1.愛媛新聞2008年06月26日(木)付「特集宇和島 腎移植」
「病気腎 臨床研究へ保険適用を 県患者連絡協 厚労省に要望書
県内の人工透析患者を中心に組織する「県腎臓病患者連絡協議会」(戸田淳司会長、約千四百五十人)は二十五日、病気腎(修復腎)移植について「臨床研究への保険適用を求める要望書」を舛添要一厚生労働大臣あてに提出した。
要望書は、末期腎不全の治療法として、生活の質の面では透析療法よりも移植の方が優れ、待ち望んでいる患者も多いが、腎移植が進まない現状に言及。病気腎移植の臨床研究を「『高度医療』『先進医療』の枠組みで、保険診療として認めてほしい」としている。
病気腎移植について日本移植学会など腎臓病関連学会は「現時点で医学的に妥当性がない」とし、厚生労働省も原則禁止を打ち出している。一方で、双方とも臨床研究については、適正な手続きを踏まえた上で認める方向性を示している。
五月には、国会議員グループが条件付きで同移植を容認する見解を発表した。」
要望書の全文については、「修復腎移植推進・万波誠医師を支援します」さんの「修復腎移植に保険適用を−厚労相への要望−」(2008/06/26 22:38)で掲載していますので、ぜひご覧下さい。
2.「愛媛県腎臓病患者連絡協議会」は透析患者を中心とする団体ですが、透析患者団体が、修復腎移植を肯定的に捉えた意思表明をすることは初めてようですし、しかも、修復腎移植について保険適用を求める意思を示したのも初めてのことだと思われます。その意味で、初めて一歩踏み出すという大変勇気のいる、そして意義ある要望書であるといえます。
(1) 一般的には、「透析療法と比べ腎臓の機能を代行するという意味では腎移植がはるかに優れています」(東京女子医科大学腎臓病総合医療センター泌尿器科)ということなのですから(「修復腎移植の是非を問う前提として〜腎移植と透析療法ではどちらが良いのか?」(2008/06/01 [Sun] 18:41:49))、腎移植ができるようする意義があり、特に腎移植を切に必要とする透析患者にとっては、腎移植を選択する機会を増やす必要性があります。
臓器移植法は、臓器移植をより可能にするための法律なのですから、臓器移植の可能性を増やすことは、臓器移植法の趣旨にかなうことでもあります。
ところが、現在、死体腎移植の平均待機期間は16年という、あまりにも長い期間であって、臓器移植ネットワークへの登録を止める方もいるほどです。平均で16年もかかるのですから、移植を受ける機会がないに等しいため、登録料を払うだけ無駄になってしまうからです(新規登録料は3万円、毎年3月末に更新するための費用(更新料)は、5000円。なお、2度目の腎移植は殆どなし。)。
このように、死体腎移植は殆どないに等しい状況において、生体腎移植を受ける当てがない患者にとっては、「移植の機会増大は、何よりも切実な問題、願い」(要望書)なのです。もちろん、透析療法と腎移植どちらを選ぶか、修復腎移植を選ぶかどうかは、患者の選択に委ねられているわけですが。
(2) 修復腎移植を認め、腎移植の機会を増やすことは、透析患者にとって利益の多いことなのですから、もっと声を上げていいはずです。「愛媛県腎臓病患者連絡協議会」、すなわち透析患者団体が、修復腎移植を肯定的に捉えた意思表明をすることは初めてというのは、実に妙な感じがするほどです。修復腎移植に対する理解不足もあるでしょうが、おそらくは、団体と言う組織となると、色々なしがらみがあるためなのだろう、と推測しています。
透析患者個人としては修復腎移植に賛成する方もいることは確かです。透析患者団体も、所属する患者の意思を汲んで、修復腎移植をタブー視することなく、積極的に行動することが求められているのではないでしょうか。
1.腎移植と透析それぞれのメリットとデメリットについては、色々な書籍やサイトで触れていますが、詳しく触れている東京女子医科大学腎臓病総合医療センター泌尿器科の「腎移植と透析どっちがいいの?」を引用しておきます。
「Question
腎移植と透析どっちがいいの?
