久々の演奏会の感想です。
演奏が終わって、コンサートホールから出るとかなりの雨、そのうち雪に変わったというかなり寒い日でありました。
<PROGRAM>
指揮者:渡邊一正
メゾ・ソプラノ:手嶋眞佐子
テノール:成田勝美
東京フィルハーモニー交響楽団、コンサートマスター:三浦章広
曲目
ビゼー:歌劇「カルメン」から
第1幕前奏曲
ハバネラ
セギディーリャ
第2幕への間奏曲「アルカラの竜騎兵」
花の歌
第3幕への間奏曲
第4幕への間奏曲
二重奏とフィナーレ「あんたね?俺だ」
チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 作品36
ビゼー:歌劇「カルメン」はオペラを聴いたことがない人でも、抜粋した部分を聞いているはずですから、聞けばすぐに「カルメン」と分かると思います。
今回のコンサートでの「カルメン」は、「カルメン」からの抜粋、演奏会形式でした。
コンサートで「カルメン」を演奏する場合、「カルメン組曲」という形でオーケストラ部分のみを演奏することが多いと思うのですが、メゾ・ソプラノや、テノールが入っての演奏ですね。
主人公カルメン役には、メゾ・ソプラノの手嶋眞佐子さん、竜騎兵の伍長ドン・ホセ役にはテノールの成田勝美さん。指摘するまでもないのですが、お二人ともすばらしい美声で聴きに行った甲斐がありました。
手嶋眞佐子さんはカルメンらしく?赤を基調とした服装でした。
チャイコフスキー:交響曲第4番は、最も好きな曲の1つです。「憂いと情感にあふれた、最もチャイコフスキーらしい交響曲」(パンフレットの堀内修氏の解説)という評価もなされています。
コンサートで「交響曲第4番」を聴いたのは10年近く前だったはずで、久々に生演奏で聞けたのでそれだけで嬉しく、正直なところ、細かいところはどうだったかあまり覚えていません。
ただ、今回の演奏は、テンポが良く高揚感にあふれたものであり、聴いた後に楽しさが残るような熱演だったと思います。
演奏内容でなく見ていて面白いと思った点をいくつか。
第3楽章は弦楽器担当はすべて指で弦をはじいて演奏するのですが、第2楽章後に一斉に弓を床に置くことをはじめて知りました。一斉に置いて準備するのもなかなか壮観な感じでした。
それからコンサートマスターの弓がプチプチ切れ捲くっていたのでちょっと目を引きました。
あんなにも切れている様子を見たのは初めてでした。
ただし、アンコール曲がなかったのは残念でした。
雪が予想されていたため――実際に雪になりました――アンコール演奏はしないことになったのかもしれません。
演奏会の観客の様子についても少し書いておきます。
クラシックを題材にした漫画『のだめカンタービレ』の影響がほとんどなくなったためか、20〜30代の観客はほとんどおらず、公演に来る観客のマナーも良くなったように感じられました。ただ、高らかに「ブラボー!」と叫ぶ方はいましたが。
「都民芸術フェスティバル助成公演」のコンサートは、(チケット代が廉価であるため?)あまりにも観客のマナーが悪く、忙しいこともあって昨年は聴きに行くのを止めていたのですが、今年はイライラせずに楽しめそうです。
休憩時間のことです。
コンサートホールで販売している飲み物を購入する方がずいぶんと少なくなったことに少し驚きを感じました。あれほど購入するために並んでいた観客がまばらでした。コンサートホールで販売している飲み物は高めであることは確かですが。
もちろん、飲み物を飲む方が減ったわけではなく、ペットボトルを持ち込んで飲んでいる方がかなり見受けられました。土曜日のためか子供連れの方もいましたが、やはりペットボトルを飲んでいました。景気が良くないことを表しているように思えました。
<PROGRAM>
指揮者:ギュンター・ピヒラー
NHK交響楽団、コンサートマスター:篠崎史紀
曲目
ハイドン:交響曲85番 変ロ長調 Hob.I−85「女王」
シューベルト:交響曲第7番 ロ短調 D.759「未完成」
メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 作品90「イタリア」
アンコール曲
シューベルト:「ロザムンデ」間奏曲
音の強弱のつけ方が絶妙で、テンポの良い演奏でした。弦の響きが滑らかですし、木管楽器や金管楽器も実に艶やかな感じの演奏です。
NHK交響楽団が、こういった演奏ができるのは、楽団員の技量が優れているから…というのもあるのでしょう。しかし、技量のせいというよりも、十分な練習量を積んでいる結果なのかなと思いました。乱れのないきちんと整った演奏でしたから。
ところが。
近くにいたジーパンをはいた女性の方は「枯れた演奏ね、若い人が入らなきゃダメ」と言っていました。
