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衆議院本会議では、4つの改正案の採決が提出されたA・B・C・Dの順に始まり、採決は記名投票で行われました。その結果、欠席・棄権を除いたA案への投票総数430票のうち、賛成263票、反対167票であり、欠席・棄権は48人でした。A案の可決により、その他の3案(B・C・D案)は採決されずに廃案となっています。
与党や民主党などは「死生観にかかわる」として党議拘束をかけず、議員個人の判断で投票しています。そのため、麻生太郎首相、民主党の鳩山由紀夫代表、公明党の太田昭宏代表がA案に反対票を投じ、一方、自民党の小泉純一郎元首相・福田康夫前首相、民主党の小沢一郎代表代行は賛成票を投じ、自民党の安倍晋三元首相はD案を支持してA案の採決を棄権するといった、個々人で異なる投票行動をとっています(時事通信:2009/06/18-13:45、毎日新聞)。なお、他の政党とは異なり、共産党は(党議拘束をかけ)「審議が尽くされていない」として棄権しています(いずれの案の採決も棄権する方針でした)。
1.報道記事を幾つか。
(1) 朝日新聞平成21年6月18日付夕刊1面(4版)
「「脳死は人の死」可決 0歳から移植容認
臓器法改正 A案が衆院通過 参院に慎重論
2009年6月18日13時24分
衆院は18日午後の本会議で、臓器移植法改正案を採決し、原則「脳死は人の死」とし、臓器提供の拡大をめざすA案を賛成多数で可決した。残りのB、C、D各案は採決されないまま、廃案となった。ただ、参院では、多数を占める民主党内に臓器移植の要件緩和に慎重な議員が多く、独自案提出の動きもある。A案がそのまま成立するかどうかは不透明な情勢だ。
衆院議員は現在、欠員を除き478人。採決は記名投票で行われ、欠席・棄権を除いたA案の投票総数は430(過半数216)、賛成263、反対167だった。共産党は「採決は時期尚早」として本会議には出席するが採決は棄権する方針を決定。自民、民主など他の主要政党は「個人の死生観」にかかわるとして党議拘束をかけずに採決に臨んだ。97年に成立した現行法の改正案が採決されたのは初めて。
本人の意思が不明な場合でも家族が同意すれば臓器提供できるとするA案では、小児を含むすべての年齢で臓器提供が可能となる。移植学会や患者団体も推しており、最も多くの支持を集めているとみられていたが、原則「脳死は人の死」とすることなどに抵抗感も根強く、過半数確保のメドは立っていないとされていた。
朝日新聞が5月に衆参両院の全議員を対象に行ったアンケートでも、7割近くが回答せず、回答者のなかでも「わからない・検討中」が2割超を占めるなど、多くの議員が態度を決めかねている様子が浮き彫りになった。A案が可決された背景には、今国会で改正が実現しなければ、当分、改正の機運が遠のくとの議員心理が働いた可能性もある。
採決は国会提出順に、A、B、C、D各案の順で行われ、いずれかの案が投票総数の過半数の賛成を得た時点で、残りの案は採決されずに廃案になるルールだった。より広範な支持を集めようと、折衷案としてつくられたD案も、採決されないまま廃案となった。」
(2) 読売新聞平成21年6月18日付夕刊1面(4版)
「移植法A案 衆院通過 年齢制限は撤廃
賛成263、反対167 参院審議、曲折も
臓器移植法改正案は18日午後、衆院本会議で採決され、脳死を「人の死」とすることを前提に、現行では禁止されている15歳未満からの臓器提供を可能とすることを柱としたA案が賛成多数で可決された。
審議の舞台は参院に移るが、A案の成立に消極的な意見や慎重審議を求める声が出ており、成立までには曲折も予想される。
採決は記名投票で行われ、投票結果は賛成263、反対167だった。投票総数は430だった。共産党は時期尚早との理由で採決を棄権し、そのほかの政党は個人の死生観や倫理観に基づく問題であるとして、党議拘束をかけず議員個人の判断に委ねた。