Answer
透析療法と比べ腎臓の機能を代行するという意味では腎移植がはるかに優れていますが、腎移植の最大の問題点は腎臓の提供者が少ないということです。
■腎移植が優れている点
●時間
腎移植では通常、月に1度の通院ですみますが、透析の場合週に3回透析センターで透析しなければいけません。1月にすると50時間以上を透析センターで過ごさなければいけないことになります。学業や仕事がある場合、透析は大きな障害になります。
●食事
腎移植の場合、食事に関しては一般にいわれている健康的な食事(低塩、低脂肪)であれば特に制限はありません。一方、透析療法の場合、カリウム、リン、塩分などの厳しい制限が必要になります。特にカリウム(果物、生野菜に多く含まれる)を多く取ってしまうと、血液中のカリウム濃度が上昇し、不整脈がおこりときには心臓が止まってしまうことさえあります。
●味覚
腎移植を受けた患者さんが最初に受ける印象は味覚が改善され食事がとてもおいしく感じることだそうです。これは透析中は口の中がねばねばし尿毒素により味覚が低下していたのが移植によって改善されるためです。
●飲水
腎移植では制限ありませんが、透析療法では尿が出ないため1日500〜700mlの飲水に制限されています。
●生存率
腎移植のほうが透析療法より長生きできることがわかっています。最近、東京女子医大で腎移植を受けられたすべての患者さんの5年生存率(移植してから5年以上、生存している割合)は94%であるのに対し、30歳から44歳の透析患者さんの5年生存率は87.2%でした。
●合併症
長期に透析を行うと、様々な合併症が出現するのに対し、腎移植ではほとんどの透析に伴う合併症は改善します。
●小児の成長
小児期から透析療法を行っていると尿毒症のため正常な成長は望めません。それに対し腎移植ではお子さんの成長を阻害しません。小児の腎不全の患者さんには腎移植をできるだけ早期に行ってあげることによって、できるだけ正常に発育するようにします。
●医療費
透析、腎移植ともに医療費はそのほとんどを公費が負担し、患者さんの負担には違いはありません。しかし実際に要する金額は、透析療法ではおおよそ月額40〜50万円、腎移植では月額15万円です。医療経済的にも腎移植は優れています。
■腎移植の問題点
●腎臓提供者の問題
腎移植を受ける場合は腎臓を提供してくださる方が必須です。身内に提供していただく方がいない場合は献腎移植に頼らざるを得ませんが、日本の献腎移植の現状ではそう簡単には移植の機会はまわってきません。そのためわれわれはこの現状を踏まえてご家族に提供者がいる場合は、血液型が違っていてもリンパ球クロスマッチ陽性であったとしても移植可能となるように移植技術の改善を行ってきました。
●免疫抑制剤の問題
移植することによって腎臓病から完全に解放されるわけではありません。常に免疫抑制剤を内服し拒絶反応の抑制をしなければいけません。そのため免疫抑制剤による合併症がどうしてもつきまといます。その最も大きな問題は感染症にかかりやすいことですが、われわれの豊富な経験から予防法、早期発見法、治療法が確立されているので現在はさほど心配することではなくなりました。また、免疫抑制剤の内服量は移植から時間が経つにつれ少なくなるので感染症のかかりやすさも低下します。しかし、移植後10年、20年経っても拒絶反応の抑制をするためごく少量とはいえ免疫抑制剤は必要になります。そのためわれわれは免疫抑制剤の不要な腎移植の方法を現在開発中で、近い将来実現されることが期待されています。
●手術、入院の問題
腎移植を受ける場合は手術を受けることはさけて通れません。そのため手術に伴う危険性は非常に少ないのですがまったくないとはいえません。」
女性(及びそのパートナー)にとって重要なのは、「●妊娠・出産が可能か否か」です。1996年、東京女子医大の東間先生らが行った調査からすると、透析療法中の女性の妊娠率が低く、妊娠しても流産の可能性が高く、未熟児(低体重児)で産まれる可能性が高いようです。ですから、透析の場合は、出産は「きわめて難しい」のですが、腎移植をすれば「可能」という評価となっています(「臓器移植の情報サイト」の「血液透析と腹膜透析と腎移植にはどのようなメリットとデメリットがありますか」)。
こうしてメリットとデメリットを比較すると、腎移植の方がメリットが大きいといえそうです。ただし、透析療法と腎移植どちらを選ぶかは患者の選択に委ねられていることであり、どちらかを押し付けるものではないことは確かです。患者にはどのような医療行為を選ぶか自己決定権があるからです。
なお、山陽新聞では、「揺れる移植医療」という特集記事を連載していました。そのなかには、透析治療の歴史的な経緯と現状について触れているものがありますから、紹介しておきます。
・「第2部 命をつなぐ 1 シャント 『いつだめになるか』」(2007/3/10)
・「第2部 命をつなぐ 2 人工腎臓 70年代 苦難の幕開け」(2007/3/11)
・「第2部 命をつなぐ 3 不安 心通わせるケア必要」(2007/3/13)
1.この4月26日の講演会では、講演だけでなく、兵庫県加古川市で音楽教室を主宰している作曲家・編曲家・ジャズピアニストの有末よしひろ(佳弘)さんと、講演も行った堤寛・藤田保健衛生大学教授による演奏も行われたことも、触れました。その有末佳弘さんに対するインタビュー記事が、東京新聞「こちら特報部」に掲載されていましたので、紹介したいと思います。
生まれつき強度の近視という不自由さを抱えながら、ジャズを中心にしたピアニストになった切っ掛け、順調な演奏家としての生活が一転するさま、透析患者の現実が記されています。では、東京新聞の記事を紹介します。


