説明会で、小嶋社長が発言した内容を基にした馬淵澄夫議員(民主党)の質問に答えた。
(共同通信) - 1月17日17時37分更新」


 もし、安倍晋三官房長官との間に金銭を渡して便宜を図ったのであれば、収賄罪(刑法197条、197条の3)に問われることになります。国や国交省の迅速な対応をみると、安倍官房長官の関与は強く疑われます。

また、 以前から名前が出ている伊藤公介議員については、「きっこのブログ」(1月16日付)でヒューザーとのつながりについて濃厚に取り上げています。そちらをぜひご覧下さい。


朝日新聞(1月16日付)においても、

「ヒューザー物件の管理業務、伊藤公議員の家族受注

 自民党衆院議員の伊藤公介・元国土庁長官の家族が経営する会社が、ヒューザー(東京都千代田区、小嶋進社長)の分譲マンション1棟の管理業務を受注していることがわかった。小嶋社長は朝日新聞の取材に対し仲介を認め、ヒューザーの社員が伊藤元長官の選挙運動を手伝うなどしていたとも説明した。…」


として取り上げられています。

有権者としての投票行動の際には、この秘書の行動や伊藤公介議員の行動も含めて考慮することになります。



(2) ここで耐震強度偽装問題における責任についても触れておきます。

asahi.com(平成17年12月24日付)で、「耐震偽装について、マンション購入者は誰にどんな請求が出来るのでしょうか。」という記事で、弁護士の田中峯子さんが答えています。

 「【質問】現在、国会への証人喚問などで問題になっている耐震偽装について、マンションを買った人たちは誰にどんな請求が出来るのでしょうか。
【答え】買主が誰にどんな請求ができるかについて、まず売主について民事事件として何が請求できるか…お答えしましょう。
(1)契約解除 売買代金返還請求
  (無過失責任) 民法570条,566条
(2)建て替え請求 品質確保促進法
  (無過失責任) 同法により修補請求が出来ることになったので、その最大の請求として建て替え請求が可能となる。
(3)損害賠償請求  民法570条,566条
  (無過失責任) 代金返還請求と共に移転費用,登記費用などの損害を請求できる。
※ 品確法とは、10年間基本的構造部分について請求できる。 ただし、2000(平成12)年4月1日以降の契約物件に限る。

【質問】売主への請求はわかりましたが、売主が倒産,破産した場合、姉歯元建築士や民間指定検査機関には賠償請求は出来ないのですか。
【答え】偽装を知っていて、わざとそのような設計をした場合(故意)、または注意をはらえば予見できたであろう、あるいは回避できたであろう(過失)場合には、民法の不法行為責任(民法709条)を負うことになり損害賠償を請求出来ます。

【質問】しかしこれらの会社が倒産や破産をするとどうなるのですか。
【答え】実際に倒産,破産しますと会社の持っている不動産には、銀行などの金融機関が抵当権を付けていて優先権がありますので、損害賠償債権は一般債権と位置づけられていますのでその後になり、ほとんど配当は来ないのが実情です。 」




このようにマンション購入者には、法的責任を追及する根拠はあるのですが、一番資産を有しているヒューザーについて、共同通信(1月16日付)では、

「耐震強度偽装問題で、マンション販売会社ヒューザー(東京都千代田区)の従業員の大半が退職し、営業継続が困難な状態に陥っていることが16日、分かった。近く正式に営業活動を休止する。…」


だそうですから、マンション購入者が直接、ヒューザーなど売主に対して損害賠償を求めた場合には、その賠償金は著しく低額になりそうです。



(3) 問題なのはマンション購入者は、今後もずっと金融機関に対して住宅ローンを負担していることです。

ヒューザーのマンションが周囲のマンションと比較して格段に広く、しかも値段もほぼ半分でしたから、あまりに胡散臭く、(よく調べて分からなかったのだとしても)マンション購入者に落ち度があったことは確かだと思います。