A案は脳死が「人の死」であることを前提として、臓器提供の条件について、書面による生前の意思表示と家族の同意を必要としている現行制度を大幅に緩和した。本人意思が不明でも生前の拒否がない限り家族の同意で臓器提供できるよう改める。現行では臓器提供の意思表示ができる年齢を15歳以上としているが、本人意思が不明でも臓器提供が可能になることで年齢制限は撤廃され、乳幼児からの臓器提供が可能となる。また親族への臓器の優先提供についても本人の意思表示ができると定めている。
国会に提出された四つの改正案のうち、最も臓器移植の機会を拡大する可能性があり、患者団体や日本移植学会などが支持していた。
残る3案は、臓器提供可能年齢を現在の「15歳以上」から「12歳以上」に引き下げるB案、脳死の定義を厳格化するC案、15歳未満について家族の同意と第三者による審査を条件に可能とするD案だったが、最初に採決されたA案が過半数の支持を得たため、採決されないまま廃案となった。
A案は同日中に参院に送付され、参院厚生労働委員会で審議が行われる見通しだ。参院の民主、社民両党の有志議員はC案の考えに近い新案を参院に提出する構えを見せており、西岡武夫・参院議院運営委員長は「参院でまだ何の議論もしていない。この問題は慎重にあらゆるケースを考えないと禍根を残す」として、一定期間の審議が必要との認識を示している。
現行の臓器移植法は1997年6月に成立した。施行後3年の見直し規定があり、臓器提供条件の緩和や15歳未満の臓器提供を認めるよう、患者団体や日本移植学会が法改正を求めてきた。2006年にA、B両案が与党の有志議員によって国会に提出された。C案は両案の対案として、野党の有志議員によって07年に提出されたが、長らくたなざらしの状態が続いていた。
昨年5月、国際移植学会が自国外での臓器移植自粛を求めた「イスタンブール宣言」を採択し、世界保健機関(WHO)も臓器移植の自国内完結を促す指針を取りまとめる方向となった。このため、15歳未満の臓器提供が禁止されている日本の小児患者は臓器移植を受ける道が閉ざされる可能性が出てきたことから、にわかに同法の改正論議が活発化した。
(2009年6月18日 読売新聞)」
1.「訳が分からない」と言えば、日本医師会の動きもよく分からないところです。日本医師会と日本移植学会などは、常々臓器移植法改正を要望していたことはともかくとして、つい最近、B案に賛成している早川忠孝・自民党衆議院議員に対して、A案で採決すべきとの決議文を送っていながら、他方で、自民党の勉強会において採決につき慎重な態度を表明しています。
「日本医師会宮崎秀樹、臓器移植患者団体連絡会大久保通方、自由民主党中山太郎、民主党渡部恒三、公明党渡辺孝男、国民新党自見庄三郎の各氏の連名による決議文が届きました。
声明の尊厳を守り、国際規範に準拠し、人道的立場から下記を決議する。
●臓器を「提供する権利」・「提供しない権利」、移植を「受ける権利」・「受けない権利」をそれぞれ保証(ママ)する。脳死を認めない人の権利を保障する。
●小児、成人を問わず、移植によってしか救うことができない多くの生命を救えるよう、国内の臓器提供を増加させる。これによって国際規範を遵守する。
●小児、成人を問わず、被虐待者からの臓器提供を防止する。
●以上を実現するためにA案の成立が不可欠である。(中略)
なお、前述の決議文には、次のような一文が付いております。
「虐待については、現状でも内因性疾患以外の場合は警察に届け出ることが義務づけられており、警察の検視、犯罪捜査により少しでも疑いのある場合は司法解剖が行われ、臓器提供が行われることは絶対にあり得ない。」
大体言葉で、「絶対に」などという文言があるときは眉に唾を付けて読んだ方がいいのですが、これは実に大変な間違いです。