…整っている演奏でしたから、それを「枯れた演奏」と評したのだと思います。
しかし。
この素晴らしい演奏を「枯れた演奏」としか受け取れなんて!!! 感性というものは人それぞれなのでしょうが、ちゃんと音を整えられない演奏を良い演奏と思う感性はとても理解できません。
それに、「若い人が入らなきゃダメ」と思うのはどうしてなのでしょうか…。年が若いかどうかと、演奏の良し悪しは関係がないと思うのですが。ちゃんと演奏を聴いているのかどうかさえ、疑ってしまいます。
またもやというべきか、この日の観客のことです。
拍手が早すぎです。
交響曲第7番ロ短調「未完成」の後でも、交響曲第4番イ長調「イタリア」の後でもそうでしたが、音の余韻が終わる前に拍手するのですから。
3階左端の方が最初に拍手してました。
最も気分が害されたのは、アンコール曲のときでした。
アンコール曲の途中で拍手をするなんて! 「どうかしているじゃないか」と思いました。1階左側の一人が拍手してました。
曲が終わって指揮者が姿勢を整える前に拍手する人までいたり。
なぜ、クラシック音楽をコンサートホールで聴くのかというと、その場限りの演奏という即興を楽しむとともに、最後の音の余韻を楽しめるからなのです。それを音が消える前に拍手をしたら台無しです。
なぜいち早く拍手したがるのか全く分かりません。いち早く拍手する人は、聴きに来ている人たちの楽しみをぶち壊していることが分からないのでしょうか?
演奏は素晴らしく良かった。でも、気分を害して帰ることになりました。
<PROGRAM>
指揮者:飯守泰次郎、ピアノ:田部京子
新日本フィルハーモニー交響楽団、コンサートマスター:崔文洙
曲目
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
アンコール曲
チャイコフスキー:アンダンテ カンタービレ
「ルスランとリュドミラ」序曲は、「いかにもロシアというお国柄を感じさせ、活達さのうちに感傷性とヴァイタリティのこめられた1曲」(プログラムの解説より)です。
勢いのいい元気で豪快な感じの演奏です。飯守泰次郎さんらしさの出た演奏です。…んー。ちょっと、音が揃っていない感じに聞こえましたが、これも味わいなのでしょう。
ピアノ協奏曲第1番は、「曲は3楽章形式、ピアノにはハイ・テクが要求され、豪快なダイナズムと優婉な叙情、繊美な感傷が綾織りになる」(プログラムの解説より)曲です。
田部京子さんの演奏は、女性らしいオーソドックスな感じですね。オーケストラの方は元気良く。
交響曲第6番は、「ファゴットが苦悩の固まりのように吹く序奏」から始まり、「チャイコフスキーならではの名旋律」が続く「彼の交響曲中で最高傑作」(プログラムの解説より)と言われている曲です。
全体として、そこはかとないメランコリーな感じを、とにかく前面に出すような演奏でした。これもいい演奏だと思います。
ただ。序奏が繊細な感じでなかったり、ちょっとついつい元気のよさが出てきていて、曲中からうかがえる感傷的な感情の揺れが、こちらに伝わってこないような……。
それと、どうも音が揃っていないようにも受け取れました。「ぴちっと揃えるよりも、感情を全面に出した演奏を!」というのが飯守泰次郎さんの演奏方針なのでしょうね。飯守泰次郎さんの方針や指揮はいいと思うのです。おそらく「感情を全面に出すことを優先、しかしちゃんと音も揃えて欲しい」が意図だったはずですが、オーケストラの方が、その要求に今一歩応えていなかった感じでした。本来は、オーケストラ自身の演奏能力は高いのでしょうけど、この演奏では、並みの演奏能力に感じられました。
アンコール曲の「アンダンテ カンタービレ」は、大好きな曲で、これが聞けたのは大変嬉しかったです。この演奏が一番良かったです。
最後に。この日の観客についてです。この演奏会では一番問題でした。
自分が席を間違えているのに、横柄な態度で「間違っているから退け」と言い募る観客(65歳〜70歳の男性)を見かけました。おそらく券をプレゼントされて、しかも普段コンサートに行っていないせいなので、間違えるのも仕方がない面があるとは思います。しかし、係員がいるのですから、係員に聞けば済むことなのですし、横柄な態度をする理由が不明です。
また、交響曲第6番の第3楽章の終わりに、曲が終わったと間違えて拍手する方が数十人もいるという失態があり、これにはがっくりきました。第4楽章は静かに終わるので、余韻を楽しむためにはすぐに拍手しない方がいいのですが、すぐに拍手したり。この曲を全然知らないことが明らかです。