ただ、いくら自己責任だといっても、震度5弱で倒壊するようなマンションは著しく価値がないといえるのですから、そのようなマンションの購入代金を支払う必要はないはずです。
そのため、割賦販売法30条の4、同29条の4第2項で認められているような、「抗弁権の切断」=(購入者は、商品に引渡しがなかったり、引き渡された商品に瑕疵があったり、売買契約が解除・取消された場合には、金融機関への代金の支払を拒否できる)。を認めてよいのではないでしょうか(木宮高彦監修 野辺博編著「消費者保護の法律相談〔全訂版〕」(2005年)135頁~、潮見佳男「契約各論1」(2002年)356頁~・364頁~参照)。法的には金融機関との金銭消費貸借契約と、マンション売買契約とは別個の契約ですが、金銭消費貸借契約はマンション売買契約を前提としてて、両契約が経済的・実質的に密接な関係にあるからです。

このように「抗弁の切断」を認めると、金融機関はローン支払を拒絶されないように、建設会社やマンション販売会社に対して欠陥建物を建築・販売していないかを厳しくチェックすることになるので、耐震強度偽装問題を含めて欠陥建物問題全般を大幅に改善する方策になります。金融機関にとってはある意味で過酷ですが。このような方法について、今回の件で論じる方がいないのですが、さて……。




3.17日は、連続幼女殺害事件についての最高裁判決が下されました。


朝日新聞(1月17日付夕刊)では、

「宮崎勤被告に死刑 連続幼女殺害事件で最高裁が上告棄却

 東京や埼玉で88年から89年にかけて、女児4人を誘拐して殺したとして殺人などの罪に問われた宮崎勤被告(43)=一、二審で死刑=に対し、最高裁第三小法廷(藤田宙靖(ときやす)裁判長)は17日、上告を棄却する判決を言い渡した。10日以内に判決訂正の申し立てがない場合、死刑判決が確定する。幼い子が標的にされ、被害者宅に遺骨が届けられるなどした衝撃的な事件は、発生から17年を経てようやく終結する。
 藤田裁判長は法廷で『責任能力を認めた二審判決は、正当として是認できる。性的欲求を満たすために4人の女児を殺害したもので、非道な動機に酌量の余地はなく、社会に与えた影響も大きい』と理由を述べた。」


現在の最高裁における死刑の判断基準からすると、死刑が宣告されることに問題はないでしょう。


死刑の合憲性については、憲法36条(残虐な刑罰の禁止)に違反しないかが問題となりますが、

「憲法31条、13条が死刑を前提としていることから、死刑それ自体は残虐な刑罰にあたらないとするのが通説・判例である。」(戸波「憲法」332頁)


とされています。

死刑廃止論の理由として、死刑の執行後に誤判であることが判明した場合には取り返しがつかないということが挙げられています。しかし、この連続幼女殺害事件のように、宮崎被告が犯人に間違いない場合には、誤判の危険は妥当しないでしょう。


元高検検事長の手記に書いてあったことなのですが、犯人は、死刑を求刑されて初めて自分の罪の重さに直面するそうです。罪の重さに直面して、反省したり、反省でなく錯乱することもあるかもしれません。死刑を執行することよりも、犯人の心に生命を無残にも奪ったことに直面させることこそ、死刑制度を認める、死刑制度を存続させる意義があることだと思います。


徳島新聞(1月17日付)やテレビ朝日での報道によると、

「最高裁で17日、死刑判決を言い渡された宮崎勤被告は判決後、臨床心理士と面会し、『何かの間違いです。そのうち無罪になります』と語ったという。」


このように宮崎被告にも、「何かの間違い」と思うだけのインパクトがあったわけです。死刑を宣告した意味があったわけです。




4.1月17日は、阪神淡路大震災がおきた日です。

Yahooニュース(1月17日付)によると、

「阪神大震災から11年となった17日、神戸市など各被災地は日没後も追悼行事が続き、慰霊に訪れる人が途絶えることはなかった。
 同市中央区の公園、東遊園地で開かれた「1・17のつどい」には、約4万6000人が訪れ、地震発生時刻から12時間後の午後5時46分に合わせ、ろうそくを再点灯し遺族らが黙とう。竹灯籠(とうろう)で縁取った「1・17」の文字が夕闇に浮かび上がった。
 大規模な火災が発生し、約130人の犠牲者が出た同市長田区・御菅地区の「御蔵北公園」では冷たい風が吹く中、住民らが約1100本のろうそくに点灯。…(共同通信) -1月17日22時21分更新」


と出ていました。

11年前のあの光景は、忘れることができませんし、忘れてはいけないことです。犠牲者に対して、心から追悼の意を表したいと思います。

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