私は、異常死に対する死因究明制度議員連盟の副幹事長を引き受けておりますが、地域によっては異常死の相当部分が単なる心不全として処理されていること、解剖すれば犯罪に起因することが明らかとなったかも知れないのに、解剖もされないまま自然死として処理されているケースがあること等を学びました。」(「衆議院議員早川忠孝の一念発起・日々新たなり」の「臓器移植法改正案について困った展開」(2009-06-12 12:25:30)より、一部引用。)
「■移植法改正に日医慎重
日本医師会(日医)は11日、自民党が開いた臓器移植法の勉強会で、「『脳死を人の死と定義して良いのか』など、国民的にも十分議論を尽くしていない重要な課題が多い」として、拙速な法改正は慎むべきだとの見解を明らかにした。
日医は07年5月、「本人が意思表示をしていない場合は、年齢にかかわらず遺族の書面による承諾で臓器提供が可能になるような法の改正を要望する」として、国会に提出されている改正A案に近い見解を出していた。」(朝日新聞平成21年6月12日付朝刊37面)
「移植法、賛否で苦悩=議員勉強会−自民
自民党は11日午後、異なる4案が国会で審議中の臓器移植法改正案に関する勉強会を党本部で開いた。同党は採決で党議拘束を外すため、投票の参考にしてもらう狙い。だが、説明を聞いて悩みを深めた議員も少なくなく、法改正の難しさを浮き彫りにした。
日本医師会の木下勝之常任理事は、子供への臓器移植に道を開くA案とD案を評価しつつも、「国民的にも広く十分な議論を尽くすべきだ」と指摘。日本宗教連盟の斎藤謙次事務局長は「脳死は人の死ではない」と強調。全国交通事故遺族の会の井手政子理事も「拙速に結論を出すべきではない」と述べた。
提出者の議員も各案を説明。C案の阿部知子氏(社民党)は「臓器提供者側に配慮がないといけない」と強調した。
勉強会に出席した平沢勝栄氏は「ますます分からなくなった」。松島みどり氏も「国会議員になって9年だが、これほど悩んだことはない」と語り、どの案に賛成するか判断がつきかねていることを認めた。
一方、自民党の柴山昌彦氏は小坂憲次衆院議院運営委員長と会い、最初の投票でいずれも過半数に達しなければ、上位2案で決選投票を行うよう求めたが、小坂氏は否定的な見解を示した。(2009/06/11-20:44)」(時事通信:2009/06/11-20:44)
『脳死を人の死と定義して良い』というのがA案の骨格です。それなのに、A案を支持している日本医師会自らが、脳死を人の死としてよいのかという点につき、「国民的にも十分議論を尽くしていない」と言い出し、しかも、早川議員相手にはA案に賛同するよう仕向けつつ、他方で、自民党の勉強会では採決を抑制するといった相反する行動をとるようでは、日本医師会の主張は信用されなくなります。(なお、決議文に「保証」という誤字があるのは、間が抜けた感じを与えますが、日本医師会は気にしないのでしょうか。)
脳死下での臓器移植は、他者の死亡と「無償の善意」を前提とします。死亡という重大な生命に関わる点はもちろん、「無償の善意」すなわち「好意」という心情さえも法改正で広げるのであれば、臓器移植法を積極的に推進する側は、正しい情報を十分に提供するという説明責任があるはずです。
それなのに、この期に及んで「国民的にも十分議論を尽くしていない」と言い出すなんて、自らの説明責任を果たしていないことを他人の責任に押し付けようしている態度にしか見えません。
また、決議文では、小児に対する虐待については、「警察の検視、犯罪捜査により少しでも疑いのある場合は司法解剖が行われ、臓器提供が行われることは絶対にあり得ない」だなんて、嘘を吐くことは実に困ったものです。早川議員が「異常死に対する死因究明制度議員連盟の副幹事長」として知りえた事実からも分かるように、誰もがわかるような嘘を吐くようでは、臓器移植法改正を望む側にとっても有害になるだけです。
こうした状況下においては、市民の側が、もっと臓器移植や脳死について理解を深める必要があります。臓器移植法改正に関しては、日本医師会の主張は信用されないおそれがあるのですから。そこで、脳死に関して触れた朝日新聞の記事を紹介したいと思います。