他には、演奏中に傘を倒して、パタパタ音がするのも何度かありました。かさを横にしておくという配慮ができていないのです。休憩中に観客席でPCを起動させたりする人もいましたが、休憩中なら何をしてもいいわけではないことが分からないようです。
長年コンサートに行っていますが、今回の観客のマナーは一番良くなかったです。演奏には満足できましたが、観客のマナーのおかげで、憂鬱な気分になりました。
相変わらず、40代前の人が殆どいません。殆どが60代以降に見えました。「週刊東洋経済」(2006年2月11日号)では、「日本のオーケストラ真冬の奏鳴曲」という表題で、
という記事がありました。「クラシックを題材にした漫画『のだめカンタービレ』が500万部を超え、名曲100曲のさわりを集めたCDがベストセラー化するなど、表面的にはクラシックブームのようにも見えるが、現実は厳しい。
日本のクラシック愛好家の人口比率はわずか1%。クラシックの公演動員数は2003年で440万人、市場規模はたった248億円(東京国際フォーラム広報室)だ。NHK交響楽団など国内トップオーケストラでも、定期会員の高齢化が進み、中核は50歳代以上の中高年。このままではオーケストラはファンの高齢化とともに消え行く運命にある。
だが、ここに来て改革の芽吹きも見え始めた。…」
クラシック愛好家が少なく、その公演に来る観客のマナーも悪い。「改革」も演奏技術の劣化につながったりしないのでしょうか? 今後、観客が増えたとしても、マナー向上までは望めないでしょう。
さて、聴きに行ったのは2006年1月20日(金)7時から、東京芸術劇場大ホールで行われたコンサートです。
PROGRAM
指揮者:現田茂夫、ヴァイオリン:瀬崎明日香
東京交響楽団、コンサートマスター:大谷康子
演目
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネゲン」よりポロネーズ
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」
アンコール曲
ボロディン:交響詩「中央アジアの草原にて」
ポロネーズは、劇中の「第3幕第1場冒頭のペテルベルグの大夜会の場面にふさわしい豪華絢爛たる雰囲気を醸し出している。」(プログラムの解説より)曲です。
演奏は、オーソドックスな感じ、あっさりと。
ヴァイオリン協奏曲は、「華やかで多彩なヴァイオリンの演奏技巧とオーケストラのカラフルなサウンドが巧みな調和を実現させている…ロシア的な哀愁を豊かに湛えた」(プログラムの解説より)曲です。
演奏ですが。瀬崎さんの演奏にはびっくり。ものすごく濃厚・こってりな演奏だったので。この曲は、濃厚に弾く演奏とあっさり弾く演奏に分かれると思うのです。元々哀愁を帯びた曲なので、濃厚に弾く演奏は演歌みたいで好きではないですが、ここまで濃厚だと非常に魅力的です。
そして、ものすごいパワーと響き渡る音。下手をするとオーケストラを上回ると思えるほどで、「一人オーケストラ!?」かと思ってしまうほどです。音の魅力は、ストラディヴァリウスのせいもあったのかもしれません。
ただ、オーケストラが置いてきぼりな感じに。現田さんの明るく楽しい指揮・演奏は、それはそれで魅力なのですが、瀬崎さんのパワフル演奏についていけてないというか、合わせる方が難しいのかもしれません。
シェエラザードは「カラフルで華麗なオーケストレーションを誇る作曲家…の持ち味が見事に発揮されることになった華やかでロマンティックな名作」(プログラムの解説より)です。
この曲は好きな曲で、ホールで聴きたい曲の1つです。艶っぽさを出す演奏が多いのですが、軽やかで可愛らしい演奏でした。「こんな演奏もあるのか〜」という感じですね。
正直、艶っぽい方が好きなのですが、明るく楽しい気分になりたいなら、この演奏は良かったのではないでしょうか。
この曲はコンサートマスターによるヴァイオリンソロが重要なのですが、ちょっと音が揺れ(抜け?)があってちょっと残念でした。
ちなみに、「シェエラザード」は個人的には、チェリビダッケ指揮の「シェエラザード」が一番気に入っています。非常に個性的な演奏で、曲の魅力が十分(十分すぎる?)に出ている演奏なので。
観客ですが、自分で買うというよりも、券をプレゼントされて聴きに来る方がかなり増えた感じがします。20代どころか、30・40代の方もいなくなった感じです。皆さん、余裕のなさが感じられます。
「日本の、これから 本当に増税しかないのか」というNHK番組を見ながら書いているので、正直気が重いのですが、あそこまで松尾氏が谷垣財務大臣に媚を売れるとはすごい芸だと関心します(苦笑)。元役人ですしね。消費税が上がったら、もっと演奏会に来る観客は減るでしょう。そうすると、交響楽団もまた減って…。楽団員や演奏家はどうなるのでしょう…。