連載記事は、「子どもの臓器提供は認められるのか。脳死は人の死とされるのか。2つの大きな問題を中心に、臓器移植のあり方を考える」ものです。そして、連載記事を大別すると、臓器移植を拡大する理由・必要性と、臓器移植を慎重にする理由について触れたものの2つに分けることができます。あらかじめ2つに大別して紹介します。
1.臓器移植を拡大する理由・必要性
(1) 東京新聞平成21年5月26日付朝刊24面「命の選択〜臓器移植法改正を問う」(1)
「年齢制限 焦る親「日本で助けて」
4月のある晴れた日の午後。千葉県富津市の中学一年生金子亮祐君(12)は、自宅近くの空き地で父豊さん(43)のグラブに思いっきり直球を投げ込んだ。1年前に心臓移植を受けた体とは思えない躍動感があった。
幼いころに原因不明の難病「川崎病」にかかり、後遺症で小学四年の暮れに心筋梗塞(こうそく)を起こした。2ヵ月半も意識が戻らず、その後は人工心臓の助けを借りて病院で寝たきりの状態が続いた。医師から心臓移植でしか助からないと言われ、さらに日本では15歳未満の子どもの臓器提供が禁止されていることを知る。豊さんは一時は絶望したが、海外での移植に望みをつなごうと決意した。
友人らの支援で「救う会」が発足。1億円を超す募金があり、昨年3月にロサンゼルスの病院で10時間の大手術を受けた。手術は成功し、昨年6月に1年半ぶりに帰宅。半月後には所属していた野球チームの試合で始球式を務めるまでに元気を回復した。以前は冷たかった手足も、血のめぐりがよくなり温かくなった。
「ドナーになってくれた子は、ぼくの中で友達になって一緒に動いている」と亮祐君。今年3月の「第二の誕生日」には心臓を提供してくれた子の分のケーキも切り分けた。「医者になってみんなの命を助けて恩返ししたい」と将来の希望を口にする。元気になった亮祐君を見つめながら豊さんは感じる。 「日本では臓器を提供したいという善意を法律が制限している」
■
「私たちは2歳になる鳳究(ほうく)の命をあきらめることができない。みなさまの善意の力で、息子の命を助けていただければ」。25日午後、東京都庁。三鷹市の会社員片桐泰斗(やすと)さん(31)は記者会見を開き、必死に訴えた。
鳳究君は昨年10月、拘束型心筋症と診断された。早期に移植手術をするしか命を救う方法はないとされ、今年2月、大阪大の福嶌教偉准教授の仲介で米コロンビア大病院に打診した。
だが、同大では臓器移植に占める外国人の割合を5%に制限。今年に入って4人の日本人が移植を受けるなど米国人以外で5%に達したため、受け入れがかなわなかった。
背景には世界的な臓器提供者(ドナー)不足がある。欧州で唯一、臓器移植が可能だったドイツが、3月から外国人の受け入れをやめたことも影響した。
その後、幸運にも米国の別の大学病院で内諾が得られた。泰斗さんは、手術と渡航に必要な1億円の募金を呼びかけるため妻と会見に臨んだのだった。
「国内で治療したいが、法律でできない。私たちには時間がないのです。こんなことはうちの子で最後にして、次の子からは日本で助けてもらいたい」
◇
1997年の臓器移植法成立から12年。海外での臓器移植の自粛を求める世界的な流れを受け、国会は長い間たなざらしにしてきた法改正の審議を始めた。子どもの臓器提供は認められるのか。脳死は人の死とされるのか。2つの大きな問題を中心に、臓器移植のあり方を考える。
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【海外での移植】 日本移植学会などによると、臓器移植法制定後、海外で心臓移植を受けた18歳未満は約60人。その10倍近い約500人が、渡航できずに死亡したとみられる。子どもに限らず、海外で移植を求める人が多くなり、国際移植学会は昨年、海外渡航移植の自粛を促すイスタンブール宣言を採択した。世界保健機関(WHO)は来年、臓器移植の自国内完結を促す指針を採択予定。」
「臓器移植法改正案 衆院で中間報告
衆院は9日午後の本会議で、4つの案が提出されている臓器移植法改正案について、衆院厚生労働委員会での審議の中間報告をした。委員会での審議を打ち切り、委員会採決を省略する手続きだ。大半の政党が党議拘束をかけない方向であることを踏まえ、本会議で各議員が態度を示すべきだ、などの理由からで、与党は16日にも衆院本会議で各案を採決する方針。だが、民主党はさらなる審議を求めている。9日の本会議では、厚労委の田村憲久委員長(自民)が審議の経過について報告をした後、「A案→B案→C案→D案」の順に各案提出者が意見を表明する。いずれも過半数を得る見通しは立っていない。
4つの案のうち、A案は、原則「脳死は人の死」と法で定め、臓器提供の年齢制限(現行法で15歳以上)を撤廃する▽B案は、臓器提供可能な年齢を12歳以上に引き下げる▽C案は、脳死判定の厳格化や生体移植のルール化を定める▽D案は、15歳未満は家族の承諾、第三者機関の確認で臓器提供を可能にする。」(朝日新聞平成21年6月9日付夕刊8面(4版))
1.臓器移植法改正案として提出されている4案と、国会議員に対するアンケートについて、触れておきます。
(1) 東京新聞平成21年5月24日付朝刊5面「ニュースがわかる」
「臓器移植法 改正4案って? 年齢の制限や死生観に違い
Q 臓器移植法の改正案が4つも国会に提出されているけど、今のはどんな法律なの。
A 現行の臓器移植法は、事故に遭ったり病気になったりした人が脳死になった場合、本人が臓器提供の意思を事前に書面で示していて、家族が同意した場合に限り、臓器の提供を認めています。
Q 脳死って。
A 脳は大脳、小脳、脳幹で構成されていますが、呼吸など生命維持を司(つかさど)る脳幹を含む全体が停止した状態です。脳幹が機能し自発呼吸できる「植物状態」とは異なります。人工呼吸器で心臓は動いていますが回復の見込みはなく、多くが1週間以内で心停止に至るとされています。
Q 脳死は死なのかな。
A 法が制定された1997年当時の議論では「死は呼吸と心臓の停止、瞳孔散大による三兆候が基準で、脳死は社会的に一律に人の死とまでは言えない」とされました。このため、生前に本人が臓器提供の意思表示をしていた場合のみ、意思を尊重して「脳死を人の死」と認め臓器移植を可能にしたのです。この考えから、民法上遺言を残せない15歳未満からの提供を認めないことになりました。
Q なぜ今、法改正が議論されているの。
A 世界保健機関(WHO)が海外渡航での臓器移植の自粛を求める方向で、今後海外移植が難しくなるとされているからです。特に幼い子どもは国内で移植を受けることが困難なので、望みを断たれかねません。移植を待つ人たちに国会が応えようとしています。
Q 改正案の内容は。
A 提出順にABCD案と呼ばれ、いずれも超党派の議員が提出しました。A案は脳死を一律に人の死と考え、本人が拒否していない限り家族の同意だけで提供できるようにします。本人の提供意思が必要ないので、15歳未満からも提供可能になります。B案は現行法のまま年齢制限を12歳以上に引き下げます。C案は脳死移植の拡大に反対する立場から年齢制限は現行法のまま、脳死の判定基準を厳しくします。最後のD案は、脳死についての考えは変えないものの、15歳未満は家族の同意と第三者の意見で提供できるようにします。
Q 分類すると。
A 年齢制限を撤廃するのがAD案、現行法をやや緩和するのがB案、厳しくするのがC案といえます。AD案の違いはA案が欧米の基準に合わせ脳死を一律に人の死として移植を大幅に拡大するのに対し、D案は伝統的な死生観に配慮して15歳以上は現行法のまま、子どもへの移植の道を開こうとしています。
Q 結論は出るの。
A 与党は今国会で採決するといっています。ただ子どもの脳死判定は大人より難しいとされ、子どもの自己決定権をどう考えるかなど、慎重論も根強くあります。採決では各議員ごとに判断することになりそうですが、脳死や移植についての十分な理解が求められます。 (政治部・金杉貴雄)」
(2) 朝日新聞平成21年6月3日付朝刊1・30面
「賛否不明が7割 臓器移植法改正で国会議員アンケート
2009年6月5日6時54分
臓器移植法の四つの改正案をめぐり、朝日新聞は衆参両院の全議員を対象にアンケートをした。回答を寄せた3割超の議員のうちでは、脳死を「一律に人の死」として提供者の増加を目指すA案が最も多い支持を集めた。だが、全議員の7割近くが回答せず、回答者の中でも「わからない・検討中」が2割超を占めたため、全体では4人に3人の賛否が不明だ。採決になればこうした議員らの動向が結果を左右しそうだ。主要各党は党議拘束をかけない見通し。
全議員720人に5月に書面で質問した。衆院170人、参院60人の計230人(32%)が回答した。衆院本会議の採決に向け、複数の案に投票できる方式が検討されており、アンケートでは「最も支持する案」と「賛成する可能性のある案」を尋ねた。
「最も支持」と「賛成する可能性」を合わせて、A案を選んだ議員は44%。現行法では、本人が提供に同意する意思をあらかじめ記した書面が必要だが、A案は、本人が拒んでいなければ家族の同意で提供できるようにする。
D案は現在は提供できない15歳未満の子から親の同意で提供できるようにする。27%の支持を集めた。脳死の条件を厳しくするC案は13%、提供できる年齢を12歳以上に下げるB案は5%。どれも支持しない人は4%だった。
臓器移植法は97年に施行された。施行後3年の見直し規定があるが、議論は深まらず、今年4月にようやく審議入り。今回答えなかった議員らは「政治になじみの薄い生死の問題なので悩む」などと説明。「支持者の意見が割れていて選挙前に態度を表明しにくい」と話す議員もいた。
脳死からの臓器提供者は毎年10人前後にとどまり、日本移植学会などは移植が必要な患者が毎年数千人死亡しているとしている。15歳未満は臓器提供できず、幼児は事実上、国内で移植を受けられない。半面、脳死になったとみられる小児が数カ月以上、心臓死に至らない例もあるため、脳死を死とすることに反対も根強い。」
(3) 朝日新聞平成21年6月6日付朝刊2面(14版)
「臓器移植法改正案、16日にも採決へ 与党方針
2009年6月6日1時51分
衆院厚生労働委員会が臓器移植法改正案の審議を事実上終えたことを受け、与党は16日にも衆院本会議で四つの改正案を採決する方針を固めた。9日には本会議でこれまでの委員会審議の中間報告を行い、各案提出者が意見表明する予定。
ほとんどの政党は党議拘束をかけない上、議員らの関心は低く、意見集約が進んでいないため、いずれの案も現段階では可決に必要な過半数の確保は見通せない状況だ。朝日新聞が実施した国会議員アンケートでも7割近くが無回答で、回答者でも2割超が「わからない・検討中」としている。」
東京新聞平成21年6月9日付朝刊17面において、臓器移植患者団体連絡会による「臓器移植法改正 私たちはA案を支持します。」という意見広告が掲載されています。こうした意見広告でも分かるように、臓器移植法改正案が採決されることを強く願っています。
臓器移植法改正案の「焦点は、脳死での十五歳未満の臓器提供を認めるか、脳死を人の死とするか、の二つ」(東京新聞平成21年5月27日付夕刊9面「『移植法改正』審議入り 臓器提供 推進、慎重4案」)であるとされています。海外での臓器移植の自粛を求める世界的な流れを受け、今国会での採決を目指しています。
しかし、臓器移植法改正案は4通りもあり、ほとんどの政党は党議拘束をかけない上に、議員らの関心は低く、意見集約が進んでいません。6月9日の衆院本会議で、臓器移植法改正4案の審議経過に関する「中間報告」がなされましたが、報告中、居眠りする国会議員が数多くいたほど、議員らの関心は低いのです。
ですから、いずれの案も現段階では可決に必要な過半数の確保に至っていない状況です。現に、「朝日新聞が実施した国会議員アンケートでも7割近くが無回答であり、回答者でも2割超が『わからない・検討中』としている」(朝日新聞)のです。このように、多くの国会議員は、命を巡る問題を左右するという深刻な改正案であるにもかかわらず、採決間近になっても、どの改正案に賛同するか判断できる状態にないのです。
「指針には条約のような法的拘束力はないが、各国の医療政策に生かされ、臓器移植に実質的に影響を与えてきた」(asahi.com)とされており、今年の5月の総会で正式決定する見通しです。日本移植学会は今年1月、WHOの改定を前に移植を受けた患者と提供者の情報管理を始めています。
では、「移植臓器に世界共通の通し番号をつけ管理」する意義はどこにあるのでしょうか、そうしたことを実施した結果・効果はどうなるのでしょうか。移植希望者にとって何か不利益は生じるのでしょうか。こうした点について論じてみたいと思います。
1.東京新聞平成21年2月1日付朝刊20面「こちら特報部」
「違法移植防止へWHO指針
世界共通 臓器通し番号
移植臓器に世界共通の通し番号をつけ管理―。世界保健機関(WHO)執行理事会が臓器移植を受けた患者が提供者(ドナー)の情報管理を加盟国に求めるガイドライン(指針)の改正案をまとめた。移植者やドナーの継続的な追跡調査と、臓器売買など不正な移植を防ぐためだが、どのようにやるのか。その実効性は? (片山夏子)
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今回の改正案は、1991年に制定された臓器移植の指針を改定するもので、5月の総会で正式に採択される見通し。臓器売買は同年の指針でも禁止されていたが「現実問題として、売買を防ぐことができなかった」とWHO移植委員の篠崎尚史・東京歯科大角膜センター長は説明する。
世界共通の通し番号を付けて管理するとはどういうことなのか。
手続きは「現在もすべての臓器や組織に番号がついている。それを国ごとに割り振った番号で始まる国際共通コード番号に変更するだけ」。コード番号を臓器提供時に作成し、その番号が移植患者のカルテ上にも記載され、追跡調査も可能となるという。
ドナーや移植患者のデータを番号と一緒に、臓器あっせん機関や医療機関などが蓄積。その情報に、各国の厚生労働省にあたる行政機関が許可した者がアクセスできるようにする。篠崎氏は「移植は世界で年間数万例程度。通し番号をつけるのもデータ管理も難しくないだろう。端末からの検索方法は各国での対応になると思う」とする。
データ蓄積で、移植医療の現状把握や分析、質の向上を目指す。臓器売買など違法な移植の場合は、正規の番号がつくことは考えにくく、「番号がついてない場合や、現存しない番号がついていることで不正な移植かわかる」。不正な場合、帰国後の治療が保険のきかない自由診療となる可能性が高く、「その点を考えても抑止力になる」とみる。
日本移植学会は指針改正を前に、今年から移植患者とドナーの登録を開始。約110の病院が参加し、性別や年齢、移植経緯や予後など約150項目を登録。情報は暗号化して学会が管理する。
■「闇に潜るだけ」疑問の声も
中国での死刑囚からの臓器移植やフィリピンでの臓器売買のほか、「営利目的の臓器提供や移植も後を絶たない」と篠崎氏。日本などの患者が、海外で移植を受けることへの批判も強い。
中国では外国人の移植が法律で禁止されているが、中国人の偽名をつけて移植をしているという。中国での移植を仲介する男性は「中国やインドを含め、本当に世界共通の通し番号ができるのか」と疑問を呈する。
WHOは先月26日、必要な臓器は各国内で確保する努力を求める指針を理事会で承認。外国人の移植を受け入れてきたドイツやイギリスでも、やめる方向にある。
仲介者男性は「命のかかった患者は必死。ますます闇での移植が増える。移植が進まない現状では、患者は行き場をなくし、生きる希望を断たれることになる」。中国の移植事情に詳しい別の男性も「厳しくはなるが、闇の移植はなくならない」と断言する。
前出の篠崎氏は言う。
「臓器が足りないのは世界共通。これまで人道的に外国人の移植もしてきた国が、受け入れなくなってきている。法改正や医療体制整備、教育を含めて早急に対応し、日本での移植ができるようにしなければならない」」




